JP2004018930A - 被覆金属材料、及び、ノンクロム金属表面処理方法 - Google Patents

被覆金属材料、及び、ノンクロム金属表面処理方法 Download PDF

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Abstract

【課題】塗料の塗装後及びラミネートフィルム貼付け後における耐食性及び密着性に優れ、リン酸クロメート化成処理を施したものと同等以上の性能を有する被覆金属材料、及び、ノンクロム金属表面処理方法を提供する。
【解決手段】金属製基材、ジルコニウム及び/又はチタンとリンとを含んでなる表面処理層(A)、並びに、ポリアリルアミンを含んでなる樹脂層(B)をこの順に有する被覆金属材料。
【選択図】   なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、被覆金属材料、及び、ノンクロム金属表面処理方法に関する。
【従来の技術】
【0002】
従来、アルミニウム板の表面処理としては、スプレー法によって短時間にて化成処理を施すことができるリン酸クロメート系化成処理剤が使用されてきた。
リン酸クロメート系化成処理剤を用いて形成されるリン酸クロメート化成皮膜は、各種樹脂系塗料を塗装した後の耐食性、密着性に優れているため、建材向け、家電向け、フィン材向け、カーエバポレーター向け、飲料缶蓋材向け等、アルミ材の広範囲な用途において使用されている。
【0003】
しかし、近年、環境保全の目的から、塗料及びラミネートに対して、リン酸クロメートと同等の高い耐食性、密着性を付与することができ、かつ、リン酸クロメート化成処理と同様、短時間のスプレー法により化成皮膜を形成することができるノンクロム系化成処理の要求が高まってきている。
【0004】
スプレー法によるノンクロム化成処理剤としては、例えば、飲料缶ボディ用等のものとして、ジルコニウム化合物又はチタン化合物とリン酸化合物とを併用した系が使用されている。
【0005】
しかしながら、これらの系の処理剤により形成される化成皮膜は、リン酸クロメート化成皮膜と比べて、塗料の塗装後及びラミネートフィルム貼付け後における耐食性及び密着性に劣るため、広範囲な用途に使用できるものではなかった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記現状に鑑み、塗料の塗装後及びラミネートフィルム貼付け後における耐食性及び密着性に優れ、リン酸クロメート化成処理を施したものと同等以上の性能を有する被覆金属材料、及び、ノンクロム金属表面処理方法を提供することを目的とするものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は、金属製基材上に、ジルコニウム及び/又はチタンとリンとを含んでなる表面処理層(A)を有し、更に、上記表面処理層(A)上に、ポリアリルアミンを含んでなる樹脂層(B)を有することを特徴とする被覆金属材料である。
【0008】
上記ジルコニウム及び/又は上記チタンは、水溶性錯フッ化ジルコニウム及び/又は水溶性錯フッ化チタンに由来するものであることが好ましい。
上記リンは、オルソリン酸に由来するものであることが好ましい。
上記リンは、ホスホン基を構成するリン原子が炭素原子と結合した有機ホスホン酸化合物に由来するものであることが好ましい。
【0009】
上記表面処理層(A)は、乾燥後の片面当たりの質量で、ジルコニウム及び/又はチタンの含有量が3〜30mg/m、リンの含有量が0.5〜5mg/mであり、上記樹脂層(B)は、乾燥後の片面当たりの質量で、ポリアリルアミンに由来する炭素の含有量が1.6〜200mg/mであることが好ましい。
【0010】
上記金属製基材は、アルミニウム又はアルミニウム合金であることが好ましい。上記被覆金属材料は、ラミネート材の製造に用いられるものであることが好ましい。
【0011】
本発明は、水溶性ジルコニウム化合物及び/又は水溶性チタン化合物とリン化合物とからなるノンクロム金属表面処理剤(C)で被処理物を処理する工程(I)、並びに、上記工程(I)を行った被処理物をポリアリルアミン水溶液(D)で処理する工程(II)からなることを特徴とするノンクロム金属表面処理方法である。
【0012】
上記水溶性ジルコニウム化合物及び/又は上記水溶性チタン化合物は、水溶性錯フッ化ジルコニウム及び/又は水溶性錯フッ化チタンであることが好ましい。
【0013】
上記ノンクロム金属表面処理剤(C)は、水溶性錯フッ化ジルコニウム化合物及び/又は水溶性錯フッ化チタン化合物の含有量がジルコニウム及び/又はチタン原子換算で40〜1000ppm、リン化合物の含有量がリン原子換算で20〜500ppmであり、上記ポリアリルアミン水溶液(D)は、ポリアリルアミンの含有量が質量基準で80〜10000ppmであることが好ましい。
以下に、本発明を詳細に説明する。
【0014】
本発明の被覆金属材料は、塗料塗装後、ラミネートフィルム等の樹脂フィルム接着後において、耐食性に優れるものであり、また、塗料塗装後における塗膜密着性、ラミネートフィルム等の樹脂フィルム接着後におけるフィルム密着性にも優れる金属材料である。
【0015】
本発明の被覆金属材料は、金属製基材上に、ジルコニウム及び/又はチタンとリンとを含んでなる表面処理層(A)を有するものである。
本発明の被覆金属材料は、金属製基材上にジルコニウム及び/又はチタンとリンとを含んでなる層が形成されたものであることから、優れた耐食性を付与されたものである。上記表面処理層(A)は、例えば、金属製基材を水溶性ジルコニウム化合物及び/又は水溶性チタン化合物とリン化合物とを含むノンクロム金属表面処理剤で処理することにより形成することができる。
【0016】
上記ジルコニウム及び/又は上記チタンは、水溶性錯フッ化ジルコニウム及び/又は水溶性錯フッ化チタンに由来するものであることが好ましい。即ち、上記水溶性錯フッ化ジルコニウム及び/又は上記水溶性錯フッ化チタンをジルコニウム及び/又はチタン供給源とする場合が好ましい。例えば、水溶性錯フッ化ジルコニウム及び/又は水溶性錯フッ化チタンを含有するノンクロム金属表面処理剤を用いて処理を行う場合には、短時間での皮膜化成性に優れるため、より効率的に表面処理層(A)を形成することができる。
【0017】
上記水溶性錯フッ化ジルコニウムとしては特に限定されず、例えば、HZrF、(NHZrF、KZrF、NaZrF、LiZrF等を挙げることができる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0018】
上記水溶性錯フッ化チタンとしては特に限定されず、例えば、HTiF、(NHTiF、KTiF、NaTiF等を挙げることができる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0019】
上記表面処理層(A)は、乾燥後の片面当たりの質量で、ジルコニウム及び/又はチタンの含有量が、下限3mg/m、上限30mg/mであることが好ましい。3mg/m未満であると、塗装後、ラミネート後の密着性、耐食性が低下する。30mg/mを超えると、塗装後、ラミネート後の密着性が低下し、耐食性の改善は見られない。上記下限は、8mg/mであることがより好ましく、上記上限は、20mg/mであることがより好ましい。
【0020】
上記リンの供給源であるリン化合物としては特に限定されず、例えば、オルソリン酸、リン酸アンモニウム、第一リン酸ナトリウム、第ニリン酸ナトリウム、第三リン酸ナトリウム、亜リン酸、次亜リン酸、次亜リン酸ナトリウム、有機リン化合物、有機ホスホン酸化合物等を挙げることができる。
【0021】
上記リンは、オルソリン酸に由来するものであることが好ましい。即ち、上記オルソリン酸をリン供給源とする場合が好ましい。例えば、オルソリン酸を含有するノンクロム金属表面処理剤を用いて処理を行う場合には、短時間での皮膜化成性に優れるため、より効率的に表面処理層(A)を形成することができる。
【0022】
上記リンは、ホスホン基を構成するリン原子が炭素原子と結合した有機ホスホン酸化合物に由来するものであることが好ましい。即ち、上記ホスホン基を構成するリン原子が炭素原子と結合した有機ホスホン酸化合物をリン供給源とする場合が好ましい。例えば、上記有機ホスホン酸化合物を含有するノンクロム金属表面処理剤を用いて処理を行う場合には、短時間での皮膜化成性に優れるため、より効率的に表面処理層(A)を形成することができるとともに、形成した皮膜は耐食性に優れる。
【0023】
上記有機ホスホン酸化合物は、ホスホン基(−PO)を化合物中に有し、化合物中の炭素原子にホスホン基(−PO)が結合した化合物である。
上記有機ホスホン酸化合物としては特に限定されず、例えば、下記式(a)で表されるアミノトリ(メチレンホスホン酸)、下記式(b)で表される1−ヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸、下記式(c)で表される2−ホスホブタノン1,2,4−トリカルボン酸等を挙げることができる。
【0024】
【化1】
Figure 2004018930
【0025】
上記有機ホスホン酸化合物としてはまた、下記式(d)で表されるエチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)、下記式(e)で表されるジエチレントリアミンペンタ(メチレンホスホン酸)等も挙げることができる。
【0026】
【化2】
Figure 2004018930
【0027】
上記有機ホスホン酸化合物のなかでも、皮膜析出性、塗装後における耐食性及び塗膜密着性、ラミネート貼り付け後における耐食性及びフィルム密着性に優れることから、上記式(a)で表されるアミノトリ(メチレンホスホン酸)、上記式(b)で表される1−ヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸、上記式(c)で表される2−ホスホブタノン1,2,4−トリカルボン酸が好ましい。
【0028】
上記有機ホスホン酸化合物は、水溶性であることが好ましい。水溶性の化合物である場合には、有機溶媒を用いる必要がなくなり、環境に対する負荷を軽減することができる。
【0029】
上記有機ホスホン酸化合物は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なお、ホスホン基に含まれる水素原子をアルカリ金属又はアンモニウム等で置換した有機ホスホン酸化合物塩をノンクロム金属表面処理剤に含有させることは、形成される皮膜の耐食性が低下することから好ましくない。
【0030】
上記表面処理層(A)は、乾燥後の片面当たりの質量で、リンの含有量が、下限0.5mg/m、上限5mg/mであることが好ましい。0.5mg/m未満であると、塗装後、ラミネート後の密着性、耐食性が低下する。5mg/mを超えると、塗装後、ラミネート後の密着性が低下する。上記下限は、1mg/mであることがより好ましく、上記上限は、3mg/mであることがより好ましい。
【0031】
本発明の被覆金属材料は、上記表面処理層(A)上に、ポリアリルアミンを含んでなる樹脂層(B)を有するものである。
上記樹脂層(B)は、上記被覆金属材料における表面処理層(A)上に形成されるポリアリルアミンを含んでなる層である。これにより、上記樹脂層(B)上に、塗膜を形成する場合には、塗膜形成後の塗膜密着性を向上させることができ、また、ラミネートフィルムを貼り付ける場合には、ラミネートフィルム貼り付け後のフィルム密着性を向上させることができる。上記樹脂層(B)は、例えば、上記表面処理層(A)が形成された金属製基材をポリアリルアミンを含む水溶液で処理することによって形成することができる。
【0032】
本発明の被覆金属材料においては、ポリアリルアミンを含んでなる樹脂層(B)を有するものであることにより、特異的に塗膜形成後の塗膜密着性、ラミネートフィルム貼り付け後のフィルム密着性を向上させることができる。即ち、下記一般式(1);
【0033】
【化3】
Figure 2004018930
【0034】
で表されるポリアリルアミンを含んでなる樹脂層を有する場合には、塗膜密着性、フィルム密着性を向上させる効果が見られるが、例えば、下記一般式(2)、下記一般式(3)、下記一般式(4)で表されるポリビニルアミン、ポリアクリルアミド、ポリエチレンイミンを含んでなる樹脂層を有する場合には、塗膜密着性、フィルム密着性を向上させる効果は見られない。
【0035】
【化4】
Figure 2004018930
【0036】
【化5】
Figure 2004018930
【0037】
【化6】
Figure 2004018930
【0038】
また、例えば、下記一般式(5)で表されるポリアリルアミンの強酸塩を含んでなる樹脂層を有する場合にも、塗膜密着性、フィルム密着性を向上させる効果は見られない。このように、ポリアリルアミンを含んでなる樹脂層を有する場合に、特異的に塗膜形成後の塗膜密着性、ラミネートフィルム貼り付け後のフィルム密着性を向上させることができることが本発明の被覆金属材料の特徴的な点である。
【0039】
【化7】
Figure 2004018930
【0040】
上記樹脂層(B)におけるポリアリルアミンとしては特に限定されず、例えば、PAA−01、PAA−03、PAA−05、PAA−15、PAA−15B、PAA−10C、PAA−H−10C(いずれも日東紡績社製)等の市販品を用いることができる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
上記ポリアリルアミンは、本発明の効果を損なわない範囲で、少量の他のモノマーを共重合したものであってもよい。
【0041】
上記ポリアリルアミンの重量平均分子量は、下限1000、上限150000であることが好ましい。この範囲内であることにより、塗装後の塗膜密着性、ラミネートフィルム貼り付け後のフィルム密着性を優れたものとすることができる。上記下限は、1000であることがより好ましく、上記上限は、5000であることがより好ましい。
【0042】
上記樹脂層(B)におけるポリアリルアミンは、上記樹脂層(B)を形成する際にポリアリルアミン水溶液を用いる場合には、水溶液のpHを調整するため、含有する1級アミンを酸で中和することもできる。中和剤としては、強酸で中和した場合には、例えば、上記一般式(5)で表されるポリアリルアミンの強酸塩となり、塗装後の塗膜密着性、ラミネートフィルム貼り付け後のフィルム密着性が低下するため好ましくなく、酢酸等の弱酸を使用することが好ましい。
【0043】
上記樹脂層(B)は、乾燥後の片面当たりの質量で、ポリアリルアミンに由来する炭素の含有量が下限1.6mg/m、上限200mg/mであることが好ましい。1.6mg/m未満であると、塗装後、ラミネート後の密着性が低下する。200mg/mを超えると、密着性、耐食性は向上せず、コスト高となる。上記下限は、10mg/mであることがより好ましく、上記上限は、100mg/mであることがより好ましい。
【0044】
本発明の被覆金属材料に形成される皮膜(上記表面処理層(A)及び上記樹脂層(B)からなる皮膜)中のジルコニウム及び/又はチタンの含有量は、蛍光X線分析装置により測定することができ、上記ポリアリルアミンに由来する炭素の含有量は、形態別炭素/水分析装置によって測定される有機炭素量により測定することができる。
【0045】
上記金属製基材は、アルミニウム又はアルミニウム合金であることが好ましい。即ち、上記被覆金属材料がアルミニウム又はアルミニウム合金である金属製基材上に上記表面処理層(A)を有し、更に表面処理層(A)上に上記樹脂層(B)を有するものであることが好ましい。また、上記金属製基材は板状であることが好ましい。アルミニウム又はアルミニウム合金を金属製基材として用いて得られる被覆金属材料は、塗装後の耐食性及び塗膜密着性に優れるものであることから、飲料物用容器向け、家電向け、住宅建材向け等の用途に好適に用いることができる。
【0046】
上記アルミニウム合金としては特に限定されず、例えば、アルミニウム合金5182材、アルミニウム合金5021材、アルミニウム合金5022材、アルミニウム合金5052材、アルミニウム合金3004材、アルミニウム合金3005材、アルミニウム合金1050材、アルミニウム合金1100材等が好適に用いられる。
【0047】
本発明の被覆金属材料は、上記被覆金属材料に、更に塗装を施してもよい。上記被覆金属材料における樹脂層(B)上に、更に、塗装を行った材料は、塗装後の耐食性及び塗膜密着性に優れるものである。これにより、塗装が施された被覆金属材料は、金属缶蓋材、電気製品、金属家具用の金属材料等に好適に使用することができる。
【0048】
本発明の被覆金属材料は、ラミネート材の製造に用いられるものであることが好ましい。即ち、上記被覆金属材料にラミネートフィルムを被覆することにより、ラミネートフィルムで被覆された被覆金属材料を製造することができ、得られた材料は、ラミネートフィルムによって表面が保護されたものであり、耐食性、フィルム密着性にも優れるものである。これにより、ラミネートフィルムで被覆された被覆金属材料は、金属缶、電気製品、金属家具用の金属材料等に好適に使用することができる。
【0049】
上記ラミネートフィルムを構成する樹脂としては特に限定されないが、例えば、上記熱可塑性ポリエステル系樹脂等を挙げることができる。
上記熱可塑性ポリエステル系樹脂としては特に限定されず、例えば、エチレンテレフタレート単位、エチレンナフタレート単位、エチレンイソフタレート単位、ブチレンテレフタレート単位、1,4−シクロヘキサンジメタノールテレフタレート単位等の構成単位からなる熱可塑性ポリエステル系樹脂を挙げることができる。2以上の上記構成単位を有する共重合熱可塑性ポリエステル系樹脂であってもよい。エチレンテレフタレート単位からなるポリエチレンテレフタレート樹脂又はナフタレンテレフタレート単位からなるポリエチレンナフタレート樹脂がより好ましい。
【0050】
上記熱可塑性ポリエステル樹脂は、フィルムを形成した後金属にラミネートするものであっても、加熱溶融した上記熱可塑性ポリエステル樹脂を押出し成形機の押出し幅の狭いスリットによってフィルム状に押出し、直接金属板上にラミネートするダイレクトラミネーションによるものであってもよい。上記フィルムを形成した後でラミネートする場合、上記フィルムとしては特に限定されず、例えば、未延伸フィルムであっても一軸延伸フィルムであっても二軸延伸フィルムであってもよい。
【0051】
本発明のノンクロム金属表面処理方法は、クロムを含有しない表面処理剤を用いて被処理物を処理し、次いでポリアリルアミンの水溶液で処理する方法が好ましい。本発明のノンクロム金属表面処理方法による処理を行った被処理物に塗装を施すと、優れた塗装後耐食性、塗膜密着性を付与することができ、ラミネートフィルムを接着すると、接着後において優れた耐食性、フィルム密着性を付与することができる。特に、アルミニウム又はアルミニウム合金に対して、好適に適用することができるものであり、例えば、金属缶、電気製品、金属家具用のアルミニウム又はアルミニウム合金に適用することにより優れた耐食性、塗膜密着性、フィルム密着性を付与することができるものである。
【0052】
本発明のノンクロム金属表面処理方法は、先ず、水溶性ジルコニウム化合物及び/又は水溶性チタン化合物とリン化合物とからなるノンクロム金属表面処理剤(C)で被処理物を処理する工程(工程(I))を行うものである。上記工程(I)を行うことにより、金属製基材上に、ジルコニウム及び/又はチタンとリンとを含んでなる表面処理層を形成することができる。
【0053】
上記工程(I)において使用するノンクロム金属表面処理剤(C)は、水溶性ジルコニウム化合物及び/又は水溶性チタン化合物を含有するものである。これにより、耐食性、密着性に優れる被覆金属材料を得ることができる。
【0054】
上記水溶性ジルコニウム化合物としては、水溶性であるジルコニウム含有化合物であれば特に限定されないが、短時間での皮膜形成性に優れることから、水溶性錯フッ化ジルコニウムであることが好ましい。
上記水溶性錯フッ化ジルコニウムとしては特に限定されず、例えば、上述したフッ化ジルコニウム水素酸を挙げることができる。
【0055】
上記水溶性チタン化合物としては、水溶性であるチタン含有化合物であれば特に限定されないが、短時間での皮膜形成性に優れることから、水溶性錯フッ化チタンであることが好ましい。
上記水溶性錯フッ化チタンとしては特に限定されず、例えば、上述したフッ化チタン水素酸を挙げることができる。
【0056】
上記ノンクロム金属表面処理剤(C)は、上記水溶性錯フッ化ジルコニウム及び/又は上記水溶性錯フッ化チタンの含有量がジルコニウム及び/又はチタン原子換算で、下限40ppm、上限1000ppmであることが好ましい。40ppm未満であると、短時間処理で充分なジルコニウム又はチタン皮膜量が得られず、密着性、耐食性が低下するおそれがある。1000ppmを超えると、塗膜密着性、フィルム密着性が低下するおそれがあり、また、性能向上、処理時間の短縮は認められず、コスト高となるおそれもある。上記下限は、100ppmであることがより好ましく、上記上限は、300ppmであることがより好ましい。なお、上記水溶性錯フッ化ジルコニウム及び/又は上記水溶性錯フッ化チタンの含有量とは、ノンクロム金属表面処理剤(C)中に含まれるジルコニウムとチタンとの合計の含有量である。
【0057】
上記工程(I)において使用するノンクロム金属表面処理剤(C)は、リン化合物を含有するものである。これにより、耐食性、密着性に優れる被覆金属材料を得ることができる。
【0058】
上記リン化合物としては、水溶性であるリン含有化合物であれば特に限定されないが、短時間での皮膜形成性に優れることから、オルソリン酸、ホスホン基を構成するリン原子が炭素原子と結合した有機ホスホン酸化合物であることが好ましい。
上記有機ホスホン酸化合物としては特に限定されず、例えば、上述した有機ホスホン酸化合物を挙げることができる。
【0059】
上記ノンクロム金属表面処理剤(C)は、上記リン化合物の含有量が、リン原子換算で、下限20ppm、上限500ppmであることが好ましい。20ppm未満であると、短時間処理で充分なリン皮膜量が得られず、密着性が低下するおそれがある。500ppmを超えても、皮膜形成速度は向上せず、過剰に存在することになるだけで密着性、耐食性を向上させる効果は見られず、コスト高となるおそれがある。上記下限は、50ppmであることがより好ましく、上記上限は、200ppmであることがより好ましい。
【0060】
上記工程(I)で使用されるノンクロム金属表面処理剤(C)は、上記成分の他に必要に応じて、更に、皮膜形成促進剤、エッチング助剤、キレート剤、pH調整剤を使用することができる。
【0061】
上記皮膜形成促進剤としては特に限定されず、例えば、硼酸を挙げることができる。
上記エッチング助剤としては、例えば、フッ化水素酸、フッ化水素酸塩、フッ化硼素酸等を挙げることができる。なお、フッ素イオンの供給源として、上記水溶性錯フッ化ジルコニウム、上記水溶性錯フッ化チタンを用いる場合には、生成するフッ素イオンの量が不充分であるので、上記フッ素化合物を併用することが好ましい。
【0062】
上記キレート剤としては、例えば、クエン酸、酒石酸、グルコン酸等、アルミニウムと錯体を形成する酸及びそれらの金属塩等を挙げることができる。
【0063】
上記pH調整剤としては、例えば、硝酸、過塩素酸、硫酸、硝酸ナトリウム、水酸化アンモニウム、水酸化ナトリウム、アンモニア等の表面処理に悪影響を与えない酸又は塩基を挙げることができる。
【0064】
上記工程(I)で使用されるノンクロム金属表面処理剤(C)は、pHの下限が1.4、上限が4.0であることが好ましい。1.4未満であると、金属表面のエッチングが促進され過ぎるため、充分な皮膜量が得られないとともに、皮膜外観不良の原因ともなる。4.0を超えると、化成反応が満足に進行せず、充分な皮膜量が得られないおそれがある。上記下限は、1.8であることがより好ましく、2.0であることが更に好ましい。上記上限は、3.2であることがより好ましく、3.0であることが更に好ましい。
【0065】
上記工程(I)において、上記被処理物としては、例えば、上述した金属製基材を挙げることができる。
上記工程(I)において、上記被処理物を処理する方法としては、上記被処理物を上記ノンクロム金属表面処理剤(C)に接触させる方法であれば特に限定されず、スプレー法、浸漬法等の通常の方法を挙げることができる。なかでも、スプレー法で行うことが好ましい。
【0066】
上記工程(I)において、上記ノンクロム金属表面処理剤(C)の処理温度としては、好ましい下限は30℃、好ましい上限は80℃であり、より好ましい下限は40℃、より好ましい上限は60℃である。30℃未満であると、反応性が低く、皮膜の析出性が悪くなり、耐食性が低下するおそれがある。80℃を超えても、反応性は向上せず、エネルギーのロスが大きくなるおそれがある。
【0067】
上記工程(I)において、スプレー法で処理する場合には、上記ノンクロム金属表面処理剤(C)の処理時間は、好ましい下限は1秒、好ましい上限は20秒であり、より好ましい下限は3秒、より好ましい上限は8秒である。1秒未満であると、形成される皮膜量が充分でないおそれがあり、20秒を超えると、皮膜形成時のエッチングが過度に進行し、密着性、耐食性が低下するおそれがある。
【0068】
上記工程(I)の後、必要に応じて水洗処理を行うことができる。
上記化成後水洗処理は、塗膜外観等に悪影響を及ぼさないようにするために、1回又はそれ以上により行われるものである。この場合、最終の水洗は、純水で行われることが適当である。この水洗処理においては、スプレー水洗又は浸漬水洗のどちらでもよく、これらの方法を組み合わせて水洗することもできる。
【0069】
本発明のノンクロム金属表面処理方法は、上記工程(I)を行った被処理物をポリアリルアミン水溶液(D)で処理する工程(工程(II))を行うものである。上記工程(II)で使用するポリアリルアミンは、上述したポリアリルアミンを用いることができる。即ち、上述したポリアリルアミンを水に溶解したものをポリアリルアミン水溶液(D)として使用し、処理することによって行うことができる。上記工程(II)を行うことにより、ポリアリルアミンを含んでなる樹脂層を形成することができる。
【0070】
上記ポリアリルアミン水溶液(D)は、ポリアリルアミンの含有量が質量基準で、下限100ppm、上限10000ppmであることが好ましい。100ppm未満であると、塗装後、ラミネート後の密着性が低下するおそれがある。10000ppmを超えると、耐食性は向上せず、コスト高となるおそれがある。上記下限は、500ppmであることがより好ましく、上記上限は、5000ppmであることがより好ましい。
【0071】
上記ポリアリルアミン水溶液(D)は、特にpHを調整する必要は無く、適宜設定するポリアリルアミン量を溶解した水溶液を用いることができる。上記ポリアリルアミン水溶液(D)のpHは、特にpHを調整しない水溶液を用いる場合には、通常、10〜12程度である。
【0072】
上記工程(II)において、上記ポリアリルアミン水溶液(D)で処理する方法としては、上記工程(I)を行った被処理物を上記ポリアリルアミン水溶液(D)に接触させる方法であれば特に限定されず、スプレー法、浸漬法、ロールコート法等の通常の方法を挙げることができる。なかでも、スプレー法で行うことが好ましい。ポリアリルアミンの付着量を均一にするため、スプレー処理後は、ゴムロール絞り、エアブロー等により、被処理物表面に残った過剰の液を取り除くことが好ましい。被処理物が板状である場合、ゴムロール絞り法が好ましい。
【0073】
上記工程(II)において、上記ポリアリルアミン水溶液(D)の処理温度は、皮膜形成性が温度の影響を受けないので、特に処理温度の調整を行う必要はないが、処理後の乾燥を容易にするため、下限20℃であることが好ましく、また、エネルギーロスが大きくなる可能性があるので、上限60℃であることが好ましい。
【0074】
上記工程(II)において、スプレー法で処理する場合には、上記ポリアリルアミン水溶液(D)の処理時間は、好ましい下限は1秒、好ましい上限は10秒であり、より好ましい下限は2秒、より好ましい上限は6秒である。1秒未満であると、形成される皮膜量が充分でなく、塗装後、ラミネート後の密着性が低下するおそれがある。10秒を超えても、皮膜形成性に影響を与えず、生産性を低下させるおそれがある。上記工程(II)を行った後は、ゴムロール等を用いて素材表面の過剰な液を除去し、水洗は行わないことが好ましい。水洗を行った場合、工程(II)によって付着したポリアリルアミンが洗い流されてしまうおそれがあるためである。
【0075】
上記工程(I)及び上記工程(II)を行うことにより、金属製基材上に、ジルコニウム及び/又はチタンとリンとを含んでなる表面処理層及びポリアリルアミンを含んでなる樹脂層が形成された被覆金属材料を得ることができ、得られた被覆金属材料は、更に、塗装する場合には、塗装後耐食性、塗膜密着性に優れるものであり、また、更に、ラミネートフィルムを貼り付ける場合には、フィルム貼り付け後における耐食性、フィルム密着性に優れるものである。
【0076】
本発明のノンクロム金属表面処理方法において、上記工程(I)及び上記工程(II)を行った後に、乾燥することが好ましい。乾燥方法としては、加熱乾燥が好ましく、例えば、オーブン乾燥及び/又は熱空気の強制的循環による加熱乾燥を挙げることができる。
【0077】
上記乾燥において、乾燥温度は、素材温度として、下限40℃、上限120℃であることが好ましい。上記下限は、60℃であることがより好ましく、上記上限は、80℃であることがより好ましい。また、乾燥時間は、乾燥方法により適宜設定することができ、通常、下限6秒、上限60秒である。
【0078】
本発明のノンクロム金属表面処理方法は、上記ノンクロム金属表面処理剤(C)による処理が行われる前に酸で洗浄する工程が行われることが好ましい。更に、酸で洗浄する工程の前にアルカリで洗浄する工程が行われることが好ましい。より好ましい態様は、アルカリ洗浄、水洗、酸洗浄、水洗、ノンクロム金属表面処理剤(C)による処理(工程(I))、水洗、純水洗、ポリアリルアミン水溶液(D)による処理(工程(II))、ゴムロール絞り、乾燥の各工程を順次行う方法、又は、酸洗浄、水洗、ノンクロム金属表面処理剤(C)による処理(工程(I))、水洗、純水洗、ポリアリルアミン水溶液(D)による処理(工程(II))、ゴムロール絞り、乾燥の各工程を順次行う方法である。
【0079】
上記アルカリ洗浄処理としては特に限定されず、例えば、従来アルミニウムやアルミニウム合金等の金属のアルカリ洗浄処理に用いられてきたアルカリ洗浄を行うことができる。上記アルカリ洗浄処理において、通常、アルカリ洗浄はアルカリ性クリーナーを用いて行われる。また、上記酸洗浄は酸性クリーナーを用いて行われる。
【0080】
上記アルカリ性クリーナーとしては特に限定されず、例えば、通常のアルカリ洗浄に用いられるものを用いることができ、例えば、日本ペイント社製「サーフクリーナーEC370」等を挙げることができる。上記酸性クリーナーとしては特に限定されず、例えば、硫酸、硝酸、塩酸等の無機酸;日本ペイント社製「サーフクリーナーST160」等を挙げることができる。
【0081】
上記酸洗浄及びアルカリ洗浄処理は、通常、スプレー法で行われる。上記酸洗浄又はアルカリ洗浄処理を行った後は、基材表面に残存する酸洗浄液又はアルカリ洗浄剤を除去するために、水洗処理を行う。
【0082】
本発明のノンクロム金属表面処理方法により得られる皮膜において、各成分の皮膜量は、ノンクロム金属表面処理剤(C)の組成、ポリアリルアミン水溶液(D)の組成、それぞれの処理温度、処理時間を適宜設定することによって所望の皮膜量を得ることができる。
【0083】
本発明の被覆金属材料は、金属製基材上に、ジルコニウム及び/又はチタンとリンとを含んでなる表面処理層(A)を有し、更に、上記表面処理層(A)上に、ポリアリルアミンを含んでなる樹脂層(B)を有するものであることから、塗装後における耐食性及び塗膜密着性に優れるものであり、また、ラミネートフィルム貼り付け後における耐食性及びフィルム密着性にも優れるものである。特に、上記被覆金属材料における金属製基材としてアルミニウム又はアルミニウム合金を用い、ジルコニウム及び/又はチタンが水溶性錯フッ化ジルコニウム及び/又は水溶性錯フッ化チタンに由来するものであり、リンはオルソリン酸又は有機ホスホン酸化合物に由来するものである場合に得られるものは、密着性、耐食性により優れるものである。また、本発明のノンクロム金属表面処理方法は、耐食性及び密着性に優れる被覆金属材料を得ることができる方法である。従って、上記ノンクロム金属表面処理方法を適用することにより得られる被覆金属材料は、塗装後における耐食性及び密着性に優れるものであり、ラミネートフィルム貼り付け後における耐食性及びフィルム密着性に優れるものであることから、例えば、金属缶、電気製品、金属家具等の用途に好適に用いることができるものである。
【実施例】
以下本発明について実施例を掲げて更に詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。また実施例中、「部」は特に断りのない限り「質量部」を意味する。
【0084】
(水溶性錯フッ化ジルコニウム及びリン酸含有ノンクロム金属表面処理剤の調製)
イオン交換水9996.7部を攪拌装置付きベッセルに仕込んだ。常温にて攪拌しながら、日本軽金属社製「フッ化ジルコニウム水素酸」(Zrとして17.6%含有)2.3部を徐々に添加した。更に、攪拌しながら、75%リン酸0.8部を徐々に添加した。次いで、攪拌しながら、フッ化水素酸0.2部を徐々に添加した。続いて、攪拌しながら、アンモニアを添加し、処理剤のpHを2.6に調整した。10分攪拌を継続し、フッ化ジルコニウム水素酸をジルコニウムとして40ppm含有し、リン酸をリンとして20ppm含有する無色透明のノンクロム金属表面処理剤を得た。同様の方法で、表1、2に実施例、比較例として示された配合比率で、フッ化ジルコニウム水素酸のジルコニウムとリン酸のリンとを含有するノンクロム金属表面処理剤を得た。
【0085】
(水溶性錯フッ化ジルコニウム及び有機ホスホン酸化合物含有ノンクロム金属表面処理剤の調製)
イオン交換水9996.8部を攪拌装置付きベッセルに仕込んだ。常温にて攪拌しながら、日本軽金属社製「フッ化ジルコニウム水素酸」(Zrとして17.6%含有)2.3部を徐々に添加した。更に、攪拌しながら、1−ヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸0.7部を徐々に添加した。次いで、攪拌しながら、フッ化水素酸0.2部を徐々に添加した。続いて、攪拌しながら、アンモニアを添加し、処理剤のpHを2.6に調整した。10分攪拌を継続し、フッ化ジルコニウム水素酸をジルコニウムとして40ppm含有し、1−ヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸をリンとして20ppm含有する無色透明のノンクロム金属表面処理剤を得た。同様の方法で、表1、2に実施例、比較例として示された配合比率で、フッ化ジルコニウム水素酸のジルコニウムと1−ヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸のリンとを含有するノンクロム金属表面処理剤を得た。
【0086】
(水溶性錯フッ化チタン及びリン酸含有ノンクロム金属表面処理剤の調製)
イオン交換水9997.6部を攪拌装置付きベッセルに仕込んだ。常温にて攪拌しながら、森田化学工業社製「フッ化チタン水素酸」(Tiとして29.3%含有)1.4部を徐々に添加した。更に、攪拌しながら、75%リン酸0.8部を徐々に添加した。次いで、攪拌しながら、フッ化水素酸0.2部を徐々に添加した。続いて、攪拌しながら、アンモニアを添加し、処理剤のpHを2.6に調整した。10分攪拌を継続し、フッ化チタン水素酸をチタンとして40ppm含有し、リン酸をリンとして20ppm含有する無色透明のノンクロム金属表面処理剤を得た。同様の方法で、表1、2に実施例、比較例として示された配合比率で、フッ化チタン水素酸のチタンとリン酸のリンとを含有するノンクロム金属表面処理剤を得た。
【0087】
(水溶性錯フッ化チタン及び有機ホスホン酸化合物含有ノンクロム金属表面処理剤の調製)
イオン交換水9997.7部を攪拌装置付きベッセルに仕込んだ。常温にて攪拌しながら、森田化学工業社製「フッ化チタン水素酸」(Tiとして29.3%含有)1.4部を徐々に添加した。更に、攪拌しながら、1−ヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸0.7部を徐々に添加した。次いで、攪拌しながら、フッ化水素酸0.2部を徐々に添加した。続いて、攪拌しながら、アンモニアを添加し、処理剤のpHを2.6に調整した。10分攪拌を継続し、フッ化チタン水素酸をチタンとして40ppm含有し、1−ヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸をリンとして20ppm含有する無色透明のノンクロム金属表面処理剤を得た。同様の方法で、表1、2に実施例、比較例として示された配合比率で、フッ化チタン水素酸のチタンと1−ヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸のリンとを含有するノンクロム金属表面処理剤を得た。
【0088】
(水溶性錯フッ化ジルコニウム、水溶性錯フッ化チタン及びリン酸含有ノンクロム金属表面処理剤の調製)
イオン交換水9997.1部を攪拌装置付きベッセルに仕込んだ。常温にて攪拌しながら、フッ化ジルコニウム水素酸1.2部、続いてフッ化チタン水素酸0.7部を徐々に添加した。更に、攪拌しながら、75%リン酸0.8部を徐々に添加した。次いで、攪拌しながら、フッ化水素酸0.2部を徐々に添加した。続いて、攪拌しながら、アンモニアを添加し、処理剤のpHを2.6に調整した。10分攪拌を継続し、フッ化ジルコニウム水素酸をジルコニウムとして20ppm、フッ化チタン水素酸をチタンとして20ppm、リン酸をリンとして20ppm含有する無色透明のノンクロム金属表面処理剤を得た。同様の方法で、表1、2に実施例、比較例として示された配合比率で、フッ化ジルコニウム水素酸のジルコニウムとフッ化チタン水素酸のチタンとリン酸のリンとを含有するノンクロム金属表面処理剤を得た。
【0089】
(水溶性錯フッ化ジルコニウム、水溶性錯フッ化チタン及び有機ホスホン酸化合物含有ノンクロム金属表面処理剤の調製)
イオン交換水9997.2部を攪拌装置付きベッセルに仕込んだ。常温にて攪拌しながら、フッ化ジルコニウム水素酸1.2部、続いてフッ化チタン水素酸0.7部を徐々に添加した。更に、攪拌しながら、1−ヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸0.7部を徐々に添加した。次いで、攪拌しながら、フッ化水素酸0.2部を徐々に添加した。続いて、攪拌しながら、アンモニアを添加し、処理剤のpHを2.6に調整した。10分攪拌を継続し、フッ化ジルコニウム水素酸をジルコニウムとして20ppm、フッ化チタン水素酸をチタンとして20ppm、1−ヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸をリンとして20ppm含有する無色透明のノンクロム金属表面処理剤を得た。同様の方法で、表1、2に実施例、比較例として示された配合比率で、フッ化ジルコニウム水素酸のジルコニウムとフッ化チタン水素酸のチタンと1−ヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸のリンとを含有するノンクロム金属表面処理剤を得た。
【0090】
(ポリアリルアミン水溶液の調製)
イオン交換水9996部を攪拌装置付きベッセルに仕込んだ。常温にて攪拌しながら、日東紡績社製「PAA−05」(ポリアリルアミン、不揮発分20%含有)4部を徐々に添加した。10分攪拌を継続し、塩構造を持たないポリアリルアミンを80ppm含有する無色透明のポリアリルアミン水溶液を得た。同様の方法で、ポリアリルアミンを1000ppm、5000ppm、10000ppm含有する無色透明のポリアリルアミン水溶液を得た。
【0091】
(アミノ基含有樹脂水溶液の調製(比較樹脂成分))
ポリアリルアミンの代わりに、三菱化学社製「PVAM−0595B」(ポリビニルアミン)、和光純薬工業社製「アクリルアミドポリマー水溶液」(ポリアクリルアミド)、日本触媒社製「エポミンP−1000」(ポリエチレンイミン)を用い、上記ポリアリルアミン水溶液の調製と同様の方法で、それぞれ樹脂分を1000ppm含有するアミノ基含有樹脂水溶液を得た。
また、ポリアリルアミンの強酸塩として、日東紡績社製「PAA−HCl−3L」(PAA−10Cの塩酸塩)を用い、同様の方法で、樹脂分を1000ppm含有するアミノ基含有樹脂水溶液を得た。
【0092】
実施例1〜24、比較例1〜4
(ノンクロム金属表面処理材の作成)
板厚0.30mmのアルミニウム合金3004板材両面を、日本ペイント社製アルカリクリーナー「サーフクリーナーEC370」の1%希釈液を用いて洗浄し(65℃×3秒)、水洗し、続いて硫酸1%希釈液を用いて洗浄し(50℃×3秒)、水洗し、得られたアルミニウム材に、上記方法により調製され、表1及び表2に示した成分を有するノンクロム金属表面処理剤をスプレー装置により化成処理し(50℃×5秒)、水洗し、純水洗し、室温のポリアリルアミン水溶液又はアミノ基含有樹脂水溶液をスプレー装置によりそれぞれ2秒間処理を行った後、ゴムロールを用いて素材表面に付着した過剰な樹脂水溶液を絞りとった。その後、素材温度80℃にて30秒間乾燥させ、ノンクロム金属表面処理材を得た。
【0093】
比較例5〜7
上記ノンクロム金属表面処理材の作成において、室温のアミノ基含有樹脂水溶液で処理しなかった以外は同様の方法で処理し、ノンクロム金属表面処理材を得た。
【0094】
比較例8〜9
(ポリアリルアミン表面処理材の作成)
上記ノンクロム金属表面処理材の作成において、アルカリ脱脂、酸洗浄、水洗、純水洗の後、金属表面処理剤による化成処理を行わずに室温のポリアリルアミン水溶液を同様の方法で処理し、ポリアリルアミン表面処理材を得た。
【0095】
比較例10
(クロメート処理材の作成)
ノンクロム金属表面処理剤で化成処理し、ポリアリルアミン水溶液で処理を行う代わりに、日本ペイント社製「アルサーフ401/45」を用いた以外は、上記ノンクロム金属表面処理材の作成と同様にして、リン酸クロメート処理を施したクロメート処理材を作成した。
【0096】
(皮膜質量測定)
実施例及び比較例によって得られたノンクロム金属表面処理材、クロメート処理材における乾燥皮膜中のジルコニウム、チタン、クロムの質量を、島津製作所社製 蛍光X線分析装置「XRF−1700」を用いて測定した。
ノンクロム金属表面処理材、ポリアリルアミン表面処理材における乾燥皮膜中のポリアリルアミン及び各比較樹脂の質量は、米国LECO社製 形態別炭素/水分分析装置「RC412」を用いて各樹脂由来の有機炭素質量を測定した。
上記測定により得られたジルコニウム化合物中のジルコニウムの質量をZrとして、チタン化合物中のチタンの質量をTiとして、リン酸又は1−ヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸中のリンの質量をPとして、ポリアリルアミン又は各比較樹脂に由来する有機炭素質量をCとして、それぞれ表1、2に示した。
【0097】
(アルミ塗装材の作成)
得られたノンクロム金属表面処理材、ポリアリルアミン表面処理材、クロメート処理材に、日本ファインコーティングス社製ポリエステル系塗料「フレキコート#5000ホワイト」(不揮発分50%)を、リバースロールコーターを用いて、片面当たりウェット塗布量15g/mなるよう塗布し、コンベアー式オーブンを用いて素材温度230℃で60秒間焼付けを行い、塗料の乾燥塗装質量が7.5g/mであるアルミ塗装材をそれぞれ得た。
【0098】
(ラミネート材の作成)
得られたノンクロム金属表面処理材、ポリアリルアミン表面処理材、クロメート処理材に、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムを乗せ、加熱ローラーを用いて、ロール温度260℃(素材温度240℃)、ロール速度30m/分にて熱圧着した直後、水冷し、ラミネート材を得た。
【0099】
(評価方法)
得られたアルミ塗装材、ラミネート材のそれぞれに対して、下記評価を行い、結果を表1、2に示した。
【0100】
1.塗装材の密着性
アルミ塗装材を100℃の沸騰水に60分間浸漬した。アルミ塗装材を沸騰水より取り出し後直ちに、1mm幅で100個のクロスカットを施し、粘着テープ剥離を行い、剥離個数を測定した。剥離個所が無いことを合格レベルとした。
【0101】
2.塗装材の耐食性
アルミ塗装材の塗装面を凸となるよう、図1に示したカップ加工を行った。カップ加工材を、50℃に保持した、2%クエン酸、2%食塩の混合水溶液に72時間浸潰し、取り出し後、図1に示した平面部1、エッジ部2及び側面部3の各部位の腐食状態を5点満点にて評価し、その平均点を算出した。
5点:腐食無し
4点:微少腐食(側面部0.5mm、腐食10ヶ所以下、エッジ部:0.5mm腐食5ヶ所以下)
3点:腐食(側面部:1mm腐食20ヶ所以下、エッジ部:1mm腐食10ヶ所以下)
2点:腐食(側面部:3mm腐食20ヶ所以下、エッジ部:3mm腐食10ヶ所以下)
1点:全面腐食(側面部、エッジ部とも半分以上腐食)
評点平均値がリン酸クロメート処理へのアルミ塗装材と同等以上の数値を示すことを合格レベルとした。
【0102】
3.ラミネート材の密着性
図2のように50mm×50mmのラミネート材のうち、ラミネート貼り付け面の裏側22(ラミネート非被覆面)にNTカッターでV字切り込み21をb−c−bのように入れ、このV字切り込み21の裾をラミネート材の端から5mmの所までa−bのように金切鋏で切断した。次いで、図3のようにV字切り込み部の裾とその両端部とを逆方向に、東洋ボールドウィン社製「テンシロン引張り試験機」にて50mm/分の速度で引っ張り、切断面のラミネートフィルム残存状態を図4に示す目視5段階評価基準に従って5点満点で評価した。
【0103】
4.ラミネート材の密着性
ラミネート材のラミネート被覆面を合わせ、ホットプレス試験機を用いて、250℃、10kg/cmにて1分間熱圧着させた。貼り合わせたラミネート材を5mm幅に切り出し、東洋ボールドウィン社製「テンシロン引張り試験機」にて200mm/分の速度で引き剥がした際にかかる力を測定した。リン酸クロメート処理へのラミネート材と同等以上の数値(密着強度)を示すことを合格レベルとした。
【0104】
5.ラミネート材の耐食性
ラミネート材のラミネート被覆面を凸となるように図1に示したカップ加工を行い、図5に示したように円周状にカットを施した。加工材を、50℃に保持した2%クエン酸、2%食塩の混合水溶液に144時間浸漬し、取り出し後、カット部からの腐食の広がり長さを測定した。
【0105】
【表1】
Figure 2004018930
【0106】
【表2】
Figure 2004018930
【0107】
実施例により得られた被覆金属材料は、塗装後の密着性及び耐食性に優れ、ラミネート材の密着性及び耐食性に優れるものであり、リン酸クロメート処理を行ったものと同等以上の性能を示すものであった。
【0108】
これに対して、比較樹脂成分として、ポリビニルアミン、ポリアクリルアミド、ポリエチレンイミン、ポリアリルアミンの強酸塩を用いた場合、化成処理を行わなかった場合に得られたものは、塗装後の密着性及び耐食性、並びに、ラミネート材の密着性及び耐食性に劣るものであった。
【0109】
【発明の効果】
本発明の被覆金属材料は、上述した構成よりなるので、塗装後における塗膜密着性及び耐食性に優れるものであり、また、ラミネートフィルム貼り付け後のフィルム密着性及び耐食性にも優れるものである。また、本発明のノンクロム金属表面処理方法は、上記被覆金属材料を得ることができる方法である。従って、上記ノンクロム金属表面処理方法を適用することによって得られる被覆金属材料は、密着性、耐食性に優れるものであることから、例えば、飲料缶、家電向け等の用途に好適に使用することができるものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】塗装材の耐食性評価のための被検物の形状の模式図を示す。
【図2】密着性評価のための切り込みを入れたラミネート材のラミネート非被覆面の概略図を示す。
【図3】テンシロン引張り試験機による引っ張り方向の模式図を示す。
【図4】密着性評価における目視5段階評価基準を示す切り込み部の拡大図を示す。
【図5】ラミネート材の耐食性評価のための被検物の形状の模式図を示す。
【符号の説明】
1     平面部
2     エッジ部
3     側面部
21    切り込み
22、31 非被覆面
23    圧延目
32    円周状カット部

Claims (10)

  1. 金属製基材上に、ジルコニウム及び/又はチタンとリンとを含んでなる表面処理層(A)を有し、更に、前記表面処理層(A)上に、ポリアリルアミンを含んでなる樹脂層(B)を有することを特徴とする被覆金属材料。
  2. ジルコニウム及び/又はチタンは、水溶性錯フッ化ジルコニウム及び/又は水溶性錯フッ化チタンに由来するものである請求項1記載の被覆金属材料。
  3. リンは、オルソリン酸に由来するものである請求項1又は2記載の被覆金属材料。
  4. リンは、ホスホン基を構成するリン原子が炭素原子と結合した有機ホスホン酸化合物に由来するものである請求項1、2又は3記載の被覆金属材料。
  5. 表面処理層(A)は、乾燥後の片面当たりの質量で、ジルコニウム及び/又はチタンの含有量が3〜30mg/m、リンの含有量が0.5〜5mg/mであり、
    樹脂層(B)は、乾燥後の片面当たりの質量で、ポリアリルアミンに由来する炭素の含有量が1.6〜200mg/mである請求項1、2、3又は4記載の被覆金属材料。
  6. 金属製基材は、アルミニウム又はアルミニウム合金である請求項1、2、3、4又は5記載の被覆金属材料。
  7. 被覆金属材料は、ラミネート材の製造に用いられるものである請求項1、2、3、4、5又は6記載の被覆金属材料。
  8. 水溶性ジルコニウム化合物及び/又は水溶性チタン化合物とリン化合物とからなるノンクロム金属表面処理剤(C)で被処理物を処理する工程(I)、並びに、前記工程(I)を行った被処理物をポリアリルアミン水溶液(D)で処理する工程(II)からなることを特徴とするノンクロム金属表面処理方法。
  9. 水溶性ジルコニウム化合物及び/又は水溶性チタン化合物は、水溶性錯フッ化ジルコニウム及び/又は水溶性錯フッ化チタンである請求項9記載のノンクロム金属表面処理方法。
  10. ノンクロム金属表面処理剤(C)は、水溶性錯フッ化ジルコニウム化合物及び/又は水溶性錯フッ化チタン化合物の含有量がジルコニウム及び/又はチタン原子換算で40〜1000ppm、リン化合物の含有量がリン原子換算で20〜500ppmであり、
    ポリアリルアミン水溶液(D)は、ポリアリルアミンの含有量が質量基準で80〜10000ppmである請求項8、9又は10記載のノンクロム金属表面処理方法。
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