JP2014028454A - アルミニウム複合材及びその製造方法 - Google Patents

アルミニウム複合材及びその製造方法 Download PDF

Info

Publication number
JP2014028454A
JP2014028454A JP2012169387A JP2012169387A JP2014028454A JP 2014028454 A JP2014028454 A JP 2014028454A JP 2012169387 A JP2012169387 A JP 2012169387A JP 2012169387 A JP2012169387 A JP 2012169387A JP 2014028454 A JP2014028454 A JP 2014028454A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
oxide film
aluminum
film layer
aluminum oxide
resin
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Granted
Application number
JP2012169387A
Other languages
English (en)
Other versions
JP6041566B2 (ja
Inventor
Shinichi Hasegawa
長谷川真一
Sachio Motokawa
本川幸翁
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
UACJ Corp
Original Assignee
UACJ Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by UACJ Corp filed Critical UACJ Corp
Priority to JP2012169387A priority Critical patent/JP6041566B2/ja
Publication of JP2014028454A publication Critical patent/JP2014028454A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP6041566B2 publication Critical patent/JP6041566B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Images

Landscapes

  • Laminated Bodies (AREA)
  • Injection Moulding Of Plastics Or The Like (AREA)
  • Other Surface Treatments For Metallic Materials (AREA)

Abstract

【課題】接合強度が高く、かつ密着性に優れたアルミニウム複合材を提供する。
【解決手段】アルミニウム材と樹脂層とを接合した複合材であって、前記樹脂層と接する前記アルミニウム材表面に酸化皮膜が形成され、該酸化皮膜は表面側に形成された厚さ20〜500nmの多孔性アルミニウム酸化皮膜層と素地側に形成された厚さ3〜30nmのバリア型アルミニウム酸化皮膜層とを具備し、前記多孔性アルミニウム酸化皮膜層には直径5〜30nmの小孔が形成されており、該アルミニウム材表面全体における前記多孔性アルミニウム酸化皮膜層と前記バリア型アルミニウム酸化皮膜層との合計厚さの変動幅が、該合計厚さの算術平均値の±50%以内であることを特徴とするアルミニウム複合材、ならびに、その製造方法。
【選択図】図1

Description

本発明は、アルミニウム材と樹脂層が複合化されたアルミニウム複合材及びその製造方法に関し、詳細には、表面に均一なアルミニウム酸化皮膜を有する表面処理アルミニウム材に樹脂層を接合した接合強度と密着性に優れたアルミニウム複合材及びその製造方法に関する。
純アルミニウム材又はアルミニウム合金材(以下、「アルミニウム材」と記す)は、軽量で適度な機械的特性を有し、かつ、美感、成形加工性、耐食性等に優れた特徴を有しているため、各種容器類、構造材、機械部品等に広く使われている。これらのアルミニウム材は、そのまま用いられることもある一方、各種表面処理を施すことで、耐食性、耐摩耗性、樹脂密着性、親水性、撥水性、抗菌性、意匠性、赤外放射性、高反射性等の機能を付加及び向上させて使用されることも多い。さらに近年になって、更なる軽量化や高付加価値化を志向し、各種樹脂との複合材として用いられる機会も多くなっている。
アルミニウム材と各種樹脂の接合においては、従来技術により提供される各種接着剤や両面テープ等を用いて両者を貼り合せる方法が一般的である。しかしながら、これらの接着媒体による接合方法では、成形加工等の際にアルミニウム材と樹脂の接合位置にずれを生じ寸法精度が低下する不具合や、例えば自動車のエンジンルーム内などの高温・多湿環境に置かれた場合に、接着層が劣化して複合材自体の寿命が著しく短くなる問題点もあった。
こうした問題に対応するため、近年、アルミニウム材表面に特殊な処理を施し、そこに接着剤等を用いずに直接樹脂を接合させる技術が提案されている。例えば特許文献1では、陽極酸化法により形成された数平均内径10〜80nmである孔の開口部で表面を覆われたアルミニウム合金部品と、前記アルミニウム合金部品に射出成形で固着されたポリフェニレンスルフィド70〜99重量%及びポリオレフィン系樹脂1〜30重量%を含む樹脂分組成の樹脂組成物部品とからなり、当該樹脂組成物部品の一部が前記孔に侵入していることを特徴とする複合体が提案されている。
また特許文献2では、(a)アルミニウム素材を燐酸又は水酸化ナトリウムの電解浴に浸漬し、直流電気分解によりその表面を陽極酸化処理して表面に開口する全ての孔の少なくとも85%が直径25nm〜90nmである孔を無数に形成して成る陽極酸化皮膜を形成せしめること、(b)次いで、該陽極酸化皮膜を形成されたアルミニウム材の一部又は全部を金型内の所定形状のキャビティー内に配置し、キャビティー内に露出する該陽極酸化皮膜面の一部又は全面に対し溶融合成樹脂を射出して該陽極酸化皮膜の表面に開口する無数の該孔内に該溶融合成樹脂の一部を侵入せしめると共に該キャビティー内の溶融合成樹脂を加圧充填成形することを特徴とするアルミニウム材と合成樹脂成形体の複合品の製造法が提案されている。
特許第4527196号 特許第4541153号
しかしながら、このような従来技術には、以下のような問題点があった。すなわち、これらの技術における直接接合の原理は、アルミニウム材の表面に微小な凹凸又は微小な孔を形成し、そこに樹脂を接触させることによるアンカー効果によって接合強度を得るものである。このような接合方法では、ある程度以上の面積を有するアルミニウム材の表面に、微小な凹凸又は微小な孔を均一に形成させることは非常に困難であり、部位によって表面処理にムラが生じ、接合強度や密着性にバラツキが発生する場合があった。その結果、微小な凹凸や孔が疎な部分に応力が集中して接合強度が損なわれる不具合や、この部分における密着性(気密性や水密性など)も損なわれて、ガスや液体が漏れ出る不具合が生じ易かった。
以上の従来技術に鑑み、本発明は、接合強度と密着性に優れたアルミニウム複合材とその製造方法の提供を目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決するために検討を重ねた結果、アルミニウム材表面全体に均一で、かつ、樹脂層との接合強度と密着性に優れた表面処理を行うには、アルカリ交流電解処理を用いることが最善であること、またその際には、電解処理液に含有される溶存アルミニウム濃度を制御することが極めて有効であることを見出した。更に、このようにして得られる表面処理アルミニウム材の多孔性アルミニウム酸化皮膜層に樹脂を浸透させることにより、接着剤等を使用せずとも接合強度が高く、かつ、気密性や水密性といった密着性に優れたアルミニウム複合材が得られることを見出した。
すなわち、本発明は請求項1において、アルミニウム材と樹脂層とを接合した複合材であって、前記樹脂層と接する前記アルミニウム材表面に酸化皮膜が形成され、該酸化皮膜は表面側に形成された厚さ20〜500nmの多孔性アルミニウム酸化皮膜層と素地側に形成された厚さ3〜30nmのバリア型アルミニウム酸化皮膜層とを具備し、前記多孔性アルミニウム酸化皮膜層には直径5〜30nmの小孔が形成されており、該アルミニウム材表面全体における前記多孔性アルミニウム酸化皮膜層と前記バリア型アルミニウム酸化皮膜層との合計厚さの変動幅が、該合計厚さの算術平均値の±50%以内であることを特徴とするアルミニウム複合材とした。
本発明は請求項2では請求項1において、前記樹脂層の前記多孔性アルミニウム酸化皮膜層表面からの浸透深さを該多孔性アルミニウム酸化皮膜層の厚さの10%以上とした。
また、本発明は請求項3において、請求項1又は2に記載のアルミニウム複合材の製造方法であって、アルミニウム材の電極と対電極とを用い、pH9〜13で液温35〜80℃であり、かつ、溶存アルミニウム濃度が5ppm以上1000ppm以下のアルカリ性水溶液を電解溶液とし、周波数20〜100Hz、電流密度4〜50A/dm及び電解時間5〜60秒間の条件で交流電解処理することにより、前記対電極に対向するアルミニウム材表面に酸化皮膜を形成し、該酸化皮膜側においてアルミニウム材と接合する樹脂層を形成することを特徴とするアルミニウム複合材の製造方法とした。
また、本発明は請求項4では請求項3において、前記対電極を黒鉛電極とした。
また、本発明は請求項5では請求項3又は4において、前記アルミニウム材の電極と前記対電極を共に平板状とした。
更に、本発明は請求項6では請求項3〜5のいずれか一項において、前記アルミニウム材の酸化皮膜側に、5g/10分以上のメルトマスフローレートで1MPa以上の圧力にて樹脂層を形成して接合するものとした。
本発明により、均一で樹脂層との接合強度と密着性に優れた表面処理アルミニウム材の多孔性アルミニウム酸化皮膜層に樹脂を浸透させてアルミニウム材と樹脂層を複合化することで、接合強度が高く、かつ、密着性に優れたアルミニウム複合材を提供することができる。
本発明に係るアルミニウム複合材の模式図である。 本発明において用いるアルミニウム材を交流電解処理する説明図である。
以下に、本発明の詳細を順に説明する。図1に示すように、本発明に係るアルミニウム複合材1は、表面処理アルミニウム材2とこれに接合した樹脂層3からなる。表面処理アルミニウム材2の樹脂層3側の表面には酸化皮膜4が形成されており、この酸化皮膜4は表面側(図中の上側)に形成された多孔性アルミニウム酸化皮膜層41と素地側(図中の下側)に形成されたバリア型アルミニウム酸化皮膜層42とから成る。そして、多孔性アルミニウム酸化皮膜層41には小孔5が形成されている。
樹脂層3は、多孔性アルミニウム酸化皮膜層41上において硬化した部分と、多孔性アルミニウム酸化皮膜層41の表面から深さ方向に浸透して硬化した浸透部分とを有する。浸透部分は、多孔性アルミニウム酸化皮膜層41内の小孔5内及び小孔でない部分に形成されるが、その大部分は小孔5内に形成される。浸透部分の深さ方向における厚さは、多孔性アルミニウム酸化皮膜層41の厚さの10%以上であるのが好ましい。
A.アルミニウム材
本発明に用いるアルミニウム材としては、純アルミニウム又はアルミニウム合金が用いられる。アルミニウム合金の成分には特に制限無く、JISに規定される合金をはじめとする各種合金を使用することができる。形状としては、平板状のものが好適に用いられる。用途に応じて、板厚を適宜選択することができるが、軽量化と成形性の観点から0.05〜2.0mmが好ましく、0.1〜1.0mmが更に好ましい。
B.酸化皮膜
本発明に用いるアルミニウム材の表面には、表面側に形成された多孔性アルミニウム酸化皮膜層と素地側に形成されたバリア型アルミニウム酸化皮膜層とが設けられている。すなわち、アルミニウム材表面には、多孔性アルミニウム酸化皮膜層とバリア型アルミニウム酸化皮膜層の二層によって構成される酸化皮膜が設けられている。多孔性アルミニウム酸化皮膜層が樹脂層に対する強力な接合強度や密着性を発揮する一方で、バリア型アルミニウム酸化皮膜層によって、酸化皮膜層全体とアルミニウム素地が強固に結合される。
B−1.多孔性アルミニウム酸化皮膜層
多孔性アルミニウム酸化皮膜層の厚さは、20〜500nmである。20nm未満では厚さが十分でないため、後述する小孔構造の形成が不十分になり易く樹脂層に対する接合強度や密着力が低下する。一方、500nmを超えると、多孔性アルミニウム酸化皮膜層自体が凝集破壊し易くなり樹脂層に対する接合強度や密着力が低下する。
図1に示すように、多孔性アルミニウム酸化皮膜層41は、その表面から深さ方向に向かう小孔5を備える。小孔の直径は5〜30nmであり、好ましくは10〜20nmである。この小孔は、樹脂層とアルミニウム酸化皮膜との接触面積を増大させ、その接合強度や密着力を増大させる効果を発揮するものである。小孔の直径が5nm未満であると、接触面積が不足するため樹脂層に対する十分な接合強度や密着力が得られない。一方、小孔の直径が30nmを超えると、多孔性アルミニウム酸化皮膜層全体が脆くなって凝集破壊を生じ樹脂層に対する接合強度や密着力が低下する。
多孔性アルミニウム酸化皮膜層の表面積に対する小孔の全孔面積の比については、特に制限されるものではない。多孔性アルミニウム酸化皮膜層の見かけ上の表面積(表面の微小な凹凸等を考慮せず、長さと幅の乗算で表される面積)に対する小孔の全孔面積の比として、25〜75%が好ましい。25%未満では、接触面積が不足して樹脂層に対する十分な接合強度や密着力が得られない場合がある。一方、75%を超えると、多孔性アルミニウム酸化皮膜層全体が脆くなって凝集破壊を生じ樹脂層に対する接合強度や密着力が低下する場合がある。
B−2.バリア型アルミニウム酸化皮膜層
バリア型アルミニウム酸化皮膜層の厚さは、3〜30nmである。3nm未満では、介在層として多孔性アルミニウム酸化皮膜層とアルミニウム素地との結合に十分な結合力を付与することができず、特に、高温・多湿等の過酷環境における結合力が不十分となる。一方、30nmを超えると、その緻密性ゆえにバリア型アルミニウム酸化皮膜層が凝集破壊し易くなり、かえってアルミニウム素地に対する酸化皮膜層全体の結合強度や密着力が低下する。
B−3.酸化皮膜の全体厚さの変動幅
酸化皮膜全体の厚さ、すなわち、B−1に記載の多孔性アルミニウム酸化皮膜層とB−2に記載のバリア型アルミニウム酸化皮膜層との厚さの合計は、アルミニウム材のいかなる場所で測定しても、その変動幅が±50%以内でなければならない。すなわち、アルミニウム材表面における任意の複数箇所(10箇所以上が望ましく、これら各箇所においても10点以上の測定点とするのが望ましい)で測定した酸化皮膜全体厚さの平均をT(nm)とした場合、これら複数測定箇所の全てにおける酸化皮膜全体厚さが(0.5×T)〜(1.5×T)の範囲にある必要がある。(0.5×T)未満の箇所が存在すると、その箇所の酸化皮膜がその周囲より薄くなる。そうすると、この薄い箇所では、接合すべき樹脂層と酸化皮膜との間に隙間が生じ易くなり、十分な接触面積を確保できずに樹脂層に対する接合強度や密着力が低下する。
一方、(1.5×T)を超える箇所が存在すると、その箇所の酸化皮膜が周囲の周囲より厚くなる。そうすると、この厚い箇所では、密着すべき樹脂層からの応力が集中し、酸化皮膜での凝集破壊を誘発して樹脂層に対する接合強度や密着力が低下する。
なお、上記のような酸化皮膜の全体厚さが薄い箇所や厚い箇所では、周囲と比較して光学的特性が異なるため、茶褐色や白濁色といった色調の変化として目視可能な場合がある。
C.樹脂層
本発明において表面処理アルミニウム材と接合する樹脂には、従来技術に基づく各種の熱可塑性及び熱硬化性樹脂を用いることができる。すなわち熱可塑性樹脂においては、熱を加えて流動状態とした樹脂を多孔性アルミニウム酸化皮膜層に接触・浸透させ、冷却固化することにより樹脂層が形成される。熱可塑性樹脂としては、例えばポリオレフィン(ポリエチレン、ポリプロピレン等)、ポリ塩化ビニル、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等)、ポリアミド、ポリフェニレンスルファイド、芳香族ポリエーテルケトン(ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルケトン等)、ポリスチレン、各種フッ素樹脂(ポリテトラフルオロエチレン、ポリクロロトリフルオロエチレン等)、アクリル樹脂(ポリメタクリル酸メチル等)、ABS樹脂、ポリカーボネート、熱可塑性ポリイミド等を用いることができる。
また熱硬化性樹脂においては、硬化前の流動性を有する状態において多孔性アルミニウム酸化皮膜層に接触・浸透させ、その後に硬化させればよい。熱硬化性樹脂としては、例えばフェノール樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、ポリウレタン、熱硬化性ポリイミド等を用いることができる。
なお、上記熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂を単一で用いてもよく、複数種の熱可塑性樹脂又は複数種の熱硬化性樹脂を混合したポリマーアロイとして用いてもよい。また、各種フィラーを添加することで、樹脂の強度や熱膨張率等の物性を改善してもよい。具体的には、ガラス繊維、炭素繊維、アラミド繊維等の各種繊維や、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、シリカ、タルク、ガラス、粘土等の公知物質を用いることができる。
上記樹脂は、アルミニウム酸化皮膜における多孔性アルミニウム酸化皮膜層に浸透、硬化して樹脂層を形成することにより、アルミニウム材との接触面積の増大とともに、微細なアンカー効果を発揮するため、アルミニウム材に対して極めて強い接合力を発揮する。その際の浸透深さは、多孔性アルミニウム酸化皮膜層厚さの10%以上であるのが好ましい。この浸透深さが多孔性アルミニウム酸化皮膜層厚さの10%未満である場合、接触面積及びアンカー効果が不足するため、アルミニウム材に対する十分な接合強度が得られない場合がある。また、優れた密着性を安定して得られる観点からこの浸透深さは30%以上がより好ましく、50%以上がさらに好ましい。なお、浸透深さの割合の上限は100%である。緻密なバリア型酸化皮膜層内には樹脂が浸透し難いためである。
D.製造方法
D−1.アルミニウム酸化皮膜
上記Bに記載の条件を満たした酸化皮膜を表面に備えた表面処理アルミニウム材を製造するための一つの方法を、図2に示す。表面処理されるべきアルミニウム材6の電極と対電極7とを用い、pH9〜13で液温35〜80℃であり、かつ、溶存アルミニウム濃度が5ppm以上1000ppm以下のアルカリ性水溶液を電解溶液9とし、周波数20〜100Hz、電流密度4〜50A/dm及び電解時間5〜60秒間の条件で、交流電源8を用いて交流電解処理することにより、対電極に対向するアルミニウム材表面に酸化皮膜を形成するものである。
交流電解処理工程において、電解溶液として用いるアルカリ水溶液は、りん酸ナトリウム、りん酸水素カリウム、ピロりん酸ナトリウム、ピロりん酸カリウム及びメタりん酸ナトリウム等のりん酸塩や;水酸化ナトリウム及び水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物や;炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム等の炭酸塩や;水酸化アンモニウム;或いは、これらの混合物の水溶液を用いることができる。後述するように電解溶液のpHを特定の範囲に保つ必要があることから、バッファー効果の期待できるりん酸塩系物質を含有するアルカリ水溶液を用いるのが好ましい。このようなアルカリ成分の濃度は、電解溶液のpHが所望の値になるように調整されるが、通常、1×10−4〜1モル/リットルである。なお、これらのアルカリ性水溶液には、汚れ成分に対する除去能力の向上のために界面活性剤を添加してもよい。
電解溶液のpHは9〜13とする必要があり、9.5〜12とするのが好ましい。pHが9未満の場合には、電解溶液のアルカリエッチング力が不足するため多孔性アルミニウム酸化皮膜層の多孔質構造が不完全となる。一方、pHが13を超えると、アルカリエッチング力が過剰になるため多孔性アルミニウム酸化皮膜層が成長し難くなり、更にバリア型アルミニウム酸化皮膜層の形成も阻害される。
電解溶液温度は35〜80℃とする必要があり、40〜70℃とするのが好ましい。電解溶液温度が35℃未満では、アルカリエッチング力が不足するため多孔性アルミニウム酸化皮膜層の多孔質構造が不完全となる。一方、80℃を超えるとアルカリエッチング力が過剰になるため、多孔性アルミニウム酸化皮膜層及びバリア型アルミニウム酸化皮膜層ともに成長が阻害される。
電解溶液に含有される溶存アルミニウム濃度は、5ppm以上1000ppm以下とする必要がある。溶存アルミニウム濃度が5ppm未満の場合は、電解反応初期における酸化皮膜の形成反応が急激に生起するため、処理工程のバラツキ(アルミニウム材表面の汚れ状態やアルミニウム材の取り付け状態など)の影響を受け易い。その結果、局部的に厚い酸化皮膜が形成されることになる。一方、溶存アルミニウム濃度が1000ppmを超える場合は、電解溶液の粘度が増大して電解工程においてアルミニウム材表面付近の均一な対流が妨げられるのと同時に、溶存アルミニウムが皮膜形成を抑制する方向に作用する。その結果、局部的に薄い酸化皮膜が形成されることになる。
アルカリ交流電解においては、多孔性アルミニウム酸化皮膜層とバリア型アルミニウム酸化皮膜層を含めた酸化皮膜全体の厚さは、電気量、すなわち電流密度と電解時間の積によって制御され、基本的に電気量が多いほど酸化膜全体の厚さが増加する。このような観点から、多孔性アルミニウム酸化皮膜層及びバリア型アルミニウム酸化皮膜層の交流電解条件は以下の通りとする。
用いる周波数は20〜100Hzである。20Hz未満では、電気分解としては直流的要素が高まる結果、多孔性アルミニウム酸化皮膜層の多孔質構造の形成が進行せず、緻密構造となってしまう。一方、100Hzを超えると、陽極と陰極の反転が速すぎるため、酸化皮膜全体の形成が極端に遅くなり、多孔性アルミニウム酸化皮膜層及びバリア型アルミニウム酸化皮膜層ともに、所定の厚さを得るには極めて長時間を要することになる。
電流密度は4〜50A/dmとする必要がある。電流密度が4A/dm未満では、バリア型アルミニウム酸化皮膜層のみが優先的に形成されるために多孔性アルミニウム酸化皮膜層が得られない。一方、50A/dmを超えると、電流が過大になるため多孔性アルミニウム酸化皮膜層及びバリア型アルミニウム酸化皮膜層の厚さ制御が困難となり処理ムラが起こり易い。
電解時間は5〜60秒とする必要がある。5秒未満の処理時間では、多孔性アルミニウム酸化皮膜層及びバリア型アルミニウム酸化皮膜層の形成が急激過ぎるため、いずれの酸化皮膜層も十分に形成されず、不定形のアルミニウム酸化物から構成される酸化皮膜となるためである。一方、60秒を超えると、多孔性アルミニウム酸化皮膜層及びバリア型アルミニウム酸化皮膜層が厚くなり過ぎたり再溶解するおそれがあるだけでなく、生産性も低下する。
交流電解処理に使用する一対の電極のうち一方の電極は、電解処理されるべきアルミニウム材である。他方の対電極としては、電解溶液のアルカリ成分や温度に対して劣化せず、導電性に優れ、更に、それ自身が電気化学的反応を起こさない材質のものを使用する必要がある。このような点から、対電極としては黒鉛電極が好適に用いられる。これは、黒鉛電極が化学的に安定であり、かつ、安価で入手が容易であることに加え、黒鉛電極に存在する多くの気孔の作用により交流電解工程において電気力線が適度に拡散するため、多孔性アルミニウム酸化皮膜層及びバリア型アルミニウム酸化皮膜層が共により均一になり易いためである。なお、黒鉛電極の他に、チタン電極を用いてもよい。
本発明においては、電解処理されるべきアルミニウム材及び対電極には共に平板状のものを用い、対向するアルミニウム材と対極の面同士の縦と横の寸法をほぼ同一、または対電極をアルミニウム材より大きいものとして、両電極を静止状態で電解操作を行なうのが好ましい。この場合、対電極に対向するアルミニウム材表面に酸化皮膜が形成される。ここで、対電極に対向していない他方の表面にも酸化皮膜を形成するには、一方の表面に酸化皮膜を形成して交流電解処理を一旦終了し、次いで、他の表面を対電極に対向するように配置して同様に交流電解処理を行えばよい。
また、アルミニウム材の形状が平板状以外の棒状や角材の場合においても、電解工程で対電極に対向していなかった表面を対電極に対向するように配置し直して電解工程を繰り返すことにより、所望の表面に酸化皮膜を形成することができる。
本発明における多孔性アルミニウム酸化皮膜層とバリア型アルミニウム酸化皮膜層の構造観察と厚さの測定には、透過型電子顕微鏡(TEM)による断面観察が好適に用いられる。具体的には、多孔性アルミニウム酸化皮膜層及びバリア型アルミニウム酸化皮膜層の厚さ、ならびに、多孔性アルミニウム酸化皮膜層の小孔の直径は、ウルトラミクロトームにより薄片試料を作製し、TEM観察することによって測定できる。
ところで、従来技術において人為的にアルミニウム酸化皮膜層を形成させる方法として、陽極酸化処理(いわゆるアルマイト処理)が挙げられる。これは、主に酸性電解溶液を用いるとともに、被処理アルミニウム材を陽極として直流電気分解する手法であるが、この手法を用いる限りにおいては、本発明の要請事項の達成は極めて困難である。すなわち、アルマイト処理における酸化皮膜層厚さは一般的には数μm前後であり、本発明における多孔性アルミニウム酸化皮膜層(20nm〜500nm)およびバリア型アルミニウム酸化皮膜層(3〜30nm)のような薄い膜厚の制御は困難である。加えて、アルニウム素地との界面にバリア型アルミニウム酸化皮膜層、その上に多孔性アルミニウム酸化皮膜層を形成することは不可能に近い。従って、本発明を実施するにあたっては、上述の方法が最善である。
D−2.複合化
本発明に係るアルミニウム複合材は、上記Bに記載の表面処理アルミニウム材の酸化皮膜側に上記Cに記載の樹脂を用いて樹脂層を形成することにより、表面処理アルミニウム材に樹脂層を接合させることによって製造される。
このような樹脂層の形成方法としては、射出成形法を用いるのが好ましい。射出成形法は、流動化させた樹脂に射出圧を加えて射出金型に充填し、金型内で樹脂を硬化させた後に取り出す成形方法であり、形状の自由度、精度及び生産性に優れ、また溶剤を用いない利点もある。この金型内に、均一で、樹脂層との接合強度と密着性に優れた酸化皮膜を有する表面処理アルミニウム材を挿入し、アルミニウム材の酸化皮膜に対して射出成形を行うことにより、多孔性アルミニウム酸化皮膜層と樹脂層が強固に接合した複合材を得ることができる。
樹脂層を形成する樹脂としては、5g/10分以上のメルトマスフローレートで1MPa以上の圧力の流動樹脂を用いるのが好ましい。上述のように、多孔性アルミニウム酸化皮膜層への樹脂の浸透深さを、多孔性アルミニウム酸化皮膜層厚さの10%以上とするのが好ましく、そのためには、5g/10分以上のメルトマスフローレートで1MPa以上の圧力の流動樹脂を用いるのが好ましい。なお、メルトマスフローレートは、樹脂の流動性を簡易的に評価するための指標として用いられる数値であり、JIS−K7210に準拠して測定される。
メルトマスフローレートが5g/10分未満の場合や、圧力が1MPa未満の場合には、多孔性アルミニウム酸化皮膜層に対する流動樹脂の浸透が不十分となり所望の浸透深さに満たない場合があり、アルミニウム材に対する十分な結合強度や密着性が得られない場合がある。メルトマスフローレートについては、生産性の点から60g/10分以下とするのが更に好ましい。また、圧力については、生産設備の能力の点から90MPa以下とするのが更に好ましい。
射出成形を用いる好適な方法は、メルトマスフローレートが5g/10分以上の高い流動性を有する樹脂を、1MPa以上の圧力でアルミニウム材の酸化皮膜に対して射出成形するものである。このように、酸化皮膜に対して流動性の高い樹脂を高圧で押し付けることにより、多孔性アルミニウム酸化皮膜層への樹脂の浸透深さを多孔性アルミニウム酸化皮膜層厚さの10%以上とすることができ、接合強度と密着性に優れたアルミニウム複合材が得られる。
なお、樹脂として熱可塑性樹脂を用いる場合には、アルミニウム材表面の温度が、樹脂のガラス転移点又は融点のいずれか低い方の温度を上回っていることが望ましい。これは、アルミニウム材表面の温度を高めることによって、アルミニウム材に接触した後の樹脂の流動性が維持され、多孔性アルミニウム酸化皮膜層への浸透を助長するためである。例えば、射出成形法を用いる場合には、射出成形金型内に表面処理アルミニウム材を挿入し、金型全体の温度を高めるものである。
本発明に係るアルミニウム複合材は、(1)アルミニウム材の一方の表面に酸化皮膜を設け、この酸化皮膜側において樹脂層を形成してアルミニウム材と接合する形態;(2)アルミニウム材の両方の表面に酸化皮膜を設け、これら酸化皮膜の各側において樹脂層をそれぞれ形成してアルミニウム材と接合する形態;(3)一方の表面に酸化皮膜を設けた二つのアルミニウム材を酸化皮膜が対向するようにし、それぞれの酸化皮膜に結合する樹脂層をアルミニウム材間に形成した形態;(4)両方の表面に酸化皮膜を設けたアルミニウム材と樹脂層とを交互に積層し、酸化皮膜と樹脂層を結合した形態;を含む。
以下、実施例及び比較例に基づいて、本発明の好適な実施の形態を具体的に説明する。
実施例1〜21及び比較例1〜12
アルミニウム材として、縦200mm×横400mm×板厚1.0mmのJIS5052−H34合金板を使用した。このアルミニウム合金板を一方の電極に用い、対電極には縦300mm×横500mm×板厚2.0mmの平板形状を有する黒鉛板又はチタン板を用いた。アルミニウム合金板の片面を対電極に対面させ、この対面した片面表層に、表面側の多孔性アルミニウム酸化皮膜層と素地側のバリア型アルミニウム酸化皮膜層が形成されるように、両電極を配置した。ピロりん酸ナトリウムを主成分とするアルカリ水溶液を、電解溶液として用いた。溶存アルミニウム濃度はICP発光分析装置(島津製作所製)を用いて測定し、所定の濃度とした。電解溶液のアルカリ成分濃度は、0.5モル/リットルとするとともに、塩酸及び水酸化ナトリウム水溶液(いずれも濃度0.1モル/リットル)によってpHの調整を行なった。表1に示す電解条件にて、交流電解処理を実施して多孔性アルミニウム酸化皮膜層及びバリア型アルミニウム酸化皮膜層を形成した。
Figure 2014028454
以上のようにして作製した供試材に対し、TEMにより断面観察を実施した。具体的には、多孔性アルミニウム酸化皮膜層とバリア型アルミニウム酸化皮膜層の厚さ、ならびに、多孔性アルミニウム酸化皮膜層の小孔の直径を測定するために、ウルトラミクロトームを用いて供試材から断面観察用薄片試料を作製した。次いで、この薄片試料において観察視野(1μm×1μm)中の任意の10点を選択してTEM断面観察により、多孔性アルミニウム酸化皮膜層とバリア型アルミニウム酸化皮膜層の厚さ、ならびに、多孔性アルミニウム酸化皮膜層の小孔の直径を各点で測定した(第1測定)。これらの厚さと直径については、10点の測定値の算術平均値を表2の第1測定に示す。
Figure 2014028454
次いで、供試材全体の表面における多孔性アルミニウム酸化皮膜とバリア型アルミニウム酸化皮膜の合計厚さの変動を調べるために第2測定を行った。この第2測定では、第1測定に供した供試材から、第1測定で作製した薄片試料とは別個に、かつ、同様にして、ウルトラミクロトームにより薄片試料を更に9個作製した。そして、これら9個の薄片試料の各々についても第1測定と同様に、多孔性アルミニウム酸化皮膜層とバリア型アルミニウム酸化皮膜層の厚さを10点測定した。そして、全部で10個の上記薄片試料における全100点の多孔性アルミニウム酸化皮膜層とバリア型アルミニウム酸化皮膜層の厚さの測定結果から、各点における多孔性アルミニウム酸化皮膜層とバリア型アルミニウム酸化皮膜層の厚さを足し算して合計厚さを求めて各点における酸化皮膜厚さとした。このようにして求めた100点の酸化皮膜厚さにおける最大値、最小値、ならびに、算術平均値を表2の第2測定に示した。更に、これら100点の酸化皮膜厚さの変動幅が算術平均値の±50%以内にあるか否かについても調べた。具体的には、算術平均値をT(nm)とした場合に、最大値及び最小値を含めた全ての合計厚さが(0.5×T)〜(1.5×T)の範囲にある場合を合格(○)とし、範囲にない場合を不合格(×)として、表2の第2測定に示した。
上記供試材を射出成形金型内に挿入し、表3に示す樹脂を、表4に示す条件にて日本製鋼所社製110ton射出成形機を用いて射出成形した。表3には、樹脂の流動状態を示すメルトマスフローレート(MFR)とその測定条件も示す。メルトマスフローレート(MFR)は東洋精機製メルトインデックサを用いて測定した。ここで、測定条件が例えば300℃/12Nとは、JIS−K7210に準拠し、300℃の温度にて12Nの荷重をかけたことを意味する。
Figure 2014028454
Figure 2014028454
射出成形の形状として、各水準につき2種類を作製した。すなわち、後述する接合強度試験用として、幅25mm、長さ100mmに切断した供試材の表面全体に厚さ1mmとなる樹脂を射出成形したもの、ならびに、後述する密着性試験用として、150mm角に切断した供試材の表面に対し、外形100mm、内径98mm、高さ100mmの円筒状となるように樹脂を射出成形したものを作製した。また、各水準の任意位置を3箇所切り出し、上述の酸化皮膜観察と同様の手順で、断面TEM観察により多孔性アルミニウム酸化皮膜層内に浸透した樹脂層の浸透深さを測定した。3箇所測定の平均浸透深さを、多孔性アルミニウム酸化皮膜層厚さに対する割合(%)として求めた。結果を表4に示す。
このようにして得られた試験サンプルに対し、以下のようにして接合強度、ならびに、密着性(水密性)を評価した。
〔接合強度評価〕
上記のように作製した幅25mm、長さ100mm、厚さ2mm(表面処理アルミニウム材:1mm、樹脂層:1mm)のサンプルにおいて、長さ方向の一端から長さ方向に沿った45mmと55mmの位置に印をつけ、45mm位置では樹脂に対してアルミニウム材に達する切れ目を幅方向に沿って入れ、一方55mm位置ではアルミニウム材に対して樹脂に達する切れ目を幅方向に沿って入れた。そして、サンプルの長さ方向の両端を引張試験機により100mm/分の速度にて長さ方向に沿って反対向きに引張り、その荷重(せん断応力に換算)と剥離状態によって下記の基準で評価した。なお、せん断試験用サンプルは同じ供試材から10個の試験片を作製して、それぞれについて以下の基準で評価した。
○:せん断応力が20N/mm以上で、かつ、樹脂層の破断又は樹脂層の凝集破壊が見られた状態
△:せん断応力が20N/mm以上であるものの、アルミニウム材と樹脂層が界面剥離した状態
×:せん断応力が20N/mm未満で、かつ、アルミニウム材と樹脂層が界面剥離した状態
結果を表5に示す。同表には、10個の試験片のうちの上記○、△、×の個数をそれぞれ示すが、全てが○の場合を合格、それ以外を不合格と判定した。
Figure 2014028454
〔密着性評価〕
上記のように作製したサンプルは、樹脂製円筒の一方の開口部分を板状のアルミニウム材で閉じた形状を有する。このサンプルを板状アルミニウム材が下になるように水平な台に設置し、樹脂製円筒の内部に脱イオン水を500ml注入した。市販の樹脂製ラップフィルムで開口部分を覆い、室温にて7日間保持し、サンプルの接合部位からの水漏れの有無を目視検査した。水漏れが全くなかった場合を○、一箇所でも水漏れが確認されたものを×として判定した。結果を表5に示す。
実施例1〜21ではいずれも、本発明の規定を満たすので、接合強度及び密着性の評価が合格判定であった。これに対して比較例1〜12では、下記の理由により不合格判定であった。
比較例1では、交流電解処理における電解溶液のpHが低過ぎたため、アルカリエッチング力が不足した。そのため、多孔性アルミニウム酸化皮膜層の小孔直径が不足した結果、接合強度及び密着性が不合格であった。
比較例2では、交流電解処理における電解溶液のpHが高過ぎたため、アルカリエッチング力が過剰になった。そのため、多孔性アルミニウム酸化皮膜層及びバリア型アルミニウム酸化皮膜層の厚さが不足し、また多孔性アルミニウム皮膜の小孔直径が過大となり、酸化皮膜合計厚さの変動幅も大きくなった結果、接合強度及び密着性が不合格であった。
比較例3では、交流電解処理における電解溶液の温度が低過ぎたため、アルカリエッチング力が不足した。そのため、多孔性アルミニウム酸化皮膜層の多孔質構造が不完全となり小孔直径が不足した結果、接合強度及び密着性が不合格であった。
比較例4では、交流電解処理における電解溶液の温度が高過ぎたため、アルカリエッチング力が過剰になった。そのため、多孔性アルミニウム皮膜層及びバリア型アルミニウム酸化皮膜層の厚さが不足し、酸化皮膜合計厚さの変動幅も大きくなった結果、接合強度及び密着性が不合格であった。
比較例5では、交流電解処理における電解溶液が完全に新浴であり、溶存アルミニウムが存在していなかったので、電解反応初期における酸化皮膜の形成反応が急激に生起した。そのため、部分的に酸化皮膜が厚く形成された場所が生じ、酸化皮膜合計厚さの変動幅が大きくなった結果、接合強度及び密着性が不合格であった。
比較例6では、交流電解処理における電解溶液の溶存アルミニウム濃度が高過ぎたため、局部的に薄い酸化皮膜が形成された。そのため、酸化皮膜合計厚さの変動幅が大きくなった結果、接合強度及び密着性が不合格であった。
比較例7では、交流電解処理における周波数が低過ぎたため、電気的状態が直流電解に近づいた。そのため、多孔性アルミニウム酸化皮膜層の形成が進行せず、バリア型アルミニウム酸化皮膜層の厚さが過大となった。そのため、接合強度及び密着性が不合格であった。
比較例8では、交流電解処理における周波数が高過ぎたため、陽極と陰極の反転が速過ぎた。そのため、多孔性アルミニウム酸化皮膜層の形成が極端に遅くなりその厚さが不足した結果、接合強度及び密着性が不合格であった。
比較例9では、交流電解処理における電流密度が低過ぎたため、バリア型アルミニウム酸化皮膜層が優先的に形成された。そのため、多孔性アルミニウム酸化皮膜層の厚さが不足した結果、接合強度及び密着性が不合格であった。
比較例10では、交流電解処理における電流密度が高過ぎたため、電解処理において電解溶液中にスパークが発生する等、制御が不安定になった。そのため、酸化膜全体が過剰に形成され、多孔性アルミニウム酸化皮膜層及びバリア型アルミニウム酸化皮膜層の厚さが過大となる一方で、酸化皮膜合計厚さが極端に少ない部分も発生した。その結果、酸化皮膜合計厚さの変動幅が大きくなり、接合強度及び密着性が不合格であった。
比較例11では、交流電解処理における電解処理時間が短過ぎたため、多孔性アルミニウム酸化皮膜層及びバリア型アルミニウム酸化皮膜層が十分に形成されなかった。そのため、多孔性アルミニウム酸化皮膜層及びバリア型アルミニウム酸化皮膜層の厚さが不足した結果、接合強度及び密着性が不合格であった。
比較例12では、交流電解処理における電解処理時間が長過ぎたため、酸化膜全体が過剰に形成された。そのため、多孔性アルミニウム酸化皮膜層及びバリア型アルミニウム酸化皮膜層が厚くなり過ぎた結果、接合強度及び密着性が不合格であった。
本発明により、接合強度が高く、かつ密着性に優れたアルミニウム複合材が得られる。
1・・・アルミニウム複合材
2・・・表面処理アルミニウム材
3・・・樹脂層
4・・・酸化皮膜
41・・・多孔性アルミニウム酸化皮膜層
42・・・バリア型アルミニウム酸化皮膜層
5・・・小孔
6・・・アルミニウム材
7・・・対電極
8・・・交流電源
9・・・電解溶液

Claims (6)

  1. アルミニウム材と樹脂層とを接合した複合材であって、前記樹脂層と接する前記アルミニウム材表面に酸化皮膜が形成され、該酸化皮膜は表面側に形成された厚さ20〜500nmの多孔性アルミニウム酸化皮膜層と素地側に形成された厚さ3〜30nmのバリア型アルミニウム酸化皮膜層とを具備し、前記多孔性アルミニウム酸化皮膜層には直径5〜30nmの小孔が形成されており、該アルミニウム材表面全体における前記多孔性アルミニウム酸化皮膜層と前記バリア型アルミニウム酸化皮膜層との合計厚さの変動幅が、該合計厚さの算術平均値の±50%以内であることを特徴とするアルミニウム複合材。
  2. 前記樹脂層の前記多孔性アルミニウム酸化皮膜層表面からの浸透深さが該多孔性アルミニウム酸化皮膜層の厚さの10%以上である、請求項1に記載のアルミニウム複合材。
  3. 請求項1又は2に記載のアルミニウム複合材の製造方法であって、アルミニウム材の電極と対電極とを用い、pH9〜13で液温35〜80℃であり、かつ、溶存アルミニウム濃度が5ppm以上1000ppm以下のアルカリ性水溶液を電解溶液とし、周波数20〜100Hz、電流密度4〜50A/dm及び電解時間5〜60秒間の条件で交流電解処理することにより、前記対電極に対向するアルミニウム材表面に酸化皮膜を形成し、該酸化皮膜側においてアルミニウム材と接合する樹脂層を形成することを特徴とするアルミニウム複合材の製造方法。
  4. 前記対電極が黒鉛電極である、請求項3に記載のアルミニウム複合材の製造方法。
  5. 前記アルミニウム材の電極と前記対電極が共に平板状である、請求項3又は4に記載のアルミニウム複合材の製造方法。
  6. 前記アルミニウム材の酸化皮膜側に、5g/10分以上のメルトマスフローレートで1MPa以上の圧力にて樹脂層を形成して接合する、請求項3〜5のいずれか一項に記載のアルミニウム複合材の製造方法。
JP2012169387A 2012-07-31 2012-07-31 アルミニウム複合材及びその製造方法 Active JP6041566B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2012169387A JP6041566B2 (ja) 2012-07-31 2012-07-31 アルミニウム複合材及びその製造方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2012169387A JP6041566B2 (ja) 2012-07-31 2012-07-31 アルミニウム複合材及びその製造方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2014028454A true JP2014028454A (ja) 2014-02-13
JP6041566B2 JP6041566B2 (ja) 2016-12-07

Family

ID=50201411

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2012169387A Active JP6041566B2 (ja) 2012-07-31 2012-07-31 アルミニウム複合材及びその製造方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP6041566B2 (ja)

Cited By (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN104962972A (zh) * 2015-07-22 2015-10-07 苏州道蒙恩电子科技有限公司 一种铝合金与树脂结合体的制造方法
JP2016074116A (ja) * 2014-10-03 2016-05-12 三井化学株式会社 金属/樹脂複合構造体の製造方法
TWI645978B (zh) * 2017-12-13 2019-01-01 財團法人工業技術研究院 異質複合結構

Citations (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPS6282089A (ja) * 1985-10-04 1987-04-15 Fuji Photo Film Co Ltd 平版印刷版用支持体の製造方法
JP2010000679A (ja) * 2008-06-20 2010-01-07 Furukawa-Sky Aluminum Corp アルミニウム材及びその製造方法
JP2011021260A (ja) * 2009-07-17 2011-02-03 Furukawa-Sky Aluminum Corp アルミニウム基板及びその製造方法
JP2012025145A (ja) * 2010-06-22 2012-02-09 Furukawa-Sky Aluminum Corp アルミニウム材/熱可塑性発泡樹脂層の複合材及びその製造方法

Patent Citations (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPS6282089A (ja) * 1985-10-04 1987-04-15 Fuji Photo Film Co Ltd 平版印刷版用支持体の製造方法
JP2010000679A (ja) * 2008-06-20 2010-01-07 Furukawa-Sky Aluminum Corp アルミニウム材及びその製造方法
JP2011021260A (ja) * 2009-07-17 2011-02-03 Furukawa-Sky Aluminum Corp アルミニウム基板及びその製造方法
JP2012025145A (ja) * 2010-06-22 2012-02-09 Furukawa-Sky Aluminum Corp アルミニウム材/熱可塑性発泡樹脂層の複合材及びその製造方法

Cited By (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2016074116A (ja) * 2014-10-03 2016-05-12 三井化学株式会社 金属/樹脂複合構造体の製造方法
CN104962972A (zh) * 2015-07-22 2015-10-07 苏州道蒙恩电子科技有限公司 一种铝合金与树脂结合体的制造方法
TWI645978B (zh) * 2017-12-13 2019-01-01 財團法人工業技術研究院 異質複合結構

Also Published As

Publication number Publication date
JP6041566B2 (ja) 2016-12-07

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP6001573B2 (ja) 表面処理アルミニウム材及びその製造方法、ならびに、樹脂被覆表面処理アルミニウム材
JP4600701B2 (ja) 樹脂金属接合体及びその製造方法
US8784981B2 (en) Stainless steel-and-resin composite and method for making same
US20160160371A1 (en) Metal-and-resin composite and method for making the same
JP6041566B2 (ja) アルミニウム複合材及びその製造方法
US8475913B2 (en) Titanium/titanium alloy-and-resin composite and method for making the same
CN103158226A (zh) 金属与塑料的复合体的制备方法及复合体
Shore et al. Adhesive bond strength of PEO coated AA6060-T6
JP2019026924A (ja) 表面処理アルミニウム合金材及びその製造方法
WO2015015768A1 (ja) 表面処理アルミニウム材及びその製造方法
WO2016009649A1 (ja) 表面処理アルミニウム材及びその製造方法、ならびに、当該表面処理アルミニウム材/樹脂層の接合体
KR102618505B1 (ko) 수지와 마그네슘계 금속의 접합체 및 그 제조 방법
JP5540029B2 (ja) アルミニウム或いはアルミニウム合金と樹脂の複合体及びその製造方法
US11230785B2 (en) Surface-treated aluminum material and method for manufacturing same; and bonded body of surface-treated aluminum material and bonding member comprising said surface-treated aluminum material, and bonding member such as resin, and method for manufacturing said bonded body
JP6829961B2 (ja) 樹脂密着性に優れた表面処理アルミニウム材及びその製造方法、ならびに、表面処理アルミニウム材/樹脂の接合体
JP6570168B2 (ja) 表面処理アルミニウム材及びその製造方法
JP7026547B2 (ja) 表面処理アルミニウム合金材及びその製造方法
JP7093607B2 (ja) 表面処理アルミニウム材及びその製造方法、ならびに、当該表面処理アルミニウム材と樹脂等の被接合部材とからなる表面処理アルミニウム材/被接合部材の接合体及びその製造方法
JP2020059203A (ja) 金属樹脂複合体
JP2020082381A (ja) 接合体及びその製造方法
JP2016020519A (ja) 表面処理アルミニウム材及びその製造方法
TW202204698A (zh) 表面處理鋁材及其製造方法

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20150623

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20160223

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20160226

A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20160407

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20160830

A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20161007

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20161108

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20161108

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 6041566

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150