JP2014028454A - アルミニウム複合材及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】アルミニウム材と樹脂層とを接合した複合材であって、前記樹脂層と接する前記アルミニウム材表面に酸化皮膜が形成され、該酸化皮膜は表面側に形成された厚さ20〜500nmの多孔性アルミニウム酸化皮膜層と素地側に形成された厚さ3〜30nmのバリア型アルミニウム酸化皮膜層とを具備し、前記多孔性アルミニウム酸化皮膜層には直径5〜30nmの小孔が形成されており、該アルミニウム材表面全体における前記多孔性アルミニウム酸化皮膜層と前記バリア型アルミニウム酸化皮膜層との合計厚さの変動幅が、該合計厚さの算術平均値の±50%以内であることを特徴とするアルミニウム複合材、ならびに、その製造方法。
【選択図】図1
Description
本発明に用いるアルミニウム材としては、純アルミニウム又はアルミニウム合金が用いられる。アルミニウム合金の成分には特に制限無く、JISに規定される合金をはじめとする各種合金を使用することができる。形状としては、平板状のものが好適に用いられる。用途に応じて、板厚を適宜選択することができるが、軽量化と成形性の観点から0.05〜2.0mmが好ましく、0.1〜1.0mmが更に好ましい。
本発明に用いるアルミニウム材の表面には、表面側に形成された多孔性アルミニウム酸化皮膜層と素地側に形成されたバリア型アルミニウム酸化皮膜層とが設けられている。すなわち、アルミニウム材表面には、多孔性アルミニウム酸化皮膜層とバリア型アルミニウム酸化皮膜層の二層によって構成される酸化皮膜が設けられている。多孔性アルミニウム酸化皮膜層が樹脂層に対する強力な接合強度や密着性を発揮する一方で、バリア型アルミニウム酸化皮膜層によって、酸化皮膜層全体とアルミニウム素地が強固に結合される。
多孔性アルミニウム酸化皮膜層の厚さは、20〜500nmである。20nm未満では厚さが十分でないため、後述する小孔構造の形成が不十分になり易く樹脂層に対する接合強度や密着力が低下する。一方、500nmを超えると、多孔性アルミニウム酸化皮膜層自体が凝集破壊し易くなり樹脂層に対する接合強度や密着力が低下する。
バリア型アルミニウム酸化皮膜層の厚さは、3〜30nmである。3nm未満では、介在層として多孔性アルミニウム酸化皮膜層とアルミニウム素地との結合に十分な結合力を付与することができず、特に、高温・多湿等の過酷環境における結合力が不十分となる。一方、30nmを超えると、その緻密性ゆえにバリア型アルミニウム酸化皮膜層が凝集破壊し易くなり、かえってアルミニウム素地に対する酸化皮膜層全体の結合強度や密着力が低下する。
酸化皮膜全体の厚さ、すなわち、B−1に記載の多孔性アルミニウム酸化皮膜層とB−2に記載のバリア型アルミニウム酸化皮膜層との厚さの合計は、アルミニウム材のいかなる場所で測定しても、その変動幅が±50%以内でなければならない。すなわち、アルミニウム材表面における任意の複数箇所(10箇所以上が望ましく、これら各箇所においても10点以上の測定点とするのが望ましい)で測定した酸化皮膜全体厚さの平均をT(nm)とした場合、これら複数測定箇所の全てにおける酸化皮膜全体厚さが(0.5×T)〜(1.5×T)の範囲にある必要がある。(0.5×T)未満の箇所が存在すると、その箇所の酸化皮膜がその周囲より薄くなる。そうすると、この薄い箇所では、接合すべき樹脂層と酸化皮膜との間に隙間が生じ易くなり、十分な接触面積を確保できずに樹脂層に対する接合強度や密着力が低下する。
本発明において表面処理アルミニウム材と接合する樹脂には、従来技術に基づく各種の熱可塑性及び熱硬化性樹脂を用いることができる。すなわち熱可塑性樹脂においては、熱を加えて流動状態とした樹脂を多孔性アルミニウム酸化皮膜層に接触・浸透させ、冷却固化することにより樹脂層が形成される。熱可塑性樹脂としては、例えばポリオレフィン(ポリエチレン、ポリプロピレン等)、ポリ塩化ビニル、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等)、ポリアミド、ポリフェニレンスルファイド、芳香族ポリエーテルケトン(ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルケトン等)、ポリスチレン、各種フッ素樹脂(ポリテトラフルオロエチレン、ポリクロロトリフルオロエチレン等)、アクリル樹脂(ポリメタクリル酸メチル等)、ABS樹脂、ポリカーボネート、熱可塑性ポリイミド等を用いることができる。
D−1.アルミニウム酸化皮膜
上記Bに記載の条件を満たした酸化皮膜を表面に備えた表面処理アルミニウム材を製造するための一つの方法を、図2に示す。表面処理されるべきアルミニウム材6の電極と対電極7とを用い、pH9〜13で液温35〜80℃であり、かつ、溶存アルミニウム濃度が5ppm以上1000ppm以下のアルカリ性水溶液を電解溶液9とし、周波数20〜100Hz、電流密度4〜50A/dm2及び電解時間5〜60秒間の条件で、交流電源8を用いて交流電解処理することにより、対電極に対向するアルミニウム材表面に酸化皮膜を形成するものである。
本発明に係るアルミニウム複合材は、上記Bに記載の表面処理アルミニウム材の酸化皮膜側に上記Cに記載の樹脂を用いて樹脂層を形成することにより、表面処理アルミニウム材に樹脂層を接合させることによって製造される。
実施例1〜21及び比較例1〜12
アルミニウム材として、縦200mm×横400mm×板厚1.0mmのJIS5052−H34合金板を使用した。このアルミニウム合金板を一方の電極に用い、対電極には縦300mm×横500mm×板厚2.0mmの平板形状を有する黒鉛板又はチタン板を用いた。アルミニウム合金板の片面を対電極に対面させ、この対面した片面表層に、表面側の多孔性アルミニウム酸化皮膜層と素地側のバリア型アルミニウム酸化皮膜層が形成されるように、両電極を配置した。ピロりん酸ナトリウムを主成分とするアルカリ水溶液を、電解溶液として用いた。溶存アルミニウム濃度はICP発光分析装置(島津製作所製)を用いて測定し、所定の濃度とした。電解溶液のアルカリ成分濃度は、0.5モル/リットルとするとともに、塩酸及び水酸化ナトリウム水溶液(いずれも濃度0.1モル/リットル)によってpHの調整を行なった。表1に示す電解条件にて、交流電解処理を実施して多孔性アルミニウム酸化皮膜層及びバリア型アルミニウム酸化皮膜層を形成した。
上記のように作製した幅25mm、長さ100mm、厚さ2mm(表面処理アルミニウム材:1mm、樹脂層:1mm)のサンプルにおいて、長さ方向の一端から長さ方向に沿った45mmと55mmの位置に印をつけ、45mm位置では樹脂に対してアルミニウム材に達する切れ目を幅方向に沿って入れ、一方55mm位置ではアルミニウム材に対して樹脂に達する切れ目を幅方向に沿って入れた。そして、サンプルの長さ方向の両端を引張試験機により100mm/分の速度にて長さ方向に沿って反対向きに引張り、その荷重(せん断応力に換算)と剥離状態によって下記の基準で評価した。なお、せん断試験用サンプルは同じ供試材から10個の試験片を作製して、それぞれについて以下の基準で評価した。
△:せん断応力が20N/mm2以上であるものの、アルミニウム材と樹脂層が界面剥離した状態
×:せん断応力が20N/mm2未満で、かつ、アルミニウム材と樹脂層が界面剥離した状態
結果を表5に示す。同表には、10個の試験片のうちの上記○、△、×の個数をそれぞれ示すが、全てが○の場合を合格、それ以外を不合格と判定した。
上記のように作製したサンプルは、樹脂製円筒の一方の開口部分を板状のアルミニウム材で閉じた形状を有する。このサンプルを板状アルミニウム材が下になるように水平な台に設置し、樹脂製円筒の内部に脱イオン水を500ml注入した。市販の樹脂製ラップフィルムで開口部分を覆い、室温にて7日間保持し、サンプルの接合部位からの水漏れの有無を目視検査した。水漏れが全くなかった場合を○、一箇所でも水漏れが確認されたものを×として判定した。結果を表5に示す。
2・・・表面処理アルミニウム材
3・・・樹脂層
4・・・酸化皮膜
41・・・多孔性アルミニウム酸化皮膜層
42・・・バリア型アルミニウム酸化皮膜層
5・・・小孔
6・・・アルミニウム材
7・・・対電極
8・・・交流電源
9・・・電解溶液
Claims (6)
- アルミニウム材と樹脂層とを接合した複合材であって、前記樹脂層と接する前記アルミニウム材表面に酸化皮膜が形成され、該酸化皮膜は表面側に形成された厚さ20〜500nmの多孔性アルミニウム酸化皮膜層と素地側に形成された厚さ3〜30nmのバリア型アルミニウム酸化皮膜層とを具備し、前記多孔性アルミニウム酸化皮膜層には直径5〜30nmの小孔が形成されており、該アルミニウム材表面全体における前記多孔性アルミニウム酸化皮膜層と前記バリア型アルミニウム酸化皮膜層との合計厚さの変動幅が、該合計厚さの算術平均値の±50%以内であることを特徴とするアルミニウム複合材。
- 前記樹脂層の前記多孔性アルミニウム酸化皮膜層表面からの浸透深さが該多孔性アルミニウム酸化皮膜層の厚さの10%以上である、請求項1に記載のアルミニウム複合材。
- 請求項1又は2に記載のアルミニウム複合材の製造方法であって、アルミニウム材の電極と対電極とを用い、pH9〜13で液温35〜80℃であり、かつ、溶存アルミニウム濃度が5ppm以上1000ppm以下のアルカリ性水溶液を電解溶液とし、周波数20〜100Hz、電流密度4〜50A/dm2及び電解時間5〜60秒間の条件で交流電解処理することにより、前記対電極に対向するアルミニウム材表面に酸化皮膜を形成し、該酸化皮膜側においてアルミニウム材と接合する樹脂層を形成することを特徴とするアルミニウム複合材の製造方法。
- 前記対電極が黒鉛電極である、請求項3に記載のアルミニウム複合材の製造方法。
- 前記アルミニウム材の電極と前記対電極が共に平板状である、請求項3又は4に記載のアルミニウム複合材の製造方法。
- 前記アルミニウム材の酸化皮膜側に、5g/10分以上のメルトマスフローレートで1MPa以上の圧力にて樹脂層を形成して接合する、請求項3〜5のいずれか一項に記載のアルミニウム複合材の製造方法。
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