JP2019026924A - 表面処理アルミニウム合金材及びその製造方法 - Google Patents

表面処理アルミニウム合金材及びその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】Al−Si系合金基材にアルカリ交流電解を施しても、均一なアルミニウム酸化皮膜が形成され、樹脂などへの接合性及び密着性に優れた表面処理アルミニウム合金材を提供する。
【解決手段】Al−Si系合金基材と、その表面の少なくとも一部に形成されたアルミニウム酸化皮膜とを備えた表面処理アルミニウム合金材であって、前記アルミニウム酸化皮膜は表面側に形成された厚さ20〜1000nmの多孔性アルミニウム酸化皮膜層と素地側に形成された厚さ3〜50nmのバリア型アルミニウム酸化皮膜層から成り、前記多孔性アルミニウム酸化皮膜層には直径3〜50nmの小孔が形成されており、前記アルミニウム酸化皮膜における色調の明度の指標であるL値が40〜95であることを特徴とする表面処理アルミニウム合金材、ならびに、その製造方法。
【選択図】図1

Description

本発明は、表面処理を施したAl−Si系合金のアルミニウム合金材及びその製造方法、ならびに、樹脂被覆表面処理アルミニウム合金材に関し、詳細には、表面にアルミニウム酸化皮膜を有する接着性及び密着性に優れた表面処理アルミニウム合金材及びこれを安定して製造する方法に関する。
アルミニウム材は軽量で、かつ適度な機械的特性を備え、様々な構造部材に広く適用されている。これらのアルミニウム材の一部又は全体に表面処理を施すことで、耐食性、密着性、絶縁性、抗菌性、耐摩耗性等の性質を付与させ、或いは、これらの性質を向上させて使用されることも多い。特に、Al−Si系合金からなるアルミニウム合金材は、従来ダイキャスト等の鋳物用として多く使用されている。このアルミニウム合金材を圧延し、板状に成形して使用する場合には、Al−Si系合金が低融点という特徴を生かして、熱交換器用材料のろう材として用いられることが多い。また、近年ではAl−Si系合金からなるアルミニウム合金材が有する低熱膨張率や耐熱性、陽極酸化処理時の発色性(合金発色)を利用して、板材の構造部材への適用が検討されている。このようなアルミニウム材を用いた構造部材は特に、自動車、航空機などの輸送材や、電子基板、IT機器などの電子部材に多く適用されており、更なる軽量化、機能性向上のために、樹脂材料と組み合わせて使用されることもある。
例えば、耐食性及び耐摩耗性を向上させる表面処理法として、例えば非特許文献1に記載されるような、陽極酸化皮膜処理(いわゆるアルマイト処理)が広く用いられている。具体的には、アルミニウム材を酸性の電解液に浸漬して直流電流により電解処理を行うことによって、アルミニウム材の表面に厚さ数〜数十μmの陽極酸化皮膜を形成させるもので、用途に応じて種々の表面処理法が提案されている。
一般に、Al−Si系合金は、合金中に含まれるSiが陽極酸化皮膜の形成を阻害するため、皮膜形成が不均一になり、所望の性能が得られない場合が多い。皮膜を均一にするために、様々な電解条件の改良、ならびに、アルミニウム材の合金組成や製造条件の改良が検討されている。例えば、特許文献1においてSiを0.3〜3%含有させることで、アルミニウム合金材の表面に、黄味色の少ない淡灰色の酸化皮膜を形成させるアルミニウム合金が提案されている。
また、アルミニウム材を樹脂材料と組み合わせて使用する場合には、アルミニウム材表面に密着性を高めるための表面処理が施されることが多い。特に樹脂密着性を向上させる表面処理法として、特許文献2に記載されるようなアルカリ交流電解法が提案されている。すなわち、pH9〜13で液温35〜80℃のアルカリ性水溶液を電解溶液とし、周波数20〜100Hz、電流密度4〜50A/dm及び電解時間5〜60秒間の条件で交流電解処理を行なうものである。これにより、膜厚50〜500nmの酸化皮膜が形成されたアルミニウム材が得られるとしている。
特許文献1に記載されるように、Al−Si系合金からなるアルミニウム合金材表面に、均一な酸化皮膜を形成させるためには、通常、Si含有量を制限する必要な場合が多くあった。このようにSi含有量を制限すると、低熱膨張率、耐熱性、陽極酸化処理時の発色性などの特性の低下を招く問題があった。
また、Al−Si系合金からなるアルミニウム合金材の表面に、高密着性の酸化皮膜を形成させるため、特許文献2の技術を用いてアルカリ水溶液を電解液とし電解条件で処理を行った場合、アルミニウム合金材の種類、特にSiを1.7mass%以上含有するアルミニウム合金材を樹脂材料と接合する構造部材として用いる場合には、表面の組成によっては全体的に均一な酸化皮膜が形成されず、樹脂などへの密着性が劣る場合があった。具体的には、アルミニウム合金材の酸化皮膜が不均一に形成されているだけでなく、表面の一部が色調変化を呈し、当該部分の密着性が極めて低下するという問題があった。
日本工業規格JIS H8601、「アルミニウム及びアルミニウム合金の陽極酸化皮膜」(1999)
特開平6−340939号公報 特開2015−193263号公報
本発明者らは、上記問題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、Al−Si系合金からなるアルミニウム合金基材の表面に、アルカリ交流電解によって接着性及び密着性に優れたアルミニウム酸化皮膜を形成させることを見出して本発明を完成させるに至った。特に、アルミニウム酸化皮膜が形成された部分の色調を制御することで接着性及び密着性がより向上することを見出した。また、多孔性アルミニウム酸化皮膜層を形成させるためのアルミニウム合金材の調製において、熱間加工と冷間加工の間の中間焼鈍処理工程及び冷間加工後の熱処理工程の少なくともいずれか一方の処理工程を所定温度で実施することにより、Al−Si系合金からなるアルミニウム合金材の表面に高い接着性と密着性とを有するアルカリ交流電解酸化皮膜を均一に形成できる方法を見出した。
すなわち、本発明は請求項1において、Al−Si系合金基材と、その表面の少なくとも一部に形成されたアルミニウム酸化皮膜とを備えた表面処理アルミニウム合金材であって、前記アルミニウム酸化皮膜は表面側に形成された厚さ20〜1000nmの多孔性アルミニウム酸化皮膜層と素地側に形成された厚さ3〜50nmのバリア型アルミニウム酸化皮膜層から成り、前記多孔性アルミニウム酸化皮膜層には直径3〜50nmの小孔が形成されており、前記アルミニウム酸化皮膜における色調の明度の指標であるL値が40〜95であることを特徴とする表面処理アルミニウム合金材とした。
本発明は請求項2では請求項1において、前記アルミニウム酸化皮膜上に樹脂層を備えるものとした。
本発明は請求項3では、請求項1に記載の表面処理アルミニウム材の製造方法であって、前記Al−Si系合金基材を調製し、この表面処理されるAl−Si系合金基材を一方の電極としこれと対向する対電極を他方の電極として用い、pH9〜13で35〜80℃のアルカリ性水溶液を電解溶液として、周波数10〜100Hz、電流密度4〜50A/dm及び電解時間2〜600秒間の条件で交流電解処理することにより、前記Al−Si系合金基材における対電極に対向する表面の少なくとも一部にアルミニウム酸化皮膜を形成することを特徴とする表面処理アルミニウム合金材の製造方法とした。
本発明は請求項4では請求項3において、請求項2に記載の表面処理アルミニウム材の製造方法であって、前記アルミニウム酸化皮膜上に樹脂層を被覆する工程を更に備えるものとした。
本発明は請求項5では請求項3又は4において、前記Al−Si系合金基材の調製において、熱間加工と冷間加工の間の中間焼鈍処理工程及び冷間加工後の熱処理工程の少なくともいずれか一方の処理工程が設けられ、前記中間焼鈍処理工程及び熱処理工程における処理温度が200〜350℃であるものとした。
本発明によって、Al−Si系合金からなるアルミニウム合金材の表面に樹脂材料などに対して高接着性で高密着性のアルミニウム酸化皮膜を均一に形成可能なため、アルミニウム合金材の全面にわたって接着性及び密着性に優れた表面処理アルミニウム合金材を得ることができる。
本発明に係る、アルミニウム酸化皮膜が形成された表面処理アルミニウム合金材の模式図である。 本発明に係る表面処理アルミニウム合金材を製造するための交流電解装置を示す正面図である。 本発明に係る表面処理アルミニウム合金材と熱可塑性樹脂片を接合する試験片の正面図である。
以下、本発明の詳細を順に説明する。図1に示すように、本発明に係る表面処理アルミニウム合金材1のAl−Si系合金基材2の表面には、アルミニウム酸化皮膜3が形成されており、このアルミニウム酸化皮膜3は表面側に形成された多孔性アルミニウム酸化皮膜層4と素地側に形成されたバリア型アルミニウム酸化皮膜層5とから成る。そして、多孔性アルミニウム酸化皮膜層4には小孔6が形成されている。
A.アルミニウム合金材
A−1.Al−Si系合金基材
本発明に係るアルミニウム合金材は、基材としてAl−Si系合金基材を用いる場合に、最も大きな効果が得られる。このようなAl−Si系合金基材としては、Siを1〜15mass%(以下、単に「%」と略記する)含有するものが好ましく、3〜12%含有するものがより好ましい。Al−Si系合金基材の形状としては特に制限されるものではないが、安定して処理皮膜を形成できることから平板状のものが好適に用いられ、用途に応じて、板厚を適宜選択することができる。
A−2.アルミニウム酸化皮膜
本発明に係る表面処理アルミニウム合金材の表面には、表面側に形成された多孔性アルミニウム酸化皮膜層と素地側に形成されたバリア型アルミニウム酸化皮膜層とが形成されている。すなわち、表面処理アルミニウム合金材の表面には、多孔性アルミニウム酸化皮膜層とバリア型アルミニウム酸化皮膜層の二層によって構成されるアルミニウム酸化皮膜が形成されている。多孔性アルミニウム酸化皮膜層が強力な接着性や密着性を発揮する一方で、バリア型アルミニウム酸化皮膜層によって、アルミニウム酸化皮膜全体とアルミニウム素地を強固に接合する。なお、アルミニウム酸化皮膜は、表面処理アルミニウム合金材の表面の少なくとも一部に形成されていればよい。従って、表面全体に形成されていてもよく、或いは、表面の所定の部分に形成されていてもよい。また、表面処理アルミニウム合金材が平板状の場合には、一方の表面のみにアルミニウム酸化被膜を設けてもよく、或いは、両方の表面にアルミニウム酸化被膜を設けてもよい。
A−2−1.多孔性アルミニウム酸化皮膜層
多孔性アルミニウム酸化皮膜層の厚さは、20〜1000nmであり、好ましくは50〜500nmである。多孔性アルミニウム酸化皮膜層の厚さが20nm未満では、厚さが十分でないため、後述する小孔構造の形成が不十分になり易く接着力や密着力が低下する。一方、多孔性アルミニウム酸化皮膜層の厚さが1000nmを超えると、多孔性アルミニウム酸化皮膜層自体が凝集破壊し易くなり接着力や密着力が低下する。多孔性アルミニウム酸化皮膜層の厚さの測定には、透過型電子顕微鏡(TEM)による断面観察が好適に用いられる。具体的には、ウルトラミクロトーム等により多孔性アルミニウム酸化皮膜層部分を薄片に加工し、TEM観察することによって測定される。なお、一つの観察視野における複数箇所の測定値の算術平均値をもって、多孔性アルミニウム酸化皮膜層の厚さとした。
図1に示すように、多孔性アルミニウム酸化皮膜層4は、その表面から深さ方向に向かう小孔6を備えるポア構造を有する。小孔の直径は3〜50nmであり、好ましくは5〜30nmである。この小孔6は、樹脂層や接着剤などとアルミニウム酸化皮膜層3との接触面積を増大させ、その接着力や密着力を増大させる効果を発揮するものである。小孔6の直径が3nm未満では、接触面積が不足するため十分な接着力や密着力が得られない。一方、小孔6の直径が50nmを超えると、多孔性アルミニウム酸化皮膜層全体が脆くなって凝集破壊を生じ、接着力や密着力が低下する。
多孔性アルミニウム酸化皮膜層の表面積に対する小孔の全孔面積の比については、特に制限されるものではないが、多孔性アルミニウム酸化皮膜層の見かけ上の表面積(表面の微小な凸凹などを考慮せず、長さと幅の乗算で表される面積)に対する小孔の全孔面積の比として25〜75%が好ましい。この比が25%未満では、接触面積が不足して十分な接着力や密着力が得られない場合がある。一方、この比が75%を超えると多孔性アルミニウム酸化皮膜層全体が脆くなって凝集破壊を生じ、接着力や密着力が低下する場合がある。
上記ポア構造における小孔の直径及び面積占有率の測定には、電界放出形電子顕微鏡(FE−SEM)による表面観察及び画像解析ソフトA像くん(旭化成エンジニアリング社製ver. 2.50)による粒子解析が好適に用いられる。具体的には、加速電圧2kV、観察視野1μm×0.7μmで複数個所撮影した二次電子像を、画像解析ソフトに取り込み、多孔性アルミニウム酸化皮膜層の表面において観察される小孔部分を粒子とみなした各箇所における粒子解析を実施するものである。電界放出形電子顕微鏡(FE−SEM)による表面観察が好適に用いられる。
A−2−2.バリア型アルミニウム酸化皮膜層
バリア型アルミニウム酸化皮膜層の厚さは、3〜50nmであり、好ましくは5〜30nmである。この厚さが5nm未満では介在層として多孔性アルミニウム酸化皮膜層とアルミニウム素地との結合に十分な結合力を付与することができず、特に、高温・多湿などの過酷環境における結合力が不十分となる。一方、この厚さが50nmを超えると、その緻密性ゆえにバリア型アルミニウム酸化皮膜層が凝集破壊し易くなり、却って接着力や密着力が低下する。バリア型アルミニウム酸化皮膜層の厚さの測定にも、多孔性アルミニウム酸化皮膜層と同じく透過型電子顕微鏡(TEM)による断面観察が好適に用いられる。具体的には、ウルトラミクロトーム等によりバリア型アルミニウム酸化皮膜層部分を薄片に加工し、TEM観察することによって測定される。なお、一つの観察視野における複数箇所の測定値の算術平均値をもって、バリア型アルミニウム酸化皮膜層の厚さとした。
A−3.表面におけるL値
本発明に係る表面処理アルミニウム合金材のアルミニウム酸化皮膜における色調の明度の指標であるL値、すなわち、アルミニウム酸化皮膜に対して測定したL値は40〜95であり、好ましくは60〜80である。L値が40未満の場合には、アルミニウム酸化皮膜が部分的に薄くなることがあり、この薄い箇所では、接着すべき接着剤や密着すべき樹脂層などとアルミニウム酸化皮膜の間に隙間が生じ易くなる。その結果、接着剤や樹脂層に対して十分な接触面積を得られずに接着力及び密着力が低下する。一方、L値が95を超える場合には、アルミニウム酸化皮膜が部分的に厚くなることがあり、この厚い箇所では、密着すべき樹脂層などからの応力が集中し、アルミニウム酸化皮膜での凝集破壊を誘発して密着力及び接着力が低下する場合がある。
本発明におけるアルミニウム酸化皮膜のL値の測定には、色差計による表面分析が好適に用いられる。具体的には、表面処理アルミニウム合金材のアルミニウム酸化皮膜が形成された表面において、等間隔に複数箇所を任意に選択し、各選択箇所のL値を測定して測定値の算術平均値をもってL値とするものである。
B.表面処理アルミニウム合金材の製造方法
以下に、本発明に係る表面処理アルミニウム合金材の製造方法について説明する。
上述の要件を満たすアルミニウム酸化皮膜を表面に備えた表面処理アルミニウム合金材を製造するための一つの方法として、表面処理されるAl−Si系合金基材を一方の電極としこれと対向する対電極を他方の電極として用い、pH9〜13で35〜80℃のアルカリ性水溶液を電解溶液とし、周波数20〜100Hz、電流密度4〜50A/dm及び電解時間5〜600秒間の条件で交流電解処理することにより、Al−Si系合金基材の表面にアルミニウム酸化皮膜を形成する方法を挙げることができる。
B−1.電極
本発明において、交流電解処理されるAl−Si系合金基材の電極と対電極の形状は特に限定されるものではないが、Al−Si系合金基材の電極と対電極との距離を均一にして安定して電解処理皮膜を形成するには、Al−Si系合金基材の電極と対電極は板形状のものが好適に用いられる。図2に示すように、結線された対電極板7、8を用意し、これら2枚の対電極板の間に表面処理されるAl−Si系合金基板9の両方の表面をそれぞれ、対電極板7、8の表面と平行になるように設置することが好ましい。Al−Si系合金基板の電極9は交流電源11を介して対電極板7、8に接続されている。これらAl−Si系合金基板の電極9、対電極板7、8は、アルカリ性水溶液の電解溶液12が入れられた電解層に設置される。対電極7、8は対向するAl−Si系合金基板9に対して同等以上の寸法を用いて、これら電極を静止状態で電解操作を行なうのが好ましい。また、Al−Si系合金基板9の一方の表面のみを処理する場合には、対電極板接続スイッチ10を切ることによってAl−Si系合金基板9の一方の表面(Al−Si系合金基板の電極の図中における左側の表面)のみを処理することもできる。
交流電解処理に使用する一対の電極のうち一方の電極は、電解処理によって表面処理されるべきアルミニウム材である。他方の対電極としては、例えば、黒鉛、アルミニウム、チタン電極等の公知の電極を用いることができるが、電解溶液のアルカリ成分や温度に対して劣化せず、導電性に優れ、更に、それ自身が電気化学的反応を起こさない材質のものを使用する必要がある。このような点から、対電極としては黒鉛電極が好適に用いられる。これは、黒鉛電極が化学的に安定であり、かつ、安価で入手が容易であることに加え、黒鉛電極に存在する多くの気孔の作用により交流電解工程において電気力線が適度に拡散するため、多孔性アルミニウム酸化皮膜層及びバリア型アルミニウム酸化皮膜層が共により均一になり易いためである。
B−2.交流電解処理条件
交流電解処理条件は、上記Al−Si系合金基材の電極と二つ又は一つの対電極を用い、アルカリ性水溶液を電解溶液とするものである。
本発明において、電解溶液として用いるアルカリ水溶液は、水酸化ナトリウム及び水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物;りん酸ナトリウム、りん酸水素ナトリウム、ピロりん酸ナトリウム、ピロりん酸カリウム及びメタりん酸ナトリウム等のりん酸塩;炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム等の炭酸塩;水酸化アンモニウム;或いは、これらの混合物を含む水溶液を用いることができる。後述するように電解溶液のpHを特定の範囲に保つ必要があることから、バッファー効果の期待できるりん酸塩系物質を含有するアルカリ水溶液を用いるのが好ましい。このようなアルカリ水溶液に含まれるアルカリ成分の濃度は、電解溶液のpHが所望の値になるように適宜調整されるが、通常、1×10−4〜1モル/リットルで、好ましくは1×10−3〜0.8モル/リットルである。なお、これらのアルカリ性水溶液には、アルミニウム合金材表面の清浄度を上げるために界面活性剤やキレート剤等を添加してもよい。
本発明で用いる電解溶液には、アルカリ水溶液を用いる。アルカリ水溶液のpHは9〜13であり、好ましくは9.5〜12.5である。pHが9未満では電解溶液のアルカリエッチング力が不足するため、多孔性アルミニウム酸化皮膜層のポア構造の成長速度が遅くなる結果、多孔性アルミニウム酸化皮膜層厚さが薄くなり、密着耐久性が低下する。一方、pHが13を超えると、アルカリエッチング力が過剰になるため多孔性アルミニウム酸化皮膜層のポア構造が溶解してしまい、所望の密着性が得られない。
本発明で使用する電解溶液の温度は、35〜80℃とし、好ましくは40〜75℃とする。電解溶液の温度が35℃未満の場合には、アルカリエッチング力が不足するため多孔性アルミニウム酸化皮膜層の形成が不定形となり、密着耐久性が低下する。一方、電解溶液の温度が80℃を超える場合には、アルカリエッチング力が過剰になるため、多孔性アルミニウム酸化皮膜層の小孔の密度が小さくなり、樹脂等との密着性に必要なアンカー効果が得られ難くなり、密着耐久性が低下する。
本発明における電解時間は2〜600秒間とし、好ましくは5〜300秒間、より好ましくは10〜60秒間とする。電解時間が2秒未満の場合には、多孔性アルミニウム酸化皮膜層のポア構造の形成が不足し、樹脂等との密着性が低下する。一方、電解時間が600秒を超えると、多孔性アルミニウム酸化皮膜層のポア構造が再溶解し、また、生産性も低下する。
本発明における交流周波数は10〜100Hzであり、好ましくは20〜80Hzである。交流周波数が20Hz未満では、電気分解としては直流的要素が高まる結果、多孔性アルミニウム酸化皮膜層のポア構造の形成が進行せず、樹脂等との密着性が低下する。一方、交流周波数が100Hzを超える場合には、陽極と陰極の反転が速すぎるため、アルミニウム酸化皮膜全体の形成が極端に遅くなり、多孔性アルミニウム酸化皮膜層のポア構造の所定厚さを得るには極めて長時間を要することになる。なお、交流電解における電解波形は特に限定されるものではなく、正弦波、矩形波、台形波、三角波等の波形を用いることが出来る。
本発明における交流電解処理において、電流密度は4〜50A/dmとし、好ましく、5〜40A/dmとする。電流密度が4A/dm未満では、アルミニウム酸化皮膜のうち、多孔性アルミニウム酸化皮膜層の成長速度が遅いため、バリア型アルミニウム酸化皮膜層しか得られない。一方、電流密度が50A/dmを超えると、電流が過大になるため多孔性アルミニウム酸化皮膜層及びバリア型アルミニウム酸化皮膜層の厚さ制御が困難となり処理ムラが起こり易くなる。その結果、多孔性アルミニウム酸化皮膜層が極端に厚い部分においてアルミニウム素地から脱落する場合がある。
電解溶液に含有される溶存アルミニウム濃度は、5〜1000ppmとするのが好ましい。溶存アルミニウム濃度が5ppm未満の場合は、電解反応初期におけるアルミニウム酸化皮膜の形成反応が急激に生起するため、処理工程のばらつき(Al−Si系合金基材表面の汚れ状態やAl−Si系合金基材の取り付け状態など)の影響を受けることがある。その結果、局部的に厚いアルミニウム酸化皮膜が形成されることとなる。一方、溶存アルミニウム濃度が1000ppmを超える場合は、電解溶液の粘度が増大して電解工程においてAl−Si系合金基材の電極表面付近の均一な対流が妨げられるのと同時に、溶存アルミニウムがアルミニウム酸化皮膜形成を抑制する方向に作用する。その結果、局部的に薄いアルミニウム酸化皮膜が形成されることになる。このように、溶存アルミニウム濃度が上記範囲から外れると、アルミニウム酸化皮膜の厚さが局部的に厚くなったり、アルミニウム酸化皮膜の形成が抑制されるため、得られるアルミニウム酸化皮膜の接着力及び密着力の低下が起こる場合がある。
C.Al−Si系合金基材の製造方法
上述の要件を満たしたアルミニウム酸化皮膜を表面に備える表面処理アルミニウム合金材を製造するための一つの方法として、表面処理されるAl−Si系合金基材の調製において、熱間加工と冷間加工の間の中間焼鈍処理工程及び冷間加工後の熱処理工程の少なくともいずれか一方の処理工程における処理温度を200〜350℃とする方法を挙げることができる。このような処理工程によって、交流電解処理によって形成されたアルミニウム酸化皮膜の均一性が高められ樹脂等との接着力や密着力が向上する。
上記処理工程における処理温度は200〜350℃であり、好ましくは270〜350℃、より好ましくは300〜340℃である。この処理温度が200℃未満の場合には、この熱処理によってアルミニウム酸化皮膜に局部的に薄い箇所が生じ、樹脂等との接着力や密着力が低下する虞がある。一方、処理温度が350℃を超える場合には、この熱処理によってアルミニウム酸化皮膜の表面に白濁が生じ、白濁部が脆弱層となり、樹脂等との接着力や密着力が低下する虞がある。
D.樹脂被覆表面処理アルミニウム合金材
本発明に係る表面処理アルミニウム合金材の処理面に樹脂層をさらに被覆して樹脂被覆表面処理アルミニウム合金材とすることにより、更に多くの用途に使用できる。ここで、樹脂層としては、熱硬化性樹脂と熱可塑性樹脂のいずれを用いてもよく、本発明で規定する特定構造のアルミニウム酸化皮膜と相まって、様々な効果を付与できる。
通常、アルミニウム材と樹脂層との接合体は、アルミニウム材に比べて樹脂の熱膨張率が大きいことから、アルミニウム材と樹脂層との界面において、剥離、クラック、切れなどの損傷が発生し易い。しかしながら、本発明に係る表面処理アルミニウム合金材においてはAl−Si系合金基材を用いている。このAl−Si系合金基材は、他のアルミニウム合金材に比べて熱膨張率が低いため、被覆される樹脂層の膨張に追従し難く、表面処理アルミニウム合金材と樹脂層の界面において上記損傷が発生し難い特徴を備える。本発明に係る樹脂被覆表面処理アルミニウム合金材に用いる樹脂の線膨張係数は、80×10−5−1以下が好ましく、50×10−5−1以下がより好ましい。
特に、樹脂層に熱可塑性樹脂を用いた樹脂被覆表面処理アルミニウム合金材は、軽量、高剛性を有する輸送機器用の複合材料として、具体的には航空・宇宙分野、自動車、船舶、鉄道車両などの構造部材に好適に用いられ、更に、高意匠性や高絶縁性を必要とする電子機器にも好適に用いられる。樹脂層の被覆方法としては、熱可塑性樹脂部材を熱圧着する方法、熱可塑性樹脂部材を射出成形で製造する際に、射出成形の金型内に表面処理アルミニウム合金材をインサートして接合させる方法などが一般に用いられる。また、表面処理アルミニウム合金材が板状である場合には、熱可塑性樹脂フィルムを積層してもよい。
熱可塑性樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン;ポリ塩化ビニル;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル;ポリアミド;ポリフェニレンスルファイド;ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルケトンなどの芳香族ポリエーテルケトン;ポリスチレン;ポリテトラフルオロエチレン、ポリクロロトリフルオロエチレンなどのフッ素樹脂;ポリメタクリル酸メチルなどのアクリル樹脂;ABS樹脂;ポリカーボネート;熱可塑性ポリイミドなど;を用いることができる。
樹脂層に熱硬化性樹脂を用いた樹脂被覆表面処理アルミニウム合金材は、意匠性塗装板、電子材料の絶縁被覆用途などに好適に用いられる。樹脂層の被覆方法としては、熱硬化性樹脂を流動状態とし、これを多孔性アルミニウム酸化皮膜層に接触・浸透させ、その後に熱硬化性樹脂を加熱硬化させる方法が用いられる。熱硬化性樹脂としては、フェノール樹脂;ビスフェノールA型及びノボラック型などのエポキシ樹脂;メラミン樹脂;尿素樹脂;不飽和ポリエステル樹脂;アルキド樹脂;ポリウレタン;熱硬化性ポリイミドなど;を用いることができる。
なお、上記熱可塑性樹脂と熱硬化性樹脂は、それぞれを単一で用いてもよく、複数種の熱可塑性樹脂又は複数種の熱硬化性樹脂を混合したポリマーアロイとして用いてもよい。また、上記熱可塑性樹脂と熱硬化性樹脂にそれぞれ各種フィラーを添加することにより、樹脂の強度や熱膨張率等の物性を改善することができる。このようなフィラーとしては、ガラス繊維、炭素繊維、アラミド繊維等の各種繊維;炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、シリカ、タルク、ガラスなどの無機物質;粘土;などの公知物質を用いることができる。
以下、実施例及び比較例に基づいて、本発明における好適な実施の形態を詳細に説明する。
アルカリ交流電解酸化処理されるAl−Si系合金基材に用いるアルミニウム合金として、表1〜3に示すSi含有量を有するものを溶解・鋳造し、熱間圧延後、冷間圧延を施し最終板厚さ1.0mmの圧延板とした。このとき、表1〜3に示す熱処理温度で熱処理(熱間圧延と冷間圧延の間に中間焼鈍)を実施し、縦600mm×横50mm×板厚1.0mmに切断加工したAl−Si系合金基板を作製した。
Figure 2019026924
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このAl−Si系合金基板を一方の電極に用い、対電極として縦150mm×横100mm×厚さ2.0mmの平板の黒鉛電極を用いた。図2に示すように、結線された黒鉛の対電極板7、8を用意し、これら2枚の対電極板の間に表面処理されるAl−Si系合金板の電極9の両方の表面をそれぞれ、対電極板7、8の表面と平行になるように設置した。Al−Si系合金基板の電極9は交流電源11を介して対電極板7、8に接続されており、これら電極9、対電極板7、8は、アルカリ性水溶液の電解溶液12が入れられた電解層に設置されている。このような電解装置を用いて、対電極板接続スイッチ10をONの状態でアルカリ交流電解処理を行った。このアルカリ交流電解処理により、2枚の黒鉛の対電極板7、8にそれぞれ対向するAl−Si系合金基板の電極9の両面に、表面側の多孔性アルミニウム酸化皮膜層と素地側のバリア型アルミニウム酸化皮膜層とを含むアルミニウム酸化皮膜を形成した。
アルカリ交流電解処理に用いる電解溶液には、表1〜3に示すpH、温度のピロりん酸ナトリウムを主成分とするアルカリ性水溶液を使用した。なお、1モル/リットルのNaOH水溶液でpHを適宜調整した。このアルカリ性水溶液の電解質濃度は、0.1モル/リットルとした。なお、表1に示す溶存アルミニウム濃度は、アルミニウム粉末をアルカリ性水溶液に溶解させることで調整した。電解溶液を収容する電解槽中に、Al−Si系合金基板の電極と両対電極を配置し、表1〜3に示す電解処理条件で交流電解処理を実施した。ここで、比較例2及び3では、1モル/リットルの硫酸水溶液でpHを8.5と3にそれぞれ調整した。なお、アルミニウム合金板の電極及び黒鉛対電極の縦方向を電解槽の深さ方向に一致させた。
以上のようにして作製した表面処理アルミニウム合金材の試料について、以下の測定と評価を行なった。
[多孔性アルミニウム酸化皮膜層及びバリア型アルミニウム酸化皮膜層の厚さ]
表面処理アルミニウム合金材の試料に対し、TEMによりアルミニウム酸化皮膜の縦方向に沿った断面観察を実施した。具体的には、多孔性アルミニウム酸化皮膜層及びバリア型アルミニウム酸化皮膜層のそれぞれの厚さを測定した。これらの酸化皮膜層の厚さを測定するために、ウルトラミクロトームを用いて試料から断面観察用薄片試料を作製した。次に、この薄片試料において観察視野(1μm×1μm)中の任意の100箇所を選択してTEM断面観察により、それぞれの酸化皮膜層の厚さを測定した。結果を表4〜6に示す。なお、これらの酸化皮膜層の厚さについては、100箇所の測定結果の算術平均値とした。
Figure 2019026924
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[多孔性アルミニウム酸化皮膜層の小孔直径の測定]
表面処理アルミニウム合金材の試料に対し、FE−SEMによる表面観察(観察視野:0.7μm×1μmの10箇所)により、多孔性アルミニウム酸化皮膜層の小孔の直径を測定した。結果を表4〜6に示す。なお、表1に示す小孔直径については、観察視野における10箇所の測定値の算術平均値とした。
[L値の測定]
表面処理アルミニウム合金材の試料に対し、色差計(スガ試験機株式会社製、SC−P型)を用いた表面分析により、アルミニウム酸化皮膜が形成された表面のL値を測定した。測定箇所は、アルミニウム酸化皮膜が形成された表面を縦及び横がそれぞれ40mmの等間隔でマス目状に分割し、これらの10箇所を任意に選択して各選択箇所のL値を測定し、これらの測定値の算術平均値をもってL値とした。結果を表4〜6に示す。表において、L値が大きい程、明るい色調である。
なお、電解処理は同一の3つのAl−Si系合金基板についてそれぞれ行ない、表に示す数値結果は、これら3つの算術平均値とした。
以上のようにして作製した表面処理アルミニウム合金材の試料に、樹脂層を被覆した樹脂被覆表面処理アルミニウム合金材の試料を作製し、下記の評価を行なった。
樹脂被覆表面処理アルミニウム合金材試料は、次のようにして作製した。まず、上記のように作製した表面処理アルミニウム合金板の試料から縦45mm×横18mmに切断した供試材を20枚用意し、ガラス繊維含有PPS樹脂(DIC社製)を用い、表面処理アルミニウム合金板のインサート成形による接合試験片を20組作製した。射出成形金型に表面処理アルミニウム板の試料をインサートし、金型を閉めこれを表1〜3に示す温度まで加熱後、PPS樹脂を射出温度320℃で射出することで、図3に示す接合体試料を得た。接合部は、表面処理アルミニウム板の試料端部の縦10mm×横5mm部分とした。
以上のようにして、実施例1〜38及び比較例1〜11、13、14では、表面処理アルミニウム合金板と樹脂層との接合体を得た。なお、比較例12では、樹脂層を接合することができず、接合体を得ることができなかった。
[熱可塑性樹脂の接合評価]
上記のように、作製した接合体試料の10組を引張試験機にて5mm/min.の速度でせん断方向に引っ張り、接合部における熱可塑性樹脂の凝集破壊率を測定し、下記の基準で評価した。
◎:凝集破壊率が95%以上のもの
○:凝集破壊率が85%以上95%未満のもの
△:凝集破壊率が75%以上85%未満のもの
×:凝集破壊率が75%未満のもの
結果を表4〜6に示す。同表には、10組の接合体試料のうちの上記◎、○、△、×の個数をそれぞれ示すが、全てが◎又は○からなる場合を合格、それ以外を不合格と判定した。
[密着耐久性評価]
上記のようにして作製した接合体試料の10組を塩水噴霧試験方法(JIS Z 2371)に記載の中性塩水噴霧試験にかけて1000時間後に取出し、引張試験機にて5mm/min.の速度でせん断方向に引っ張り、接合部における熱可塑性樹脂の凝集破壊率を測定し、下記の基準で評価した。
◎:凝集破壊率が80%以上のもの
○:凝集破壊率が65%以上80%未満のもの
△:凝集破壊率が50%以上65%未満のもの
×:凝集破壊率が50%未満のもの
結果を表4〜6に示す。同表には、10組の接合体試料のうちの上記◎、○、△、×の個数をそれぞれ示すが、全てが◎又は○からなる場合を合格、それ以外を不合格と判定した。
[総合評価]
上記アルミニウム酸化皮膜における熱可塑性樹脂の接合性評価及び密着耐久性評価の両方が合格であったものを総合評価が合格とし、これら各評価の少なくともいずれか一つが不合格のものを総合評価が不合格とした。
表4〜6に示すように、実施例1〜41では、製造方法が本発明要件を満たすため、樹脂被覆表面処理アルミニウム合金材の接合強度が良好で、密着耐久性も良好であり、総合評価が合格であった。
これに対して比較例1〜12では、製造方法が本発明要件を満たしていないため、樹脂被覆表面処理アルミニウム合金材の接合強度と密着耐久性の少なくともいずれか一方が不合格であり、総合評価が不合格であった。
具体的には、比較例1では、電解溶液のpHが高過ぎたため、小孔の直径が大き過ぎて、熱可塑性樹脂層とアルミニウム酸化皮膜との接合面が減少した。その結果、密着耐久性が不合格となり、総合評価が不合格となった。
比較例2では、電解溶液のpHが中性付近のため、多孔性アルミニウム酸化皮膜の皮膜成長が遅く、薄い酸化皮膜層が形成し、L値が40より小さくなり、熱可塑性樹脂層とアルミニウム酸化皮膜との接合面が減少した。その結果、接合性及び密着耐久性が不合格となり、総合評価が不合格となった。
比較例3では、電解溶液のpHが小さ過ぎたため、薄い多孔性アルミニウム酸化皮膜を形成し、小孔の直径が極端に大きくなり、L値が40より小さくなり、熱可塑性樹脂がアルミニウム酸化皮膜中へほとんど流入できなかった。その結果、接合性及び密着耐久性が不合格となり、総合評価が不合格となった。
比較例4では、電解溶液の温度が低過ぎたため、小孔の直径が極端に小さくなり、熱可塑性樹脂が皮膜中へほとんど流入できなかった。その結果、接合性及び密着耐久性が不合格となり、総合評価が不合格となった。
比較例5では、電解溶液の温度が高過ぎたため、多孔性アルミニウム酸化皮膜が薄く、小孔の直径が大きくなり、熱可塑性樹脂層とアルミニウム酸化皮膜との接合面が減少した。その結果、接合性及び密着耐久性が不合格となり、総合評価が不合格となった。
比較例6では、アルカリ交流電解における周波数が低過ぎたため、小孔の直径が極端に大きく、L値が40より小さくなり、熱可塑性樹脂層が皮膜中へほとんど流入できなかった。その結果、接合性及び密着耐久性が不合格となり、総合評価が不合格となった。
比較例7では、アルカリ交流電解における周波数が高過ぎたため、小孔の直径が極端に小さく、L値が95より大きくなり、熱可塑性樹脂層とアルミニウム酸化皮膜との接合面が減少した。その結果、接合性及び密着耐久性が不合格となり、総合評価が不合格となった。
比較例8では、アルカリ交流電解における電流密度が小さ過ぎたため、小孔の大きさが極端に小さく、熱可塑性樹脂が皮膜中へほとんど流入できなかった。その結果、接合性及び密着耐久性が不合格となり、総合評価が不合格となった。
比較例9では、アルカリ交流電解における電流密度が大き過ぎたため、小孔の大きさが極端に大きく、熱可塑性樹脂層とアルミニウム酸化皮膜との接合面積が減少した。その結果、密着耐久性が不合格となり、総合評価が不合格となった。
比較例10では、アルカリ交流電解における電解時間が短過ぎたため、多孔性アルミニウム酸化皮膜層及びバリア型アルミニウム酸化皮膜層が薄くなり、熱可塑性樹脂層とアルミニウム酸化皮膜との接合面が減少した。その結果、接合性及び密着耐久性が不合格となり、総合評価が不合格となった。
比較例11では、アルカリ交流電解における電解時間が長過ぎたため、多孔性アルミニウム酸化皮膜層及びバリア型アルミニウム酸化皮膜層が厚くなり、L値が95より大きくなり、熱可塑性樹脂の皮膜中への流入が少なかった。その結果、接合性及び密着耐久性が不合格となり、総合評価が不合格となった。
比較例12では、アルカリ交流電解に代えて直流電解を用いた。直流電解では、バリア型アルミニウム酸化皮膜層のみが形成し、多孔性アルミニウム酸化皮膜層及びその小孔が形成されなかったため、L値が40より小さくなり、熱可塑性樹脂層を接合することができなかった。その結果、接合性及び密着耐久性の評価ができなかった。
本発明により、アルカリ交流電解によってAl−Si系合金からなるアルミニウム合金基材上に形成したアルミニウム酸化皮膜により、接着性及び密着性に優れた表面処理アルミニウム合金材が提供される。
1‥‥‥表面処理アルミニウム合金材
2‥‥‥Al−Si系合金基材
3‥‥‥アルミニウム酸化皮膜
4‥‥‥多孔性アルミニウム酸化皮膜層
5‥‥‥バリア型アルミニウム酸化皮膜層
6‥‥‥小孔
7‥‥‥対電極
8‥‥‥対電極
9‥‥‥Al−Si系合金基板の電極
10‥‥‥電源スイッチ
11‥‥‥交流電源
12‥‥‥電解溶液
13‥‥‥表面処理アルミニウム合金材
14‥‥‥熱可塑性樹脂片

Claims (5)

  1. Al−Si系合金基材と、その表面の少なくとも一部に形成されたアルミニウム酸化皮膜とを備えた表面処理アルミニウム合金材であって、前記アルミニウム酸化皮膜は表面側に形成された厚さ20〜1000nmの多孔性アルミニウム酸化皮膜層と素地側に形成された厚さ3〜50nmのバリア型アルミニウム酸化皮膜層から成り、前記多孔性アルミニウム酸化皮膜層には直径3〜50nmの小孔が形成されており、前記アルミニウム酸化皮膜における色調の明度の指標であるL値が40〜95であることを特徴とする表面処理アルミニウム合金材。
  2. 前記アルミニウム酸化皮膜上に樹脂層を備える、請求項1に記載の表面処理アルミニウム合金材。
  3. 請求項1に記載の表面処理アルミニウム材の製造方法であって、前記Al−Si系合金基材を調製し、この表面処理されるAl−Si系合金基材を一方の電極としこれと対向する対電極を他方の電極として用い、pH9〜13で35〜80℃のアルカリ性水溶液を電解溶液として、周波数10〜100Hz、電流密度4〜50A/dm及び電解時間2〜600秒間の条件で交流電解処理することにより、前記Al−Si系合金基材における対電極に対向する表面の少なくとも一部にアルミニウム酸化皮膜を形成することを特徴とする表面処理アルミニウム合金材の製造方法。
  4. 請求項2に記載の表面処理アルミニウム材の製造方法であって、前記アルミニウム酸化皮膜上に樹脂層を被覆する工程を更に備える、請求項3に記載の表面処理アルミニウム合金材の製造方法。
  5. 前記Al−Si系合金基材の調製において、熱間加工と冷間加工の間の中間焼鈍処理工程及び冷間加工後の熱処理工程の少なくともいずれか一方の処理工程が設けられ、前記中間焼鈍処理工程及び熱処理工程における処理温度が200〜350℃である、請求項3又は4に記載の表面処理アルミニウム合金材の製造方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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WO2019182021A1 (ja) * 2018-03-22 2019-09-26 株式会社Uacj 表面処理アルミニウム合金材及びその製造方法
CN113025962A (zh) * 2021-03-23 2021-06-25 内蒙古科技大学 一种硅基多孔阳极氧化铝模板及其制备方法

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