JP6148821B2 - 表面処理アルミニウム材及びその製造方法 - Google Patents
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Description
A.アルミニウム材
アルミニウム材としては、純アルミニウム又はアルミニウム合金が用いられる。アルミニウム合金の成分には特に制限無く、JISに規定される合金をはじめとする各種合金を使用することができる。形状としては、板材が好適に用いられる。用途に応じて、板厚を適宜選択することができるが、軽量化と成形性の観点から、0.05〜2mmが好ましく、0.1〜1.0mmが更に好ましい。
アルミニウム材の表面には、耐食性を付与し、また柱状構造体を確実かつ安定に形成するための土台とするため、陽極酸化処理(いわゆるアルマイト処理)によるアルミニウム陽極酸化皮膜が形成される。具体的には、従来技術に基づく陽極酸化処理方法、例えば硫酸、蓚酸、クロム酸及びほう酸のような酸性溶液を用いる方法や、アンモニア−ふっ化物、アルカリ−過酸化物及びりん酸ナトリウムのようなアルカリ性溶液を用いる方法、更には、ほう酸−ホルムアミド及び各種溶融塩のような非水溶媒を用いる方法等を用いることができる。
アルミニウム陽極酸化皮膜の表層は、複数の柱状構造体の集合体からなる。これら各柱状構造体の高さは、50nm以上500nm以下とするのが好ましく、より好ましくは55nm以上490nm以下である。各柱状構造体の底面積は、200nm2以上10000nm2以下とするのが好ましく、より好ましくは300nm2以上9500nm2以下である。各柱状構造体同士の間隔は、20nm以上200nm以下とするのが好ましく、より好ましくは30nm以上180nm以下である。ここで、各柱状構造体の高さ、各柱状構造体の底面積、ならびに、各柱状構造体同士の間隔は、複数の測定(10箇所)の平均値である。
柱状構造体の集合体を含むアルミニウム陽極酸化皮膜の全体厚さは、0.3μm以上60μm以下とするのが好ましく、より好ましくは0.3μm以上56μm以下である。陽極酸化皮膜層全体の厚さが0.3μm未満では、皮膜が薄過ぎるため必ずしも耐食性が十分でなくなる場合がある。一方、60μmを超えると、性能的には問題ないものの陽極酸化処理に膨大な電力及び処理時間が必要になるためコストが増加するという問題が残る。このアルミニウム陽極酸化皮膜の全体厚さもまた、複数の測定(10箇所)の平均値である。
さらに本発明において、用いる陽極酸化処理皮膜が封孔処理されたものであると、耐食性が顕著に向上する。これは、封孔処理によって水分がアルミニウム素地に到達するのがほぼ完全に阻止されるためである。このように、封孔処理により、陽極酸化皮膜が本来有する耐食性が更に向上する。なお、封孔処理の方法については従来技術がそのまま適用可能であり、具体的には、蒸気法、純水沸騰水法、酢酸ニッケル法、重クロム酸法及びけい酸ナトリウム法等の各種封孔処理法を用いることができる。
以上のような条件を満たした各柱状構造体の集合体を表層に有するアルミニウム陽極酸化皮膜を備えた表面処理アルミニウム材を製造するための一つの方法として、従来技術に基づき陽極酸化処理を施して表面にアルミニウム陽極酸化皮膜を備えたアルミニウム材に対し、更にアルカリ交流電解処理を行う方法を挙げることができる。
アルミニウム材として、JIS5052−O材(長さ:100mm、幅:50mm、板厚:1.0mm)を用意した。これに対し、表1のA〜Gに示した通り、従来技術に基づいた陽極酸化処理(処理方法:硫酸アルマイト処理および蓚酸アルマイト処理)を施してアルミニウム陽極酸化皮膜を表面に形成した。なお、表中のHは、比較のため陽極酸化処理を行わないものである。また、表中のGにおいて要した陽極酸化処理時間は、Bの約30倍であった。ここで、GとBの陽極酸化処理条件は、要した時間以外は同じであった。
〔樹脂密着性試験〕
上記供試材を長さ50mm、25mm幅に切断し、その供試材同士を長さ方向において10mm重ね合わせ、市販の2液型エポキシ接着剤(主剤=変性エポキシ樹脂、硬化剤=変性ポリイミド、重量混合比=主剤100/硬化剤100)によって接着し、せん断試験片を作製した。その長さ方向の両端部を引張試験機により100mm/分の速度にて180度方向に引張り、その荷重と剥離状態によって樹脂密着性を下記の基準で評価した。
○:せん断応力が20N/mm2以上で、かつ、接着剤層自身が凝集破壊した状態
△:せん断応力が20N/mm2以上であるものの、接着剤とアルミニウム材表面が界面剥離した状態
×:せん断応力が20N/mm2未満で、かつ、接着剤とアルミニウム材表面が界面剥離した状態
○を合格とし、△と×を不合格とした。本発明に係る表面処理アルミニウム材は、24N/mm2以上36N/mm2以下のせん断応力を有しているのが好ましい。
無塗装の上記供試材に対し、JIS−Z2371:2000 塩水噴霧試験方法 付属書1に準拠した中性塩水噴霧試験を実施した。1000時間経過後に取り出した供試材の腐食をレーティングナンバーで評価し、評価点が9を超えるものを○とし、9以下を×とした。○を合格とし、×を不合格とした。
比較例2では、交流電解処理における電解溶液のpHが低過ぎたため、アルカリエッチング力が不足した。そのため、柱状構造体が太くなって底面積が大きくなり、柱状構造体同士の間隔も狭くなった。その結果、樹脂密着性が不合格となり総合判定が不合格となった。
比較例3では、交流電解処理における電解溶液のpHが高過ぎたため、アルカリエッチング力が過剰になった。そのため、柱状構造体が細くなって底面積が小さくなり、かつ、柱状構造体同士の間隔も広くなった。その結果、樹脂密着性が不合格となり総合判定が不合格となった。
比較例4では、交流電解処理における電解溶液の温度が低過ぎたため、アルカリエッチング力が不足した。そのため、柱状構造体が太くなって底面積が大きくなり、柱状構造体同士の間隔も狭くなった。その結果、樹脂密着性が不合格となり総合判定が不合格となった。
比較例5では、交流電解処理における電解溶液の温度が高過ぎたため、アルカリエッチング力が過剰になった。そのため、柱状構造体同士の間隔が広くなった。その結果、樹脂密着性が不合格となり総合判定が不合格となった。
比較例6では、交流電解処理における周波数が低過ぎたため、柱状構造体の形成が進行せず、陽極酸化皮膜表面全体が均一な緻密構造となってしまった。その結果、樹脂密着性が不合格となり総合判定が不合格となった。
比較例7では、交流電解処理における周波数が高過ぎたため、陽極と陰極の反転が速過ぎ、柱状構造体の形成速度が極端に遅くなった。そのため、柱状構造体の高さが低くなり、かつ、柱状構造体同士の間隔も広くなった。その結果、樹脂密着性が不合格となり総合判定が不合格となった。
比較例8では、交流電解処理における電流密度が低過ぎたため、陽極酸化皮膜表面の均一な緻密構造が優先的に形成され、柱状構造体の形成が進行しなかった。その結果、樹脂密着性が不合格となり総合判定が不合格となった。
比較例9では、交流電解処理における電流密度が高過ぎたため、電解処理において電解溶液中にスパークが発生し、処理不良となり柱状構造体の形状や陽極酸化皮膜厚さが測定できなかった。その結果、樹脂密着性及び耐食性が共に不合格となり、総合判定が不合格となった。
比較例10では、交流電解処理における電解処理時間が短過ぎたため、柱状構造体の高さが低くなり、かつ、柱状構造体同士の間隔も広くなった。その結果、樹脂密着性が不合格となり総合判定が不合格となった。
比較例11では、交流電解処理における電解処理時間が長過ぎたため、柱状構造体の高さが高くなり、かつ、柱状構造体同士の間隔も広くなった。その結果、樹脂密着性が不合格となり総合判定が不合格となった。
比較例12では、交流電解処理を行わなかったため、柱状構造体が形成されなかった。その結果、樹脂密着性が不合格となり、総合判定が不合格となった。
比較例16では、陽極酸化皮膜全体の厚さが薄過ぎたため、耐食性が不合格となり、総合判定が不合格となった。
Claims (4)
- 表面に陽極酸化皮膜を有する表面処理アルミニウム材であって、陽極酸化皮膜の表層が、当該陽極酸化皮膜上に縦向きに互いに間隔を隔てて形成された複数の柱状構造体の集合体からなり、
前記各柱状構造体の高さが50nm以上500nm以下であり、底面積が200nm2以上10000nm2以下であり、各柱状構造体同士の間隔が20nm以上200nm以下であり、前記複数の柱状構造体の集合体を含む陽極酸化皮膜全体の厚さが0.6μm以上60μm以下であることを特徴とする耐食性及び樹脂密着性に優れた表面処理アルミニウム材。 - 前記陽極酸化皮膜が封孔処理されている、請求項1に記載の表面処理アルミニウム材。
- 請求項1又は2に記載の表面処理アルミニウム材の製造方法であって、陽極酸化処理されたアルミニウム材を一方の電極とし、pH9〜13で液温35〜80℃のアルカリ性水溶液を電解溶液とし、周波数20〜100Hz、電流密度4〜50A/dm2及び電解時間5〜60秒間の条件で交流電解処理することを特徴とする表面処理アルミニウム材の製造方法。
- 陽極酸化皮膜が封孔処理されている、請求項3に記載の表面処理アルミニウム材の製造方法。
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