JP2018135569A - Snめっき鋼板及びSnめっき鋼板の製造方法 - Google Patents
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(1)鋼板と、
前記鋼板の少なくとも片面上に位置するSnめっき層と、
前記Snめっき層上に位置し、ジルコニウム酸化物を含有する皮膜層と、
を有し、
前記皮膜層中における前記ジルコニウム酸化物の付着量が金属Zr量で0.2mg/m2以上50mg/m2以下であり、
前記皮膜層は、さらにXPS(X−ray Photoelectron Spectroscopy:X線光電子分光法)によるZr3d5/2の結合エネルギーのピーク位置が、182.5eV以上182.9eV以下であるジルコニウム酸化物を含む、Snめっき鋼板。
(2)前記皮膜層は、さらに錫酸化物を含む、(1)に記載のSnめっき鋼板。
(3)前記錫酸化物の還元に要する電気量が1.0mC/cm2以上5.0mC/cm2以下である、(2)に記載のSnめっき鋼板。
(4)前記Snめっき層が、質量%で、Snを0.1g/m2以上15g/m2以下含有する、(1)〜(3)のいずれか一項に記載のSnめっき鋼板。
(5)鋼板の少なくとも片面上にSnめっき層を有するSnめっき鋼板を、ジルコニウムイオンを含む溶液中への浸漬又はジルコニウムイオンを含む溶液中での陰極電解処理により、Snめっき層上にジルコニウム酸化物を生成させ、
当該Snめっき鋼板について電解質溶液中で陽極電解処理を実施し、
前記陽極電解処理の電気量が0.1C/dm2以上6.4C/dm2以下である、Snめっき鋼板の製造方法。
(6)pHが3以上14以下である前記電解質溶液中で、陽極電解処理を実施する、(4)に記載のSnめっき鋼板の製造方法。
本実施形態に係るSnめっき鋼板は、鋼板の少なくとも片方の表面にSnめっき層の生成されたSnめっき鋼板の表面に、所定量のジルコニウム酸化物を含有する皮膜層を有する。
本実施形態に係るSnめっき鋼板に母材として用いられる鋼板は、特に規定されるものではなく、一般的な容器用のSnめっき鋼板に用いられている鋼板であれば、任意のものを使用可能であり、例えば、低炭素鋼や極低炭素鋼などが挙げられる。
上記のような鋼板の少なくとも片面には、Snめっきが施されて、Snめっき層が生成される。かかるSnめっきによって、鋼板の耐食性は向上する。なお、本明細書における「Snめっき」とは、金属Snによるめっきだけでなく、金属Snに不純物が混入したものや、金属Snに微量元素を添加したものも含む。
本実施形態に係るSnめっき鋼板は、上記のようなSnめっき層を有するSnめっき鋼板の表面に、ジルコニウム酸化物を含有する皮膜層を有する。前述のように、かかる皮膜層中におけるジルコニウム酸化物の付着量は、金属Zr量で片面当たり0.2mg/m2以上50mg/m2以下であり、かつ、皮膜層は、XPSによるZr3d5/2の結合エネルギーのピーク位置が、182.5eV以上182.9eV以下であるジルコニウム酸化物を含む。
次に、本実施形態に係るSnめっき鋼板の製造方法について説明する。本実施形態に係るSnめっき鋼板の製造方法は、鋼板の少なくとも片面上にSnめっき層を有するSnめっき鋼板を、ジルコニウムイオンを含む溶液中への浸漬又はジルコニウムイオンを含む溶液中での陰極電解処理により、Snめっき層上にジルコニウム酸化物を生成させ、当該Snめっき鋼板について電解質溶液中で陽極電解処理を実施する。
また、前記陽極電解処理の電気量は、0.1C/dm2以上6.4C/dm2以下である。
なお、本実施形態においては、上記陰極電解処理に先立ち、鋼板を準備するとともに、Snめっきにより鋼板の少なくとも片面上にSnめっき層を形成する。
まず、Snめっき鋼板の母材となる鋼板を準備する。用いる鋼板の製造方法や材質は、特に規定されるものではなく、例えば、鋳造から熱間圧延、酸洗、冷間圧延、焼鈍、調質圧延等の工程を経て製造されたものを挙げることができる。
次いで、鋼板の少なくとも一方の表面上に、Snめっき層を形成する。Snめっきを鋼板表面に施す方法は、特に規定するものではないが、例えば公知の電気めっき法が好ましく、溶融したSnに鋼板を浸漬することでめっきする溶融法を用いてもよい。電気めっき法としては、例えば、周知のフェロスタン浴やハロゲン浴やアルカリ浴などを用いた電解法を利用することができる。
本実施形態に係る皮膜層を生成するためには、まず、Snめっき鋼板のSnめっき層上に対して、ジルコニウム酸化物を含有するジルコニウム酸化物層を生成する。
本実施形態に係るジルコニウム酸化物を含有する皮膜層は、上記のジルコニウム酸化物を含有するジルコニウム酸化物層を生成させたSnめっき鋼板を、電解質溶液中で陽極電解処理することで得られる。なお、このような陽極電解処理により、通常、上述したジルコニウム酸化物に加えて、錫酸化物も同時に生成する。用いられる電解質溶液は、具体的な成分については特に規定するものではないが、液性については、弱酸性からアルカリ性の電解質溶液とすることが好ましい。ここでいう弱酸性からアルカリ性の電解質とは、pHが3以上14以下の処理液のことを意味する。pHがこの範囲であれば、電解質溶液中でのSnめっき層の溶解が緩やかとなるため、本実施形態に係るジルコニウム酸化物及び錫酸化物を安定に生成することができる。
板厚0.2mmの低炭素冷延鋼板に対し、前処理として、電解アルカリ脱脂、水洗、希硫酸浸漬酸洗、水洗した後、フェノールスルホン酸浴を用いて電気Snめっきを施し、更にその後、加熱溶融処理をした。Snめっき層の付着量は、片面当たり約2.8g/m2を基準としたが、一部の試験材は、通電時間を変えることでSnめっき層の付着量を変化させた。また、電気Snめっき後に加熱溶融処理をしない試験材も、あわせて作製した。Snめっき付着量は、蛍光X線法(リガク社製ZSX Primus)により測定することで特定した。
片面当たりのZr付着量は、蛍光X線法(リガク社製ZSX Primus)により求めた。
XPS(ULVAC−PHI製PHI Quantera SXM)によりZr3d5/2の結合エネルギーのピーク位置を調べた。ピーク位置の決定に際しては、試料の表面で検出された炭素(C1s)のピーク位置が284.8eVになるように全体のスペクトルをシフトさせた上で、Zr3d5/2の結合エネルギー位置を求めた。
上記<試験材>に記載の方法で作製したSnめっき鋼板を、40℃、相対湿度80%に保持した恒温恒湿槽中に4週間載置する湿潤試験を行い、湿潤試験前後における色差b*値の変化量△b*を求めて、評価した。△b*が1以下であれば◎とし、1超過2以下であれば○とし、2超過3以下であれば△とし、3を超過していれば×とし、評価「◎」、「○」、「△」を合格とした。また、Δb*の値が2以下であっても、湿潤試験前(初期)のb*値が6以上の場合は「△」とした。b*は、市販の色差計であるスガ試験機製SC−GV5を用いて測定し、b*の測定条件は、光源C、全反射、測定径30mmである。
塗膜密着性は、以下のようにして評価した。
上記<試験材>に記載の方法で作製したSnめっき鋼板を、[耐黄変性]に記載の方法で湿潤試験した後、表面に、市販の缶用エポキシ樹脂塗料を乾燥質量で7g/m2塗布し、200℃で10分焼き付け、24時間室温に置いた。その後、得られたSnめっき鋼板に対し、鋼板表面に達する傷を碁盤目状に入れ(3mm間隔で縦横7本ずつの傷)、その部位のテープ剥離試験をすることで評価した。テープ貼り付け部位の碁盤目部分の塗膜(試験面)が全く剥離していなければ◎、試験面の塗膜の10%以下が剥離していれば○、試験面の10%超20%以下の塗膜が剥離していれば△、試験面の20%超の塗膜が剥離していれば×とし、評価「◎」、「○」、「△」を合格とした。
耐硫化黒変性は、以下のようにして評価した。
上記[塗膜密着性]に記載の方法で作製及び湿潤試験したSnめっき鋼板の表面に、市販の缶用エポキシ樹脂塗料を乾燥質量で7g/m2塗布した後、200℃で10分焼き付け、24時間室温に置いた。その後、得られたSnめっき鋼板を所定のサイズに切断し、リン酸二水素ナトリウムを0.3%、リン酸水素ナトリウムを0.7%、L−システイン塩酸塩を0.6%からなる水溶液中に浸漬し、密封容器中で121℃・60分のレトルト処理を行い、試験後の外観から評価した。試験前後で外観の変化が全く認められなければ◎とし、僅かに(試験面の5%以下に)黒変が認められれば○、試験目の5%超10%以下の領域に黒変が認められれば△、試験面の10%超過の領域に黒変が認められれば×とし、評価「◎」、「○」、「△」を合格とした。
塗装後耐食性は、以下のようにして評価した。
上記[塗膜密着性]に記載の方法で作製及び湿潤試験したSnめっき鋼板の表面に、市販の缶用エポキシ樹脂塗料を乾燥質量で7g/m2塗布した後、200℃で10分焼き付け、24時間室温に置いた。その後、得られたSnめっき鋼板を所定のサイズに切断し、市販のトマトジュースに60℃で7日間浸漬した後の錆の発生有無を、目視にて評価した。錆が全く認められなければ「◎」、錆が試験面の5%以下の領域に認められれば「○」、錆が試験面の5%超の領域に認められれば「×」とし、評価「◎」、「○」を合格とした。
表1は、Snめっき付着量とジルコニウム酸化物の付着量及びジルコニウム酸化物のZr3d5/2の結合エネルギー位置、錫酸化物量を変化させた場合の結果である。
表2は、錫酸化物の還元に要する電気量が異なる場合の結果である。本発明で規定する条件に則して作製した発明例A13〜A27の性能は、いずれも良好である。
表3は、陽極電解の電気量を種々変更した場合の結果である。Snめっき後、加熱溶融処理も行った。陰極電解の条件としては、フッ化ジルコニウムを含む水溶液中のジルコニウムイオン濃度を1400ppm、電流密度を3.0A/m2、流速を200m/分、pHを4.0、浴温は35℃とした。陽極電解の処理液に使う電解質には炭酸水素ナトリウムを用い、電気伝導度は2.0S/m、浴温は25℃とした。
表4は陽極電解に使う処理液に種々の電解質を用い浴のpHを変更した場合の結果である。Snめっき層の片面当たりのSn付着量は2.8g/m2とし、加熱溶融処理も行った。陰極電解の条件としては、電流密度は3.0A/m2、流速は200m/分、pHは4.0、浴温は35℃とし、陽極電解時の通電量は1.6C/dm2、浴温は25℃とした。
表5は陽極電解に使う処理液の電気伝導度、浴温、また、陽極電解の条件を種々変更した場合の結果である。Snめっき層の片面当たりのSn付着量は2.8g/m2とし、加熱溶融処理も行った。陽極電解の電解質には炭酸水素ナトリウムを用いた。陰極電解の条件としては、フッ化ジルコニウムを含む水溶液中のジルコニウムイオン濃度を1400ppm、電流密度を3.0A/m2、流速を200m/分、pHを4.0、浴温を35℃とした。
表6〜9は陰極電解条件を種々変更した場合の結果である。なお、表6、7には、陰極電解条件等の製造条件を、表8、9には、得られたSnめっき鋼板の物性等を示した。Snめっき層の片面当たりのSn付着量は2.8g/m2を基本としたが、一部のサンプルについてはSn付着量を増減し、また加熱溶融処理をしていないサンプルも作製した。
Claims (6)
- 鋼板と、
前記鋼板の少なくとも片面上に位置するSnめっき層と、
前記Snめっき層上に位置し、ジルコニウム酸化物を含有する皮膜層と、
を有し、
前記皮膜層中における前記ジルコニウム酸化物の付着量が金属Zr量で0.2mg/m2以上50mg/m2以下であり、
前記皮膜層は、X線光電子分光法によるZr3d5/2の結合エネルギーのピーク位置が182.5eV以上182.9eV以下であるジルコニウム酸化物を含む、Snめっき鋼板。 - 前記皮膜層は、さらに錫酸化物を含む、請求項1に記載のSnめっき鋼板。
- 前記錫酸化物の還元に要する電気量が1.0mC/cm2以上5.0mC/cm2以下である、請求項2に記載のSnめっき鋼板。
- 前記Snめっき層が、質量%で、Snを0.1g/m2以上15g/m2以下含有する、請求項1〜3のいずれか一項に記載のSnめっき鋼板。
- 鋼板の少なくとも片面上にSnめっき層を有するSnめっき鋼板を、ジルコニウムイオンを含む溶液中への浸漬又はジルコニウムイオンを含む溶液中での陰極電解処理により、Snめっき層上にジルコニウム酸化物を生成させ、
当該Snめっき鋼板について電解質溶液中で陽極電解処理を実施し、
前記陽極電解処理の電気量が0.1C/dm2以上6.4C/dm2以下である、Snめっき鋼板の製造方法。 - pHが3以上14以下である前記電解質溶液中で、前記陽極電解処理を実施することを特徴とする請求項5に記載のSnめっき鋼板の製造方法。
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