JP2008266664A - 樹脂被覆用アルミニウム材及び樹脂被覆アルミニウム材、ならびに、これらの製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】有機樹脂被覆膜との密着性や耐食性に優れた樹脂被覆用アルミニウム材、ならびに、この樹脂被覆用アルミニウム材の上に有機樹脂被覆膜を形成することによって、密着性と耐食性に優れた樹脂被覆アルミニウム材を提供する。
【解決手段】アルミニウム基材と、アルミニウム基材の少なくとも一方の表面に形成された陽極酸化皮膜とを備えた樹脂被覆用アルミニウム材であって、陽極酸化皮膜が、酒石酸塩、ホウ酸塩、リン酸塩、アジピン酸塩から成る群から選択される1種又は2種以上を含む主剤と、特定の構造を有する有機ケイ素化合物から選択される1種又は2種以上を含む副剤とを含有する電解溶液を用いた電解によって形成された無孔質陽極酸化皮膜であり、無孔質陽極酸化皮膜が3〜200nmの膜厚と15%以下の空孔率を有する樹脂被覆用アルミニウム材、ならびに、無孔質陽極酸化皮膜上に有機樹脂被覆膜を更に備える樹脂被覆アルミニウム材。
【選択図】なし
【解決手段】アルミニウム基材と、アルミニウム基材の少なくとも一方の表面に形成された陽極酸化皮膜とを備えた樹脂被覆用アルミニウム材であって、陽極酸化皮膜が、酒石酸塩、ホウ酸塩、リン酸塩、アジピン酸塩から成る群から選択される1種又は2種以上を含む主剤と、特定の構造を有する有機ケイ素化合物から選択される1種又は2種以上を含む副剤とを含有する電解溶液を用いた電解によって形成された無孔質陽極酸化皮膜であり、無孔質陽極酸化皮膜が3〜200nmの膜厚と15%以下の空孔率を有する樹脂被覆用アルミニウム材、ならびに、無孔質陽極酸化皮膜上に有機樹脂被覆膜を更に備える樹脂被覆アルミニウム材。
【選択図】なし
Description
本発明は樹脂被覆用アルミニウム材に関し、詳細には食品を収容するアルミニウム缶、特に清涼飲料、アルコール飲料、炭酸飲料等を収容するための2ピース缶の缶胴材及び缶蓋材として好適な樹脂被覆用アルミニウム材、ならびに、この樹脂被覆用アルミニウム材を用いた樹脂被覆アルミニウム材に関する。更に本発明は、これら樹脂被覆用アルミニウム材及び樹脂被覆アルミニウム材の製造方法に関する。
近年では、食品容器や、家具、建材用の樹脂被覆材としてアルミニウム又はアルミニウム合金が広く採用されるようになってきた。これは、アルミニウムが他の金属材料に比べて、リサイクル性が高く、加工性と美観性に優れるためである。
樹脂被覆アルミニウム材の下地表面処理方法としては、従来からリン酸クロメート処理又はクロム酸クロメート処理が用いられてきた。これらのクロメート系表面処理剤により形成されるクロメート化成皮膜は、皮膜単独の耐食性に優れており、また各種樹脂被覆を施した後の密着性や耐食性にも優れる特徴を有している。しかし、近年では環境保護の観点からクロメート処理の際のクロム含有排水が環境汚染につながること、また、排水処理にもコストを必要とする欠点があること、更には、食品関係の用途においては六価クロムが人体に有害であること等から、近年ではクロメート系処理剤の使用を廃止する必要が生じてきた。
一方、アルミニウム又はアルミニウム合金に対するノンクロム系の表面処理方法の一つに、陽極酸化処理による下地処理方法が挙げられる。この下地処理によって得られる陽極酸化皮膜は、基本的にはアルミニウム材の表層に形成される緻密な無孔質のバリア皮膜層の上に、多孔質皮膜層を成長させて形成されるものである。したがって、耐食性や樹脂被覆層との優れた密着性が期待されることから、これまでにも種々の検討が行われてきた。
例えば、特許文献1には、アルミニウム材の表面に、厚さが70〜2000Å、含水率が1〜5重量%、アニオン含有量が0.1〜7重量%の無孔質陽極酸化皮膜を形成する技術が紹介されている。
:特開平8−283990号公報
特許文献2には、アルミニウム板の上に形成された膜厚0.1〜1μmの陽極酸化皮膜において、直径が10nm以上の孔を有する領域の面積が全体の面積の75%以上であることを特徴とした多孔質皮膜層を形成する技術が紹介されている。
:特開平11−207860号公報
これらの陽極酸化皮膜層は、成形加工前における初期の耐食性や密着性に関しては比較的良好である。しかしながら、特に飲料容器等のような過酷な成形加工が施される用途では、その成形加工工程において陽極酸化皮膜にクラックが生じたり樹脂被覆層との剥離が生じる問題点があった。
また、特許文献3には、ナトリウム、カリウム、アンモニウム又は有機窒素系化合物、さらには水溶性樹脂を含有したアルカリ性ないしは酸性電解浴で陽極酸化処理を施すことにより、樹脂を含有する陽極酸化皮膜を形成する技術が紹介されている。樹脂を含有する陽極酸化皮膜は、樹脂を含有していない従来の陽極酸化皮膜に比べて、成形加工後にも良好な耐食性が得られる。しかしながら、樹脂を含有する陽極酸化皮膜では、樹脂被覆層との十分な密着性が得られないために、ごく限定された用途のみにしか使用できないといった問題点があった。
:特開平8−027595号公報
本発明は、係る問題点に鑑みてなされたものであって、有害なクロムを使用せず、低コストであり、リン酸クロメート処理による場合と同等以上の樹脂被覆膜の密着性を有する樹脂被覆用アルミニウム材、及びこの樹脂被覆用アルミニウム材上に有機樹脂皮膜を被覆した樹脂被覆アルミニウム材、ならびに、これらの製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決すべく検討した結果、密着性及び耐食性の低下は、塗装した塗料やラミネートした有機樹脂フィルムなどの樹脂被覆膜から僅かに浸透する水分によって、下地層としての陽極酸化皮膜表面のヒドロキシル基を起点として水和反応が生じることに起因するとの知見を得た。
そこで、本発明者らは係る知見に基づいて鋭意検討した結果、まず、アルミニウム又はアルミニウム合金から成るアルミニウム基材を、酒石酸塩、ホウ酸塩、リン酸塩、アジピン酸塩から成る群から選択される1種又は2種以上を含む主剤と、特定の有機ケイ素化合物から選択される1種又は2種以上を含む副剤とを含有する電解溶液を用いて所定条件で電解することによって、アルミニウム基材表面に上記有機ケイ素化合物を均一に含有する無孔質陽極酸化皮膜が得られることを見出した。
次に、無孔質陽極酸化皮膜中に均一に取り込まれた有機ケイ素化合物のアルコキシル基が、無孔質陽極酸化皮膜の内部ないしは表層のヒドロキシル基と化学的な結合を形成し、無孔質陽極酸化皮膜のヒドロキシル基を起点とする水和反応を抑制することを見出した。更に、有機ケイ素化合物の官能基としてアミノ基、ビニル基、メタクリル基、エポキシ基、メルカプト基が含まれる場合には、無孔質陽極酸化皮膜と有機樹脂被覆膜との結合が強化されることを見出した。
本発明では、前記電解溶液による電解処理を、3〜200Vの定電圧で0.3〜20A/dm2の範囲の電流密度において直流定電圧法を用いて行い、膜厚が3〜200nm、空孔率が15%以下の無孔質陽極酸化皮膜を形成することで、成形加工を施した後においても、初期の耐食性や密着性が維持可能な優れた下地処理皮膜を得ることができる。
本発明は請求項1において、アルミニウム又はアルミニウム合金から成るアルミニウム基材と、当該アルミニウム基材の少なくとも一方の表面に形成された陽極酸化皮膜とを備えた樹脂被覆用アルミニウム材であって、
前記陽極酸化皮膜が、酒石酸塩、ホウ酸塩、リン酸塩、アジピン酸塩から成る群から選択される1種又は2種以上を含む主剤と、下記式(1)で示される構造を有する有機ケイ素化合物から選択される1種又は2種以上を含む副剤とを含有する電解溶液を用いた電解によって形成された無孔質陽極酸化皮膜であり、当該無孔質陽極酸化皮膜が、3〜200nmの膜厚と15%以下の空孔率を有する樹脂被覆用アルミニウム材とした。
式(1)中、Yは有機官能基、Rは炭素数1〜5のアルキル基、OR’はアルコキシル基、nは0、1又は2である。
前記陽極酸化皮膜が、酒石酸塩、ホウ酸塩、リン酸塩、アジピン酸塩から成る群から選択される1種又は2種以上を含む主剤と、下記式(1)で示される構造を有する有機ケイ素化合物から選択される1種又は2種以上を含む副剤とを含有する電解溶液を用いた電解によって形成された無孔質陽極酸化皮膜であり、当該無孔質陽極酸化皮膜が、3〜200nmの膜厚と15%以下の空孔率を有する樹脂被覆用アルミニウム材とした。
本発明は請求項2において、主剤の濃度を0.5〜20重量%とし、当該主剤の濃度に対する副剤の濃度の比率を0.2〜0.8とした。
また、本発明は請求項3において、有機ケイ素化合物の有機官能基Yが、アミノ基、ビニル基、メタクリル基、エポキシ基、メルカプト基のいずれかにより選択されるものとした。
さらに、本発明は請求項4では、請求項1〜3の樹脂被覆用アルミニウム材において、無孔質陽極酸化皮膜上に有機樹脂被覆膜を更に備える樹脂被覆アルミニウム材とした。
本発明は請求項5において、アルミニウム又はアルミニウム合金から成るアルミニウム基材を陽極とし、酒石酸塩、ホウ酸塩、リン酸塩、アジピン酸塩から成る群から選択される1種又は2種以上を含む主剤と、下記式(1)で示される構造を有する有機ケイ素化合物から選択される1種又は2種以上を含む副剤とを含有する電解溶液を用いて、3〜200Vの定電圧で0.3〜20A/dm2の範囲の電解密度において直流定電圧電解を施すことによって、前記アルミニウム基材の少なくとも一方の表面に無孔質陽極酸化皮膜を形成する工程と、
前記無孔質陽極酸化皮膜を形成したアルミニウム基材を20〜250℃で乾燥する乾燥工程と、を含むことを特徴とする樹脂被覆用アルミニウム材の製造方法とした。
式(1)中、Yは有機官能基、Rは炭素数1〜5のアルキル基、OR’はアルコキシル基、nは0、1又は2である。
前記無孔質陽極酸化皮膜を形成したアルミニウム基材を20〜250℃で乾燥する乾燥工程と、を含むことを特徴とする樹脂被覆用アルミニウム材の製造方法とした。
本発明は請求項6において、前記主剤の濃度を0.5〜20重量%とし、当該主剤の濃度に対する副剤の濃度の比率を0.2〜0.8とし、電解溶液の温度を20〜80℃とした。
本発明は請求項7において、前記有機ケイ素化合物の有機官能基Yが、アミノ基、ビニル基、メタクリル基、エポキシ基、メルカプト基から成る群から選択されるいずれかの基とした。
本発明は請求項8において、請求項5〜7に記載の樹脂被覆用アルミニウム材の製造方法における乾燥工程の後に、前記無孔質陽極酸化皮膜上に有機樹脂被覆膜を被覆する工程を更に含む樹脂被覆アルミニウム材の製造方法とした。
本発明により、有機樹脂被覆膜との密着性や耐食性に優れた樹脂被覆用アルミニウム材及びその製造方法が提供される。また、このような樹脂被覆用アルミニウム材の上に有機樹脂被覆膜を形成することによって、密着性と耐食性に優れた樹脂被覆アルミニウム材が提供されると共に、その製造方法も提供される。
A.樹脂被覆用アルミニウム材
本発明に係る樹脂被覆用アルミニウム材は、所定の電解溶液を用いた所定条件(3〜200Vの一定電圧、0.3〜20A/dm2の範囲の電流密度)での直流定電圧電解法によって、アルミニウム基材表面に3〜200nmの膜厚と15%以下の空孔率を有する無孔質陽極酸化皮膜を形成することによって製造される。以下、本発明の樹脂被覆用アルミニウム材とその製造方法について詳細に説明する。
本発明に係る樹脂被覆用アルミニウム材は、所定の電解溶液を用いた所定条件(3〜200Vの一定電圧、0.3〜20A/dm2の範囲の電流密度)での直流定電圧電解法によって、アルミニウム基材表面に3〜200nmの膜厚と15%以下の空孔率を有する無孔質陽極酸化皮膜を形成することによって製造される。以下、本発明の樹脂被覆用アルミニウム材とその製造方法について詳細に説明する。
A−1.アルミニウム基材
本発明に係る樹脂被覆用アルミニウム材では、アルミニウム又はアルミニウム合金から成るアルミニウム基材を用いる。アルミニウム基材としては特に限定されるものではなく、目的や用途に合わせて適宜選択することができる。例えば、飲料缶に用いる場合、缶胴材向けにはAl−Mn系のJIS3000系合金が、缶蓋材向けにはAl−Mg系のJIS5000系合金が用いられる。
本発明に係る樹脂被覆用アルミニウム材では、アルミニウム又はアルミニウム合金から成るアルミニウム基材を用いる。アルミニウム基材としては特に限定されるものではなく、目的や用途に合わせて適宜選択することができる。例えば、飲料缶に用いる場合、缶胴材向けにはAl−Mn系のJIS3000系合金が、缶蓋材向けにはAl−Mg系のJIS5000系合金が用いられる。
A−2.前処理
アルミニウム基材には、まず前処理が施される。この前処理方法は特に限定されるものではなく、アルミニウム基材表面に付着した油脂分や不均質な酸化皮膜を除去できるものであればよい。例えば、水酸化ナトリウム水溶液でアルカリエッチングをした後、硝酸や硫酸水溶液中でデスマット処理を行なう方法や、弱アルカリ性の脱脂液による脱脂処理を施した後、酸洗浄を行なう方法等が適宜選択して用いられる。
アルミニウム基材には、まず前処理が施される。この前処理方法は特に限定されるものではなく、アルミニウム基材表面に付着した油脂分や不均質な酸化皮膜を除去できるものであればよい。例えば、水酸化ナトリウム水溶液でアルカリエッチングをした後、硝酸や硫酸水溶液中でデスマット処理を行なう方法や、弱アルカリ性の脱脂液による脱脂処理を施した後、酸洗浄を行なう方法等が適宜選択して用いられる。
A−3.陽極酸化処理
次いで、前処理を施したアルミニウム基材を電解溶液中で電解して、陽極酸化処理を施す。これによって、アルミニウム基材表面に無孔質陽極酸化皮膜が形成される。ここで、「無孔質」とは、皮膜の空孔率が15%未満であることを意味する。
次いで、前処理を施したアルミニウム基材を電解溶液中で電解して、陽極酸化処理を施す。これによって、アルミニウム基材表面に無孔質陽極酸化皮膜が形成される。ここで、「無孔質」とは、皮膜の空孔率が15%未満であることを意味する。
A−3−1.電解溶液
電解溶液としては、生成する無孔質陽極酸化皮膜を溶解し難く、かつ、無孔質の陽極酸化皮膜を生成する電解質成分である酒石酸塩、ホウ酸塩、リン酸塩、アジピン酸塩から成る群から選択される種又は2種以上を含む主剤と、特定の有機ケイ素化合物から選択される1種又は2種以上を含む副剤とを溶解したものが用いられる。このような電解溶液を用いることによって、有機ケイ素化合物を均一に含有する無孔質陽極酸化皮膜が得られる。
電解溶液としては、生成する無孔質陽極酸化皮膜を溶解し難く、かつ、無孔質の陽極酸化皮膜を生成する電解質成分である酒石酸塩、ホウ酸塩、リン酸塩、アジピン酸塩から成る群から選択される種又は2種以上を含む主剤と、特定の有機ケイ素化合物から選択される1種又は2種以上を含む副剤とを溶解したものが用いられる。このような電解溶液を用いることによって、有機ケイ素化合物を均一に含有する無孔質陽極酸化皮膜が得られる。
電解溶液中の主剤の濃度は、特に限定されるものではないが、0.5〜20重量%とするのが好ましい。この濃度が0.5重量%未満では、電解に必要な適切な伝導率が得られず形成される陽極酸化皮膜に斑が生じ易くなる。一方、主剤の濃度が20重量%を超えると、主剤が溶解し難くなって沈殿が生じる場合がある。また、主剤濃度に対する副剤濃度の比率は、特に限定されるものではないが0.2〜0.8とするのが好ましい。この比率が0.2未満では副剤の添加効果が十分に得られず、0.8を超えると副剤添加による効果が飽和し不経済となる。
副剤に用いられる有機ケイ素化合物は、下記式(1)の構造を有する。
式(1)中、Yは有機官能基、Rは炭素数1〜5のアルキル基、OR’はアルコキシル基、nは0、1又は2である。R’は特に限定されるものではないが、炭素数1〜5のアルキル基とするのが好ましい。式(1)のアルコキシル基(OR‘)と、無孔質陽極酸化皮膜に存在するヒドロキシル基との間で脱水縮合結合が形成され、無孔質陽極酸化皮膜のヒドロキシル基が起点となって生じる水和反応が抑制されると共に、無孔質陽極酸化皮膜を化学結合による強固な複合皮膜とすることができる。
式(1)に示す有機ケイ素化合物には、官能基Yがアミノ基より成るものとして、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、3−(2−アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−フェニルアミノプロピルトリメトキシシラン、及びこれらからの誘導体より成るアミノ系シラン化合物が挙げられる。
式(1)に示す有機ケイ素化合物には、官能基Yがビニル基より成るものとして、ビニルトリアセトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリイソプロポキシシラン、アリルトリメトキシシラン、アリルトリエトキシシラン、及びこれらからの誘導体より成るビニル系シラン化合物が挙げられる。
式(1)に示す有機ケイ素化合物には、官能基Yがメタクリル基より成るものとして、メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、及びこれらからの誘導体より成るメタクリル系シラン化合物が挙げられる。
式(1)に示す有機ケイ素化合物には、官能基Yがエポキシ基より成るものとして、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、及びこれらからの誘導体より成るエポキシ系シラン化合物が挙げられる。
式(1)に示す有機ケイ素化合物には、官能基Yがメルカプト基から成るものとして、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、及びこれらからの誘導体より成るメルカプト系シラン化合物が挙げられる。
このようなシラン化合物の1種又は2種以上が、副剤として用いられる。なお、2種以上用いる場合には、同系のシラン化合物を用いても、異なる系のシラン化合物を用いてもよい。上記式(1)の有機官能基Yが、アミノ基、ビニル基、メタクリル基、エポキシ基、メルカプト基から選択される場合は、これら有機官能基Yと無孔質陽極酸化皮膜上に被覆される有機樹脂被覆膜のヒドロキシル基やカルボキシル基との間で強固な結合が形成されるため、アルミニウム基材と有機樹脂被覆膜との良好な密着性が付与される。
電解溶液に用いる溶媒としては、上記主剤と副剤とからなる電解質を溶解可能なものであれば、特に限定されるものではない。水、アルコール類等が用いられるが、水を用いるのが好ましい。
A−3−2.電解条件
本発明において無孔質陽極酸化皮膜の形成には、直流電解法が用いられる。本発明におけるようなnmオーダーと薄い無孔質陽極酸化皮膜の直流電解では、皮膜厚さは電解電圧のみによって制御される。すなわち、膜厚=1.4nm/電解電圧の関係が成立する。したがって、一定電圧で電解を行なうことによって当該電圧値に対応する所定膜厚の皮膜が得られ、実際の製造管理では、膜厚と電解電圧との上記関係に従って電解電圧を制御して行なえば良く、本発明において採用する陽極酸化皮膜の膜厚を得るには、通常、5〜360秒の電解処理時間を要する。
本発明において無孔質陽極酸化皮膜の形成には、直流電解法が用いられる。本発明におけるようなnmオーダーと薄い無孔質陽極酸化皮膜の直流電解では、皮膜厚さは電解電圧のみによって制御される。すなわち、膜厚=1.4nm/電解電圧の関係が成立する。したがって、一定電圧で電解を行なうことによって当該電圧値に対応する所定膜厚の皮膜が得られ、実際の製造管理では、膜厚と電解電圧との上記関係に従って電解電圧を制御して行なえば良く、本発明において採用する陽極酸化皮膜の膜厚を得るには、通常、5〜360秒の電解処理時間を要する。
電解温度、すなわち、上記主剤及び副剤から成る電解質を溶解した電解溶液の温度は、20℃以上とすることが好ましい。20℃未満であると電解質の溶解度が低下し、電解に必要な十分な伝導性が得られないからである。一方、温度が80℃を超えると溶液加熱に要する費用が増大するので好ましくない。したがって、電解溶液の温度は20〜80℃の範囲とするのが好ましい。
上記電解溶液中に、アルミニウム又はアルミニウム合金から成るアルミニウム基材の陽極と炭素棒等の不溶性の陰極とを浸漬して、両極を直流電源に接続し、連続的或いは断続的に電解が行なわれる。電解電圧と、形成される無孔質陽極酸化皮膜の膜厚には上記の一定の関係があり、通常3〜200Vの範囲の定電圧が用いられる。
直流定電圧電解では、電解の進行と共に電解電流密度が減少するが、通常0.3〜20A/dm2程度の範囲の電解電流密度が得られるように、電解溶液中の電解質濃度が選択される。電流密度が0.3A/dm2未満では、皮膜形成に長時間を要するのでプロセス上において好ましくない。一方、20A/dm2を超えると皮膜厚さの斑などが生じ、皮膜欠陥が生じるので好ましくない。
なお、無孔質陽極酸化皮膜の厚さを一定に調整することはできないが、直流定電圧電解法に代わって直流定電流電解法を採用してもよい。この電解法では、電解が進行すると共に電解電圧が増加する。
なお、無孔質陽極酸化皮膜の厚さを一定に調整することはできないが、直流定電圧電解法に代わって直流定電流電解法を採用してもよい。この電解法では、電解が進行すると共に電解電圧が増加する。
このような電解条件により、空孔率15%以下の無孔質陽極酸化皮膜が形成される。空孔率を15%以下の無孔質とすることによって、孔に腐食生成物が侵入し難く、十分な耐食性が得られる。空孔率が15%を超えると、腐食生成物が孔に侵入し易くなり耐食性が劣る。また、空孔率の下限は2%である。これ未満の空孔率を電解処理によって得ることは一般に困難である。ここで、陽極酸化皮膜の空孔率は、陽極酸化皮膜表面を30万倍のFESEM(冷陰極電界放出型走査電子顕微鏡)で約0.2μm2の視野を複数箇所観察し、全酸化皮膜面積に対する総孔面積の比率の平均値によって表わされる。
また、このようにして形成される無孔質陽極酸化皮膜の膜厚は、3〜200nmとする必要がある。皮膜厚が3nm未満では、耐食性向上の効果が得られない。一方、皮膜厚が厚い程、アルミニウム基材を保護して腐食を防止する効果の向上が期待できるものの、200nmを超えたのでは、加工した際に陽極酸化皮膜にクラックが入り易く、密着性や耐食性の低下を招く。
次に、電解終了後に、無孔質陽極酸化皮膜の表面に20〜250℃、好ましくは120〜200℃の乾燥処理を施すのが好ましい。この乾燥処理により、副剤の官能基として含まれるアルコキシル基が、無孔質陽極酸化皮膜の内部ないしは表面に存在するヒドロキシル基と脱水反応を生起して共有結合を形成する。このようにして形成される複合皮膜は、樹脂被覆後における水和の進行を抑制するため、極めて良好な樹脂被覆密着性や耐食性を提供する。乾燥処理が不十分であると、無孔質陽極酸化皮膜中の水分が除去されず、副剤の官能基として含まれるアルコキシル基と陽極酸化皮膜のヒドロキシル基による縮合が完結しないため、十分な密着性が得られない。乾燥温度が20℃未満では乾燥が不十分となり、十分な密着性が得られない。また、250℃以上の乾燥温度では無孔質陽極酸化皮膜にクラックが入り易くなり、更にアルミニウム基材の強度が大幅に低下してしまう場合がある。なお、無孔質陽極酸化皮膜中の水分は含水率によって規定でき、本発明では含水率を20%以下、好ましくは4〜15%とする。
本発明に係る樹脂被覆用アルミニウム材は、アルミニウム基材の少なくとも一方の表面に無孔質陽極酸化皮膜を備える。すなわち、アルミニウム基材の一方の面にのみ無孔質陽極酸化皮膜を備える形態と、アルミニウム基材の両方の面にそれぞれ、無孔質陽極酸化皮膜を備える形態とを有する。
B.樹脂被覆アルミニウム材
樹脂被覆アルミニウム材は、無孔質陽極酸化皮膜が形成された樹脂被覆用アルミニウム材の表面に有機樹脂被覆膜を被覆することによって形成される。有機樹脂被覆膜としては、塗料を塗布しこれを乾燥したもの、或いは、有機樹脂フィルムを熱接着等したものが用いられる。
樹脂被覆アルミニウム材は、無孔質陽極酸化皮膜が形成された樹脂被覆用アルミニウム材の表面に有機樹脂被覆膜を被覆することによって形成される。有機樹脂被覆膜としては、塗料を塗布しこれを乾燥したもの、或いは、有機樹脂フィルムを熱接着等したものが用いられる。
B−1.塗料を用いた有機樹脂被覆膜の形成
塗布塗料としては、一般的に分子内に極性官能基を有する樹脂を用いるのが好ましい。この極性官能基を有する樹脂を用いた塗料は、陽極酸化皮膜のヒドロキシル基;陽極酸化皮膜の内部ないしは表面に存在する有機ケイ素化合物に官能基として含まれる、アミノ基、ビニル基、メタクリル基、エポキシ基、メルカプト基;と水素結合するため、優れた密着性を発揮する。このような塗料としては、熱可塑性アクリル樹脂系塗料、熱硬化性アクリル樹脂系塗料、エポキシ樹脂系塗料、ポリウレタン樹脂系塗料、ポリエステル樹脂系塗料、ポリアミド樹脂系塗料などが用いられる。これら塗料は、樹脂成分に必要な添加剤(分散剤等)を加えてこれらを溶媒に溶解又は分散したものである。溶媒としては、各成分を溶解又は分散できるものであれば特に限定されるものではなく、水やアルコールなどの一般的な有機溶媒を用いることができる。本発明では、水性のエポキシ樹脂系塗料が好適に用いられる。
塗布塗料としては、一般的に分子内に極性官能基を有する樹脂を用いるのが好ましい。この極性官能基を有する樹脂を用いた塗料は、陽極酸化皮膜のヒドロキシル基;陽極酸化皮膜の内部ないしは表面に存在する有機ケイ素化合物に官能基として含まれる、アミノ基、ビニル基、メタクリル基、エポキシ基、メルカプト基;と水素結合するため、優れた密着性を発揮する。このような塗料としては、熱可塑性アクリル樹脂系塗料、熱硬化性アクリル樹脂系塗料、エポキシ樹脂系塗料、ポリウレタン樹脂系塗料、ポリエステル樹脂系塗料、ポリアミド樹脂系塗料などが用いられる。これら塗料は、樹脂成分に必要な添加剤(分散剤等)を加えてこれらを溶媒に溶解又は分散したものである。溶媒としては、各成分を溶解又は分散できるものであれば特に限定されるものではなく、水やアルコールなどの一般的な有機溶媒を用いることができる。本発明では、水性のエポキシ樹脂系塗料が好適に用いられる。
塗料の塗布方法としては、ロールコーター法、静電塗装法、吹き付け塗装法、ロールスクイズ法、ケミコーター法、エアナイフ法、浸漬法、スプレー法等の方法が用いられ、有機樹脂被覆膜の均一性に優れ、生産性が良好なロールコーター法が好ましい。必要に応じて、下塗り、中塗り、上塗り等により多層塗装を施してもよい。
有機樹脂被覆膜を形成する際の焼付けは、通常、焼付け温度(到達表面温度)が230〜290℃で、焼付け時間が8〜40秒の条件で行うのが好ましい。焼付け温度が230℃未満であったり、焼付け時間が8秒未満である場合には、被覆膜が十分に形成されず密着性が低下する。焼付け温度が290℃を超えたり、焼付け温度が40秒を超える場合には、被覆成分が変性することになる。有機樹脂被覆膜の焼付けには、一般的な加熱法、誘電加熱法等が用いられる。
B−2.樹脂フィルムを用いた有機樹脂被覆膜の形成
樹脂フィルムとしては、熱可塑性樹脂フィルムが用いられる。熱可塑性樹脂フィルムとしては、下地となる樹脂被覆用アルミニウム材に対して熱接着性を示す樹脂フィルムであれば特に限定されるものではなく、樹脂被覆アルミニウム材に要求される各種特性に応じて種々の特性を有する樹脂フィルムを選択することが可能である。この熱可塑性樹脂フィルムとしては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ナイロン6、ナイロン11、ポリカーボネート、ポリアリレート等を挙げることができる。本発明では、熱可塑性ポリエチレンテレフタレートフィルムが好適に用いられる。
樹脂フィルムとしては、熱可塑性樹脂フィルムが用いられる。熱可塑性樹脂フィルムとしては、下地となる樹脂被覆用アルミニウム材に対して熱接着性を示す樹脂フィルムであれば特に限定されるものではなく、樹脂被覆アルミニウム材に要求される各種特性に応じて種々の特性を有する樹脂フィルムを選択することが可能である。この熱可塑性樹脂フィルムとしては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ナイロン6、ナイロン11、ポリカーボネート、ポリアリレート等を挙げることができる。本発明では、熱可塑性ポリエチレンテレフタレートフィルムが好適に用いられる。
熱可塑性樹脂フィルムの被覆には、アルミニウム基材を高周波誘導加熱や直火加熱等によって被覆する樹脂フィルムの軟化温度以上に加熱しつつ樹脂フィルムを押圧する熱圧着法;フィルムを押出コートしつつアルミニウム基材表面に、樹脂フィルムの軟化温度以上の温度で熱接着法等が用いられる。これらの方法はいずれも従来法であり、目的、用途等に合わせて被覆方法を適宜選択することができる。
なお、アルミニウム基材表面には、有機ケイ素化合物を含む無孔質陽極酸化皮膜が形成されており、この無孔質陽極酸化皮膜が熱可塑性樹脂フィルムと強固な密着をなす。したがって、従来法のような、熱可塑性フィルム又はアルミニウム化成処理材表面に接着プライマーを設ける工程は一切不要である。
本発明に係る樹脂被覆アルミニウム材は、アルミニウム基材の少なくとも一方の表面に無孔質陽極酸化皮膜と、その上に形成された有機樹脂被覆膜とを備える。すなわち、本発明に係る樹脂被覆アルミニウム材は、アルミニウム基材の一方の面にのみ無孔質陽極酸化皮膜と、その上に形成された有機樹脂被覆膜とを備える形態と、アルミニウム基材の両方の面にそれぞれ、無孔質陽極酸化皮膜と、その上に形成された樹脂フィルムとを備える形態とを有する。
以下、本発明を実施例及び比較例により具体的に説明するが、本発明は以下に記載の例に限定されるものではない。
実施例1〜8及び比較例1〜2
アルミニウム基材としてJIS−A3004合金を用いた。これを以下の通りに、鋳造・加工及び調質した。すなわち、A3004合金をDC鋳造法により鋳造し、560℃で3時間均質化処理した後に460℃で熱間圧延を行ない、次いで120℃の冷間圧延により板厚を0.30mmとした後に250℃で最終焼鈍処理を行なった。
アルミニウム基材としてJIS−A3004合金を用いた。これを以下の通りに、鋳造・加工及び調質した。すなわち、A3004合金をDC鋳造法により鋳造し、560℃で3時間均質化処理した後に460℃で熱間圧延を行ない、次いで120℃の冷間圧延により板厚を0.30mmとした後に250℃で最終焼鈍処理を行なった。
上記のようにして加工したアルミニウム基材に、以下のような前処理を施した。まず、10重量%苛性水溶液で60℃にて10秒間のエッチングを施した後、10秒間水洗した。更に、10重量%硝酸水溶液で50℃にて10秒間洗浄した後、10秒間水洗した。次いで、電解質として所定の主剤成分と副剤成分とを所定濃度比となるように混合したものを水に溶解して電解水溶液を調製した。上記前処理を施したアルミニウム基材を陽極とし、炭素電極を陰極とし、上記電解水溶液を用いて50℃で所定時間、直流定電圧による電解を行ない、アルミニウム基材の表面に所定厚さの陽極酸化皮膜を形成した。電解終了後、陽極酸化皮膜を形成したアルミニウム基材を水洗し、150℃で20秒間乾燥処理を施し、樹脂被覆用アルミニウム材の試料を得た。なお、実施例7では、乾燥処理を25℃で自然乾燥した。
電解溶液に用いた主剤成分と副剤成分、ならびに、それらの濃度、主剤成分に対する副剤の濃度比率、電解電圧、電解電流を表1に示す。
上記により得られた樹脂被覆用アルミニウム材の陽極酸化皮膜の膜厚、空孔率及び含水率を下記のようにして測定した。結果を表2に示す。
陽極酸化皮膜の膜厚測定
陽極酸化皮膜を形成したアルミニウム基材の試料を厚さ方向に沿って切断し、その断面を透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて観察して皮膜厚さを測定した。
陽極酸化皮膜を形成したアルミニウム基材の試料を厚さ方向に沿って切断し、その断面を透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて観察して皮膜厚さを測定した。
陽極酸化皮膜の空孔率測定
陽極酸化皮膜を形成したアルミニウム基材試料の陽極酸化皮膜表面における約0.2μm2の視野を、30万倍のFESEM(冷陰極電界放出型走査電子顕微鏡)で複数箇所観察して、酸化皮膜表面に存在する孔の総面積を当該視野の面積で除したものの平均値を算出した。
陽極酸化皮膜を形成したアルミニウム基材試料の陽極酸化皮膜表面における約0.2μm2の視野を、30万倍のFESEM(冷陰極電界放出型走査電子顕微鏡)で複数箇所観察して、酸化皮膜表面に存在する孔の総面積を当該視野の面積で除したものの平均値を算出した。
陽極酸化皮膜の含水率測定
陽極酸化皮膜を形成したアルミニウム基材の試料を室温〜300℃まで1℃/分の昇温速度で加熱し、80〜200℃までの重量減少を熱重量測定法(TG)によって測定した。含水率(%)は、次式によって算出した。(80℃での試料重量−200℃での試料重量)/(80℃での試料重量)×100
陽極酸化皮膜を形成したアルミニウム基材の試料を室温〜300℃まで1℃/分の昇温速度で加熱し、80〜200℃までの重量減少を熱重量測定法(TG)によって測定した。含水率(%)は、次式によって算出した。(80℃での試料重量−200℃での試料重量)/(80℃での試料重量)×100
上記により得られた樹脂被覆用アルミニウム材の陽極酸化皮膜上に、エポキシ系塗料を塗装することによって、又は、PETフィルムによるラミネート処理によって有機樹脂被覆膜を被覆した。エポキシ系塗料による有機樹脂被覆膜の形成は、乾燥後の被覆膜量が7.2g/m2となるようにバーコーターにて塗料を塗布し、260℃にて25秒の焼付処理を施して行なった。熱可塑性PETフィルムによるによる有機樹脂被覆膜の形成は、15μmのポリエチレンテレフタレート系フィルムを貼り合わせつつ200℃の加熱ローラーに通過させた後、更に270℃で30秒の熱処理を施すことにより有機樹脂被覆膜を形成した。
上記により得られた樹脂被覆アルミニウム材のフェザリング性と耐酸密着性を、以下のようにして評価した。結果を表3に示す。
フェザリング試験
上述のようにして作成した樹脂被覆アルミニウム材を用いて缶蓋を成形し、125℃にて30分のレトルト処理を施した。その後、タブを引っ張った後の開口部における被覆膜残存幅を測定した。ここで、残存幅が0.4mm未満であれば◎、残存幅が0.4mm以上0.7mm未満であれば○、残存幅が0.7mm以上であれば×とした。○と△を合格とし、×を不合格とした。
上述のようにして作成した樹脂被覆アルミニウム材を用いて缶蓋を成形し、125℃にて30分のレトルト処理を施した。その後、タブを引っ張った後の開口部における被覆膜残存幅を測定した。ここで、残存幅が0.4mm未満であれば◎、残存幅が0.4mm以上0.7mm未満であれば○、残存幅が0.7mm以上であれば×とした。○と△を合格とし、×を不合格とした。
耐酸密着試験
カッターを用いて樹脂被覆膜面にアルミニウム基材まで到達する傷を入れ、0.5重量%食塩及び1重量%クエン酸の混合水溶液に70℃にて72時間浸漬後、樹脂被覆膜に生じた傷部の腐食幅を測定し、その幅で評価を行った。そして、腐食幅が0.3mm未満であれば◎、腐食幅が0.3mm以上0.5mm未満であれば○、腐食幅が0.5mm以上であれば×とした。○と△を合格とし、×を不合格とした。
カッターを用いて樹脂被覆膜面にアルミニウム基材まで到達する傷を入れ、0.5重量%食塩及び1重量%クエン酸の混合水溶液に70℃にて72時間浸漬後、樹脂被覆膜に生じた傷部の腐食幅を測定し、その幅で評価を行った。そして、腐食幅が0.3mm未満であれば◎、腐食幅が0.3mm以上0.5mm未満であれば○、腐食幅が0.5mm以上であれば×とした。○と△を合格とし、×を不合格とした。
実施例1〜8では、適切な電解質組成を有する電解溶液を用いて、膜厚10〜200nm、空孔率1〜15%の無孔質陽極酸化皮膜が得られた。このようにして得られた樹脂被覆用アルミニウム材を用いて、その上にエポキシ系水性塗料及びPETフィルムのラミネートによる有機樹脂被覆膜を形成した樹脂被覆アルミニウム材では、有機樹脂被覆膜の良好なフェザリング性及び耐酸密着性を得ることができた。
比較例1では無孔質陽極酸化皮膜の膜厚が厚過ぎたため、エポキシ系の有機樹脂被覆膜のフェザリング性と、PETフィルムの有機樹脂被覆膜のフェザリング性と耐酸密着性が不合格であった。比較例2では陽極酸化皮膜の空孔率が多き過ぎたため、エポキシ系樹脂被覆膜のフェザリング性と耐酸密着性、ならびに、PETフィルムの樹脂被覆膜の耐酸密着性が不合格であった。
以上詳細に説明したように、本発明に係る樹脂被覆用アルミニウム材及び樹脂被覆アルミニウム材は、有害なクロムを使用せずにリン酸クロメート処理による場合と同等以上の密着性及び耐食性を有する。
Claims (8)
- アルミニウム又はアルミニウム合金から成るアルミニウム基材と、当該アルミニウム基材の少なくとも一方の表面に形成された陽極酸化皮膜とを備えた樹脂被覆用アルミニウム材であって、
前記陽極酸化皮膜が、酒石酸塩、ホウ酸塩、リン酸塩、アジピン酸塩から成る群から選択される1種又は2種以上を含む主剤と、下記式(1)で示される構造を有する有機ケイ素化合物から選択される1種又は2種以上を含む副剤とを含有する電解溶液を用いた電解によって形成された無孔質陽極酸化皮膜であり、当該無孔質陽極酸化皮膜が、3〜200nmの膜厚と15%以下の空孔率を有することを特徴とする樹脂被覆用アルミニウム材。
- 前記主剤の濃度が0.5〜20重量%であり、当該主剤の濃度に対する副剤の濃度の比率が0.2〜0.8である、請求項1に記載の樹脂被覆用アルミニウム材。
- 前記有機ケイ素化合物の有機官能基Yが、アミノ基、ビニル基、メタクリル基、エポキシ基、メルカプト基から成る群から選択されるいずれかの基である、請求項1又は2に記載の樹脂被覆用アルミニウム材。
- 請求項1〜3のいずれか一項に記載の樹脂被覆用アルミニウム材における無孔質陽極酸化皮膜上に、有機樹脂被覆膜を更に設けたことを特徴とする樹脂被覆アルミニウム材。
- アルミニウム又はアルミニウム合金から成るアルミニウム基材を陽極とし、酒石酸塩、ホウ酸塩、リン酸塩、アジピン酸塩から成る群から選択される1種又は2種以上を含む主剤と、下記式(1)で示される構造を有する有機ケイ素化合物から選択される1種又は2種以上を含む副剤とを含有する電解溶液を用いて、3〜200Vの定電圧で0.3〜20A/dm2の範囲の電解密度において直流定電圧電解を施すことによって、前記アルミニウム基材の少なくとも一方の表面に無孔質陽極酸化皮膜を形成する工程と、
前記無孔質陽極酸化皮膜を形成したアルミニウム基材を20〜250℃で乾燥する乾燥工程と、を含むことを特徴とする樹脂被覆用アルミニウム材の製造方法。
- 前記主剤の濃度が0.5〜20重量%であり、当該主剤の濃度に対する副剤の濃度の比率が0.2〜0.8であり、電解溶液の温度が20〜80℃である、請求項5に記載の樹脂被覆用アルミニウム材の製造方法。
- 前記有機ケイ素化合物の有機官能基Yが、アミノ基、ビニル基、メタクリル基、エポキシ基、メルカプト基から成る群から選択されるいずれかの基である、請求項5又は6に記載の樹脂被覆用アルミニウム材の製造方法。
- 請求項5〜7に記載の樹脂被覆用アルミニウム材の製造方法における乾燥工程の後に、前記無孔質陽極酸化皮膜上に有機樹脂被覆膜を被覆する工程を更に含むことを特徴とする樹脂被覆アルミニウム材の製造方法。
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-
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