JP3898039B2 - フィルム密着性に優れた樹脂フィルム被覆用アルミニウム材および樹脂フィルム被覆アルミニウム材 - Google Patents
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Description
【発明が属する技術分野】
本発明は樹脂フィルム被覆アルミニウム材、特にポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエステル、ポリアミド等の熱可塑性樹脂フィルムを被覆したフィルム密着性に優れたアルミニウム材に関する。
なお、本明細書でフィルム密着性とは、フィルム積層後加工を受けない部分の密着性だけでなく加工後や加熱後の過酷な条件でのフィルム密着性も含む意味で用いる。
【0002】
【従来の技術】
アルミニウム材は軽量で、適度な機械的特性を有し、かつ美感、成形加工性、耐食性等に優れた特徴を有しているため、各種容器類等に広く使われている。例えば、食品等のアルミニウム容器は、アルミニウムの優れた成形加工性を利用して、樹脂塗装やフィルム被覆を行った後絞り加工する等の方法により成形されている。
その場合、成形加工を受けてもアルミニウム材表面と塗膜やフィルムとの間の密着性を優れたものとするために、アルミニウム材表面に密着性向上効果の大きい下地皮膜を予め施しておくことが一般的に行われている。
このため従来は、リン酸、クロム酸およびフッ酸を主成分とする化成処理液でアルミニウム板材を処理する、クロメート処理が施されてきた。例えば特開平3−177580号には下地皮膜としてクロム付着量を7〜25mg/m2としたリン酸クロメート皮膜層を設けた樹脂被覆材が提案されている。このようなクロメート処理は、製造工程管理が容易でコストが安く、しかも性能が安定するため、広く用いられてきた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかし近年、環境汚染、環境破壊、健康に対する安全性、エネルギー需給等への関心が急激に高まっている。
リン酸クロメート皮膜自体から有害な6価クロム等が溶出することは無く、リン酸クロメート皮膜自体が環境汚染や健康被害をまねくことは無いとされている。しかし、その製造工程では、無水クロム酸等の有害な6価クロムを含有する化成液を使っており、化成液廃液およびリンス工程で発生する6価クロムを含有する排水等を処理し、無害化しなければならない。このような処理には多大な人力およびエネルギー、高価な廃液処理設備等を必要とするため、製品のコストアップが避けられない。近年は規制が益々強化される方向にあり、廃液処理によるコストは従来以上に高まる傾向にある。
【0004】
このような課題を克服するために、クロム等の有害な金属イオンを含まない化成処理液を塗布またはスプレー等でアルミニウム材表面に付着させた、いわゆるノンクロメート皮膜と言われる下地処理アルミニウム材が提案されている。
特開平10−317162号にはリン酸またはその塩、ジルコニウム塩、フッ化物、亜リン酸またはその塩、硝酸またはその塩を含む表面処理浴で処理する方法、また特公平7−84665号にはリン酸イオン、アルミニウムキレート化剤および界面活性剤を含むアルカリ脱脂剤で洗浄処理後、ジルコニウムイオン、リン酸イオンおよびフッ素イオンを含む化成処理剤で処理し、ジルコニウムを含む下地処理皮膜を形成する方法、あるいはさらにバナジウムイオンを含む化成処理液で処理して、ジルコニウムおよびバナジウムを含む下地処理皮膜を形成する方法、特開平7−310189号にはリン酸イオン、ジルコニウム化合物、フッ化物および酸化剤を含む処理液で処理する方法等が開示されている。
これらの処理液は有害な6価クロムを含まないことから、環境汚染や健康被害といった問題が著しく軽減されている。しかし、これらの皮膜は成形加工後の被覆樹脂の密着性やレトルト処理といった苛酷な条件下での耐食性に問題を残しており、リン酸クロメート皮膜の性能レベルに達していない。
【0005】
このような性能上の問題を解決するために、特開平7−331276号にはリン酸イオン、ジルコニウム化合物またはチタン化合物、フッ化物および水溶性ポリアミドを含有する処理液で処理する方法、特開平11−115098にはリン酸イオン、縮合リン酸イオンおよびフェノール系水溶性重合体からなる表面被覆層を設ける方法等、いわゆる有機−無機複合タイプの化成処理剤が、特開平10−46101号にはフェノール、ナフトールまたはビスフェノール−ホルムアルデヒド樹脂からなる被覆層を設けるといった有機皮膜タイプの下地処理層を設ける方法が開示されている。
これらによれば加工後の密着性は高まり、酸性の液に対する耐食性も向上するなど性能上の向上が認められる場合がある。しかし、下地処理皮膜中に樹脂を含むため、下地処理皮膜上に被覆する樹脂の種類によっては相性が悪い場合が生じ、所定の性能が出ない等の不具合が起こることがある。その上、廃液処理の際に、一旦金属成分と有機物とを予め分離することが必要で、さらに分離した有機物をBOD処理等で別途処理しなければならないため、工程が増し、廃液処理コストが増加する。
特開平4−231120号には100〜2000オングストロームのリン酸または硫酸陽極酸化皮膜を設けた下地処理材が提案されている。しかし、この方法では電力を必要とするために設備のイニシャルコストおよびランニングコストが高いので、製品に求められている低コスト要求に応えられない。
ところで、アルミニウム板表面には圧延油等の有機物が付着している。そのため、上記の各種下地処理を施す際には、前処理として、アルカリ性液体による脱脂・エッチング工程、さらには酸洗等も付加して表面の汚れを除去する操作を行う。この前処理が不十分または不適切であると、アルミニウム材表面に多量の有機物層が残留したまま下地処理を施すことになる。
【0006】
こうした事情から、Cr等の有害重金属を含まず、フィルムの密着性に優れた、樹脂フィルム被覆アルミニウム材が求められていた。
【0007】
【課題を解決するための手段】
発明者らは上記課題を解決すべく、クロメート皮膜、ジルコニウム皮膜等の化成下地処理を行わず、アルミニウム酸化皮膜に直接樹脂被覆する方法の検討を続けた。
その結果、アルミニウム酸化皮膜の厚みおよび構成成分を的確に制御し、かつその最表面を管理することによって、必ずしも重金属を含む化成皮膜を付与しなくとも、優れたフィルム密着性を有する材料を提供できることを突きとめた。
【0008】
すなわち、請求項1の発明は、表面に、厚さ=1〜200nmで、かつ最表面〜酸化皮膜/アルミ界面までの深さ方向での最大濃度がMgで5mass%以下、Hで10mass%以下のAlおよびOを主成分とする酸化皮膜を設けたことを特徴とするフィルム密着性に優れた樹脂フィルム被覆用アルミニウム材である。
また請求項2の発明は、請求項1の要件にさらに、最表面のC濃度が50mass%以下のAlおよびOを主成分とする酸化皮膜を設けるという要件が加わったものである。
さらに、請求項3,4は、請求項1,2のアルミニウム材にフィルムを被覆した樹脂フィルム被覆アルミニウム材である。
【0009】
【発明の実施の形態】
電気電子部品、建材、飲料缶、自動車部品等の種々用途に用いられているアルミニウム材にはJIS1100、3004、3104、5021、5052、5082、5182などがあり、これらアルミニウム材のうち1100以外には、機械的強度、加工性を向上させるために0.8〜5mass%程度のMgが添加されている。これらの材料は、加熱−塑性加工(圧延・押出等)時にアルミニウム材マトリクス中のMgが表面に偏析濃化することが知られている。
従来、その酸化皮膜構造は、最表面にMg酸化物層があり、その下にアルミニウム酸化物層があるという2層構造モデルで示されていた。また、Cの分布状態に関する考察はほとんどなされてこなかった。
本発明者らはGDS(グロー放電発光スペクトル)、オージェといった解析機器を用い、酸化皮膜の深さ方向の元素分布、いわゆるデプスプロファイルを詳細に調査した。なお、この際に測定対象とした元素は、H,C,O,Mg,Al,Mn,Si,Fe,Zn,CrおよびZrであり、以後、元素のmass%は、この11元素を母集団として議論するが、これらはアルミニウム材表面のほとんど全てを網羅していると考えられるため、議論の一般性を何ら損なうものではない。また、その深さの測定結果は、1nmの精度が十分に保証されるものである。
その結果、Mgは酸化皮膜全体に均一に存在するわけではなく、最表面よりやや深い部位に最も濃化していること、また必ずしも明確な層を形成しておらず、いわば濃度勾配を有して分布していることを確認した。
【0010】
この時、最表面〜酸化皮膜/アルミ界面までの深さ方向でのMgの最大濃度が5mass%以下となるよう調製した酸化皮膜は、被覆樹脂フィルムとアルミニウム板材との密着性、特に、板厚減少を伴う強加工後のフィルム密着性が十分高いのに対し、最大濃度が5mass%を超えていると、加工後のフィルム密着性が著しく低下することを見出した。その理由として、Mg化合物は純粋なアルミ酸化膜との親和性に乏しく、Mg化合物/アルミ酸化膜の界面から剥離しやすいためと考えられる。また、Mg化合物は水への溶解度が高いので、多量に存在すると密着性を低下させる原因となる。そしてそれらの悪影響は、深さ方向でのMgの最大濃度が5mass%を超えた時に顕著に現れる。
【0011】
また、主に水酸化物由来のHも、Mgと同様、深さ方向に傾斜構造を有していた。
そして、最表面〜酸化皮膜/アルミ界面までの深さ方向での最大濃度が10mass%以下となるよう調製した時、樹脂フィルムとアルミニウム板材の加工後の密着性が十分高いのに対し、最大濃度が10mass%を超えていると、加工後の密着性が低下することを見出した。
その理由として、Hを含む化合物(水酸化Al,水酸化Mg,他)はもろいので、曲げ、深絞り等の強加工を行うと、Hを含む化合物を起点にして酸化皮膜が破壊されるためと考えられる。
そしてその悪影響は、Hの最大濃度が10mass%を超えた時に顕著に現れる。
なお、上記のMgとHの効果はどちらも大きいので、その最大濃度は同時に規制されるべきであり、どちらか片方を規制しただけでは十分なフィルム密着性を発揮することはできない。
【0012】
さらに、発明者らはこれらに加え、有機物に由来するCの検討を行った。その結果、上記の酸化皮膜におけるCは、例外なく皮膜最表面において最大値を示したのであるが、このC濃度が50mass%以下であれば、良好なフィルム密着性が発揮されることを見出した。一方、皮膜最表面のC濃度が50mass%を超えると、密着性は急激に低下した。これは、MgおよびHを規定した酸化皮膜の好影響と、表面残存有機物の悪影響が相殺し合う領域が、C濃度に換算して50mass%であるためと考えられる。
【0013】
以上のように、MgおよびH濃度、必要に応じてC濃度をそれぞれ規制した酸化皮膜をアルミニウム板材表面に形成することにより、CrやZrといった重金属を含む化成処理下地処理皮膜を付与しなくとも、優れた樹脂フィルムの密着性が得られる。
なお、この酸化皮膜全体の厚みは1〜200nmであることが必要である。1nm未満では十分な密着性が得られず、200nmを超えると加工時に酸化皮膜にマイクロクラックが発生し、フィルム密着性低下を引き起こすためである。
【0014】
これらの発明の範囲を図示すると、図1のとおりである。
【0015】
優れた樹脂フィルムの密着性が得られるメカニズムは以下のように推定される。
金属材料表面にこの様な酸化皮膜を有するアルミニウム材と樹脂フィルムとの密着力は、水素結合(化学的結合力)と機械的結合力(アンカー効果)およびファンデアワールス力等の分子間力によるものと考えられる。
ここで水素結合は樹脂フィルムや接着剤中の−COOH、−OH、−CONH等の極性基と酸化皮膜中の酸素または水素原子による結合である。したがって、強固な密着力を得るためには、酸化皮膜中の酸素および水素は必須元素である。しかし、樹脂フィルムの持つ加工性の良さを十分に発揮させるためには、加工による密着性の低下をもたらす水酸化Alや水酸化Mg等のもろい化合物、また純粋なアルミ酸化膜との親和性に乏しいMg化合物は極力少なくしなければならない。これらのことから本願アルミニウム発明では酸化皮膜中のMgの最大濃度と水酸化物量の指標となるHの最大濃度とを同時に規制する。
機械的結合力は樹脂フィルムや接着剤を加熱溶融させ、板材表面の微細な凹部に進入させることにより得られる結合力である。
またファンデアワールス力の寄与はごく僅かと考えられている。
【0016】
ところで、請求項1を満たす酸化皮膜を得るには、一例として、エッチング量が50〜200mg/m2に達するアルカリ脱脂を行った後、pHが4.0以下かつAl,Mgイオン濃度がそれぞれ1mass%以下である酸(コスト面から希硫酸が使いやすい)にて酸洗を行う方法を挙げることができる。エッチング量が50mg/m2未満では均質な酸化皮膜が形成されず、エッチング量が200mg/m2を超えるとアルミニウム板厚の精度に悪影響を及ぼす。また、酸洗がMgの低減に寄与することは、主に自動車用アルミニウム板材の分野において公知であるが、pHが4.0を超えるとその効果が半減する。さらに本発明の特徴である酸化皮膜中のMgおよびH濃度の規定にあたって、酸洗浴中のAlイオン濃度が1mass%を超えると表面に水酸化Al等が残存し、Hが酸化皮膜中に濃縮するので好ましくない。またMgイオン濃度が1mass%を超えると表面にMg化合物が析出し、Mgが酸化皮膜中に濃縮するので好ましくない。
加えて、請求項2を満足させるためには、さらにアルカリ脱脂浴および酸洗浴の油汚染を3mass%以下に制御すればよい。これは、いずれの浴の油分も表面に残存しやすく、酸化皮膜最表面のCに影響を及ぼすためであり、油汚染が3mass%を超えると、Cが急激に増加するため好ましくない。
もちろん、これ以外の方法で得られた酸化皮膜でも、請求項記載の範囲さえ満たしていれば、本発明の好ましい効果を享受できるのは当然である。
【0017】
【実施例】
以下、実験例に基づいて、本発明を具体的に説明する。各例における下地処理条件を表1に、下地処理後の板材表面をGDSで測定した結果を表2に示す。
(実施例1)
JIS5052合金板(板厚0.50mm)を常法によりアルカリ脱脂(エッチング量=約100mg/m2)した後、50℃の1%硫酸(当社酸洗ラインにて一週間使用した液)に5秒間浸漬し、常温の純水にて5秒間洗浄した。これを150℃の熱風で3秒間乾燥させた。その後厚さ20μmのポリエステル系フィルムを積層した。積層条件としては、アルミニウム板材の片面にフィルムを重ねて、表面温度が180℃に加熱された1対のロールにより仮圧着し、その後265℃までの再加熱により、フィルムを溶融密着後直ちに水令した。
(実施例2)
JIS5182合金板(板厚0.30mm)に対し、実施例1と同様の操作を行った。
(実施例3)
JIS5052合金板(板厚0.50mm)を常法によりアルカリ脱脂(エッチング量=約100mg/m2)した後、50℃の1%硫酸(当社酸洗ラインにて一週間使用した液)に5秒間浸漬し、常温の純水にて5秒間洗浄した。これを常温の強風にて3秒間乾燥させ、実施例1と同様にポリエステル系フィルムを積層した。
(実施例4)
JIS5052合金板(板厚0.50mm)を常法によりアルカリ脱脂(エッチング量=約100mg/m2)した後、50℃の1%硫酸(当社酸洗ラインにて一週間使用した液)に5秒間浸漬し、常温の純水にて5秒間洗浄した。これを350℃の熱風で1分間乾燥させ、実施例1と同様にポリエステル系フィルムを積層した。
(実施例5)
JIS5052合金板(板厚0.50mm)を常法によりアルカリ脱脂(エッチング量=約100mg/m2)した後、50℃の1%硫酸(当社酸洗ラインにて一週間使用後、圧延油1mass%を追加した液)に5秒間浸漬し、常温の純水にて5秒間洗浄した。実施例1と同様にポリエステル系フィルムを積層した。
(実施例6)
JIS5052合金板(板厚0.50mm)を常法によりアルカリ脱脂(エッチング量=約100mg/m2)した後、50℃の1%硫酸(当社酸洗ラインにて一週間使用後、圧延油5mass%を追加した液)に5秒間浸漬し、常温の純水にて5秒間洗浄した。これを150℃の熱風で3秒間乾燥させ、実施例1と同様にポリエステル系フィルムを積層した。
(実施例7)
JIS3004合金板(板厚0.30mm)を常法によりアルカリ脱脂(エッチング量=約100mg/m2)した後、50℃の1%硫酸(当社酸洗ラインにて一週間使用した液)に5秒間浸漬し、常温の純水にて5秒間洗浄した。これを150℃の熱風で3秒間乾燥させた。その後厚さ20μmのポリプロピレン系フィルムを積層した。積層条件としては、アルミニウム板材の片面に変性ポリプロピレン系の熱溶融型接着フィルムを間に挟んで重ね合わせ、表面温度が180℃に加熱された1対のロールにより加熱圧着した。
(比較例1)
JIS5052合金板(板厚0.50mm)を常法によりアルカリ脱脂(エッチング量=約100mg/m2)した後、常温の純水にて5秒間洗浄した。これを150℃の熱風で3秒間乾燥させ、実施例1と同様にポリエステル系フィルムを積層した。
(比較例2)
JIS5052合金板(板厚0.50mm)を常法によりアルカリ脱脂(エッチング量=約100mg/m2)した後、50℃の1%硫酸(当社酸洗ラインにて一ヶ月使用した液)に5秒間浸漬し、常温の純水にて5秒間洗浄した。これを150℃の熱風で3秒間乾燥させ、実施例1と同様にポリエステル系フィルムを積層した。
(比較例3)
JIS5052合金板(板厚0.50mm)を常法によりアルカリ脱脂(エッチング量=約100mg/m2)した後、50℃の1%硫酸(当社酸洗ラインにて一週間使用した液)に5秒間浸漬し、常温の純水にて5秒間洗浄した。これを350℃の熱風で60分間乾燥させ、実施例1と同様にポリエステル系フィルムを積層した。
(従来例)
JIS5052合金板(板厚0.50mm)を常法によりアルカリ脱脂(エッチング量=約100mg/m2)した後、常法によりリン酸クロメート処理(Cr付着量=20mg/m2)した。その上に、実施例1と同様にポリエステル系フィルムを積層した。
【0018】
【表1】
【0019】
【表2】
【0020】
これらのサンプルを、非加工部の評価として積層のまま、加熱後の評価として沸騰水5時間浸漬後、および加工後の評価として30%、50%圧延後、それぞれ碁盤目剥離試験により密着性を調べた。結果を表3に示す。
碁盤目剥離試験はカッターナイフで1mm角で100個の碁盤目を切りセロハンテープで剥離試験を行った。剥離した碁盤目の数が10個以下を○、10個を越えて50個以下を△、50個を越えたものは×とした。
【0021】
【表3】
【0022】
表3から明らかなように、本発明条件を満足する実施例1〜5および7は、いずれの条件でも現在広く用いられているリン酸クロメートによる従来例4同等の良好な密着性を示した。
実施例1〜6は当然Crを使用しておらず、環境破壊や健康被害の観点から優位性は明確である。
実施例6は油分の多い浴を用いて酸洗したため請求項2のC濃度の要件を満たしておらず、厳しい加工において密着性がやや劣る結果となった。このように厳しい加工用途においては請求項2を適用するのが望ましい。
一方、アルカリ脱脂後に酸洗を施さないためMgの最大濃度が高い比較例1、酸洗ラインで1ヶ月という長期間使用した浴を用いて酸洗したためHの最大濃度が高い比較例2、酸洗後の乾燥条件を高温・長時間にしたため酸化膜が厚い比較例3は、いずれも密着性が劣る。特に加熱後や加工後の密着性が悪い。
【0023】
【発明の効果】
以上のように、本発明によれば、Cr等の有害重金属を含まないで、現行の化成クロメートと同等の優れたフィルム密着性を有する樹脂フィルム被覆用アルミニウム材および樹脂フィルム被覆アルミニウム材を提供することができ、有害物質による環境破壊や人体の健康被害を防止する効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の元素の分布を示す模式図である。
【符号の説明】
Mg マグネシウム濃度
H 水素濃度
C 炭素濃度
Claims (4)
- 表面に、厚さ=1〜200nmで、かつ最表面〜酸化皮膜/アルミ界面までの深さ方向での最大濃度がMgで5mass%以下、Hで10mass%以下のAlおよびOを主成分とする酸化皮膜を設けたことを特徴とするフィルム密着性に優れた樹脂フィルム被覆用アルミニウム材。
- 表面に、厚さ=1〜200nmで、かつ最表面〜酸化皮膜/アルミ界面までの深さ方向での最大濃度がMgで5mass%以下、Hで10mass%以下、かつ最表面のC濃度が50mass%以下のAlおよびOを主成分とする酸化皮膜を設けたことを特徴とするフィルム密着性に優れた樹脂フィルム被覆用アルミニウム材。
- 表面に、厚さ=1〜200nmで、かつ最表面〜酸化皮膜/アルミ界面までの深さ方向での最大濃度がMgで5mass%以下、Hで10mass%以下のAlおよびOを主成分とする酸化皮膜を設けたアルミニウム材に、樹脂フィルムが被覆されていることを特徴とするフィルム密着性に優れた樹脂フィルム被覆アルミニウム材。
- 表面に、厚さ=1〜200nmで、かつ最表面〜酸化皮膜/アルミ界面までの深さ方向での最大濃度がMgで5mass%以下、Hで10mass%以下、かつ最表面のC濃度が50mass%以下のAlおよびOを主成分とする酸化皮膜を設けたアルミニウム材に、樹脂フィルムが被覆されていることを特徴とする、フィルム密着性に優れた樹脂フィルム被覆アルミニウム材。
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