JP4546776B2 - 機能性アルミニウム合金板及びその製造方法 - Google Patents
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上記ポスト処理材は、加工後に表面処理を行うので、加工度に制限がなく、従来より様々な用途に用いられている。一方、上記プレ処理材は、ある程度加工度に制約があるものの最近の加工性向上技術の進展と相俟って、工程合理化、コストダウン等をも特的とし、例えば、飲料缶用蓋をはじめ、家電製品、OA機器の筐体等、あるいは建材の材料として広く使われるようになってきた。
同様に、加工を施すことなく化成皮膜の上に樹脂フィルムを接合したものが、プレラミネート材(プレ処理材)であり、一方、加工を施してから上記化成処理を行い、その後樹脂フィルムを接合したものがポストラミネート材(ポスト処理材)である。
なお、これまでに提案されている機能性アルミニウム合金板に関する文献としては、次のようなものがある。
皮膜量が5〜40mg/m 2 のリン酸クロメート、リン酸ジルコニウム、酸化ジルコニウム、又はクロム酸クロメートのいずれかよりなり、上記基板の片面又は両面に形成した化成皮膜と、
該化成皮膜の表面から、出力0.00002〜1.0kWH/m 2 、極間距離0.1〜5mmという条件でコロナ放電処理を施した後に形成された樹脂塗膜とを有することを特徴とする機能性アルミニウム合金板にある(請求項1)。
本発明の機能性アルミニウム合金板は、上記基板に第1の下地処理としての上記化成皮膜を形成し、さらにその後に第2の下地処理として上記コロナ放電処理を実施するという、従来にない方法を積極的に取り入れて得られたものである。
そして、この密着性の向上及び耐食性の向上によって、上記機能性アルミニウム合金板の用途の拡大、及び加工性等の品質をさらに向上させることができる。
このような作用効果が得られるメカニズムは、構造的には未だ明らかになっていないが、化成皮膜形成後に上記コロナ放電処理を実施することによって、化成皮膜中のミクロな汚れ分を分解除去することができ、化成皮膜による密着性向上効果を最大限に引き上げることができるために上記の作用効果が得られるのではないかと推測される。
皮膜量が5〜40mg/m 2 のリン酸クロメート、リン酸ジルコニウム、酸化ジルコニウム、又はクロム酸クロメートのいずれかよりなり、上記基板の片面又は両面に形成した化成皮膜と、
該化成皮膜の表面から、出力0.00002〜1.0kWH/m 2 、極間距離0.1〜5mmという条件でコロナ放電処理を施した後に塗布された接着剤よりなる接着剤層と、
該接着剤層によって接合された樹脂フィルムとを有することを特徴とする機能性アルミニウム合金板にある(請求項3)。
そして、この密着性の向上及び耐食性の向上によって、上記機能性アルミニウム合金板の用途の拡大、及び加工性等の品質をさらに向上させることができる。なお、この作用効果が得られる理由は、上記のコート材の場合と同様であると考えられる。
また、上記の作用効果は、いわゆるポストラミネート材であってもプレラミネート材であっても有効であるが、コート材の場合と同様に、プレラミネート材の方がその後の加工の自由度を高めることができるのでより有効である。
すなわち、第3の発明として、脱脂処理を施したアルミニウム合金板よりなる基板の片面又は両面に、皮膜量が5〜40mg/m 2 のリン酸クロメート、リン酸ジルコニウム、酸化ジルコニウム、又はクロム酸クロメートのいずれかよりなる化成皮膜を形成する化成処理工程と、上記化成皮膜の表面から、出力0.00002〜1.0kWH/m 2 、極間距離0.1〜5mmという条件でコロナ放電処理を施すコロナ放電工程と、上記コロナ放電処理を施した上記化成皮膜上に樹脂塗膜を形成するコーティング工程とを有することを特徴とする機能性アルミニウム合金板の製造方法がある(請求項6)。
すなわち、第4の発明として、脱脂処理を施したアルミニウム合金板よりなる基板の片面又は両面に、皮膜量が5〜40mg/m 2 のリン酸クロメート、リン酸ジルコニウム、酸化ジルコニウム、又はクロム酸クロメートのいずれかよりなる化成皮膜を形成する化成処理工程と、上記化成皮膜の表面から、出力0.00002〜1.0kWH/m 2 、極間距離0.1〜5mmという条件でコロナ放電処理を施すコロナ放電工程と、上記コロナ放電処理を施した上記化成皮膜上に接着剤よりなる接着剤層を形成する接着剤塗布工程と、上記接着剤層上に樹脂フィルムを接合するフィルム接合工程とを有することを特徴とする機能性アルミニウム合金板の製造方法がある(請求項8)。
また、上記第3及び第4の発明の製造方法においては、上記化成処理工程では、皮膜量が5〜40mg/m2のリン酸クロメート、リン酸ジルコニウム、酸化ジルコニウム、又はクロム酸クロメートのいずれかよりなる上記化成皮膜を形成する。
本例では、複数の実施例と比較例としての機能性アルミニウム合金板を作製し、その特性を評価した。
実施例1の機能性アルミニウム合金板1は、図1に示すごとく、アルミニウム合金板よりなる基板10と、基板10の片面に形成した化成皮膜2と、該化成皮膜2の表面からコロナ放電処理を施した後に形成された樹脂塗膜3とを有するものである。
この機能性アルミニウム合金板1を作製するに当たっては、まず、基板10として、厚さ0.5mm、材質5052−H34のアルミニウム合金板を準備した。そして、この基板の脱脂処理を行った。
脱脂処理は、炭酸ナトリウムおよび苛性ソーダ系日本パーカーライジング製ファインクリーナーE3001を15g/Lとなるように純水で調整し、60℃に加温した処理液に、上記基板を5秒浸漬して処理した。
リン酸クロメート処理は、上記基板をさらにアルカリ系脱脂剤で脱脂した後、リン酸クロメート処理浴中に浸漬して行った。クロメート皮膜量は皮膜中のCr含有量として20±5mg/m2とした。
コロナ放電処理は、長さ300mmの電極を使い、出力:0.011kWH/m2(実際には、装置の出力を1kWとし、基板の相対移動を5m/分とした)、極間距離5mmという条件で行った。
具体的には、基板の一方の面における上記化成皮膜に対して、市販の水溶性のエポキシアクリル系樹脂を、バーコーターを用いて塗布し、アルミニウム表面の温度を230℃に60秒間保持する条件で、焼付、硬化することにより、厚さ50μm樹脂塗膜を形成した。
比較例1は、実施例1における上記コロナ放電処理工程を省略し、その他は実施例1と同様にして作製した例である。
実施例2は、実施例1における化成処理工程を、ノンクロム化成処理に変更し、その他は実施例1と同様にして作製した例である。
この場合のノンクロム化成処理は、具体的には、リン酸ジルコニウム系浴中に脱脂後の基板を浸漬して行った。化成皮膜量としてはZr含有量で15mg/m2とした。
比較例2は、実施例2における上記コロナ放電処理工程を省略し、その他は実施例2と同様にして作製した例である。
実施例3の機能性アルミニウム合金板5は、図2に示すごとく、アルミニウム合金板よりなる基板50と、基板50の片面に形成した化成皮膜6と、化成皮膜6の表面からコロナ放電処理を施した後に塗布された接着剤よりなる接着剤層7と、接着剤層7によって接合された樹脂フィルム8とを有するものである。
より具体的には、上記接着剤塗布工程では、接着剤としてウレタン系の接着剤を1g/m2塗布し、その後、上記フィルム接合工程では、市販の厚み20μmのナイロンフィルムをラミネートした。
比較例3は、実施例3における上記コロナ放電処理工程を省略し、その他は実施例3と同様にして作製した例である。
実施例4は、実施例3における樹脂フィルムを厚み25μmのポリプロピレンフィルムに変更し、その他は実施例3と同様にした例である。
(比較例4)
比較例4は、実施例4における上記コロナ放電処理工程を省略し、その他は実施例4と同様にして作製した例である。
実施例5は、実施例1におけるコロナ放電処理の条件のみを変更し、その他は実施例1と同様にした例である。
実施例5でのコロナ放電処理は、出力:0.00002kWH/m2(実際には、装置の出力を0.02kWとし、基板の相対移動を60m/分とした)、極間距離5mmという条件とし、その他は実施例1と同様とした。
比較例5は、実施例5における上記コロナ放電処理の条件をさらに変更し、出力:0.00001kWH/m2(実際には、装置の出力を0.01kWとし、基板の相対移動を60m/分とした)、極間距離1mmという条件とし、その他は実施例5と同様とした例である。
実施例6は、実施例1におけるコロナ放電処理の条件のみを変更し、その他は実施例1と同様にした例である。
実施例6でのコロナ放電処理は、出力:1kWH/m2(実際には、装置の出力を2kWとし、基板の相対移動を0.1m/分とした)、極間距離5mmという条件とし、その他は実施例1と同様とした。
比較例6は、実施例6における上記コロナ放電処理の条件をさらに変更し、出力:2kWH/m2(実際には、装置の出力を2kWとし、基板の相対移動を0.05m/分とした)、極間距離5mmという条件とし、その他は実施例6と同様とした例である。
実施例7は、実施例1の極間距離を0.1mmとし、その他は、実施例1と同様にして作製した例である。
(比較例7、8)
比較例7、比較例8は、実施例1の極間距離を、それぞれ0.05mm、7mmとし、その他は実施例1と同様にして作製した例である。
<密着性評価>
密着性は、JIS K5400 8.5.2 碁盤目テープ法を用い、500時間塩水噴霧後の塗膜の剥離を調査した。評価基準としては、上記試験後の塗膜の残存数95ヶ所以上を合格として◎で示し、95ヶ所未満を不合格として×で示した。
耐食性は、JIS K54009.1 耐塩水噴霧性を用い、初期、500時間後の腐食状況を観察して評価した。評価基準は、塗膜のクロスカット部の腐食幅が3mm以下を合格として◎で示し、3mm超えを不合格として×で示した。
製造コストは、コロナ放電供給電力量により評価し、0.001kWH/m2未満の場合は最良として◎、0.001〜1.0kWH/m2の場合は良として○、1.0kWH/m2を超える場合は悪いとして×で示した。
いずれの結果も表1に示す。
10、50 基板
2、6 化成皮膜
3 樹脂塗膜
7 接着剤層
8 樹脂フィルム
Claims (10)
- アルミニウム合金板よりなる基板と、
皮膜量が5〜40mg/m 2 のリン酸クロメート、リン酸ジルコニウム、酸化ジルコニウム、又はクロム酸クロメートのいずれかよりなり、上記基板の片面又は両面に形成した化成皮膜と、
該化成皮膜の表面から、出力0.00002〜1.0kWH/m 2 、極間距離0.1〜5mmという条件でコロナ放電処理を施した後に形成された樹脂塗膜とを有することを特徴とする機能性アルミニウム合金板。 - 請求項1において、上記樹脂塗膜は、エポキシ系樹脂、ポリエステル系樹脂、ウレタン系樹脂のいずれかよりなると共に、厚さが1〜150μmであることを特徴とする機能性アルミニウム合金板。
- アルミニウム合金板よりなる基板と、
皮膜量が5〜40mg/m 2 のリン酸クロメート、リン酸ジルコニウム、酸化ジルコニウム、又はクロム酸クロメートのいずれかよりなり、上記基板の片面又は両面に形成した化成皮膜と、
該化成皮膜の表面から、出力0.00002〜1.0kWH/m 2 、極間距離0.1〜5mmという条件でコロナ放電処理を施した後に塗布された接着剤よりなる接着剤層と、
該接着剤層によって接合された樹脂フィルムとを有することを特徴とする機能性アルミニウム合金板。 - 請求項3において、上記樹脂フィルムは、ポリエチレンテレフタレート、ナイロン、ポリエステル、ポリプロピレン、塩化ビニールのいずれかよりなると共に、その厚さが1〜150μmであることを特徴とする機能性アルミニウム合金板。
- 請求項1〜4のいずれか1項において、上記機能性アルミニウム合金板は、飲料缶の蓋に加工される缶蓋用素材であることを特徴とする機能性アルミニウム合金板。
- 脱脂処理を施したアルミニウム合金板よりなる基板の片面又は両面に、皮膜量が5〜40mg/m 2 のリン酸クロメート、リン酸ジルコニウム、酸化ジルコニウム、又はクロム酸クロメートのいずれかよりなる化成皮膜を形成する化成処理工程と、
上記化成皮膜の表面から、出力0.00002〜1.0kWH/m 2 、極間距離0.1〜5mmという条件でコロナ放電処理を施すコロナ放電工程と、
上記コロナ放電処理を施した上記化成皮膜上に樹脂塗膜を形成するコーティング工程とを有することを特徴とする機能性アルミニウム合金板の製造方法。 - 請求項6において、上記樹脂塗膜は、エポキシ系樹脂、ポリエステル系樹脂、ウレタン系樹脂のいずれかよりなると共に、厚さが1〜150μmであることを特徴とする機能性アルミニウム合金板の製造方法。
- 脱脂処理を施したアルミニウム合金板よりなる基板の片面又は両面に、皮膜量が5〜40mg/m 2 のリン酸クロメート、リン酸ジルコニウム、酸化ジルコニウム、又はクロム酸クロメートのいずれかよりなる化成皮膜を形成する化成処理工程と、
上記化成皮膜の表面から、出力0.00002〜1.0kWH/m 2 、極間距離0.1〜5mmという条件でコロナ放電処理を施すコロナ放電工程と、
上記コロナ放電処理を施した上記化成皮膜上に接着剤よりなる接着剤層を形成する接着剤塗布工程と、
上記接着剤層上に樹脂フィルムを接合するフィルム接合工程とを有することを特徴とする機能性アルミニウム合金板の製造方法。 - 請求項8において、上記樹脂フィルムは、ポリエチレンテレフタレート、ナイロン、ポリエステル、ポリプロピレン、塩化ビニールのいずれかよりなると共に、その厚さが1〜150μmであることを特徴とする機能性アルミニウム合金板の製造方法。
- 請求項7〜9のいずれか1項において、上記機能性アルミニウム合金板は、飲料缶の蓋に加工される缶蓋用素材であることを特徴とする機能性アルミニウム合金板の製造方法。
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