JP2010000679A - アルミニウム材及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】アルミニウム基材とその少なくとも一方の表面に形成した酸化膜を有するアルミニウム材であって、前記酸化膜は50nm〜500nmの厚みを有し、かつ、アルミニウム素地側の3nm〜30nmの厚みを有するバリア層とその反対側のポア構造とを備え、当該ポア構造は5nm〜20nmの直径を有する小孔を有し、前記酸化膜のポア構造上に、重量平均分子量5000〜1000000で重量平均分子量500につき1個以上のカルボキシル基を含有するアクリル酸化合物重合体が1mg/m2〜1000mg/m2の量で付着していることを特徴とするアルミニウム材。
【選択図】なし
Description
すなわち、近年の電機・電子製品の急速な小型化とともに、外装デザインもますます多様化している。これに対応するために、配線基板の一部に対し、折り曲げ加工等が加えられる場合がある。こうした技術的動向に対し、特許文献1のようなアルミニウム酸化膜自体の樹脂密着性を向上させる方法は、未加工状態における樹脂密着力こそ保たれるものの、折り曲げ加工等の変形に耐えられず、加工部の剥離を生ずる場合があった。また特許文献2のような陽極酸化膜の上に処理塗膜等を塗布する方法は、加工により緻密な酸化膜が凝集破壊し、やはり加工部の剥離に結びつく場合があった。
本発明は、バリア層の上にポア構造を有するアルミニウム酸化膜上にアクリル酸化合物の重合体(以下、「アクリル樹脂」と呼称する)の層を設けることにより、アルミニウム材の樹脂密着性、耐食性及び加工性を向上及び確保するものである。
本発明で用いるアルミニウム基材としては、純アルミニウム又はアルミニウム合金からなる基材(以下、これらを「アルミニウム基材」と呼称する)が用いられ、用途や要求特性に応じて適宜選択することができる。アルミニウム合金としては、1000系、3000系、5000系及び6000系等が好適に用いられる。アルミニウム基材は、通常0.5〜2.0mmの厚さのアルミニウム板が好適に用いられる。
本発明者らは、従来技術におけるアルカリ交流電解処理に注目し、TEM(透過型電子顕微鏡)及びFT―IR(赤外吸収分光法)等により酸化膜の性状評価を行った。その結果、以下に示す要件を達成することにより、極めて優れた特性が得られることを見出したものである。
本発明において、酸化膜上に設けるアクリル樹脂層としては、重量平均分子量5000〜1000000で、重量平均分子量500につき1個以上のカルボキシル基を含有するアクリル樹脂が用いられる。このアクリル樹脂は、水溶性、溶剤性、或いは、これらに非溶解性であってもよい。このようなアクリル樹脂は、含有するカルボキシル基が、アルミニウム酸化膜と水素結合して強固に結びつくとともに、適度の重合度を有する樹脂の骨格部が上塗り樹脂成分と溶融接着層を形成することにより、アルミニウム酸化膜と上塗り樹脂の双方に対して強力な結合作用を発揮するためである。重量平均分子量が5000未満では、上塗り樹脂成分との相互作用が弱く密着性に劣る。一方、重量平均分子量が1000000を超えると、アクリル樹脂自体が硬く脆く凝集破壊を起こし易くなり加工性に劣る。カルボキシル基の量が、重量平均分子量500につき1個未満のアクリル樹脂の場合、アルミニウム酸化膜に対する結合作用が不足するため、樹脂密着性が不足する。
本発明に係るアルミニウム材は、アルミニウム基材を電極とし、pH9〜13で液温35℃〜80℃のアルカリ性水溶液を電解溶液とし、周波数20Hz〜100Hz、電流密度4A/dm2〜50A/dm2及び電解時間5秒〜60秒の条件下でアルカリ交流電解することにより酸化膜を形成する工程と、前記酸化膜上に、重量平均分子量5000〜1000000で重量平均分子量500につき1個以上のカルボキシル基を含有するアクリル酸化合物の重合体溶液を塗布し、30℃〜300℃以下の雰囲気で1秒〜600秒乾燥させることにより、1mg/m2〜1000mg/m2の樹脂付着層を形成する工程と、を備える。なお、電解工程においては、他方の電極として黒鉛電極等が用いられる。
実施例1〜19及び比較例1〜13
アルミニウム基材として、アルミニウム合金板(板厚1.0mmのJIS5052合金板)を使用した。このアルミニウム合金板を電極に用い(対電極には黒鉛電極を用い)、ピロりん酸ナトリウムを主成分とするアルカリ水溶液を電解溶液として用いた。これらのアルカリ成分の濃度は、0.5モル/リットルとするとともに、塩酸及び水酸化ナトリウム水溶液(いずれも濃度0.1モル/リットル)によってpHの調製を行なった。表1に示す電解条件にて、交流電解処理を実施して酸化膜を形成した。なお、比較例13では、アルカリ交流電解処理に代わって、従来技術に基づいた硫酸アルマイト処理(厚さ2.5μm、封孔処理あり)を実施した。
(耐熱接着性試験)
上記のプリント配線基板サンプルを55mm×25mmの大きさに切断し、オートクレーブ中にて121℃×16時間吸湿処理した。次いで、サンプルを260℃の溶融はんだ浴上に30秒間フロートし、銅箔を引き剥がした後のアルミニウム素地露出面積率により、樹脂に対するアルミニウム板の耐熱接着性を評価した。評価判定は以下の通りであり、◎、○、△を合格とし、××、×を不合格とした。
露出面積率0% ・・・◎
露出面積率0%を超えて10%以下 ・・・○
露出面積率10%を超えて25%以下 ・・・△
露出面積率25%を超えて50%以下 ・・・×
露出面積率50%を超える ・・・××
上記のプリント配線基板サンプルを50mm×100mmの大きさに切断した後、カッターを用いて銅箔接着面からアルミニウム素地に達する深さの、長さ40mmのクロスカットを入れた。次いで、サンプルを、クエン酸−水和物(濃度=1重量%)と塩化ナトリウム(濃度=0.5重量%)の70℃混合溶液に72時間浸漬し、クロスカット端面に発生した耐食を評価した。評価判定は以下の通りであり、◎、○、△を合格とし、××、×を不合格とした。
腐食発生率0% ・・・◎
腐食発生率0%を超えて10%以下 ・・・○
腐食発生率10%を超えて25%以下 ・・・△
腐食発生率25%を超えて50%以下 ・・・×
腐食発生率50%を超える ・・・××
上記のプリント配線基板サンプルを55mm×25mmの大きさに切断した後、銅箔接着面を外面として、外面の曲げ半径=1mm、曲げ角度=90度の曲げ加工を実施した。これをオートクレーブ中にて121℃×16時間吸湿処理し、水分を拭き取った後、曲げ部にセロハンテープを貼り、ただちに引き剥がして、銅箔の剥離度合いを評価した。評価判定は以下の通りであり、◎、○、△を合格とし、×を不合格とした。
露出面積率0% ・・・◎
露出面積率0%を超えて10%以下 ・・・○
露出面積率10%を超えて25%以下 ・・・△
露出面積率25%を超えて50%以下 ・・・×
露出面積率50%を超える ・・・××
比較例1では、電解溶液のpHが高過ぎ、かつ、電解溶液の温度も高温過ぎたため、酸化膜の全体厚みが薄過ぎ、バリア層厚みも不足した。その結果、耐熱接着性、耐食性及び加工性のいずれも劣っていた。
比較例2では、電解溶液のpHが低過ぎたためバリア層が健全に形成されず、その結果、耐食性に劣った。
比較例3では、電解溶液の温度が低過ぎたためエッチングが十分に行なわれず、そのためバリア層が不完全になり耐食性に劣った。
比較例4では、電解周波数が低周波数過ぎたためポア構造の直径が小さ過ぎた。その結果、アクリル樹脂の接触面積が不足し耐熱接着性及び加工性に劣った。
比較例5では、電解周波数が高周波数過ぎたためポア構造の直径が大き過ぎた。その結果、酸化膜自体の強度が低下して剥離が発生し加工性に劣った。
比較例6では、電流密度が小さ過ぎたため安定した電解が行なわれず、結果としてバリア層のみが極端に成長した結果、加工性に劣った。
比較例7では、電流密度が大き過ぎたため電解の制御が適切に行なわれず、結果として酸化膜全体が成長し過ぎた結果、加工性に劣った。
比較例8では、電解時間が極端に短く、酸化膜全体の形成が不完全になったため、結果として耐熱接着性、耐食性及び加工性のいずれも劣っていた。
比較例9ではアクリル樹脂の分子量が小さ過ぎたため、耐熱接着性及び加工性のいずれも劣っていた。
比較例10ではアクリル樹脂の分子量が大き過ぎたため加工性に劣った。
比較例11ではアクリル樹脂のカルボキシル基含有量が不足した。その結果、耐熱接着性及び加工性に劣った。
比較例12では、アクリル樹脂層の付着量が不足したため耐熱接着性及び加工性に劣った。
比較例13は単なるアルマイト処理であり、耐熱接着性及び加工性において本発明に比べて大きく劣っていた。
Claims (2)
- アルミニウム基材とその少なくとも一方の表面に形成した酸化膜を有するアルミニウム材であって、
前記酸化膜は50nm〜500nmの厚みを有し、かつ、アルミニウム素地側の3nm〜30nmの厚みを有するバリア層とその反対側のポア構造とを備え、当該ポア構造は5nm〜20nmの直径を有する小孔を有し、
前記酸化膜の上に、重量平均分子量5000〜1000000で重量平均分子量500につき1個以上のカルボキシル基を含有するアクリル酸化合物重合体が1mg/m2〜1000mg/m2の量で付着していることを特徴とするアルミニウム材。 - アルミニウム基材を電極とし、pH9〜13で液温35℃〜80℃のアルカリ性水溶液を電解溶液とし、周波数20Hz〜100Hz、電流密度4A/dm2〜50A/dm2及び電解時間5秒〜60秒の条件下でアルカリ交流電解することにより酸化膜を形成する工程と、
前記酸化膜上に、重量平均分子量5000〜1000000で重量平均分子量500につき1個以上のカルボキシル基を含有するアクリル酸化合物の重合体溶液を塗布し、30℃〜300℃以下の雰囲気で1秒〜600秒乾燥させることにより、1mg/m2〜1000mg/m2の樹脂付着層を形成する工程と、を備えるアルミニウム材の製造方法。
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