JP2006291288A - 缶用めっき鋼板 - Google Patents
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Abstract
【課題】 飲料缶、食缶等に使用される、有機皮膜密着性、耐食性に優れた缶用めっき鋼板を提供する。
【解決手段】 めっき鋼板表面に、Mo又はW換算で合計0.1〜50mg/m2のモリブデン酸、モリブデン酸塩、タングステン酸、タングステン酸塩の中から選ばれる1種又は2種以上、P量として2〜100mg/m2のリン酸塩、Si量として0.05〜30mg/m2のシラノール基含有有機化合物を含む皮膜を有することを特徴とする缶用めっき鋼板である。
【選択図】 なし
【解決手段】 めっき鋼板表面に、Mo又はW換算で合計0.1〜50mg/m2のモリブデン酸、モリブデン酸塩、タングステン酸、タングステン酸塩の中から選ばれる1種又は2種以上、P量として2〜100mg/m2のリン酸塩、Si量として0.05〜30mg/m2のシラノール基含有有機化合物を含む皮膜を有することを特徴とする缶用めっき鋼板である。
【選択図】 なし
Description
本発明は、飲料缶、食缶等に使用される、有機皮膜密着性、耐食性に優れた表面処理鋼板に関する。
従来、缶用材料として使用されてきた表面処理鋼板は、ブリキやLTS、TNS等の錫めっき鋼板、ニッケルめっき鋼板(TFS-NT)、電解クロムめっき鋼板(TFS-CT)が主なものである。通常、これらのめっき表面には化成処理が施され、それによって塗料や樹脂フィルムとの密着性を確保している。商品化されている缶用表面処理鋼板の化成処理の殆どは、重クロム酸塩又はクロム酸を主成分とする水溶液を用いた浸漬処理又は陰極電解処理である。例外として、特許文献1及び2に開示されているブリキのリン酸塩水溶液中での陰陽極電解処理が知られているが、用途は内面無塗装で使用する粉乳用に限定されている。リン酸電解処理が他の飲料缶、食缶に使用されないのは、塗料や樹脂フィルムのような有機皮膜の密着性が不十分であるためである。重クロム酸塩又はクロム酸を主成分とする水溶液を用いた浸漬処理又は陰極電解処理によって得られたクロム酸化膜は、有機皮膜の密着性を向上させる効果が大きく、これに代わる化成処理は、前記リン酸塩電解処理の他にも種々検討されているものの、実用化には至っていないのが現状である。
例えば、特許文献3には、浸漬処理によりリン酸系皮膜中を形成させたDI缶用電気めっきブリキが開示されている。また、特許文献4には、フィチン酸又はフィチン酸塩溶液中での陽極処理する方法が開示されている。
近年は、錫めっき層上にシランカップリング剤を使用した皮膜を施す技術が多く開示されている。例えば、特許文献5には、錫めっき鋼板のSn層又はFe-Sn合金層上にシランカップリング剤塗布層を設けた鋼板及び缶が開示されており、特許文献6には、錫めっき層上に下層としてP、Snを含有する化成皮膜、上層としてシランカップリング層を有する錫めっき鋼板が開示されている。また、特許文献6に類似した技術として、特許文献7乃至16が開示されている。
しかしながら、前記特許文献に記載された化成皮膜はいずれも、缶用めっき鋼板として用いるに十分な有機皮膜密着性、耐食性等の性能を備えているとは言い難い。
そこで、本発明は、上記従来技術の問題点を解決し、有機皮膜密着性、耐食性に優れた缶用めっき鋼板を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記の課題に対して鋭意検討し、めっき鋼板表面に、モリブデン酸、モリブデン酸塩、タングステン酸、タングステン酸塩の中から選ばれる1種又は2種以上、リン酸塩、シラノール基含有有機化合物を含む化成処理皮膜によって、有機皮膜密着性、耐食性等の諸特性が飛躍的に向上することを見出し、本発明に至ったものである。
即ち、本発明の主旨とするところは、
(1) めっき鋼板表面に、Mo又はW換算で合計0.1〜50mg/m2のモリブデン酸、モリブデン酸塩、タングステン酸、タングステン酸塩の中から選ばれる1種又は2種以上、P量として2〜100mg/m2のリン酸塩、Si量として0.05〜30mg/m2のシラノール基含有有機化合物を含む皮膜を有することを特徴とする缶用めっき鋼板、
(2) めっき鋼板表面に、Mo又はW換算で合計0.1〜50mg/m2のモリブデン酸、モリブデン酸塩、タングステン酸、タングステン酸塩の中から選ばれる1種又は2種以上、及びP量として2〜100mg/m2のリン酸塩を含む下層と、Si量として0.05〜30mg/m2のシラノール基含有有機化合物を含む上層とからなる皮膜を有することを特徴とする缶用めっき鋼板、
(3) 前記シラノール基含有有機化合物が、アミノ基を有することを特徴とする前記(1)又は(2)に記載の缶用めっき鋼板、
(4) 前記めっき鋼板が、錫もしくはニッケルからなる金属層、又は、錫、ニッケル、鉄から選ばれる2種以上の金属からなる合金層、又は、前記の金属又は合金の中から選ばれる2種以上からなる複層を有するめっき鋼板であることを特徴とする前記(1)〜(3)のいずれかに記載の缶用めっき鋼板、
である。
(1) めっき鋼板表面に、Mo又はW換算で合計0.1〜50mg/m2のモリブデン酸、モリブデン酸塩、タングステン酸、タングステン酸塩の中から選ばれる1種又は2種以上、P量として2〜100mg/m2のリン酸塩、Si量として0.05〜30mg/m2のシラノール基含有有機化合物を含む皮膜を有することを特徴とする缶用めっき鋼板、
(2) めっき鋼板表面に、Mo又はW換算で合計0.1〜50mg/m2のモリブデン酸、モリブデン酸塩、タングステン酸、タングステン酸塩の中から選ばれる1種又は2種以上、及びP量として2〜100mg/m2のリン酸塩を含む下層と、Si量として0.05〜30mg/m2のシラノール基含有有機化合物を含む上層とからなる皮膜を有することを特徴とする缶用めっき鋼板、
(3) 前記シラノール基含有有機化合物が、アミノ基を有することを特徴とする前記(1)又は(2)に記載の缶用めっき鋼板、
(4) 前記めっき鋼板が、錫もしくはニッケルからなる金属層、又は、錫、ニッケル、鉄から選ばれる2種以上の金属からなる合金層、又は、前記の金属又は合金の中から選ばれる2種以上からなる複層を有するめっき鋼板であることを特徴とする前記(1)〜(3)のいずれかに記載の缶用めっき鋼板、
である。
本発明により、極めて良好な有機皮膜密着性、耐食性を備えた化成皮膜を有する缶用表面処理鋼板を提供することができる。
以下に、本発明を詳細に説明する。
本発明で使用する鋼板には、特に制限を設ける必要はない。従来から缶用鋼板に使用されているアルミキルド鋼や低炭素鋼等の成分系の鋼板が問題なく使用できる。また、鋼板の厚みや硬度は、ユーザーが使用目的によって決定するものであるので、その指定に従えばよい。
本発明の主たる構成は、鋼板上のめっき層表面に、モリブデン酸、モリブデン酸塩、タングステン酸、タングステン酸塩の中から選ばれる1種又は2種以上、リン酸塩及びシラノール基含有有機化合物を含む皮膜を有する缶用めっき鋼板、又は、めっきを施した鋼板のめっき層表面に、モリブデン酸、モリブデン酸塩、タングステン酸、タングステン酸塩の中から選ばれる1種又は2種以上及びリン酸塩を含む下層と、シラノール基含有有機化合物を含む上層とからなる皮膜を有する缶用めっき鋼板である。
めっき鋼板のめっき層は、錫もしくはニッケルからなる金属層、又は、錫、ニッケル、鉄から選ばれる2種以上の金属からなる合金層、又は、前記の金属及び合金の中から選ばれる2種以上からなる複層であることが好ましい。例として、錫めっき後にリフロー処理したもしくはリフロー処理しない錫めっき鋼板、ニッケルめっき鋼板、Fe-Ni合金めっき上に錫めっきを施し、さらにリフロー処理を施した薄錫めっき鋼板、ニッケルめっきを拡散処理後、錫めっきを施し、さらにリフロー処理を施した薄錫めっき鋼板等が挙げられる。これらのめっき鋼板は、従来から缶用鋼板に用いられているか、又は、それに類するものであるため、従来の電気めっき設備の大幅な変更無しに製造することができる。
めっき層表面には、モリブデン酸、モリブデン酸塩、タングステン酸、タングステン酸塩の中から選ばれる1種又は2種以上、リン酸塩及びシラノール基含有有機化合物を含む皮膜を有することが必要である。又は、めっき層表面に、モリブデン酸、モリブデン酸塩、タングステン酸、タングステン酸塩の中から選ばれる1種又は2種以上及びリン酸塩を含む下層と、シラノール基含有有機化合物を含む上層とからなる皮膜を有することが必要である。シラノール基含有有機化合物は、シランカップリング剤を加水分解させることでシラノール基を生じさせて得ることができる。
前者の場合、化成処理層は基本的に単層であるが、表面近傍やめっき層との界面近傍の非常に薄い領域には、特定の成分が濃縮され易い。めっき層との界面近傍にあるリン酸イオンとモリブデン酸イオン又はタングステン酸イオンは、めっき層表面と静電的に引き合い、それらとシラノール基含有有機化合物とが静電的に引き合う。さらに、これを高温で乾燥することによって、静電的に引き合っていた両者の水酸基が脱水反応し、強固な共有結合が形成される。
後者の場合、めっき表面にリン酸イオン及びモリブデン酸イオン又はタングステン酸イオンを反応させて、モリブデン酸塩-リン酸塩皮膜又はタングステン酸塩-リン酸塩皮膜を形成する。この皮膜は親水性が高いため、有機皮膜との密着性を向上させる効果が認められない。この表面に、シラノール基含有有機化合物層を付与することで、鋼板と有機皮膜の密着性を向上させることができる。シラノール基の-OHは、リン酸塩、モリブデン酸塩の-OHと水素結合を形成し、これを強く加熱して脱水縮合させることで、強い共有結合を得ることができる。
リン酸イオン単独の場合と比べ、モリブデン酸イオン又はタングステン酸イオンを共存させることで、シラノール基含有有機化合物のシラノール基との結合が著しく向上するが、これは、モリブデン酸塩又はタングステン酸塩によって、-OH基を多数有する表面が形成されるためと考えられる。
シラノール基含有有機化合物を得るために用いるシランカップリング剤は、その分子中にアミノ基を有するものであることが好ましい。例として、3-(2-アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、3-(2-アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン等を挙げることができる。アミノ基を有するシランカップリング剤の加水分解によって生じたシラノール基含有有機化合物は、他のシランカップリング剤と比べて、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂やエポキシ塗料等に対し、顕著な密着性向上効果が認められる。
皮膜中のモリブデン酸、モリブデン酸塩、タングステン酸、タングステン酸塩の中から選ばれる1種又は2種以上は、Mo又はW換算で合計0.1〜50mg/m2であることが必要である。0.1mg/m2より少ないと、リン酸イオン単独で処理した場合と比べ、有為な有機皮膜密着性向上効果が得られない。一方、50mg/m2を超えても、有機皮膜の密着性は向上しないことに加え、濃い褐色となり、外観上好ましくない。
皮膜中のリン酸塩は、P量として2〜100mg/m2であることが必要である。2mg/m2より少ないと、めっき表面に点在する分布となり、めっき層とシラノール基含有有機化合物の中間層としての役割を果たさないため、結果として有機皮膜の密着性向上効果を得ることが難しい。一方、100mg/m2を超えると、めっき表面が脆いリン酸塩皮膜が形成され易くなるため、有機皮膜の密着性はむしろ低下してしまう。
皮膜中のシラノール基含有有機化合物は、Si量として0.05〜30mg/m2の範囲であることが必要である。0.05mg/m2より少ないと、めっき表面の被覆が不十分であり、有機皮膜の密着性を向上する効果が小さい。一方、30mg/m2を超えると、むしろ有機皮膜の密着性が低下する。シラノール基含有有機化合物自体の凝集力が強くないことと、自己縮合してしまうからと考えられる。
次に、本発明の缶用めっき鋼板の製造方法を、錫めっきの場合を例として示す。但し、この方法によって本発明を限定するものではなく、特許請求の範囲に示しためっき鋼板を得る他の方法を採ることも可能である。
化成処理層を下層と上層の二層皮膜とする場合の缶用めっき鋼板の製造方法として、次のような例を挙げることができる。
缶用に用いられる鋼板を電解アルカリ脱脂、酸洗して、フェロスタン浴で電気錫めっきを施す。錫めっき後の鋼板は、錫めっき液の希釈液の入ったドラクアウト槽に浸漬、乾燥され、リフロー処理が施される。次に、化成処理を施す。モリブデン酸イオンを4〜16g/L、リン酸を10〜30g/L含有する処理液に浸漬又は陰極電解処理する。次いで、鋼板にシラノール基含有有機化合物層を付与する。例えば、3-(2-アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシランの水溶液(0.01〜1g/L、常温)に鋼板を浸漬した後、鋼板上の処理液の量が、1m2当り5〜20mLとなるよう、ゴムロールの絞り圧を調整して処理液を絞る。3-(2-アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシランの加水分解によって生じたシラノール基含有有機化合物が均一に分布せずに、ハジキが生じる場合は、少量のエタノールを処理液に添加するとよい。極力、自然乾燥する前に、鋼板を100〜140℃で加熱、乾燥する。さらに、めっき鋼板表面の過剰なシラノール基含有有機化合物を水洗し、乾燥させてもよい。
化成処理層を単層皮膜とする場合の表面処理鋼板の製造方法として、次のような例を挙げることができる。
缶用に用いられる鋼板を電解アルカリ脱脂、酸洗して、フェロスタン浴で電気錫めっきを施す。錫めっき後の鋼板は、錫めっき液の希釈液の入ったドラクアウト槽に浸漬、乾燥され、リフロー処理が施される。次に、化成処理を施す。モリブデン酸イオンを4〜16g/L、リン酸を10〜30g/L、3-(2-アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシランの水溶液(0.01〜1g/L、常温)を含有する処理液に浸漬又は陰極電解処理する。次いで、鋼板上の処理液の量が、1m2当り5〜20mLとなるよう、ゴムロールの絞り圧を調整して処理液を絞る。3-(2-アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシランの加水分解によって生じたシラノール基含有有機化合物が均一に分布せずに、ハジキが生じる場合は、少量のエタノールを処理液に添加するとよい。極力、自然乾燥する前に、鋼板を100〜140℃で加熱、乾燥する。
本発明の皮膜とめっき鋼板との密着性向上の仕組みは、概ね次のようなものと考えられる。シランカップリング剤は、-Si(OX)n(Xはメチル基もしくはエチル基、nは2もしくは3)と言う官能基を有するが、これを水溶液とすることによって、-Si(OH)n(シラノール基、nは2もしくは3)に変えて使用する。この-OHは、めっき金属表面の水和酸化物の-OHと水素結合を形成し、これを強く加熱することで脱水縮合させれば、共有結合を形成することができる。しかし、これでは缶用表面処理鋼板の有機皮膜密着性としては不十分である。めっき表面をリン酸イオンと反応させて、リン酸塩皮膜を形成すれば、シラノール基含有有機化合物との結合は強くなる。さらに、モリブデン酸イオン又はタングステン酸イオンを共存させれば、-OH基を多数有する表面を形成して、これとシラノール基含有有機化合物のシラノール基との間で、非常に強い共有結合を形成するものと考えられる。
有機皮膜との密着性は、シラノール基含有有機化合物の炭化水素鎖の部分で保たれると考えられるが、分子中にアミノ基を有するものであることが好ましい。好ましいシラノール基含有有機化合物を生成するシランカップリング剤の例として、3-(2-アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、3-(2-アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン等を挙げることができる。アミノ基を有するシラノール基含有有機化合物は、他のシランカップリング剤と比べ、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂やエポキシ塗料等に対し、顕著な密着性向上効果が認められる。
以下、実施例によって、本発明をさらに詳細に説明する。
低炭素冷延鋼帯を連続焼鈍、次いで調質圧延して得た板厚0.18mm、調質度T-5CAの鋼帯を使用した。めっき前処理として、5mass%水酸化ナトリウム溶液中で電解脱脂した後、希硫酸中で酸洗した。
次いで、フェロスタン浴を用いて電気錫めっきを施した。錫イオンを20g/L、フェノールスルホン酸イオンを75g/L、界面活性剤を5g/L含む温度43℃のめっき液中で、電流密度20A/dm2で陰極電解した。錫めっき量が1300mg/m2となるよう、電解時間を調節した。錫めっき後は水洗し、ローラーで水切りをした後、乾燥し、通電加熱によって10秒で250℃まで昇温させ、直ちに水冷した。この処理によって、錫が溶融し、一部は凝集して島状となり、また一部は地鉄と合金化して、Fe-Sn層が形成された。
このようにして得られためっき鋼板に、下記のように化成処理を施した。
化成処理が二層皮膜の場合、次のように処理を行った。モリブデン酸イオン又はタングステン酸イオンを4〜16g/L、リン酸を10〜30g/L含有する40℃の処理液中で1〜5A/dm2の電流密度で1〜3秒陰極電解処理した。次いで、3-(2-アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシランの水溶液(0.01〜1g/L、常温、0.1mL/Lのエタノールを含む)に鋼板を浸漬した後、鋼板上の処理液の量が、1m2当り5〜20mL となるよう、ゴムロールの絞り圧を調整して処理液を絞り、速やかに140℃の熱風で乾燥した。
化成処理層が単層皮膜の場合、次のように処理を行った。モリブデン酸イオン又はタングステン酸イオンを4〜16g/L、リン酸を10〜30g/L、3-(2-アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシランの水溶液(0.01〜1g/L、常温)を含有する処理液中で1〜5A/dm2の電流密度で1〜3秒陰極電解処理した。次いで、鋼板上の処理液の量が、1m2当り5〜20mLとなるよう、ゴムロールの絞り圧を調整して処理液を絞り、140℃の熱風で乾燥した。
上記処理材について、以下に示す(A)〜(C)の各項目について評価試験を実施した。
(A) フィルム密着性;
評価材に、予めエポキシ接着剤を2μm塗布した厚さ15μmのPET(ポリエチレンテレフタレート)系フィルムを、230℃でラミネートした後、地鉄に達するクロスカットを入れ、速やかに240℃に加熱し、クロスカット中央部に5kg/cm2の空気ガスを垂直に吹きつけ、フィルムの剥離状況を評価した。全く剥離が認められなかったものを◎(非常に良好)、カット部から0.5mm以下の剥離が認められたものを○(良好)、カット部から0.5mmを超える剥離が認められたものを×(不良)とした。なお、○以上をフィルム密着性の合格レベルと判断した。
評価材に、予めエポキシ接着剤を2μm塗布した厚さ15μmのPET(ポリエチレンテレフタレート)系フィルムを、230℃でラミネートした後、地鉄に達するクロスカットを入れ、速やかに240℃に加熱し、クロスカット中央部に5kg/cm2の空気ガスを垂直に吹きつけ、フィルムの剥離状況を評価した。全く剥離が認められなかったものを◎(非常に良好)、カット部から0.5mm以下の剥離が認められたものを○(良好)、カット部から0.5mmを超える剥離が認められたものを×(不良)とした。なお、○以上をフィルム密着性の合格レベルと判断した。
(B) 塗料密着性;
評価材に、エポキシ・フェノール系塗料を 60mg/dm2塗布し、210℃で10分間の焼き付けを行った。この塗装板から5mm×10cmの大きさの試料を切り出した。2枚の試料を、塗装面が向かい合わせになるようにし、間に厚さ100μmのフィルム状のナイロン接着剤を挟んだ。これをつかみ代を残してホットプレスで200℃、120秒間予熱した後、2.9×105Paの圧力をかけ、200℃で30秒間の圧着し、引張試験片とした。つかみ部をそれぞれ90゜の角度で曲げてT字状とし、引張試験機のチャックでつかんで引っ張り、剥離強度を測定して、塗料密着性を評価した。
評価材に、エポキシ・フェノール系塗料を 60mg/dm2塗布し、210℃で10分間の焼き付けを行った。この塗装板から5mm×10cmの大きさの試料を切り出した。2枚の試料を、塗装面が向かい合わせになるようにし、間に厚さ100μmのフィルム状のナイロン接着剤を挟んだ。これをつかみ代を残してホットプレスで200℃、120秒間予熱した後、2.9×105Paの圧力をかけ、200℃で30秒間の圧着し、引張試験片とした。つかみ部をそれぞれ90゜の角度で曲げてT字状とし、引張試験機のチャックでつかんで引っ張り、剥離強度を測定して、塗料密着性を評価した。
試験片幅5mm当りの測定強度が、68.6N以上を◎、49.0N以上68.6N未満を○、29.4N以上49.0N未満を△、29.4N未満を×とした。
(C) 耐食性;
評価材の缶内面に相当する面の耐食性を評価するため、UCC(アンダーカッティング・コロージョン)試験を行った。缶内面側に相当する面に厚さ15μmのPET(ポリエチレンテレフタレート)系フィルムをラミネートし、地鉄に達するまでクロスカットを入れた後、1.5%クエン酸と1.5%塩化ナトリウムからなる55℃の試験液中に、大気開放下で96時間浸漬した。水洗・乾燥後、速やかにスクラッチ部及び平面部をテープで剥離して、スクラッチ部近傍の腐食状況、スクラッチ部のピッティング腐食及び平面部のフィルム剥離状況を観察して、耐食性を評価した。テープ剥離も腐食も認められないものを◎(非常に良好)、スクラッチ部から0.4mm未満のテープ剥離又は目視で認められない僅かな腐食の一方又は両方が認められたものを○(良好)、スクラッチ部から0.4mm以上、1mm以下のテープ剥離又は目視で認められる小さい腐食の一方又は両方が認められたものを△(やや不良)とした。
評価材の缶内面に相当する面の耐食性を評価するため、UCC(アンダーカッティング・コロージョン)試験を行った。缶内面側に相当する面に厚さ15μmのPET(ポリエチレンテレフタレート)系フィルムをラミネートし、地鉄に達するまでクロスカットを入れた後、1.5%クエン酸と1.5%塩化ナトリウムからなる55℃の試験液中に、大気開放下で96時間浸漬した。水洗・乾燥後、速やかにスクラッチ部及び平面部をテープで剥離して、スクラッチ部近傍の腐食状況、スクラッチ部のピッティング腐食及び平面部のフィルム剥離状況を観察して、耐食性を評価した。テープ剥離も腐食も認められないものを◎(非常に良好)、スクラッチ部から0.4mm未満のテープ剥離又は目視で認められない僅かな腐食の一方又は両方が認められたものを○(良好)、スクラッチ部から0.4mm以上、1mm以下のテープ剥離又は目視で認められる小さい腐食の一方又は両方が認められたものを△(やや不良)とした。
(D) 外観;
評価材の外観を、光沢、色調、ムラの総合的なものとして目視で評価した。非常に良好な外観であるものを◎、商品として問題のない良好な外観であるものを○、商品としては外観にやや不良な点があるものを△、外観不良で商品にならないものを×とした。
評価材の外観を、光沢、色調、ムラの総合的なものとして目視で評価した。非常に良好な外観であるものを◎、商品として問題のない良好な外観であるものを○、商品としては外観にやや不良な点があるものを△、外観不良で商品にならないものを×とした。
以上の性能評価結果から、総合評価を◎(非常に良好)、○(良好)、△(やや不良)、×(不良)の4段階に分類し、◎、○を合格レベルとした。
モリブデン酸イオンを含有する二層化成処理の評価結果を表1に、単層化成処理の評価結果を表2に示した。また、タングステン酸イオンを含有する二層化成処理の評価結果を表3に、単層化成処理の評価結果を表4に示した。
本発明の実施例1〜72は、全ての評価項目及び総合評価で◎又は○で、求められる性能を満足した。
比較例1及び10は、化成処理層にMoを有しない例である。有機皮膜の密着性が不十分で、耐食性も不十分であった。
比較例2及び11は、化成処理層中のMo含有量が本発明の範囲より少ない例である。有機皮膜の密着性が不十分であった。
比較例3及び12は、化成処理層中のMo含有量が本発明の範囲を超えた例である。褐色がかった斑のある外観となった。
比較例4及び13は、化成処理層にPを有しない例である。有機皮膜の密着性が不十分で、耐食性も不十分であった。
比較例5及び14は、化成処理層中のP含有量が本発明の範囲より少ない例である。有機皮膜の密着性が不十分で、耐食性も不十分であった。
比較例6及び15は、化成処理層中のP含有量が本発明の範囲を超えた例である。有機皮膜の密着性及び耐食性が劣っていた。
比較例7及び16は、化成処理層にシラノール基含有有機化合物を有しない例である。有機皮膜の密着性が不十分で、耐食性が劣っていた。
比較例8及び17は、化成処理層中のシラノール基含有有機化合物含有量が本発明の範囲より少ない例である。有機皮膜の密着性が不十分で、耐食性も不十分であった。
比較例9及び18は、化成処理層中のシラノール基含有有機化合物含有量が本発明の範囲を超えた例である。有機皮膜の密着性及び耐食性が劣っていた。
比較例19は、化成処理をしない例である。有機皮膜の密着性及び耐食性が劣っていた。
比較例20及び28は、化成処理層中のW含有量が本発明の範囲より少ない例である。有機皮膜の密着性が不十分であった。
比較例21及び29は、化成処理層中のW含有量が本発明の範囲を超えた例である。褐色がかった斑のある外観となった。
比較例22及び30は、化成処理層にPを有しない例である。有機皮膜の密着性が不十分で、耐食性も不十分であった。
比較例23及び31は、化成処理層中のP含有量が本発明の範囲より少ない例である。有機皮膜の密着性が不十分で、耐食性も不十分であった。
比較例24及び32は、化成処理層中のP含有量が本発明の範囲を超えた例である。有機皮膜の密着性及び耐食性が劣っていた。
比較例25及び33は、化成処理層にシラノール基含有有機化合物を有しない例である。有機皮膜の密着性が不十分で、耐食性が劣っていた。
比較例26及び34は、化成処理層中のシラノール基含有有機化合物含有量が本発明の範囲より少ない例である。有機皮膜の密着性が不十分で、耐食性も不十分であった。
比較例27及び35は、化成処理層中のシラノール基含有有機化合物含有量が本発明の範囲を超えた例である。有機皮膜の密着性及び耐食性が劣っていた。
Claims (4)
- めっき鋼板表面に、Mo又はW換算で合計0.1〜50mg/m2のモリブデン酸、モリブデン酸塩、タングステン酸、タングステン酸塩の中から選ばれる1種又は2種以上、P量として2〜100mg/m2のリン酸塩、Si量として0.05〜30mg/m2のシラノール基含有有機化合物を含む皮膜を有することを特徴とする缶用めっき鋼板。
- めっき鋼板表面に、Mo又はW換算で合計0.1〜50mg/m2のモリブデン酸、モリブデン酸塩、タングステン酸、タングステン酸塩の中から選ばれる1種又は2種以上、及びP量として2〜100mg/m2のリン酸塩を含む下層と、Si量として0.05〜30mg/m2のシラノール基含有有機化合物を含む上層とからなる皮膜を有することを特徴とする缶用めっき鋼板。
- 前記シラノール基含有有機化合物が、アミノ基を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の缶用めっき鋼板。
- 前記めっき鋼板が、錫もしくはニッケルからなる金属層、又は、錫、ニッケル、鉄から選ばれる2種以上の金属からなる合金層、又は、前記の金属及び合金の中から選ばれる2種以上からなる複層を有するめっき鋼板であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の缶用めっき鋼板。
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