JP5262917B2 - ペリクル用支持枠の製造方法及びペリクル用支持枠並びにペリクル - Google Patents

ペリクル用支持枠の製造方法及びペリクル用支持枠並びにペリクル Download PDF

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Description

この発明は、LSI、超LSIなどの半導体装置や液晶表示装置等の製造の際に、フォトリソグラフィー工程で使用されるフォトマスクやレティクルに異物が付着するのを防止するペリクル用の支持枠に関し、詳しくは、ヘイズ(haze)の発生を可及的に低減したペリクル用支持枠の製造方法に関する。
電子機器の高機能化に伴い、各種部品の材料として使用されるアルミニウム材への要求も高まり、近年では、アルミニウム材の表面に形成される陽極酸化皮膜の品質を重要視するようになり、皮膜中に取り込まれる異物の種類やその量を制御することが必要になっている。
LSI、超LSIなどの半導体装置や液晶表示装置(LCD)等に使用される薄膜トランジスタ(TFT)やカラーフィルター(CF)等の製造では、露光装置を用いたフォトリソグラフィー工程が含まれ、この工程では、通常、ペリクルと呼ばれる防塵手段が用いられる。ペリクルは、フォトマスクやレティクルに合わせた形状を有する厚さ数ミリ程度の支持枠の片面側に、厚さ10μm程度のニトロセルロース、セルロース誘導体、フッ素ポリマーなどの透明な高分子膜(光学的薄膜体)を展張して接着したものであり、異物がフォトマスクやレティクル上に直接付着することを防ぐ。仮にフォトリソグラフィー工程において異物がペリクル上に付着したとしても、フォトレジストが塗布されたウエハー上にこれらの異物は結像しないため、異物の像による露光パターンの短絡や断線等を防止し、フォトリソグラフィー工程の製造歩留まりを向上させることができる。
ところが、近年の半導体装置の高集積化に伴い、より狭い線幅で微細な回路パターンの描画が求められるようになり、フォトリソグラフィー工程で使用される露光光についてもKrFエキシマレーザー(波長248nm)、ArFエキシマレーザー(波長193nm)、F2エキシマレーザー(波長157nm)等のような短波長光が主になっている。これらの短波長の露光光源は高出力であって光のエネルギーが高いことから、ペリクルを形成するアルミニウム材の表面の陽極酸化皮膜に硫酸やリン酸等の無機酸が残存すると、露光雰囲気中に存在するアンモニア等の塩基性物質と反応して硫酸アンモニウム等の反応生成物を形成し、この反応生成物(ヘイズ)がペリクルにくもりを生じさせてパターン転写像に影響を与える問題がある。
そこで、ペリクル用支持枠を得る際、陽極酸化後に純水中で超音波洗浄等を行うことで、酸成分を除去する方法が提案されている(特許文献1参照)。また、陽極酸化皮膜の代わりに電着塗装等によるポリマー皮膜を形成する方法も提案されている(特許文献2参照)。しかしながら、陽極酸化後に洗浄する方法では、酸成分を減らす効果はあっても、ヘイズの発生原因になる無機酸の流出のおそれを根本的に無くすことはできない。また、ポリマー皮膜を設ける方法では、陽極酸化皮膜に比べてポリマー皮膜の表面硬度は劣るため、傷が付きやすく、その傷が原因で発塵するおそれもある。
特開2006−184822号公報 特開2007−333910号公報
半導体装置等の高集積化の要望によりフォトリソグラフィー工程で用いる露光光の短波長化が進むにつれて、上述したようなヘイズの問題はより深刻になる。そこで、本発明者等はこの問題を解決するために鋭意検討した結果、酒石酸を含んだアルカリ性水溶液を用いてアルミニウム材を陽極酸化することで、耐食性及び耐久性に優れながら、ヘイズの発生を可及的に低減したペリクル用支持枠を得ることができることを見出し、本発明を完成した。
したがって、本発明の目的は、無機酸の含有量を低減して、高エネルギーの光の照射下においてもヘイズの発生を可及的に防止できるペリクル用支持枠の製造方法を提供することにある。
また、本発明の別の目的は、高エネルギーの光の照射下においてもヘイズの発生を可及的に低減したペリクル用支持枠を提供することにある。
すなわち、本発明は、アルミニウム又はアルミニウム合金からなるアルミニウム材で形成され、光学的薄膜体を備えてペリクルとして使用されるペリクル用支持枠の製造方法であって、酒石酸を含んだアルカリ性水溶液を用いた陽極酸化処理によりアルミニウム材の表面に陽極酸化皮膜を形成し、有機系染料を用いて染色処理した後、水蒸気により封孔処理することを特徴とするペリクル用支持枠の製造方法である。
また、本発明は、アルミニウム又はアルミニウム合金からなるアルミニウム材で形成され、光学的薄膜体を備えてペリクルとして使用されるペリクル用支持枠であって、酒石酸を含むアルカリ性水溶液を用いた陽極酸化処理によりアルミニウム材の表面に陽極酸化皮膜を形成し、次いで有機系染料を用いて染色処理した後、水蒸気により封孔処理して形成され、前記陽極酸化皮膜の膜厚が3〜9μmであり、かつ、80℃の純水に4時間浸漬させて溶出したイオン濃度を測定するイオン溶出試験において、支持枠表面積100cm 2 あたりの純水100ml中への溶出濃度が、酢酸イオン0.2ppm以下、ギ酸イオン0.06ppm以下、シュウ酸イオン0.01ppm以下、硫酸イオン0.01ppm以下、硝酸イオン0.02ppm以下、亜硝酸イオン0.02ppm以下、及び塩素イオン0.02ppm以下であることを特徴とするペリクル用支持枠。
更に、本発明は、上記ペリクル用支持枠の片側に光学的薄膜体を備えると共に、その反対側の端面に粘着体を備えたことを特徴とするペリクルである。
ペリクル用支持枠を形成するアルミニウム材の陽極酸化処理について、本発明ではヘイズの最大原因物質である硫酸を用いずに、電解液として酒石酸を含んだアルカリ性水溶液を用いる。ここで、酒石酸としては、酒石酸ナトリウム、酒石酸カリウム、酒石酸ナトリウムカリウム、酒石酸アンモニウム等の酒石酸塩を好適に用いることができる。酒石酸の濃度については、13〜200g/L、好ましくは25〜150g/Lであるのがよい。酒石酸の濃度が13g/Lより低いと陽極酸化皮膜は形成されにくく、反対に200g/Lより高いと低温での陽極酸化の際、析出のおそれがある。また、酒石酸を含んだアルカリ水溶液のpHについては12.25〜13.25、好ましくは12.5〜13.0であるのがよい。pHが12.25より低いと皮膜の生成速度が遅く、黒色化が困難となり、反対に13.25より高くなると皮膜の溶解速度が速くなり、粉吹きが発生するおそれがある。
酒石酸を含んだアルカリ水溶液を電解液として用いて陽極酸化処理する際は、浴温度を0〜15℃、好ましくは5〜10℃とするのがよい。浴温度が0℃より低くなると皮膜の生成速度が遅くなり、黒色化皮膜を生成するのに時間を要し、反対に15℃より高くなると皮膜の溶解速度が速くなり、成膜に時間を要し、また、粉吹きが発生するおそれがある。また、陽極酸化処理の電圧については、10〜60V、好ましくは20〜40Vであるのがよい。電圧が10Vより低いと皮膜が弱くなり、反対に60Vより高くなるとポアの面積が少なくなり、黒色化が困難となる。更には、陽極酸化の処理時間については10〜20分、好ましくは13〜17分であるのがよい。
そして、酒石酸の濃度やアルカリ水溶液のpHを含めて、これらの陽極酸化処理条件のもと、好適にはアルミニウム材の表面に膜厚3〜9μmの陽極酸化皮膜を形成するのがよい。陽極酸化皮膜の膜厚が3μmより小さいと、染色処理においてアルミニウム材の表面を十分に黒色化することができず、露光光を散乱させてしまうおそれがある。反対に9μmより大きいと、皮膜内に取り込まれる酸成分の量が多くなりすぎるおそれがある。本発明では、酒石酸を含んだアルカリ性水溶液を用いることで、一般に硫酸等の無機酸を用いて陽極酸化皮膜を形成する場合(通常100〜200g/L程度)に比べて使用する酸の量を減らしながら所定の陽極酸化皮膜を得ることができる。
また、本発明では、アルミニウム材の表面に陽極酸化皮膜を形成した後、有機系染料を用いて染色処理する。染色処理は露光光の散乱防止、使用前の異物付着検査等を目的にし、アルミニウム材の表面をいわゆる黒色化することができるものであればよいが、本発明では、一般に酸成分の含有量が少ないとされる有機系染料を用いるようにする。なかでも、硫酸、酢酸及びギ酸の含有量が少ない有機系染料を用いるのが好ましい。このような有機系染料として、好適には「TAC411」、「TAC413」、「TAC420」(以上、奥野製薬製)等を挙げることができ、所定の濃度に調製した染料液に陽極酸化処理後のアルミニウム材を浸漬させて、10分間程度の染色処理を行うようにするのがよい。
また、本発明では、染色処理後、水蒸気により陽極酸化皮膜を封孔処理する。本発明では、無機酸を用いた一般的な陽極酸化処理に比べて酸成分の使用量は限りなく少ないが、本発明者らが推測するメカニズムによれば、陽極酸化皮膜のポア(細孔)において、酒石酸が分解して形成されたギ酸や酢酸がイオンとして皮膜内に取り込まれ、また、ギ酸や酢酸が酸又はイオンの状態で付着することが考えられる。そのため、本発明では、水蒸気による封孔処理によって不純物の混入のおそれを排除しながら、これらの酸成分の封じ込めを行う。封孔処理の条件について、具体的には、温度110〜130℃、相対湿度90〜100%(R.H.)、圧力0.4〜2.0kg/cm2Gの設定で12〜60分処理するのがよい。
本発明においては、封孔処理後に弱アルカリ性水溶液に浸漬する弱アルカリ処理を行うようにしてもよい。アルカリとしてはNaOH、KOH、LiOH、NH3等を使用でき、浸漬処理条件としては、水溶液のpHを7.1〜8.5とし、15〜60分間程度行うようにするのがよい。弱アルカリ性水溶液への浸漬処理によれば、皮膜表面近傍に存在するギ酸を若干の皮膜溶解を伴いながら除去することができる。また、尿素、グアニジン、アルキルアミン等によってpHを調整した場合には亜硝酸を還元除去することもできる。更には、これに先立って行われる封孔処理の際に表面には水和酸化物が形成され、その存在がペリクル用枠を製造後、使用するまでの間に、大気中のNOx、SOx等を吸着し、還元することで、亜硝酸、硝酸、硫酸等のアニオンを生成することがある。そこで、封孔処理後、弱アルカリ性水溶液に浸漬する弱アルカリ処理を行うことで、封孔処理の際に生成した水和酸化物を溶解除去でき、亜硝酸、硝酸、硫酸等のアニオンの生成を抑制する効果もある。後述するように、封孔処理後に洗浄処理を行う場合にも同様の水和反応が起き、亜硝酸、硝酸、硫酸等のアニオンが生成することから、水洗処理を行った場合には、その後にもこの弱アルカリ処理を行うようにしてもよい。勿論、封孔処理後に後述する水洗処理を実施し、最後に弱アルカリ処理を実施しても同様の効果が得られる。浸漬処理の一例として、例えばNaOHでpHを7.4に調整した水溶液を攪拌しながら、その中に封孔処理後のアルミニウム材を浸漬するような弱アルカリ水溶液浸漬処理を具体的に示すことができる。
また、本発明においては、封孔処理後に洗浄処理を行うようにしてもよい。洗浄処理の条件について特に制限はないが、純水を用いた洗浄処理であるのがよく、好ましくは50〜90℃程度の温水による温洗処理を15〜90分間程度行うようにするのがよい。純水による洗浄処理によれば、封孔処理で封じ込められなかった酸あるいはそのイオンが存在した場合や、封孔処理に欠陥等が存在する場合に、それらの酸あるいはイオンを除去でき、封孔欠陥の存在する場合には温水による封孔処理となり、新たな酸及びイオンの溶出を抑制することができる。純水による洗浄処理の具体的な方法としては、例えば90℃に加温した純水槽内を攪拌してその中に封孔処理後のアルミニウム材を浸漬する方法や、封孔処理後のアルミニウム材を50℃に加温した純水シャワーで洗浄する等の処理方法を例示することができる。なお、封孔処理後に行う弱アルカリ処理や洗浄処理は、いずれか一方のみを行うようにしてもよく、両方を行うようにしてもよい。
また、本発明においては、均一な陽極酸化皮膜を形成するために、前処理として酸やアルカリを用いたエッチング処理を行ってもよく、得られた支持枠にごみ等が付着した場合に検知し易くするために予めブラスト処理等を施すようにしてもよい。
本発明において、ペリクル用支持枠の形成に用いるアルミニウム材は、アルミニウム又はアルミニウム合金からなればよく、所定の支持枠として強度等が確保される限り特に制限はないが、好適にはJIS A7075、JIS A6061、JIS A5052等を挙げることができる。
また、本発明によって得られるペリクル用支持枠は、80℃の純水に4時間浸漬させて溶出したイオン濃度を測定するイオン溶出試験において、以下のような特性を示すことができる。すなわち、支持枠表面積100cm2あたりの純水100ml中への溶出濃度で、酢酸イオン(CH3COO-)が0.2ppm以下、好ましくは0.1ppm以下であり、ギ酸イオン(HCOO-)が0.06ppm以下、好ましくは0.03ppm以下であり、シュウ酸イオン(C2O4 2-)が0.01ppm以下、好ましくは0.005ppm未満(定量限界)であり、硫酸イオン(SO4 2-)が0.01ppm以下、好ましくは0.005ppm未満(定量限界)であり、硝酸イオン(NO3 -)が0.02ppm以下、好ましくは0.01ppm以下であり、亜硝酸イオン(NO2 -)が0.02ppm以下、好ましくは0.01ppm以下であり、塩酸イオン(Cl-)が0.02ppm以下、好ましくは0.01ppm以下である。これらはヘイズの発生に影響を考えるイオンであり、なかでも、酢酸イオン、ギ酸イオン、硫酸イオン、シュウ酸、及び亜硝酸の溶出量を制御することで、ヘイズの発生を可及的に低減したペリクル用支持枠とすることができる。なお、溶出イオンの検出はイオンクロマトグラフ分析により行うことができ、詳細な測定条件については実施例に記載するとおりである。
本発明により得られたペリクル用支持枠は、その片側に光学的薄膜体を貼着すると共に、その反対側の端面に粘着体を備えるようにしてペリクルとして使用することができる。光学的薄膜体としては特に制限はなく公知のものを使用することができるが、例えば石英等の無機物質や、ニトロセルロース、ポリエチレンテレフタレート、セルロースエステル類、ポリカーボネート、ポリメタクリル酸メチル等のポリマーなどを例示することができる。また、光学的薄膜体には、CaF2等の無機物やポリスチレン、テフロン(登録商標)等のポリマーからなる反射防止層などを備えるようにしてもよい。一方、光学的薄膜体を設けた面とは反対側の支持枠端面には、ペリクルをフォトマスクやレティクルに装着するための粘着体を備えるようにする。粘着体としては粘着材単独あるいは弾性のある基材の両側に粘着材が塗布された素材を使用することができる。ここで、粘着材としてはアクリル系、ゴム系、ビニル系、エポキシ系、シリコーン系等の接着剤が挙げることができ、また、基材となる弾性の大きい材料としてはゴムまたはフォームが挙げられ、例えばブチルゴム、発砲ポリウレタン、発砲ポリエチレン等を例示できるが、特にこれらに限定されない。
本発明では、硫酸やリン酸等の無機酸が取り込まれるおそれを可及的に排除して、酸成分の含有量が少ないペリクル用支持枠を得ているため、ペリクルとして使用した場合に露光中における反応生成物(ヘイズ)の発生が極めて低減され、特に、KrFエキシマレーザー、ArFエキシマレーザー、F2エキシマレーザー等のような高エネルギーの露光光を用いたフォトリソグラフィーで使用するのに好適である。また、本発明によって得られたペリクル用支持枠は傷が付きにくく、耐久性に優れ、尚且つ発塵のおそれも少ないことから、長期にわたる信頼性に優れて使用することができる。
以下、実施例及び比較例に基づき、本発明の好適な実施の形態を説明する。
[実施例1]
A7075アルミニウム合金の中空押出し材を切断し、支持枠外寸法149mm×122mm×高さ5.8mm、支持枠厚さ2mmとなるように切削研磨して、枠材形状に加工したアルミニウム材を用意した。次いで、酒石酸ナトリウム53g/L、及び水酸化ナトリウム4g/Lが溶解したアルカリ性水溶液(pH=13.0)を電解液として、浴温度5℃で電解電圧40Vの定電圧電解を15分行い、上記アルミニウム材を陽極酸化処理した。純水にて洗浄した後、アルミニウム材の表面に形成された陽極酸化皮膜を渦電流式膜厚計(株式会社フィッシャー・インストルメンツ社製)にて確認したところ、膜厚は5μmであった。
次いで、陽極酸化処理したアルミニウム材を、有機染料(奥野製薬製TAC411)を濃度10g/Lで含有した水溶液に入れ、温度55℃にて10分間浸漬して染色処理した。染色処理後、蒸気封孔装置にアルミニウム材を入れ、相対湿度100%(R.H.)、2.0kg/cm2G、及び温度130℃の水蒸気を発生させながら30分の封孔処理を行い、実施例1に係る試験用ペリクル支持枠を得た。
得られた試験用ペリクル支持枠について、以下のような評価を行った。先ず、染色性について、本実施例1と同じ材質の板材を陽極酸化処理し、更に染色処理を施して、ハンターの色差式による明度指数L*値が30となる染色対照材を別途用意した。そして、実施例1に係る試験用ペリクル支持枠を目視検査して、染色対照材より黒いものを○とし、そうでないものを×と評価した。結果を表1に示す。
また、実施例1に係る試験用ペリクル支持枠をポリエチレン袋に入れ、純水100mlを加えて密封し、80℃に保って4時間浸漬した。このようにして支持枠からの溶出成分を抽出した抽出水を、セル温度35℃、カラム(IonPacAS11-HC)温度40℃とし、1.5ml/minの条件でイオンクロマトグラフ分析装置(日本ダイオネクス社製ICS-2000)を用いて分析した。この抽出水から酢酸イオン、ギ酸イオン、塩酸イオン、亜硝酸イオン、硝酸イオン、硫酸イオン及びシュウ酸イオンを検出し、支持枠表面積100cm2あたりの純水100ml中への溶出濃度を求めた。結果を表1に示す。なお、本実施例で使用したイオンクロマトグラフ分析装置の定量限界(下限)は0.005ppmであり、表1に示した分析結果は、硫酸イオン及びシュウ酸イオンはいずれも検出されなかったことを表す。
Figure 0005262917
[実施例2]
水蒸気による封孔処理まで上記実施例1と同様にして行った後、更にNaOHでpHを7.4に調整した弱アルカリ水溶液に封孔処理後のアルミニウム材を室温で30分間浸漬させる浸漬処理を行い、実施例2に係る試験用ペリクル支持枠を得た。得られた試験用ペリクル支持枠について、実施例1と同様に染色性、及びイオン溶出量を評価した。結果を表1に示す。
[実施例3]
電解電圧20Vの定電圧電解を12分行うように陽極酸化処理した以外は実施例1と同様にして封孔処理まで行った後、温度90℃の純水中に封孔処理後のアルミニウム材を30分間浸漬させる温洗処理(洗浄処理)を行って、実施例3に係る試験用ペリクル支持枠を得た。得られた試験用ペリクル支持枠について、実施例1と同様に染色性、及びイオン溶出量を評価した。結果を表1に示す。
[比較例1]
酒石酸ナトリウム53g/L、及び水酸化ナトリウム4g/Lが溶解したアルカリ性水溶液(pH=13.0)を電解液として、浴温度5℃で電解電圧30Vの定電圧電解を15分行い、実施例1と同様に準備したアルミニウム材を陽極酸化処理した。純水にて洗浄した後、実施例1と同様にして染色処理を行った。次いで、酢酸ニッケルを主成分として含む封孔剤(花見化学社製 シーリングX)を濃度40ml/Lで含有する水溶液に染色処理後のアルミニウム材を入れ、90℃にて20分浸漬する封孔処理を行い、比較例1に係る試験用ペリクル支持枠を得た。得られた試験用ペリクル支持枠について、実施例1と同様に染色性、及びイオン溶出量を評価した。結果を表1に示す。
[比較例2]
比較例1と同様に封孔処理まで行った後、更に温度90℃の純水中に封孔処理後のアルミニウム材を30分間浸漬させる温洗処理を行い、比較例2に係る試験用ペリクル支持枠を得た。得られた試験用ペリクル支持枠について、実施例1と同様に染色性、及びイオン溶出量を評価した。結果を表1に示す。
[比較例3]
電解液として160g/Lの硫酸水溶液を用い、浴温度20℃で電解電圧17Vの定電圧電解を19分行い、実施例1と同様に準備したアルミニウム材を陽極酸化処理した。純水にて洗浄した後、実施例1と同様にして染色処理を行った。次いで、酢酸ニッケルを主成分として含む封孔剤(花見化学社製 シーリングX)を濃度40ml/Lで含有する水溶液に染色処理後のアルミニウム材を入れ、90℃にて20分浸漬する封孔処理を行い、比較例3に係る試験用ペリクル支持枠を得た。得られた試験用ペリクル支持枠について、実施例1と同様に染色性、及びイオン溶出量を評価した。結果を表1に示す。
上記実施例1〜3及び比較例1〜3の結果から明らかなように、本発明に係る実施例で得られた試験用ペリクル支持枠は、溶出するイオン濃度をいずれも低減することができ、特に、比較例の場合に比べて、酢酸イオンをはじめ、硝酸イオンや硫酸イオンの溶出濃度の低減に優れた効果を示す。
本発明によって得られたペリクル用支持枠及びペリクルは、種々の半導体装置や液晶表示装置等の製造の際のフォトリソグラフィー工程等で使用することができ、特に短波長化が進む高エネルギーの露光環境下においてより一層その効果を発揮する。

Claims (12)

  1. アルミニウム又はアルミニウム合金からなるアルミニウム材で形成され、光学的薄膜体を備えてペリクルとして使用されるペリクル用支持枠の製造方法であって、酒石酸を含んだアルカリ性水溶液を用いた陽極酸化処理によりアルミニウム材の表面に陽極酸化皮膜を形成し、有機系染料を用いて染色処理した後、水蒸気により封孔処理することを特徴とするペリクル用支持枠の製造方法。
  2. 前記アルミニウム材の表面に形成される陽極酸化皮膜の膜厚が3〜9μmである請求項1に記載のペリクル用支持枠の製造方法。
  3. 封孔処理後、pH7.1〜pH8.5のアルカリ性水溶液に浸漬する弱アルカリ処理を行う請求項1又は2に記載のペリクル用支持枠の製造方法。
  4. 封孔処理後、純水を用いて洗浄処理する請求項1〜3のいずれかに記載のペリクル用支持枠の製造方法。
  5. 純水を用いた洗浄処理が、50〜90℃の温水を用いる温洗処理である請求項4に記載のペリクル用支持枠の製造方法。
  6. アルカリ性水溶液が、酒石酸を13〜200g/L含有し、かつ、pHが12.25〜13.25である請求項1〜5のいずれかに記載のペリクル用支持枠の製造方法。
  7. 陽極酸化処理の電圧が10〜60Vである請求項1〜6のいずれかに記載のペリクル用支持枠の製造方法。
  8. アルカリ性水溶液の浴温度が0〜15℃である請求項1〜7のいずれかに記載のペリクル用支持枠の製造方法。
  9. アルミニウム又はアルミニウム合金からなるアルミニウム材で形成され、光学的薄膜体を備えてペリクルとして使用されるペリクル用支持枠であって、酒石酸を含むアルカリ性水溶液を用いた陽極酸化処理によりアルミニウム材の表面に陽極酸化皮膜を形成し、次いで有機系染料を用いて染色処理した後、水蒸気により封孔処理して形成され、前記陽極酸化皮膜の膜厚が3〜9μmであり、かつ、80℃の純水に4時間浸漬させて溶出したイオン濃度を測定するイオン溶出試験において、支持枠表面積100cm 2 あたりの純水100ml中への溶出濃度が、酢酸イオン0.2ppm以下、ギ酸イオン0.06ppm以下、シュウ酸イオン0.01ppm以下、硫酸イオン0.01ppm以下、硝酸イオン0.02ppm以下、亜硝酸イオン0.02ppm以下、及び塩素イオン0.02ppm以下であることを特徴とするペリクル用支持枠。
  10. 封孔処理後、pH7.1〜pH8.5のアルカリ性水溶液に浸漬する弱アルカリ処理が施されている請求項9に記載のペリクル用支持枠。
  11. 封孔処理後、純水を用いて洗浄処理されている請求項9又は10に記載のペリクル用支持枠。
  12. 請求項9〜11のいずれかに記載されたペリクル用支持枠の片側に光学的薄膜体を備えると共に、その反対側の端面に粘着体を備えたことを特徴とするペリクル。
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