JP2002155397A - 熱可塑性樹脂被覆アルミニウム板およびこの成形体 - Google Patents
熱可塑性樹脂被覆アルミニウム板およびこの成形体Info
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Abstract
や樹脂被覆膜にクラックが発生し難く、樹脂被覆膜に亀
裂が発生し難く、かつ、樹脂被覆膜がアルミニウム板か
ら容易に剥離することがない熱可塑性樹脂被覆アルミニ
ウム板、およびこのアルミニウム板よりなる成形体を提
供する。 【解決手段】 アルミニウム板の少なくとも片面に、厚
さが50〜3000オングストロームの無孔質陽極酸化
皮膜を形成し、さらにこの無孔質陽極酸化皮膜の上に処
理塗膜層を形成し、この塗膜層の上に熱可塑性樹脂被覆
膜を形成する。
Description
アルミニウム板およびこの成形体に関する。さらに詳し
くは、絞り加工、絞りしごき加工、かしめ加工を施す際
の層間剥離や、経時的な層間剥離などの欠陥が生じ難
く、さらに加工後に熱処理を施した際にも被覆膜の剥離
が生じ難い、加工密着性および加工後の耐熱密着性に優
れた熱可塑性樹脂被覆アルミニウム板、およびこの熱可
塑性樹脂被覆アルミニウム板製の成形体に関する。
などの金属板に、熱可塑性樹脂被覆膜を積層してなる樹
脂被覆金属板は、加工性、耐食性、電気絶縁性などの優
れた特性を活かして、アルミニウム電解コンデンサ−の
外装用容器など、種々の分野で用いられている。これら
の用途においては、樹脂被覆金属板は成形加工されて目
的物とされるので、成形加工工程で熱可塑性樹脂被覆膜
に剥離、亀裂(クラック)、破損などが生じないことが
要求される。これらの要求に応え、加工密着性に優れた
熱可塑性樹脂被覆金属板を得ることを目的として、従
来、様々な試みが行われてきた。
光電子分光法による表面分析スペクトル値が一定値以下
のエポキシ樹脂の薄膜を設け、この薄膜にポリアミド樹
脂フィルムを積層する方法(特開平1−238931号
公報参照)、金属素材表面に下地膜として脂肪酸または
ヒドロキシメチル置換フェノ−ルからなる塗膜を形成
し、この塗膜を350℃以上の加熱温度で熱処理して熱
変性薄膜とし、この薄膜にポリアミド樹脂フィルムを積
層する方法(特開平3−2036号公報参照)、金属板
上にX線回析により一定範囲の回析強度を有するポリア
ミド樹脂を、溶融押出して積層する方法(特開平11−
245330号公報参照)、などが提案されている。
提案された方法によって製造されたポリアミド樹脂被覆
金属板は、絞り加工の工程では加工した部分の剥離は生
じ難いが、加工後に時間が経過すると加工した部分の密
着強度が低下する。密着強度が経時的に低下しないよう
にするために、特開平1−66030号公報や特開平2
−18043号公報によって提案されているように、絞
り加工などの成形加工後にさらに熱処理工程によって、
フィルムを再溶融させることが必要であるなどの難点が
ある。
課題を一挙に解決した熱可塑性樹脂被覆アルミニウム板
を提供すべく鋭意検討の結果、本発明を完成するに至っ
たものである。すなわち、本発明の目的は、次のとおり
である。 1.絞り加工や絞りしごき加工などの加工を施す際に、
層間剥離や被覆樹脂層にクラックが発生し難く、樹脂被
覆膜に亀裂が発生し難く、かつ、樹脂被覆膜がアルミニ
ウム板から容易に剥離することがない、熱可塑性樹脂被
覆アルミニウム板を提供すること。 2.加工した後に時間が経過しても、加工した部分の密
着強度の低下が起こらず、成形加工後の熱処理が不要
で、加工密着性および加工後密着性に優れた熱可塑性樹
脂被覆アルミニウム板を提供すること。 3.上記熱可塑性樹脂被覆アルミニウム板製の成形体を
提供すること。
め、本発明の第1発明では、アルミニウム板の少なくと
も片面に、微孔質陽極酸化皮膜を形成し、さらにこの微
孔質陽極酸化皮膜の上に処理塗膜層を形成し、この塗膜
層の上に熱可塑性樹脂被覆膜を形成した熱可塑性樹脂被
覆アルミニウム板を提供する。さらに、本発明の第2発
明では、上記の熱可塑性樹脂被覆アルミニウム板を成形
加工した熱可塑性樹脂被覆アルミニウム板製の成形体を
提供する。
本発明に係る熱可塑性樹脂被覆アルミニウム板において
アルミニウム(Al)とは、純AlおよびAl合金を意
味する。具体的には、純Al系の1000系、Al−M
n系の3000系合金、Al−Mg系の5000系合金
が挙げられる。これらアルミニウムは、これら例示した
ものに限定されるものではない。これらアルミニウム
は、厚さが0.1〜2mmの板状にされる。熱可塑性樹
脂被覆アルミニウム板の用途が、アルミニウム電解コン
デンサ−の外装容器である場合は、1000系または3
000系のものが好ましい。
効処理などの種々の調質処理や前処理を施したものであ
ってもよい。前処理は特に限定されず、アルミニウム板
の表面に付着した油脂分を除去し、表面の不均質な酸化
物の皮膜を除去することができる処理であればよい。例
えば、弱アルカリ性の脱脂液による脱脂処理を施したの
ち、水酸化ナトリウム水溶液でアルカリエッチングをし
たのち、硝酸水溶液中でデスマット処理を行う方法や、
脱脂処理後に酸洗浄を行う方法などが、適宜採用され
る。また、脱脂と同時に積極的にエッチングしてアルミ
ニウム板表面が着色しない程度に粗面化し、アンカ−効
果を向上させることもできる。ここでエッチング法とし
ては、水酸化ナトリウムなどによるアルカリエッチン
グ、硫酸、フッ化水素酸などによる酸エッチング、硝酸
などの酸性溶液中での電解によるエッチングなどが挙げ
られる。
処理を施した後のアルミニウム板の少なくとも片面に、
微孔質陽極酸化皮膜を形成する。アルミニウム板に微孔
質陽極酸化皮膜を形成することにより、アルミニウム板
と熱可塑性樹脂被覆膜との密着性を向上させることがで
きる。アルミニウム板に微孔質陽極酸化皮膜を形成する
には、アルミニウム板を電解質溶液中で電解する陽極酸
化処理を施すことにより、アルミニウム板の少なくとも
一方の表面に実質上微孔質陽極酸化皮膜を形成すること
ができる。
の表面を被覆した陽極酸化皮膜の全面積に対するアルミ
ニウム板の表面を被覆した陽極酸化皮膜に存在する孔の
総面積の比率(有孔度という)が30%以下であること
をいう。また、有孔度が5%以下の場合は、特に、実質
上無孔質という。
形成される、アルミニウム基材から皮膜表面に向う穴で
ある。大きさとしては、直径50〜2000オングスト
ローム、深さ50オングストローム以上が目安となる。
この発明においては、陽極酸化皮膜の表面を10万倍の
倍率で電子顕微鏡観察して孔部の面積率を求めて有孔度
(%)とした。このような孔の面積率は、陽極酸化皮膜
の断面を高倍率の透過電子顕微鏡観察をし、皮膜表面部
を観察することにより同様に求めることができる。ま
た、アルミニウム合金中に存在する晶析出物及びその周
辺には、陽極酸化皮膜は形成されていない場所が存在す
るが、このような場所は孔とはみなさない。陽極酸化皮
膜は、当初は、孔のない状態が形成され、形成される過
程で、孔が形成されていく。そして、陽極酸化皮膜が形
成された段階の表面の開口部の面積から有孔度が算出さ
れる。
解性の低い電解質の水溶液中でアルミニウムを陽極とし
て電解処理することを形成させることができる。具体的
には、アジピン酸塩、マロン酸塩、フタル酸塩、ケイ酸
塩などをあげることができ、このような電解液を用いる
ことで有孔度は比較的低く調整できる。また、硫酸、リ
ン酸などの皮膜溶解性の高い電解液を用いた場合でも、
多孔質化する前の段階、すなわち、無孔質皮膜から多孔
質皮膜に変化する途中の段階で電解を停止させれば、無
孔質或いは微孔質な皮膜を形成させることが可能であ
る。このような溶解性の高い電解質を用いる場合に、特
に有孔度に着目することなく、通常の膜厚まで電解する
と、有孔度%を越える多孔質皮膜となる。
00オングストロームの範囲で選ぶものとする。皮膜の
厚さが50オングストローム未満であると、皮膜を均一
に形成するのが難しくなり熱可塑性樹脂被覆膜との十分
な密着性が得られない。また、ピンホ−ルなどが生じて
アルミニウムが溶出する虞れがある。他方、皮膜の厚さ
が3000オングストロームを越えると、アルミニウム
の表面が微孔質陽極酸化皮膜による光の干渉によって、
黄色、紫色、白色などの外観を呈したり、成形時にクラ
ックが生じ易くなることから、製品外観やアルミニウム
溶出の観点から好ましくない。微孔質陽極酸化皮膜の特
に好ましい厚さは、100〜2000オングストローム
である。
ム板の電解水溶液への浸漬時間(電解時間)、電解水溶
液の種類、電解質の濃度、電解液のpH、電解水溶液の
温度、印加電圧、電流密度などの電解条件により調節す
ることができる。電解時間は、電解条件により異なる
が、2〜200秒の範囲で選ぶことができる。
皮膜を溶解し難く、かつ無孔質の陽極酸化皮膜を生成す
る電解質の液であればよく、アジピン酸塩、酒石酸塩、
クエン酸塩、マロン酸塩およびケイ酸塩などの群から選
ばれる1種または2種以上を溶解した皮膜溶解性の低い
電解質水溶液を用いるとよいが、特に、これに限定され
るものではない。電解質水溶液中の電解質濃度は、2〜
150g/lが好ましい。電解質濃度が2g/lより低
濃度では皮膜むらが生じやすく、一方、150g/lを
越えると溶解し難く沈殿を生じることがあるからであ
る。
が好ましい。温度が40℃未満では、電解質の溶解性が
低く、液抵抗による電圧ロスが大きくなるからである。
温度が60℃を越えると加熱にコストを要するので、電
解水溶液の温度は、40℃〜60℃の範囲とするのがよ
く、中でも温度が50〜60℃の範囲であると、無孔質
の陽極酸化皮膜の含水量を少なくするのに効果的であ
り、特に好ましい。また、電解質水溶液中の水素イオン
濃度(pH)は、3〜8の範囲が好ましい。pHが3よ
り低いと陽極酸化皮膜は多孔質化する傾向にあり一方、
pHが8を越えると生成した皮膜が溶解したり、皮膜の
生成率が低下して所定の厚みが得られなくなるからであ
る。
連続的または断続的であっても陽極となるように電源に
接続されて電解される。陰極には、不溶性の導電材料が
用いられる。印加電圧は、目標とする皮膜の厚さに応じ
て調製し、おおむね3〜200Vである。電解する際の
電流には、直流電流が用いられ、電流密度は0.3〜1
0A/dm2程度である。電流密度が0.3A/dm2未
満では、皮膜形成に長時間を要し、コイル状のアルミニ
ウム板を迅速に連続的に電解することができず、一方、
10A/dm2を越えると、皮膜やけなどの表面欠損が
生じ易くなり、いずれも好ましくない。
施したアルミニウム板について行なうこともできるが、
コイル状に巻き取られた未加工の状態のアルミニウム板
を長尺に延ばして行なうのが好ましい。多量の素材アル
ミニウム板につき、迅速に陽極酸化処理を行うことがで
きるからである。
れることがあるが、微孔質陽極酸化皮膜の含水量は、5
重量%以下のものが好ましい。これは、アルミニウム板
を熱可塑性樹脂被覆膜で被覆する際の加熱時に、微孔質
陽極酸化皮膜から水分が放出され、密着性を低下さる恐
れがあるからである。また、微孔質陽極酸化皮膜の中
に、リン酸塩、アジピン酸塩などの電解質化合物が含ま
れることがあるが、これら電解質化合物の残存量は3重
量%以下とするのが好ましい。電解質化合物の残存量が
3重量%を越えると、熱可塑性樹脂被覆膜との密着性が
低下したり、加工製品である成形体の性能に影響してく
る虞がある。
ム板は、上記微孔質陽極酸化皮膜の上に処理塗膜層を形
成する。上記処理塗膜層とは、シランカップリング剤、
エポキシ樹脂、脂肪酸、ヒドロキシ置換フェノールから
なる群から選ばれる1種を上記微孔質陽極酸化皮膜の上
に塗布して乾燥させて、形成させた塗膜層である。
二個以上の反応基をもつ有機ケイ素単量体を言い、二個
の反応基のうちの一方は、無機質(ガラス、金属など)
と化学結合する反応基であり、他方の反応基は、有機材
料(各種合成樹脂)と化学結合する反応基である。有機
材料と化学結合する反応基としては、ビニル基、アミノ
基、エポキシ基、アクリル基などがある。無機質である
アルミニウム板の微孔質陽極酸化皮膜と結合する反応基
は、特には限定されないが、例えばメトキシ基、エトキ
シ基、シラノ−ル基などがある。シランカップリング剤
の層は、Al−O−Siの結合を形成してアルミニウム
板と強固に結合し、熱可塑性樹脂とは、シランカップリ
ング剤中の有機官能基が反応して強固な結合力を発揮
し、アルミニウム板と熱可塑性樹脂被覆膜との間に強い
接着力が付与される。
は、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β
(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシラ
ン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルメチル
ジエトキシシラン等のアミノシランカップリング剤、ト
リメチルメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、
ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、ジビニ
ルジメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメ
トキシシラン、γ−メタアクリロキシプロピルトリメト
キシシランなどがある。本発明において、より好ましく
使用できるシランカップリング剤として、これに限定す
るわけではないが、上記アミノシランカップリング剤が
あげられる。
の上へのシランカップリング剤の塗布量は、0.1〜1
000mg/m2が好ましい。シランカップリング剤を
塗布量が0.1mg/m2未満では、熱可塑性樹脂被覆
膜との間に十分な接着強度が得られず、1000mg/
m2を越えると接着強度が飽和に達し、塗布量に比例せ
ず、またシラン結合し易くなり取り扱い難くなり、いず
れも好ましくない。
の上へのシランカップリング剤は、シランカップリング
剤をアルコ−ルなどの揮発性溶媒によって希釈して塗布
するのが好ましい。塗布する方法は特に制限がなく、ロ
−ルコ−ト法、スプレ−コ−ト法、バ−コ−ト法、ディ
ッピング法などの従来から知られている方法によること
ができる。塗布した後は、溶媒などを揮発・飛散させて
乾燥させることが好ましい。
ロルヒドリンとビスフェノールAとを反応させて得られ
るビスフェノールA型エポキシ樹脂や、ビスフェノール
Aを他のものに代えたビスフェノールF型エポキシ樹
脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂のほか、ノボラ
ック系エポキシ樹脂、オルソクレゾールノボラック型エ
ポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、グリセリントリエー
テル型エポキシ樹脂、ポリグリシジルアミン型エポキシ
樹脂などを挙げることができる。このエポキシ樹脂にお
いては、分子量は330〜3000の範囲が、エポキシ
当量は150〜3000の範囲が好適である。
ずれでもよく、その種類としては、パルミチン酸、ステ
アリン酸、オレイン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、ベ
ヘニン酸などを挙げることができる。また、上記ヒドロ
キシ置換フェノールの種類としては、サリチルアルコー
ル、o−ヒドロキシメチル−P−クレゾールなどを挙げ
ることができる。
シ置換フェノールは、単独で、または、メチルエチルケ
トン、アセトン、トリクレン、アルコールなどの揮発性
溶媒によって希釈して、上記微孔質陽極酸化皮膜の上に
塗布することができる。また、作業環境の汚染を防ぐ目
的で、上記エポキシ樹脂、脂肪酸またはヒドロキシ置換
フェノールなどの有効成分を水系の希釈剤で希釈し、水
系エマルジョンとして塗布することもできる。上記のよ
うに希釈する際には、有効成分の濃度を1〜60重量%
の範囲と選ぶのが好ましい。
バースロール法、キスロール法、エアーナイフコート
法、ロ−ルコ−ト法、スプレ−コ−ト法、バ−コ−ト
法、ディップ法などの通常のコーティング方法を挙げる
ことができる。乾燥方法としては、常温で数時間放置す
る方法や、例えば80℃〜180℃程度の高温で焼き付
ける方法などを挙げることができる。なお、後者の焼き
付け乾燥を行う場合には、後記する250℃以上の熱処
理と同一ラインで行うのが効率的である。また、この焼
き付け乾燥と250℃以上の熱処理とを同時に行うこと
もできる。
換フェノールから形成される塗膜の厚さは、0.01〜
10μm程度とするのがよい。また、この塗膜は、25
0℃以上で熱処理されて熱変性塗膜とされるのが好まし
い。このようにすることにより、アルミニウム板の表面
に形成された微孔質陽極酸化皮膜と、熱可塑性樹脂被覆
膜との接着強度を高めることができる。なお、上記温度
での熱処理によって接着強度が高まる理由は明確には説
明できないが、熱処理により上記エポキシ樹脂、脂肪
酸、ヒドロキシ置換フェノールが化学的に変性し、アル
ミニウム板および熱可塑性樹脂被覆膜と強固な結合力を
発揮するものと推察される。熱処理温度が250℃未満
であると熱変性が不足するため、この熱変性塗膜に熱可
塑性樹脂被覆膜を積層した際の密着性に劣るので、好ま
しくない。
ム板においては、上記処理塗膜層の上に熱可塑性樹脂被
覆膜が形成される。この熱可塑性樹脂としては、特に限
定されるものではなく、ポリエチレンテレフタレ−ト、
ポリブチレンテレフタレ−ト、エチレンテレフタレ−ト
またはブチレンテレフタレ−トの酸成分であるテレフタ
ル酸の一部を他の酸で置き換えた共重合ポリエステル樹
脂、またはエチレンテレフタレ−トまたはブチレンテレ
フタレ−トのエチレングリコ−ルの一部を他のアルコ−
ルで置き換えた共重合ポリエステル樹脂などのポリエス
テル系樹脂、またはこれらのポリエステル系樹脂の2種
以上をブレンドした樹脂混合物、ポリアミド6、ポリア
ミド66、共重合ポリアミド66−6、ポリアミド6−
10、ポリアミド7、ポリアミド12、ポリメタキシリ
レンアジパミドなどのポリアミド系樹脂、ポリエチレ
ン、ポリプロピレン、エチレンプロピレン共重合樹脂な
どのポリオレフィン類やマレイン酸などを用いて酸変性
したポリオレフィン系樹脂、ポリカ−ボネ−ト、ポリエ
チレンナフタレ−ト、フッ素系樹脂などの熱可塑性樹脂
が挙げられる。
単層でもよいし、または異なる樹脂被覆膜を2層以上含
む多層の被覆膜であってもよい。これらの熱可塑性樹脂
からなる被覆膜は、未延伸の無配向被覆膜であってもよ
いし、一方向または二方向に延伸配向させた被覆膜であ
ってもよい。熱可塑性樹脂からなる被覆膜の厚さは、5
〜100μmの範囲が好ましい。被覆膜の厚さが5μm
未満であると、アルミニウム板表面に均一に積層するこ
とが困難であり、さらに得られた熱可塑性樹脂被膜アル
ミニウム板を絞り加工や絞りしごき加工した際に樹脂層
に亀裂が生じやすく、性能が劣る。他方、100μmを
越えると経済的に不利となり、好ましくない。なお、熱
可塑性樹脂からなる被覆膜は、接着性や濡れ性を改良す
るために、あらかじめコロナ処理、コ−ティング処理ま
たは火炎処理などの表面処理を行ってもよい。
ム板の製造方法は、特に限定されるものではないが、加
熱溶融した熱可塑性樹脂をTダイ、Iダイなどのダイス
を装備した押出機により薄膜状に押し出しながらから直
接アルミニウム板の表面に押出して積層する押出法や、
樹脂の融点以上に加熱したアルミニウム板に、インフレ
ーション法、Tダイ法、カレンダー法などによってあら
かじめ製膜した熱可塑性樹脂被覆膜を当接させ、一対の
ラミネ−トロ−ルで両者を挟みつけて積層して被覆する
フィルムラミネ−ト法で行うことができる。製造方法
は、これら例示した方法に限定されるものではない。
任意の方法で成型加工し、熱可塑性樹脂被覆アルミニウ
ム板製の成形体を得ることができる。このような成型加
工方法の例としては、絞り法、絞り再絞り法、絞り引張
曲げ伸ばし法、絞りしごき法のようなプレス成形法をあ
げることができる。
ム板は、建造物の壁面材、仕切板材、意匠板材としての
用途を有する。また、この熱可塑性樹脂被覆アルミニウ
ム板製の成形体は、アルミニウム電解コンデンサ−の外
装用容器などとして使用することができる。
具体的に説明するが、本発明は以下に記載の例に限定さ
れるものではない。以下の方法で調製した熱可塑性樹脂
被覆アルミニウム板を、次に記載の方法で評価した。 (a)有孔度:熱可塑性樹脂被覆アルミニウム板を、走
査型電子顕微鏡により10万倍に拡大して任意の10箇
所を観察し、この10箇所の観察結果からアルミニウム
板の表面に存在する孔の総面積を算出し、この総面積を
アルミニウム板の全面積で除して算出した。 (b)プレス加工性:各被覆板を用い、ランス順送り絞
り機により7段の絞り加工を行い、容器外面側が樹脂層
となるように10mmφ×20mm高さの円筒容器(し
ごき率20%)を100個作成し、層間の剥離状態を目
視観察した。そのときの層間剥離が全くなかったものを
良品とし、評価結果を良品率(%)で示した。
0mm高さの円筒容器を、100rpmの回転速度で回
転させながら、厚さ3mmの円板状のかしめごま(側面
はR=1.5mmの半円状)を押し当てて、直径が7.
5mm(直径変化率=25%)になるようにかしめ加工
し、層間の剥離状態を目視観察した。100個の容器に
ついて確認し、層間剥離のなかったものを良品とし、評
価結果を良品率(%)で示した。 (d)10日後の経時変化:上記の「かしめ性」試験に
おいて使用した100個の容器について、加工してから
10日経過後の容器の層間の剥離状況について目視観察
した。層間剥離のなかったものを良品とし、評価結果を
良品率(%)で示した。 (e)総合評価:上記(a)〜(d)の総ての項目にお
いて合格品質のものを「○」と判定し、一項目でも不合
格品質のものを「×」と判定した。また、不合格品質で
はないが、合格品質より多少品質の劣る程度のものを
「△」と判定した。
3mmのアルミニウム(JIS1100)板の表面を、
10%水酸化ナトリウム水溶液で、50℃の温度で30
秒間エッチング処理した後、10%硝酸水溶液で中和処
理を行ない、10秒間水洗を行なった。ついで、このア
ルミニウム板を、2%アジピン酸アンモニウム水溶液
で、電解電圧を7V、電流密度3.0A/dm2とし、
120秒間の電解処理を施し、アルミニウム板の表面に
厚さが100オングストロームの無孔質陽極酸化皮膜を
形成した。電解処理を終了した後、アルミニウム板を3
0秒間水洗し、120℃の温度で乾燥した。このアルミ
ニウム板の無孔質陽極酸化皮膜の上に、エポキシシラン
カップリング剤を900mg/m2塗布して乾燥した後
に、アルミニウム板を250℃の温度に加熱し、カップ
リング剤を塗布した面に、厚さ15μのポリアミド6の
フィルムを積層し、ポリアミド樹脂被覆アルミニウム板
を得た。 <製品の評価方法>得られたポリアミド樹脂被覆アルミ
ニウム板につき、上記の評価方法で評価した結果を、表
1に示した。
て、電解電圧を70Vに代えたほかは、同例におけると
同様の手順で電解処理を施し、アルミニウム板の表面に
厚さが1000オングストロームの無孔質陽極酸化皮膜
を形成した。このアルミニウム板の無孔質陽極酸化皮膜
の上に、アミノシランカップリング剤を50mg/m2
塗布して乾燥した後に、アルミニウム板を250℃の温
度に加熱し、カップリング剤を塗布した面に厚さ15μ
のポリアミド6のフィルムを、同例におけると同様の手
順で積層し、ポリアミド樹脂被覆アルミニウム板を得
た。得られたポリアミド樹脂被覆アルミニウム板につ
き、上記の評価方法で評価した結果を、表1に示した。
て、厚さが1000オングストロームの無孔質陽極酸化
皮膜の上に、アミノシランカップリング剤を0.1mg
/m2の塗布量に代えたほかは、同例におけると同様の
手順で厚さ15μのポリアミド6のフィルムを積層し、
ポリアミド樹脂被覆アルミニウム板を得た。得られたポ
リアミド樹脂被覆アルミニウム板につき、上記の評価方
法で評価した結果を、表1に示した。
て、電解液を2%リン酸アンモニウム水溶液に代え、電
解電圧を140Vに代えて厚さが2000オングストロ
ームの無孔質陽極酸化皮膜を形成したほかは、同例にお
けると同様の手順でエポキシシランカップリング剤を5
0mg/m2塗布し、ポリエチレンテレフタレートフィ
ルムを積層し、ポリエステル樹脂被覆アルミニウム板を
得た。得られたポリエステル樹脂被覆アルミニウム板に
つき、上記の評価方法で評価した結果を、表1に示し
た。
て、電解液を2%ケイ酸ナトリウム水溶液に代え、電解
電圧を200Vに代えて厚さが2800オングストロー
ムの無孔質陽極酸化皮膜を形成したほかは、同例におけ
ると同様の手順でカップリング剤を塗布し、ポリアミド
6のフィルムを積層し、ポリアミド樹脂被覆アルミニウ
ム板を得た。得られたポリアミド樹脂被覆アルミニウム
板につき、上記の評価方法で評価した結果を、表1に示
した。
て、電解液を2%アジピン酸ンモニウム水溶液に代え、
電解電圧を180Vに代えて厚さが2500オングスト
ロームの無孔質陽極酸化皮膜を形成した。このアルミニ
ウム板の無孔質陽極酸化皮膜の上に、アクリルシランカ
ップリング剤を50mg/m2塗布して乾燥した後に、
アルミニウム板を250℃の温度に加熱し、カップリン
グ剤を塗布した面に厚さ15μの無水マレイン酸変性ポ
リプロピレンフィルムを積層し、ポリプロピレン樹脂被
覆アルミニウム板を得た。得られたポリプロピレン樹脂
被覆アルミニウム板につき、上記の評価方法で評価した
結果を、表1に示した。
て、電解電圧を3Vに代えたほかは同例におけると同様
の手順で電解処理を施し、アルミニウム板の表面に厚さ
が40オングストロームの無孔質陽極酸化皮膜を形成し
たほかは、同例におけると同様の手順で厚さ15μのポ
リアミド6のフィルムを積層し、ポリアミド樹脂被覆ア
ルミニウム板を得た。得られたポリアミド樹脂被覆アル
ミニウム板につき、上記の評価方法で評価した結果を、
表2に示した。
ウム(JIS1100)板の表面に、実施例1における
と同様の手順でエッチング処理を施した。この後、乾燥
後のクロムの塗布量を20mg/m2としてリン酸クロ
メート処理を施した。このリン酸クロメート処理面にア
ミノシランカップリング剤を50mg/m2塗布して乾
燥した後に、カップリング剤の塗布面に、厚さ15μの
ポリアミド6のフィルムを、同例におけると同様の手順
で積層し、ポリアミド樹脂被覆アルミニウム板を得た。
得られたポリアミド樹脂被覆アルミニウム板につき、上
記の評価方法で評価した結果を、表2に示した。
て、アミノシランカップリング剤の塗布量を0.07m
g/m2に代えたほかは、同例におけると同様の手順で
乾燥した後に、カップリング剤の塗布面に、厚さ15μ
のポリアミド6のフィルムを、同例におけると同様の手
順で積層し、ポリアミド樹脂被覆アルミニウム板を得
た。得られたポリアミド樹脂被覆アルミニウム板につ
き、上記の評価方法で評価した結果を、表3に示した。
て、電解液を10%硫酸水溶液に代え、電流密度を1.
0A/dm2とし、20℃の温度で、8秒間電解処理を
施し、アルミニウム板の表面に厚さが3000オングス
トロームの陽極酸化皮膜を形成した。陽極酸化皮膜の有
孔度は30%以上であった。この陽極酸化皮膜の上に、
アミノシランカップリング剤の塗布量を50mg/m2
として塗布して乾燥した後に、カップリング剤の塗布面
に、厚さ15μのポリアミド6のフィルムを、同例にお
けると同様の手順で積層し、ポリアミド樹脂被覆アルミ
ニウム板を得た。得られたポリアミド樹脂被覆アルミニ
ウム板につき、上記の評価方法で評価した結果を、表2
に示した。
る。 (1)有孔度が5%以下の無孔質で、厚さが50〜30
00オングストロームの陽極酸化皮膜が形成されたアル
ミニウム板の陽極酸化皮膜に、シランカップリング剤を
塗布量0.1〜1000mg/m2の範囲で塗布され、
このシランカップリング剤の層の上に熱可塑性樹脂の被
覆膜を形成した樹脂被覆アルミニウム板は、プレス加工
性、かしめ加工性において優れ、加工してから10日間
経過しても、加工した部分の密着強度の低下が起こら
ず、層間剥離が生じない(実施例1〜実施例6参照)。 (2)有孔度が1%の無孔質であっても、厚さが40オ
ングストロームと薄い陽極酸化皮膜の場合には、プレス
加工性、かしめ加工性において劣り、加工してから10
日間経過すると、加工した部分の密着強度が低下し、層
間剥離が生じる(比較例1参照)。
リン酸クロメート処理で形成された無孔質陽極酸化皮膜
でない場合や、陽極酸化皮膜であっても有孔度が30%
以上と微孔質でない場合には、プレス加工性は問題ない
ものの、かしめ加工性が劣り、加工した部分の密着強度
が経時的に低下し、層間剥離が生じる(比較例2および
比較例4参照)。 (4)有孔度が1%の無孔質で、陽極酸化皮膜の厚さが
50〜3000オングストロームの範囲内にあっても、
シランカップリング剤の塗布量が0.1mg/m 2に満
たない場合には、プレス加工性、かしめ加工性に劣り、
加工した部分の密着強度が経時的に低下し、層間剥離が
生じる(比較例3参照)。
ついて説明する。このときのかしめ加工性の測定及び判
断は、下記の方法にしたがった。なお、他の測定及び判
断は、上記の通りである。 (c’)かしめ加工性:上記した直径10mm×高さ2
0mmの円筒容器を、100rpmの回転速度で回転さ
せながら、厚さ3mmの円板状のかしめごま(側面は半
径1.5mmの半円状)を押し当てて、直径が8mm
(直径変化率=20%)になるようにかしめ加工し、層
間の剥離状態を目視観察した。100個の容器について
確認し、層間剥離のなかったものを良品とし、評価結果
を良品率(%)で示した。
3mmのアルミニウム板(合金番号:A1100P H
24)の表面を、10%水酸化ナトリウム水溶液で、5
0℃の温度で30秒間エッチング処理した後、10%硝
酸水溶液で中和処理を行ない、10秒間水洗を行なっ
た。次いで、このアルミニウム板を、2%アジピン酸ア
ンモニウム水溶液で、電解電圧を7V、電流密度3.0
A/dm2として120秒間の電解処理を施し、アルミ
ニウム板の表面に厚さが100オングストロームの無孔
質陽極酸化皮膜を形成した。電解処理を終了した後、ア
ルミニウム板を30秒間水洗し、120℃の温度で乾燥
した。このアルミニウム板の無孔質陽極酸化皮膜の上
に、メチルエチルケトンに溶解させたビスフェノールA
型エポキシ樹脂(分子量:380、エポキシ当量:18
0〜200)を、ロールコーターにて塗布して常温で6
時間放置して乾燥させ、厚さが1μmの塗膜を形成し
た。この塗膜を350℃で熱処理して熱変性塗膜とし、
この熱変性塗膜の上に、厚さ15μmのポリアミド6の
被覆膜を積層し、ポリアミド樹脂被覆アルミニウム板を
得た。 <製品の評価>得られたポリアミド樹脂被覆アルミニウ
ム板につき、上記の評価方法で評価した結果を、表3に
示した。
て、電解電圧を70Vに、無孔質陽極酸化皮膜の厚さを
1000オングストロームにそれぞれ代えたほかは、同
例におけると同様の手順でポリアミド樹脂被覆アルミニ
ウム板を得た。得られたポリアミド樹脂被覆アルミニウ
ム板につき、上記の評価方法で評価した結果を、表3に
示した。
て、電解電圧を70Vに、無孔質陽極酸化皮膜の厚さを
1000オングストロームにそれぞれ代え、かつ、無孔
質陽極酸化皮膜の上に形成する塗膜を、オレイン酸から
なる塗膜に代えたほかは、同例におけると同様の手順で
ポリアミド樹脂被覆アルミニウム板を得た。得られたポ
リアミド樹脂被覆アルミニウム板につき、上記の評価方
法で評価した結果を、表3に示した。
て、電解水溶液を2%リン酸アンモニウム水溶液に、電
解電圧を140Vに、無孔質陽極酸化皮膜の厚さを20
00オングストロームに代え、かつ、ビスフェノールA
型エポキシ樹脂からなる塗膜の厚さを0.1μmに、こ
の塗膜の熱処理温度を270℃に代えたほかは、同例に
おけると同様の手順でポリアミド樹脂被覆アルミニウム
板を得た。得られたポリアミド樹脂被覆アルミニウム板
につき、上記の評価方法で評価した結果を、表3に示し
た。
て、電解水溶液を2%ケイ酸ナトリウム水溶液に、電解
電圧を200Vに、無孔質陽極酸化皮膜の厚さを280
0オングストロームにそれぞれ代えたほかは、同例にお
けると同様の手順でポリアミド樹脂被覆アルミニウム板
を得た。得られたポリアミド樹脂被覆アルミニウム板に
つき、上記の評価方法で評価した結果を、表3に示し
た。
て、電解水溶液を2%アジピン酸アンモニウム水溶液
に、電解電圧を180Vに、無孔質陽極酸化皮膜の厚さ
を2500オングストロームにそれぞれ代えたほかは、
同例におけると同様の手順でポリアミド樹脂被覆アルミ
ニウム板を得た。得られたポリアミド樹脂被覆アルミニ
ウム板につき、上記の評価方法で評価した結果を、表3
に示した。
て、無孔質陽極酸化皮膜の上に形成する塗膜を、サリチ
ルアルコールからなる塗膜に代えたほかは、同例におけ
ると同様の手順でポリアミド樹脂被覆アルミニウム板を
得た。得られたポリアミド樹脂被覆アルミニウム板につ
き、上記の評価方法で評価した結果を、表3に示した。
て、電解電圧を3Vに、無孔質陽極酸化皮膜の厚さを4
0オングストロームにそれぞれ代えたほかは、同例にお
けると同様の手順でポリアミド樹脂被覆アルミニウム板
を得た。得られたポリアミド樹脂被覆アルミニウム板に
つき、上記の評価方法で評価した結果を、表4に示し
た。
て、アルミニウム板の表面に形成する皮膜を、リン酸ク
ロメート処理による皮膜(乾燥後のクロムの塗布量:2
0mg/m2)に代えたほかは、同例におけると同様の
手順でポリアミド樹脂被覆アルミニウム板を得た。得ら
れたポリアミド樹脂被覆アルミニウム板につき、上記の
評価方法で評価した結果を、表4に示した。
て、電解電圧を70Vに、無孔質陽極酸化皮膜の厚さを
1000オングストロームにそれぞれ代え、ビスフェノ
ールA型エポキシ樹脂からなる薄膜の熱処理温度を20
0℃に代えたほかは、同例におけると同様の手順でポリ
アミド樹脂被覆アルミニウム板を得た。得られたポリア
ミド樹脂被覆アルミニウム板につき、上記の評価方法で
評価した結果を、表4に示した。
て、アルミニウム板の表面に形成する皮膜を、厚さが3
000オングストロームで有孔度が30%以上の陽極酸
化皮膜に代えたほかは、同例におけると同様の手順でポ
リアミド樹脂被覆アルミニウム板を得た。上記した陽極
酸化皮膜は、温度20℃の10%硫酸水溶液で、電解電
圧16V、電流密度1.0A/dm2の条件下で8秒間
の電解処理をアルミニウム板の表面に施して形成したも
のであった。この得られたポリアミド樹脂被覆アルミニ
ウム板につき、上記の評価方法で評価した結果を、表4
に示した。
なる。 (1)アルミニウム板の少なくとも片面に、厚さが50
〜3000オングストロームで有孔度が5%以下の無孔
質陽極酸化皮膜を形成し、この無孔質陽極酸化皮膜の上
に、エポキシ樹脂、脂肪酸、ヒドロキシ置換フェノール
からなる群から選ばれる1種を塗布して塗膜を形成し、
この塗膜の上に熱可塑性樹脂被覆膜を形成した熱可塑性
樹脂被覆アルミニウム板は、プレス加工性、かしめ加工
性において優れ、加工してから10日間経過しても、加
工した部分の密着強度の低下が起こらず、層間剥離が生
じない(実施例7〜実施例13参照)。 (2)有孔度が5%以下(無孔質)であっても、厚さが
40オングストロームと薄い陽極酸化皮膜の場合には、
プレス加工性、かしめ加工性において劣り、加工してか
ら10日間経過すると、加工した部分の密着強度が低下
し、層間剥離が生じる(比較例5参照)。
皮膜が、リン酸クロメート処理によって形成された場合
(すなわち陽極酸化皮膜でない場合)や、陽極酸化皮膜
であっても有孔度が5%以上の場合(すなわち無孔質で
ない場合)には、プレス加工性は問題ないものの、かし
め加工性において劣り、加工した部分の密着強度が経時
的に低下し、層間剥離が生じる(比較例6および比較例
8参照)。 (4)有孔度が5%以下(無孔質)で、陽極酸化皮膜の
厚さが50〜3000オングストロームの範囲内にあっ
ても、エポキシ樹脂を塗布して形成した塗膜の熱処理温
度が250℃未満である場合には、プレス加工性、かし
め加工性において劣り、加工した部分の密着強度が経時
的に低下し、層間剥離が生じる(比較例7参照)。
において、電解電圧を70Vに代えたほかは、実施例1
と同様の手順で電解処理を施し、アルミニウム板の表面
に厚さが1000オングストロームの無孔質陽極酸化皮
膜を形成した。このアルミニウム板の無孔質陽極酸化皮
膜の上に、表5に示すシランカップリング剤を50mg
/m2塗布して乾燥した後に、アルミニウム板を250
℃の温度に加熱し、カップリング剤を塗布した面に厚さ
15μのポリアミド6のフィルムを実施例1と同様の手
順で被覆し、ポリアミド樹脂被覆アルミニウム板を得
た。得られたポリアミド樹脂被覆アルミニウム板につ
き、上記の評価方法及び下記の剥離強度評価試験で評価
した結果を、表5に示した。
ルミニウム板を元の厚みに対して40%になるまでに圧
延したものを試料とする。この試料について、熱可塑性
樹脂被覆を20mm幅で180度方向に、50mm/m
inの速度で剥離したときの最大荷重を剥離強度とし
た。
度が2%以下の無孔質で、厚さが1000オングストロ
ームの陽極酸化被膜が形成されたアルミニウム板にシラ
ンカップリング剤を50mg/m2塗布され、このシラ
ンカップリング剤の層の上に熱可塑性樹脂の被覆膜を形
成した樹脂被覆アルミニウム板は、プレス加工性、かし
め加工性において優れ、加工してから10日経過して
も、加工した部分の密着強度の低下が起こらず、層間剥
離が生じない。また、剥離強度については、アミノシラ
ンカップリング剤が最も高い数値を示しており、効果が
高いといえる。
ニウム板(合金番号:A1100P H24)の表面
を、10%水酸化ナトリウム水溶液で、50℃の温度で
30秒間エッチング処理した後、10%硝酸水溶液で中
和処理を行ない、10秒間水洗を行なった。次いで、こ
のアルミニウム板を10%硫酸溶液に浸漬し、次いで、
5%硫酸中、20℃で電解電圧を15V、電流密度1.
0A/dm2として10秒間の電解処理を施し、アルミ
ニウム板の表面に厚さが300オングストロームの微孔
質陽極酸化皮膜を形成した。この皮膜の有孔度は25%
であった。電解処理を終了した後、アルミニウム板を3
0秒間水洗し、120℃の温度で乾燥した。このアルミ
ニウム板の無孔質陽極酸化皮膜の上に、アミノシランカ
ップリング剤を50mg/m2塗布して乾燥した後に、
アルミニウム板を250℃の温度に加熱し、カップリン
グ剤を塗布した綿に厚さ15μmのポリエチレンテレフ
タレートフィルムを積層し、ポリエステル樹脂被覆アル
ミニウム板を得た。得られたポリエステル樹脂被覆アル
ミニウム板につき、上記の評価方法で評価した結果を、
表6に示した。
あり、次のような特別に有利な効果を奏し、その産業上
の利用価値は極めて大である。 1.本発明に係る熱可塑性樹脂被覆アルミニウム板は、
絞り加工や絞りしごき加工などの加工を施す際に、層間
剥離や被覆樹脂層にクラックが発生し難く、樹脂被覆膜
に亀裂が発生し難く、かつ、樹脂被覆膜がアルミニウム
板から容易に剥離することがない。
ニウム板は、加工密着性および加工後密着性に優れてお
り、加工した後に時間が経過しても、加工した部分の密
着強度の低下が起こらず、特開平1−66030号公報
や特開平2−18043号公報によって提案されている
ような成形加工後の熱処理は不要であり、製造工程を簡
素化できる。
ニウム板は、アルミニウム電解コンデンサ−用外装容器
などの成形体製造用に極めて有用である。
Claims (8)
- 【請求項1】 アルミニウム板の少なくとも片面に、微
孔質陽極酸化皮膜を形成し、さらにこの微孔質陽極酸化
皮膜の上に処理塗膜層を形成し、この塗膜層の上に熱可
塑性樹脂被覆膜を形成した熱可塑性樹脂被覆アルミニウ
ム板。 - 【請求項2】 微孔質陽極酸化被膜の有孔度が5%以下
である請求項1に記載の熱可塑性樹脂被覆アルミニウム
板。 - 【請求項3】 上記処理塗膜層は、シランカップリング
剤、エポキシ樹脂、脂肪酸、ヒドロキシ置換フェノール
からなる群から選ばれる1種を塗布して形成された塗膜
層である請求項1又は2に記載の熱可塑性樹脂被覆アル
ミニウム板。 - 【請求項4】 上記シランカップリング剤がアミノシラ
ンカップリング剤である請求項3に記載の熱可塑性樹脂
被覆アルミニウム板。 - 【請求項5】 上記シランカップリング剤の塗布量は、
0.1〜1000mg/m2である請求項3又は4に記
載の熱可塑性樹脂被覆アルミニウム板。 - 【請求項6】 上記のエポキシ樹脂、脂肪酸、ヒドロキ
シ置換フェノールからなる群から選ばれる1種を塗布し
て形成された塗膜層が、250℃以上で熱処理された熱
変性塗膜である、請求項3に記載の熱可塑性樹脂被覆ア
ルミニウム板。 - 【請求項7】 請求項1乃至6のいずれかに記載の熱可
塑性樹脂被覆アルミニウム板を成形加工した熱可塑性樹
脂被覆アルミニウム板製の成形体。 - 【請求項8】 アルミニウム電解コンデンサ−用外装容
器として使用される請求項7に記載の熱可塑性樹脂被覆
アルミニウム板製の成形体。
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