JP6001573B2 - 表面処理アルミニウム材及びその製造方法、ならびに、樹脂被覆表面処理アルミニウム材 - Google Patents

表面処理アルミニウム材及びその製造方法、ならびに、樹脂被覆表面処理アルミニウム材 Download PDF

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Description

本発明は、表面処理を施したアルミニウム材及びその製造方法、ならびに、樹脂被覆表面処理アルミニウム材に関し、詳細には、表面にアルミニウム酸化皮膜を有する接着性及び密着性に優れた表面処理アルミニウム材及びこれを安定して製造する方法、ならびに、表面処理アルミニウム材を用いた樹脂被覆表面処理アルミニウム材に関する。
純アルミニウム材又はアルミニウム合金材(以下、「アルミニウム材」と記す)は、軽量で適度な機械的特性を有し、かつ、美感、成形加工性、耐食性等に優れた特徴を有しているため、各種容器類、構造材、機械部品等に広く使われている。これらのアルミニウム材は、そのまま用いられることもある一方、各種表面処理を施すことで、耐食性、耐摩耗性、樹脂密着性、親水性、撥水性、抗菌性、意匠性、赤外放射性、高反射性等の機能を付加及び向上させて使用されることも多い。
例えば、耐食性及び耐摩耗性を向上させる表面処理法として、陽極酸化処理(いわゆるアルマイト処理)が広く用いられている。具体的には、非特許文献1、2に記載されている通り、アルミニウム材を酸性の電解液に浸漬して直流電流により電解処理を行うことによって、アルミニウム材表面に厚さ数〜数十μmの陽極酸化皮膜を形成させるもので、用途に応じて種々の処理方法が提案されている。
また、特に樹脂密着性を向上させる表面処理法として、特許文献1のようなアルカリ交流電解法が提案されている。すなわち、浴温40〜90℃のアルカリ性溶液を用いて、電流密度4〜50A/dmにて電気量が80C/dmを超える時間、交流電解処理を行なうものである。これにより、膜厚500〜5000オングストロームの酸化皮膜が形成された缶蓋用アルミニウム合金塗装用板が得るとしている。
しかしながら、特許文献1の技術を用いて、同一の電解条件で処理を行った場合でも、電解処理のタイミングによっては密着性が極めて低いものとなる場合があった。具体的には、アルミニウム材表面の一部が色調の変化を呈し(茶褐色又は白濁色が多い)、当該部分の密着性が極めて低くなるというものであった。
アルミニウムハンドブック第7版、179〜190頁、2007年、一般社団法人日本アルミニウム協会 日本工業規格JIS H8601、「アルミニウム及びアルミニウム合金の陽極酸化皮膜」(1999)
特開平3−229895号
本発明は、アルミニウム材の全面にわたって接着性及び密着性に優れた表面処理アルミニウム材及びこのような表面処理アルミニウム材の安定した製造方法、ならびに、表面処理アルミニウム材を用いた樹脂被覆表面処理アルミニウム材の提供を目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決するために検討を重ねた結果、接着性や密着性の低下は、アルミニウム材表面全体における前記多孔性アルミニウム酸化皮膜層とバリア型アルミニウム酸化皮膜層との合計厚さの変動幅を適正化すること、アルミニウム材表面全体における酸化皮膜の形成ムラが原因であること、また、それを防止するためには、アルカリ交流電解処理に用いる電解処理液に含有される溶存アルミニウム濃度を制御することが有効であることを見出した。
すなわち、本発明は、第1の側面において、少なくとも一方の表面に酸化皮膜が形成されたアルミニウム材であって、前記酸化皮膜は表面側に形成された厚さ20〜500nmの多孔性アルミニウム酸化皮膜層と素地側に形成された厚さ3〜30nmのバリア型アルミニウム酸化皮膜層とから成り、前記多孔性アルミニウム酸化皮膜層には直径5〜30nmの小孔が形成されており、当該アルミニウム材表面全体における前記多孔性アルミニウム酸化皮膜層とバリア型アルミニウム酸化皮膜層との合計厚さの変動幅が、当該合計厚さの算術平均値の±50%以内であることを特徴とする表面処理アルミニウム材とした。
本発明は、第1の側面において、更に、前記表面処理アルミニウム材を酸化皮膜側が凸となるように5Rで180度曲げた際において、アルミニウム素地の露出率が5%以下であるものとした。
また、本発明の第2の側面は、第1の側面における表面処理アルミニウム材の製造方法であって、表面処理されるアルミニウム材の電極と、対電極とを用い、pH9〜13で液温35〜80℃であり、かつ、溶存アルミニウム濃度が5ppm以上1000ppm以下のアルカリ性水溶液を電解溶液とし、周波数20〜100Hz、電流密度4〜50A/dm及び電解時間5〜60秒間の条件で交流電解処理することにより、対電極に対向する前記アルミニウム材表面に酸化皮膜を形成することを特徴とする表面処理アルミニウム材の製造方法とした。
本発明は、第2の側面において、対電極を黒鉛電極とするものとした。
更に本発明は、第2の側面において、更に、前記表面処理されるアルミニウム材の電極と、対電極が共に平板状であるものとした。
更に本発明は請求項6において、請求項1又は2に記載の表面処理アルミニウム材の酸化皮膜の表面に樹脂層を被覆したことを特徴とする樹脂被覆表面処理アルミニウム材とした。
本発明により、アルミニウム材の表面に樹脂などに対して高接着性で高密着性の酸化皮膜が均一に形成されるため、アルミニウム材全面にわたって接着性及び密着性に優れた表面処理アルミニウム材を安定して得ることができる。
具体的には、アルミニウム材表面の酸化皮膜を多孔性アルミニウム酸化皮膜層とバリア型アルミニウム酸化皮膜層との二層構造とする。そして、アルミニウム材の表面側に形成された20〜500nmの厚さを有し、かつ、直径5〜30nmの小孔を有する多孔性アルミニウム酸化皮膜層によって、それ自身の凝集破壊を抑制しつつその表面積を増大させることにより密着性を向上させる。また、アルミニウムの素地側に形成された3〜30nmの厚さを有するバリア型アルミニウム酸化皮膜層によって、それ自身の凝集破壊を抑制しつつアルミニウム素地と多孔性アルミニウム酸化皮膜層とを結合して接着性及び密着性を向上させる。更に、アルミニウム材表面全体における酸化皮膜の合計厚さの変動幅を、この合計厚さの算術平均値の±50%以内とすることによって、アルミニウム材表面の全体にわたって、接合すべき樹脂層等との優れた接着性及び密着性が発揮される。
このようにして得られるアルミニウム材はその優れた接着性により、既存技術に基づく各種接着剤を上記樹脂層に用いた場合において極めて大きな接着強度が得られる。また、その優れた密着性により、例えば既存技術に基づく各種塗料、具体的には水性塗料、溶剤性塗料、粉体塗料、電着塗料等を上記樹脂層として塗装する際の下地処理として用いた場合において極めて大きな塗膜密着強度が得られる。
具体的には、本発明の表面処理アルミニウム材の酸化皮膜の表面に熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂等の樹脂層を具備してなる接合体としての樹脂被覆表面処理アルミニウム材とすることにより、従来にも増してアルミニウム材としての様々な用途に用いることができる。例えば、近年になってアルミニウム板の持つ高い熱伝導性に注目したプリント配線基板としての用途を挙げることができる。すなわち、近年の電機・電子機器の小型化、軽量化に伴い、プリント配線基板には従来以上の多層化、高集積化及び高密度化が要求されるようになっている。そして、従来の絶縁体を用いた基板では、高密度に実装された電子部品から発する熱を放散しきれず回路の不安定化を招いていた。これに対し、熱伝導性に優れたアルミニウム板を基板として採用することにより、基板自身による電子部品の冷却が可能となり、回路全体の性能を向上させることができる。
このようなプリント配線基板は、アルミニウム板に銅箔等の金属箔を貼り付けて製造される。その際、接着剤としてエポキシ系樹脂やポリイミド系樹脂等が用いられる。そこで、本発明の表面処理アルミニウム材の酸化皮膜の表面に上記接着剤としての樹脂層を被覆した樹脂被覆表面処理アルミニウム材を用いることにより、上記特定構造の酸化皮膜の介在によって、表面処理アルミニウム材と樹脂層と密着性を特段に向上させつつ、樹脂層によってアルミニウム材と金属箔とを接着することが可能である。
また、本発明に係る製造方法では、交流電解処理条件を適切に設定することによって、上記表面処理アルミニウム材を安定して製造することができる。
本発明に係る表面処理アルミニウム材の模式図である。
以下に、本発明の詳細を順に説明する。図1に示すように、本発明に係る表面処理アルミニウム材1は、一方の表面に酸化皮膜2が形成されており、この酸化皮膜2は表面側に形成された多孔性アルミニウム酸化皮膜層3と素地5側に形成されたバリア型アルミニウム酸化皮膜層4とから成る。そして、多孔性アルミニウム酸化皮膜層3には小孔31が形成されている。
A.アルミニウム材
本発明に用いるアルミニウム材としては、純アルミニウム又はアルミニウム合金が用いられる。アルミニウム合金の成分には特に制限無く、JISに規定される合金をはじめとする各種合金を使用することができる。形状としては特に制限されるものではないが、安定して処理皮膜を形成できることから平板状のものが好適に用いられる。用途に応じて、板厚を適宜選択することができるが、軽量化と成形性の観点から0.05〜2.0mmが好ましく、0.1〜1.0mmが更に好ましい。
B.酸化皮膜
本発明に用いるアルミニウム材の表面には、表面側に形成された多孔性アルミニウム酸化皮膜層と素地側に形成されたバリア型アルミニウム酸化皮膜層とが設けられている。すなわち、アルミニウム材表面には、多孔性アルミニウム酸化皮膜層とバリア型アルミニウム酸化皮膜層の二層によって構成される酸化皮膜が設けられている。多孔性アルミニウム酸化皮膜層が強力な接着性や密着性を発揮する一方で、バリア型アルミニウム酸化皮膜層によって、アルミニウム酸化皮膜層全体とアルミニウム素地を強固に結合する。
B−1.多孔性アルミニウム酸化皮膜層
多孔性アルミニウム酸化皮膜層の厚さは、20〜500nmである。20nm未満では厚さが十分でないため、後述する小孔構造の形成が不十分になり易く接着力や密着力が低下する。一方、500nmを超えると、多孔性アルミニウム酸化皮膜層自体が凝集破壊し易くなり接着力や密着力が低下する。
図1に示すように、多孔性アルミニウム酸化皮膜層3は、その表面から深さ方向に向かう小孔31を備える。小孔の直径は5〜30nmであり、好ましくは10〜20nmである。この小孔は、樹脂層や接着剤などとアルミニウム酸化皮膜との接触面積を増大させ、その接着力や密着力を増大させる効果を発揮するものである。小孔の直径が5nm未満であると、接触面積が不足するため十分な接着力や密着力が得られない。一方、小孔の直径が30nmを超えると、多孔性アルミニウム酸化皮膜層全体が脆くなって凝集破壊を生じ接着力や密着力が低下する。
多孔性アルミニウム酸化皮膜層の表面積に対する小孔の全孔面積の比については、特に制限されるものではない。多孔性アルミニウム酸化皮膜層の見かけ上の表面積(表面の微小な凹凸等を考慮せず、長さと幅の乗算で表される面積)に対する小孔の全孔面積の比として、25〜75%が好ましい。25%未満では、接触面積が不足して十分な接着力や密着力が得られない場合がある。一方、75%を超えると、多孔性アルミニウム酸化皮膜層全体が脆くなって凝集破壊を生じ接着力や密着力が低下する場合がある。
B−2.バリア型アルミニウム酸化皮膜層
バリア型アルミニウム酸化皮膜層の厚さは、3〜30nmである。3nm未満では、介在層として多孔性アルミニウム酸化皮膜層とアルミニウム素地との結合に十分な結合力を付与することができず、特に、高温・多湿等の過酷環境における結合力が不十分となる。一方、30nmを超えると、その緻密性ゆえにバリア型アルミニウム酸化皮膜層が凝集破壊し易くなり、かえって接着力や密着力が低下する。
B−3.酸化皮膜の全体厚さの変動幅
酸化皮膜全体の厚さ、すなわち、B−1に記載の多孔性アルミニウム酸化皮膜層とB−2に記載のバリア型アルミニウム酸化皮膜層との厚さの合計は、アルミニウム材のいかなる場所で測定しても、その変動幅が±50%以内でなければならず、好ましくは±20%以内である。すなわち、アルミニウム材表面における任意の複数箇所(10箇所以上が望ましく、これら各箇所においても10点以上の測定点とするのが望ましい)で測定した酸化皮膜全体厚さの平均をT(nm)とした場合、これら複数測定箇所の全てにおける酸化皮膜全体厚さが(0.5×T)〜(1.5×T)の範囲にある必要がある。(0.5×T)未満の箇所が存在すると、その箇所の酸化皮膜がその周囲より薄くなる。そうすると、この薄い箇所では、接着すべき接着剤や密着すべき樹脂層などと酸化皮膜との間に隙間が生じ易くなり、十分な接触面積を確保できずに接着力や密着力が低下する。
一方、(1.5×T)を超える箇所が存在すると、その箇所の酸化皮膜が周囲の周囲より厚くなる。そうすると、この厚い箇所では、密着すべき樹脂層などからの応力が集中し、酸化皮膜での凝集破壊を誘発して接着力や密着力が低下する。
なお、上記のような酸化皮膜の全体厚さが薄い箇所や厚い箇所では、周囲と比較して光学的特性が異なるため、茶褐色や白濁色といった色調の変化として目視可能な場合がある。
B−4.柔軟性
本発明に係る表面処理アルミニウム材がプリント配線基板などに用いられる場合には、曲げられた状態で使用されることがある。一般に、アルミニウム材が曲げられた状態では、表面の酸化皮膜にクラックが発生し易い。本発明に係る表面処理アルミニウム材の酸化皮膜は上記特定構造を備えることにより、酸化皮膜が凝集破壊し難く柔軟性に優れる。そのため、表面処理アルミニウム材が曲げられた状態で使用されても、酸化皮膜のクラック発生が抑制される。
このような柔軟性は、例えば表面処理アルミニウム材を酸化皮膜側が凸となるように5Rで180度曲げた際において、酸化皮膜層のクラック発生に基づくアルミニウム素地の露出率として評価することができる。具体的には、曲げ部分においてクラック発生の総長さをLとし、それを曲げ全長Tで除算することによって、(L/T)×100(%)をクラック発生に基づくアルミニウム素地の露出率とするものである。この場合において、酸化皮膜層の密着性に支障が生じないためには、クラック発生に基づく露出率を5%以下とするのが好ましく、2%以下とするのが更に好ましい。
C.製造方法
以上のような条件を満たした酸化皮膜を表面に備えた表面処理アルミニウム材を製造するための一つの方法として、表面処理されるアルミニウム材の電極と、対電極として後述の材質の電極とを用い、pH9〜13で液温35〜80℃であり、かつ、溶存アルミニウム濃度が5ppm以上1000ppm以下のアルカリ性水溶液を電解溶液とし、周波数20〜100Hz、電流密度4〜50A/dm及び電解時間5〜60秒間の条件で交流電解処理することにより、対電極に対向する前記アルミニウム材表面に酸化皮膜を形成する方法を挙げることができる。
交流電解処理工程において、電解溶液として用いるアルカリ水溶液は、りん酸ナトリウム、りん酸水素カリウム、ピロりん酸ナトリウム、ピロりん酸カリウム及びメタりん酸ナトリウム等のりん酸塩や;水酸化ナトリウム及び水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物や;炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム等の炭酸塩や;水酸化アンモニウム;或いは、これらの混合物の水溶液を用いることができる。後述するように電解溶液のpHを特定の範囲に保つ必要があることから、バッファー効果の期待できるりん酸塩系物質を含有するアルカリ水溶液を用いるのが好ましい。このようなアルカリ成分の濃度は、電解溶液のpHが所望の値になるように調整されるが、通常、1×10−4〜1モル/リットルである。なお、これらのアルカリ性水溶液には、汚れ成分に対する除去能力の向上のために界面活性剤を添加してもよい。
電解溶液のpHは9〜13とする必要があり、9.5〜12とするのが好ましい。pHが9未満の場合には、電解溶液のアルカリエッチング力が不足するため多孔性アルミニウム酸化皮膜層の多孔質構造が不完全となる。一方、pHが13を超えると、アルカリエッチング力が過剰になるため多孔性アルミニウム酸化皮膜層が成長し難くなり、更にバリア型アルミニウム酸化皮膜層の形成も阻害される。
電解溶液温度は35〜80℃とする必要があり、40〜70℃とするのが好ましい。電解溶液温度が35℃未満では、アルカリエッチング力が不足するため多孔性アルミニウム酸化皮膜層の多孔質構造が不完全となる。一方、80℃を超えるとアルカリエッチング力が過剰になるため、多孔性アルミニウム酸化皮膜層及びバリア型アルミニウム酸化皮膜層ともに成長が阻害される。
電解溶液に含有される溶存アルミニウム濃度は、5ppm以上1000ppm以下とする必要がある。溶存アルミニウム濃度が5ppm未満の場合は、電解反応初期における酸化皮膜の形成反応が急激に生起するため、処理工程のバラツキ(アルミニウム材表面の汚れ状態やアルミニウム材の取り付け状態など)の影響を受け易い。その結果、局部的に厚い酸化皮膜が形成されることになる。一方、溶存アルミニウム濃度が1000ppmを超える場合は、電解溶液の粘度が増大して電解工程においてアルミニウム材表面付近の均一な対流が妨げられるのと同時に、溶存アルミニウムが皮膜形成を抑制する方向に作用する。その結果、局部的に薄い酸化皮膜が形成されることになる。溶存アルミニウムの濃度が上記範囲から外れると、アルミニウム材表面全体における酸化皮膜の合計厚さの変動幅を、この合計厚さの算術平均値の±50%以内にすることが困難となる。その結果、得られる酸化皮膜の接着力・密着力の低下や、樹脂層との接合時における良好な柔軟性が得られない場合がある。
アルカリ交流電解においては、多孔性アルミニウム酸化皮膜層とバリア型アルミニウム酸化皮膜層を含めた酸化皮膜全体の厚さは、電気量、すなわち電流密度と電解時間の積によって制御され、基本的に電気量が多いほど酸化膜全体の厚さが増加する。このような観点から、多孔性アルミニウム酸化皮膜層及びバリア型アルミニウム酸化皮膜層の交流電解条件は以下の通りとする。
用いる周波数は20〜100Hzである。20Hz未満では、電気分解としては直流的要素が高まる結果、多孔性アルミニウム酸化皮膜層の多孔質構造の形成が進行せず、緻密構造となってしまう。一方、100Hzを超えると、陽極と陰極の反転が速すぎるため、酸化皮膜全体の形成が極端に遅くなり、多孔性アルミニウム酸化皮膜層及びバリア型アルミニウム酸化皮膜層ともに、所定の厚さを得るには極めて長時間を要することになる。
電流密度は4〜50A/dmとする必要がある。電流密度が4A/dm未満では、バリア型アルミニウム酸化皮膜層のみが優先的に形成されるために多孔性アルミニウム酸化皮膜層が得られない。一方、50A/dmを超えると、電流が過大になるため多孔性アルミニウム酸化皮膜層及びバリア型アルミニウム酸化皮膜層の厚さ制御が困難となり処理ムラが起こり易い。
電解時間は5〜60秒とする必要がある。5秒未満の処理時間では、多孔性アルミニウム酸化皮膜層及びバリア型アルミニウム酸化皮膜層の形成が急激過ぎるため、いずれの酸化皮膜層も十分に形成されず、不定形のアルミニウム酸化物から構成される酸化皮膜となるためである。一方、60秒を超えると、多孔性アルミニウム酸化皮膜層及びバリア型アルミニウム酸化皮膜層が厚くなり過ぎたり再溶解するおそれがあるだけでなく、生産性も低下する。
交流電解処理に使用する一対の電極のうち一方の電極は、電解処理によって表面処理されるべきアルミニウム材である。他方の対電極としては、例えば、黒鉛、アルミニウム、チタン電極等の公知の電極を用いることができるが、本発明においては、電解溶液のアルカリ成分や温度に対して劣化せず、導電性に優れ、更に、それ自身が電気化学的反応を起こさない材質のものを使用する必要がある。このような点から、対電極としては黒鉛電極が好適に用いられる。これは、黒鉛電極が化学的に安定であり、かつ、安価で入手が容易であることに加え、黒鉛電極に存在する多くの気孔の作用により交流電解工程において電気力線が適度に拡散するため、多孔性アルミニウム酸化皮膜層及びバリア型アルミニウム酸化皮膜層が共により均一になり易いためである。
本発明においては、電解処理されるべきアルミニウム材及び対電極には共に平板状のものを用い、対向するアルミニウム材と対極の面同士の縦と横の寸法をほぼ同一として、両電極を静止状態で電解操作を行なうのが好ましい。この場合、対電極に対向するアルミニウム材表面に酸化皮膜が形成される。ここで、対電極に対向していない他方の表面にも酸化皮膜を形成するには、一方の表面に酸化皮膜を形成して交流電解処理を一旦終了し、次いで、他の表面を対電極に対向するように配置して同様に交流電解処理を行えばよい。
また、アルミニウム材の形状が板材以外の棒状や角材の場合においても、電解工程で対電極に対向していなかった表面を対電極に対向するように配置し直して電解工程を繰り返すことにより、所望の表面に酸化皮膜を形成することができる。
本発明における多孔性アルミニウム酸化皮膜層とバリア型アルミニウム酸化皮膜層の構造観察と厚さの測定には、透過型電子顕微鏡(TEM)による断面観察が好適に用いられる。具体的には、多孔性アルミニウム酸化皮膜層及びバリア型アルミニウム酸化皮膜層の厚さ、ならびに、多孔性アルミニウム酸化皮膜層の小孔の直径は、ウルトラミクロトームにより薄片試料を作製し、TEM観察することによって測定できる。
D.樹脂被覆表面処理アルミニウム材
本発明の表面処理アルミニウム材の処理面に樹脂層を更に被覆して樹脂被覆表面処理アルミニウム材とすることにより、更に多くの用途に使用できる。ここで、樹脂層としては、熱硬化性樹脂と熱可塑性樹脂のいずれでもよく、本発明で規定する特定構造の酸化皮膜と相まって、様々な効果を付与できる。通常、アルミニウム材と樹脂層との接合体は、アルミニウム材に比べて樹脂の熱膨張率が大きいことから、アルミニウム材と樹脂層の界面において剥がれ、クラック、切れなどの損傷が発生し易い。しかしながら、本発明に係る樹脂被覆表面処理アルミニウム材は、表面処理アルミニウム材の酸化皮膜が薄く、かつ、特定構造を有することにより、柔軟性に優れ、樹脂層の膨張に追従し易く、アルミニウム材と樹脂層の界面での上記損傷が発生し難い特徴を備える。
上記のような損傷発生は、例えば樹脂被覆表面処理アルミニウム材を樹脂層が凸となるように5Rで180度曲げた際において発生する剥がれ部分等に電解水溶液を存在させることにより、電気抵抗の大きさによって評価することができる。剥がれ部分等の損傷が大きいほど、電解水溶液のために電気抵抗が小さくなる。
樹脂層として熱可塑性樹脂を用いた樹脂被覆表面処理アルミニウム材は、軽量、高剛性の複合材料として好適に用いることができる。樹脂層の形成方法としては、加熱した熱可塑性樹脂を流動状態とし、これを多孔性アルミニウム酸化皮膜層に接触・浸透させ、熱可塑性樹脂層を冷却固化する。これに代わって、表面処理アルミニウム材に熱可塑性樹脂フィルムを積層してもよい。熱可塑性樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン;ポリ塩化ビニル;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル;ポリアミド;ポリフェニレンスルファイド;ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルケトン等の芳香族ポリエーテルケトン;ポリスチレン;ポリテトラフルオロエチレン、ポリクロロトリフルオロエチレン等のフッ素樹脂;ポリメタクリル酸メチル等のアクリル樹脂;ABS樹脂;ポリカーボネート;熱可塑性ポリイミド等;を用いることができる。このような熱可塑性樹脂を被覆した樹脂被覆表面処理アルミニウム材は、軽量、高剛性が要請される各種移動体、具体的には航空・宇宙分野、自動車、船舶、鉄道車両等の構成部材の用途に用いることができる。
樹脂層として熱硬化性樹脂を用いた樹脂被覆表面処理アルミニウム材は、プリント配線基板用途として好適に用いることができる。樹脂層の形成方法としては、熱硬化性樹脂を流動状態とし、これを多孔性アルミニウム酸化皮膜層に接触・浸透させ、その後に熱硬化性樹脂を加熱硬化する。熱硬化性樹脂としては、フェノール樹脂;ビスフェノールA型およびノボラック型等のエポキシ樹脂;メラミン樹脂;尿素樹脂;不飽和ポリエステル樹脂;アルキド樹脂;ポリウレタン;熱硬化性ポリイミド等;を用いることができる。
なお、上記熱可塑性樹脂と熱硬化性樹脂はそれぞれ、単一樹脂で用いてもよく、2種以上を混合したポリマーアロイとして用いてもよい。また、上記熱可塑性樹脂と熱硬化性樹脂にそれぞれ各種フィラーを添加することにより、樹脂の強度や熱膨張率等の物性を改善することができる。このようなフィラーとしては、ガラス繊維、炭素繊維、アラミド繊維等の各種繊維;炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、シリカ、タルク、ガラス等の無機物質;粘土;等の公知物質を用いることができる。
以下、実施例及び比較例に基づいて、本発明の好適な実施の形態を具体的に説明する。
実施例1〜15及び比較例1〜13
アルミニウム材として、縦200mm×横400mm×板厚1.0mmのJIS5052−H34合金板を使用した。このアルミニウム合金板を一方の電極に用い、対電極には縦300mm×横500mm×板厚2.0mmの平板形状を有する黒鉛板又はチタン板を用いた。アルミニウム合金板の片面を対電極に対面させ、この対面した片面表層に、表面側の多孔性アルミニウム酸化皮膜層と素地側のバリア型アルミニウム酸化皮膜層が形成されるように、両電極を配置した。ピロりん酸ナトリウムを主成分とするアルカリ水溶液を、電解溶液として用いた。電解溶液のアルカリ成分濃度は、0.5モル/リットルとするとともに、塩酸及び水酸化ナトリウム水溶液(いずれも濃度0.1モル/リットル)によってpHの調整を行なった。表1に示す電解条件にて、交流電解処理を実施して多孔性アルミニウム酸化皮膜層及びバリア型アルミニウム酸化皮膜層を形成した。なお、比較例13では、アルカリ交流電解処理に代わって、従来技術に基づいた硫酸アルマイト処理(厚さ2.5μm、封孔処理あり)を実施した。
Figure 0006001573
以上のようにして作製した供試材に対し、TEMにより断面観察を実施した。具体的には、多孔性アルミニウム酸化皮膜層とバリア型アルミニウム酸化皮膜層の厚さ、ならびに、多孔性アルミニウム酸化皮膜層の小孔の直径を測定するために、ウルトラミクロトームを用いて供試材から断面観察用薄片試料を作製した。次いで、この薄片試料において観察視野(1μm×1μm)中の任意の10点を選択してTEM断面観察により、多孔性アルミニウム酸化皮膜層とバリア型アルミニウム酸化皮膜層の厚さ、ならびに、多孔性アルミニウム酸化皮膜層の小孔の直径を各点で測定した(第1測定)。これらの厚さと直径については、10点の測定値の算術平均値を表2の第1測定に示す。
Figure 0006001573
次いで、供試材全体の表面における多孔性アルミニウム酸化皮膜とバリア型アルミニウム酸化皮膜の合計厚さの変動を調べるために第2測定を行った。この第2測定では、第1測定に供した供試材から、第1測定で作製した薄片試料とは別個に、かつ、同様にして、ウルトラミクロトームにより薄片試料を更に9個作製した。そして、これら9個の薄片試料の各々についても第1測定と同様に、多孔性アルミニウム酸化皮膜層とバリア型アルミニウム酸化皮膜層の厚さを10点測定した。そして、全部で10個の上記薄片試料における全100点の多孔性アルミニウム酸化皮膜層とバリア型アルミニウム酸化皮膜層の厚さの測定結果から、各点における多孔性アルミニウム酸化皮膜層とバリア型アルミニウム酸化皮膜層の厚さを足し算して合計厚さを求めて各点における酸化皮膜厚さとした。このようにして求めた100点の酸化皮膜厚さにおける最大値、最小値、ならびに、算術平均値を表2の第2測定に示した。更に、これら100点の酸化皮膜厚さの変動幅が算術平均値の±50%以内にあるか否かについても調べた。具体的には、算術平均値をT(nm)とした場合に、最大値及び最小値を含めた全ての合計厚さが(0.5×T)〜(1.5×T)の範囲にある場合を合格(○)とし、範囲にない場合を不合格(×)として、表2の第2測定に示した。
上記供試材に対し、以下の方法にて接着剤を用いた接着性、塗膜に対する密着性、ならびに、曲げ試験による柔軟性を評価した。更に、樹脂被覆表面処理アルミニウム材の評価も行なった。
〔接着性評価〕
上記供試材から長さ50mm、25mm幅に切断したものを2枚用意した。これら2枚の供試材同士を幅方向に沿って幅10mmをもって酸化皮膜形成面同士を重ね合わせ、市販の2液型エポキシ接着剤(主剤=変性エポキシ樹脂、硬化剤=変性ポリイミド、重量混合比=主剤100/硬化剤100)によって重ね合わせ部分を接着し、せん断試験片を作製した。2枚の供試材の長さ方向の端部を引張試験機により100mm/分の速度にて長さ方向に沿って反対向きに引張り、その荷重(せん断応力に換算)と剥離状態によって接着性を下記の基準で評価した。なお、せん断試験片は同じ供試材から10組の試験片を作製して、それぞれについて評価した。
○:せん断応力が20N/mm以上で、かつ、接着剤層自身が凝集破壊した状態
△:せん断応力が20N/mm以上であるものの、接着剤層と供試材が界面剥離した状態
×:せん断応力が20N/mm未満で、かつ、接着剤層と供試材が界面剥離した状態
結果を表3に示す。同表には、10組の試験片のうちの上記○、△、×の組数をそれぞれ示すが、全てが○の場合を合格、それ以外を不合格と判定した。
Figure 0006001573
〔密着性評価〕
上記供試材の酸化皮膜側の表面に大日本塗料(株)製「Vフロン#2000」を塗布しこれを乾燥して(160℃,20分)、30μmの厚さの樹脂塗膜を形成した密着性試験片を作製した。JIS−K5600−5−6に準拠した方法で、この密着性試験片の樹脂塗膜にカッターナイフを用いて1mm角の碁盤目カットを入れた。次いで、試験片に125℃で30分のレトルト浸漬処理を施した後に、直ちに処理液から取り出して水分をふき取った。この試験片に対して、透明感圧付着テープによる剥離試験を実施した。塗膜残存率によって密着性を下記の基準で評価した。なお、密着性試験片は同じ供試材から10個の試験片を作製して、それぞれについて評価した。
○:塗膜残存率が100%のもの
△:塗膜残存率が75%以上100%未満のもの
×:塗膜残存率が75%未満のもの
結果を表3に示す。同表には、10個の試験片のうちの上記○、△、×の個数をそれぞれ示すが、全てが○の場合を合格、それ以外を不合格と判定した。
〔柔軟性評価〕
上記供試材から長さ50mm、25mm幅に切断したものを用意した。酸化皮膜形成面が凸となるように、金型を用いて5Rで180度曲げた。次いで、曲げ部を試験液(20%硫酸銅水溶液)に5分間浸漬した後に取り出して水洗し、室温で乾燥した。曲げ部の酸化皮膜にクラックが発生している場合は、クラックのアルミニウム素地面に銅が付着する。そこで、ルーペ又はノギスを用いて曲げ部分の全長に沿って銅付着箇所を目視で観察することによりクラック発生部位を特定した。具体的には、曲げ部分において銅の付着が観察された総長さをL(mm)とし、それを曲げ全長(25mm)で除算することによって、(L/25)×100(%)をクラック発生に基づくアルミニウム素地の露出率とした。柔軟性試験片は同じ供試材から10個の試験片を作製して、それぞれについて評価してアルミニウム素地の各露出率を求めた。
結果を表3に示す。表の露出率は、10個の試験片の平均露出率を示す。ここで、露出率が5%以下を合格とし、これを超えるものを不合格と判定した。
〔樹脂被覆表面処理アルミニウム材の評価〕
上記供試材の酸化皮膜側の表面にDIC(株)製「9K−564S」(水性アクリル樹脂塗料)を塗布しこれを乾燥して(250℃,1分)、2μmの厚さの樹脂塗膜(樹脂層)を形成し、樹脂被覆表面処理アルミニウム材を作製した。これを長さ100mm、幅30mmに切断するとともに、樹脂層側が凸となるように、金型を用いて5Rで180度曲げ、試験片を作製した。試験片の曲げ頂点部を、1%塩化ナトリウム水溶液を含ませた幅20mmのスポンジに接触させるとともに、試験片側をプラスとしスポンジ側をマイナスとして6.0Vの直流電圧を4秒間印加し、電圧印加中の最大電流値を測定した。供試材と樹脂層の界面において剥がれ等の損傷が発生していない場合には、試験片が絶縁体となるため電流が流れない。一方、損傷部分が存在する場合には、そこに存在する塩化ナトリウム水溶液により電流が流れる。そして、損傷部分が大きい程、そこに存在する塩化ナトリウム水溶液が多量となり電気抵抗が低減して最大電流値が大きくなる。最大電流値が5mA未満の場合には、剥がれ等の損傷が無いか又は小さく合格とした。一方、5mA以上の場合には、剥がれ等の損傷が大きく不合格とした。結果を表3に示す。
実施例1〜15ではいずれも、酸化皮膜が本願規定を満たすため、表面処理アルミニウム材の接着性評価、密着性評価および柔軟性評価、ならびに、樹脂被覆表面処理アルミニウム材の評価が合格判定であった。これに対して比較例1〜13では、下記の理由により不合格判定であった。
比較例1では、交流電解処理における電解溶液のpHが低過ぎたため、アルカリエッチング力が不足した。そのため、多孔性アルミニウム酸化皮膜層の小孔直径が不足し、接着性、密着性および柔軟性が不合格であった。
比較例2では、交流電解処理における電解溶液のpHが高過ぎたため、アルカリエッチング力が過剰になった。そのため、多孔性アルミニウム酸化皮膜層及びバリア型アルミニウム酸化皮膜層の厚さが不足し、また多孔性アルミニウム皮膜の小孔直径が過大となり、酸化皮膜合計厚さの変動幅、接着性、密着性および柔軟性が不合格であった。
比較例3では、交流電解処理における電解溶液の温度が低過ぎたため、アルカリエッチング力が不足した。そのため、多孔性アルミニウム酸化皮膜層の多孔質構造が不完全となり小孔直径が不足し、接着性、密着性および柔軟性が不合格であった。
比較例4では、交流電解処理における電解溶液の温度が高過ぎたため、アルカリエッチング力が過剰になった。そのため、多孔性アルミニウム皮膜層及びバリア型アルミニウム酸化皮膜層の厚さが不足し、酸化皮膜合計厚さの変動幅、接着性、密着性および柔軟性が不合格であった。
比較例5では、交流電解処理における電解溶液が完全に新浴であり、溶存アルミニウムが存在していなかったので、電解反応初期における酸化皮膜の形成反応が急激に生起した。そのため、部分的に酸化皮膜が厚く形成された場所が生じ、酸化皮膜合計厚さの変動幅、接着性、密着性および柔軟性が不合格であった。
比較例6では、交流電解処理における電解溶液の溶存アルミニウム濃度が高過ぎたため、局部的に薄い酸化皮膜が形成された。そのため、酸化皮膜合計厚さの変動幅、接着性、密着性および柔軟性が不合格であった。
比較例7では、交流電解処理における周波数が低過ぎたため、電気的状態が直流電解に近づいた。そのため、多孔性アルミニウム酸化皮膜層の形成が進行せず、バリア型アルミニウム酸化皮膜層の厚さが過大となった。そのため、接着性、密着性および柔軟性が不合格であった。
比較例8では、交流電解処理における周波数が高過ぎたため、陽極と陰極の反転が速過ぎた。そのため、多孔性アルミニウム酸化皮膜層の形成が極端に遅くなりその厚さが不足し、接着性、密着性および柔軟性が不合格であった。
比較例9では、交流電解処理における電流密度が低過ぎたため、バリア型アルミニウム酸化皮膜層が優先的に形成された。そのため、多孔性アルミニウム酸化皮膜層の厚さが不足し、接着性、密着性および柔軟性が不合格であった。
比較例10では、交流電解処理における電流密度が高過ぎたため、電解処理において電解溶液中にスパークが発生する等、制御が不安定になった。そのため、酸化膜全体が過剰に形成され、多孔性アルミニウム酸化皮膜層及びバリア型アルミニウム酸化皮膜層の厚さが過大となる一方で、酸化皮膜合計厚さが極端に少ない部分も発生した。その結果、酸化皮膜合計厚さの変動幅、接着性、密着性および柔軟性が不合格であった。
比較例11では、交流電解処理における電解処理時間が短過ぎたため、多孔性アルミニウム酸化皮膜層及びバリア型アルミニウム酸化皮膜層が十分に形成されなかった。そのため、多孔性アルミニウム酸化皮膜層及びバリア型アルミニウム酸化皮膜層の厚さが不足し、接着性、密着性および柔軟性が不合格であった。
比較例12では、交流電解処理における電解処理時間が長過ぎたため、酸化膜全体が過剰に形成された。そのため、多孔性アルミニウム酸化皮膜層及びバリア型アルミニウム酸化皮膜層が厚くなり過ぎ、接着性、密着性および柔軟性が不合格であった。
比較例13では、従来技術に基づく硫酸アルマイト処理であり、本発明で規定する酸化皮膜構造を有していないため、接着性、密着性および柔軟性が不合格であった。
比較例1〜13ではいずれも、酸化皮膜が本発明の特徴を有していないため、樹脂被覆表面処理アルミニウム材の曲げ損傷が大きく、被覆評価が不合格であった。
本発明によれば、アルミニウム材全面にわたって接着性及び密着性に優れた表面処理アルミニウム材、ならびに、これを用いた樹脂被覆表面処理アルミニウム材を得ることができる。
1・・・表面処理アルミニウム材
2・・・酸化皮膜
3・・・多孔性アルミニウム酸化皮膜層
31・・・小孔
4・・・バリア型アルミニウム酸化皮膜層
5・・・素地

Claims (6)

  1. 表面に酸化皮膜が形成されたアルミニウム材であって、前記酸化皮膜は表面側に形成された厚さ20〜500nmの多孔性アルミニウム酸化皮膜層と素地側に形成された厚さ3〜30nmのバリア型アルミニウム酸化皮膜層とから成り、前記多孔性アルミニウム酸化皮膜層には直径5〜30nmの小孔が形成されており、当該アルミニウム材表面全体における前記多孔性アルミニウム酸化皮膜層とバリア型アルミニウム酸化皮膜層との合計厚さの変動幅が、当該合計厚さの算術平均値の±50%以内であることを特徴とする表面処理アルミニウム材。
  2. 前記表面処理アルミニウム材を酸化皮膜側が凸となるように5Rで180度曲げた際において、アルミニウム素地の露出率が5%以下である、請求項1に記載の表面処理アルミニウム材。
  3. 請求項1又は2に記載の表面処理アルミニウム材の製造方法であって、表面処理されるアルミニウム材の電極と、対電極とを用い、pH9〜13で液温35〜80℃であり、かつ、溶存アルミニウム濃度が5ppm以上1000ppm以下のアルカリ性水溶液を電解溶液とし、周波数20〜100Hz、電流密度4〜50A/dm及び電解時間5〜60秒間の条件で交流電解処理することにより、対電極に対向する前記アルミニウム材表面に酸化皮膜を形成することを特徴とする表面処理アルミニウム材の製造方法。
  4. 前記対電極を黒鉛電極とする、請求項3に記載の表面処理アルミニウム材の製造方法。
  5. 前記表面処理されるアルミニウム材の電極と、対電極が共に平板状である、請求項3又は4に記載の表面処理アルミニウム材の製造方法。
  6. 請求項1又は2に記載の表面処理アルミニウム材の酸化皮膜の表面に樹脂層を被覆したことを特徴とする樹脂被覆表面処理アルミニウム材。
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