JP2012036469A - 金属の保護皮膜形成方法及び保護皮膜形成処理剤 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】金属の保護皮膜形成方法は、(A)三価クロム、(B)ジルコニウム、(C)塩素イオン、硫酸イオン及び硝酸イオンからなる群のうちの1種以上、(D)芳香族スルホン酸、(E)フッ素イオンを含有する液体組成物により保護皮膜を形成する。
【選択図】なし
Description
本発明の保護皮膜を形成する被処理金属としては、亜鉛、アルミニウム、マグネシウム、銅、ニッケル、クロム、鉄、錫及びこれらの合金が挙げられる。本発明の保護皮膜は、特に亜鉛めっき、亜鉛合金めっき、亜鉛ダイキャスト、アルミニウム、ダイキャストを含むアルミニウム合金、マグネシウム、ダイキャストを含むマグネシウム合金に対し効果的に作用する。
保護皮膜の構成成分である三価クロム源としては、硝酸クロム、硫酸クロム、塩化クロム、リン酸クロム、酢酸クロム等の三価クロム塩、及び、クロム酸や重クロム酸等の六価クロムを還元剤により三価に還元した三価クロム等の三価クロム化合物が利用できる。三価クロムの化合物であれば、上記以外の物質でも三価クロムの供給源として利用できる。これら三価クロム化合物は一種または二種以上を使用することができる。三価クロムの濃度としてはクロム濃度として0.001〜100g/Lが好ましく、0.01〜50g/Lであるのがより好ましい。三価クロムの濃度が上記範囲内で良好な化成皮膜が形成でき、安定な外観、耐食性、塗装密着性が得られる。三価クロム濃度が0.001g/Lより低下すると耐食性の低下を招き、100g/Lを超えるとコストメリットの観点から好ましくない。
ジルコニウム源としては、オキシ塩化ジルコニウム、硫酸ジルコニウム、硝酸ジルコニウム、酸化ジルコニウム、ジルコンフッ化アンモニウム、ジルコンフッ化水素酸、ジルコニウムゾル等のジルコニウム化合物が利用できる。ジルコニウムの化合物であれば、上記以外の物質でもジルコニウムの供給源として利用できる。これらジルコニウム化合物は、一種又は二種以上を使用することができる。当該化合物のジルコニウム濃度としては、0.001〜50g/Lが好ましく、0.01〜20g/Lであるのがより好ましい。ジルコニウム濃度が上記範囲内で良好な化成皮膜が形成でき、安定な外観、耐食性及び塗装密着性が得られる。ジルコニウム濃度が0.001g/Lより低下すると耐食性と塗装密着性の低下を招き、50g/Lを超えるとコストメリットの低下と共に、処理液中に沈殿が発生しやすくなり好ましくない。
塩素イオン、硫酸イオン及び硝酸イオンの供給源としては、塩酸、硫酸、硝酸や塩化ナトリウム、硫酸ナトリウム、硝酸ナトリウム等の各無機酸塩が利用できる。硫酸クロム、塩化クロム、硝酸クロム、硫酸ジルコニウム、塩化ジルコニウム、硝酸ジルコニウム等のクロム化合物やジルコニウム化合物に含有される各種アニオンも供給源として利用できる。塩素イオン、硫酸イオン及び硝酸イオンの化合物であれば、上記以外の物質も塩素イオン、硫酸イオ及び硝酸イオンの供給源として利用できる。塩素イオン、硫酸イオン及び硝酸イオンは、一種または二種以上を使用することができる。塩素イオン、硫酸イオン及び硝酸イオンの濃度は、0.001〜200g/Lが好ましく、0.01〜100g/Lであるのがより好ましい。塩素イオン、硫酸イオン及び硝酸イオンの濃度が上記範囲内であれば、良好な化成皮膜が形成でき、安定な外観、耐食性、塗装密着性が得られる。塩素イオン、硫酸イオン及び硝酸イオンの濃度が0.001g/Lより低下すると耐食性と塗装密着性の低下を招き、200g/Lを超えるとコストメリットの低下と共に、処理外観でムラが発生しやすくなり好ましくない。
芳香族スルホン酸源としては、ベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸、ニトロベンゼンスルホン酸やこれら芳香族スルホン酸の塩等が利用できる。芳香族スルホン酸の化合物であれば、上記以外の物質でも芳香族スルホン酸の供給源として利用できる。これら芳香族スルホン酸は一種または二種以上を使用することができる。芳香族スルホン酸の濃度は、0.001〜100g/Lが好ましく、0.01〜50g/Lであるのがより好ましい。芳香族スルホン酸濃度が上記範囲内であれば、良好な化成皮膜が形成でき、安定な外観、耐食性、塗装密着性が得られる。芳香族スルホン酸が0.001g/Lより低下すると耐食性の低下を招き、100g/Lを超えるとコストメリットの低下と共に、沈殿が発生しやすくなり好ましくない。
フッ素イオン源としては、フッ化水素、フッ化ナトリウム、酸性フッ化ナトリウム、フッ化アンモニウム、酸性フッ化アンモニウム、フッ化カリウム、ケイフッ化物、ジルコンフッ化アンモニウム、ホウフッ化物等のフッ素化合物が使用できる。フッ素イオンの化合物であれば、上記以外の物質でもフッ素イオンの供給源として利用できる。これらフッ素化合物は一種または二種以上を使用することができる。フッ素イオンの濃度は、0.001〜80g/Lが好ましく、0.01〜40g/Lであるのがより好ましい。フッ素イオン濃度が上記範囲内で良好な化成皮膜が形成でき、安定な外観、耐食性、塗装密着性が得られる。フッ素イオンが0.001g/Lより低下すると耐食性と塗装密着性の低下を招き、80g/Lを超えるとコストメリットの低下と共に、沈殿が発生しやすくなり好ましくない。
珪酸化合物源としては珪酸ナトリウム、珪酸カリウム、オルソ珪酸塩、メタ珪酸塩、コロイダルシリカ等の珪酸化合物が使用できる。珪酸の化合物であれば、上記以外の物質でも珪酸化合物の供給源として利用できる。これら珪酸化合物は一種または二種以上を使用することができる。珪酸化合物の濃度は、0.001〜20g/Lが好ましく、0.01〜10g/Lであるのがより好ましい。珪酸濃度が上記範囲内で良好な化成皮膜が形成でき、安定な外観、耐食性、塗装密着性が得られる。珪酸化合物が0.001g/Lより低下すると耐食性の向上効果が得られにくく、20g/Lを超えるとコストメリットの低下と共に、沈殿が発生しやすくなり好ましくない。
芳香族スルホン酸以外の有機酸としては、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、グルコン酸、酪酸、シュウ酸、マロン酸、琥珀酸、グルタル酸、アジピン酸、マレイン酸、フマル酸、安息香酸、フタル酸、酒石酸、グリコール酸、ジグリコール酸、乳酸、グリシン、クエン酸、リンゴ酸、エチレンジアミン四酢酸、ニトリロ三酢酸やこれらの有機酸塩等が利用できる。有機酸の化合物であれば、上記以外の物質でも有機酸の供給源として利用できる。これら有機酸は一種または二種以上を使用することができる。有機酸の濃度は、0.001〜200g/Lが好ましく、0.01〜100g/Lの範囲であるのがより好ましい。有機酸濃度が上記範囲内で良好な化成皮膜が形成でき、安定な外観、耐食性、塗装密着性が得られる。有機酸濃度が0.001g/Lより低下すると耐食性の向上効果が得られにくく、100g/Lを超えるとコストメリットの低下と共に、廃水処理性低下するため好ましくない。
亜鉛源としては、酸化亜鉛、硝酸亜鉛、硫酸亜鉛、塩化亜鉛、酢酸亜鉛、炭酸亜鉛等の亜鉛化合物が利用できる。亜鉛の化合物であれば、上記以外の物質でも亜鉛の供給源として利用できる。これら亜鉛化合物は一種または二種以上を使用することができる。亜鉛濃度は、0.001〜50g/Lが好ましく、0.01〜30g/Lであるのがより好ましい。亜鉛濃度が上記範囲内で良好な化成皮膜が形成でき、安定な外観、耐食性、塗装密着性が得られる。亜鉛濃度が0.001g/Lより低下すると耐食性の向上効果が得られにくく、50g/Lを超えるとコストメリットの低下と共に、沈殿が発生しやすくなり好ましくない。
マグネシウム源としては、硝酸マグネシウム、硫酸マグネシウム、塩化マグネシウム、酢酸マグネシウム、炭酸マグネシウム等のマグネシウム化合物が利用できる。マグネシウムの化合物であれば、上記以外の物質でもマグネシウムの供給源として利用できる。これらマグネシウム化合物は一種または二種以上を使用することができる。マグネシウム濃度は、0.001〜50g/Lが好ましく、0.01〜30g/Lの範囲であるのがより好ましい。マグネシウム濃度が上記範囲内で良好な化成皮膜が形成でき、安定な外観、耐食性、塗装密着性が得られる。マグネシウム濃度が0.001g/Lより低下すると耐食性の向上効果が得られにくく、50g/Lを超えるとコストメリットの低下と共に、沈殿が発生しやすくなり好ましくない。
アルミニウム源としては、硝酸アルミニウム、硫酸アルミニウム、塩化アルミニウム、酢酸アルミニウム、炭酸アルミニウム、コロイダルアルミナ等のアルミニウム化合物が利用できる。アルミニウムの化合物であれば、上記以外の物質でもアルミニウムの供給源として利用できる。これらアルミニウム化合物は一種または二種以上を使用することができる。アルミニウム濃度として0.001〜50g/Lが好ましく、0.01〜30g/Lであるのがより好ましい。アルミニウム濃度が上記範囲内で良好な化成皮膜が形成でき、安定な外観、耐食性、塗装密着性が得られる。アルミニウム濃度が0.001g/Lより低下すると耐食性の向上効果が得られにくく、50g/Lを超えるとコストメリットの低下と共に、沈殿が発生しやすくなり好ましくない。
コバルト源としては、硝酸コバルト、硫酸コバルト、塩化コバルト、酢酸コバルト、炭酸コバルト等のコバルト化合物が利用できる。これらコバルト化合物は一種または二種以上を使用することができる。コバルトの化合物であれば、上記以外の物質でもコバルトの供給源として利用できる。コバルト濃度は、0.001〜50g/Lが好ましく、0.01〜30g/Lであるのがより好ましい。コバルト濃度が上記範囲内で良好な化成皮膜が形成でき、安定な外観、耐食性、塗装密着性が得られる。コバルト濃度が0.001g/Lより低下すると耐食性の向上効果が得られにくく、50g/Lを超えるとコストメリットの低下と共に、沈殿が発生しやすくなり好ましくない。
ニッケル源としては、硝酸ニッケル、硫酸ニッケル、塩化ニッケル、酢酸ニッケル、炭酸ニッケル、スルファミン酸ニッケル等のニッケル化合物が利用できる。ニッケルの化合物であれば、上記以外の物質でもニッケルの供給源として利用できる。これらニッケル化合物は一種または二種以上を使用することができる。ニッケル濃度は、0.001〜50g/Lが好ましく、0.01〜30g/Lであるのがより好ましい。ニッケル濃度が上記範囲内で良好な化成皮膜が形成でき、安定な外観、耐食性、塗装密着性が得られる。ニッケル濃度が0.001g/Lより低下すると耐食性の向上効果が得られにくく、50g/Lを超えるとコストメリットの低下と共に、沈殿が発生しやすくなり好ましくない。
バナジウム源としては、硝酸バナジウム、硫酸バナジウム、塩化バナジウム、バナジン酸、メタバナジン酸カリウム、メタバナジン酸アンモニウム等のバナジウム化合物が利用できる。バナジウムの化合物であれば、上記以外の物質でもバナジウムの供給源として利用できる。これらバナジウム化合物は一種または二種以上を使用することができる。バナジウム濃度は、0.001〜50g/Lが好ましく、0.01〜30g/Lであるのがより好ましい。バナジウム濃度が上記範囲内で良好な化成皮膜が形成でき、安定な外観、耐食性、塗装密着性が得られる。バナジウム濃度が0.001g/Lより低下すると耐食性の向上効果が得られにくく、50g/Lを超えるとコストメリットの低下と共に、沈殿が発生しやすくなり好ましくない。
タングステン源としては、タングステン酸ナトリウム、タングステン酸アンモニウム、タングステン酸カリウム、タングステン酸マグネシウム等のタングステン化合物が利用できる。タングステンの化合物であれば、上記以外の物質でもタングステンの供給源として利用できる。これらタングステン化合物は一種または二種以上を使用することができる。タングステン濃度として0.001〜50g/Lが好ましく、0.01〜30g/Lであるのがより好ましい。タングステン濃度が上記範囲内で良好な化成皮膜が形成でき、安定な外観、耐食性、塗装密着性が得られる。タングステン濃度が0.001g/Lより低下すると耐食性の向上効果が得られにくく、50g/Lを超えるとコストメリットの低下と共に、沈殿が発生しやすくなり好ましくない。
本発明の保護皮膜の形成は、被処理金属を上記処理剤に浸漬させることにより行う。更に保護皮膜形成後に必要に応じて水洗と乾燥等の処理を行ってもよい。また、塗布や吹き付け工程による皮膜形成も可能である。保護膜形成の前に、被処理金属の表面に、必要に応じて脱脂、活性化又は表面調整のための前処理を行ってもよい。処理液での処理温度は10〜80℃の範囲が好ましく、より好ましくは20〜50℃である。処理温度が10℃より低い場合は化成皮膜の反応速度が低下し、80℃より高い場合は蒸発による処理液面の低下が生じるため好ましくない。処理液での処理時間は5〜600秒の範囲が好ましく、より好ましくは10〜120秒である。処理時間が5秒より短い場合は皮膜化成が不十分となり、600秒より長い場合は表面が白くボケるといった外観不良が発生しやすくなるため好ましくない。
試験条件及び評価結果を表1〜10に示す。
A:はく離無し
B:はく離5%未満
C:はく離10%未満
D:はく離50%未満
E:はく離50%以上
また、上記塩水噴霧試験評価は、以下の基準による。
A:360時間白錆発生無し
B:240時間白錆発生無し
C:168時間白錆発生無し
D:72時間白錆発生無し
E:48時間白錆発生
F:24時間白錆発生
実施例の結果から、(A)三価クロム、(B)ジルコニウム、(C)塩素イオン、硫酸イオン及び硝酸イオンからなる群のうちの1種以上、(D)芳香族スルホン酸、及び、(E)フッ素イオンを含有する液体組成物により保護皮膜を形成することにより、優れた外観・耐食性・塗装密着性が得られることが確認された。更に(F)珪酸化合物、芳香族スルホン酸以外の有機酸、亜鉛、マグネシウム、アルミニウム、コバルト、ニッケル、バナジウム及びタングステンからなる群のうちの1種以上を液体組成物に添加することで耐食性がより良好となることが確認された。一方、比較例の結果からは、上記成分(A)〜(E)のうちどれか一つが不足しても優れた耐食性が得られないことが確認された。また、上記成分(A)〜(E)のうちどれか一つが不足している液体組成物に上記成分(F)を添加しても、実施例に匹敵する耐食性を得るには至らないことが確認された。
Claims (7)
- (A)三価クロム、
(B)ジルコニウム、
(C)塩素イオン、硫酸イオン及び硝酸イオンからなる群のうちの1種以上、
(D)芳香族スルホン酸、及び、
(E)フッ素イオン
を含有する液体組成物により保護皮膜を形成する金属の保護皮膜形成方法。 - 前記液体組成物が、更に(F)珪酸化合物、芳香族スルホン酸以外の有機酸、亜鉛、マグネシウム、アルミニウム、コバルト、ニッケル、バナジウム及びタングステンからなる群のうちの1種以上を含む請求項1に記載の金属の保護皮膜形成方法。
- 被処理金属が亜鉛、アルミニウム、マグネシウム、銅、ニッケル、クロム、鉄、錫及びこれらの合金からなる群のうちの1種以上である請求項1又は2に記載の金属の保護皮膜形成方法。
- 前記保護皮膜の形成後に、更にケイ素、樹脂及びワックスからなる群のうちの一種以上を含有するコーティング剤にて後処理を行う請求項1〜3のいずれかに記載の金属の保護皮膜形成方法。
- 前記保護皮膜の形成前に、被処理金属に、脱脂、活性化又は表面調整のための前処理を行う請求項1〜4のいずれかに記載の金属の保護皮膜形成方法。
- (A)三価クロム、
(B)ジルコニウム、
(C)塩素イオン、硫酸イオン及び硝酸イオンからなる群のうちの1種以上、
(D)芳香族スルホン酸、及び、
(E)フッ素イオン
を含有する保護皮膜形成処理剤。 - 更に(F)珪酸化合物、芳香族スルホン酸以外の有機酸、亜鉛、マグネシウム、アルミニウム、コバルト、ニッケル、バナジウム及びタングステンからなる群のうちの1種以上を含む請求項6に記載の保護皮膜形成処理剤。
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