JP5184173B2 - 樹脂被覆用アルミニウム材及び樹脂被覆アルミニウム材、ならびに、これらの製造方法 - Google Patents

樹脂被覆用アルミニウム材及び樹脂被覆アルミニウム材、ならびに、これらの製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、アルミニウム基材の少なくとも一方の表面にアルミニウム酸化皮膜と、所定構造を有するポリアクリルアミド誘導体、ポリメタクリルアミド誘導体、ポリビニルアミン誘導体及びポリアリルアミン誘導体の少なくとも1種を含む樹脂層を有する樹脂被覆用アルミニウム材、この樹脂被覆用アルミニウム材の上に樹脂被覆膜を有する密着性に優れた樹脂被覆アルミニウム材、ならびにこれらの製造方法に関する。
近年、食品容器や、家具、建材用途には、塗料あるいはフィルムによる被覆を施したアルミニウム合金板が広く採用されるようになってきた。これは、アルミニウムが他の金属材料に比べて、リサイクル性が高く、加工性と美観性に優れるためである。
このようなアルミニウム材の下地表面処理方法としては、従来からリン酸クロメート処理又はクロム酸クロメート処理が用いられてきた。これらのクロメート系表面処理液により形成されるクロメート化成皮膜は、皮膜単独の耐食性に優れており、また各種被覆を施した後の密着性や耐食性にも優れる特徴を有している。しかし、近年では環境保護の観点からクロメート処理の際のクロム含有排水が環境汚染につながること、また、排水処理にもコストを必要とする欠点があること等から、近年ではクロメート系処理液の使用を廃止する必要が生じてきた。
そのため6価クロムを含有しない処理液が望まれ、これまでにも種々の検討が行われている。例えば特許文献1には、リン酸イオンとジルコニウム化合物とを含有するpH2〜4の溶液に、500ppm以下の酸化剤と、2000ppm以下のフッ素を含むフッ酸又はフッ化物の少なくとも1種を含有する処理液を用いた表面処理方法が提案されている。
特開平7-48677号公報
このようなノンクロメート処理液を用いた処理によって、アルミニウム基材表面にジルコニウム酸化物を主成分とした化成皮膜が形成される。しかしながら、ノンクロメート処理法では、化成皮膜形成と同時に化成皮膜の内部あるいは最表面に生成するアルミニウム酸化物や、化成処理を施したアルミニウム基材を保管する過程において大気中の酸素と化成皮膜最表面との反応により成長するアルミニウム酸化物が弱境界層を形成する。このような弱境界層は、塗料やフィルムとの密着性の低下に影響を及ぼすため、従来のクロメート処理法に比べて限定された用途にしか利用できないという欠点を有している。
また、特許文献2には、水溶性錯フッ化ジルコニウム及び/又は水溶性錯フッ化チタンに由来するジルコニウム及び/又はチタンを含んで成る表面処理層を有し、更に表面処理層上部にポリアリルアミンを含んで成る樹脂層を有した被覆金属材料が提案されている。
特許第3904983号
この特許文献2によれば、ノンクロメート化成皮膜の最表面に、ポリアリルアミンを含んで成る樹脂層を有するため、従来のノンクロメート処理剤に比べて、塗料やフィルムとの密着性に優れた被覆用のアルミニウム材料を提供することができる。しかし、この積層構造では、ポリアリルアミン層と塗料やフィルムによる被覆層との界面破壊は抑制できるものの、化成皮膜とポリアリルアミン層との界面破壊や、ポリアリルアミン層自体の凝集破壊によって、接着破壊が生じることがしばしば確認されている。
本発明は、上記の課題を解決するために成されたものであり、化成処理及び化成処理後の樹脂層の形成を行わずに、樹脂被覆膜との密着性に優れた樹脂被覆用アルミニウム材、ならびに、これに樹脂被覆膜を設けた樹脂被覆アルミニウム材を提供することを目的とする。また、本発明は、上記の優れた特性を有する樹脂被覆用アルミニウム材及び樹脂被覆アルミニウム材のそれぞれ製造方法を提供することも目的とする。
本発明者らは、上記課題を検討した結果、アルミニウム基材と樹脂被覆膜との密着性の低下は、化成処理を施す際において化成皮膜の内部あるいは最表面に不可避的に形成されるアルミニウム酸化物や、化成処理後にアルミニウム基材を保管する過程において大気中の酸素と化成皮膜最表面との反応によって成長するアルミニウム酸化物に起因することを見出した。
そこで、かかる知見に基づいて鋭意検討した結果、アルミニウム基材の少なくとも一方の表面をアルカリ性溶液で洗浄し、当該アルカリ性溶液による洗浄表面を酸性溶液で洗浄し、当該酸性溶液による洗浄表面を所定構造のポリアクリルアミド誘導体、ポリメタクリルアミド誘導体、ポリビニルアミン誘導体及びポリアリルアミン誘導体の少なくとも1種を含む樹脂溶液で処理して樹脂層を設けることによって、化成処理を施す際に不可避的に形成されるアルミニウム酸化物や保管する過程で成長するアルミニウム酸化物を抑制できること、また、樹脂層の官能基が樹脂被覆膜との結合を強化することを見出した。すなわち、本発明は、従来までの化成処理や化成処理後の樹脂層の形成を行うことなく、樹脂被覆膜との密着性に優れた樹脂被覆用アルミニウム材及びこれを用いた樹脂被覆アルミニウム材を提供するものである。
本発明は請求項1において、アルミニウム又はアルミニウム合金からなるアルミニウム基材と、当該アルミニウム基材の少なくとも一方の表面に形成されたアルミニウム酸化皮膜と、当該アルミニウム酸化皮膜表面に形成された樹脂層であって、下記式(1)で示される構造を有するポリアクリルアミド誘導体及び下記式(2)で示される構造を有するポリメタクリルアミド誘導体の少なくとも1種を含む樹脂層とを備え、前記アルミニウム酸化皮膜は6〜20nmの厚さを有し、前記樹脂層の形成量は樹脂に由来する炭素含有量が5〜100mg/mであることを特徴とする樹脂被覆用アルミニウム材とした。
上記式(1)及び(2)において、nは別個独立した2〜50であり、mは別個独立した1〜6であり、R1、R2はそれぞれ水素原子又は炭素数1〜10のアルキル基を表わす。
本発明は請求項2において、請求項1に記載の樹脂被覆用アルミニウム材における樹脂層の上に、樹脂被覆膜を更に備えた樹脂被覆アルミニウム材とした。
本発明は請求項3において、アルミニウム又はアルミニウム合金からなる基材の少なくとも一方の表面をアルカリ性溶液で洗浄する工程と、当該アルカリ性溶液による洗浄表面を酸性溶液で洗浄する工程と、当該酸性溶液による洗浄表面を樹脂溶液で処理する工程とを含み、
前記樹脂溶液は、下記式(1)で示される構造を有するポリアクリルアミド誘導体及び下記式(2)で示される構造を有するポリメタクリルアミド誘導体の少なくとも1種を含み、
前記酸性溶液による洗浄工程後における前記アルミニウム基材表面に形成されるアルミニウム酸化皮膜の厚さは6〜20nmであり、
前記樹脂溶液による処理工程によって前記アルミニウム酸化皮膜上に下記式(1)及び(2)の少なくとも1種を含む樹脂層が形成され、当該樹脂層の形成量は樹脂に由来する炭素含有量が5〜100mg/mであることを特徴とする樹脂被覆用アルミニウム材の製造方法とした。
上記式(1)及び(2)において、nは別個独立した2〜50であり、mは別個独立した1〜6であり、R1、R2はそれぞれ水素原子又は炭素数1〜10のアルキル基を表わす。
本発明は請求項4において、請求項3における樹脂溶液による処理工程の後に、前記樹脂層の上に樹脂被覆膜を被覆する工程を更に含む樹脂被覆アルミニウム材の製造方法とした。
従来のクロメート系やノンクロメート系の化成処理、更にはその後の樹脂層の形成処理を行わずに、樹脂被覆膜との密着性に優れた樹脂被覆用アルミニウム材及びこれを用いた樹脂被覆アルミニウム材を提供することができる。
A.アルミニウム酸化物の抑制
従来、アルミニウム又はアルミニウム合金からなる基材(以下、「アルミニウム基材」と記す)の表面にリン酸ジルコニウム系のノンクロメート処理を施した場合、表面層の構造は、アルミニウム基材と化成皮膜の界面にアルミニウムのフッ化物、酸化物、オキシ水酸化物等からなるアルミニウム酸化皮膜が存在し、その上にジルコニウムのリン酸塩、水酸化物、酸化物及びそれらの水和物等からなる化成皮膜が形成されるといったモデルが提唱されてきた。
本発明者らはオージェ電子分光分析、二次イオン質量分析による解析機器を用い、従来法によって形成される化成皮膜の深さ方向の元素分析、いわゆるデプスプロファイルを詳細に調べた結果、化成皮膜及びアルミニウム酸化皮膜の主要成分は、深さ方向において均一な構造あるいは幾つかの物質からなる層状構造をとらず、深さ方向でそれら元素濃度が連続的に変化するといった、いわゆる傾斜構造を有していることを確認した。
具体的には、化成処理を施したアルミニウム基材表面は、アルミニウム基材素地から表層方向に向かうに従い、化成皮膜成分(ジルコニウム成分及びリンの成分)の増加に伴ってアルミニウム酸化皮膜成分が増加し、更に表層方向に向かうに従いアルミニウム基材成分の減少に伴ってアルミニウム酸化皮膜成分が極大値を示したのち減少するような傾斜構造を有する。また、化成皮膜の最表面では、ジルコニウム及びリン皮膜成分と共に、化成皮膜形成過程で不可避的に生成するアルミニウム酸化皮膜成分が残存していることが確認された。
また、化成皮膜表層に存在するアルミニウム酸化物は、塗料や樹脂被覆膜との密着性に影響を及ぼし、アルミニウム酸化物量が多いほど密着性は低下する。したがって、良好な密着性能を有する化成皮膜を得るためには、化成皮膜の内部あるいは最表面のアルミニウム酸化物の生成を抑制しなければならない。本発明者らは、化成処理条件あるいは化成処理液組成物の濃度等を厳密に制御して種々の化成皮膜形成を試みたが、アルミニウム酸化物の生成が抑制された良好な化成皮膜を得ることは困難であった。
そこで、本発明者らは、アルミニウム基材表面をまずアルカリ性溶液で洗浄し、次いで酸性溶液で洗浄した後に、化成処理を行なわずに、所定構造のポリアクリルアミド誘導体、ポリメタクリルアミド誘導体、ポリビニルアミン誘導体及びポリアリルアミン誘導体の少なくとも1種を含む樹脂溶液で処理して樹脂層を設け、更にその上に樹脂被覆膜を設けることにより、弱境界層となるアルミニウム酸化物の生成を抑制した状態を維持しつつ、樹脂被覆膜との密着性に優れる樹脂被覆アルミニウム材が得られることを見出した。
すなわち、酸性溶液による処理後に、所定構造のポリアクリルアミド誘導体、ポリメタクリルアミド誘導体、ポリビニルアミン誘導体及びポリアリルアミン誘導体の少なくとも1種を含む樹脂溶液で処理し、樹脂層を設けることにより、アルミニウム基材表面のアルミニウム酸化物に起因するヒドロキシル基と樹脂層に官能基として含まれるアミノ基とが共有結合し強固な結合が形成され、その樹脂層がバリア層となって、保管時のアルミニウム酸化物の成長を抑制する効果が発揮される。
B.表面処理アルミニウム材
本発明に係る樹脂被覆用アルミニウム材は、アルミニウム基材の表面をアルカリ性溶液で洗浄し、次いで酸性溶液で洗浄した後に、所定構造のポリアクリルアミド誘導体、ポリメタクリルアミド誘導体、ポリビニルアミン誘導体及びポリアリルアミン誘導体の少なくとも1種を含む樹脂溶液で処理して樹脂層を形成することにより製造される。図1に示すように、本発明に係る樹脂被覆用アルミニウム材1は、模式的には、このようなアルカリ性溶液による洗浄と、これに続く酸性溶液による洗浄により、アルミニウム基材2の表面に均質なアルミニウム酸化皮膜3が形成され、更に所定構造のポリアクリルアミド誘導体、ポリメタクリルアミド誘導体、ポリビニルアミン誘導体及びポリアリルアミン誘導体の少なくとも1種を含む樹脂溶液で処理することにより、アルミニウム酸化皮膜3上に樹脂層4が形成された構造を成す。
B−1.アルミニウム基材
アルミニウム基材はアルミニウム又はアルミニウム合金からなり、Al−Mn系のJIS3000系合金、Al−Mg系のJIS5000系合金等が好適に用いられる。
B−2.アルカリ性溶液による洗浄
アルミニウム基材は、まずアルカリ性溶液によって洗浄される。アルカリ性溶液による洗浄は、アルミニウム基材表面に付着した磨耗分や圧延油等の汚染物を除去する目的で行われる。洗浄方法としては、アルミニウム基材等の金属のアルカリ洗浄処理において従来から用いられているアルカリ洗浄を行うことができる。アルカリ洗浄のためのアルカリ溶液には、アルカリ水溶液や有機溶媒にアルカリ成分を溶解又は分散したアルカリ溶液からなるアルカリ性クリーナーが通常用いられ、アルカリ水溶液からなるアルカリ性クリーナーが好適に用いられる。アルカリ性クリーナーとしては特に限定されず、通常のアルカリ洗浄に使用されるものを用いることができる。例えば、市販の苛性ソーダ、日本ペイント社製のサーフクリーナーEC370、EC371、420N−2や、日本パーカライジング社製のFC4498−SK3等が挙げられる。
アルカリ性溶液による洗浄条件としては特に限定されず、汚染物を効率良く除去することが可能な条件を選択すればよい。汚染物は、アルミニウム基材表面における弱エッチング作用によって除去されるため、通常、洗浄温度や濃度が高い程、短時間の処理が可能となる。アルカリ性溶液による洗浄が十分でない場合には、処理後においてもアルミニウム基材表面の汚染物が残存してしまうことに加え、アルミニウム基材表面の親水性が確保できないため、次工程の酸性溶液による洗浄条件が限定されることになる。一方、アルカリ性溶液による洗浄を、高温、高濃度、長時間で施すと、アルミニウム基材表面の汚染物は良好に除去されるが、コストの増加につながるため好ましくない。アルカリ性溶液による洗浄では、通常、0.5〜5重量%のアルカリ性水溶液を用いて、40〜70℃で、2〜20秒間の処理が行われる。
B−3.酸性溶液による洗浄
アルカリ性溶液による洗浄に続いて酸性溶液による洗浄が施される。酸性溶液による洗浄は、アルカリ性溶液による洗浄の際にアルミニウム基材表面に濃化したスマットと呼ばれる表面の残渣物と、弱アルカリエッチングと同時に成長するアルミニウム酸化物の除去を目的とする。酸性溶液による洗浄方法においても、アルミニウム基材等の金属の酸性洗浄処理に用いられる従来の酸性洗浄を行うことができる。酸性溶液には、酸性水溶液や、有機溶媒に酸成分を溶解又は分散した酸性溶液が用いられる。酸性溶液としては、水溶液が好適に用いられ、特に、硫酸水溶液、硝酸水溶液等が好ましい。酸性溶液による洗浄においても、洗浄温度や濃度が高い程、短時間の処理が可能となる。酸性溶液による洗浄が十分でない場合には、処理後もアルミニウム基材表面のスマットや弱アルカリエッチングと同時に成長するアルミニウム酸化物が残存してしまうため、次工程における所定構造のポリアクリルアミド誘導体、ポリメタクリルアミド誘導体、ポリビニルアミン誘導体及びポリアリルアミン誘導体の少なくとも1種を含む樹脂溶液による処理性に悪影響を及ぼす。スマットやアルミニウム酸化物の除去では、0.5〜5重量%の酸性水溶液を用いるのが取扱う上で好ましく、2重量%程度の濃度を有する酸性水溶液を用いる場合には、40〜60℃の温度で3〜10秒間の処理が施される。
B−4.アルミニウム酸化皮膜
このようなアルカリ性溶液による洗浄と、これに続く酸性溶液による洗浄により、アルミニウム基材の表面には、厚さの制御された均質なアルミニウム酸化皮膜が形成される。アルミニウム酸化皮膜は6〜20nmとする必要があり、好ましくは8〜16nmとする必要がある。アルミニウム酸化皮膜を20nm以下とすることにより良好な親水性を確保でき、次工程における所定構造のポリアクリルアミド誘導体、ポリメタクリルアミド誘導体、ポリビニルアミン誘導体及びポリアリルアミン誘導体の少なくとも1種を含む樹脂溶液による処理が簡便にかつ処理ムラなく施される。また、アルカリ性溶液処理と酸性溶液処理によってアルミニウム酸化皮膜が形成されるが、6nmは不可避的に形成する最小厚さである。
一方、酸性溶液処理後のアルミニウム酸化皮膜が20nmを超えると、十分な親水性が得られず、樹脂溶液による処理時に塗布ムラが生じ易くなる。酸性溶液による洗浄後のアルミニウム酸化皮膜を20nm以下とするためには、例えば、2重量%程度の濃度を有する酸性水溶液を用いて、40℃〜60℃で、3〜10秒間の処理を行うことが好ましい。
なお、本発明において規定するアルミニウム酸化皮膜厚さとは、オージェ電子分光分析のデプスプロファイルにおいて、Alの深さ方向プロファイルと酸素の深さ方向プロファイルとの交点を求め、この交点位置の最表面からの距離として表わされる。
例えば、アルミニウム基材(JIS−A3004合金)を2重量%のアルカリ性水溶液にて60℃、5秒で洗浄した後に、2重量%の硫酸水溶液を用いて30℃で1秒間処理した際のAl、酸素(O)及びMgの深さ方向プロファイルの測定例を図2に示す。この場合のアルミニウム酸化皮膜厚さは29nmとなる。この場合には、酸処理温度が低く処理時間も短いため、アルミニウム酸化皮膜を十分に除去しきれていない。
また、2重量%のアルカリ性水溶液にて60℃、5秒で洗浄した後に、2重量%の硫酸水溶液を用いて50℃で3秒間処理した際のAl、酸素(O)及びMgの深さ方向プロファイルの測定例を図3に示す。この場合のアルミニウム酸化皮膜厚さは6nmとなる。この場合には、酸処理温度と処理時間が適切なので、アルミニウム酸化皮膜を十分に除去できている。
上記アルカリ性溶液による洗浄処理及び酸性溶液による洗浄処理は、スプレー法、浸漬法等を用いることができるが、処理性の観点からスプレー法が好ましい。更に、アルカリ性溶液の洗浄後、ならびに、酸性溶液の洗浄後には、アルミニウム基材表面に残存するアルカリ成分や酸性成分を除去するためにそれぞれ水洗処理を行なうのが好ましい。水洗処理としては、電気伝導度が40mS/m以下で、5〜25℃の十分量の水を用いて、浸漬処理又はスプレー処理が施される。
B−5.樹脂層の形成
前記アルミニウム酸化皮膜の表面に所定構造のポリアクリルアミド誘導体、ポリメタクリルアミド誘導体、ポリビニルアミン誘導体及びポリアリルアミン誘導体の少なくとも1種を含む樹脂層を形成することにより、その上に設けられる樹脂被覆膜との密着性を向上させることができる。ポリアクリルアミド誘導体としては下記式(1)のものが用いられ、ポリメタクリルアミド誘導体としては下記式(2)のものが、ポリビニルアミン誘導体としては下記式(3)のものが、ポリアリルアミン誘導体としては下記式(4)のものが用いられる。
式中において、nは重合度を表わし2〜50であり、各式において別個独立したものである。mも重合度を表わし2〜6である。したがって、各式において、nはそれぞれ同一でも異なっていてもよく、mも同一でも異なっていてもよい。R1、R2はいずれも、水素原子又は炭素数1〜10のアルキル基を表わし、それぞれ同一でも異なっていてもよい。
nが2未満では、重合度が小さ過ぎて樹脂層の形成が困難であり、50を超えると、樹脂溶液の調製が困難となる。また、mが1未満では重合度が小さ過ぎて樹脂層の形成が困難であり、6を超えると樹脂溶液の調製が困難となったり、塗布処理性が劣る。
式中(1)〜(4)においてR1及びR2を水素原子とし、mを1とするのが好ましい。この場合は、上記式(1)はポリアクリルアミドであり、上記式(2)はポリメタクリルアミドであり、上記式(3)はポリビニルアミンであり、上記式(4)はポリアリルアミである。
上記樹脂層に含まれるアミノ基などの官能基が、樹脂被覆膜のヒドロキシル基やカルボキシル基等との間で強固な結合を形成するため、後に被覆される樹脂被覆膜との良好な密着性が付与される。更に、樹脂層中のアミノ基が、アルミニウム基材表面のアルミニウム酸化物に起因するヒドロキシル基と結合し、両者の間に強固な共有結合も形成される。また、水素原子がアルキル基で置換されたアミノ基においても、樹脂被覆膜のヒドロキシル基やカルボキシル基等との間で、また、アルミニウム基材表面のアルミニウム酸化物に起因するヒドロキシル基との間での脱アルコール反応に基づく結合による密着性も付与される。その結果、樹脂層がバリア層となって保管時のアルミニウム酸化物の成長を抑制する効果が発揮され、後に被覆される樹脂被覆膜の良好な密着性に寄与する。
樹脂層は、上記所定構造のポリアクリルアミド誘導体、ポリメタクリルアミド誘導体、ポリビニルアミン誘導体及びポリアリルアミン誘導体の少なくとも1種を含む樹脂溶液をアルミニウム酸化皮膜表面に塗布、乾燥することによって形成される。溶媒としては、水、或いは、極性又は非極性の有機溶媒が用いられ、上記樹脂をこれら溶媒に溶解又は分散して樹脂溶液が調製される。溶媒としては、水が好適に用いられる。また、この樹脂溶液はアルカリ性を呈するので、pHを4〜10程度に調整するために酸性中和剤を添加することもできる。中和剤としては、強酸で中和した場合には、溶液中の樹脂が強酸塩となり、樹脂被覆膜との密着性が低下するため好ましくなく、一般には酢酸等の弱酸を使用することが好ましい。
形成される樹脂層の良好な均一性及び密着性を得るには、樹脂層の形成量を炭素量で規定する必要がある。種々の検討の結果、乾燥後における樹脂層の形成量は樹脂に由来する炭素の含有量が5〜100mg/mとする必要があることが判明した。
樹脂層の炭素量が5mg/m未満であると、酸性洗浄後のアルミニウム基材表面全体を被覆する樹脂層を形成することができない。このような場合には、樹脂層で被覆されていない箇所で、処理後の保管時にアルミニウム基材表面と大気中の酸素との反応により、アルミニウム酸化物が成長してしまう。その結果、その後に樹脂層の上部に形成される樹脂被覆膜との密着性が劣ってしまう。
一方、上記樹脂層の炭素量が100mg/mを超えると、アルミニウム基材表面を樹脂層で完全に被覆することが可能であるため、弱境界層としてのアルミニウム酸化物の成長は抑制できる。しかしながら、樹脂層の内部で凝集破壊が生じるため、樹脂被覆膜との密着性の低下を招くことになる。
このような樹脂層の炭素量を得るためには、樹脂溶液中の樹脂濃度と塗布する溶液量を制御する必要がある。通常、樹脂濃度としては、1〜20重量%、好ましくは5〜10重量%のものが用いられる。1重量%未満では、多量の溶液を塗布しなければならず、所望の炭素量を含む樹脂層が形成できない場合がある。一方、20重量%を超えると、塗布する溶液量が少量になって樹脂層厚さの制御が困難となる。具体的には、上記範囲内の濃度を有する樹脂溶液の塗布量を適宜選択することによって、樹脂層中の上記炭素量を達成することになる。その結果、形成される樹脂層は良好な均一性を有し、かつ、圧延目などによってアルミニウム基材表面に凹凸が存在していても、アルミニウム基材との安定した良好な密着性が得られる。
樹脂層の形成方法は特に限定されるものではなく、ロールコート法、スプレーコート法、バーコート法、ディップコート法などが用いられる。塗布した後には、50〜200℃、好ましくは80〜180℃の温度で乾燥される。乾燥時間は、乾燥温度等に応じて適宜選択される。すなわち、乾燥温度が高い場合には乾燥時間を短時間に、乾燥温度が低い場合には乾燥時間を長くすることが望ましい。通常、塗布された樹脂溶液とアルミニウム基材との間には水素結合が形成され、乾燥によって水素結合部から脱水反応が進行する。その結果、樹脂層とアルミニウム基材との間に共有結合が形成され両者の密着性の向上に寄与する。ここで、低温で短時間の乾燥では、上記水素結合部分における脱水反応不完全となり、樹脂層とアルミニウム基材との十分な密着性が得られない。
一方、高温で長時間にわたって乾燥するとアルミニウム酸化皮膜に割れが生じ、樹脂層のアルミニウム基材への密着性が低下する。したがって、乾燥条件としては、例えば、乾燥温度が60℃の場合には乾燥時間が40秒、150℃では15秒などとすることが好ましい。このような乾燥処理により、上記水素結合部からの脱水反応が進行し、アルミニウム基材と良好な共有結合を形成した樹脂層を設けることができる。
本発明に係る樹脂被覆用アルミニウム材は、アルミニウム基材の少なくとも一方の表面にアルミニウム酸化皮膜とその上に形成されたポリアクリルアミド誘導体、ポリメタクリルアミド誘導体、ポリビニルアミン誘導体及びポリアリルアミン誘導体の少なくとも1種を含む樹脂層とを備える。すなわち、アルミニウム基材の一方の面にのみアルミニウム酸化皮膜とその上に形成された樹脂層とを備える形態と、アルミニウム基材の両方の面にそれぞれ、アルミニウム酸化皮膜とその上に形成された樹脂層とを備える形態とを有する。
C.樹脂被覆アルミニウム材
図4に示すように、本発明に係る樹脂被覆アルミニウム材5は、模式的には、樹脂被覆用アルミニウム材1の上部に樹脂被覆膜6を形成したものであり、具体的には、アルミニウム基材2上のアルミニウム酸化皮膜3と、アルミニウム酸化皮膜3上に形成された所定構造のポリアクリルアミド誘導体、ポリメタクリルアミド誘導体、ポリビニルアミン誘導体及びポリアリルアミン誘導体の少なくとも1種を含む樹脂層4とを備える樹脂被覆用アルミニウム材1における樹脂層4の上部に、樹脂被覆膜6を被覆したものである。樹脂被覆膜としては、フィルムをラミネートしたもの、又は塗料を塗布しこれを乾燥したものが用いられる。
C−1.フィルムの樹脂被覆膜
フィルムとしては、アルミニウム基材に対して熱接着性を示すものであればよく、被覆用アルミニウム材に要求される各種特性に応じて、種々の特性を有するフィルムを選択することが可能である。このようなフィルムの一例として、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ナイロン6、ナイロン11、ポリカーボネート、ポリアリレート等を挙げることができる。
このようなフィルムは、上記所定構造のポリアクリルアミド誘導体、ポリメタクリルアミド誘導体、ポリビニルアミン誘導体及びポリアリルアミン誘導体の少なくとも1種を含む樹脂層を形成した後のアルミニウム基材へ熱圧着又は熱接着によってラミネートされる。例えば、アルミニウム基材を高周波誘導加熱や直火加熱等によって加熱しつつ、アルミニウム基材表面にフィルムを押圧する熱圧着法や、フィルムを押出成形しつつ、これを加熱したアルミニウム基材表面に接着する熱接着法が用いられる。これらの方法はいずれも従来法であり、目的、用途等に合わせて適宜選択することができる。
フィルムは、150〜300℃で上記樹脂層の上部に圧着又は接着によってラミネートされる。本発明で用いる樹脂層は、上述のようにフィルムとの強固な密着をなすため、従来において行われていた、フィルム又はアルミニウム化成処理材表面に接着プライマー等を設ける工程は一切不要である。
C−2.塗料を用いた樹脂被覆膜
塗布塗料としては、一般的に分子内に極性官能基を有する樹脂を用いるのが好ましい。この極性官能基を有する樹脂を用いた塗料は、樹脂層のアミノ基等と水素結合するため、優れた密着性を発揮する。このような塗料としては、熱可塑性アクリル樹脂系塗料、熱硬化性アクリル樹脂系塗料、エポキシ樹脂系塗料、ポリウレタン樹脂系塗料、ポリエステル樹脂系塗料、ポリアミド樹脂系塗料などが用いられる。これら塗料は、樹脂成分に必要な添加剤(分散剤等)を加えてこれらを溶媒に溶解又は分散したものである。溶媒としては、各成分を溶解又は分散できるものであれば特に限定されるものではなく、水やアルコールなどの一般的な有機溶媒を用いることができる。本発明では、水性のエポキシ樹脂系塗料が好適に用いられる。
塗料の塗布方法としては、ロールコーター法、静電塗装法、吹き付け塗装法、ロールスクイズ法、ケミコーター法、エアナイフ法、浸漬法、スプレー法等の方法が用いられ、有機樹脂被覆膜の均一性に優れ、生産性が良好なロールコーター法が好ましい。必要に応じて、下塗り、中塗り、上塗り等により多層塗装を施してもよい。
樹脂被覆膜を形成する際の焼付けは、通常、焼付け温度(到達表面温度)が230〜290℃で、焼付け時間が8〜40秒の条件で行うのが好ましい。焼付け温度が230℃未満であったり、焼付け時間が8秒未満である場合には、被覆膜が十分に形成されず密着性が低下する。焼付け温度が290℃を超えたり、焼付け温度が40秒を超える場合には、被覆成分が変性することになる。樹脂被覆膜の焼付けには、一般的な加熱法、誘電加熱法等が用いられる。
このようにして製造される樹脂被覆アルミニウム材は、プレス成型などの成型加工後の密着性に優れ、かつ、耐食性にも優れている。
本発明に係る樹脂被覆アルミニウム材は、アルミニウム基材の少なくとも一方の表面にアルミニウム酸化皮膜と、その上に形成された上記所定構造のポリアクリルアミド誘導体、ポリメタクリルアミド誘導体、ポリビニルアミン誘導体及びポリアリルアミン誘導体の少なくとも1種を含む樹脂層と、更にその上に被覆された樹脂被覆膜とを備える。すなわち、本発明に係る樹脂被覆アルミニウム材は、アルミニウム基材の一方の面にのみアルミニウム酸化皮膜と、その上に形成された樹脂層と、更にその上に被覆された樹脂被覆膜とを備える形態と、アルミニウム基材の両方の面にそれぞれ、アルミニウム酸化皮膜と、その上に形成された樹脂層と、更にその上に被覆された樹脂被覆膜とを備える形態とを有する。
以下、本発明を実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明は以下に記載の例に限定されるものではない。
実施例1〜8及び比較例1〜7
アルミニウム基材としてJIS−A3004合金を用いた。これを以下の通りに、鋳造・加工及び調質した。すなわち、A3004合金をDC鋳造法により鋳造し、560℃で3時間均質化処理した後に460℃で熱間圧延を行ない、次いで120℃の冷間圧延により板厚を0.30mmとした後に250℃で最終焼鈍処理を行なった。
上記のようにして加工した合金板を、アルカリ性溶液として、2重量%の苛性ソーダ水溶液を用いて60℃で10秒間の洗浄処理(エッチング処理)を行ない、電気伝導度40mS/mで20℃の水で洗浄後、2重量%の硫酸水溶液を用いて30〜50℃で1〜5秒間の洗浄処理(スマット処理)を行った。なお、比較例6では硫酸水溶液による洗浄処理を行なわず、比較例7では苛性ソーダ水溶液による洗浄処理を行なわなかった。次いで、ポリアクリルアミド誘導体(n=20〜55、m=1〜7、R1〜R2=水素あるいはアルキル基)、ポリビニルアミン誘導体(n=2〜40、m=1〜5、R1〜R2=水素あるいはアルキル基)、ポリアリルアミン誘導体(n=10〜50、m=2〜6、R1〜R2=水素あるいはアルキル基)、ポリメタクリルアミド誘導体(n=20、m=3、R1〜R2=水素)の少なくとも1種を含む樹脂溶液を1〜5重量%となるように調整し、♯4バーコーターによるバーコート処理し、80℃で1分間乾燥した。このようにして樹脂被覆用アルミニウム材を作製した。
上記各試料の表面に膜厚15μmの帝人デュポン社製熱可塑性ポリエチレンテレフタレート系フィルム(型番:MX−850)を250℃にて熱圧着、あるいは、関西ペイント社製熱硬化性アクリル樹脂系塗料を焼付後の塗膜重量として6g/m塗布し、樹脂被覆アルミニウム材を作製した。
2重量%硫酸水溶液による酸洗浄条件(温度、時間)、酸洗浄処理後のアルミニウム酸化皮膜の膜厚、樹脂層を形成する樹脂種、樹脂層の形成量(樹脂に由来する炭素含有量)、ならびに樹脂被覆アルミニウム材の密着性評価を表1に示す。なお、アルミニウム酸化皮膜の膜厚の測定方法、樹脂層の形成量の測定方法、ならびに、樹脂被覆アルミニウム材の密着性評価の方法と評価基準を下記に示す。表1において、実施例5のn、m、R1、R2はポリアリルアミン誘導体とポリアクリルアミド誘導体で共通し、実施例7のn、m、R1、R2はポリアクリルアミド誘導体とポリビニルアミン誘導体とで共通する。
アルミニウム酸化皮膜の膜厚測定
酸性水溶液で処理した後の試料表面のAlと酸素(O)のデプスプロファイルを、オージェ電子分光分析により測定して両プロファイルのグラフ上の交点を求め、この交点の最表面からの深さを、アルミニウム酸化皮膜の膜厚とした。
樹脂層の形成量の測定
樹脂層の形成量を、樹脂に由来する炭素含有量としてTOC(全有機炭素)測定装置(島津製)により測定した。
樹脂被覆アルミニウム材の密着性評価の方法と評価基準
缶蓋材を缶蓋成形し、125℃にて30分のレトルト処理を施した。その後、タブを引っ張った後の開口部におけるフィルムの残存幅を測定した。ここで、残存幅が0.4mm未満であれば◎、残存幅が0.4mm以上0.7mm未満であれば○、残存幅が0.7mm以上であれば×とした。◎と○を合格とし、×を不合格とした。
実施例1〜8では、酸性溶液によるスマット処理後のアルミニウム酸化皮膜の膜厚が6〜20nmの範囲内にあり、樹脂層を形成する樹脂種も所定のものであり、かつ、樹脂層における樹脂由来の炭素含有量も5〜100mg/mの範囲内であった。その結果、樹脂被覆アルミニウム材における樹脂被覆膜の密着性評価(フェザリング性)は、極めて良好であることが確認された。
これに対して、比較例1においては酸性水溶液による洗浄が不十分であったため、アルミニウム基材表面にアルミニウム酸化皮膜が20nm以上残存していた。また、mが7であり、樹脂種が所定のものではなかった。したがって、樹脂形成量が適正であるにも拘らず、樹脂被覆アルミニウム材における樹脂被覆膜の密着性が劣っていた。
比較例2においては、酸洗水溶液による洗浄により、アルミニウム酸化物は良好に除去されていたものの、樹脂層の形成量が少量過ぎたため、樹脂被覆アルミニウム材における樹脂被覆膜の密着性が劣っていた。
比較例3、4においては、酸洗水溶液による洗浄により、アルミニウム酸化物は良好に除去されていたものの、樹脂層の形成量が多量過ぎており、また、比較例3においては、nが55であり、樹脂種が所定のものではなかった。したがって、樹脂被覆アルミニウム材における樹脂被覆膜の密着性が劣っていた。
比較例5においては、アルミニウム酸化物は良好に除去されており、樹脂層の形成量も適性であったが、樹脂層が本発明にて規定する樹脂種で形成されたものではなかった。そのため、樹脂被覆アルミニウム材における樹脂被覆膜の密着性が劣っていた。
比較例6においては、アルカリ性溶液によるエッチング処理後に酸性溶液による酸洗処理を行わなかったために、アルミニウム酸化皮膜の膜厚が厚くなった。そのため、樹脂種並びに樹脂層の形成量も適性であったが、樹脂被覆アルミニウム材における樹脂被覆膜の密着性が劣っていた。
また、比較例7においては、アルカリ性溶液によるエッチング処理を行わずに酸性溶液による酸洗処理を行なったため、アルミニウム酸化皮膜の膜厚や樹脂種並びに樹脂層の形成量も適性であったが、樹脂被覆アルミニウム材における樹脂被覆膜の密着性が劣っていた。
以上のように、本発明に係る樹脂被覆用アルミニウム材は、アルミニウム酸化皮膜厚さを6〜20nmとし、更に所定構造のポリアクリルアミド誘導体、ポリメタクリルアミド誘導体、ポリビニルアミン誘導体、ポリアリルアミン誘導体の少なくとも1種を含む樹脂層の形成量を樹脂層に由来する炭素量で5〜100mg/mとすることによって、従来のクロメート系及びノンクロメート系化成処理、更には接着プライマー層の形成処理を行なわなくても、高密着性を維持した樹脂被覆用アルミニウム材が得られる。更に、この樹脂被覆用アルミニウム材における樹脂層の上に、樹脂被覆膜を形成することにより、同様の効果を有する樹脂被覆アルミニウム材を得ることができる。
本発明に係る樹脂被覆用アルミニウム材の断面図である。 本発明に係る樹脂被覆用アルミニウム材のアルミニウム酸化皮膜厚さを求めるための、オージェ電子分光分析によるデプスプロファイルを示すグラフである。 本発明に係る樹脂被覆用アルミニウム材のアルミニウム酸化皮膜厚さを求めるための、オージェ電子分光分析によるデプスプロファイルを示すグラフである。 本発明に係る樹脂被覆アルミニウム材の断面図である。
符号の説明
1‥‥‥樹脂被覆用アルミニウム材
2‥‥‥アルミニウム基材
3‥‥‥アルミニウム酸化皮膜
4‥‥‥樹脂層
5‥‥‥樹脂被覆アルミニウム材
6‥‥‥樹脂被覆膜

Claims (4)

  1. アルミニウム又はアルミニウム合金からなるアルミニウム基材と、当該アルミニウム基材の少なくとも一方の表面に形成されたアルミニウム酸化皮膜と、当該アルミニウム酸化皮膜表面に形成された樹脂層であって、下記式(1)で示される構造を有するポリアクリルアミド誘導体及び下記式(2)で示される構造を有するポリメタクリルアミド誘導体の少なくとも1種を含む樹脂層とを備え、前記アルミニウム酸化皮膜は6〜20nmの厚さを有し、前記樹脂層の形成量は樹脂に由来する炭素含有量が5〜100mg/mであることを特徴とする樹脂被覆用アルミニウム材。
    上記式(1)及び(2)において、nは別個独立した2〜50であり、mは別個独立した1〜6であり、R1、R2はそれぞれ水素原子又は炭素数1〜10のアルキル基を表わす。
  2. 請求項1に記載の樹脂被覆用アルミニウム材における樹脂層の上に、樹脂被覆膜を更に備えた樹脂被覆アルミニウム材。
  3. アルミニウム又はアルミニウム合金からなる基材の少なくとも一方の表面をアルカリ性溶液で洗浄する工程と、当該アルカリ性溶液による洗浄表面を酸性溶液で洗浄する工程と、当該酸性溶液による洗浄表面を樹脂溶液で処理する工程とを含み、
    前記樹脂溶液は、下記式(1)で示される構造を有するポリアクリルアミド誘導体及び下記式(2)で示される構造を有するポリメタクリルアミド誘導体の少なくとも1種を含み、
    前記酸性溶液による洗浄工程後における前記アルミニウム基材表面に形成されるアルミニウム酸化皮膜の厚さは6〜20nmであり、
    前記樹脂溶液による処理工程によって前記アルミニウム酸化皮膜上に下記式(1)及び(2)の少なくとも1種を含む樹脂層が形成され、当該樹脂層の形成量は樹脂に由来する炭素含有量が5〜100mg/mであることを特徴とする樹脂被覆用アルミニウム材の製造方法。
    上記式(1)及び(2)において、nは別個独立した2〜50であり、mは別個独立した1〜6であり、R1、R2はそれぞれ水素原子又は炭素数1〜10のアルキル基を表わす。
  4. 請求項3における樹脂溶液による処理工程の後に、前記樹脂層の上に樹脂被覆膜を被覆する工程を更に含む樹脂被覆アルミニウム材の製造方法。
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