JP6322427B2 - 樹脂被覆アルミニウム板の製造方法 - Google Patents

樹脂被覆アルミニウム板の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、コンデンサケース、各種センサーキャップ材などの深絞り加工に用いて好適な樹脂被覆アルミニウム板の製造方法に関する。
コンデンサケース、各種センサーキャップ材などの外装材には、加工性に優れるアルミニウム板が用いられる。このようなアルミニウム板の表面には、絶縁性、耐食性、印字性等の性能確保を目的に、エポキシなどの樹脂被覆が施される。樹脂被覆は、アルミニウム板の加工後に塗装またはラミネートにより形成される場合もあるが、生産性向上のため、加工前に塗装(プレコート)により形成されるのが主流になりつつある。このような樹脂被覆アルミニウム板として、例えば特許文献1〜特許文献3に記載のものがある。
特許文献1及び特許文献2には、化成皮膜による下地皮膜が形成されたアルミニウム板に樹脂層が形成されたものが記載されている。化成皮膜としては通常のクロメート処理等が挙げられ、樹脂としてはエポキシ系の樹脂が用いられている。
特許文献1では、樹脂の数平均分子量が5000〜30000であり、潤滑剤を樹脂100重量部に対し0.1〜10重量部含有し、この樹脂層の引張強度が40N/mm2以上、伸びが2%以上、厚さが3〜30μmであり、樹脂被覆アルミニウム板を圧下率40%まで圧延した場合の碁盤目試験での碁盤目残存率が60%以上であることが記載されている。
特許文献2では、樹脂塗膜として、(a)数平均分子量30000〜80000、塗膜のFT−IR分析において830cm-1の吸光度h1、750cm-1の吸光度h2の比h2/h1が0.1〜10のエポキシ樹脂、(b)数平均分子量7000〜30000、ガラス転移温度が−20℃以上のポリエステル樹脂、(c)アミノ樹脂、(d)イソシアネート樹脂を含有する混合物の硬化物であり、(a)〜(d)の合計含有量を100質量部とすると、(a)70〜98質量部、(b)0〜20質量部、(c)0〜20質量部、(d)2〜20質量部を含有することが記載されている。
これら特許文献に記載のものに対して、本出願人は、純アルミニウムまたはアルミニウム合金の表面に有孔率5%以下の無孔質陽極酸化皮膜を形成し、その上層に数平均分子量が2000〜100000であるエポキシ系樹脂をシランカップリング剤を介して被覆することにより、エポキシ系樹脂の密着力を高めたものを提案した(特許文献3)。この場合、無孔質陽極酸化皮膜の膜厚が30〜200nm、シランカップリング剤の無孔質陽極酸化皮膜上への塗布量が0.5〜10mg/m2、エポキシ系樹脂の数平均分子量が5000〜80000でその被覆の厚さが2〜20μmであるのが好ましい。
特開2006−334917号公報 特開2010−111111号公報 特開2010−125722号公報
深絞り比の高いコンデンサケースなど、高加工の用途には、樹脂被覆アルミニウム板の塗膜加工性を高める必要があり、一般には例えば硬化樹脂の柔軟性を高めることが行われる。しかしながら、被覆樹脂が軟質である場合には、樹脂被覆アルミニウム板のハンドリング時、洗浄時に当たりキズが生じたり、洗浄溶剤に対する耐侵食性が低下して樹脂が軟化することによりブロッキングが生じたりするおそれがある。
本発明は、キズやブロッキングの発生を抑えながら、塗膜の加工性を向上させ、深絞り比の高いコンデンサケースなどの製造に好適な樹脂被覆アルミニウム板を提供することを目的とする。
本発明の製造方法によって製造される樹脂被覆アルミニウム板は、純アルミニウムまたはアルミニウム合金の表面に陽極酸化皮膜が形成されているとともに、この陽極酸化皮膜上に膜厚20μm以下の樹脂膜が形成されてなる樹脂被覆アルミニウム板であって、前記樹脂膜は、エポキシ系樹脂を主成分とし、添加剤としてメラミン系樹脂をこの樹脂膜の総重量に対して1〜15質量%の割合で含み、前記樹脂膜において、最表面から前記膜厚の10%以内の範囲を表層部、この表層部を除いた部分を深層部とし、X線光電子分光により求めたメラミン系樹脂由来の炭素濃度を、前記表層部においてCs、前記深層部においてCiとすると、1.5<(Cs/Ci)≦20である。
樹脂の加工性を保つには、硬化を適度にする必要があるが、架橋密度が低いことにより表面の硬度が不十分となって当たりキズが生じたり、耐薬品性が劣化して洗浄ブロッキング(「くっつき」によるハンドリング性悪化)が生じたりする。これに対して、本発明では、表層に硬化性の高いメラミン系樹脂の濃縮層を形成することにより、内部の加工性を保ちながら表層の硬度・耐薬品性を向上させることができる。
この樹脂被覆アルミニウム板において、前記エポキシ系樹脂が5%〜30%の変性部分を含み、その変性種がポリエステル変性またはウレタン変性であることが好ましい。
また、この樹脂被覆アルミニウム板において、前記陽極酸化皮膜が、20nm〜150nmの膜厚の有孔率5%以下の無孔質陽極酸化皮膜であり、前記樹脂膜は、前記無孔質陽極酸化皮膜上に0.5mg/m2〜10mg/m2の塗布量のシランカップリング剤を介して設けられていることが好ましい。
本発明の樹脂被覆アルミニウム板の構成の限定理由について説明する。
[純アルミニウムまたはアルミニウム合金」
本発明では、基材として純アルミニウムまたはアルミニウム合金が用いられる。純アルミニウム基材としては純度99.0%以上の純アルミニウムを用いることができる。また、アルミニウム合金基材としては、種々のアルミニウム合金を用いることができ、本発明としては特にその組成が限定されるものではない。好適には、1000系、3000系(Al−Mn系)合金、5000系(Al−Mg系)合金などを挙げることができる。以下では、純アルミニウムまたはアルミニウム合金を単にアルミニウムと表記する。
[陽極酸化皮膜]
アルミニウム板の表面には、下地として陽極酸化皮膜が設けられる。この場合、陽極酸化皮膜は、20nm〜150nmの膜厚の有孔率5%以下の無孔質陽極酸化皮膜であるのがよい。無孔質陽極酸化皮膜とは、皮膜が均一に形成された部位の断面観察において、皮膜表面からアルミニウム素地に向けて、規則的に形成される孔(通常開口部は1nm〜10nmで皮膜厚さに対して60%以上の深さを有する)が5%(表面から見た孔の総面積の比率)以下(孔が存在しないものも含まれる)の無孔質な皮膜である。有孔率がゼロ%の無孔質な皮膜は、有孔率が数%の皮膜に対して、格段に耐食性に優れるのでより好ましい。
無孔質陽極酸化皮膜が薄いと、均一な皮膜形成が難しく、樹脂との密着性が低下する。そのため、膜厚は20nm以上が好ましい。一方、膜厚が厚いと、深絞り加工時に陽極酸化皮膜のクラックが発生し、樹脂との密着性が低下する。そのため、膜厚は150nm以下が好ましい。
[樹脂膜]
樹脂膜は、高温高湿下での耐久性・耐熱性向上、電子部品表面の絶縁性確保等のために設けられる。この樹脂膜の厚さは、性能を確保するため適切な厚さが望ましい。厚さが薄いと、ケースなどの深絞り加工時に樹脂に割れが生じやすく、性能が劣る。一方、樹脂膜が厚過ぎると経済的に不合理である。このため20μm以下が好ましい。
変性エポキシ樹脂は、この樹脂膜自体の伸びを改善し、可塑性をさらに向上させて、密着性、耐肌荒れ性を良くする。変性の内容としては、例えば、ポリエステル変性、ウレタン変性などが挙げられる。変性率が高くなり過ぎると、耐熱性や耐溶剤性が劣化するおそれがあるので、5%〜30%の変性率とするのが好ましい。
[シランカップリング剤]
無孔質陽極酸化皮膜にシランカップリング剤を塗布した上に樹脂膜が設けられていることで、無孔質陽極酸化皮膜に対してエポキシ樹脂の高い密着性が得られ、絞り比の高いケース成形が可能となる。
シランカップリング剤にはアミノ系、エポキシ系、アクリル系等を用いることができ、本発明としては特定のものに限定されるものではない。シランカップリング剤の塗布量は、その機能を良好にするため適量が望ましい。少ないと密着性向上の効果は認められないため、0.5mg/m2以上が好ましく、1mg/m2以上がより好ましい。一方、シランカップリング剤をあまりに多く塗布すると、シランカップリング剤自体の凝集力が低下する場合があり、塗膜が剥離しやすくなる。このため、10mg/m2以下が好ましく、5mg/m2以下がより好ましい。
本発明に係る樹脂被覆アルミニウム板の製造方法は、前記樹脂被覆アルミニウム板の製造方法であって、純アルミニウムまたはアルミニウム合金を陽極酸化して陽極酸化皮膜を形成し、前記陽極酸化皮膜上に、エポキシ系樹脂を主成分とし、添加剤としてメラミン系樹脂を前記樹脂膜の総重量に対して1〜15質量%の割合で含む塗料を塗布した後に、200℃〜300℃で1回目の加熱処理を行い、その後、冷却した後に、前記1回目の加熱処理時の温度より10℃以上低い150℃〜290℃の温度で2回目の加熱処理を前記1回目の加熱処理より30%以上長い時間行うことにより、前記樹脂膜を形成する。
陽極酸化皮膜が施されたアルミニウム板に塗料を塗布した後、2回の加熱処理により塗料を焼き付けて樹脂膜を形成することにより、Cs/Ciを前述した適正な値にすることができる。1回の加熱処理だけでは、メラミン系樹脂の表層部への濃縮が不十分で耐溶剤性に劣り、2回を超えて加熱処理すると、硬化が促進され加工性が低下する。
この製造方法において、前記塗料にポリプロピレンワックスを0.1質量%〜10質量%含有させておくとよい。樹脂膜の滑り性を向上させて、加工性を良くするためである。
この製造方法において、前記エポキシ系樹脂に5%〜30%の変性部分を含有させ、その変性種をポリエステル変性またはウレタン変性とすることが好ましい。この場合、変性エポキシ樹脂によって樹脂膜自体の伸びを改善し、可塑性をさらに向上させて、密着性、耐肌荒れ性を良くすることができる。
また、この製造方法において、前記陽極酸化皮膜を20nm〜150nmの膜厚の有孔率5%以下の無孔質陽極酸化皮膜とし、前記無孔質陽極酸化皮膜上に0.5mg/m2〜10mg/m2の塗布量のシランカップリング剤を塗布した後に、前記塗料を塗布することが好ましい。無孔質陽極酸化被膜は、耐食性に優れるが、厚過ぎると硬度が高く割れを発生させるおそれがあるためである。また、シランカップリング剤により、陽極酸化皮膜と樹脂膜との密着性を向上させることができる。
本発明によれば、表面の硬度が高く内部は軟質な樹脂膜で被覆されているので、キズやブロッキングの発生を抑えながら、深絞り比の高いコンデンサケースなどの製造が可能となる。
本発明に係る樹脂被覆アルミニウム板の表面近傍を示す断面図である。
以下、本発明に係る樹脂被覆アルミニウム板の一実施形態を説明する。この樹脂被覆アルミニウム板10は、純アルミニウムまたはアルミニウム合金の板材11の表面に有孔率5%以下の無孔質陽極酸化皮膜12が形成されているとともに、この無孔質陽極酸化皮膜12の上に膜厚tが20μm以下である樹脂膜13が形成されてなる。樹脂膜13はエポキシ系樹脂を主成分とし、添加剤としてメラミン系樹脂を樹脂膜13の総重量に対して5質量%〜15質量%の割合で含むとともに、樹脂膜13において、最表面から膜厚tの10%以内の範囲を表層部A、この表層部を除いた部分を深層部Bとし、X線光電子分光により求めたメラミン系樹脂由来の炭素濃度を、表層部AにおいてCs、深層部BにおいてCiとすると、1.5<(Cs/Ci)≦20である。
この樹脂被覆アルミニウム板では、アルミニウムとして、1000系、3000系(Al−Mn系)合金、5000系(Al−Mg系)合金などが用いられ、陽極酸化処理により陽極酸化皮膜が形成されている。
[陽極酸化]
陽極酸化処理に先立って前処理を行う。前処理は特に限定されるものではない。例えば、アルカリ性の脱脂液で洗浄し、水酸化ナトリウム水溶液でアルカリエッチング、硝酸水溶液でデスマット処理を行う。
陽極酸化処理は、酸化皮膜の溶解力が低い電解液を用いて行われ、電圧を調整して好適には厚さ20nm〜150nmの無孔質陽極酸化皮膜を形成する。
陽極酸化の電解液は、リン酸アンモニウム、リン酸水素アンモニウム、リン酸二水素アンモニウム、リン酸アンモニウムといったリン酸塩、もしくは珪酸ナトリウム、珪酸カリウム、珪酸リチウムといった珪酸塩の水溶液であれば、酸化皮膜の溶解力が低く、有孔率5%以下の無孔質陽極酸化皮膜12が形成される。
陽極酸化皮膜12の膜厚は、好ましくは、20nm以上100nm以下とする。
[シランカップリング剤]
陽極酸化皮膜12表面に、アミノ系、エポキシ系、アクリル系等のシランカップリング剤14を塗布し、陽極酸化皮膜12と樹脂膜13との密着性を向上させる。シランカップリング剤14の塗布量は、好ましくは0.5mg/m2以上10mg/m2以下とする。塗布量が下限未満の場合は樹脂膜13との密着性を向上させる効果が十分に得られず、上限を超過した場合は脆弱層が形成されやすく、密着性が低下するおそれがある。
[樹脂膜]
シランカップリング剤14を塗布した板材11の表面に、エポキシ系樹脂を主成分とする樹脂膜13を形成する。この樹脂膜13は、エポキシ系樹脂を主成分とし、形成する樹脂膜13の総重量に対して1質量%〜15質量%の割合でメラミン系樹脂(添加剤)を含む塗料を塗布して、加熱乾燥により焼き付けることにより形成されるが、メラミン系樹脂を含有しエポキシ系樹脂を主成分とするフィルムを加熱溶解して貼り合わせてもよい。塗布方法は、ロールコート法、スプレーコート法、バーコート法、ディップ法、などを用いることができる。
この樹脂膜13は、板材11の保護層として耐食性、絶縁性、耐キズ性等を発揮するが、厚過ぎると経済的に不利であるとともに塗装不具合が発生しやすいので、好ましい厚さは3μm以上20μm以下とする。
形成された樹脂膜13において、エポキシ系樹脂が5%〜30%の変性部分を含み、その変性種がポリエステル変性またはウレタン変性である。変性エポキシ樹脂を用いることにより、樹脂膜13自体の伸びを改善し、可塑性をさらに向上させて、密着性、耐肌荒れ性を良くする。しかしながら、変性率が高くなり過ぎると耐熱性や耐溶剤性が劣化するおそれがある。一方、変性率が低すぎると、密着性、加工性の向上が見込めない。したがって、樹脂膜13におけるエポキシ樹脂の変性率は、5%〜30%とするのが好ましい。
添加剤としてのメラミン系樹脂は、樹脂膜13における耐溶剤性及び硬度の向上に寄与する。このメラミン系樹脂が樹脂膜13の表層において濃化することにより、表層のみで硬化及び耐溶剤特性が向上する。これに対して、メラミン系樹脂の添加量が少なすぎると、耐溶剤性が低下したり、硬度が不足したりするおそれがある。一方、メラミン系樹脂の添加量が多すぎると、加熱処理コストが増大するとともに、熱変色が生じるおそれもある。したがって、メラミン系樹脂の添加量は、樹脂膜13の総重量に対して1質量%〜15質量%とする。なお上記と同様の理由で、メラミン系樹脂の添加量を3質量%〜10質量%とすることがより好ましい。
樹脂膜13におけるメラミン系樹脂由来の炭素濃度は、メラミン系樹脂が濃化する表層で高く、内部で低くなる。X線光電子分光(XPS)により求めた炭素濃度を、樹脂膜13の最表面から膜厚tの10%以内の表層部AにおいてCs、樹脂膜13のうち表層部Aを除いた深層部BにおいてCiとした場合、
1.5<(Cs/Ci)≦20
とする。樹脂膜13において、膜厚tに対してメラミン系樹脂由来炭素濃度がこのように分布することにより、すなわち、メラミン系樹脂が表層で濃化することにより、樹脂膜13は、板材11に付着する内部では軟質で板材11の変形に追従するのでひび割れの発生が抑えられるとともに、表面部分では硬度が高く、ハンドリング時に他の部材に付着するブロッキングやキズの発生が抑えられる。
[樹脂膜の焼き付け方法]
樹脂膜は13、前述した塗料をロールコート法等により塗布して、加熱乾燥により焼き付けることにより形成される。
この場合、この塗料の焼き付けにおいては、加熱処理を2回に分けて行うことが重要である。すなわち、塗料を塗布した後に、200℃〜300℃で1回目の加熱処理を行い、その後、冷却した後に2回目の加熱処理を行う。この2回目の加熱処理は、温度が1回目の加熱処理時の温度より10℃以上低く、150℃〜290℃とし、時間は、1回目の加熱処理より30%以上長い時間とする。例えば、1回目の加熱処理の時間が10秒〜40秒に対して、2回目の加熱処理の時間は13秒〜70秒とする。
2回の加熱処理としたのは、Cs/Ciを前述した適正な値にするためであり、1回の加熱処理だけでは、メラミン系樹脂の表層部への濃縮が不十分で耐溶剤性に劣り、2回を超えて加熱処理すると、硬化が促進され加工性が低下する。
各回の加熱条件において、1回目の加熱温度を200℃〜300℃としたのは、200℃未満だと樹脂本体の架橋反応が十分進まず硬化が不十分なのに対し、逆に300℃を超えた場合は硬化し過ぎるために加工時の基盤密着度や成形性が低下したり、被覆樹脂の熱変色(黄変)が問題となるからである。2回目の加熱温度を150℃〜290℃としたのは、1回目の加熱で得られた加工に好適な樹脂本体の密着度や成形性を、必要以上に硬化させ変化させることなく、表面近傍にメラミンを更に拡散・濃縮させることにより、表面の耐溶剤性を高めブロッキングやキズの発生を抑制することができるからである。150℃未満ではメラミン拡散効果が十分でなく、290℃を超えると前述した密着性・加工性の低下、変色を招くことになる。2回目の加熱処理を1回目の加熱処理より30%以上長くすることにより、低温でもよりメラミンの濃縮を促進させ、前述の効果を高めることができる。
また、1回目の加熱処理と2回目の加熱処理との間で、樹脂膜13の表面が100℃以下の温度となるまで冷却する。この冷却を介さずに連続的に加熱処理すると、樹脂内部に残存する熱により、2回目の加熱で予測以上に硬化が進んで成形性の低下を招く恐れがある。
このようにして得られる樹脂被覆アルミニウム板10は、絞り加工などの成形加工を経て電解コンデンサケースなどに好適に利用される。但し、本発明の樹脂被覆アルミニウム板としては、利用分野がこれに限定されるものではなく、電化製品、容器、機械部品などの用途にも利用することができる。
諸条件を変更しながら、樹脂被覆アルミニウム板を製造する実験を行った。得られた実施例1〜21及び比較例1〜10のサンプルについて、表1及び表2を参照しながら説明する。
[前処理]
すべてのサンプルにおいて、厚さ0.3mmのJIS 1100アルミニウム板を、5%水酸化ナトリウム水溶液で50℃、10秒間エッチングして脱脂処理した後、10秒間水洗した。さらに、10%硝酸溶液に室温で10秒間浸漬して中和した後、10秒間水洗して乾燥した。
[陽極酸化]
次に、各サンプルに対して、ケイ酸塩水溶液を電解液として、所定の電解電圧で陽極酸化処理を行った。形成された無孔質陽極酸化皮膜の膜厚は、電解時間に対応する(表1参照)。
[下地処理]
陽極酸化処理後、10秒間水洗して乾燥し、さらにアミノ系、エポキシ系、アクリル系のシランカップリング剤を、浸漬式コーティング法により塗布した。シランカップリング剤の塗布量は、表1に示す通りである。
[樹脂膜]
エポキシ系樹脂を主成分とし、添加剤としてメラミン系樹脂を前記樹脂膜の総重量に対して所定の割合で含む塗料をバーコータ塗布した後、表1に示す条件の焼き付け工程により焼き付け、樹脂膜を形成した。各サンプルに塗布した各塗料におけるメラミンの添加量は、塗料の総重量における質量割合で、表1に示す通りである。
以上のように製造した各樹脂被覆アルミニウム板について、以下のような評価を行った。
[メラミン系樹脂の分布測定]
各樹脂被覆アルミニウム板の樹脂膜におけるメラミン系樹脂の分布を、次のように測定した。XPS(X線光電子分光)により炭素(C)のスペクトルを測定して、CN結合が多いメラミン系樹脂のものを波形分離し、表層部Aの炭素濃度Csと深層部Bの炭素濃度Ciとを測定し、その比Cs/Ciを求めた。結果を表1に示す。Cs/Ciの値が大きいほど、樹脂膜の表層におけるメラミンが多いと考えられる。
[硬度の測定]
樹脂被覆アルミニウム板を洗浄溶剤に所定時間浸漬した後、鉛筆引掻き硬度測定(JIS K5600)を行った。結果を表2に示す。この結果が3H以上であったサンプルを合格、2H以下であったサンプルを不合格とした。
[加工密着度の測定]
表2に示す加工密着度は、樹脂被覆アルミニウム板を圧延率70%で圧延し、碁盤目テープ剥離法により、樹脂膜の残マス数をカウントし、100分率で表示した。この結果が50%以上であったサンプルを合格、50%未満であったサンプルを不合格とした。
[耐溶剤性]
樹脂被覆アルミニウム板の小片サンプル(約5cm角)を2枚1組として、向かい合わせた樹脂膜間に洗浄溶剤を3〜5μリットル/cm2程度滴下し、2枚を重ね合わせて固定した状態で、50〜100℃で30分間乾燥させた。乾燥後、2枚の樹脂被覆アルミニウム板を手で剥離し、剥離抵抗を5段階で評価した。評価は、剥離抵抗が低い順に、
1:全く抵抗なく剥離
2:少し抵抗がある(剥離音なし)
3:抵抗ある(剥離音有り)
4:抵抗大きい(板がやや曲がる)
5:剥離困難
とし、この結果が1〜3であったサンプルを合格、4〜5であったサンプルを不合格とした。結果を表2に示す。洗浄溶剤としてはエタノール系を用いたが、イソパラフィン炭化水素系などを用いてもよい。
[成形性]
各実施例及び比較例の樹脂被覆アルミニウム板を円板状に切り抜いた後、深絞り成形プレスを用いて、樹脂被覆面が外周面となるように、径:高さ=1:1.5の円筒状のコンデンサケースを成形した。さらに、成形後のコンデンサケースを洗浄溶剤に浸漬、攪拌することにより、加工油を除去した。この加工・洗浄後のコンデンサケースについて外観検査を行い、塗膜の剥がれ、肌荒れ、キズ、ケース同士のくっつきが無いものを合格とし、いずれかの不具合が見られたものを不合格と判定した。その結果を表2に示す。表の括弧内は不合格の原因を示す。
Figure 0006322427
Figure 0006322427
樹脂膜の主成分であるエポキシ系樹脂の変性率が異なる実施例1〜3から、変性率が低いと硬度が高くなり、変性率が高いと耐溶剤性がやや低下するが、変性率5%〜28%の範囲では良品を製造できることが確認できた。
樹脂膜の厚さについて、実施例1,4,5を比較すると、実施例4では樹脂膜の厚さが20μmと厚く、実施例5では樹脂膜の厚さが5μmと薄いが、この範囲の厚さであれば良品の樹脂被覆アルミニウム板を製造できることが確認できた。
メラミン系樹脂の添加量について、実施例1,6,8を比較すると、実施例6では1.2質量%と添加量が少なく、実施例8では14質量%と添加量が多いが、この範囲の添加量であれば良品を製造できることが確認できた。一方、添加量が少なすぎる比較例1,2では硬度及び耐溶剤性が不足し、添加量が多すぎる比較例3では加工密着度が低下することが確認できた。
Cs/Ciについて、値が2である実施例6,7では問題がなかったが、Cs/Ciの値が1.2である比較例2では硬度及び耐溶剤性が不足することが確認できた。一方、Cs/Ciが25である比較例6では、加工密着度がやや低下するものの硬度及び耐溶剤性は問題がなかったが、加熱時に黄変が発生することが確認できた。
陽極酸化被膜の皮膜厚さについて、20nmと薄い実施例9と、150nmとやや厚い実施例10とでは、製造された樹脂被覆アルミニウム板の品質に問題がなかった。一方、皮膜厚さが200nmである実施例18では、加工密着度がやや低下したが、良品とできる範囲であった。
シランカップリング剤の塗布量について、0.8mg/m2〜9mg/m2では、製造された樹脂被覆アルミニウム板の品質に問題がなかった。一方、0mg/m2である実施例12では、加工密着度がやや低下したが、良品とできる範囲であった。
以上説明したように、本発明の表面の硬度が高く内部は軟質な樹脂膜で被覆されている樹脂被覆アルミニウム板により、キズやブロッキングの発生を抑えながら、深絞り比の高いコンデンサケースなどの製造が可能となる。
なお、本発明は前記実施形態の構成のものに限定されるものではなく、細部構成においては、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
10 樹脂被覆アルミニウム板
11 板材
12 無孔質陽極酸化皮膜
13 樹脂膜
14 シランカップリング剤
A 表層部
B 深層部

Claims (4)

  1. 純アルミニウムまたはアルミニウム合金の表面に陽極酸化皮膜が形成されているとともに、この陽極酸化皮膜上に膜厚20μm以下の樹脂膜が形成されてなり、前記樹脂膜は、エポキシ系樹脂を主成分とし、添加剤としてメラミン系樹脂をこの樹脂膜の総重量に対して1〜15質量%の割合で含み、前記樹脂膜において、最表面から前記膜厚の10%以内の範囲を表層部、この表層部を除いた部分を深層部とし、X線光電子分光により求めたメラミン系樹脂由来の炭素濃度を、前記表層部においてCs、前記深層部においてCiとすると、1.5<(Cs/Ci)≦20である樹脂被覆アルミニウム板を製造する方法であって、
    純アルミニウムまたはアルミニウム合金を陽極酸化して陽極酸化皮膜を形成し、
    前記陽極酸化皮膜上に、エポキシ系樹脂を主成分とし、添加剤としてメラミン系樹脂を前記樹脂膜の総重量に対して5〜15質量%の割合で含む塗料を塗布した後に
    200℃〜300℃で回目の加熱処理を行い、その後、冷却した後に、前記回目の加熱処理時の温度より10℃以上低い150℃〜290℃の温度で2回目の加熱処理を前記1回目の加熱処理より30%以上長い時間行うことにより、前記樹脂膜を形成することを特徴とする樹脂被覆アルミニウム板の製造方法。
  2. 前記塗料にポリプロピレンワックスを0.1質量%〜10質量%含有させておくことを特徴とする請求項記載の樹脂被覆アルミニウム板の製造方法
  3. 前記エポキシ系樹脂に5%〜30%の変性部分を含有させ、その変性種をポリエステル変性またはウレタン変性とすることを特徴とする請求項1又は2に記載の樹脂被覆アルミニウム板の製造方法。
  4. 前記陽極酸化皮膜を20nm〜150nmの膜厚の有孔率5%以下の無孔質陽極酸化皮膜とし、前記無孔質陽極酸化皮膜上に0.5mg/m2〜10mg/m2の塗布量のシランカップリング剤を介して前記塗料を塗布することを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の樹脂被覆アルミニウム板の製造方法。
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