JP6462249B2 - 表面処理基材の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、表面処理基材の製造方法に関する。
家電製品、建材、車両、航空機、容器等の分野で用いられる基材において、表面に形成する有機樹脂層との密着性を向上させる方法として、有機樹脂層との密着性及び耐食性に優れるクロメート処理が知られているが、このようなクロメート処理に代わるノンクロム系表面処理として、たとえば、特許文献1には、アルミニウムイオンを含有する電解処理液を用いて、陰極電解処理により、基材の表面に、アルミニウムを含有する金属酸素化合物皮膜を形成する技術が開示されている。
特開2006−348360号公報
しかしながら、上記特許文献1に記載の技術では、基材上にアルミニウムを含有する金属酸素化合物皮膜を形成した後、該金属酸素化合物皮膜上に、たとえば、ポリエステルフィルムなどを用いてラミネートにより有機樹脂層を形成した場合には、金属酸素化合物皮膜と有機樹脂層との密着性が低く、レトルト処理などにより有機樹脂層が剥離し易くなってしまうという問題がある。また、該金属酸素化合物皮膜上に、たとえば、エポキシ−フェノール塗料などを用いて塗布により有機樹脂層を形成した場合において、これを飲食缶などの缶容器として用いた際には、缶容器に飲食品物を充填して長期間保存すると、基材を構成する鉄や錫が、飲食品物に含まれる硫黄と反応して硫化黒変し、外観不良が発生してしまうという問題もある。上記特許文献1に記載の技術では、電解処理液にフッ化物イオンを含有させることにより、フッ化物イオンが、電解処理液中においてアルミニウム化合物の溶解性を高めるための錯化剤として作用し、基材上に、より良好に、アルミニウムを含有する金属酸素化合物皮膜を析出させることができる。しかしながら、本発明者らが探求したところ、この金属酸素化合物皮膜はフッ素を含むアルミニウム酸素化合物(Al(OH)、Al、AlO(OH)など水酸化物や酸化物の一部がフッ素に置換されている)で形成されており、電解処理時に金属酸素化合物皮膜中に不均一部分が形成されてしまい、この不均一部分の影響によって、有機樹脂層の密着性の低下や、飲食品物が金属酸素化合物皮膜に浸透することによる硫化黒変が発生してしまうことが判明した。
本発明はこのような実状に鑑みてなされたものであり、有機樹脂層との密着性に優れ、さらに硫化黒変を抑制することができる表面処理基材の製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意検討した結果、基材上にアルミニウム及びフッ素を含有する金属酸素化合物皮膜を形成することで皮膜形成基材を得た後、得られた皮膜形成基材をアルカリ水溶液と接触させることにより、皮膜形成基材の金属酸素化合物皮膜が緻密で均一な皮膜となり、これにより、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明によれば、基材上に、アルミニウム及びフッ素を含有する金属酸素化合物皮膜を形成することで皮膜形成基材を得る皮膜形成工程と、前記皮膜形成基材を、アルカリ水溶液と接触させるアルカリ処理工程と、を有することを特徴とする表面処理基材の製造方法が提供される。
本発明の製造方法において、前記アルカリ水溶液は、pH8〜11のアルカリ水溶液であることがより好ましい。
本発明の製造方法において、前記アルカリ処理は、前記皮膜形成基材を、温度30〜60℃のアルカリ水溶液に浸漬させる処理であることがより好ましい。
本発明の製造方法において、前記アルカリ処理は、前記皮膜形成基材を、アルカリ水溶液に1秒以上浸漬させる処理であることがより好ましい。
本発明の製造方法において、前記皮膜形成工程における前記金属酸素化合物皮膜の形成を、アルミニウムイオン及びフッ化物イオンを含む電解処理液中で、前記基材に電解処理を施すことで行うことがより好ましい。
また、本発明の製造方法において、前記基材が、鋼板上に錫めっき層を形成してなる錫めっき鋼板、鋼板上にニッケルめっき層を形成してなるニッケルめっき鋼板、又は錫、ニッケル、鉄のうち少なくとも2種からなる合金層を形成してなる合金被覆鋼板であり、前記皮膜形成工程における該基材上に形成する前記金属酸素化合物皮膜を、アルミニウム量換算で1mg/m以上とすることがより好ましい。
さらに、本発明の製造方法において、前記基材が冷延鋼板であり、前記皮膜形成工程における該基材上に形成する前記金属酸素化合物皮膜を、アルミニウム量換算で15mg/m以上とすることがより好ましい。
本発明によれば、アルミニウム及びフッ素を含有する金属酸素化合物皮膜を形成した基材を、アルカリ処理することにより、金属酸素化合物皮膜を緻密で均一なものとすることができ、これにより、有機樹脂層との密着性に優れ、さらに硫化黒変を抑制することができる表面処理基材の製造方法を提供することができる。
図1は、表面にアルミニウム及びフッ素を含有する金属酸素化合物皮膜が形成された基材の断面写真である。 図2は、表面にアルミニウム及びフッ素を含有する金属酸素化合物皮膜が形成された基材について、X線光電子分光装置により測定した各元素の原子濃度を示す図である。
本発明の表面処理基材の製造方法は、基材上に、アルミニウム及びフッ素を含有する金属酸素化合物皮膜を形成することで皮膜形成基材を得る皮膜形成工程と、前記皮膜形成基材を、アルカリ水溶液と接触させるアルカリ処理工程と、を有することを特徴とする。
以下、本発明における表面処理基材の製造方法について説明する。
<皮膜形成工程>
まず、本実施形態においては、アルミニウム及びフッ素を含有する金属酸素化合物皮膜を形成するための基材を準備する。基材としては、特に限定されず、たとえば、鋼板、アルミニウム板、アルミニウム合金板などの所望の形状に加工可能な金属板が挙げられる。なお、鋼板としては、アルミキルド鋼連鋳材などをベースとした熱延鋼板、熱延鋼板を冷間圧延した冷延鋼板、熱延鋼板や冷延鋼板に錫めっき層を形成してなる錫めっき鋼板、熱延鋼板や冷延鋼板にニッケルめっき層を形成してなるニッケルめっき鋼板などを用いることができる。本実施形態においては、基材としては、これらの中でも、錫めっき鋼板、ニッケルめっき鋼板、錫、ニッケル、鉄のうち少なくとも2種からなる合金層を形成してなる合金被覆鋼板、又は少なくとも片面に鉄が露出している冷延鋼板が好ましい。
基材として錫めっき鋼板を用いる場合には、錫めっき層の錫量は、製造する表面処理基材の使用用途に応じて適宜調整すればよいが、好ましくは0.5〜20g/m、より好ましくは0.5〜15g/mである。
また、錫めっき鋼板としては、鋼板上に錫めっき層を形成した後、錫の融点以上の温度で加熱保持する加熱溶融処理を施したものを用いるのが好ましい。このような加熱溶融処理を施すことにより、鋼板を構成する鉄と、錫めっき層を構成する錫とが熱拡散することで鉄−錫合金層が形成され、このような鉄−錫合金層が形成されることにより、錫めっき鋼板は、鋼板側から順に、鉄−錫合金層、錫めっき層を有するような構成となり、耐食性が向上する。
なお、錫めっき鋼板としては、鋼板上に直接錫めっき層を形成したものであってもよいが、錫めっき鋼板の耐食性をより向上させるために、鋼板と錫めっき層との間に、ニッケルめっき層を形成したものであってもよい。このようなニッケルめっき層を形成した場合においても、錫めっき鋼板に対して上述した加熱溶融処理を施すことが好ましく、この際においては、錫めっき鋼板は、加熱溶融処理の加熱条件によって、たとえば、鋼板側から順に、鉄−ニッケル合金層、鉄−ニッケル−錫合金層を有するような構成や、鋼板側から順に、鉄−ニッケル合金層、ニッケルめっき層、ニッケル−錫合金層、錫めっき層を有するような構成とすることができ、錫めっき鋼板の耐食性がより向上する。
また、錫めっき鋼板に対しては、上述した加熱溶融処理を施した後、さらに、錫めっき層の表面に形成された酸化皮膜を除去するための清浄化処理を行うことが好ましい。清浄化処理の方法としては、たとえば、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウムなどの炭酸塩の水溶液を用いて、錫めっき鋼板を、電流密度0.5〜20A/dm、通電時間0.1〜1.0秒間の条件にて、陰極電解処理及び陽極電解処理のいずれか一方又は両方を行う方法が挙げられる。
一方、基材としてニッケルめっき鋼板を用いる場合には、ニッケルめっき層のニッケル量は、製造する表面処理基材の使用用途に応じて適宜調整すればよいが、好ましくは0.03〜10g/m、より好ましくは0.1〜5g/mである。
また、ニッケルめっき鋼板としては、鋼板上にニッケルめっき層を形成した後、ニッケルの融点以上の温度で加熱保持する加熱溶融処理を施したものを用いることが好ましい。このような加熱溶融処理を施すことにより、鋼板を構成する鉄と、ニッケルめっき層を構成するニッケルとが熱拡散して鉄−ニッケル合金層が形成され、このような鉄−ニッケル合金層が形成されることにより、ニッケルめっき鋼板は、鋼板側から順に、鉄−ニッケル合金層、ニッケルめっき層を有するような構成となり、耐食性が向上する。
本実施形態においては、上述したような基材の厚みは、特に限定されず、製造する表面処理基材の使用用途に応じて適宜選択すればよいが、好ましくは0.07〜0.4mmである。
そして、本実施形態の皮膜形成工程では、上述した基材上に、アルミニウム及びフッ素を含有する金属酸素化合物皮膜(以下、「アルミニウム酸素化合物皮膜」という。)を形成する。アルミニウム酸素化合物皮膜を形成する方法としては、特に限定されないが、アルミ酸素化合物皮膜を比較的短時間で形成することができるという点より、アルミニウムイオン及びフッ化物イオンを含む電解処理液中で、基材に陰極電解処理を施す方法が好ましい。このような陰極電解処理を施す方法においては、電解処理液に含まれるアルミニウムイオンが、フッ化物イオンを取り込みながら金属酸素化合物として基材上に析出することで、アルミニウム酸素化合物皮膜が形成されることとなる。
なお、アルミニウム酸素化合物皮膜を上述した陰極電解処理により形成する場合には、電解処理液中のアルミニウムイオンを形成するためのアルミニウム化合物としては、たとえば、硝酸アルミニウム、硫酸アルミニウムカリウム、硫酸アルミニウム、リン酸二水素アルミニウム、乳酸アルミニウム、フッ化アルミニウム、水酸化アルミニウム、酸化アルミニウム、珪酸アルミニウム、アルミン酸ナトリウムなどのアルミン酸塩、フルオロアルミニウム酸ナトリウムなどを、単独又は2つ以上を組合せて用いることができる。
また、電解処理液中のフッ化物イオンを形成するためのフッ化物としては、たとえば、フッ化ジルコニウムアンモニウム、フッ化アルミニウム、フッ化チタン、フッ化ナトリウム、フッ化水素酸、フッ化カルシウム、ヘキサフルオロ珪酸、ヘキサフルオロ珪酸ナトリウムなどを用いることができる。本実施形態においては、電解処理液にフッ化物イオンを含有させることにより、フッ化物イオンが、電解処理液中においてアルミニウム化合物の溶解性を高めるための錯化剤として作用し、基材上に、より良好にアルミ酸素化合物皮膜を析出させることができる。
なお、このような電解処理液には、アルミニウム酸素化合物皮膜の形成を阻害しない範囲で、電解処理液のpHを調整するためのpH調整剤、電解処理液の導電率を向上させるための電解質などを添加してもよい。pH調整剤としては、たとえば、硝酸水溶液やアンモニア水などが挙げられる。また、電解質としては、カルシウムイオン、乳酸イオン、塩化物イオン、硫酸イオン、ナトリウムイオン、マグネシウムイオン、硝酸イオン、アンモニウムイオンなどを発生させる化合物が挙げられるが、電解質をpH調整剤と併用して用いる場合には、電解処理液中の成分の管理が容易になるという観点より、pH調整剤に由来するイオンと同様のイオン、すなわち、硝酸イオン、アンモニウムイオンなどを発生させる化合物を用いることが好ましい。
さらに、電解処理液には、クエン酸、乳酸、酒石酸及びグリコール酸などの有機酸、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸などのカルボン酸、並びにフェノールなどの有機成分のうち、少なくとも1種以上が添加されていてもよく、これらのモノマーを構成単位とするホモポリマー、又はこれらのモノマーの少なくとも1種を構成単位として含むコポリマーが添加されていても良い。これら有機成分の中でも、特に、ポリイタコン酸および/またはポリアクリル酸が添加されていることが最も好ましい。電解処理液に、このような有機成分を添加することにより、形成されるアルミニウム酸素化合物皮膜中に有機成分を含有させることができ、これにより、アルミニウム酸素化合物皮膜上にフィルムや塗膜などの有機樹脂層を形成する場合に、アルミニウム酸素化合物皮膜と有機樹脂層との密着性を向上させることができる。
また、電解処理液のpHは、好ましくは1〜5、より好ましくは2〜4である。電解処理液のpHを上記範囲に制御することにより、電解処理液は、水溶液中の成分の安定性が向上し、アルミニウム酸素化合物皮膜の析出効率に優れたものとなる。
また、陰極電解処理を行う際における電流密度としては、特に限定されないが、好ましくは1〜30A/dm、より好ましくは1〜10A/dmである。電流密度を上記範囲とすることにより、基材上に、より良好にアルミニウム酸素化合物皮膜を形成することができる。
基材に陰極電解処理を施す際には、基材に対して設置する対極板としては、電解処理を行っている間に電解処理液に溶解しないものであれば何でもよいが、酸素過電圧が小さく電解処理液に溶解し難いという点より、酸化イリジウム又は白金で被覆されたチタン板を用いるのが好ましい。
本実施形態においては、基材上に形成するアルミニウム酸素化合物皮膜中のアルミニウム量は、特に限定されず、基材として用いる金属板の種類や、表面処理基材の用途などに応じて、適宜調整すればよい。
たとえば、基材として、上述した錫めっき鋼板又はニッケルめっき鋼板を用いる場合には、アルミニウム酸素化合物皮膜中のアルミニウム量は、好ましくは1mg/m以上、より好ましくは5mg/m以上である。この際においては、アルミニウム酸素化合物皮膜中のアルミニウム量の上限は、特に限定されないが、アルミニウム酸素化合物皮膜中のアルミニウム量が多くなりすぎると、得られる表面処理基材の溶接性が低下するおそれがあるという点や、得られる表面処理基材に有機樹脂層を被覆する場合に、表面処理基材と有機樹脂層との密着性が低下するおそれがあるという点より、好ましくは20mg/m以下、より好ましくは10mg/m以下である。
あるいは、基材として、冷延鋼板(少なくとも片面において、錫めっき層やニッケルめっき層などに覆われておらず、鉄が露出している冷延鋼板)を用いる場合には、アルミニウム酸素化合物皮膜中のアルミニウム量は、好ましくは15mg/m以上、より好ましくは20mg/m以上である。この際においては、アルミニウム酸素化合物皮膜中のアルミニウム量の上限は、特に限定されないが、アルミニウム酸素化合物皮膜中のアルミニウム量が多くなりすぎると、得られる表面処理基材に有機樹脂層を被覆する場合に、表面処理基材と有機樹脂層との密着性が低下するおそれがあるという点より、好ましくは50mg/m以下、より好ましくは40mg/m以下である。
基材上に形成するアルミニウム酸素化合物皮膜中のアルミニウム量を、上記範囲に調整する方法としては、特に限定されないが、たとえば、アルミニウム酸素化合物皮膜を陰極電解処理により形成する場合には、陰極電解処理時における電流密度、通電時間などの条件を上述した範囲に制御する方法や、電解処理液中のアルミニウムイオンの濃度を適宜調整する方法などが挙げられる。
<アルカリ処理工程>
次いで、アルカリ処理工程においては、上述した皮膜形成工程にて基材上にアルミ酸素化合物皮膜を形成することにより得られた皮膜形成基材に、アルカリ水溶液と接触させるアルカリ処理を施すことで表面処理基材を得る。
アルカリ処理の方法としては、たとえば、皮膜形成基材をアルカリ水溶液に浸漬させる方法、皮膜形成基材にアルカリ水溶液を噴射又は塗布する方法などを用いることができる。
なお、皮膜形成基材をアルカリ水溶液に接触させる際にはブラシなどを用いて皮膜形成基材をブラッシングしてもよい。また、アルカリ処理として皮膜形成基材をアルカリ水溶液に浸漬させる処理を行う場合には、アルカリ水溶液を水流ポンプ、撹拌装置、エアポンプなどを用いて流動させたり、アルカリ水溶液中で皮膜形成基材を揺動や回転させたりしてもよい。
本実施形態によれば、皮膜形成基材をアルカリ処理することにより、得られる表面処理基材について、表面に有機樹脂層を被覆する場合に、表面処理基材と有機樹脂層との密着性を向上させることができ、さらに、このような有機樹脂層を被覆した表面処理基材を飲食缶などの缶容器として用いた際に、缶容器に飲食品物を充填して長期間保存したとしても、基材を構成する鉄や錫が飲食品物に含まれる硫黄と反応することにより発生する黒変(硫化黒変)を、有効に抑制することができるようになる。
ここで、図1(A)は、皮膜形成基材に対して、アルカリ処理としてアルカリ水溶液に浸漬させる処理を施して得た表面処理基材について、表面に保護膜としてのカーボン蒸着膜を形成した後で切断し、切断した断面を透過型電子顕微鏡により測定した断面写真である。なお、図1(A)中の白抜き矢印は、表面処理基材のアルミニウム酸素化合物皮膜を示している。同様に、図1(B)は、アルカリ処理を施す前の皮膜形成基材を、透過型電子顕微鏡により測定した断面写真である。なお、図1(A)、図1(B)は、後述する実施例7、比較例1にて作製した皮膜形成基材及び表面処理基材の測定結果を示している。
図1(A)に示すように、アルカリ処理を施した表面処理基材のアルミニウム酸素化合物皮膜は、図1(B)に示すアルカリ処理を施す前の皮膜形成基材のアルミニウム酸素化合物皮膜と比較して、より緻密で均一な皮膜となっていることが確認できる。本発明者らは、アルミ酸素化合物皮膜が、フッ素を含むアルミニウム酸素化合物(Al(OH)、Al、AlO(OH)など水酸化物や酸化物の一部がフッ素に置換されている)で形成されており、電解処理時にアルミ酸素化合物皮膜中に図1(B)に示すような不均一部分が形成されてしまい、この際においては、アルミニウム酸素化合物皮膜を、有機樹脂層で被覆して飲食品物を充填させる飲食缶などに用いた場合に、アルミニウム酸素化合物皮膜中のフッ素を含む不均一部分の影響によって、有機樹脂層の密着性の低下や、飲食品物がアルミニウム酸素化合物皮膜に浸透することによる硫化黒変が発生してしまうという知見を得た。
これに対し、本発明者らが、鋭意検討を行ったところ、基材上にアルミニウム酸素化合物皮膜を形成してなる皮膜形成基材を、アルカリ処理することにより、アルミニウム酸素化合物皮膜中のフッ素を含む不均一部分を溶解及び除去することができ、アルミニウム酸素化合物皮膜を、図1(A)に示すような緻密で均一なものとすることができることを見出した。本発明は、このような知見に基づいてなされたものであり、皮膜形成基材をアルカリ処理することにより、表面処理基材を有機樹脂層で被覆して飲食品物を充填させる飲食缶などに用いた場合に、有機樹脂層の剥離を防止し、長期間保存した際における硫化黒変を有効に抑制することができるものである。
上記効果が得られるメカニズムは明らかではないが、アルカリ処理を行うことにより皮膜中のフッ素が水酸基に置換されたり、水溶液に可溶し易いフッ素を含むアルミニウム酸素化合物が皮膜中から除かれたりすることにより、金属酸素化合物皮膜を緻密で均一なものにすることが可能となると考えられる。
また、図2(A)は、皮膜形成基材に対して、アルカリ処理としてアルカリ水溶液に浸漬させる処理を施して得た表面処理基材について、表面をアルゴンガスによりエッチングしながら、X線光電子分光装置を用いて測定を行った結果を示すグラフである。図2(A)に示すグラフでは、横軸は、アルゴンガスを用いて表面処理基材を表面からエッチングした時間を示し、縦軸は、X線光電子分光装置による測定で得られたAl2p3/2ピーク、F1sピーク、Fe2p3/2ピーク、O1sピーク及びC1sピークの積分値に基づいて算出した各原子(アルミニウム,フッ素,鉄,酸素,炭素)の原子濃度を示している。同様に、図2(B)は、アルカリ処理を施す前の皮膜形成基材を、X線光電子分光装置により測定した結果を示すグラフである。なお、図2(A)、図2(B)は、後述する実施例7、比較例1にて作製した皮膜形成基材及び表面処理基材の測定結果を示している。
図2(A)に示すように、アルカリ処理を施した表面処理基材は、図2(B)に示すアルカリ処理を施す前の皮膜形成基材と比較して、F1sピークから算出されたフッ素の原子濃度が小さくなっていることが確認できる。特に、図2(B)に示す皮膜形成基材においては、フッ素原子の原子濃度は、表面に近いほど(すなわち、エッチング時間が0に近いほど)高く、内部に向かうにつれて(すなわち、エッチング時間が長くなるにつれて)低くなっているような傾斜構造となっているが、このような皮膜形成基材をアルカリ処理することにより、図2(A)に示すように、フッ素の原子濃度の傾斜構造が解消され、表面から内部にかけて全体的にフッ素の原子濃度が低くなっている。これにより、表面処理基材は、アルカリ処理によって、アルミニウム酸素化合物皮膜中におけるフッ素が含まれる不均一部分が溶解し、除去されていることが確認できる。
なお、本実施形態においては、アルカリ処理としてアルカリ水溶液に接触させる処理を行う場合には、アルカリ水溶液のpHを所定の範囲に調整することにより、より適切にアルミニウム酸素化合物皮膜を緻密で均一なものとすることができる。
特に、本実施形態においては、アルカリ処理に用いるアルカリ水溶液のpHは、好ましくは8〜11、より好ましくは8〜10である。アルカリ水溶液のpHが低すぎる場合には、アルミニウム酸素化合物皮膜中の不均一部分の溶解及び除去が不十分となってしまうおそれがある。一方、アルカリ水溶液のpHが高すぎる場合には、アルミニウム酸素化合物皮膜が過剰に溶解してしまうことで、アルミニウム酸素化合物皮膜の材料のロスが大きくなり、表面処理基材の製造歩留まりが低下してしまうおそれがある。
なお、アルカリ水溶液のpHを上記範囲に調整するためのアルカリ性化合物としては、特に限定されないが、アニモニア、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウムなどを用いることが好ましい。
また、アルカリ水溶液のpHを上記範囲に調整する際には、緩衝液を用いてもよく、緩衝液としては、リン酸及びリン酸ナトリウムを水に溶解させたリン酸緩衝液、トリスヒドロキシメチルアミノメタンの水溶液に塩酸を混合させたトリス−塩酸緩衝液、グリシン及び水酸化ナトリウムを水に溶解させたグリシン−水酸化ナトリウム緩衝液など公知の緩衝液を用いることができる。
また、アルカリ処理として皮膜形成基材をアルカリ水溶液に浸漬させる処理を行う場合には、次のような条件とすることが好ましい。すなわち、アルカリ水溶液の温度は、好ましくは30〜60℃、より好ましくは40〜60℃である。また、浸漬時間としては、好ましくは1秒以上、より好ましくは1〜5秒である。皮膜形成基材をアルカリ水溶液に浸漬させる際の温度及び浸漬時間を上記範囲とすることにより、アルミニウム酸素化合物皮膜中に存在する上述した不均一部分の溶解及び除去をより適切に行うことができ、アルミニウム酸素化合物皮膜を、より緻密で均一な皮膜とし、これにより、有機樹脂層との密着性が向上し、硫化黒変を抑制することができるという効果をより顕著なものとすることができる。
また、本実施形態においては、アルカリ処理を施した表面処理基材における、アルミニウム酸素化合物皮膜中のアルミニウム量に対するフッ素量の原子濃度比(F/Al割合)は、好ましくは0.35以下、より好ましくは0.25以下である。アルミニウム酸素化合物皮膜中のF/Al割合を上記範囲とすることにより、表面処理基材について、有機樹脂層との密着性が向上し、硫化黒変を抑制することができるという効果をより顕著なものとすることができる。
F/Al割合を求める方法としては、たとえば、表面処理基材を、X線電子分光装置により測定し、得られたピークのバックグラウンドを除いた後、各原子(アルミニウム,フッ素,鉄,酸素,炭素)に由来するピークの積分値をそれぞれ算出することで、図2(A)、図2(B)に示すように各原子の原子濃度を求め、表面処理基材の最表面付近における「フッ素の原子濃度/アルミニウムの原子濃度」を算出することでF/Al割合を得る方法が挙げられる。
以上のようにして、本実施形態においては、皮膜形成工程により、基材上に、アルミニウム及びフッ素を含有するアルミニウム酸素化合物皮膜を形成することで皮膜形成基材を形成した後、アルカリ処理工程により、得られた皮膜形成基材をアルカリ処理することにより、基材上に緻密で均一なアルミ酸素化合物皮膜が形成された表面処理基材を製造することができる。本実施形態において得られる表面処理基材は、その表面に有機樹脂層を形成した際に、有機樹脂層の密着性に優れたものとなり、さらに、長期間保存された場合においても、基材を構成する鉄や錫の硫化黒変を有効に抑制することができるものであるため、飲食缶などの缶容器の部材として好適に用いることができる。
なお、本実施形態において得られる表面処理基材は、飲食缶などの缶容器の部材として用いられる場合には、通常、表面処理基材の表面に有機樹脂層が形成される。有機樹脂層を形成するための有機樹脂としては、特に限定されず、表面処理基材の用途(たとえば、特定の内容物を充填する缶容器などの用途)に応じて適宜選択すればよいが、熱可塑性樹脂や、熱硬化性塗料などを挙げることができる。
有機樹脂層を構成するための熱可塑性樹脂としては、たとえば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリルエステル共重合体、アイオノマー等のオレフィン系樹脂フィルム、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステルフィルム、ナイロン6、ナイロン6、6、ナイロン11、ナイロン12等のポリアミドフィルム、又はポリ塩化ビニルフィルム、ポリ塩化ビニリデンフィルム等の熱可塑性樹脂の未延伸フィルムや二軸延伸フィルムなどを用いることができ、これらの中でも、イソフタル酸を共重合化してなる二軸配向あるいは無配向のポリエチレンテレフタレートが特に好ましい。なお、このような有機樹脂層を構成するための熱可塑性樹脂は、単独で用いてもよく、2つ以上を組合せて用いてもよい。
有機樹脂層を構成するための熱硬化性塗料としては、たとえば、エポキシ−フェノール系塗料、ポリエステル系塗料などを用いることができ、これらの中でも、エポキシ−フェノール樹脂が特に好ましい。
有機樹脂層の厚みは、有機樹脂層の形成に熱可塑性樹脂を用いる場合には、好ましくは3〜50μm、より好ましくは5〜40μmである。あるいは、有機樹脂層の形成に熱硬化性塗料を用いる場合には、有機樹脂層の厚みは、焼付け後の厚みで、好ましくは1〜50μm、より好ましくは3〜30μmである。有機樹脂層の厚みを上記範囲とすることにより、有機樹脂層を形成した表面処理基材を、加工性及び耐食性に優れたものとすることができる。
以下に、実施例を挙げて、本発明についてより具体的に説明するが、本発明は、これら実施例に限定されない。
なお、各特性の評価方法は、以下のとおりである。
<アルミニウム酸素化合物皮膜中のアルミニウム量の測定>
基材上にアルミニウム酸素化合物皮膜を形成してなる皮膜形成基材を、所定の処理液に浸漬させることで得た表面処理基材について、蛍光X線分析装置(リガク社製、型番:ZSX100e)を用いて、アルミニウム酸素化合物皮膜中のアルミニウム量を測定した。なお、アルミニウム酸素化合物皮膜中のアルミニウム量の測定は、後述するすべての実施例及び比較例について行った。
<アルミニウム酸素化合物皮膜中のF/Al割合の算出>
皮膜形成基材を所定の処理液に浸漬させることで得た表面処理基材について、X線電子分光装置(日本電子社製、型番:JPS−9200)を用いて、下記条件にて測定を行い、得られたピークのバックグラウンドを除いた後、各原子(アルミニウム,フッ素,鉄,酸素,炭素)に由来するピークの積分値をそれぞれ算出することで、各原子の原子濃度を求め、表面処理基材の最表面付近における「フッ素の原子濃度/アルミニウムの原子濃度」を算出することでF/Al割合を得た。また、アルミニウム酸素化合物皮膜中のF/Al割合の算出は、後述する実施例及び比較例のうち、実施例7,12及び比較例1,2,4,6についてのみ行った。
励起X線源:Mg(電圧10kV、電流12.5mA)
測定径:直径1mm
解析ソフト:SpecSurf(日本電子社製)
<レトルト密着性の評価>
表面処理基材の片面にフィルムを熱圧着することで得た有機樹脂被覆基材を、有機樹脂層が形成された面が缶の内面となるように試験片を2ピース陰圧缶の缶底の形に加工した。次いで、この缶底部を水に浸漬させ、125℃、30分間の条件にて熱水レトルト処理を行った。そして、水中から取り出した缶底部を、濃度1重量%の塩化ナトリウム水溶液に、温度37℃の条件で1日間浸漬させた。その後、缶底部を塩化ナトリウム水溶液から取り出し、ボトムラジアス部を含むように、幅40mm、長さ30mmの大きさに切り出した後、ボトムラジアス部付近の有機樹脂層の剥離の状態を目視にて観察して、以下の基準にて1〜5点の範囲で評価した。なお、レトルト密着性の評価は、後述するすべての実施例及び比較例のうち、実施例1〜9及び比較例1,2についてのみ行った。
5点:試験片の有機樹脂層の剥離割合が、長さ30mmのうち、20%未満であった。
4点:試験片の有機樹脂層の剥離割合が、長さ30mmのうち、20%以上、40%未満であった。
3点:試験片の有機樹脂層の剥離割合が、長さ30mmのうち、40%以上、60%未満であった。
2点:試験片の有機樹脂層の剥離割合が、長さ30mmのうち、60%以上、80%未満であった。
1点:試験片の有機樹脂層の剥離割合が、長さ30mmのうち、80%以上であった。
<クロスカット耐食性の評価>
表面処理基材の片面に樹脂を塗布することで得た有機樹脂被覆基材について、以下のようにしてクロスカット耐食性の評価を行った。すなわち、まず、有機樹脂被覆基材に、基材まで達する深さのクロスカット傷をつけて、クロスカットの交点部分が張出し加工部の頂点になるように、エリクセン試験機(コーティングテスター社製)により高さ3mmの張出し加工を行った。その後、張出し面をモデル液(クエン酸及び食塩をそれぞれ1.5重量%で溶解させた水溶液)に、温度70℃の環境下で70時間浸漬し、張出し加工部における腐食の程度を目視にて観察し、以下の基準にて、1〜5点の範囲で評価した。なお、クロスカット耐食性の評価は、後述する比較例3を基準(3点)として評価を行い、後述するすべての実施例及び比較例のうち、実施例10〜15及び比較例3〜6についてのみ行った。
5点:試験片の張出し加工部における腐食の程度が、比較例3より小さかった。
4点:試験片の張出し加工部における腐食の程度が、比較例3よりわずかに小さかった。
3点:試験片の張出し加工部における腐食の程度が、比較例3と同等であった。
2点:試験片の張出し加工部における腐食の程度が、比較例3よりわずかに大きかった。
1点:試験片の張出し加工部における腐食の程度が、比較例3より大きかった。
<耐硫化黒変性の評価>
表面処理基材の片面に樹脂を塗布することで得た有機樹脂被覆基材について、以下のようにして耐硫化黒変性の評価を行った。すなわち、まず、有機樹脂被覆基材を、4cm角の大きさに切断し、端面を耐酸性テープにて被覆して試験片を作製した。次いで、缶容器(東洋製罐社製、J280TULC)を準備し、準備した缶容器に、作製した試験片を入れ、試験片全体が浸漬するように鮭水煮を充填し、巻締めた後、125℃、30分間の条件にてレトルト処理を行った。その後、37℃環境下で6ヶ月間保管し、開缶後の試験片の黒変の程度を目視にて観察し、以下の基準にて、1〜5点の範囲で評価した。なお、耐硫化黒変性の評価は、後述する比較例3を基準(3点)として評価を行い、後述するすべての実施例及び比較例のうち、実施例10,11,15及び比較例3〜6についてのみ行った。
5点:試験片の黒変の程度が、比較例3より小さかった。
4点:試験片の黒変の程度が、比較例3よりわずかに小さかった。
3点:試験片の黒変の程度が、比較例3と同等であった。
2点:試験片の黒変の程度が、比較例3よりわずかに大きかった。
1点:試験片の黒変の程度が、比較例3より大きかった。
《実施例1》
基材として、低炭素冷延鋼板(厚さ0.225mm、幅200mm)を準備した。
次いで、準備した基材を、アルカリ電解脱脂により脱脂し、硫酸水溶液に浸漬させることで酸洗した。その後、下記条件にて、基材を電解処理液に浸漬させて陰極電解処理を行うことにより、基材の両面にアルミニウム酸素化合物皮膜を形成して皮膜形成基材を得た。
電解処理液:アルミニウム化合物として硝酸アルミニウムを、フッ化物としてフッ化ナトリウムをそれぞれ溶解させて得た、アルミニウムイオン濃度2,000重量ppm、フッ化物イオン濃度2,500重量ppmの水溶液
電解処理液のpH:3.0
電解処理液の温度:40℃
電流密度:4A/dm
トータル通電時間:0.45秒(0.15秒通電、0.5秒通電停止のサイクルを3回繰り返した際の合計の通電時間)
そして、得られた皮膜形成基材を、下記条件にて、処理液に浸漬させることでアルカリ処理し、その後、水洗及び乾燥させることで、表面処理基材を得た。
処理液:炭酸水素ナトリウム水溶液
処理液のpH:8
処理液の温度:40℃
浸漬時間:1秒
次いで、得られた表面処理基材について、上述した方法に従って、アルミニウム酸素化合物皮膜中のアルミニウム量の測定を行った。結果を表1に示す。
そして、得られた表面処理基材を250℃に加熱し、表面処理基材の一方の面上に、ラミネートロールを用いて、イソフタル酸を15mol%共重合化してなる無配向のポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(厚さ20μm)を熱圧着し、直ちに水冷することにより、有機樹脂層を形成した。これにより、本実施例においては、表面処理基材の一方の面のみに有機樹脂層が形成され、もう一方の面はアルミニウム酸素化合物皮膜が露出した有機樹脂被覆基材を得た。次いで、このようにして得られた有機樹脂被覆基材について、上述した方法にしたがって、レトルト密着性の評価を行った。結果を表1に示す。
《実施例2〜7》
実施例1と同じ低炭素冷延鋼板上にアルミニウム酸素化合物皮膜を形成してなる皮膜形成基材を、処理液に浸漬させる際において、処理液の種類、pH、温度及び浸漬時間を表1に示すように変更した以外は、実施例1と同様にして表面処理基材及び有機樹脂被覆基材を作製し、同様に評価を行った。なお、実施例7においては、上述した方法にしたがって、アルミニウム酸素化合物皮膜中のF/Al割合の算出も行った。結果を表1に示す。
《実施例8》
実施例1と同じ低炭素冷延鋼板上にアルミニウム酸素化合物皮膜を形成する際において、アルミニウム酸素化合物皮膜を形成するための陰極電解処理時のトータル通電時間を0.16秒(0.08秒通電、0.5秒通電停止のサイクルを2回繰り返した際の合計の通電時間)とし、さらに、皮膜形成基材を処理液に浸漬させる際において、処理液の種類及びpHを表1に示すように変更した以外は、実施例1と同様にして表面処理基材及び有機樹脂被覆基材を作製し、同様に評価を行った。結果を表1に示す。
《実施例9》
実施例1と同じ低炭素冷延鋼板上にアルミニウム酸素化合物皮膜を形成してなる皮膜形成基材を処理液に浸漬させる際において、処理液の種類、pH、温度及び浸漬時間を表1に示すように変更した以外は、実施例1と同様にして表面処理基材及び有機樹脂被覆基材を作製し、同様に評価を行った。結果を表1に示す。
《比較例1,2》
実施例1と同じ低炭素冷延鋼板上にアルミニウム酸素化合物皮膜を形成してなる皮膜形成基材を処理液に浸漬させる際において、処理液としてpH7の水を用いて、温度、及び浸漬時間を表1に示すようにした以外は、実施例1と同様にして表面処理基材及び有機樹脂被覆基材を作製し、同様に評価を行った。なお、比較例1,2においては、上述した方法にしたがって、アルミニウム酸素化合物皮膜中のF/Al割合の算出も行った。結果を表1に示す。
表1に示すように、皮膜形成基材にアルカリ処理を施した実施例1〜9においては、得られた有機樹脂被覆基材は、レトルト密着性の評価結果が良好であり、有機樹脂層の密着性に優れていることが確認された。中でも、アルカリ処理に用いた処理液のpHを8〜11とした比較例1〜8は、レトルト密着性の評価結果がより良好であり、有機樹脂層の密着性が、特に優れていることが確認された。なお、図1(A)、図1(B)に、実施例7、比較例1にて作製した皮膜形成基材及び表面処理基材の断面写真を示す。また、図2(A)、図2(B)に、実施例7、比較例1にて作製した皮膜形成基材及び表面処理基材について、X線光電子分光装置により測定した各元素の原子濃度の測定結果を示す。
一方、表1に示すように、皮膜形成基材にアルカリ処理を施さなかった(すなわち、皮膜形成基材を浸漬させる溶液をpH7の水とした)比較例1,2においては、得られた有機樹脂被覆基材は、いずれも、レトルト密着性の評価結果が悪く、有機樹脂層の密着性に劣ることが確認された。
《実施例10》
基材として、鋼板上に錫めっき層を形成した後、錫めっき層を加熱溶融させる処理を行うことで得られた錫めっき鋼板(厚さ0.225mm、幅200mm、錫めっき層の錫量2.8g/m)を準備した。
次いで、下記条件にて、基材を電解処理液に浸漬させて陰極電解処理を行うことにより、基材の両面にアルミニウム酸素化合物皮膜を形成して皮膜形成基材を得た。
電解処理液:アルミニウム化合物として硝酸アルミニウムを、フッ化物としてフッ化ナトリウムをそれぞれ溶解させて得た、アルミニウムイオン濃度2,000重量ppm、フッ化物イオン濃度2,500重量ppmの水溶液
電解処理液のpH:3.0
電解処理液の温度:40℃
電流密度:4A/dm
トータル通電時間:0.2秒(0.2秒通電を1回行った)
そして、得られた皮膜形成基材を、下記条件にて、処理液に浸漬させることでアルカリ処理し、その後、水洗及び乾燥させることで、表面処理基材を得た。
処理液:アンモニア水溶液
処理液のpH:10.5
処理液の温度:40℃
浸漬時間:1秒
次いで、得られた表面処理基材について、上述した方法に従って、アルミニウム酸素化合物皮膜中のアルミニウム量の測定を行った。結果を表1に示す。
そして、得られた表面処理基材の片面にエポキシ−フェノール樹脂を塗布した後、温度200℃、10分間の条件にて焼付けを行うことにより有機樹脂層を形成し、有機樹脂被覆基材を得た。なお、エポキシ−フェノール樹脂の塗布量は焼付け後の重量で70mg/mとした。このようにして得られた有機樹脂被覆基材について、上述した方法にしたがって、クロスカット耐食性の評価、及び耐硫化黒変性の評価を行った。結果を表2に示す。
《実施例11〜14》
実施例1と同じ低炭素冷延鋼板上にアルミニウム酸素化合物皮膜を形成する際において、アルミニウム酸素化合物皮膜を形成するための陰極電解処理時のトータル通電時間を0.4秒(0.2秒通電、0.5秒通電停止のサイクルを2回繰り返した際の合計の通電時間)とし、さらに、皮膜形成基材を処理液に浸漬させる際において、処理液の種類、pH及び温度を表2に示すように変更した以外は、実施例10と同様にして表面処理基材及び有機樹脂被覆基材を作製し、同様に評価を行った。なお、耐硫化黒変性の評価は、実施例11についてのみ行った。また、実施例12においては、上述した方法にしたがって、アルミニウム酸素化合物皮膜中のF/Al割合の算出も行った。結果を表2に示す。
《実施例15》
錫めっき鋼板上にアルミニウム酸素化合物皮膜を形成するための陰極電解処理を施す前に、錫めっき鋼板を炭酸ナトリウムに浸漬させて陰極電解処理を行うことで酸化皮膜を除去する清浄化処理を行った以外は、実施例10と同様にして表面処理基材及び有機樹脂被覆基材を作製し、同様に評価を行った。結果を表2に示す。
《比較例3〜6》
実施例1と同じ低炭素冷延鋼板上にアルミニウム酸素化合物皮膜を形成する際において、アルミニウム酸素化合物皮膜を形成するための陰極電解処理時のトータル通電時間を表2に示すように変更し、皮膜形成基材を処理液に浸漬させる際において、処理液としてpH7の水を用いて、温度を表2に示すようにした以外は、実施例10と同様にして表面処理基材及び有機樹脂被覆基材を作製し、同様に評価を行った。なお、比較例4,6においては、上述した方法にしたがって、アルミ酸素化合物皮膜中のF/Al割合の算出も行った。結果を表2に示す。
表2に示すように、皮膜形成基材にアルカリ処理を施した実施例10〜15においては、得られた有機樹脂被覆基材は、クロスカット耐食性の評価、及び耐硫化黒変性の評価の結果が良好であり、耐食性に優れるとともに、硫化黒変を有効に防止することができるものであることが確認された。
一方、表2に示すように、皮膜形成基材にアルカリ処理を施さなかった(すなわち、皮膜形成基材を浸漬させる溶液をpH7の水とした)比較例3〜6においては、得られた有機樹脂被覆基材は、クロスカット耐食性の評価、及び耐硫化黒変性の評価の結果が悪く、耐食性に劣るとともに、硫化黒変が発生してしまうことが確認された。

Claims (7)

  1. 基材上に、アルミニウム及びフッ素を含有する金属酸素化合物皮膜を形成することで皮膜形成基材を得る皮膜形成工程と、
    前記皮膜形成基材を、アルカリ水溶液に接触させるアルカリ処理工程と、を有することを特徴とする表面処理基材の製造方法。
  2. 前記アルカリ水溶液は、pH8〜11のアルカリ水溶液であることを特徴とする請求項1に記載の表面処理基材の製造方法。
  3. 前記アルカリ処理は、前記皮膜形成基材を、温度30〜60℃のアルカリ水溶液に浸漬させる処理であることを特徴とする請求項1又は2に記載の表面処理基材の製造方法。
  4. 前記アルカリ処理は、前記皮膜形成基材を、アルカリ水溶液に1秒以上浸漬させる処理であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の表面処理基材の製造方法。
  5. 前記皮膜形成工程における前記金属酸素化合物皮膜の形成を、アルミニウムイオン及びフッ化物イオンを含む電解処理液中で、前記基材に電解処理を施すことで行うことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の表面処理基材の製造方法。
  6. 前記基材が、鋼板上に錫めっき層を形成してなる錫めっき鋼板、鋼板上にニッケルめっき層を形成してなるニッケルめっき鋼板、又は錫、ニッケル、鉄のうち少なくとも2種からなる合金層を形成してなる合金被覆鋼板であり、前記皮膜形成工程における該基材上に形成する前記金属酸素化合物皮膜を、アルミニウム量換算で1mg/m以上とすることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の表面処理基材の製造方法。
  7. 前記基材が冷延鋼板であり、前記皮膜形成工程における該基材上に形成する前記金属酸素化合物皮膜を、アルミニウム量換算で15mg/m以上とすることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の表面処理基材の製造方法。
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