JP2020059203A - 金属樹脂複合体 - Google Patents
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Abstract
【課題】薬液に浸した際の金属−樹脂間の接合強度の低下が抑制された金属樹脂複合体を提供する。【解決手段】金属部材と、熱可塑性樹脂または上記熱可塑性樹脂を含む樹脂組成物により構成された熱可塑性樹脂部材とが接合してなる金属樹脂複合体であって、少なくとも上記金属部材の上記熱可塑性樹脂部材との接合部表面を走査型電子顕微鏡で観察した際に、50nm以上1000nm以下のポアサイズを有する微細凹状構造が、上記接合部表面100μm2当たり50個以上1000個以下観測される金属樹脂複合体。【選択図】図4
Description
本発明は、金属樹脂複合体に関する。
各種部品の軽量化の観点から、金属部品の代替品として樹脂成形体が使われている。しかし、金属部品をそのまま全てを樹脂で代替することが難しい場合も多い。そのような場合には、金属部品と樹脂成形体を一体化することで新たな複合部品を製造することが考えられる。
これまで金属部品と樹脂とを一体化する方法として、金属部の表面を加工し微細な凹凸を形成しアンカー効果を利用して樹脂を接合する方法;接着剤を用いて接着する方法;金属部及び/又は樹脂部に折り返し片や爪等の固定部材を設け、この固定部材を用いて両者を固着させる方法;ねじ等を用いて機械的に一体化する方法;等が公知であり、これらの方法は複合部品への要求性能に応じて最適の方法が採用されてきた。これらの中でも、金属表面に微細な凹凸を形成したのち、凹凸表面上に樹脂を接合一体化、あるいは接着剤層を介して樹脂をマウント・接合する方法は、複合部品の設計の自由度が高いことから注目度が高い(例えば、特許文献1〜4)。
金属表面に、樹脂接合用の微細凹凸構造を付与する方法として、化学エッチング剤を用いる方法;レーザーやブラストに代表される物理的な粗化方法;電解酸化を利用するエッチング方法;めっきを利用する方法;等の様々な方法が知られているが、エッチング処理速度、エッチング密度の均一性、接合強度、エッチング装置の汎用性等を総合的に勘案して化学エッチング方法が最も頻用されている(例えば、特許文献1〜4)。
化学エッチングによる微細凹凸形状付与においては、生産性の視点から通常は、金属部品を丸ごとエッチング槽に浸漬し金属部品の全表面をエッチングし、その後エッチング面の一部に射出成形手段等で樹脂を接合させる手法がとられる場合が多い。このような方法では、樹脂が接合されない部分はエッチング面がそのまま露呈することになり、特に複合部品に意匠性・美観が要求される分野においてはエッチング面に形成された微細凹凸構造を消して、より美肌の金属表面への転換を余儀なくされる場合がある。また、樹脂未接合の金属表面の耐食性や耐候性を確保するためにも耐食性の酸化被膜を付与することが好ましい。このような要求は、金属としてアルミニウム合金やマグネシウム合金等を用いた複合体をICT筐体やモバイル電子機器筐体として利用する分野において特に強くなっている。
化学エッチング等によって表面に微細凹凸構造が形成されたアルミニウム合金表面の意匠性や耐食性を向上する方法として、アルマイト処理(陽極酸化処理)を利用する方法が考えられる。例えば、表面がエッチングされたアルミニウム合金を、金属塩の不存在下、あるいは存在下の電解液に浸して通電し、次いで、封孔処理することによって陽極酸化被膜(電解着色)を形成させる方法である。
この方法を利用して、接合面のみならず非接合面も化学エッチングされ微細凹凸形状が形成されている金属樹脂複合体を特段の前処理(例えばマスキング処理)を行うことなく、電解液に浸してアルマイト処理しようとすると、金属面と樹脂面の境界部から電解液や、封孔時に用いた薬液、前処理で用いた薬液類が侵入し、その結果として金属・樹脂間の接合強度が大きく低下してしまう場合があった。
この方法を利用して、接合面のみならず非接合面も化学エッチングされ微細凹凸形状が形成されている金属樹脂複合体を特段の前処理(例えばマスキング処理)を行うことなく、電解液に浸してアルマイト処理しようとすると、金属面と樹脂面の境界部から電解液や、封孔時に用いた薬液、前処理で用いた薬液類が侵入し、その結果として金属・樹脂間の接合強度が大きく低下してしまう場合があった。
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、薬液に浸した際の金属−樹脂間の接合強度の低下が抑制された金属樹脂複合体を提供するものである。
本発明によれば以下に示す金属樹脂複合体が提供される。
[1]
金属部材と、熱可塑性樹脂または上記熱可塑性樹脂を含む樹脂組成物により構成された熱可塑性樹脂部材とが接合してなる金属樹脂複合体であって、
少なくとも上記金属部材の上記熱可塑性樹脂部材との接合部表面を走査型電子顕微鏡で観察した際に、50nm以上1000nm以下のポアサイズを有する微細凹状構造が、上記接合部表面100μm2当たり50個以上1000個以下観測される金属樹脂複合体。
[2]
上記[1]に記載の金属樹脂複合体において、
上記接合部表面の断面を走査型電子顕微鏡で観察した際に、開口径が50nm以上1000nm以下である微細凹状構造が観測される金属樹脂複合体。
[3]
上記[1]または[2]に記載の金属樹脂複合体において、
上記微細凹状構造は、内部の壁面に少なくとも一つ以上の内部微細凹状構造が形成された二重微細凹状構造を有している金属樹脂複合体。
[4]
上記[1]乃至[3]のいずれか一つに記載の金属樹脂複合体において、
上記金属部材がアルミニウム合金により構成されている金属樹脂複合体。
[5]
上記[4]に記載の金属樹脂複合体において、
上記アルミニウム合金における、Alの含有量が96質量%以上99質量%以下であり、Siの含有量が0.2質量%以上4質量%以下である金属樹脂複合体。
[6]
上記[1]乃至[5]のいずれか一つに記載の金属樹脂複合体において、
上記熱可塑性樹脂が、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリフェニレン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエーテル系樹脂、およびポリカーボネート樹脂からなる群から選択される一種または二種以上の樹脂を含む金属樹脂複合体。
[7]
アルマイト処理されている上記[4]乃至[6]のいずれか一つに記載の金属樹脂複合体。
[1]
金属部材と、熱可塑性樹脂または上記熱可塑性樹脂を含む樹脂組成物により構成された熱可塑性樹脂部材とが接合してなる金属樹脂複合体であって、
少なくとも上記金属部材の上記熱可塑性樹脂部材との接合部表面を走査型電子顕微鏡で観察した際に、50nm以上1000nm以下のポアサイズを有する微細凹状構造が、上記接合部表面100μm2当たり50個以上1000個以下観測される金属樹脂複合体。
[2]
上記[1]に記載の金属樹脂複合体において、
上記接合部表面の断面を走査型電子顕微鏡で観察した際に、開口径が50nm以上1000nm以下である微細凹状構造が観測される金属樹脂複合体。
[3]
上記[1]または[2]に記載の金属樹脂複合体において、
上記微細凹状構造は、内部の壁面に少なくとも一つ以上の内部微細凹状構造が形成された二重微細凹状構造を有している金属樹脂複合体。
[4]
上記[1]乃至[3]のいずれか一つに記載の金属樹脂複合体において、
上記金属部材がアルミニウム合金により構成されている金属樹脂複合体。
[5]
上記[4]に記載の金属樹脂複合体において、
上記アルミニウム合金における、Alの含有量が96質量%以上99質量%以下であり、Siの含有量が0.2質量%以上4質量%以下である金属樹脂複合体。
[6]
上記[1]乃至[5]のいずれか一つに記載の金属樹脂複合体において、
上記熱可塑性樹脂が、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリフェニレン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエーテル系樹脂、およびポリカーボネート樹脂からなる群から選択される一種または二種以上の樹脂を含む金属樹脂複合体。
[7]
アルマイト処理されている上記[4]乃至[6]のいずれか一つに記載の金属樹脂複合体。
本発明によれば、薬液に浸した際の金属−樹脂間の接合強度の低下が抑制された金属樹脂複合体を提供することができる。
以下に、本発明の実施形態について、図面を用いて説明する。なお、すべての図面において、同様な構成要素には共通の符号を付し、適宜説明を省略する。また、図は概略図であり、実際の寸法比率とは一致していない。文中の数字の間にある「〜」は特に断りがなければ、以上から以下を表す。
<金属樹脂複合体>
まず、本実施形態に係る金属樹脂複合体1について説明する。
図1は、本発明に係る実施形態の金属樹脂複合体1の構造の一例を示す外観図である。
本実施形態に係る金属樹脂複合体1は、表面に微細凹状構造4を有する金属部材3と、金属部材3の表面の微細凹状構造4に接合し、かつ、熱可塑性樹脂または上記熱可塑性樹脂を含む熱可塑性樹脂組成物(P)により構成された樹脂部材2と、を備える金属樹脂複合体1であって、上記微細凹状構造は次の特徴を持つ。
まず、本実施形態に係る金属樹脂複合体1について説明する。
図1は、本発明に係る実施形態の金属樹脂複合体1の構造の一例を示す外観図である。
本実施形態に係る金属樹脂複合体1は、表面に微細凹状構造4を有する金属部材3と、金属部材3の表面の微細凹状構造4に接合し、かつ、熱可塑性樹脂または上記熱可塑性樹脂を含む熱可塑性樹脂組成物(P)により構成された樹脂部材2と、を備える金属樹脂複合体1であって、上記微細凹状構造は次の特徴を持つ。
すなわち、接合部の金属表面を走査型電子顕微鏡(表面SEM)で観察した際に、50nm以上1000nm以下のポアサイズを有する微細凹状構造が、接合部表面100μm2当たり50個以上1000個以下、好ましくは100個以上500個以下、さらに好ましくは200個以上400個以下観測される。好ましくは60nm以上800nm以下のポアサイズを有する微細凹状構造が、接合部表面100μm2当たり100個以上500個以下観測され、より好ましくは80nm以上700nm以下のポアサイズを有する微細凹状構造が、接合部表面100μm2当たり200個以上400個以下観測される。
微細凹状構造のポアサイズが50nm以上1000nm以下の範囲を満たし、且つ該ポアサイズが接合部表面100μm2当たり50個以上1000個以下観測されることによって、金属樹脂複合体の金属−樹脂接合強度に優れ、また該金属樹脂複合体を丸ごと陽極酸化処理(アルマイト処理)した場合であっても金属層と樹脂層の界面からの薬液類の侵入を効果的に防止でき、その結果として染色不良現象(吐酸減少)を呈さず、また接合強度低下を抑制できる。なお、表面SEMで観測される微細凹状構造と隣接する微細凹状構造の距離は例えば50nm〜2μmの範囲にある。
なお、本実施形態において、50nm以上1000nm以下のポアサイズを有する微細凹状構造の個数(接合部表面100μm2当たり)は、表面SEM画像上の10μm四方の任意の5領域において、ポアサイズが50nm以上1000nm以下の範囲を満たす疑似円状のポア(細孔)の数を目視計測し、5領域の平均値として算出される。
微細凹状構造のポアサイズが50nm以上1000nm以下の範囲を満たし、且つ該ポアサイズが接合部表面100μm2当たり50個以上1000個以下観測されることによって、金属樹脂複合体の金属−樹脂接合強度に優れ、また該金属樹脂複合体を丸ごと陽極酸化処理(アルマイト処理)した場合であっても金属層と樹脂層の界面からの薬液類の侵入を効果的に防止でき、その結果として染色不良現象(吐酸減少)を呈さず、また接合強度低下を抑制できる。なお、表面SEMで観測される微細凹状構造と隣接する微細凹状構造の距離は例えば50nm〜2μmの範囲にある。
なお、本実施形態において、50nm以上1000nm以下のポアサイズを有する微細凹状構造の個数(接合部表面100μm2当たり)は、表面SEM画像上の10μm四方の任意の5領域において、ポアサイズが50nm以上1000nm以下の範囲を満たす疑似円状のポア(細孔)の数を目視計測し、5領域の平均値として算出される。
本実施形態に係る金属樹脂複合体1においては、金属断面を走査型電子顕微鏡(断面SEM)で観察した際に、50nm以上1000nm以下、好ましくは60nm以上800nm以下、より好ましくは80nm以上700nm以下の開口径を有する微細凹状構造が観測されることがより好ましい。断面SEMにおいて観測される微細凹状構造の開口径は、表面SEMにおいて観察されるポアサイズと同義である。本実施形態においては、接合部の断面方向から観測される微細凹状構造の孔径を開口径とし、接合部表面の垂直方向から観測される微細凹状構造の孔径をポアサイズと呼ぶ。
ここで、本実施形態において、ポアサイズや開口径は、微細凹状構造の凹部の入り口の開口部分の平均孔径を示す。平均孔径は、例えば、凹部の入り口の開口部分の直径を任意に5点測り、それらの平均値を採用することができる。
ここで、本実施形態において、ポアサイズや開口径は、微細凹状構造の凹部の入り口の開口部分の平均孔径を示す。平均孔径は、例えば、凹部の入り口の開口部分の直径を任意に5点測り、それらの平均値を採用することができる。
本実施形態に係る金属樹脂複合体1においては、金属断面を走査型電子顕微鏡(断面SEM)で観察した際に観測される上記微細凹状構造の内部壁面には、少なくとも一つ以上の内部微細凹状構造がさらに観測されることが好ましい。すなわち、上記微細凹状構造は、内部の壁面に少なくとも一つ以上の内部微細凹状構造が形成された二重微細凹状構造である。内部微細凹状構造の凹部深さと開口径は共に、例えば1nm以上50nm以下、好ましくは5nm以上30nm以下、より好ましくは10nm以上20nm以下の範囲にある。
なお、上記接合部の表面SEM観察あるいは断面SEM観察は、通常、金属部材3と樹脂部材2とを引き剥がした後に、公知の溶離処理を行って樹脂部材を完全に除去した後の金属表面について観察されるものであるが、樹脂部材2が接合される前の粗化金属部材の表面SEM観察あるいは断面SEM観察であってもよい。本発明者らは、両方法について得られた微細凹状構造のポアサイズないし開口径が実質的に同一であることを別途確認している。
なお、表面SEM画像におけるポアサイズとポア数は、16μm×12μmサイズの画像について全凹状部を計数して求めた。また断面SEM画像における開口径は2.5μm×1.5μmサイズの画像についての測定値の平均である。
なお、表面SEM画像におけるポアサイズとポア数は、16μm×12μmサイズの画像について全凹状部を計数して求めた。また断面SEM画像における開口径は2.5μm×1.5μmサイズの画像についての測定値の平均である。
<金属樹脂複合体の構成部材>
本実施形態に係る金属樹脂複合体1は、特定の金属部材3と特定の樹脂部材2が強固に接合してなる構造体である。以下、金属部材3と樹脂部材2について詳しく説明する。
本実施形態に係る金属樹脂複合体1は、特定の金属部材3と特定の樹脂部材2が強固に接合してなる構造体である。以下、金属部材3と樹脂部材2について詳しく説明する。
1.金属部材
金属部材3を構成する金属材料は特に限定されないが、例えば、鉄、ステンレス、アルミニウム、アルミニウム合金、マグネシウム、マグネシウム合金、銅および銅合金等を挙げることができる。これらは単独で使用してもよいし、二種以上組み合わせて使用してもよい。これらの中でも、軽量かつ高強度の点から、アルミニウム合金およびマグネシウム合金が好ましく、アルミニウム合金がより好ましい。
金属部材3を構成する金属材料は特に限定されないが、例えば、鉄、ステンレス、アルミニウム、アルミニウム合金、マグネシウム、マグネシウム合金、銅および銅合金等を挙げることができる。これらは単独で使用してもよいし、二種以上組み合わせて使用してもよい。これらの中でも、軽量かつ高強度の点から、アルミニウム合金およびマグネシウム合金が好ましく、アルミニウム合金がより好ましい。
Alの含有量が96質量%以上99質量%以下であり、かつ、Siの含有量が0.2質量%以上4質量%以下であるアルミニウム合金が好ましい。
このようなアルミニウム合金の中では、JIS H4000に規定された合金番号3000番台、5000番台または6000番台がより好ましい。合金番号3000番台、5000番台または6000番台であるアルミニウム合金としては、3003、3004、3005、3104、3105、5005、5052、6061、6063および6082を例示できる。
このようなアルミニウム合金の中では、JIS H4000に規定された合金番号3000番台、5000番台または6000番台がより好ましい。合金番号3000番台、5000番台または6000番台であるアルミニウム合金としては、3003、3004、3005、3104、3105、5005、5052、6061、6063および6082を例示できる。
アルミニウム合金としては、鋳物・ダイカスト用合金も好ましい。このような鋳物・ダイカスト用合金としては、JIS H5302に規定された合金番号、AC1B、AC2A、AC2B、AC4A、ADC1、ADC3、ADC5、ADC6、ADC10、ADC12、ADC14を例示できる。
なお、本実施形態に係る金属部材3表面の少なくとも樹脂部材との接合部表面には、微細凹凸構造5が形成されている。微細凹凸構造5の付与方法、すなわち金属材料の表面粗化方法については製造方法の項目(後述)において述べる。
金属部材3の形状は、樹脂部材2と接合できる形状であれば特に限定されず、例えば、平板状、曲板状、棒状、筒状、塊状等とすることができる。また、これらの組み合わせからなる構造体であってもよい。
また、金属部材3の樹脂部材2と接合する接合部表面の形状は、特に限定されないが、例えば、平面、曲面等が挙げられる。
また、金属部材3の樹脂部材2と接合する接合部表面の形状は、特に限定されないが、例えば、平面、曲面等が挙げられる。
金属部材3は、金属材料を切断やプレス等による塑性加工や、打ち抜き加工、切削、研磨、放電加工等の除肉加工によって上述した所定の形状に加工された後に、後述する粗化処理がなされたものが好ましい。要するに、種々の加工法により、必要な形状に加工されたものを用いることが好ましい。
2.樹脂部材
以下、本実施形態に係る樹脂部材2について説明する。
樹脂部材2は熱可塑性樹脂(A)または熱可塑性樹脂(A)を含む熱可塑性樹脂組成物(P)により構成される。熱可塑性樹脂組成物(P)は、樹脂成分として熱可塑性樹脂(A)と、必要に応じて充填材(B)と、を含む。さらに、熱可塑性樹脂組成物(P)は必要に応じてその他の配合剤を含む。なお、便宜上、樹脂部材2が熱可塑性樹脂(A)のみからなる場合であっても、樹脂部材2は熱可塑性樹脂組成物(P)からなると記載する場合がある。
以下、本実施形態に係る樹脂部材2について説明する。
樹脂部材2は熱可塑性樹脂(A)または熱可塑性樹脂(A)を含む熱可塑性樹脂組成物(P)により構成される。熱可塑性樹脂組成物(P)は、樹脂成分として熱可塑性樹脂(A)と、必要に応じて充填材(B)と、を含む。さらに、熱可塑性樹脂組成物(P)は必要に応じてその他の配合剤を含む。なお、便宜上、樹脂部材2が熱可塑性樹脂(A)のみからなる場合であっても、樹脂部材2は熱可塑性樹脂組成物(P)からなると記載する場合がある。
(熱可塑性樹脂(A))
熱可塑性樹脂(A)としては特に限定されないが、例えば、ポリオレフィン系樹脂、ポリメタクリル酸メチル樹脂等のポリメタクリル系樹脂、ポリアクリル酸メチル樹脂等のポリアクリル系樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリビニルアルコール−ポリ塩化ビニル共重合体樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルホルマール樹脂、ポリメチルペンテン樹脂、無水マレイン酸−スチレン共重合体樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリエーテルケトン樹脂等のポリエーテル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、スチレン系エラストマー、ポリオレフィン系エラストマー、ポリウレタン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ポリアミド系エラストマー、アイオノマー、アミノポリアクリルアミド樹脂、イソブチレン無水マレイン酸コポリマー、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂(ABS)、ACS、AES、AS、ASA、MBS、エチレン−塩化ビニルコポリマー、エチレン−酢酸ビニルコポリマー、エチレン−酢酸ビニル−塩化ビニルグラフトポリマー、エチレン−ビニルアルコールコポリマー、塩素化ポリ塩化ビニル樹脂、塩素化ポリエチレン樹脂、塩素化ポリプロピレン樹脂、カルボキシビニルポリマー、ケトン樹脂、非晶性コポリエステル樹脂、ノルボルネン樹脂、フッ素プラスチック、ポリテトラフルオロエチレン樹脂、フッ素化エチレンポリプロピレン樹脂、PFA、ポリクロロフルオロエチレン樹脂、エチレンテトラフルオロエチレンコポリマー、ポリフッ化ビニリデン樹脂、ポリフッ化ビニル樹脂、ポリアリレート樹脂、熱可塑性ポリイミド樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、ポリサルホン樹脂、ポリパラメチルスチレン樹脂、ポリアリルアミン樹脂、ポリビニルエーテル樹脂、ポリフェニレンオキシド樹脂やポリフェニレンスルフィド(PPS)樹脂等のポリフェニレン系樹脂、ポリメチルペンテン樹脂、オリゴエステルアクリレート、キシレン樹脂、マレイン酸樹脂、ポリヒドロキシブチレート樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリ乳酸樹脂、ポリグルタミン酸樹脂、ポリカプロラクトン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリアクリロニトリル樹脂、スチレン−アクリロニトリル共重合体樹脂等が挙げられる。これらの熱可塑性樹脂は一種単独で使用してもよいし、二種以上組み合わせて使用してもよい。
熱可塑性樹脂(A)としては特に限定されないが、例えば、ポリオレフィン系樹脂、ポリメタクリル酸メチル樹脂等のポリメタクリル系樹脂、ポリアクリル酸メチル樹脂等のポリアクリル系樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリビニルアルコール−ポリ塩化ビニル共重合体樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルホルマール樹脂、ポリメチルペンテン樹脂、無水マレイン酸−スチレン共重合体樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリエーテルケトン樹脂等のポリエーテル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、スチレン系エラストマー、ポリオレフィン系エラストマー、ポリウレタン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ポリアミド系エラストマー、アイオノマー、アミノポリアクリルアミド樹脂、イソブチレン無水マレイン酸コポリマー、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂(ABS)、ACS、AES、AS、ASA、MBS、エチレン−塩化ビニルコポリマー、エチレン−酢酸ビニルコポリマー、エチレン−酢酸ビニル−塩化ビニルグラフトポリマー、エチレン−ビニルアルコールコポリマー、塩素化ポリ塩化ビニル樹脂、塩素化ポリエチレン樹脂、塩素化ポリプロピレン樹脂、カルボキシビニルポリマー、ケトン樹脂、非晶性コポリエステル樹脂、ノルボルネン樹脂、フッ素プラスチック、ポリテトラフルオロエチレン樹脂、フッ素化エチレンポリプロピレン樹脂、PFA、ポリクロロフルオロエチレン樹脂、エチレンテトラフルオロエチレンコポリマー、ポリフッ化ビニリデン樹脂、ポリフッ化ビニル樹脂、ポリアリレート樹脂、熱可塑性ポリイミド樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、ポリサルホン樹脂、ポリパラメチルスチレン樹脂、ポリアリルアミン樹脂、ポリビニルエーテル樹脂、ポリフェニレンオキシド樹脂やポリフェニレンスルフィド(PPS)樹脂等のポリフェニレン系樹脂、ポリメチルペンテン樹脂、オリゴエステルアクリレート、キシレン樹脂、マレイン酸樹脂、ポリヒドロキシブチレート樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリ乳酸樹脂、ポリグルタミン酸樹脂、ポリカプロラクトン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリアクリロニトリル樹脂、スチレン−アクリロニトリル共重合体樹脂等が挙げられる。これらの熱可塑性樹脂は一種単独で使用してもよいし、二種以上組み合わせて使用してもよい。
これらの中でも、熱可塑性樹脂(A)としては、金属部材3と樹脂部材2との接合強度向上効果がより効果的に得ることができる観点から、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリフェニレン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエーテル系樹脂、およびポリカーボネート樹脂から選択される一種または二種以上の熱可塑性樹脂が好適に用いられ、ポリエステル系樹脂、ポリフェニレン系樹脂、およびポリアミド系樹脂から選択される一種または二種以上の熱可塑性樹脂が特に好適に用いられる。
(充填材(B))
熱可塑性樹脂組成物(P)は、金属部材3と樹脂部材2との線膨張係数差の調整や樹脂部材2の機械的強度を向上させる観点から、充填材(B)をさらに含んでもよい。
充填材(B)としては、例えば、ガラス繊維、炭素繊維、炭素粒子、粘土、タルク、シリカ、ミネラル、セルロース繊維からなる群から一種または二種以上を選ぶことができる。これらのうち、好ましくは、ガラス繊維、炭素繊維、タルク、ミネラルから選択される一種または二種以上である。
このような充填材(B)の形状は特に限定されず、繊維状、粒子状、板状等どのような形状であってもよい。
熱可塑性樹脂組成物(P)は、金属部材3と樹脂部材2との線膨張係数差の調整や樹脂部材2の機械的強度を向上させる観点から、充填材(B)をさらに含んでもよい。
充填材(B)としては、例えば、ガラス繊維、炭素繊維、炭素粒子、粘土、タルク、シリカ、ミネラル、セルロース繊維からなる群から一種または二種以上を選ぶことができる。これらのうち、好ましくは、ガラス繊維、炭素繊維、タルク、ミネラルから選択される一種または二種以上である。
このような充填材(B)の形状は特に限定されず、繊維状、粒子状、板状等どのような形状であってもよい。
充填材(B)は、最大長さが10nm以上600μm以下の範囲にある充填材を数分率で5〜100%有することが好ましい。当該最大長さは、より好ましくは30nm以上550μm以下、さらに好ましくは50nm以上500μm以下である。また、該最大長さの範囲にある充填材(B)の数分率は、好ましくは10〜100%であり、より好ましくは20〜100%である。
充填材(B)の最大長さが上記範囲にあると、熱可塑性樹脂組成物(P)の成形時に溶融した熱可塑性樹脂(A)中を充填材(B)が容易に動くことができるので、後述する金属樹脂複合体1の製造時において、金属部材3の表面付近にも一定程度の割合で充填材(B)を存在させることが可能となる。そのため、上述したように充填材(B)と相互作用をする樹脂が金属部材表面の凹凸形状に入り込むことで、より強固な接合強度を持つことが可能となる。
また、上記数分率が上記範囲にあると、金属部材3表面の凹凸形状と作用するのに十分な数の充填材(B)が熱可塑性樹脂組成物(P)中に存在することになる。
なお、充填材(B)の長さは、金属樹脂複合体1から、何らかの機械的な切削によって剥ぎ落した樹脂部材2をオーブン中で加熱して完全に炭化させ、その後、炭化させた樹脂を取り除き、残った充填材(B)を走査型電子顕微鏡で測定することにより求められる。ここで、充填材(B)の最大長さとは、長方形であれば3辺の内で最大の長さ、円筒形であれば円の長軸側の直径長さと円筒の高さとで長い方の長さ、球または回転楕円体であれば、あらゆる断面の長軸側の直径長さをとった時のもっとも長い直径の長さのことである。
なお、充填材(B)の長さは、金属樹脂複合体1から、何らかの機械的な切削によって剥ぎ落した樹脂部材2をオーブン中で加熱して完全に炭化させ、その後、炭化させた樹脂を取り除き、残った充填材(B)を走査型電子顕微鏡で測定することにより求められる。ここで、充填材(B)の最大長さとは、長方形であれば3辺の内で最大の長さ、円筒形であれば円の長軸側の直径長さと円筒の高さとで長い方の長さ、球または回転楕円体であれば、あらゆる断面の長軸側の直径長さをとった時のもっとも長い直径の長さのことである。
充填材(B)の数分率は、上記充填材(B)の長さ測定を行う際に用いた電子顕微鏡写真に写るすべての充填材(B)の数を数え、そのうち、上記範囲に含まれる充填材(B)の数を算出することにより求められる。
充填材(B)は1種類であっても2種類以上でもよく、2種類以上用いる場合は、全ての種類の充填材(B)をまとめて前述したような方法で最大長さを求める。
充填材(B)は1種類であっても2種類以上でもよく、2種類以上用いる場合は、全ての種類の充填材(B)をまとめて前述したような方法で最大長さを求める。
なお、熱可塑性樹脂組成物(P)が充填材(B)を含む場合、その含有量は、熱可塑性樹脂(A)100質量部に対して、好ましくは1質量部以上100質量部以下であり、より好ましくは5質量部以上90質量部以下であり、特に好ましくは10質量部以上80質量部以下である。
充填材(B)は、樹脂部材2の剛性を高める効果の他、樹脂部材2の線膨張係数を制御できる効果がある。特に、本実施形態の金属部材3と樹脂部材2との複合体の場合は、金属部材3と樹脂部材2との形状安定性の温度依存性が大きく異なることが多いので、大きな温度変化が起こると複合体に歪みが掛かりやすい。樹脂部材2が上記充填材(B)を含有することにより、この歪みを低減することができる。また、上記充填材(B)の含有量が上記範囲内であることにより、靱性の低減を抑制することができる。
(その他の配合剤)
熱可塑性樹脂組成物(P)には、個々の機能を付与する目的でその他の配合剤を含んでもよい。このような配合剤としては、熱安定剤、酸化防止剤、顔料、耐候剤、難燃剤、可塑剤、分散剤、滑剤、離型剤、帯電防止剤等が挙げられる。
熱可塑性樹脂組成物(P)には、個々の機能を付与する目的でその他の配合剤を含んでもよい。このような配合剤としては、熱安定剤、酸化防止剤、顔料、耐候剤、難燃剤、可塑剤、分散剤、滑剤、離型剤、帯電防止剤等が挙げられる。
熱可塑性樹脂組成物(P)の製造方法は特に限定されず、一般的に公知の方法により製造することができる。例えば、以下の方法が挙げられる。まず、上記熱可塑性樹脂(A)、必要に応じて上記充填材(B)、さらに必要に応じて上記その他の配合剤と、をバンバリーミキサー、単軸押出機、2軸押出機、高速2軸押出機等の混合装置を用いて、混合または溶融混合することにより、熱可塑性樹脂組成物(P)が得られる。
<金属樹脂複合体の製造方法>
本実施形態に係る金属樹脂複合体1の製造方法については特に限定されるものではないが、ここでは本願明細書の実施例(後述)において採用した製造法を一例として述べる。
本実施形態に係る金属樹脂複合体1の製造方法は、表面の少なくとも一部に微細凹状構造4を有する金属部材3を準備する工程と、該微細凹状構造4に接合するように、熱可塑性樹脂(A)または熱可塑性樹脂(A)を含む熱可塑性樹脂組成物(P)により構成された樹脂部材2を成形する工程と、を含む。なお、本実施形態においては金属部材3の全表面に微細凹状構造が形成されていてもよく、この場合では微細凹状構造は、上記のように樹脂部材が接合される微細凹状構造4と樹脂が接合されない微細凹状構造5の二種類から構成されることになる。
本実施形態に係る金属樹脂複合体1の製造方法については特に限定されるものではないが、ここでは本願明細書の実施例(後述)において採用した製造法を一例として述べる。
本実施形態に係る金属樹脂複合体1の製造方法は、表面の少なくとも一部に微細凹状構造4を有する金属部材3を準備する工程と、該微細凹状構造4に接合するように、熱可塑性樹脂(A)または熱可塑性樹脂(A)を含む熱可塑性樹脂組成物(P)により構成された樹脂部材2を成形する工程と、を含む。なお、本実施形態においては金属部材3の全表面に微細凹状構造が形成されていてもよく、この場合では微細凹状構造は、上記のように樹脂部材が接合される微細凹状構造4と樹脂が接合されない微細凹状構造5の二種類から構成されることになる。
本実施形態に係る微細凹状構造4を有する金属部材3を作製する方法は、特に制限されないが、例えば、酸浸漬工程、アルカリエッチング工程、中和工程、アミン水溶液接触工程を必須工程としてこの順に実施する方法を挙げることができる。なお、これらの必須工程の前後には、必要に応じて付加的な工程を実施することは任意である。このような付加的な工程としては、例えば酸洗浄工程前に実施する脱脂工程、酸性水溶液やアルカリ性水溶液との接触後に行う水洗工程等を例示できる。
〔酸浸漬工程〕
浸漬用の液として、例えば、希薄状態の鉱酸が用いられる。代表的には1質量%前後の40℃希塩酸中に1分程度浸漬させる。浸漬終了後の水洗が行われる。
浸漬用の液として、例えば、希薄状態の鉱酸が用いられる。代表的には1質量%前後の40℃希塩酸中に1分程度浸漬させる。浸漬終了後の水洗が行われる。
〔アルカリエッチング工程〕
この工程で使用するアルカリ水溶液としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属の水酸化物、ソーダ灰、アンモニア等の水溶液が挙げられる。アルカリエッチングは金属材料を該水溶液(例えば、0.1〜10質量%程度の濃度)に常温〜60℃下で数分間浸漬させることによって行われる。浸漬時には超音波照射下であってもよい。浸漬終了後に水洗が行われる。
この工程で使用するアルカリ水溶液としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属の水酸化物、ソーダ灰、アンモニア等の水溶液が挙げられる。アルカリエッチングは金属材料を該水溶液(例えば、0.1〜10質量%程度の濃度)に常温〜60℃下で数分間浸漬させることによって行われる。浸漬時には超音波照射下であってもよい。浸漬終了後に水洗が行われる。
〔中和工程〕
上記アルカリエッチング工程終了後に、中和目的で酸水溶液に浸漬する工程である。なお中和工程は、金属材料表面に固溶するCuやSiを取り除く機能も有する。酸水溶液としては、鉱酸、フッ素含有酸、あるいはこれらの混合酸を溶解した水溶液を例示できる。本実施形態においては、鉱酸としての硫酸、およびフッ素含有酸としての酸性フッ化アンモニウム(別名;二フッ化水素アンモニウム)を含んでなる水溶液を用いることが好ましい。水溶液中の硫酸濃度は2〜20質量%、好ましくは5〜15質量%、酸性フッ化アンモニウム濃度は0.5〜4質量%、好ましくは1〜3質量%の範囲にある。例えば60〜70℃に加温された水溶液中に1〜5分、好ましくは2〜4分程度浸漬させることによってアルカリエッチングが行われる。アルカリエッチング後に水洗が行われる。水洗は超音波照射下であってもよい。
上記アルカリエッチング工程終了後に、中和目的で酸水溶液に浸漬する工程である。なお中和工程は、金属材料表面に固溶するCuやSiを取り除く機能も有する。酸水溶液としては、鉱酸、フッ素含有酸、あるいはこれらの混合酸を溶解した水溶液を例示できる。本実施形態においては、鉱酸としての硫酸、およびフッ素含有酸としての酸性フッ化アンモニウム(別名;二フッ化水素アンモニウム)を含んでなる水溶液を用いることが好ましい。水溶液中の硫酸濃度は2〜20質量%、好ましくは5〜15質量%、酸性フッ化アンモニウム濃度は0.5〜4質量%、好ましくは1〜3質量%の範囲にある。例えば60〜70℃に加温された水溶液中に1〜5分、好ましくは2〜4分程度浸漬させることによってアルカリエッチングが行われる。アルカリエッチング後に水洗が行われる。水洗は超音波照射下であってもよい。
〔アミン水溶液接触工程〕
アミン水溶液としては、例えば、アンモニア、ヒドラジン、ヒドラジン誘導体および水溶性アミン等から選択される一種または二種以上の化合物を含む水溶液が挙げられる。ヒドラジン誘導体としてはカルボジヒドラジドを例示でき、水溶性アミンとしては、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、下記式(1)により示されるモルホリン系化合物、具体的にはモルホリン、N−メチルモルホリン、N−エチルモルホリン、N−n−プロピルモルホリン、N−イソプロピルモルホリン、N−n−ブチルモルホリン、N−sec−ブチルモルホリン、N−tert−ブチルモルホリンを例示できる。
アミン水溶液としては、例えば、アンモニア、ヒドラジン、ヒドラジン誘導体および水溶性アミン等から選択される一種または二種以上の化合物を含む水溶液が挙げられる。ヒドラジン誘導体としてはカルボジヒドラジドを例示でき、水溶性アミンとしては、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、下記式(1)により示されるモルホリン系化合物、具体的にはモルホリン、N−メチルモルホリン、N−エチルモルホリン、N−n−プロピルモルホリン、N−イソプロピルモルホリン、N−n−ブチルモルホリン、N−sec−ブチルモルホリン、N−tert−ブチルモルホリンを例示できる。
アミン水溶液としては、ヒドラジン水溶液を用いることが好ましい。ヒドラジン水溶液を用いる場合の濃度は、0.1質量%〜10質量%、浸漬時間は常温〜70℃下で数分から30分程度である。ヒドラジン水溶液を接触させる場合は、濃度、接触温度、接触時間を変更して二段階で実施してもよい。このような二段階法として具体的には、4質量%ヒドラジン水溶液中に60℃下1.5分浸漬後、次いで0.6質量%ヒドラジン水溶液中に40℃下6分間浸漬させる方法を例示できる。アミン水溶液接触工程後に水洗を行い、乾燥することによって微細凹状構造4を有する金属部材3が作製される。
本実施形態に係る金属樹脂複合体1は、例えば、微細凹状構造4を有する金属部材3を金型内に配置し、熱可塑性樹脂(A)を含む熱可塑性樹脂組成物(P)を金型内に射出することにより製造可能である。
射出工程は、例えば、微細凹状構造4を有する金属部材3を射出成形用の金型のキャビティ部にインサートし、金属部材3の微細凹状構造4に接するように熱可塑性樹脂組成物(P)を射出する射出成形法によって樹脂部材2を成形し、金属樹脂複合体1を製造する工程である。
具体的には、まず、射出成形用の金型を用意し、その金型を開いてその一部に金属部材3を設置する。その後、金型を閉じ、熱可塑性樹脂組成物(P)の少なくとも一部が金属部材3の表面に形成された微細凹状構造4と接するように、金型内に熱可塑性樹脂組成物(P)を射出して固化する。その後、金型を型開き、離型することにより、金属樹脂複合体1を得ることができる。また、上記射出成形工程においては、公知の射出発泡成形や、金型の温度制御を射出成形の一サイクルの中で行い加熱冷却する公知のヒート&クール成形を併用してもよい。
射出工程は、例えば、微細凹状構造4を有する金属部材3を射出成形用の金型のキャビティ部にインサートし、金属部材3の微細凹状構造4に接するように熱可塑性樹脂組成物(P)を射出する射出成形法によって樹脂部材2を成形し、金属樹脂複合体1を製造する工程である。
具体的には、まず、射出成形用の金型を用意し、その金型を開いてその一部に金属部材3を設置する。その後、金型を閉じ、熱可塑性樹脂組成物(P)の少なくとも一部が金属部材3の表面に形成された微細凹状構造4と接するように、金型内に熱可塑性樹脂組成物(P)を射出して固化する。その後、金型を型開き、離型することにより、金属樹脂複合体1を得ることができる。また、上記射出成形工程においては、公知の射出発泡成形や、金型の温度制御を射出成形の一サイクルの中で行い加熱冷却する公知のヒート&クール成形を併用してもよい。
<金属樹脂複合体のアルマイト処理>
本実施形態に係る金属樹脂複合体を構成する金属部材がアルミニウム合金である場合に限り、本実施形態では上記金属樹脂複合体が丸ごとアルマイト処理された金属樹脂複合体をも発明範囲に包含する。なお、本明細書において「丸ごと」とは、金属樹脂複合体の樹脂部材とアルマイト処理時に用いる様々な薬液類との接触を防ぐための措置(例えばマスキングテープによる保護)を行うことなく、金属樹脂複合体をそのままアルマイト処理に付することを言う。アルマイト処理条件としては、例えば「アルミニウムハンドブック第8版(日本アルミニウム協会編集・作成)」に記載されるような公知の方法をそのまま採用できる。例えば公知方法に従い前処理を施したのち、電解浴として10〜20質量%の硫酸水溶液を用い、20℃電圧15V程度、1時間程度の陽極酸化処理を行い、アルミニウム合金上に10μm〜15μm程度の陽極酸化被膜を形成させる。次いで、必要に応じてオイルカラー、有機染料、無機染料で染色処理を行った後、加圧蒸気や酢酸ニッケル水溶液(濃度;5〜10g/L)を用いて、70〜90℃の範囲で封孔処理やNi封孔処理を行い、純水湯洗、乾燥する方法が例示される。
本実施形態に係る金属樹脂複合体を構成する金属部材がアルミニウム合金である場合に限り、本実施形態では上記金属樹脂複合体が丸ごとアルマイト処理された金属樹脂複合体をも発明範囲に包含する。なお、本明細書において「丸ごと」とは、金属樹脂複合体の樹脂部材とアルマイト処理時に用いる様々な薬液類との接触を防ぐための措置(例えばマスキングテープによる保護)を行うことなく、金属樹脂複合体をそのままアルマイト処理に付することを言う。アルマイト処理条件としては、例えば「アルミニウムハンドブック第8版(日本アルミニウム協会編集・作成)」に記載されるような公知の方法をそのまま採用できる。例えば公知方法に従い前処理を施したのち、電解浴として10〜20質量%の硫酸水溶液を用い、20℃電圧15V程度、1時間程度の陽極酸化処理を行い、アルミニウム合金上に10μm〜15μm程度の陽極酸化被膜を形成させる。次いで、必要に応じてオイルカラー、有機染料、無機染料で染色処理を行った後、加圧蒸気や酢酸ニッケル水溶液(濃度;5〜10g/L)を用いて、70〜90℃の範囲で封孔処理やNi封孔処理を行い、純水湯洗、乾燥する方法が例示される。
<金属樹脂複合体の用途>
本実施形態に係る金属樹脂複合体は、生産性が高く、形状制御の自由度も高いので、様々な用途に展開することが可能である。
さらに、本実施形態に係る金属樹脂複合体1の接合部界面には、高い気密性が発現するので、金属樹脂複合体を丸ごと薬液槽に浸漬して金属部のみにアルマイト処理の如き表面処理を行っても接合部隙間から薬液浸入がないので接合強度低下を抑制できる。そのため、本実施形態に係る金属樹脂複合体1は、このような特性を利用できる用途、具体的には金属表面の意匠性に優れた金属樹脂複合体であるスマートホン筐体等の電子機器筐体、オーディオや家電類の筐体、防水コネクター等に好適に用いられる。
本実施形態に係る金属樹脂複合体は、生産性が高く、形状制御の自由度も高いので、様々な用途に展開することが可能である。
さらに、本実施形態に係る金属樹脂複合体1の接合部界面には、高い気密性が発現するので、金属樹脂複合体を丸ごと薬液槽に浸漬して金属部のみにアルマイト処理の如き表面処理を行っても接合部隙間から薬液浸入がないので接合強度低下を抑制できる。そのため、本実施形態に係る金属樹脂複合体1は、このような特性を利用できる用途、具体的には金属表面の意匠性に優れた金属樹脂複合体であるスマートホン筐体等の電子機器筐体、オーディオや家電類の筐体、防水コネクター等に好適に用いられる。
以上、本発明の金属/樹脂複合構造体の用途について述べたが、これらは本発明の用途の例示であり、上記以外の様々な用途に用いることもできる。
以上、本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
以下、本実施形態を、実施例・比較例を参照して詳細に説明する。なお、本実施形態は、これらの実施例の記載に何ら限定されるものではない。
はじめに、実施例および比較例において用いた各種分析法、接合強度評価法を示す。
<押込み強度試験>
(1)金属板の作製
JIS H4000に規定された合金番号A6063のアルミニウム合金板(厚み:2mm)を長辺91mm、短辺35mmに切断するとともに、短辺中心線上に長手方向に沿って直径7mmの開口部を6個設けたアルミニウム合金板10を作成した(図2)。なお各開口部は、隣接する開口部間の距離(中心間の距離)が14mmとなるように均等配置した。
(2)射出成形による金属樹脂複合体試験片の作製
次いで、後述する粗化方法で上記アルミニウム合金板10の全表面が粗化されるように表面処理した表面粗化アルミニウム合金板を、日本製鋼所製のJ85AD110Hにインサート金型内に設置し、次いで分岐ランナーを通して、合金板に設けられた6個の開口部にポリプラスチック社製ポリブチレンテレフタレート(PBT)樹脂(ジュラネックス(登録商標)930HL)を、シリンダー温度270℃、金型温度160℃、射出速度25mm/秒、保圧100MPa、保圧時間10秒の条件にて射出成形し、金属樹脂複合体20を作製した。
(3)押し込み強度測定(アルマイト処理前)
金属樹脂複合体20の押し込み強度評価装置には(株)島津製作所製のオートグラフ万能試験機を用いた。評価測定は常温常圧環境下で行い、クロスヘッド速度すなわち圧縮試験冶具(ピストン)の降下速度を1.0mm/分とし、ピストン先端を各開口部に射出充填されたPBT樹脂部12の上から金属板を突き出るまで押し込み、その最大荷重(N)を測定した。破断荷重を樹脂と金属の接触部面積(π×7×2mm2)で除することによって押し込み強度を測定した。一つの金属樹脂複合体から6個の押し込み強度を測定し、その平均値を押し込み強度(S1)とした。
(4)アルマイト処理後の押し込み強度測定
金属樹脂複合体20に対して、公知の方法で脱脂、アルカリエッチングおよび化学研磨をおこなった後、硫酸水溶液(15質量%)の電解浴中で40分通電(1A/dm2)し、次いで45℃、10分間染色処理(奥野製薬製レッド染料を用いた)した。次いで、封孔処理(酢酸ニッケル法:95℃、10分間)し、次いで、湯洗後に風乾してアルマイト処理を完結させた。このアルマイト処理後の金属樹脂複合体20’についても上記と同様にして押し込み強度(S2)を測定した。
そして、押し込み強度比(S2/S1)を耐アルマイトの指標とした。この値が1.0に近いほど、アルマイト処理による押し込み強度低下が少ないことを意味する。
<押込み強度試験>
(1)金属板の作製
JIS H4000に規定された合金番号A6063のアルミニウム合金板(厚み:2mm)を長辺91mm、短辺35mmに切断するとともに、短辺中心線上に長手方向に沿って直径7mmの開口部を6個設けたアルミニウム合金板10を作成した(図2)。なお各開口部は、隣接する開口部間の距離(中心間の距離)が14mmとなるように均等配置した。
(2)射出成形による金属樹脂複合体試験片の作製
次いで、後述する粗化方法で上記アルミニウム合金板10の全表面が粗化されるように表面処理した表面粗化アルミニウム合金板を、日本製鋼所製のJ85AD110Hにインサート金型内に設置し、次いで分岐ランナーを通して、合金板に設けられた6個の開口部にポリプラスチック社製ポリブチレンテレフタレート(PBT)樹脂(ジュラネックス(登録商標)930HL)を、シリンダー温度270℃、金型温度160℃、射出速度25mm/秒、保圧100MPa、保圧時間10秒の条件にて射出成形し、金属樹脂複合体20を作製した。
(3)押し込み強度測定(アルマイト処理前)
金属樹脂複合体20の押し込み強度評価装置には(株)島津製作所製のオートグラフ万能試験機を用いた。評価測定は常温常圧環境下で行い、クロスヘッド速度すなわち圧縮試験冶具(ピストン)の降下速度を1.0mm/分とし、ピストン先端を各開口部に射出充填されたPBT樹脂部12の上から金属板を突き出るまで押し込み、その最大荷重(N)を測定した。破断荷重を樹脂と金属の接触部面積(π×7×2mm2)で除することによって押し込み強度を測定した。一つの金属樹脂複合体から6個の押し込み強度を測定し、その平均値を押し込み強度(S1)とした。
(4)アルマイト処理後の押し込み強度測定
金属樹脂複合体20に対して、公知の方法で脱脂、アルカリエッチングおよび化学研磨をおこなった後、硫酸水溶液(15質量%)の電解浴中で40分通電(1A/dm2)し、次いで45℃、10分間染色処理(奥野製薬製レッド染料を用いた)した。次いで、封孔処理(酢酸ニッケル法:95℃、10分間)し、次いで、湯洗後に風乾してアルマイト処理を完結させた。このアルマイト処理後の金属樹脂複合体20’についても上記と同様にして押し込み強度(S2)を測定した。
そして、押し込み強度比(S2/S1)を耐アルマイトの指標とした。この値が1.0に近いほど、アルマイト処理による押し込み強度低下が少ないことを意味する。
<アルマイト処理時の染色不良観察>
アルマイト処理後の金属樹脂複合体20’につき、押し込み試験前に樹脂が封入された6個の開口部16の周辺をルーペ観察することによって、アルミニウム合金とPBT樹脂の界面付近の、酸のしみ出し状況を観察し、0/6(6個全てでしみ出し無し)〜6/6(6個全てしみ出し)で評価した。
アルマイト処理後の金属樹脂複合体20’につき、押し込み試験前に樹脂が封入された6個の開口部16の周辺をルーペ観察することによって、アルミニウム合金とPBT樹脂の界面付近の、酸のしみ出し状況を観察し、0/6(6個全てでしみ出し無し)〜6/6(6個全てしみ出し)で評価した。
<微細凹状構造の観察>
金属樹脂複合体の金属部材表面の微細凹状構造の測定方法について述べる。本実施例および比較例では、樹脂接合前の粗化金属部材の表面および断面部を、走査型電子顕微鏡(JEOL社製JSM−6701F)を用いて観察し、得られた写真から微細凹状構造のポアサイズ(開口径)、微細凹状構造の個数、および内部微細凹状構造の存否すなわち二重凹状構造になっているかどうかをそれぞれチェックした。なお、本発明者らは、樹脂接合前の粗化金属表面の微細凹状構造に関する情報が、金属樹脂複合体の強度試験後に樹脂部を溶離操作によって完全に除去した後の表面情報と同一であることを別途確認している。
金属樹脂複合体の金属部材表面の微細凹状構造の測定方法について述べる。本実施例および比較例では、樹脂接合前の粗化金属部材の表面および断面部を、走査型電子顕微鏡(JEOL社製JSM−6701F)を用いて観察し、得られた写真から微細凹状構造のポアサイズ(開口径)、微細凹状構造の個数、および内部微細凹状構造の存否すなわち二重凹状構造になっているかどうかをそれぞれチェックした。なお、本発明者らは、樹脂接合前の粗化金属表面の微細凹状構造に関する情報が、金属樹脂複合体の強度試験後に樹脂部を溶離操作によって完全に除去した後の表面情報と同一であることを別途確認している。
次に、実施例および比較例において用いた、様々な方法で表面粗化されたアルミニウム合金について述べる。
<粗化アルミニウム合金板(M1)>
上記方法で作製したアルミニウム合金板10を公知の方法で脱脂した後、1質量%濃度の塩酸水溶液に40℃60秒間浸漬し、次いで、水洗した。その後、得られたアルミニウム合金板を5質量%濃度の水酸化ナトリウム水溶液に50℃90秒間浸漬し、次いで、水洗した。
次に、得られたアルミニウム合金板を10質量%濃度の硫酸と1.5質量%濃度のフッ化水素アンモニウム(NH4F・HF)からなる水溶液に65℃180秒間浸漬し、次いで、水洗した。その後、得られたアルミニウム合金板を4質量%濃度のヒドラジン水溶液に60℃90秒間浸漬し、次いで、0.5質量%濃度のヒドラジン水溶液に浸漬し、次いで、水洗した後に乾燥することにより粗化アルミニウム合金板(M1)を得た。
上記方法で作製したアルミニウム合金板10を公知の方法で脱脂した後、1質量%濃度の塩酸水溶液に40℃60秒間浸漬し、次いで、水洗した。その後、得られたアルミニウム合金板を5質量%濃度の水酸化ナトリウム水溶液に50℃90秒間浸漬し、次いで、水洗した。
次に、得られたアルミニウム合金板を10質量%濃度の硫酸と1.5質量%濃度のフッ化水素アンモニウム(NH4F・HF)からなる水溶液に65℃180秒間浸漬し、次いで、水洗した。その後、得られたアルミニウム合金板を4質量%濃度のヒドラジン水溶液に60℃90秒間浸漬し、次いで、0.5質量%濃度のヒドラジン水溶液に浸漬し、次いで、水洗した後に乾燥することにより粗化アルミニウム合金板(M1)を得た。
<粗化アルミニウム合金板(M2)>
上記方法で作製したアルミニウム合金板10を公知の方法で脱脂した後、1質量%濃度の塩酸水溶液に40℃60秒間浸漬し、次いで、水洗した。その後、得られたアルミニウム合金板を5質量%濃度の水酸化ナトリウム水溶液に50℃90秒間浸漬し、次いで、水洗した。
次に、得られたアルミニウム合金板を1質量%濃度の塩酸水溶液に40℃60秒間浸漬し、次いで、水洗した。その後、得られたアルミニウム合金板を4質量%濃度のヒドラジン水溶液に60℃90秒間浸漬し、次いで、0.5質量%濃度のヒドラジン水溶液に浸漬し、次いで、水洗した後に乾燥することにより粗化アルミニウム合金板(M2)を得た。
上記方法で作製したアルミニウム合金板10を公知の方法で脱脂した後、1質量%濃度の塩酸水溶液に40℃60秒間浸漬し、次いで、水洗した。その後、得られたアルミニウム合金板を5質量%濃度の水酸化ナトリウム水溶液に50℃90秒間浸漬し、次いで、水洗した。
次に、得られたアルミニウム合金板を1質量%濃度の塩酸水溶液に40℃60秒間浸漬し、次いで、水洗した。その後、得られたアルミニウム合金板を4質量%濃度のヒドラジン水溶液に60℃90秒間浸漬し、次いで、0.5質量%濃度のヒドラジン水溶液に浸漬し、次いで、水洗した後に乾燥することにより粗化アルミニウム合金板(M2)を得た。
<粗化アルミニウム合金板(M3)>
上記方法で作製したアルミニウム合金板10を公知の方法で脱脂した後、1質量%濃度の塩酸水溶液に40℃1分間浸漬し、次いで、水洗した。その後、得られたアルミニウム合金板を1.5質量%苛性ソーダ水溶液に40℃4分間浸漬し、次いで、水洗した。
その後、得られたアルミニウム合金板を硝酸水溶液に40℃3分間浸漬し、次いで、水洗することによって前処理を完了した。このようにして得られた前処理済みのアルミニウム合金板を60℃に設定されたイオン交換水に8分間浸漬し、次いで、乾燥することによって粗化アルミニウム合金板(M3)を得た。
上記方法で作製したアルミニウム合金板10を公知の方法で脱脂した後、1質量%濃度の塩酸水溶液に40℃1分間浸漬し、次いで、水洗した。その後、得られたアルミニウム合金板を1.5質量%苛性ソーダ水溶液に40℃4分間浸漬し、次いで、水洗した。
その後、得られたアルミニウム合金板を硝酸水溶液に40℃3分間浸漬し、次いで、水洗することによって前処理を完了した。このようにして得られた前処理済みのアルミニウム合金板を60℃に設定されたイオン交換水に8分間浸漬し、次いで、乾燥することによって粗化アルミニウム合金板(M3)を得た。
<粗化アルミニウム合金板(M4)>
上記方法で作製したアルミニウム合金板10を公知の方法で脱脂した後、10質量%濃度の塩酸水溶液に50℃2分間浸漬し、次いで、水洗した。その後、得られたアルミニウム合金板を30質量%濃度の硝酸水溶液に30℃1分間浸漬し、次いで、水洗した。次いで、得られたアルミニウム合金板を17質量%濃度のリン酸水溶液からなる電解浴中で、30℃下、30分通電(40V)した。次いで、得られたアルミニウム合金板を20質量%濃度の硫酸水溶液に60℃4分間浸漬した後に、水洗して乾燥することによって粗化アルミニウム合金板(M4)を得た。
上記方法で作製したアルミニウム合金板10を公知の方法で脱脂した後、10質量%濃度の塩酸水溶液に50℃2分間浸漬し、次いで、水洗した。その後、得られたアルミニウム合金板を30質量%濃度の硝酸水溶液に30℃1分間浸漬し、次いで、水洗した。次いで、得られたアルミニウム合金板を17質量%濃度のリン酸水溶液からなる電解浴中で、30℃下、30分通電(40V)した。次いで、得られたアルミニウム合金板を20質量%濃度の硫酸水溶液に60℃4分間浸漬した後に、水洗して乾燥することによって粗化アルミニウム合金板(M4)を得た。
〔実施例1〕
上記の方法で作製した粗化アルミニウム合金板(M1)の表面部をSEM観察し、その画像から50〜1000nmのポアサイズの微細凹状構造の数を計量した。その結果、100μm2当たり300個存在することが分かった(図4参照)。また、SEM観察部周辺の断面をSEM観察した。その結果、開口径が150nmである開口部を有する微細凹状構造の存在が確認された(図5参照)。
また上記の断面SEM画像の微細凹状構造内には更に内部微細凹状構造が存在することが確認された。
次いで、上記の方法で金属樹脂複合体を得たのち、アルマイト処理前後の押し込み強度測定を行った。その結果、処理前(S1)は15.3MPa、処理後(S2)は12.5MPaであった。強度比(S2/S1)は0.82であった。またアルマイト処理時の染色不良は観測されないことが確認された。以上の結果を表1にまとめた。
上記の方法で作製した粗化アルミニウム合金板(M1)の表面部をSEM観察し、その画像から50〜1000nmのポアサイズの微細凹状構造の数を計量した。その結果、100μm2当たり300個存在することが分かった(図4参照)。また、SEM観察部周辺の断面をSEM観察した。その結果、開口径が150nmである開口部を有する微細凹状構造の存在が確認された(図5参照)。
また上記の断面SEM画像の微細凹状構造内には更に内部微細凹状構造が存在することが確認された。
次いで、上記の方法で金属樹脂複合体を得たのち、アルマイト処理前後の押し込み強度測定を行った。その結果、処理前(S1)は15.3MPa、処理後(S2)は12.5MPaであった。強度比(S2/S1)は0.82であった。またアルマイト処理時の染色不良は観測されないことが確認された。以上の結果を表1にまとめた。
〔比較例1〕
実施例1において、粗化アルミニウム合金板(M1)の代わりに粗化アルミニウム合金板(M2)を用いた以外は実施例1と同様の観察、評価を行った。結果を表1にまとめた。
実施例1において、粗化アルミニウム合金板(M1)の代わりに粗化アルミニウム合金板(M2)を用いた以外は実施例1と同様の観察、評価を行った。結果を表1にまとめた。
〔比較例2〕
実施例1において、粗化アルミニウム合金板(M1)の代わりに粗化アルミニウム合金板(M3)を用いた以外は実施例1と同様の観察、評価を行った。結果を表1にまとめた。
実施例1において、粗化アルミニウム合金板(M1)の代わりに粗化アルミニウム合金板(M3)を用いた以外は実施例1と同様の観察、評価を行った。結果を表1にまとめた。
〔比較例3〕
実施例1において、粗化アルミニウム合金板(M1)の代わりに粗化アルミニウム合金板(M4)を用いた以外は実施例1と同様の観察、評価を行った。結果を表1にまとめた。
実施例1において、粗化アルミニウム合金板(M1)の代わりに粗化アルミニウム合金板(M4)を用いた以外は実施例1と同様の観察、評価を行った。結果を表1にまとめた。
1 金属樹脂複合体
2 樹脂部材
3 金属部材
4 微細凹状構造(樹脂部材が接合)
5 微細凹状構造(樹脂部材が未接合)
10 アルミニウム合金板
12 PBT樹脂部
13 金属樹脂複合体試験片を構成するアルミニウム合金部材
16 開口部
20 金属樹脂複合体試験片
2 樹脂部材
3 金属部材
4 微細凹状構造(樹脂部材が接合)
5 微細凹状構造(樹脂部材が未接合)
10 アルミニウム合金板
12 PBT樹脂部
13 金属樹脂複合体試験片を構成するアルミニウム合金部材
16 開口部
20 金属樹脂複合体試験片
Claims (7)
- 金属部材と、熱可塑性樹脂または前記熱可塑性樹脂を含む樹脂組成物により構成された熱可塑性樹脂部材とが接合してなる金属樹脂複合体であって、
少なくとも前記金属部材の前記熱可塑性樹脂部材との接合部表面を走査型電子顕微鏡で観察した際に、50nm以上1000nm以下のポアサイズを有する微細凹状構造が、前記接合部表面100μm2当たり50個以上1000個以下観測される金属樹脂複合体。 - 請求項1に記載の金属樹脂複合体において、
前記接合部表面の断面を走査型電子顕微鏡で観察した際に、開口径が50nm以上1000nm以下である微細凹状構造が観測される金属樹脂複合体。 - 請求項1または2に記載の金属樹脂複合体において、
前記微細凹状構造は、内部の壁面に少なくとも一つ以上の内部微細凹状構造が形成された二重微細凹状構造を有している金属樹脂複合体。 - 請求項1乃至3のいずれか一項に記載の金属樹脂複合体において、
前記金属部材がアルミニウム合金により構成されている金属樹脂複合体。 - 請求項4に記載の金属樹脂複合体において、
前記アルミニウム合金における、Alの含有量が96質量%以上99質量%以下であり、Siの含有量が0.2質量%以上4質量%以下である金属樹脂複合体。 - 請求項1乃至5のいずれか一項に記載の金属樹脂複合体において、
前記熱可塑性樹脂が、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリフェニレン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエーテル系樹脂、およびポリカーボネート樹脂からなる群から選択される一種または二種以上の樹脂を含む金属樹脂複合体。 - アルマイト処理されている請求項4乃至6のいずれか一項に記載の金属樹脂複合体。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2018191507A JP2020059203A (ja) | 2018-10-10 | 2018-10-10 | 金属樹脂複合体 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP2018191507A JP2020059203A (ja) | 2018-10-10 | 2018-10-10 | 金属樹脂複合体 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
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JP2020059203A true JP2020059203A (ja) | 2020-04-16 |
Family
ID=70219306
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
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JP2018191507A Pending JP2020059203A (ja) | 2018-10-10 | 2018-10-10 | 金属樹脂複合体 |
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Country | Link |
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JP (1) | JP2020059203A (ja) |
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
WO2023013557A1 (ja) * | 2021-08-05 | 2023-02-09 | 三井化学株式会社 | 抗菌性金属材料及び抗菌性物品 |
-
2018
- 2018-10-10 JP JP2018191507A patent/JP2020059203A/ja active Pending
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WO2023013557A1 (ja) * | 2021-08-05 | 2023-02-09 | 三井化学株式会社 | 抗菌性金属材料及び抗菌性物品 |
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