JP6829961B2 - 樹脂密着性に優れた表面処理アルミニウム材及びその製造方法、ならびに、表面処理アルミニウム材/樹脂の接合体 - Google Patents

樹脂密着性に優れた表面処理アルミニウム材及びその製造方法、ならびに、表面処理アルミニウム材/樹脂の接合体 Download PDF

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Description

本発明は、表面処理を施したアルミニウム材及びその製造方法に関し、詳細には、表面にアルミニウム酸化皮膜を有する樹脂密着性に優れた表面処理アルミニウム材、ならびに、これを安定して製造する方法に関し、更に、この表面処理アルミニウム材/樹脂の接合体に関する。
純アルミニウム材又はアルミニウム合金材(以下、「アルミニウム材」と記す)は、軽量で適度な機械的特性を有し、かつ、美感、成形加工性、耐食性等に優れた特徴を有しているため、各種容器類、構造材、機械部品等に広く使われている。これらのアルミニウム材は、そのまま用いられることもある一方、各種表面処理を施すことで、耐食性、耐摩耗性、樹脂密着性、親水性、撥水性、抗菌性、意匠性、赤外放射性、高反射性等の機能を付加及び向上させて使用されることも多い。
例えば、耐食性及び耐摩耗性を向上させる表面処理法として、陽極酸化処理(いわゆるアルマイト処理)が広く用いられている。具体的には、非特許文献1、2に記載されている通り、アルミニウム材を酸性の電解液に浸漬して直流電流により電解処理を行うことによって、アルミニウム材表面に厚さ数〜数十μmの陽極酸化皮膜を形成させるもので、用途に応じて種々の処理方法が提案されている。
また、特に樹脂密着性を向上させる表面処理法として、特許文献1のようなアルカリ交流電解法が提案されている。すなわち、アルミニウム材表面に厚さ20〜500nmの多孔性アルミニウム酸化皮膜層と素地側に形成された厚さ3〜30nmのバリア型アルミニウム酸化皮膜層とから成り、前記多孔性アルミニウム酸化皮膜層には直径5〜30nmの小孔が形成されており、当該アルミニウム材表面全体における前記多孔性アルミニウム酸化皮膜層とバリア型アルミニウム酸化皮膜層との合計厚さの変動幅が、当該合計厚さの算術平均値の±50%以内となる酸化皮膜を形成させるものである。具体的には、アルミニウム材の電極と対電極とを用い、pH9〜13で液温35〜80℃であり、かつ、溶存アルミニウム濃度が5ppm以上1000ppm以下のアルカリ性水溶液を電解溶液とし、周波数20〜100Hz、電流密度4〜50A/dm及び電解時間5〜60秒間の条件で交流電解処理することで、上記酸化皮膜が得られる。
しかしながら、特許文献1の技術を用いて、同一の電解条件で処理を行った場合でも、製造設備の構成によっては必ずしも樹脂密着性が向上しない場合があることが近年判明した。具体的には、コイル状に巻き取られたアルミニウム板や長尺の押出アルミニウム形材のような長大なアルミニウム材に対して上記電解処理を行うにあたり、生産性向上のためアルミニウム材と対極との間に常時通電するとともに、電解槽中にアルミニウム材を連続的に搬送供給するという、いわゆる連続処理を行った場合において、樹脂密着性が発揮されない場合があることが判明した。
アルミニウムハンドブック第7版、179〜190頁、2007年、一般社団法人日本アルミニウム協会 日本工業規格JIS H8601、「アルミニウム及びアルミニウム合金の陽極酸化皮膜」(1999)
国際公開WO2013/118870号公報
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、主に長尺のアルミニウム材に連続処理を施す場合において、樹脂密着性に優れた表面処理アルミニウム材及びその製造方法、ならびに、この表面処理アルミニウム材/樹脂の接合体の提供を目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、連続処理を施したアルミニウム材の樹脂密着性が必ずしも向上しないのは、電解が終了した後のアルミニウム材における電解電流の挙動が影響していることを見出した。具体的には、アルミニウム材が例えば特許文献1に規定された条件にて電解された後、電解槽から取り出されるまでの間において、アルミニウム材に流れる電流が長時間にわたって徐々に減衰するような環境に晒された場合に樹脂密着性が低下することを見出した。こうした状況は、特に連続処理にて電解する場合に生じ易く、本発明者らは更に検討を重ねて本発明を完成させるに至ったものである。
すなわち、本発明は請求項1において、表面に酸化皮膜が形成されており、前記酸化皮膜は表面側に形成された厚さ20〜500nmの多孔性アルミニウム酸化皮膜層と素地側に形成された厚さ3〜30nmのバリア型アルミニウム酸化皮膜層とから成り、前記多孔性アルミニウム酸化皮膜層には直径5〜30nmの小孔が形成されており、前記多孔性アルミニウム酸化皮膜層とバリア型アルミニウム酸化皮膜層との境界においてこの境界に平行して前記酸化皮膜が凝集破壊した亀裂が発生しており、前記酸化皮膜の厚み方向に沿った断面において、前記亀裂長さが前記境界長さの50%以下であるであることを特徴とする樹脂密着性に優れた表面処理アルミニウム材とした。
また本発明は請求項2において、請求項1に記載の表面処理アルミニウム材の製造方法であって、連続的に電解溶液中に搬送供給されるアルミニウム材の電極と固定された対電極とを用い、前記電解溶液がpH9〜13で液温35〜85℃のアルカリ性水溶液であり、周波数10〜100Hz、電流密度4〜50A/dm及び電解時間5〜300秒間の条件で交流電解処理することにより、前記対電極に対向するアルミニウム材部分の表面に酸化皮膜を形成する方法において、前記アルミニウム材の電極と対電極は連続的に通電されており、前記電解時間が終了してから電解処理されたアルミニウム材部分に流れる電流密度が1A/dm未満になるまでの時間が10.0秒以下であることを特徴とする樹脂密着性に優れた表面処理アルミニウム材の製造方法とした。
本発明は請求項3では請求項2において、前記アルミニウム材の電極と対電極との電極間距離が2〜150mmであるものとした。
更に、本発明は請求項4において、請求項1に記載の表面処理アルミニウム材と、当該表面処理アルミニウム材の酸化皮膜が形成された表面に被覆した樹脂とからなることを特徴とする表面処理アルミニウム材/樹脂の接合体とした。
本発明により、アルミニウム材の表面に樹脂などに対して高密着性の酸化皮膜が形成されるため、樹脂密着性に優れた表面処理アルミニウム材を連続的に得ることができる。更に、この表面処理アルミニウム材と樹脂の接合体は、優れた密着性を有する。
具体的には、アルミニウム材表面の酸化皮膜を多孔性アルミニウム酸化皮膜層とバリア型アルミニウム酸化皮膜層との二層構造とする。そして、アルミニウム材の表面側に形成された20〜500nmの厚さを有し、かつ、直径5〜30nmの小孔を有する多孔性アルミニウム酸化皮膜層によって、それ自身の凝集破壊を抑制しつつその表面積を増大させることにより樹脂等の被接合部材との密着性を向上させる。また、アルミニウム材の素地側に形成された3〜30nmの厚さを有するバリア型アルミニウム酸化皮膜層によって、それ自身の凝集破壊を抑制しつつアルミニウム素地と多孔性アルミニウム酸化皮膜層とを結合して接着性及び密着性を向上させる。そしてこの際、多孔性アルミニウム酸化皮膜層とバリア型アルミニウム酸化皮膜層の境界に生じた亀裂の長さを当該境界長さの50%以下に抑制することで、酸化皮膜自身の凝集破壊を抑制することができる。
本発明に係るアルミニウム材の製造設備を示す概略図である。
以下に、本発明の詳細を順に説明する。本発明に係る表面処理アルミニウム材は、その表面に酸化皮膜が形成されており、この酸化皮膜は表面側に形成された多孔性アルミニウム酸化皮膜層と素地側に形成されたバリア型アルミニウム酸化皮膜層とから成る。そして、多孔性アルミニウム酸化皮膜層には小孔が形成されている。
A.アルミニウム材
本発明に用いるアルミニウム材としては、純アルミニウム(例えば、99.0mass%以上)又はアルミニウム合金が用いられる。アルミニウム合金の成分には特に制限は無く、JISに規定される合金をはじめとする各種合金を使用することができる。形状としては特に制限されるものではないが、後述の通り連続処理を行うことから、コイル状に巻き取られたアルミニウム板や長尺の押出アルミニウム形材のような長大なアルミニウム材が好適に用いられる。またアルミニウム板においては、用途に応じてその板厚を適宜選択することができるが、軽量化と成形性の観点から0.05〜2.0mmが好ましく、0.1〜1.0mmが更に好ましい。
B.製造方法
本発明の具体的な内容として、連続的に電解溶液中に搬送供給されるアルミニウム材の電極と固定された対電極とを用い、電解溶液がpH9〜13で液温35〜85℃のアルカリ性水溶液であり、周波数10〜100Hz、電流密度4〜50A/dm及び電解時間5〜300秒間の条件で交流電解処理することにより、対電極に対向するアルミニウム材部分の表面に酸化皮膜を形成する方法であって、前記アルミニウム材の電極と対電極は連続的に通電されており、上記電解時間が終了してから電解処理されたアルミニウム材部分に流れる電流密度が1A/dm未満になるまでの時間を10.0秒以下とする方法を挙げることができる。
連続的に電解溶液中に搬送供給されるアルミニウム材として、例えばコイル状に巻かれた長尺のアルミニウム板材1を用いることができる。これを巻きほぐしながら電解槽に浸漬しつつ電解処理を行ない、電解処理したアルミニウム板材を電解槽外に巻き取る方法や;押出材や引抜材といった長尺のアルミニウム形材を送り出しながら電解槽に浸漬しつつ電解処理を行ない、電解処理した長尺のアルミニウム材を電解槽外に取り出す方法などが挙げられる。具体的に例示すれば、図1に示すように、電解槽1に搬入される前位置、ならびに、電解槽から搬出される後位置に、それぞれ一対の送りロール2、3を配設して、電解溶液4中にアルミニウム材5を通す。電解処理前のアルミニウム材5は、不図示のコイル状に巻かれたものが巻きほぐされながら電解槽1の前位置の一対のロール2を介して電解溶液4中に搬送供給される。一方、電解処理後のアルミニウム材5は、電解槽1の後位置の一対のロール3を介して不図示のロールに巻き回されてコイル状とされる。また、電解溶液4中には、搬送されるアルミニウム材5の一部と対向するように対電極6が配設される。対向するアルミニウム材5の表面と対電極6の対向面とは、平行となるように配設するのが好ましい。ここで、対電極6をアルミニウム材5の両面にそれぞれ配置すれば、アルミニウム材5の両面に効率的に電解処理を施すこともできる。なお、送りロール2を通じてアルミニウム材5と交流電源7が接続されている。また、アルミニウム材5の電極と対電極6は、交流電源7によって連続的に通電される。
また、アルミニウム材5と対電極6の配置は共に水平位置、水平位置から傾斜させた位置又は垂直位置のいずれの方法でもよい。更に、アルミニウム材5の電極と対電極6との電極間距離との電極間距離は2〜150mmが好ましく、より好ましくは、5〜100mmである。前記極間距離が2mm未満では、アルミニウム材5の電極と対電極6との間が狭くなり過ぎ、スパークが発生することがある上、近傍において発生するガスの気泡が散逸し難くなり板面にムラが生じることがある。前記極間距離が150mmを超えると、アルミニウム材5を搬送している際に、アルミニウム材5の電極と対電極6との極間に生じる液対流の影響が少なくなるため、電解皮膜の形成速度が極端に遅くなることがある。
交流電解処理工程において、電解溶液として用いるアルカリ水溶液は、りん酸ナトリウム、りん酸水素カリウム、ピロりん酸ナトリウム、ピロりん酸カリウム及びメタりん酸ナトリウム等のりん酸塩や;水酸化ナトリウム及び水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物や;炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム等の炭酸塩や;水酸化アンモニウム;或いは、これらの混合物の水溶液を用いることができる。後述するように電解溶液のpHを特定の範囲に保つ必要があることから、バッファー効果の期待できるりん酸塩系物質を含有するアルカリ水溶液を用いるのが好ましい。このようなアルカリ成分の濃度は、電解溶液のpHが所望の値になるように調整されるが、通常、好ましくは1×10−4〜1モル/リットル、より好ましくは1×10−3〜0.8モル/リットルである。なお、これらのアルカリ性水溶液には、汚れ成分に対する除去能力の向上のために界面活性剤を添加してもよい。
電解溶液のpHは9〜13とする必要があり、9.5〜12とするのが好ましい。pHが9未満の場合には、電解溶液のアルカリエッチング力が不足するため多孔性アルミニウム酸化皮膜層の多孔質構造が不完全となる。一方、pHが13を超えると、アルカリエッチング力が過剰になるため多孔性アルミニウム酸化皮膜層が成長し難くなり、更にバリア型アルミニウム酸化皮膜層の形成も阻害される。
電解溶液温度は35〜85℃とする必要があり、40〜70℃とするのが好ましい。電解溶液温度が35℃未満では、アルカリエッチング力が不足するため多孔性アルミニウム酸化皮膜層の多孔質構造が不完全となる。一方、85℃を超えるとアルカリエッチング力が過剰になるため、多孔性アルミニウム酸化皮膜層及びバリア型アルミニウム酸化皮膜層ともに成長が阻害される。
アルカリ交流電解においては、多孔性アルミニウム酸化皮膜層とバリア型アルミニウム酸化皮膜層を含めた酸化皮膜全体の厚さは、電気量、すなわち電流密度と電解時間の積によって制御され、基本的に電気量が多いほど酸化皮膜全体の厚さが増加する。このような観点から、多孔性アルミニウム酸化皮膜層及びバリア型アルミニウム酸化皮膜層の交流電解条件は以下の通りとする。
用いる周波数は10〜100Hz、好ましくは20〜90Hzとする。10Hz未満では、電気分解としては直流的要素が高まる結果、多孔性アルミニウム酸化皮膜層の多孔質構造の形成が進行せず、緻密構造となってしまう。一方、100Hzを超えると、陽極と陰極の反転が速すぎるため、酸化皮膜全体の形成が極端に遅くなり、多孔性アルミニウム酸化皮膜層及びバリア型アルミニウム酸化皮膜層ともに、所定の厚さを得るには極めて長時間を要することになる。
電流密度は4〜50A/dm、好ましくは5〜45A/dmとする。電流密度が4A/dm未満では、バリア型アルミニウム酸化皮膜層のみが優先的に形成されるために多孔性アルミニウム酸化皮膜層が得られない。一方、50A/dmを超えると、電流密度が過大になるため多孔性アルミニウム酸化皮膜層及びバリア型アルミニウム酸化皮膜層の厚さ制御が困難となり処理ムラが起こり易い。
電解時間は5〜300秒、好ましくは10〜240秒とする。ここで、電解時間とは、図1において、電解溶液4中を移動するアルミニウム材5の所定位置が、対電極6の表面と対向している時間をいうものとする。図1に示すように、アルミニウム材5の搬送方向cに沿った対電極6の長さをL(mm)とし、アルミニウム材5の搬送速度をv(mm/秒)とすると、電解時間は(L/v)<秒>で表わされる。電解時間が5秒未満の処理時間では、多孔性アルミニウム酸化皮膜層及びバリア型アルミニウム酸化皮膜層の形成が急激過ぎるため、いずれの酸化皮膜層も十分に形成されず、不定形のアルミニウム酸化物から構成される酸化皮膜となるためである。一方、300秒を超えると、多孔性アルミニウム酸化皮膜層及びバリア型アルミニウム酸化皮膜層が厚くなり過ぎたり再溶解したりする虞があるだけでなく、生産性も低下する。
アルミニウム材と対電極が連続的に通電されている処理に特有の規定として、上記電解時間が終了してから電解処理されたアルミニウム材部分に流れる電流密度が1A/dm未満になるまでの時間が、10.0秒以下、好ましくは5.0秒以下となるようにする。また、この時間は0秒とするのが最も好ましい。後述するように、この時間が10.0秒を超えると、すなわち電解が終了した後も電解処理されたアルミニウム材部分に比較的弱い電流が流れ続けると、多孔性アルミニウム酸化皮膜層とバリア型アルミニウム酸化皮膜層の境界に亀裂が発生し易くなる。
これは電解終了後、過渡的に弱い電流が流れ続けた場合、その電流によって多孔性アルミニウム酸化皮膜層の直下に不安定な酸化皮膜層が生成し、わずかな応力によって部分的に凝集破壊するためである。なお、電流密度が1A/dm未満になるまでとしたのは、電流密度が1A/dm未満まで低下すれば、このような不安定な酸化皮膜層がほとんど生成しないので上述する境界亀裂の発生は顕現しない。なお、ここで言う亀裂とは、多孔性アルミニウム酸化皮膜層とバリア型アルミニウム酸化皮膜層の境界に生じる凝集破壊した上記不安定な酸化皮膜層のことである。
こうした過渡的な電流密度の変化については直接的に測定することができないものの、電解設備の構成から計算することができる。具体的には、図1に示すように、アルミニウム材5の搬送方向に沿った対電極6の終端から同方向に沿った電解槽の終端までの距離をb(mm)、電解時の設定電流密度をI、アルミニウム材の搬送速度をv(mm/秒)とした場合、電流密度が1A/dmを下回るまでの時間を{b(I−1)/vI}(秒)と見積もることが可能である。ここで、Iは上述のように、4〜50A/dmの範囲とされるので、{b(I−1)/vI}が10.0秒以下となるようにbとvをそれぞれ適切に設定すればよい。なお、bが過大となるか、或いは、vが過小となると、上記メカニズムに基づいた亀裂発生を回避するのは困難である。
なお、電流密度が1A/dm未満になるまでの時間を10.0秒以下とすることで、多孔性アルミニウム酸化皮膜層とバリア型アルミニウム酸化皮膜層との境界の亀裂長さを当該境界長さの50%以下、好ましくは30%以下に抑制することができる。また、この比率は0%が最も好ましい。しかしながら、電流密度が1A/dm未満になった後のアルミニウム材は、できるだけ早く電解溶液中から引き出すことが望ましい。すなわち、電解溶液はアルカリ性であるので、電解終了後もアルミニウム材を電解溶液中に浸漬し続けることで酸化皮膜の溶解が進行し、所定の皮膜厚さが得られない虞があるためである。
なお、本発明に係る製造方法において、酸化皮膜の厚み変動を小さくする目的で、電解溶液に含有される溶存アルミニウム濃度を、好ましくは5ppm以上1000ppm以下、より好ましくは10ppm以上900ppm以下に規制しても良い。溶存アルミニウム濃度が5ppm未満の場合は、電解反応初期における酸化皮膜の形成反応が急激に生起するため、処理工程のバラツキ(アルミニウム材表面の汚れ状態やアルミニウム材の取り付け状態など)の影響を受け易い。その結果、局部的に厚い酸化皮膜が形成されることになる。一方、溶存アルミニウム濃度が1000ppmを超える場合は、電解溶液の粘度が増大して電解工程においてアルミニウム材表面付近の均一な対流が妨げられるのと同時に、溶存アルミニウムが皮膜形成を抑制する方向に作用する。その結果、局部的に薄い酸化皮膜が形成されることになる。
交流電解処理に使用する一対の電極のうち一方の電極は、電解処理されるべきアルミニウム材である。他方の対電極としては、例えば、黒鉛、アルミニウム、チタン等の公知の電極を用いることができるが、本発明においては、電解溶液のアルカリ成分や温度に対して劣化せず、導電性に優れ、更に、それ自身が電気化学的反応を起こさない材質のものを使用する必要がある。このような点から、対電極としては黒鉛電極が好適に用いられる。これは、黒鉛電極が化学的に安定であり、かつ、安価で入手が容易であることに加え、黒鉛電極に存在する多くの気孔の作用により交流電解工程において電気力線が適度に拡散するため、多孔性アルミニウム酸化皮膜層及びバリア型アルミニウム酸化皮膜層が共により均一になり易いためである。
C.酸化皮膜
本発明に用いるアルミニウム材の表面には、表面側に形成された多孔性アルミニウム酸化皮膜層と素地側に形成されたバリア型アルミニウム酸化皮膜層とが設けられている。すなわち、アルミニウム材表面には、多孔性アルミニウム酸化皮膜層とバリア型アルミニウム酸化皮膜層の二層によって構成される酸化皮膜が設けられている。多孔性アルミニウム酸化皮膜層が強力な接着性や密着性を発揮する一方で、バリア型アルミニウム酸化皮膜層によって、アルミニウム酸化皮膜層全体とアルミニウム素地を強固に結合する。さらに、多孔性アルミニウム酸化皮膜層とバリア型アルミニウム酸化皮膜層の境界に生じた亀裂の長さを同境界長さの50%以下とすることで、多孔性アルミニウム酸化皮膜層の脱落を抑制することができる。
C−1.多孔性アルミニウム酸化皮膜層
多孔性アルミニウム酸化皮膜層の厚さは、20〜500nm、好ましくは50〜400nmである。20nm未満では厚さが十分でないため、後述する小孔構造の形成が不十分になり易く接着力や密着力が低下する。一方、500nmを超えると、多孔性アルミニウム酸化皮膜層自体が凝集破壊し易くなり接着力や密着力が低下する。
多孔性アルミニウム酸化皮膜層は、その表面から深さ方向に向かう小孔を備える。小孔の直径は5〜30nmであり、好ましくは10〜20nmである。この小孔は、樹脂層や接着剤などとアルミニウム酸化皮膜との接触面積を増大させ、その接着力や密着力を増大させる効果を発揮するものである。小孔の直径が5nm未満であると、接触面積が不足するため十分な接着力や密着力が得られない。一方、小孔の直径が30nmを超えると、多孔性アルミニウム酸化皮膜層全体が脆くなって凝集破壊を生じ接着力や密着力が低下する。
多孔性アルミニウム酸化皮膜層の表面積に対する小孔の全孔面積の比については、特に制限されるものではない。多孔性アルミニウム酸化皮膜層の見かけ上の表面積(表面の微小な凹凸等を考慮せず、長さと幅の乗算で表される面積)に対する小孔の全孔面積の比として、25〜75%が好ましく、30〜70%がより好ましい。25%未満では、接触面積が不足して十分な接着力や密着力が得られない場合がある。一方、75%を超えると、多孔性アルミニウム酸化皮膜層全体が脆くなって凝集破壊を生じ接着力や密着力が低下する場合がある。
C−2.バリア型アルミニウム酸化皮膜層
バリア型アルミニウム酸化皮膜層の厚さは、3〜30nm、好ましくは5〜25nmである。3nm未満では、介在層として多孔性アルミニウム酸化皮膜層とアルミニウム素地との結合に十分な結合力を付与することができず、特に、高温・多湿等の過酷環境における結合力が不十分となる。一方、30nmを超えると、その緻密性ゆえにバリア型アルミニウム酸化皮膜層が凝集破壊し易くなり、かえって接着力や密着力が低下する。
C−3.多孔性アルミニウム酸化皮膜層とバリア型アルミニウム酸化皮膜層の境界に生じた亀裂
C−1及びC−2にて規定された酸化皮膜は、連続的に形成されていることが望ましく、それらの間に生じた亀裂長さはこの境界の全長の50%以下、好ましくは30%以下、最も好ましくは0%となることが求められる。電解条件との関係では、電解時間が終了してから電解処理されたアルミニウム材部分に流れる電流密度が1A/dm未満になるまでの時間を10.0秒以下とすることにより、このような境界全長に対する亀裂長さの比率が達成される。上記比率が50%を上回った場合、この亀裂を起点とした酸化皮膜全体の脱落が容易に生じ、樹脂密着性の著しい低下をもたらす。ここで、亀裂長さの境界の全長に対する比率とは、具体的には以下のようにして決定される。すなわち、上述の亀裂は電解時間終了後の電流減衰挙動に起因する不安定な酸化皮膜層が部分的に凝集破壊するものであり、多孔性アルミニウム酸化皮膜層とバリア型アルミニウム酸化皮膜層の境界に平行して発生する。ここで、境界の全長(M)に対する亀裂長さ(m)を後述の断面TEM観察等で観察し、(m/M)として規定することができる。
C−4.酸化皮膜の全体厚さの変動幅
酸化皮膜全体の厚さ、すなわち、C−1に記載の多孔性アルミニウム酸化皮膜層とC−2に記載のバリア型アルミニウム酸化皮膜層との厚さの合計は、アルミニウム材のいかなる場所で測定しても、その変動幅が±50%以内であることが好ましく、±20%以内であることが更に好ましい。すなわち、アルミニウム材表面における任意の複数箇所(10箇所以上が望ましく、これら各箇所においても10点以上の測定点とするのが望ましい)で測定した酸化皮膜全体厚さの算術平均をT(nm)とした場合、これら複数測定箇所における酸化皮膜全体厚さが(0.5×T)〜(1.5×T)の範囲にあることが好ましい。(0.5×T)未満の箇所が存在すると、その箇所の酸化皮膜がその周囲より薄くなる。そうすると、この薄い箇所では、接着すべき接着剤や密着すべき樹脂層などと酸化皮膜との間に隙間が生じ易くなり、十分な接触面積を確保できずに接着力や密着力が低下する場合がある。一方、(1.5×T)を超える箇所が存在すると、その箇所の酸化皮膜が周囲より厚くなる。そうすると、この厚い箇所では、密着すべき樹脂層などからの応力が集中し、酸化皮膜での凝集破壊を誘発して接着力や密着力が低下する場合がある。
なお、上記のような酸化皮膜の全体厚さが薄い箇所や厚い箇所では、周囲と比較して光学的特性が異なるため、茶褐色や白濁色といった色調の変化として目視可能な場合がある。
D.酸化皮膜の観察手段
本発明における多孔性アルミニウム酸化皮膜層とバリア型アルミニウム酸化皮膜層の構造観察と厚さの測定、ならびに、多孔性アルミニウム酸化皮膜層とバリア型アルミニウム酸化皮膜層の境界に生じた亀裂の長さの測定には、透過型電子顕微鏡(TEM)による断面観察が好適に用いられる。具体的には、ウルトラミクロトームや集束イオンビーム(FIB)加工装置等により厚み方向に沿って切り出した薄片試料を作製する。次いで、これをTEM観察する。薄片試料の作製にあたっては、対象物に亀裂が生じている可能性があるため、FIB加工装置を用いることがより好ましい。また亀裂長さの測定及び比率計算にあたっては、TEM観察倍率を低め(5000〜10000倍程度)に設定するとともに、複数視野を観察することによって定量化することができる。
E.表面処理アルミニウム材と樹脂との接合体
上記のようにして製造される表面処理アルミニウム材はその優れた接着性により、酸化皮膜を形成した処理面に更に樹脂を被覆することで、様々な用途に応じて使用できる。ここで、樹脂は、熱硬化性樹脂でも、熱可塑性樹脂でもどちらも用いることができ、本発明に係る表面処理アルミニウム材における処理面に形成される特定の酸化皮膜と相まって、様々な効果が付与される。
例えば、アルミニウム材と樹脂との接合体は、アルミニウム材に比べて樹脂の熱膨張率が一般に大きいことから、界面において剥離や割れが発生し易い。しかしながら、本発明に係る表面処理アルミニウム材と樹脂との接合体においては、本発明における酸化皮膜は非常に薄く、かつ、上述したように特定の形状を成すので、柔軟性に優れ、樹脂の膨張に追従し易く、剥離や割れが発生し難くい。このように、本発明に係る表面処理アルミニウム材と熱可塑性樹脂との接合体は、軽量、高剛性の複合材料として好適に用いることができる。また、本発明に係る表面処理アルミニウム材と熱硬化性樹脂との接合体は、プリント配線基板用途として好適に用いることができる。
上記樹脂としては、各種の熱可塑性樹脂及び熱硬化性樹脂を用いることができる。具体的には、熱可塑性樹脂においては、熱を加えて流動状態とした樹脂を多孔性アルミニウム酸化皮膜層に接触・浸透させ、これを冷却固化することにより樹脂層が形成される。熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリオレフィン(ポリエチレン、ポリプロピレン等)、ポリ塩化ビニル、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等)、ポリアミド、ポリフェニレンスルファイド、芳香族ポリエーテルケトン(ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルケトン等)、ポリスチレン、各種フッ素樹脂(ポリテトラフルオロエチレン、ポリクロロトリフルオロエチレン等)、アクリル樹脂(ポリメタクリル酸メチル等)、ABS樹脂、ポリカーボネート、熱可塑性ポリイミド等を用いることができる。
また、熱硬化性樹脂においては、硬化前の流動性を有する状態において多孔性アルミニウム酸化皮膜層に接触・浸透させ、これをその後に硬化させればよい。熱硬化性樹脂としては、例えば、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、ポリウレタン、熱硬化性ポリイミド等を用いることができる。
なお、上記熱可塑性樹脂と熱硬化性樹脂は、それぞれを単一で用いてもよく、複数種の熱可塑性樹脂又は複数種の熱硬化性樹脂を混合したポリマーアロイとして用いてもよい。また、各種フィラーを添加することで、樹脂の強度や熱膨張率等の物性を改善してもよい。具体的には、ガラス繊維、炭素繊維、アラミド繊維等の各種繊維や、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、シリカ、タルク、ガラス、粘土等の公知物質のフィラーを用いることができる。
以下、実施例に基づいて本発明の好適な実施の形態を具体的に説明する。
本発明例1〜24及び比較例1〜12
アルミニウム材として、幅200mm×板厚1.0mmのコイル状のJIS5052−H34合金板を使用した。このアルミニウム合金板を一方の電極に用い、対電極には幅300mm×長さ10mm×板厚2.0mmの平板形状を有する黒鉛板を用いた。図1に示すように、アルミニウム合金板5の片面を対電極6に対面させ、この対面した片面表層に、表面側の多孔性アルミニウム酸化皮膜層と素地側のバリア型アルミニウム酸化皮膜層が形成されるように、両電極を電解槽1に入れた電解溶液4中に配置した。電解溶液4には、ピロりん酸ナトリウムを主成分とするアルカリ水溶液を用いた。電解溶液のアルカリ成分濃度は、0.5モル/リットルとするとともに、塩酸及び水酸化ナトリウム水溶液(いずれも濃度0.1モル/リットル)によってpHの調整を行なった。表1、2に示す電解条件にて交流電解処理を実施して多孔性アルミニウム酸化皮膜層及びバリア型アルミニウム酸化皮膜層を形成した供試材を作製した。電解時間は、対電極長さ及び材料の搬送速度を変化させて調整した。なお、表1、2には、アルミニウム材の電極と対電極との電極間距離aも記載した。
Figure 0006829961
Figure 0006829961
以上のようにして作製した供試材に対し、TEMによる断面観察を実施した。TEM断面観察においては、多孔性アルミニウム酸化皮膜層とバリア型アルミニウム酸化皮膜層の厚さ、多孔性アルミニウム酸化皮膜層の小孔の直径及び多孔性アルミニウム酸化皮膜層とバリア型アルミニウム酸化皮膜層の境界に発生した亀裂の長さを測定するために、FIB加工装置を用いて同じ供試材から断面観察用薄片試料を10個作製した。
多孔性アルミニウム酸化皮膜層とバリア型アルミニウム酸化皮膜層の厚さ、ならびに、多孔性アルミニウム酸化皮膜層の小孔の直径は、上記試料それぞれについて任意の10点を選択して測定し、各点の測定結果から同一の試料について合計100点の測定値の算術平均値として決定した。また、亀裂の長さについても、上記試料それぞれについて任意の10点を選択して測定し、各点の測定結果から同一の試料について合計100点の測定値の算術平均値として決定した。なお、亀裂の長さの測定では、TEMの観察視野を1μm×1μmに設定した。上述のように、このようにして得られた亀裂長さを、多孔性アルミニウム酸化皮膜層とバリア型アルミニウム酸化皮膜層の境界長さで除算し、亀裂長さ比とした。さらに、酸化皮膜全体の厚さ(多孔性アルミニウム酸化皮膜層とバリア型アルミニウム酸化皮膜層の合計厚さ)のばらつき判定として、上記測定点100点(試料10個×測定点10点)のうち、算術平均値の50%以上150%以内となる測定点の数を記録した。結果を表3、4に示す。
Figure 0006829961
Figure 0006829961
上記供試材に対し、以下の方法にて接着剤を用いた接着性を評価した。
〔一次密着性試験〕
上記供試材から、長さ50mm、幅25mmに切断したものを2枚用意した。これら2枚の供試材同士を全幅方向に重ね合わせつつ、長さ方向には幅10mmをもって重ね合わせ、市販の2液型エポキシ接着剤(ニチバン株式会社製、アラルダイトラピッド、型番:AR−R30、重量混合比=主剤100/硬化剤100)によって重ね合わせ部分を接着し、せん断試験片を作製した。せん断試験片の長さ方向の両端部を引張試験機により100mm/分の速度にて長さ方向に沿って反対向きに引張り、その荷重(せん断応力に換算)と剥離状態によって接着性を下記の基準で評価した。なお、せん断試験片は同じ供試材から10組の試験片を作製して、それぞれについて評価した。
○:せん断応力が20N/mm以上で、かつ、接着剤層自身が凝集破壊した状態
△:せん断応力が20N/mm以上であるものの、接着剤層と供試材が界面剥離した状態
×:せん断応力が20N/mm未満で、かつ、接着剤層と供試材が界面剥離した状態
結果を表5、6に示す。同表には、10組の試験片のうちの上記○、△、×の組数をそれぞれ示すが、10組の全てが○の場合を判定が合格とし、それ以外を判定が不合格とした。
Figure 0006829961
Figure 0006829961
本発明例1〜24ではいずれも、酸化皮膜が本発明の規定を満たすため、一次密着性がいずれも合格判定であった。これに対して比較例1〜12では、下記の理由により不合格判定となった。
比較例1では、交流電解処理における電解溶液のpHが低過ぎたため、アルカリエッチング力が不足した。そのため、多孔性アルミニウム酸化皮膜層の小孔直径が不足し、一次密着性が不合格であった。
比較例2では、交流電解処理における電解溶液のpHが高過ぎたため、アルカリエッチング力が過剰になった。そのため、多孔性アルミニウム酸化皮膜層及びバリア型アルミニウム酸化皮膜層の厚さが不足し、また多孔性アルミニウム皮膜の小孔直径が過大となり、一次密着性が不合格であった。
比較例3では、交流電解処理における電解溶液の温度が低過ぎたため、アルカリエッチング力が不足した。そのため、多孔性アルミニウム酸化皮膜層の多孔質構造が不完全となり小孔直径が不足し、一次密着性が不合格であった。
比較例4では、交流電解処理における電解溶液の温度が高過ぎたため、アルカリエッチング力が過剰になった。そのため、多孔性アルミニウム皮膜層及びバリア型アルミニウム酸化皮膜層の厚さが不足し、一次密着性が不合格であった。
比較例5では、交流電解処理における周波数が低過ぎたため、電気的状態が直流電解に近づいた。そのため、多孔性アルミニウム酸化皮膜層の形成が進行せず、また小孔も形成されず、バリア型アルミニウム酸化皮膜層の厚さが過大となった。そのため、一次密着性が不合格であった。
比較例6では、交流電解処理における周波数が高過ぎたため、陽極と陰極の反転が速過ぎた。そのため、多孔性アルミニウム酸化皮膜層の形成が極端に遅くなりその厚さが不足し、一次密着性が不合格であった。
比較例7では、交流電解処理における電流密度が低過ぎたため、バリア型アルミニウム酸化皮膜層が優先的に形成された。そのため、多孔性アルミニウム酸化皮膜層の厚さが不足し、一次密着性が不合格であった。
比較例8では、交流電解処理における電流密度が高過ぎたため、電解処理において電解溶液中にスパークが発生する等、制御が不安定になった。そのため、酸化膜全体が過剰に形成され、多孔性アルミニウム酸化皮膜層及びバリア型アルミニウム酸化皮膜層の厚さが過大となった。その結果、一次密着性が不合格であった。
比較例9では、交流電解処理における電解処理時間が短過ぎたため、多孔性アルミニウム酸化皮膜層及びバリア型アルミニウム酸化皮膜層が十分に形成されなかった。そのため、多孔性アルミニウム酸化皮膜層及びバリア型アルミニウム酸化皮膜層の厚さが不足し、一次密着性が不合格であった。
比較例10では、交流電解処理における電解処理時間が長過ぎたため、酸化膜全体が過剰に形成された。そのため、多孔性アルミニウム酸化皮膜層及びバリア型アルミニウム酸化皮膜層が厚くなり過ぎ、一次密着性が不合格であった。
比較例11及び12では、多孔性アルミニウム酸化皮膜層及びバリア型アルミニウム酸化皮膜層の形状は本発明の規定を満たした。しかしながら、電解終了後にアルミニウム材に流れる電流密度が1A/dm未満になるまでの時間が10秒を上回り、多孔性アルミニウム酸化皮膜層とバリア型アルミニウム酸化皮膜層の境界に生じた亀裂の長さが同境界長さの50%を超えたため、一時密着性が不合格であった。
なお、比較例2、4〜7及び9において、表4における酸化皮膜層厚さが算術平均値の50〜150%となった測定点が100未満であったのは、これら比較例における条件では、酸化皮膜厚が非常に薄く、かつ形成が不安定であったため、溶存Al濃度が5〜1000ppmでも酸化皮膜厚のバラツキが大きくなったためである。
本発明によれば、高い生産性を有する連続処理により、接着性及び密着性に優れた表面処理アルミニウム材を生産することができる。更に、この表面処理アルミニウム材と樹脂の接合体は、優れた接合性を有する。
1・・・電解槽
2・・・電解槽に搬入される前位置に配設された一対のロール
3・・・電解槽から搬出される後位置に配設された一対のロール
4・・・電解溶液
5・・・アルミニウム材
6・・・対電極
7・・・交流電源
b・・・アルミニウム材の搬送方向に沿った対電極の終端から同方向に沿った電解槽の終端までの距離
c・・・アルミニウム材の搬送方向
L・・・アルミニウム材の搬送方向に沿った対電極の長さ

Claims (4)

  1. 表面に酸化皮膜が形成されており、前記酸化皮膜は表面側に形成された厚さ20〜500nmの多孔性アルミニウム酸化皮膜層と素地側に形成された厚さ3〜30nmのバリア型アルミニウム酸化皮膜層とから成り、前記多孔性アルミニウム酸化皮膜層には直径5〜30nmの小孔が形成されており、前記多孔性アルミニウム酸化皮膜層とバリア型アルミニウム酸化皮膜層との境界においてこの境界に平行して前記酸化皮膜が凝集破壊した亀裂が発生しており、前記酸化皮膜の厚み方向に沿った断面において、前記亀裂長さが前記境界長さの50%以下であることを特徴とする樹脂密着性に優れた表面処理アルミニウム材。
  2. 請求項1に記載の表面処理アルミニウム材の製造方法であって、連続的に電解溶液中に搬送供給されるアルミニウム材の電極と固定された対電極とを用い、前記電解溶液がpH9〜13で液温35〜85℃のアルカリ性水溶液であり、周波数10〜100Hz、電流密度4〜50A/dm及び電解時間5〜300秒間の条件で交流電解処理することにより、前記対電極に対向するアルミニウム材部分の表面に酸化皮膜を形成する方法において、前記アルミニウム材の電極と対電極は連続的に通電されており、前記電解時間が終了してから電解処理されたアルミニウム材部分に流れる電流密度が1A/dm未満になるまでの時間が10.0秒以下であることを特徴とする樹脂密着性に優れた表面処理アルミニウム材の製造方法。
  3. 前記アルミニウム材の電極と対電極との電極間距離が2〜150mmである、請求項2に記載の樹脂密着性に優れた表面処理アルミニウム材の製造方法。
  4. 請求項1に記載の表面処理アルミニウム材と、当該表面処理アルミニウム材の酸化皮膜が形成された表面に被覆した樹脂とからなることを特徴とする表面処理アルミニウム材/樹脂の接合体。
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