JP2007203615A - 樹脂被覆アルミニウム板及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】アルミニウム板と樹脂被覆膜との優れた密着性を有し、かつ、環境汚染や健康阻害の問題のない樹脂被覆アルミニウム板及びその製造方法を提供する。
【解決手段】アルミニウム板又はアルミニウム合金板からなる基材の少なくとも一方の表面を、ジルコニウム化合物を含有する非クロム化成処理液で処理する第1の非クロム化成処理工程と;前記第1の非クロム化成処理工程による処理表面をジルコニウム及びコロイダルシリカを含有する非クロム化成処理液で処理する第2の非クロム化成処理工程と;前記第2の非クロム化成処理工程による処理表面に樹脂被覆膜を形成する工程と;を含む樹脂被覆アルミニウム板の製造方法、ならびに、当該製造方法によって製造される樹脂被覆アルミニウム板。
【選択図】図1
【解決手段】アルミニウム板又はアルミニウム合金板からなる基材の少なくとも一方の表面を、ジルコニウム化合物を含有する非クロム化成処理液で処理する第1の非クロム化成処理工程と;前記第1の非クロム化成処理工程による処理表面をジルコニウム及びコロイダルシリカを含有する非クロム化成処理液で処理する第2の非クロム化成処理工程と;前記第2の非クロム化成処理工程による処理表面に樹脂被覆膜を形成する工程と;を含む樹脂被覆アルミニウム板の製造方法、ならびに、当該製造方法によって製造される樹脂被覆アルミニウム板。
【選択図】図1
Description
本発明は、クロムを使用しない化成下地処理方法を用いた飲料缶や食缶の缶蓋用の樹脂被覆アルミニウム板、ならびに、その製造方法に関する。
樹脂被覆アルミニウム板の製造において、アルミニウム板表面と樹脂被覆膜との密着性を確保するため、従来、リン酸、クロム酸、フッ酸を主成分とする化成処理液を用いて、リン酸クロメート化成皮膜をアルミニウム板表面に形成する方法が用いられてきた。しかしながら、近年になって環境や健康への配慮から、クロム等の有害金属イオンを含有しない化成処理液を用いて、アルミニウム表面にノン(非)クロメート化成皮膜を形成する方法が要望され、これに対し数多くの技術が提案されてきた。
例えば、特許文献1にはリン酸イオン、Zr化合物、フッ化物水素酸、過酸化水素等の酸化剤を含有する処理液によって、アルミニウム含有金属材料を化成処理する方法が開示されている。また、特許文献2には、リン酸又はその塩、ジルコニウム塩、フッ化物、亜リン酸又はその塩、硝酸又はその塩を含有する表面処理浴によって、アルミニウム系金属を処理する方法が開示されている。さらに、特許文献3には、カーボンを主成分とする有機化合物とリン化合物とジルコニウムあるいはチタニウム化合物を含む有機−無機複合皮膜が開示されている。
特許第2828409号公報
特許第3502235号公報
特開平11−229156号公報
上述のような化成皮膜が数多く開示されているものの、これらの化成皮膜は、環境や健康への配慮に対する要望にも応えつつ、クロメート皮膜に匹敵する特性を有するには至っていないのが現状である。すなわち、従来の非クロメート処理技術により形成される化成皮膜は、樹脂被覆膜との密着性や耐食性においてリン酸クロメート化成皮膜の水準に達しておらず、さらなる特性向上が求められていた。
本発明者らは、鋭意検討の結果、以下の発明を成すに至った。
本発明は、請求項1において、アルミニウム板又はアルミニウム合金板からなる基材と、当該基材の少なくとも一方の表面に形成したジルコニウムを含有する第1の非クロム化成皮膜と、当該第1の非クロム化成皮膜上に形成したジルコニウム及びコロイダルシリカを含有する第2の非クロム化成皮膜と、当該第2の非クロム化成皮膜上に形成した樹脂被覆膜と、を備えることを特徴とする樹脂被覆アルミニウム板とした。
本発明は、請求項1において、アルミニウム板又はアルミニウム合金板からなる基材と、当該基材の少なくとも一方の表面に形成したジルコニウムを含有する第1の非クロム化成皮膜と、当該第1の非クロム化成皮膜上に形成したジルコニウム及びコロイダルシリカを含有する第2の非クロム化成皮膜と、当該第2の非クロム化成皮膜上に形成した樹脂被覆膜と、を備えることを特徴とする樹脂被覆アルミニウム板とした。
本発明は請求項2において、前記第2の非クロム化成皮膜の形成量をコロイダルシリカのSi量換算で2〜12mg/m2とした。
本発明は請求項3において、アルミニウム板又はアルミニウム合金板からなる基材の少なくとも一方の表面を、ジルコニウム化合物を含有する非クロム化成処理液で処理する第1の非クロム化成処理工程と;前記第1の非クロム化成処理工程による処理表面をジルコニウム及びコロイダルシリカを含有する非クロム化成処理液で処理する第2の非クロム化成処理工程と;前記第2の非クロム化成処理工程による処理表面に樹脂被覆膜を形成する工程と;を含むことを特徴とする樹脂被覆アルミニウム板の製造方法とした。
本発明は請求項4において、前記第2の非クロム化成処理工程において、化成皮膜の形成量をコロイダルシリカのSi量換算で2〜12mg/m2とした。
本発明に係る樹脂被覆アルミニウム板及びその製造方法では、第1の化成皮膜と樹脂被覆膜との間にコロイダルシリカを含有する第2の化成皮膜を設けたので、アルミニウム基材と樹脂被覆膜との優れた密着性を達成することができる。更に、第1及び第2の化成皮膜にクロムが含有されていないので、環境汚染や健康阻害の問題が解消される。
本発明では、クロムを含有しない化成処理液(以下、「非クロム化成処理液」と記す)を用いてアルミニウム板又はアルミニウム合金板に第1の化成処理(以下、「非クロム化成処理」と記す)を施して、クロムを含有しない第1の化成皮膜(以下、「非クロム化成皮膜」と記す)を形成する。次いで、第1の非クロム化成処理したアルミニウム板又はアルミニウム合金板を、コロイダルシリカを含有する非クロム化成処理液を用いて第2の非クロム化成処理を施すことによって、第1の非クロム化成皮膜上にコロイダルシリカを含有する第2の非クロム化成皮膜を形成する。更に、第2の非クロム化成皮膜上に所望の樹脂被覆膜を形成して樹脂被覆アルミニウム板が得られる。このようにして表面が改質された樹脂被覆アルミニウム板は、樹脂被覆膜と第1の非クロム化成皮膜の間に介在する第2の非クロム化成皮膜中のコロイダルシリカによって、樹脂被覆膜と第1及び第2の非クロム化成皮膜の相互作用が増大して樹脂被覆膜の密着性を向上するものである。これら各工程のフローシートを図1に示す。
本発明では、非クロム化成処理工程を、ジルコニウムを含有する化成処理液を用いた第1化成処理工程と、コロイダルシリカとジルコニウムとを含有する化成処理液を用いた第2化成処理工程との二段階処理とし、それぞれ第1の非クロム化成皮膜と第2の非クロム化成皮膜を形成することを特徴とする。
本発明では、非クロム化成処理工程を、ジルコニウムを含有する化成処理液を用いた第1化成処理工程と、コロイダルシリカとジルコニウムとを含有する化成処理液を用いた第2化成処理工程との二段階処理とし、それぞれ第1の非クロム化成皮膜と第2の非クロム化成皮膜を形成することを特徴とする。
A.アルミニウム基材
本発明で用いる樹脂被覆アルミニウム板の基材としては、純アルミニウム板及びアルミニウム合金板が用いられる。アルミニウム合金板としては、缶用塗装材として一般に用いられるJIS−5021、JIS−5052,JIS−5182等のアルミニウム材が用いられる。なお、以下において、「アルミニウム」の用語は、純アルミニウム及びアルミニウム合金の双方を含む意とする。したがって、「アルミニウム板」の用語は、純アルミニウム板及びアルミニウム合金板の双方を含み、「アルミニウム基材」の用語は、純アルミニウム基材及びアルミニウム合金基材の双方を含むものとする。
本発明では、基材とてアルミニウム基材を好適に用いるが、この他の基材として、アルミニウム以外の金属や合金、セラミックス、プラスチック等を用いることもできる。
本発明で用いる樹脂被覆アルミニウム板の基材としては、純アルミニウム板及びアルミニウム合金板が用いられる。アルミニウム合金板としては、缶用塗装材として一般に用いられるJIS−5021、JIS−5052,JIS−5182等のアルミニウム材が用いられる。なお、以下において、「アルミニウム」の用語は、純アルミニウム及びアルミニウム合金の双方を含む意とする。したがって、「アルミニウム板」の用語は、純アルミニウム板及びアルミニウム合金板の双方を含み、「アルミニウム基材」の用語は、純アルミニウム基材及びアルミニウム合金基材の双方を含むものとする。
本発明では、基材とてアルミニウム基材を好適に用いるが、この他の基材として、アルミニウム以外の金属や合金、セラミックス、プラスチック等を用いることもできる。
B.前処理工程
図1に示すように、非クロム化成処理工程の前に、まず次のような前処理を行う。アルミニウム基材表面を50〜70℃、好ましくは55〜65℃のアルカリ系脱脂液に5〜20秒間浸漬して脱脂処理し、表面に付着する油分を除去する(アルカリ脱脂工程)。アルカリ系脱脂液としては、例えば、日本ペイント(株)社製サーフクリーナー420N2(商品名)を、水で希釈したものが用いられる。次いで、脱脂処理したアルミニウム基材を水洗(洗浄処理工程(水洗))した後に、40〜60℃、好ましくは45〜55℃の希硫酸等の酸性溶液に5〜15秒間浸漬してアルミニウム基材表面を酸処理(洗浄処理工程(希硫酸による酸洗浄))し、Mg等の表面析出物を除去する。
なお、脱脂処理及び酸処理としては、上述のように処理溶液に浸漬する方法だけでなく、処理溶液をスプレー噴霧する方法等を用いてもよい。
図1に示すように、非クロム化成処理工程の前に、まず次のような前処理を行う。アルミニウム基材表面を50〜70℃、好ましくは55〜65℃のアルカリ系脱脂液に5〜20秒間浸漬して脱脂処理し、表面に付着する油分を除去する(アルカリ脱脂工程)。アルカリ系脱脂液としては、例えば、日本ペイント(株)社製サーフクリーナー420N2(商品名)を、水で希釈したものが用いられる。次いで、脱脂処理したアルミニウム基材を水洗(洗浄処理工程(水洗))した後に、40〜60℃、好ましくは45〜55℃の希硫酸等の酸性溶液に5〜15秒間浸漬してアルミニウム基材表面を酸処理(洗浄処理工程(希硫酸による酸洗浄))し、Mg等の表面析出物を除去する。
なお、脱脂処理及び酸処理としては、上述のように処理溶液に浸漬する方法だけでなく、処理溶液をスプレー噴霧する方法等を用いてもよい。
C.第1の非クロム化成処理工程
図1に示すように、第1の非クロム化成皮膜は、クロムを含有せず、かつ、ジルコニウム化合物を含有する化成処理液を用いた第1の非クロム化成処理工程にて形成される。
このような化成処理液は、化成処理剤を適当な溶媒に溶解又は分散したものである。化成処理剤としては、フルオロジルコニウム酸(H2ZrF6)又はそのアンモニウム塩にフッ化水素酸を添加した酸化ジルコニウムタイプ;酸化ジルコニウムタイプを主成分としてリン酸を添加したリン酸ジルコニウムタイプ;Zr/V(ジルコニウム/バナジウム)の複合タイプ;Zr/Ce(ジルコニウム/セリウム)の複合タイプ等が、単一又は組み合わせて用いられる。溶媒としては、水等が用いられる。
化成処理液中の化成処理剤の濃度は、所定のZr付着量となるように適宜選択される。また、化成処理液のpHは、好ましくは2〜4、より好ましくは2〜3である。
図1に示すように、第1の非クロム化成皮膜は、クロムを含有せず、かつ、ジルコニウム化合物を含有する化成処理液を用いた第1の非クロム化成処理工程にて形成される。
このような化成処理液は、化成処理剤を適当な溶媒に溶解又は分散したものである。化成処理剤としては、フルオロジルコニウム酸(H2ZrF6)又はそのアンモニウム塩にフッ化水素酸を添加した酸化ジルコニウムタイプ;酸化ジルコニウムタイプを主成分としてリン酸を添加したリン酸ジルコニウムタイプ;Zr/V(ジルコニウム/バナジウム)の複合タイプ;Zr/Ce(ジルコニウム/セリウム)の複合タイプ等が、単一又は組み合わせて用いられる。溶媒としては、水等が用いられる。
化成処理液中の化成処理剤の濃度は、所定のZr付着量となるように適宜選択される。また、化成処理液のpHは、好ましくは2〜4、より好ましくは2〜3である。
第1の非クロム化成皮膜の形成方法としては、上記化成処理剤を上記溶媒に溶解又は分散した化成処理液をアルミニウム基材表面に塗布する方法が通常用いられる。塗布方法に代わって、アルミニウム基材表面において化成処理剤の反応種同士を化学反応させる方法を用いてもよい。
第1の非クロム化成皮膜の形成量については、少量過ぎると樹脂被覆膜の密着性などの性能が低下し、多量過ぎると使用する化成処理剤や廃液が増加してコスト増加を招くことになる。化成処理剤や溶媒の種類、ならびに、化成処理工程によっても適切な形成量が異なってくるが、Zr量換算において、好ましくは5〜15mg/m2、より好ましくは6〜12mg/m2の量で、アルミニウム基材表面に第1の非クロム化成皮膜が形成される。
D.第2の非クロム化成処理工程
図1に示すように、第2の非クロム化成皮膜は、クロムを含有せず、かつ、コロイダルシリカ及びジルコニウム化合物を含有する化成処理液を用いた第2の非クロム化成処理工程において形成される。このような化成処理液は、第1の非クロム化成処理工程で用いたのと同じ化成処理液にコロイダルシリカを添加したものが用いられる。そして、このようなコロイダルシリカ含有化成処理液を用いて、第1の非クロム化成皮膜と同じ形成方法及び化成処理温度を採用して化成皮膜を形成することができる。
図1に示すように、第2の非クロム化成皮膜は、クロムを含有せず、かつ、コロイダルシリカ及びジルコニウム化合物を含有する化成処理液を用いた第2の非クロム化成処理工程において形成される。このような化成処理液は、第1の非クロム化成処理工程で用いたのと同じ化成処理液にコロイダルシリカを添加したものが用いられる。そして、このようなコロイダルシリカ含有化成処理液を用いて、第1の非クロム化成皮膜と同じ形成方法及び化成処理温度を採用して化成皮膜を形成することができる。
第1の非クロム化成皮膜の場合と同様に、第2の非クロム化成皮膜の形成量についても、少量過ぎると樹脂被覆膜の密着性などの性能が低下し、多量過ぎると使用する化成処理剤や廃液が増加してコスト増加を招くことになる。第1の非クロム化成皮膜の場合と同様に化成処理剤や溶媒の種類、ならびに、化成処理工程によっても適切な形成量が異なってくるが、Zr量換算において、好ましくは5〜9mg/m2、より好ましくは6〜8mg/m2の量で第2の非クロム化成皮膜が形成される。第1及び2の非クロム化成皮膜全体としては、Zr量換算において、好ましくは10〜22mg/m2、より好ましくは12〜20mg/m2の量で非クロム化成皮膜が形成される。
化成処理液中のコロイダルシリカ濃度は、形成される第2の非クロム化成皮膜中において後述する所定量のコロイダルシリカが含有されるものであれば特に限定されるものではないが、好ましくは1〜5重量%、より好ましくは2〜4重量%である。1重量%未満では、第2の非クロム化成皮膜中に含有されるコロイダルシリカ量が所定量に達するのに長時間を要し、5重量%を超えたのでは、コロイダルシリカが速く付着し過ぎて付着量の制御が困難となるからである。
樹脂被覆膜の密着性向上の効果を得るには、第2の非クロム化成皮膜中のコロイダルシリカ含有量は、Si量換算において2〜12mg/m2が好ましく、より好ましくは4〜10mg/m2である。含有量が2mg/m2未満ではコロイダルシリカの量が少量過ぎて第2の非クロム化成皮膜の全体にわたってコロイダルシリカが均一に分布しない可能性があり樹脂被覆膜の密着性が不安定となる。一方、コロイダルシリカの形成量が12mg/m2を超えると樹脂被覆膜の密着性向上の効果が低下し始めるので好ましくない。
用いるコロイダルシリカの粒径は、好ましくは4〜20nmであり、より好ましくは
4〜6nmである。4nm未満のものはコロイド状態が安定せず、20nmを超えるものでは第2の非クロム化成皮膜の厚さ以上となってコロイダルシリカの第2の非クロム化成皮膜への付着力が低下し、結果的に樹脂被覆膜の密着性の低下を招くことになる。
4〜6nmである。4nm未満のものはコロイド状態が安定せず、20nmを超えるものでは第2の非クロム化成皮膜の厚さ以上となってコロイダルシリカの第2の非クロム化成皮膜への付着力が低下し、結果的に樹脂被覆膜の密着性の低下を招くことになる。
第1の非クロム化成皮膜の形成量は、XRF(蛍光X線測定装置)を用いてジルコニウム(Zr)量換算として測定される。第2の非クロム化成皮膜の形成量は、同じくXRFを用いてZr量換算及びシリコン(Si)量換算として測定される。なお、Si量については、測定される全Si量からアルミニウム板の素地に含有されるSi量を差し引いて、第2の非クロム化成皮膜中に含有されるSi量とした。
E.樹脂被覆膜の形成工程
最後に、樹脂被覆膜の形成工程において第2の非クロム化成皮膜上に樹脂被覆膜が形成される。第2の非クロム化成皮膜上に、塩化ビニル系、エポキシ系、ポリエステル系などの少なくとも1種を含む樹脂塗料を塗布し、焼付けする。塗布量は10〜20g/m2、焼付条件は、260〜270℃で20〜25秒である。これに代わって、10〜30μm厚さを有するPET(ポリエチレンテレフタレート)などのラミネートフィルムを、ラミネーターによって第2の非クロム化成皮膜に接着し、230〜290℃で焼付けてもよい。化成皮膜に含有されるコロイダルシリカと樹脂被覆膜との間の相互作用により、被覆膜の密着性が向上する。
最後に、樹脂被覆膜の形成工程において第2の非クロム化成皮膜上に樹脂被覆膜が形成される。第2の非クロム化成皮膜上に、塩化ビニル系、エポキシ系、ポリエステル系などの少なくとも1種を含む樹脂塗料を塗布し、焼付けする。塗布量は10〜20g/m2、焼付条件は、260〜270℃で20〜25秒である。これに代わって、10〜30μm厚さを有するPET(ポリエチレンテレフタレート)などのラミネートフィルムを、ラミネーターによって第2の非クロム化成皮膜に接着し、230〜290℃で焼付けてもよい。化成皮膜に含有されるコロイダルシリカと樹脂被覆膜との間の相互作用により、被覆膜の密着性が向上する。
このようにして製造される樹脂被覆アルミニウム板は、プレス成形などの成形加工後においても樹脂被覆膜の密着性に優れている。従って、強加工により成型されるアルミニウム缶蓋が、本発明に係る樹脂被覆アルミニウム板によって好適に製造される。
なお、本発明における第1の非クロム化成処理工程を省略して、第2の非クロム化成処理工程である「コロイダルシリカを含有させた化成処理剤を使用して、アルミニウム基材に非クロム化成処理」のみによっても、本発明と同様の樹脂被覆膜密着性が向上する効果が得られるのではないかとの推測も可能である。しかしながら、本発明者らの検討によれは、このような方法では密着性向上の効果が得られないばかりか、形成される非クロム化成皮膜の品質にも悪影響が生じ、アルミニウム塗装板の耐食性が劣化することが確かめられている。
以下に本発明の実施例を比較例と対比し、本発明を具体的に説明する。
実施例1〜5及び比較例1〜5
基材のアルミニウム板には、6cm×12cmで250μmの板厚を有するJIS5182材を用いた。
第1の非クロム化成処理工程の前に、まず次のように前処理工程で処理した。脱脂剤である日本ペイント(株)社製サーフクリーナー420N2(商品名)を水で希釈して、濃度2重量%のアルカリ脱脂液とし、これに基材を温度60℃で10秒間浸漬してアルカリ脱脂し(図1におけるアルカリ脱脂工程)、水洗した(図1における洗浄処理工程(水洗))。次いで、基材を0.3%希硫酸水溶液に温度50℃で5秒間浸漬して酸処理(図1における洗浄処理工程(希硫酸による酸洗浄))し、更に水洗した(図1における洗浄処理工程(水洗))。
実施例1〜5及び比較例1〜5
基材のアルミニウム板には、6cm×12cmで250μmの板厚を有するJIS5182材を用いた。
第1の非クロム化成処理工程の前に、まず次のように前処理工程で処理した。脱脂剤である日本ペイント(株)社製サーフクリーナー420N2(商品名)を水で希釈して、濃度2重量%のアルカリ脱脂液とし、これに基材を温度60℃で10秒間浸漬してアルカリ脱脂し(図1におけるアルカリ脱脂工程)、水洗した(図1における洗浄処理工程(水洗))。次いで、基材を0.3%希硫酸水溶液に温度50℃で5秒間浸漬して酸処理(図1における洗浄処理工程(希硫酸による酸洗浄))し、更に水洗した(図1における洗浄処理工程(水洗))。
次に、図1に示す第1の非クロム処理工程にて、前処理した基材を非クロム化成処理液に50℃で3秒間浸漬して第1の非クロム化成処理を施し、次いで水洗した(図1における洗浄処理工程(水洗))。非クロム化成処理液としては、溶媒である水中に化成処理剤としてフルオロジルコニウム酸、リン酸及びフッ化水素酸を含有し、pHが2〜3の溶液を使用した。このような第1の非クロム化成処理工程によって、第1の非クロム化成皮膜を形成した。
次に、図1に示すように、第1の非クロム化成前処理工程及び洗浄工程(水洗)を経た基材を第2の非クロム化成処理工程にて、非クロム化成処理液に50℃で2秒間浸漬して第2の非クロム化成処理を施し、次いで水洗した(図1における洗浄処理工程(水洗))。非クロム化成処理液としては、上記、第1の非クロム化成前処理で用いたものにコロイダルシリカを添加したもので、pHが2〜3の溶液を使用した。非クロム化成処理液中のコロイダルシリカの含有量は、1〜5重量%とした。このような第2の非クロム化成処理工程によって、第1の非クロム化成皮膜上に第2の非クロム化成皮膜を形成した。なお、コロイダルシリカは、日産化学(株)の商品名スノーテックスOXSを用いた。スノーテックスOXSは、水を溶媒とし、SiO2含有量が10%、コロイダルシリカの粒径は4〜6nmであった。
第2の非クロム化成皮膜の形成後に、基材を水洗後(図1における洗浄処理工程(水洗))100℃未満の温度で10〜30分乾燥した(図1における乾燥工程)。
なお、この第2の非クロム化成皮膜は実施例1〜5及び比較例4、5について形成し、比較例1〜3では形成していない。
第2の非クロム化成皮膜の形成後に、基材を水洗後(図1における洗浄処理工程(水洗))100℃未満の温度で10〜30分乾燥した(図1における乾燥工程)。
なお、この第2の非クロム化成皮膜は実施例1〜5及び比較例4、5について形成し、比較例1〜3では形成していない。
次いで、図1に示すように、第2の非クロム化成皮膜を形成した基材表面に、塩化ビニル樹脂を主成分とした溶剤塗料(商品名:4763C、バルスパーロック社製)を、塗布量13g/m2で塗布し、265℃で20秒間焼付けした。
以上のようにして調製した樹脂被覆アルミニウム板について、第2の非クロム化成皮膜中に含有されるコロイダルシリカ量(Si量換算として)、第1及び第2の非クロム化成皮膜全体としての皮膜形成量(Zr量換算として)、樹脂被覆膜の密着性(JIS−K5400準拠の碁盤目密着性試験による)を測定した。
第2の非クロム化成皮膜のコロイダルシリカ含有量の測定
蛍光X線分析(XRF)によって測定した。測定には、RIGAKU社製蛍光X線分析装置を用いた。付着量既知の試料を用いて予め作成しておいた検量線と、測定された蛍光X線強度から付着量をSi量換算として決定した。なお、このようなSi量は、測定される全Si量からアルミニウム素地に含有されるSi量を差し引いて、第2の非クロムに含有されるSi量として求めた。
蛍光X線分析(XRF)によって測定した。測定には、RIGAKU社製蛍光X線分析装置を用いた。付着量既知の試料を用いて予め作成しておいた検量線と、測定された蛍光X線強度から付着量をSi量換算として決定した。なお、このようなSi量は、測定される全Si量からアルミニウム素地に含有されるSi量を差し引いて、第2の非クロムに含有されるSi量として求めた。
第1及び第2の非クロム化成皮膜全体としての皮膜形成量
コロイダルシリカ含有量の測定に用いたのと同じ蛍光X線分析装置を用いて、測定した。付着量既知の試料を用いて予め作成しておいた検量線と、測定された蛍光X線強度から、第1及び第2の非クロム化成皮膜の全体としての形成量をZr量換算として決定した。
コロイダルシリカ含有量の測定に用いたのと同じ蛍光X線分析装置を用いて、測定した。付着量既知の試料を用いて予め作成しておいた検量線と、測定された蛍光X線強度から、第1及び第2の非クロム化成皮膜の全体としての形成量をZr量換算として決定した。
密着性の測定
JIS−K5400準拠の碁盤目密着性試験により樹脂被覆膜の密着性を評価した。100箇所の碁盤目におけるテープ剥離後の残存個所を測定した。100個所のうち95個所以上の碁盤目が剥離せずに残存した場合を合格とした。
JIS−K5400準拠の碁盤目密着性試験により樹脂被覆膜の密着性を評価した。100箇所の碁盤目におけるテープ剥離後の残存個所を測定した。100個所のうち95個所以上の碁盤目が剥離せずに残存した場合を合格とした。
第2の非クロム化成処理工程で用いた非クロム化成処理液におけるコロイダルシリカ濃度とともに、上記各測定結果を表1に示す。
表1において、第2の非クロム化成皮膜を備えていない樹脂被覆アルミニウム板における残存碁盤目数は80個所未満であるのに対して、第2の非クロム化成皮膜を備えたものは90個所以上の残存碁盤目数を示した。このことから、第2の非クロム化成皮膜に含有されるコロイダルシリカにより表面改質されたアルミニウム基材は樹脂被覆膜との優れた密着性を示すことが判明した。このように、第2の非クロム化成皮膜にコロイダルシリカを含有させることにより、樹脂被覆アルミニウム板の樹脂被覆膜密着性を向上させることができる。
本発明に係る樹脂被覆アルミニウム板及びその製造方法では、第1の非クロム化成皮膜と樹脂被覆膜との間に設けたコロイダルシリカを含有する第2の非クロム化成皮膜によって樹脂被覆膜の優れた密着性が得られる。更に、第1及び第2の化成皮膜のいずれにもクロムが含有されないので、環境汚染や健康阻害の問題が解消される。
Claims (4)
- アルミニウム板又はアルミニウム合金板からなる基材と、当該基材の少なくとも一方の表面に形成したジルコニウムを含有する第1の非クロム化成皮膜と、当該第1の非クロム化成皮膜上に形成したジルコニウム及びコロイダルシリカを含有する第2の非クロム化成皮膜と、当該第2の非クロム化成皮膜上に形成した樹脂被覆膜と、を備えることを特徴とする樹脂被覆アルミニウム板。
- 前記第2の非クロム化成皮膜の形成量がコロイダルシリカのSi量換算で2〜12mg/m2である、請求項1に記載の樹脂被覆アルミニウム板。
- アルミニウム板又はアルミニウム合金板からなる基材の少なくとも一方の表面を、ジルコニウム化合物を含有する非クロム化成処理液で処理する第1の非クロム化成処理工程と;前記第1の非クロム化成処理工程による処理表面をジルコニウム及びコロイダルシリカを含有する非クロム化成処理液で処理する第2の非クロム化成処理工程と;前記第2の非クロム化成処理工程による処理表面に樹脂被覆膜を形成する工程と;を含むことを特徴とする樹脂被覆アルミニウム板の製造方法。
- 前記第2の非クロム化成処理工程において、化成皮膜の形成量がコロイダルシリカのSi量換算で2〜12mg/m2である、請求項3に記載の樹脂被覆アルミニウム板の製造方法。
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