JP4897818B2 - 容器用鋼板及びその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、製缶加工用素材として使用され、飲料用容器や食品用容器などの各種金属容器に加工される容器用鋼板及びその製造方法に関する。
本出願は、特願2006−244560号と、特願2007−069271号とを基礎出願とし、これらの内容を取り込む。
飲料用又は食品用として使用される金属容器は、2ピース缶と3ピース缶とに大別される。例えば、DI(Drawing-Ironing;絞りしごき)缶に代表される2ピース缶を製造する際には、絞りしごき加工を行った後、缶内面側に塗装を行い、さらに缶外面側に塗装及び印刷を行う。一方、3ピース缶を製造する際には、缶内面に相当する面に塗装を行うと共に、缶外面に相当する面に印刷を行い、その後、缶胴部を溶接する。
このように、いずれの缶種においても、製缶前後の塗装工程が不可欠である。塗装工程においては、一般に、溶剤系又は水系の塗料が使用されており、缶表面にこれらの塗料を塗布した後に焼付けが行われる。その際、塗料に起因する廃溶剤等の廃棄物が産業廃棄物として排出されると共に、排ガス(主に炭酸ガス)が大気中に放出される。一方、近年、地球環境保全を目的とし、これら産業廃棄物及び排ガスを低減しようとする取組みが行われている。このような状況の中、金属容器においては、塗装に代わる技術としてフィルムをラミネートする技術が注目され、急速に広まっている。
従来、2ピース缶に関しては、金属板の表面にフィルムをラミネートした後で製缶する缶の製造方法、及びこれに関連する発明が多数提案されている。例えば、下記特許文献1には、金属素材の少なくとも容器内面となる面にポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムが密着された素材を、PETフィルムの結晶化温度よりも低く、かつPETフィルムのガラス転移温度(Tg)±30℃以内の温度で、絞りしごき加工を行って、PETフィルムに分子配向を付与することにより、皮膜密着性及び耐腐食性の向上を図ったDI缶の製造方法が開示されている。また、下記特許文献3に記載の薄肉化深絞り缶の製造方法では、熱可塑性樹脂で被覆した金属板を、この熱可塑性樹脂のガラス転移点(Tg)以上の温度に加熱して絞り加工した後、熱可塑性樹脂のガラス転移点(Tg)以上の温度に加熱して、1m/分以上の曲げ引張り加工速度で再絞り加工することにより、樹脂皮膜の密着性、耐腐食性及び耐熱性の向上を図っている。
一方、下記特許文献2には、樹脂皮膜の密着性、耐腐食性及び外観特性が優れたDI缶を得ることを目的として、缶内面に設けられた熱可塑性ポリエステル樹脂からなる皮膜層の下に、クロム酸処理、リン酸処理、クロム酸/リン酸処理又は電解クロム酸処理により密着下地となる無機酸化物層を形成し、缶外面にスズ、ニッケル及び/又はアルミニウムからなるめっき層を形成し、このめっき層に含まれる成分の量及びしごき率を適正化したDI缶が提案されている。また、下記特許文献4には、密着下地となる無機酸化物層をクロム水和物により形成し、この無機酸化物層中のCr量及びめっき層に含まれる成分の量を適正化することにより、加工性向上を図ったDI缶用被覆鋼板が提案されている。
同様に、3ピース缶に関しても、フィルムをラミネートした容器用鋼板及びその製造方法等について、種々の提案がなされている。例えば、下記特許文献5には、鋼帯にSn、Ni及びCrのうち少なくとも1種をめっきした後、この鋼帯の缶内面となる面に、鋼帯の長さ方向に延在する2mm〜5mm幅の非積層部を残存させて、缶の高さ方向に対応する幅の熱可塑性フィルムを、鋼帯の長さ方向に延在するように熱接着した3ピース缶用フィルム積層鋼帯が開示されている。また、下記特許文献6には、缶内面では、鋼板上に、接着層/熱可塑性樹脂フィルム層がこの順に形成されているか、又は熱可塑性樹脂フィルム層のみが形成され、一方、缶外面では、鋼板上に、接着剤層/印刷インキ層/フィルム層/潤滑皮膜層がこの順に形成されているか、又は接着剤層/フィルム層/印刷インキ層/潤滑皮膜層がこの順に形成された、多層構造有機皮膜を有する3ピース缶が提案されている。更に、下記特許文献7では、この多層構造有機皮膜を有するスリーピース缶用の鋼板が開示されおり、下記特許文献8では、このような3ピース缶用ストライプラミネート鋼板の製造方法が提案されている。
特公平1−055055号公報(特許第1571783号) 特公平3−033506号公報(特許第1670957号) 特開平2−263523号公報 特公平2−025784号公報(特許第1601937号) 特開平3−236954号公報 特開平5−112361号公報 特開平5−111979号公報 特開平5−147181号公報
しかしながら、上述した特許文献1〜6に記載の技術には、以下に示す問題点がある。近年、飲料容器市場では、PETボトル、瓶及び紙等の素材からなる容器と金属容器との間で、コスト及び品質に関する競争が激化している。このため、金属容器用のラミネート鋼板に対しても、従来法で塗装処理を行っても優れた密着性及び耐食性を確保することができ、更に、より優れた製缶加工性、特に、フィルム密着性、加工フィルム密着性及び耐食性等を有しているものが求められている。一方、特許文献1〜6に記載の技術を適用することにより、地球環境の保全を大きく前進せしめるという効果は得られるものの、これら従来技術では、外観が良好で、製缶加工時における絞りしごき加工性、溶接性、耐食性、塗料密着性及びフィルム密着性の全てにおいて優れた容器用鋼板を得ることができない。
本発明は、上述した問題点に鑑みてなされたものであって、絞りしごき加工性、溶接性、耐食性、塗料密着性、フィルム密着性及び外観の全てにおいて優れた容器用鋼板及びその製造方法の提供を課題とする。
本発明は、上記課題を解決するために以下の手段を採用した。
すなわち、本発明の容器用鋼板は、鋼基材と、この鋼基材の少なくとも一方の面に形成され、Niを150mg/m〜1000mg/m含有するNiめっき層とを有し;前記Niめっき層上に接して陰極電解処理により、リン酸皮膜:P量で0.1mg/m〜100mg/mと、Zr皮膜:Zr量で0.1mg/m〜500mg/m及びフェノール樹脂皮膜:C量で0.1mg/m〜100mg/mの少なくとも一方を複合した皮膜が形成されている。この容器用鋼板では、Ni拡散層が形成されていてもよい。
この容器用鋼板では、前記リン酸皮膜:P量で0.1mg/m〜15mg/m と、前記Zr皮膜:Zr量で0.1mg/m〜15mg/m 及び前記フェノール樹脂皮膜:C量で0.1mg/m〜15mg/m の少なくとも一方を複合した皮膜が形成されていてもよい。
この容器用鋼板では、前記リン酸皮膜:P量で0.1mg/m〜8mg/m と、前記Zr皮膜:Zr量で0.1mg/m〜9mg/m 及び前記フェノール樹脂皮膜:C量で0.1mg/m〜8mg/m の少なくとも一方を複合した皮膜が形成されていてもよい。
この容器用鋼板では、陰極電解処理により、Zr皮膜及びリン酸皮膜の2種の皮膜を複合した皮膜が前記Niめっき層上に形成されていてもよい。
この容器用鋼板では、陰極電解処理により、Zr皮膜とリン酸皮膜とフェノール樹脂皮膜との3種の皮膜を複合した皮膜が前記Niめっき層上に形成されていてもよい。
この容器用鋼板では、前記陰極電解処理により、前記鋼基材における前記Niめっき層が形成されていない領域にタンニン酸Feの皮膜が形成されていてもよい。
本発明に係る容器用鋼板の製造方法は、鋼基材の少なくとも一方の面に、Niを150mg/m〜1000mg/m含有するNiめっき層を形成する工程と;陰極電解処理により、前記Niめっき層上に接して、リン酸皮膜:P量で0.1mg/m〜100mg/mと、Zr皮膜:Zr量で0.1mg/m〜500mg/m及びフェノール樹脂皮膜:C量で0.1mg/m〜100mg/mの少なくとも一方を複合した皮膜を形成する工程と;を有する。
この容器用鋼板の製造方法では、前記リン酸皮膜:P量で0.1mg/m〜15mg/m前記Zr皮膜:Zr量で0.1mg/m〜15mg/m 及び前記フェノール樹脂皮膜:C量で0.1mg/m〜15mg/m の少なくとも一方を複合した皮膜を形成してもよい。
この容器用鋼板の製造方法では、前記リン酸皮膜:P量で0.1mg/m〜8mg/m前記Zr皮膜:Zr量で0.1mg/m〜9mg/m 及び前記フェノール樹脂皮膜:C量で0.1mg/m〜8mg/m の少なくとも一方を複合した皮膜を形成してもよい。
この容器用鋼板の製造方法では、前記陰極電解処理により、Zr皮膜及びリン酸皮膜の2種の皮膜を複合した皮膜を前記Niめっき層上に形成してもよい。
この容器用鋼板の製造方法では、前記陰極電解処理により、Zr皮膜、リン酸皮膜、及びフェノール樹脂皮膜の3種の皮膜を複合した皮膜を前記Niめっき層上に形成してもよい。
この容器用鋼板の製造方法では、前記陰極電解処理を、酸性溶液又はタンニン酸を含んだ酸性溶液中で行ってもよい。この容器用鋼板の製造方法では、Niめっき層を形成した後、焼鈍を行ってNi拡散層を形成させてもよい。
本発明では、鋼基材の少なくとも一方の面にNiめっき層を形成し、このNiめっき層上に、陰極電解処理により、Zr皮膜、リン酸皮膜及びフェノール樹脂皮膜のうちの2種以上の皮膜を形成し、更にNiめっき層中のNi量及び各皮膜の付着量を最適化している。その結果、絞りしごき加工、溶接性、耐食性、塗料密着性、フィルム密着性及び外観の全てが優れた容器用鋼板が得られる。
以下、本発明を実施するための最良の形態について説明する。
従来のラミネート鋼板においては、多くの場合、鋼基材(鋼板)の表面に、下地層として、電解クロメート処理を施したクロメート皮膜が形成されている。クロメート皮膜は、2層構造となっており、金属Cr層の上に水和酸化クロム層が存在している。従って、ラミネートフィルム(接着剤付きのフィルムであれば接着剤層)は、クロメート皮膜の水和酸化クロム層を介して鋼基材(鋼板)との密着性を確保している。この密着性発現の機構の詳細については明らかにされていないが、水和酸化クロムの水酸基と、ラミネートフィルムのカルボニル基又はエステル基等の官能基との水素結合であるといわれている。
そこで、本発明者は、このクロメート皮膜に代わる新たな皮膜について鋭意検討した。その結果、Niめっき層の上層に、陰極電解処理により付与されるZr皮膜、リン酸皮膜又はフェノール樹脂皮膜、特に、Zr皮膜とリン酸皮膜若しくはフェノール樹脂皮膜とを複合させた皮膜は、塗装又はラミネートフィルムとの間に極めて強力な共有結合を形成し、従来のクロメート皮膜以上の優れた製缶加工性が得られることを知見し、本発明に至った。
まず、本発明に係る容器用鋼板の構成及び数値限定理由について詳細に説明する。本発明の容器用鋼板は、鋼基材の少なくとも一方の面にNiめっき層が形成されている。本発明の容器用鋼板における鋼基材の材質及び種類は、特に限定されるものではなく、通常、容器材料として使用される鋼板を使用することができる。
一方、Niめっき層は、耐食性を確保するために設けられている。Niは高耐食金属であるため、本発明の容器用鋼板のように、鋼基材の表面にNiをめっきすることにより、耐食性を向上させることができる。Niによる合金層の耐食性向上効果は、めっきされるNiの量、即ち、Niめっき層中のNi量が10mg/m以上であれば発現するが、めっき層中のNi量が150mg/m未満の場合、十分な耐食性を確保することができない。一方、めっき層中のNi量が多くなるほど合金層の耐食性向上効果は増加するが、Ni量が1000mg/mを超えると、その向上効果が飽和する上、Niは高価な金属であるため、1000mg/mを超える量のNiをめっきすることは経済的にも不利である。従って、Niめっき層中のNi量は、150mg/m〜1000mg/mとするのが好ましい。
このNiめっき層は、鋼基材の両面に形成されていることが好ましいが、製造コスト削減等の観点から、鋼基材の一方の面に耐食性を向上させる表面処理等が施されている場合には、Niめっき層は少なくとも鋼基材の他方の面にのみ形成されていればよい。このように鋼基材の一方の面にのみNiめっき層が形成されている鋼板を製缶加工する場合は、例えば、Niめっき層が形成されている面が容器内面となるように加工されるのが好ましい。
なお、本発明におけるNiめっき層は、純Niにより形成されているものだけでなく、Ni量が150mg/m〜1000mg/mの範囲内であれば、Ni合金により形成されていてもよい。また、機械的強度を向上させる目的で鋼基材に対して窒化処理を施してもよく、その場合でも、基材の厚さが薄くなっても潰れ及び変形が生じにくくなる等の窒化処理による効果は低減しない。
また、本発明の容器用鋼板においては、前述したNiめっき層上に、陰極電解処理により、Zr皮膜、リン酸皮膜及びフェノール樹脂皮膜のうちの2種以上の皮膜が形成されており、これが本発明の最も重要な特徴点となっている。そして、本発明の容器用鋼板では、Zr皮膜の付着量をZr量で0.1mg/m〜500mg/mとし、リン酸皮膜の付着量をP量で0.1mg/m〜100mg/mとし、フェノール樹脂皮膜の付着量をC量で0.1mg/m〜100mg/mとしている。
これらZr皮膜、リン酸皮膜及びフェノール樹脂皮膜は、単独で形成されていてもある程度の効果が認められるが、十分な実用性能は得られない。そこで、本発明の容器用鋼板においては、Zr皮膜、リン酸皮膜及びフェノール樹脂皮膜のうち、2種以上の皮膜を複合した皮膜を形成しており、これにより、以下に示すような優れた実用性能を得ている。特に、Zr皮膜と、リン酸皮膜及び/又はフェノール皮膜とを複合することによって、より一層優れた実用性能が発揮される。
さらに、皮膜量が少ない範囲においては各々の特性を補完しあうため、Zr皮膜、リン酸皮膜の2種類を複合した皮膜は、特に耐食性、耐錆性においてより安定した性能が発揮される。
さらに、皮膜量が少ない範囲においては各々の特性を補完しあうため、Zr皮膜、リン酸皮膜、フェノール樹脂皮膜の3種類を複合した皮膜は、フィルム密着性、塗料密着性、耐食性においてより安定した性能が発揮される。
これらの皮膜のうち、Zr皮膜は、耐食性及び密着性の確保に効果がある。本発明におけるZr皮膜は、酸化Zr、水酸化Zr、フッ化Zr及びリン酸Zr等のZr化合物からなる皮膜又はこれらの複合皮膜により構成されている。このようなZr皮膜は、耐食性及び密着性が優れているため、Niめっき層上に形成されるZr皮膜の量が多くなる程、容器用鋼板の耐食性及び密着性が向上する。しかしながら、Zr皮膜の付着量が膜中のZr量で0.1mg/m未満の場合、実用上問題ないレベルの耐食性及び密着性を確保することができない。一方、Zr皮膜の付着量が膜中のZr量で500mg/mを超えると、Zr皮膜の厚さが厚くなり過ぎ、Zr皮膜自体の密着性が劣化すると共に、電気抵抗が上昇して溶接性が劣化する。従って、Niめっき膜上にZr皮膜を形成する場合は、Zr皮膜付着量を膜中のZr量で0.1mg/m〜500mg/mとする。なお、Zr皮膜付着量が膜中のZr量で15mg/mを超えると、皮膜の付着ムラが外観ムラとなって発現することがあるため、Zr皮膜付着量は、膜中のZr量で0.1mg/m〜15mg/mとすることが好ましい。
さらに、より微細な外観ムラを良好安定化するためには、Zr皮膜量を金属Zr量で0.1mg/m〜9mg/mとすることが好ましい。
また、リン酸皮膜は、耐食性及び密着性の確保に効果がある。本発明におけるリン酸皮膜は、その下に形成されているNiめっき層、Zr皮膜又はフェノール樹脂皮膜とリン酸とが反応して生成するリン酸Ni、リン酸Zr若しくはリン酸-フェノール樹脂又は、Niめっき層のミクロなめっき欠陥部位(ミクロボイド)において露出している鋼基材中のFeと反応して生成するリン酸Feからなる皮膜、又はこれらの複合皮膜から構成されている。このようなリン酸皮膜は、耐食性及び密着性が優れているため、Niめっき層上に形成されるリン酸皮膜の量が多くなる程、容器用鋼板の耐食性及び密着性が向上する。しかしながら、リン酸皮膜の付着量が膜中のP量で0.1mg/m未満の場合、実用上問題ないレベルの耐食性及び密着性を確保することができない。一方、リン酸皮膜の付着量が膜中のP量で100mg/mを超えると、リン酸皮膜が厚くなり過ぎ、リン酸皮膜自体の密着性が劣化すると共に、電気抵抗が上昇して溶接性が劣化する。従って、Niめっき膜上にリン酸皮膜を形成する場合は、リン酸皮膜の付着量を膜中のP量で0.1mg/m〜100mg/mとするのが好ましい。なお、リン酸皮膜付着量が膜中のP量で15mg/mを超えると、皮膜の付着ムラが外観ムラとなって発現することがあるため、リン酸皮膜の付着量は膜中のP量で0.1mg/m〜15mg/mとすることが好ましい。
さらに、より微細な外観ムラを良好安定化するためには、リン酸皮膜量をP量で0.1mg/m〜8mg/mとすることが好ましい。
更に、フェノール樹脂皮膜は、密着性の確保に効果がある。フェノール樹脂は、それ自体が有機物であるため、塗料及びラミネートフィルムとの密着性が優れている。このため、Niめっき層上に形成されるフェノール樹脂皮膜の量が多い程、容器用鋼板の密着性が向上する。しかしながら、フェノール樹脂皮膜の付着量が膜中のC量で0.1mg/m未満の場合、実用上問題ないレベルの密着性を確保することができない。一方、フェノール樹脂皮膜の付着量が膜中のC量で100mg/mを超えると、電気抵抗が上昇して溶接性が劣化する。従って、Niめっき膜上にフェノール樹脂皮膜を形成する場合は、フェノール樹脂皮膜の付着量を膜中のC量で0.1mg/m〜100mg/mとするのが好ましい。なお、フェノール樹脂皮膜の付着量が膜中のC量で15mg/mを超えると、皮膜の付着ムラが外観ムラとなって発現することがあるため、フェノール樹脂皮膜の付着量は、膜中のC量で0.1mg/m〜15mg/mとすることが好ましい。
さらに、より微細な外観ムラを良好安定化するためには、フェノール樹脂皮膜量がC量で0.1mg/m〜8mg/mとすることが好ましい。
なお、Niめっき膜中のNi量、Zr皮膜中のZr量及びリン酸皮膜中のP量については、例えば、蛍光X線による定量分析で測定することができる。また、フェノール皮膜中のC量は、例えば、ガスクロマトグラフィーによる全炭素量測定法により測定した値から、鋼中に含まれるC量をバックグランドとして差し引くことにより求めることができる。
次に、上述の如く構成された本発明の容器用鋼板の製造方法について説明する。本発明の容器用鋼板を製造する場合は、例えば、通常の鋼片製造工程から熱間圧延、酸洗、冷間圧延、焼鈍及び調質圧延等の工程を経て製造された鋼基材の少なくとも一方の面に、Niめっき層を形成する。このNiめっき層を形成する方法は、特に限定されるものではなく、例えば、真空蒸着及びスパッタリング等の乾式めっき法、電気めっき及び無電解めっき等の湿式めっき法等の公知技術を利用することができる。
また、鋼基材表面にNiをめっきした後に、拡散層を形成するための加熱処理を行ってもよい。更に、例えば、拡散めっき法によりNiめっき層を形成する場合には、鋼基材表面にNiをめっきした後で、焼鈍炉において拡散層を形成するための拡散処理が行われるが、この拡散処理の前後又は拡散処理と同時に、窒化処理を行ってもよい。
次に、Niめっき層上に、Zr皮膜、リン酸皮膜及びフェノール樹脂皮膜のうちの2種以上の皮膜を形成する。これらの皮膜は、例えば、Zrイオン、リン酸イオン又は低分子のフェノール樹脂を溶解させた酸性溶液中に鋼基材を浸漬する方法、又はこれらの酸性溶液を使用して陰極電解処理する方法で形成することができる。しかしながら、浸漬法は、各皮膜が形成される際に、下地となるNiめっき層がエッチングされるため、皮膜の付着が不均一となり、また、処理時間も長くなるため、工業生産的には不利である。これに対して、陰極電解処理は、強制的な電荷移動及び鋼基材界面での水素発生による表面清浄化、更にはpH上昇による付着促進効果により、数秒から数十秒程度の短時間で、これらの皮膜を均一に形成することが可能であり、工業的には極めて有利である。従って、本発明の容器用鋼板の製造方法においては、陰極電解処理により、Zr皮膜、リン酸皮膜又はフェノール樹脂皮膜を形成する。
また、Niめっき層上に、Zr皮膜、リン酸皮膜の2種の皮膜を形成するようにしてもよい。これらの皮膜は、例えば、Zrイオン、リン酸イオンを溶解させた酸性溶液中に鋼基材を浸漬する方法、又はこれらの酸性溶液を使用して陰極電解処理する方法で形成することができる。しかしながら、前述と同様の理由により、浸漬法は工業的に極めて不利であり、一方、陰極電解処理は工業的には極めて有利である。従って、本発明の容器用鋼板の製造方法においては、陰極電解処理により、Zr皮膜、リン酸皮膜を形成する。
さらに、Niめっき層上に、Zr皮膜、リン酸皮膜及びフェノール樹脂皮膜の3種の皮膜を形成するようにしてもよい。これらの皮膜は、例えば、Zrイオン、リン酸イオンおよび低分子のフェノール樹脂を溶解させた酸性溶液中に鋼基材を浸漬する方法、又はこれらの酸性溶液を使用して陰極電解処理する方法で形成することができる。前述と同様の理由により、浸漬法は工業的に極めて不利であり、一方、陰極電解処理は工業的には極めて有利である。従って、本発明の容器用鋼板の製造方法においては、陰極電解処理により、Zr皮膜、リン酸皮膜、フェノール樹脂皮膜を形成する。
なお、陰極電解処理する際に使用する酸性溶液中にタンニン酸を添加すると、タンニン酸とFeとが結合し、鋼基材表面におけるNiめっき層が形成されていない領域にタンニン酸Feの皮膜が形成される。これにより、耐錆性又は密着性を向上させる効果が得られるため、陰極電解処理する際には、必要に応じて、Zrイオン、リン酸イオン又は低分子のフェノール樹脂を溶解させた酸性溶液中にタンニン酸を添加することもできる。
また、Zr皮膜、リン酸皮膜及び/又はフェノール樹脂皮膜を形成する際に使用する酸性溶液の溶媒としては、例えば、水等を使用することができるが、本発明はこれに限定されるものではなく、溶解する材料、形成方法及び条件等に応じて適宜選択することができる。
本発明の容器用鋼板においては、鋼基材の少なくとも一方の面に、Niめっき層を形成し、その上に、Zr皮膜、リン酸皮膜及びフェノール皮膜のうちの2種以上の皮膜を形成しているため、優れた耐食性が得られると共に、塗料密着性及びフィルム密着性を強固に保つことができ、優れた絞りしごき加工性が得られる。また、これらの皮膜の付着量を、溶接時の電気抵抗が問題となる程に上昇しない範囲に設定しているため、溶接性に優れている。更に、陰極電解処理により緻密な皮膜で均一な皮膜を形成しているため、外観が良好である。
以下、本発明の実施例及び比較例を挙げて、本発明の効果について具体的に説明する。本実施例においては、先ず、(A1)冷間圧延後、焼鈍及び調圧した厚さが0.17mm〜0.23mmの鋼基材(鋼板)を、脱脂及び酸洗した後、その両面に、ワット浴を使用してNiめっきを施すか、又は、(A2)冷間圧延した厚さが0.17mm〜0.23mmの鋼基材(鋼板)の両面に、ワット浴を使用してNiめっきを施した後、焼鈍を行ってNi拡散層を形成させ、更に、脱脂及び酸洗を行い、Niめっき鋼板を作製した。
次に、上述した(A1)又は(A2)の方法で作製したNiめっき鋼板の表面(両面)に、以下に示す方法で、Zr皮膜、リン酸皮膜及び/又はフェノール樹脂皮膜を形成した。
(B1)蒸留水にフッ化Zr、リン酸及びフェノール樹脂を溶解させた処理液中に、上記(A1)又は(A2)の方法で作製したNiめっき鋼板を浸漬して陰極電解処理した後、水洗して乾燥させた。
(B2)蒸留水にリン酸及びフェノール樹脂を溶解させた処理液中に、上記(A1)又は(A2)の方法で作製したNiめっき鋼板浸漬して陰極電解処理した後、水洗して乾燥させた。
(B3)蒸留水にフッ化Zr及びリン酸を溶解させた処理液中に、上記(A1)又は(A2)の方法で作製したNiめっき鋼板を浸漬して陰極電解処理した後、水洗して乾燥させた。
(B4)蒸留水にフッ化Zr及びフェノール樹脂を溶解させた処理液中に、上記(A1)又は(A2)の方法で作製したNiめっき鋼板を浸漬して陰極電解処理した後、水洗して乾燥させた。
(B5)蒸留水にフッ化Zr、リン酸及びタンニン酸を溶解させた処理液中に、上記(A1)又は(A2)の方法で作製したNiめっき鋼板を浸漬して陰極電解処理した後、水洗して乾燥させた。
次に、上述の方法で作製した各容器用鋼板を試験材とし、これら実施例及び比較例の試験材について、加工性、溶接性、フィルム密着性、塗料密着性、耐食性、耐錆性及び外観の各性能を評価した。以下、その具体的な評価方法及び評価基準について説明する。
(1)加工性
実施例及び比較例の各試験材の両面に、厚さが20μmのPETフィルムを200℃でラミネートした後、絞り加工及びしごき加工による製缶加工を段階的に行い、その成型性で評価した。その結果、成型性が極めて良好であったものをVG、良好であったものをG、疵が発生したものをB、加工途中で破断が生じて加工不能となったものをVBと評価した。
(2)溶接性
実施例及び比較例の各試験材を、ワイヤーシーム溶接機を使用して、溶接ワイヤースピードが80m/分の条件で、電流を変更して溶接し、十分な溶接強度が得られる最小電流値と、塵及び溶接スパッタ等の溶接欠陥が目立ち始める最大電流値とからなる適正電流範囲の広さから総合的に評価した。その結果、溶接性が極めて良好であったものをVG、良好であったものをG、劣っていたものをB、溶接不能であったものをVBと評価した。
(3)フィルム密着性
実施例及び比較例の各試験材の両面に、厚さが20μmのPETフィルムを200℃でラミネートした後、絞りしごき加工を行って缶体を作製し、この缶体に対して、125℃で30分間のレトルト処理を行い、その際のフィルムの剥離状況で評価した。その結果、剥離が全くなかったものをVG、実用上問題が無い程度の極僅かな剥離が生じていたものをG、僅かな剥離が生じていたものをB、大部分で剥離が生じていたものをVBと評価した。
(4)塗料密着性
実施例及び比較例の各試験材の一方の面に、エポキシ−フェノール樹脂を塗布した後、200℃の温度条件下で30分間保持することにより焼付を行った。そして、この樹脂を塗布した部分に、鋼基材に達する深さの切込みを、1mm間隔で碁盤目状に形成した後、この部分に粘着テープを貼り付けて剥離する碁盤目剥離試験を実施した。その結果、剥離が全くなかったものをVG、実用上問題無い程度の極僅かな剥離があったものをG、僅かな剥離があったものをB、大部分が剥離したものをVBと評価した。
(5)耐食性
実施例及び比較例の各試験材の一方の面に、エポキシ−フェノール樹脂を塗布した後、200℃の温度条件下で30分間保持することにより焼付を行った。そして、この樹脂を塗布した部分に鋼基材に達する深さのクロスカットを入れたものを、クエン酸(1.5質量%)−食塩(1.5質量%)の混合液からなる試験液に、45℃の温度条件下で72時間浸漬し、洗浄及び乾燥した後、テープ剥離試験を行い、クロスカット部における塗膜(エポキシ−フェノール樹脂膜)の下の腐食状況及び平板部の腐食状況で評価した。その結果、塗膜の下で腐食が認められなかったものをVG、塗膜の下に実用上問題ない程度の僅かな腐食が認められたものをG、塗膜の下に微小な腐食が認められたもの又は平板部に僅かな腐食が認められたものをB、塗膜の下に著しい腐食が認められたもの又は平板部に腐食が認められたものをVBと評価した。
(6)耐錆性
実施例及び比較例の各試験材に対して、湿度が90%の環境に2時間保持と、湿度が40%の環境に2時間保持とを繰り返し行うサイクル試験を2ヶ月間行い、錆の発生状況を評価した。その結果、発錆が全くなかったものをVG、実用上問題ない程度の極僅かな発錆があったものをG、僅かな発錆があったものをB、大部分で発錆していたものをVBと評価した。
(7)外観
実施例及び比較例の各試験材を目視で観察し、Zr皮膜、リン酸皮膜及びフェノール樹脂皮膜に発生したムラの状況で評価した。その結果、全くムラがなかったものをVG、実用上問題がない程度の極僅かなムラがあったものをG、実用上問題がない程度のムラがあったものをA、ムラが認められるものをB、著しくムラが発生していたものをVBと評価した。
以上の結果を下記表1及び表2に示す。なお、下記表1及び表2には、実施例及び比較例の各試験材におけるNiめっき層量及び各皮膜の付着量も併せて示す。また、下記表1及び表2に示すNiめっき量は蛍光X線測定法により求めた値であり、各皮膜の付着量は、Zr皮膜量(Zr量)及びリン酸皮膜量(P量)については蛍光X線での定量分析により求めた値であり、フェノール樹脂皮膜量(C量)についてはガスクロマトグラフィーによる全炭素量測定法(鋼中に含まれるC量はバックグラウンドとして差し引いた)により求めた値である。更に、下記表2における下線は、本発明の規定範囲外であることを示している。
上記表1及び表2に示すように、Niめっき層量(Ni量)が本発明の規定範囲に満たない比較例No.1の試験材は、耐食性及び耐錆性が劣っていた。また、Niめっき層上にZr皮膜のみを形成した比較例No.2の試験材及びリン酸皮膜のみを形成した比較例No.3の試験材は、加工性、溶接性及び外観が優れていたものの、フィルム密着性、塗料密着性、耐食性及び耐錆性が不良であった。更に、Niめっき層上にフェノール樹脂皮膜のみを形成した比較例No.4の試験材は、塗料密着性、耐食性及び耐錆性が不良であり、溶接性も劣っていた。
一方、Niめっき層上に、Zr皮膜、リン酸皮膜及びフェノール樹脂皮膜の全てを形成しているが、リン酸皮膜量(P量)が本発明の規定範囲に満たない比較例No.5の試験材、及びZr皮膜量(Zr量)が本発明の規定範囲に満たない比較例No.6の試験材は、溶接性、塗料密着性、耐食性及び防錆性が劣っており、特に、比較例No.5の試験材は塗料密着性が不良であった。また、リン酸皮膜量(P量)及びフェノール樹脂皮膜量(C量)が本発明の規定範囲を超えている比較例No.7の試験材は、溶接性、フィルム密着性、塗料密着性及び耐食性が不良であり、更に、加工性及び耐錆性も劣っていた。更に、リン酸皮膜量(P量)のみが本発明の規定範囲を超えている比較例No.11の試験材は、加工性、溶接性及び外観が不良であり、フィルム密着性、塗料密着性及び耐食性が劣っていた。
また、Niめっき層上にリン酸皮膜とフェノール樹脂皮膜を形成しているが、フェノール樹脂皮膜量(C量)が本発明の規定範囲に満たない比較例No.8の試験材は、外観が良好であったものの、溶接性及び耐錆性が不良であり、その他の項目も劣っていた。更に、Zr皮膜及びリン酸皮膜を形成しているが、その付着量が共に本発明の規定範囲から外れている比較例No.9の試験材は、加工性、溶接性、フィルム密着性及び外観が不良であり、その他の項目も劣っていた。更にまた、Zr皮膜及びフェノール樹脂皮膜を形成しているものの、フェノール樹脂皮膜量(C量)が本発明の規定範囲に満たない比較例10の試験材は、溶接性、フィルム密着性、塗料密着性耐食性が劣っており、更に加工性、耐錆性及び外観も劣っていた。
これに対して、本発明の規定範囲内で作製した実施例No.1〜No.38の試験材では、加工性、溶接性、フィルム密着性、塗料密着性、耐食性、耐錆性及び外観の全ての評価項目において、優れた特性が得られた。特に実施例No.29〜No.38では、何れもZr膜の付着量がZr量で0.1mg/m〜9mg/mであり、リン酸皮膜の付着量がP量で0.1mg/m〜8mg/mであり、フェノール樹脂皮膜の付着量がC量で0.1mg/m〜8mg/mのフェノール樹脂皮膜のうち、2種以上を付与している。このため、特に外観において優れた特性が得られた。
本発明によれば、鋼基材の少なくとも一方の面にNiめっき層を形成し、このNiめっき層上に、陰極電解処理により、Zr皮膜、リン酸皮膜及びフェノール樹脂皮膜のうちの2種以上の皮膜を形成し、更にNiめっき層中のNi量及び各皮膜の付着量を最適化している。その結果、絞りしごき加工、溶接性、耐食性、塗料密着性、フィルム密着性及び外観の全てにおいて優れた容器用鋼板が得られる。

Claims (14)

  1. 鋼基材と、この鋼基材の少なくとも一方の面に形成され、Niを150mg/m〜1000mg/m含有するNiめっき層とを有し;
    前記Niめっき層上に接して陰極電解処理により、
    リン酸皮膜:P量で0.1mg/m〜100mg/mと、
    Zr皮膜:Zr量で0.1mg/m〜500mg/m及びフェノール樹脂皮膜:C量で0.1mg/m〜100mg/mの少なくとも一方を複合した皮膜が形成されている;
    ことを特徴とする容器用鋼板。
  2. 請求項1に記載の容器用鋼板であって、
    前記リン酸皮膜:P量で0.1mg/m〜15mg/m と、
    前記Zr皮膜:Zr量で0.1mg/m〜15mg/m 及び前記フェノール樹脂皮膜:C量で0.1mg/m〜15mg/m の少なくとも一方を複合した皮膜が形成されている。
  3. 請求項1に記載の容器用鋼板であって、
    前記リン酸皮膜:P量で0.1mg/m〜8mg/m と、
    前記Zr皮膜:Zr量で0.1mg/m〜9mg/m 及び前記フェノール樹脂皮膜:C量で0.1mg/m〜8mg/m の少なくとも一方を複合した皮膜が形成されている。
  4. 請求項1に記載の容器用鋼板であって、
    陰極電解処理により、Zr皮膜及びリン酸皮膜の2種の皮膜を複合した皮膜が前記Niめっき層上に形成されている。
  5. 請求項1に記載の容器用鋼板であって、
    陰極電解処理により、Zr皮膜とリン酸皮膜とフェノール樹脂皮膜との3種の皮膜を複合した皮膜が前記Niめっき層上に形成されている。
  6. 請求項1に記載の容器用鋼板であって、
    前記陰極電解処理により、前記鋼基材における前記Niめっき層が形成されていない領域にタンニン酸Feの皮膜が形成されている。
  7. 鋼基材の少なくとも一方の面に、Niを150mg/m〜1000mg/m含有するNiめっき層を形成する工程と;
    陰極電解処理により、前記Niめっき層上に接して、リン酸皮膜:P量で0.1mg/m〜100mg/mと、Zr皮膜:Zr量で0.1mg/m〜500mg/m及びフェノール樹脂皮膜:C量で0.1mg/m〜100mg/mの少なくとも一方を複合した皮膜を形成する工程と;
    を有することを特徴とする容器用鋼板の製造方法。
  8. 請求項7に記載の容器用鋼板の製造方法であって、
    前記リン酸皮膜:P量で0.1mg/m〜15mg/m前記Zr皮膜:Zr量で0.1mg/m〜15mg/m 及び前記フェノール樹脂皮膜:C量で0.1mg/m〜15mg/m の少なくとも一方を複合した皮膜を形成する。
  9. 請求項7に記載の容器用鋼板の製造方法であって、
    前記リン酸皮膜:P量で0.1mg/m〜8mg/m前記Zr皮膜:Zr量で0.1mg/m〜9mg/m 及び前記フェノール樹脂皮膜:C量で0.1mg/m〜8mg/m の少なくとも一方を複合した皮膜を形成する。
  10. 請求項7に記載の容器用鋼板の製造方法であって、
    前記陰極電解処理により、Zr皮膜及びリン酸皮膜の2種の皮膜を複合した皮膜を前記Niめっき層上に形成させる。
  11. 請求項7に記載の容器用鋼板の製造方法であって、
    前記陰極電解処理により、Zr皮膜、リン酸皮膜、及びフェノール樹脂皮膜の3種の皮膜を複合した皮膜を前記Niめっき層上に形成させる。
  12. 請求項7に記載の容器用鋼板の製造方法であって、
    前記陰極電解処理を、酸性溶液又はタンニン酸を含んだ酸性溶液中で行う。
  13. 請求項1に記載の容器用鋼板であって、
    Ni拡散層が形成されている。
  14. 請求項7に記載の容器用鋼板の製造方法であって、
    Niめっき層を形成した後、焼鈍を行ってNi拡散層を形成させる。
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