JP4238405B2 - 置換スチレン誘導体又は置換ビアリール誘導体の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、液晶等の電子材料、医農薬中間体、機能性高分子用モノマー等を製造をするため有機合成上重要なクロスカップリング反応に対し、極めて有効な触媒及びそれを用いた有機化合物の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
クロスカップリング反応用触媒としては、これまでに種々のものが知られている。殊に、有機マグネシウム化合物とハロゲン化有機化合物とを触媒存在下、クロスカップリング反応を行う方法については、数多くの提案があり、中でも近年、ホスフィン配位子を有するNi種やPd種を用いたクロスカップリング反応の提案が数多くなされている。例えば、
(1)Bull.Chem.Soc.Jpn.,49,1958(1976)やOrganic Synthesis 58,127には、種々のホスフィン配位子を有するニッケル錯体を用いたアルキルマグネシウム化合物、アルケニルマグネシウム化合物、アリールマグネシウム化合物とアルキルハライド、アルケニルハライド、アリールハライドとのカップリング反応について記載されており、この応用技術として、
(2)特公昭57−2692号公報及び特公昭62−1927号公報において、触媒としてニッケル・ホスフィン錯体を用いたアルキルベンゼン誘導体やスチレン誘導体の製造方法が開示されている。しかしながら、特公昭62−1927号公報にも明確に記載されている様に、THF単独溶媒系では、収率が低下するか、クロスカップリング反応が全く進行しない場合があったり、使用溶媒、触媒種が極めて限定される等の問題点を有していた。
【0003】
また、有機マグネシウム化合物以外にも、有機亜鉛化合物や有機ホウ素化合物と有機ハライド化合物とのクロスカップリング反応に関する研究及び応用技術が提案されている。例えば、
(3)J.Org.Chem.,42,1821(1977)には、Pd又はNi触媒下に、アリール亜鉛化合物とアリールハライドとのクロスカップリング反応させる方法が開示されており、
(4)Synth.Commun.,11,513(1981)には、Pd触媒によるアリールホウ酸化合物とアリールハライドとのクロスカップリング反応が提案されている。
【0004】
しかしながら、これら方法は、活性種としてPdを用いる為、経済性の面で問題点を有していた。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
上述した従来の技術は、現在でも、液晶等の電子材料、医農薬中間体、機能性高分子用モノマー等の製造に応用されているものの、更に効果的で、汎用性があり、経済的なクロスカップリング反応用触媒及びそれを用いたクロスカップリング反応が望まれていた。
【0006】
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、本発明は、触媒効率が高く、目的物を溶媒種類等の反応条件によらず高収率かつ高選択率で得ることを可能とし、安価な成分によって構成されるクロスカップリング反応用触媒を提供すること、及びこれを用い置換スチレン誘導体や置換ビアリール誘導体等の有機化合物を効率的に製造する方法を提供することである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、周期律表第四周期VIII属金属化合物に、金属ヒドリド構造をもたない周期律表IIB族及びIIIB族有機金属化合物の群より選ばれた少なくとも一種を含有する触媒が、上記したクロスカップリング反応に極めて有効であることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0008】
すなわち本発明は、周期律表第四周期VIII族金属化合物と、金属ヒドリド構造をもたない周期律表IIB及びIIIB族有機金属化合物からなる群より選ばれた少なくとも一種を含有するクロスカップリング反応用触媒、及びそれを用いた置換スチレン誘導体又は置換ビアリール誘導体の製造方法である。
【0009】
以下の本発明を更に詳細に説明する。
【0010】
本発明において使用する周期律表第四周期VIII族金属化合物としては、Fe(0)、Fe(II)、Fe(III)、Co(0)、Co(I)、Co(II)、Co(III)、Ni(0)、Ni(II)を金属種として有する無機化合物、有機化合物及び有機金属錯体を使用することができる。
【0011】
Fe(II)、Fe(III)を有する化合物としては、具体的には、弗化鉄(II)、塩化鉄(II)、臭化鉄(II)、沃化鉄(II)、弗化鉄(III)、塩化鉄(III)、臭化鉄(III)、沃化鉄(III)等のハロゲン化物を挙げることができる。これらの水和物の使用も、本発明の範囲に含まれる。
【0012】
また、一般式(1)
LnFeXm (1)
(式中、Lは、置換ホスフィン配位子、カルボニル配位子又はアミン配位子を示し、各々同一であっても異なっても良く、置換ホスフィン配位子の場合、架橋されていても良い。nは配位数を示し0〜6の整数である。Feは、零価、一価、二価又は三価である。Xは、ハロゲン原子であり、各々同一であっても異なっても良い。mはFeの価数に相当する数を示す。)
で示される有機鉄錯体、例えば、二塩化ビス(トリフェニルホスフィン)鉄(II)、二臭化ビス(トリフェニルホスフィン)鉄(II)、二沃化ビス(トリフェニルホスフィン)鉄(II)、二塩化[1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン]鉄(II)、二臭化[1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン]鉄(II)、二沃化[1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン]鉄(II)、二塩化[1,3−ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン]鉄(II)、二臭化[1,3−ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン]鉄(II)、二沃化[1,3−ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン]鉄(II)、二塩化ビス(トリ−t−ブチルホスフィン)鉄(II)、二臭化ビス(トリ−t−ブチルホスフィン)鉄(II)、二沃化ビス(トリ−t−ブチルホスフィン)鉄(II)、二塩化[1,2−ビス(ジ−t−ブチルホスフィノ)エタン]鉄(II)、二臭化[1,2−ビス(ジ−t−ブチルホスフィノ)エタン]鉄(II)、二沃化[1,2−ビス(ジ−t−ブチルホスフィノ)エタン]鉄(II)、二塩化[1,3−ビス(ジ−t−ブチルホスフィノ)プロパン]鉄(II)、二臭化[1,3−ビス(ジ−t−ブチルホスフィノ)プロパン]鉄(II)、二沃化[1,3−ビス(ジ−t−ブチルホスフィノ)プロパン]鉄(II)、塩化(シクロペンタジエニル)[1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン]鉄(II)、ブロモトリカルボニル(アリール)鉄(II)、二塩化(2,2’−ビピリジル)鉄(II)、二臭化(2,2’−ビピリジル)鉄(II)、二沃化(2,2’−ビピリジル)鉄(II)等を挙げることができる。また、これらの二種以上の混合物の使用も本発明の範囲に含まれる。
【0013】
Co(II)、Co(III)を有する化合物としては、具体的には、弗化コバルト(II)、塩化コバルト(II)、臭化コバルト(II)、沃化コバルト(II)、弗化コバルト(III)、塩化コバルト(III)、臭化コバルト(III)、沃化コバルト(III)等のハロゲン化物を挙げることができる。これらの水和物の使用も、本発明の範囲に含まれる。
【0014】
また、一般式(2)
LnCoXm (2)
(式中、Lは、置換ホスフィン配位子、カルボニル配位子又はアミン配位子を示し、各々同一であっても異なっても良く、置換ホスフィン配位子の場合、架橋されていても良い。nは配位数を示し0〜6の整数である。Coは、零価、一価、二価又は三価である。Xは、ハロゲン原子であり、各々同一であっても異なっても良い。mはFeの価数に相当する数を示す。)
で示される有機コバルト錯体、例えば、塩化トリス(トリフェニルホスフィン)コバルト(I)、臭化トリス(トリフェニルホスフィン)コバルト(I)、沃化トリス(トリフェニルホスフィン)コバルト(I)、二塩化ビス(トリフェニルホスフィン)コバルト(II)、二臭化ビス(トリフェニルホスフィン)コバルト(II)、二沃化ビス(トリフェニルホスフィン)コバルト(II)、二塩化[1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン]コバルト(II)、二臭化[1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン]コバルト(II)、二沃化[1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン]コバルト(II)、二塩化[1,3−ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン]コバルト(II)、二臭化[1,3−ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン]コバルト(II)、二沃化[1,3−ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン]コバルト(II)、二塩化ビス(トリ−t−ブチルホスフィン)コバルト(II)、二臭化ビス(トリ−t−ブチルホスフィン)コバルト(II)、二沃化ビス(トリ−t−ブチルホスフィン)コバルト(II)、二塩化[1,2−ビス(ジ−t−ブチルホスフィノ)エタン]コバルト(II)、二臭化[1,2−ビス(ジ−t−ブチルホスフィノ)エタン]コバルト(II)、二沃化[1,2−ビス(ジ−t−ブチルホスフィノ)エタン]コバルト(II)、二塩化[1,3−ビス(ジ−t−ブチルホスフィノ)プロパン]コバルト(II)、二臭化[1,3−ビス(ジ−t−ブチルホスフィノ)プロパン]コバルト(II)、二沃化[1,3−ビス(ジ−t−ブチルホスフィノ)プロパン]コバルト(II)、二塩化ビス(トリシクロヘキシルホスフィン)コバルト(II)、二臭化ビス(トリシクロヘキシルホスフィン)コバルト(II)、二沃化ビス(トリシクロヘキシルホスフィン)コバルト(II)、二塩化ビス(トリエチルホスフィン)コバルト(II)、二臭化ビス(トリエチルホスフィン)コバルト(II)、二沃化ビス(トリエチルホスフィン)コバルト(II)、二塩化ビス(トリプロピルホスフィン)コバルト(II)、二臭化ビス(ジエチルフェニルホスフィン)コバルト(II)、二臭化ビス(エチルジフェニルホスフィン)コバルト(II)、二臭化ビス(ジヘキシルホスフィン)コバルト(II)、二塩化(2,2’−ビピリジル)コバルト(II)、二臭化(2,2’−ビピリジル)コバルト(II)、二沃化(2,2’−ビピリジル)コバルト(II)、沃化(シクロペンタジエニル)(シクロヘキサジエニル)コバルト(III)、二沃化(シクロペンタジエニル)(トリフェニルホスフィン)コバルト(III)等を挙げることができる。また、これらの二種以上の混合物の使用も本発明の範囲に含まれる。
【0015】
Ni(II)を有する化合物としては、具体的には、弗化ニッケル(II)、塩化ニッケル(II)、臭化ニッケル(II)、沃化ニッケル(II)等のハロゲン化物を挙げることができる。これらの水和物の使用も、本発明の範囲に含まれる。
【0016】
また、一般式(3)
LnNiXm (3)
(式中、Lは、置換ホスフィン配位子、カルボニル配位子又はアミン配位子を示し、各々同一であっても異なっても良く、置換ホスフィン配位子の場合、架橋されていても良い。nは配位数を示し0〜6の整数である。Niは、零価、一価又は二価である。Xは、ハロゲン原子であり、各々同一であっても異なっても良い。mはFeの価数に相当する数を示す。)
で示される有機ニッケル錯体、例えば、塩化トリス(トリフェニルホスフィン)ニッケル(I)、臭化トリス(トリフェニルホスフィン)ニッケル(I)、沃化トリス(トリフェニルホスフィン)ニッケル(I)、二塩化ビス(トリフェニルホスフィン)ニッケル(II)、二臭化ビス(トリフェニルホスフィン)ニッケル(II)、二沃化ビス(トリフェニルホスフィン)ニッケル(II)、二塩化[1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン]ニッケル(II)、二臭化[1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン]ニッケル(II)、二沃化[1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン]ニッケル(II)、二塩化[1,3−ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン]ニッケル(II)、二臭化[1,3−ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン]ニッケル(II)、二沃化[1,3−ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン]ニッケル(II)、二塩化ビス(トリ−t−ブチルホスフィン)ニッケル(II)、二臭化ビス(トリ−t−ブチルホスフィン)ニッケル(II)、二沃化ビス(トリ−t−ブチルホスフィン)ニッケル(II)、二塩化[1,2−ビス(ジ−t−ブチルホスフィノ)エタン]ニッケル(II)、二臭化[1,2−ビス(ジ−t−ブチルホスフィノ)エタン]ニッケル(II)、二沃化[1,2−ビス(ジ−t−ブチルホスフィノ)エタン]ニッケル(II)、二塩化[1,3−ビス(ジ−t−ブチルホスフィノ)プロパン]ニッケル(II)、二臭化[1,3−ビス(ジ−t−ブチルホスフィノ)プロパン]ニッケル(II)、二沃化[1,3−ビス(ジ−t−ブチルホスフィノ)プロパン]ニッケル(II)、二塩化[1,2−ビス(ジシクロヘキシルホスフィノ)エタン]ニッケル(II)、二臭化[1,2−ビス(ジシクロヘキシルホスフィノ)エタン]ニッケル(II)、二沃化[1,2−ビス(ジシクロヘキシルホスフィノ)エタン]ニッケル(II)、二塩化[1,3−ビス(ジシクロヘキシルホスフィノ)プロパン]ニッケル(II)、二臭化[1,3−ビス(ジシクロヘキシルホスフィノ)プロパン]ニッケル(II)、二沃化[1,3−ビス(ジシクロヘキシルホスフィノ)プロパン]ニッケル(II)、二塩化ビス(トリシクロヘキシルホスフィン)ニッケル(II)、二臭化ビス(トリシクロヘキシルホスフィン)ニッケル(II)、二沃化ビス(トリシクロヘキシルホスフィン)ニッケル(II)、二塩化ビス(トリメチルホスフィン)ニッケル(II)、二臭化ビス(トリメチルホスフィン)ニッケル(II)、二沃化ビス(トリメチルホスフィン)ニッケル(II)、二塩化ビス(トリエチルホスフィン)ニッケル(II)、二臭化ビス(トリエチルホスフィン)ニッケル(II)、二沃化ビス(トリエチルホスフィン)ニッケル(II)、二塩化ビス(トリi−プロピルホスフィン)ニッケル(II)、二臭化ビス(トリi−プロピルホスフィン)ニッケル(II)、二沃化ビス(トリi−プロピルホスフィン)ニッケル(II)、二塩化ビス(トリn−ブチルホスフィン)ニッケル(II)、二臭化ビス(トリn−ブチルホスフィン)ニッケル(II)、二沃化ビス(トリn−ブチルホスフィン)ニッケル(II)、二塩化ビス(メチルジフェニルホスフィン)ニッケル(II)、二臭化ビス(メチルジフェニルホスフィン)ニッケル(II)、二沃化ビス(メチルジフェニルホスフィン)ニッケル(II)、二塩化ビス(ジメチルフェニルホスフィン)ニッケル(II)、二臭化ビス(ジメチルフェニルホスフィン)ニッケル(II)、二沃化ビス(ジメチルフェニルホスフィン)ニッケル(II)、塩化(フェニル)ビス(トリフェニルホスフィン)ニッケル(II)、臭化(フェニル)ビス(トリフェニルホスフィン)ニッケル(II)、沃化(フェニル)ビス(トリフェニルホスフィン)ニッケル(II)、塩化(シクロペンタジエニル)(トリフェニルホスフィン)ニッケル(II)、塩化(ヒドリド)ビス(トリシクロヘキシルホスフィン)ニッケル(II)、二塩化(2,2’−ビピリジル)ニッケル(II)、二臭化(2,2’−ビピリジル)ニッケル(II)、二沃化(2,2’−ビピリジル)ニッケル(II)等を挙げることができる。また、これらの二種以上の混合物及び二臭化ビス[2−(エトキシカルボニル)アリール]二ニッケル塩の如き、複核錯体の使用も本発明の範囲に含まれる。
【0017】
触媒成分である、金属ヒドリド構造をもたないIIB族有機金属化合物、IIIB族有機金属化合物としては、有機亜鉛化合物、有機アルミニウム化合物である。
【0018】
有機亜鉛化合物としては、例えば、下記一般式(4)
R1 aZnY2-a (4)
(式中、R1は、アルキル基、アリール基、アルキルアリール基、アリールアルキル基、アルケニル基、アルキニル基等の炭素数1〜20の炭化水素基を示し、Yはハロゲンを示す。aは、2≧a>1なる数である。)
及び下記一般式(5)
R2 3ZnM (5)
(式中、R2は、アルキル基、アリール基、アルキルアリール基、アリールアルキル基、アルケニル基、アルキニル基等の炭素数1〜20の炭化水素基を示し、Mはリチウム又はハロゲン化マグネシウムである。)
で示される有機亜鉛化合物を使用することができる。具体的には、ジメチル亜鉛、ジエチル亜鉛、ジブチル亜鉛、ジフェニル亜鉛、塩化メチル亜鉛、臭化メチル亜鉛、沃化メチル亜鉛、塩化エチル亜鉛、臭化エチル亜鉛、沃化エチル亜鉛、塩化n−プロピル亜鉛、臭化n−プロピル亜鉛、沃化n−プロピル亜鉛、塩化i−プロピル亜鉛、臭化i−プロピル亜鉛、沃化i−プロピル亜鉛、塩化n−ブチル亜鉛、臭化n−ブチル亜鉛、沃化n−ブチル亜鉛、塩化i−ブチル亜鉛、臭化i−ブチル亜鉛、沃化i−ブチル亜鉛、塩化sec−ブチル亜鉛、臭化sec−ブチル亜鉛、沃化sec−ブチル亜鉛、塩化t−ブチル亜鉛、臭化t−ブチル亜鉛、沃化t−ブチル亜鉛、塩化フェニル亜鉛、臭化フェニル亜鉛、沃化フェニル亜鉛、トリメチル亜鉛リチウム、トリエチル亜鉛リチウム、トリn−プロピル亜鉛リチウム、トリi−プロピル亜鉛リチウム、トリn−ブチル亜鉛リチウム、トリi−ブチル亜鉛リチウム、トリsec−ブチル亜鉛リチウム、トリt−ブチル亜鉛リチウム、ジエチルn−ブチル亜鉛リチウム、トリメチル亜鉛マグネシウムクロリド、トリエチル亜鉛マグネシウムクロリド、トリn−プロピル亜鉛マグネシウムクロリド、トリi−プロピル亜鉛マグネシウムクロリド、トリn−ブチル亜鉛マグネシウムクロリド、トリi−ブチル亜鉛マグネシウムクロリド、トリsec−ブチル亜鉛マグネシウムクロリド、トリt−ブチル亜鉛マグネシウムクロリド、ジエチルn−ブチル亜鉛マグネシウムクロリド、トリメチル亜鉛マグネシウムブロミド、トリエチル亜鉛マグネシウムブロミド、トリn−プロピル亜鉛マグネシウムブロミド、トリi−プロピル亜鉛マグネシウムブロミド、トリn−ブチル亜鉛マグネシウムブロミド、トリi−ブチル亜鉛マグネシウムブロミド、トリsec−ブチル亜鉛マグネシウムブロミド、トリt−ブチル亜鉛マグネシウムブロミド、ジエチルn−ブチル亜鉛マグネシウムブロミド、エチル亜鉛アイオダイド等を挙げることができる。
【0019】
有機アルミニウム化合物としては、例えば、下記一般式(6)
R3 bAlZ3-b (6)
(式中、R3はアルキル基、アリール基、アルキルアリール基、アリールアルキル基、アルケニル基、アルキニル基等の炭素数1〜20の炭化水素基を示し、Zはハロゲン原子又はアルコキシ基を示す。bは、3≧b>0なる数である。)
又は下記一般式(7)
R4 4AlM (7)
(式中、R4は、アルキル基、アリール基、アルキルアリール基、アリールアルキル基、アルケニル基、アルキニル基等の炭素数1〜20の炭化水素基を示し、Mはリチウム又はハロゲン化マグネシウムである。)
の有機アルミニウム化合物を使用することができる。具体的には、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、メチルアルミニウムジクロリド、メチルアルミニウムセスキクロリド、ジメチルアルミニウムクロリド、エチルアルミニウムジクロリド、エチルアルミニウムセスキクロリド、ジエチルアルミニウムクロリド、イソブチルアルミニウムジクロリド、イソブチルアルミニウムセスキクロリド、ジイソブチルアルミニウムクロリド、メチルアルミニウムジブロミド、メチルアルミニウムセスキブロミド、ジメチルアルミニウムブロミド、エチルアルミニウムジブロミド、エチルアルミニウムセスキブロミド、ジエチルアルミニウムブロミド、イソブチルアルミニウムジブロミド、イソブチルアルミニウムセスキブロミド、ジイソブチルアルミニウムブロミド、ジエチルアルミニウムアイオダイド、メチルアルミニウムジエトキシド、メチルアルミニウムセスキエトキシド、ジメチルアルミニウムエトキシド、エチルアルミニウムジエトキシド、エチルアルミニウムセスキエトキシド、ジエチルアルミニウムエトキシド、イソブチルアルミニウムジエトキシド、イソブチルアルミニウムセスキエトキシド、ジイソブチルアルミニウムエトキシド、ジエチルアルミニウムメトキシド、テトラメチルアルミニウムリチウム、テトラエチルアルミニウムリチウム、テトライソブチルアルミニウムリチウム、テトラフェニルアルミニウムリチウム、メチルトリエチルアルミニウムリチウム、トリエチルn−ブチルアルミニウムリチウム、トリエチルi−ブチルアルミニウムリチウム、トリエチルt−ブチルアルミニウムリチウム、メチルトリi−ブチルアルミニウムリチウム、n−ブチルトリi−ブチルアルミニウムリチウム、トリi−ブチルt−ブチルアルミニウムリチウム、トリメチルフェニルアルミニウムリチウム、トリエチルフェニルアルミニウムリチウム、テトラメチルアルミニウムマグネシウムクロリド、テトラエチルアルミニウムマグネシウムクロリド、テトライソブチルアルミニウムマグネシウムクロリド、テトラフェニルアルミニウムマグネシウムクロリド、メチルトリエチルアルミニウムマグネシウムクロリド、トリエチルn−ブチルアルミニウムマグネシウムクロリド、トリエチルi−ブチルアルミニウムマグネシウムクロリド、トリエチルt−ブチルアルミニウムマグネシウムクロリド、メチルトリi−ブチルアルミニウムマグネシウムクロリド、n−ブチルトリi−ブチルアルミニウムマグネシウムクロリド、トリi−ブチルt−ブチルアルミニウムマグネシウムクロリド、トリメチルフェニルマグネシウムクロリド、トリエチルフェニルアルミニウムマグネシウムクロリド、テトラメチルアルミニウムマグネシウムブロミド、テトラエチルアルミニウムマグネシウムブロミド、テトライソブチルアルミニウムマグネシウムブロミド、テトラフェニルアルミニウムマグネシウムブロミド、メチルトリエチルアルミニウムマグネシウムブロミド、トリエチルn−ブチルアルミニウムマグネシウムブロミド、トリエチルi−ブチルアルミニウムマグネシウムブロミド、トリエチルt−ブチルアルミニウムマグネシウムブロミド、メチルトリi−ブチルアルミニウムマグネシウムブロミド、n−ブチルトリi−ブチルアルミニウムマグネシウムブロミド、トリi−ブチルt−ブチルアルミニウムマグネシウムブロミド、トリメチルフェニルマグネシウムブロミド、トリエチルフェニルアルミニウムマグネシウムブロミド、メチルトリエチルアルミニウムマグネシウムアイオダイド等を挙げることができる。これら周期律表IIB族及びIIIB族有機金属化合物からなる群より選ばれるの二種以上の混合物の使用も本発明の範囲に含まれる。
【0020】
本発明においては触媒成分として更に電子供与性化合物を使用することが好ましい。電子供与性化合物としては、窒素原子、燐原子、酸素原子又は硫黄原子を分子内に有する化合物が好ましく、これらのうちアミン化合物、ホスフィン化合物が特に好ましい。具体的には、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン、N,N,N’,N’’,N’’−ペンタメチルジエチレントリアミン、N,N’−ジメチルピペラジン、N,N−ジメチルアニリン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリ−n−オクチルアミン、トリイソオクチルアミン、トリ(2−エチルヘキシル)アミン、トリフェニルアミン、ピリジン、2,2’−ビピリジル、トリフェニルホスフィン、トリ−t−ブチルホスフィン、1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン、1,2−ビス(ジ−t−ブチルホスフィノ)エタン、1,3−ビス(ジ−t−ブチルホスフィノ)プロパン、1,2−ビス(ジシクロヘキシルホスフィノ)エタン、1,3−ビス(ジシクロヘキシルホスフィノ)プロパン、トリシクロヘキシルホスフィン、トリメチルホスフィン、トリエチルホスフィン、トリ−i−プロピルホスフィン、トリ−n−ブチルホスフィンホスフィン、メチルジフェニルホスフィン、ジメチルフェニルホスフィンを挙げることができる。これら電子供与性化合物の二種以上の混合物の使用も本発明の範囲に含まれる。
【0021】
本発明においてクロスカップリング反応は、下記一般式(8)、
ArLi (8)
で示されるアリールリチウム化合物又は下記一般式(9)
(式中、Arはアリール基及び置換アリール基を示す。)
ArMX (9)
(式中、Arはアリール基及び置換アリール基を示し、Mは、Mg、Zn、B、Al、Si又はSnを示し、Xは、ハロゲン原子又はアルコキシ基を示す。)
で示される有機金属化合物と、下記一般式(10)
RX (10)
(式中、Rは、ビニル基、アリール基又は置換アリール基を示し、Xはハロゲン原子を示す。)
で示されるハロゲン化炭化水素との間で行うことができる。
【0022】
本発明においては、上記一般式(9)で示される有機金属化合物のうち、MがMg又はZnであるアリール金属化合物と、上記一般式(10)で示されるビニルハライド、アリールハライド又は置換アリールハライドとの間でクロスカップリング反応を行うことが特に好ましい。MがMg又はZnであるアリール有機金属化合物としては、具体的には、クロロベンゼン、ブロモベンゼン、ヨードベンゼン、2−ジクロロベンゼン、2−ジブロモベンゼン、2−ジヨードベンゼン、3−ジクロロベンゼン、3−ジブロモベンゼン、3−ジヨードベンゼン、4−ジクロロベンゼン、4−ジブロモベンゼン、4−ジヨードベンゼン、2−ブロモクロロベンゼン、3−ブロモクロロベンゼン、4−ブロモクロロベンゼン、2−ヨードクロロベンゼン、3−ヨードクロロベンゼン、4−ヨードクロロベンゼン、2−ヨードブロモベンゼン、3−ヨードブロモクロロベンゼン、4−ヨードブロモベンゼン、4−フルオロクロロベンゼン、4−フルオロブロモベンゼン、4−フルオロヨードベンゼン、4−トリルクロライド、4−トリルブロマイド、4−トリルアイオダイド、2−メトキシクロロベンゼン、2−メトキシブロモベンゼン、2−メトキシヨードベンゼン、3−メトキシクロロベンゼン、3−メトキシブロモベンゼン、3−メトキシヨードベンゼン、4−メトキシクロロベンゼン、4−メトキシブロモベンゼン、4−メトキシヨードベンゼン、2−t−ブトキシクロロベンゼン、2−t−ブトキシブロモベンゼン、2−t−ブトキシヨードベンゼン、3−t−ブトキシクロロベンゼン、3−t−ブトキシブロモベンゼン、3−t−ブトキシヨードベンゼン、4−t−ブトキシクロロベンゼン、4−t−ブトキシブロモベンゼン、4−t−ブトキシヨードベンゼン、2−アセトキシクロロベンゼン、2−アセトキシブロモベンゼン、2−アセトキシヨードベンゼン、3−アセトキシクロロベンゼン、3−アセトキシブロモベンゼン、3−アセトキシヨードベンゼン、4−アセトキシクロロベンゼン、4−アセトキシブロモベンゼン、4−アセトキシヨードベンゼン、4−n−オクチル−2,3−ジフルオロフェニルクロライド、4−n−オクチル−2,3−ジフルオロフェニルブロマイド、4−n−オクチル−2,3−ジフルオロフェニルアイオダイド、4−n−ペンチルビフェニルクロライド、4−n−ペンチルビフェニルブロマイド、4−n−ペンチルビフェニルアイオダイド等を原料ハライドとする有機マグネシウム化合物及び有機亜鉛化合物を挙げることができる。これらの有機金属化合物とクロスカップリング反応させるビニルハライド、アリールハライド又は置換アリールハライドとしては、ビニルクロライド、ビニルブロマイド、ビニルアイオダイド、4−クロロベンゾニトリル、4−ブロモベンゾニトリル、4−ヨードベンゾニトリル、2−フルオロ−4−クロロベンゾニトリル、2−フルオロ−4−ブロモベンゾニトリル、2−フルオロ−4−ヨードベンゾニトリル、3,4−ジフルオロクロロベンゼン、3,4−ジフルオロブロモベンゼン、3,4−ジフルオロヨードベンゼン、3,3,4−トリフルオロクロロベンゼン、3,3,4−トリフルオロブロモベンゼン、3,3,4−トリフルオロフェニルヨードベンゼン、4−トリフルオロメトキシクロロベンゼン、4−トリフルオロメトキシブロモベンゼン、4−トリフルオロメトキシヨードベンゼン、4−エトキシクロロベンゼン、4−エトキシブロモベンゼン、4−エトキシヨードベンゼン、2,3−ジフルオロ−4−エトキシクロロベンゼン、2,3−ジフルオロ−4−エトキシブロモベンゼン、2,3−ジフルオロ−4−エトキシヨードベンゼン、4−(2−ブテノキシ)クロロベンゼン、4−(2−ブテノキシ)ブロモベンゼン、4−(2−ブテノキシ)ヨードベンゼン等を挙げることができ、更に、上記の有機マグネシウム化合物及び有機亜鉛化合物有機金属化合物の原料であるハライドを使用することもできる。
【0023】
本発明においてクロスカップリング反応の反応条件は、特に限定されるものではないが、窒素、アルゴン等の不活性ガス雰囲気下、有機反応及び錯体合成で一般的な溶媒、例えば、n−ペンタン、i−ペンタン、n−ヘキサン、n−デカン、ベンゼン、トルエン、アセトン、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、n−ブチルメチルエーテル、t−ブチルメチルエーテル、ジ−n−ブチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、N−メチルピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、シメチルスルホキシド、トリエチルアミン、ヘキサメチルリン酸トリアミド等の溶媒中で、−50〜200℃、好ましくは、−20〜150℃の温度範囲で行うことができる。
【0024】
クロスカップリング反応の際に使用する触媒量は、特に限定されるものではないが、上記一般式(8)で示されるアリールリチウム化合物又は一般式(9)で示される有機金属化合物1.0molに対し、周期律表第四周期VIII族金属化合物が0.0001〜1.0molとなるような範囲で使用することが好ましく、特に好ましくは、0.001〜0.1molの範囲である。
【0025】
また、触媒成分である周期律表IIB族及びIIIB族有機金属化合物の使用量は、周期律表第四周期VIII族金属化合物1.0molに対し、0.01mol〜100molとなるような範囲で使用することが好ましく、特に好ましくは、0.1mol〜50molの範囲である。
【0026】
また、電子供与性化合物は、周期律表第四周期VIII族金属化合物1.0molに対し、0.01mol〜100molとなるような範囲で使用することが好ましく、特に好ましくは、0.1mol〜50molの範囲である。
【0027】
触媒系の反応系への投入の条件は特に限定されないが、上記溶媒中で予め触媒成分を溶媒中で予め混合し、投入する方法、上記三成分を反応系に別々に投入する方法等の如何なる投入形態をも使用できる。
【0028】
以下に実施例を示すが、本発明は、これらの実施例によって何ら限定されるものではない。
【0029】
【実施例】
実施例1
<有機マグネシウム化合物の合成>
窒素雰囲気下、還流冷却器、滴下濾斗、攪拌装置を備えた1Lのフラスコに、マグネシウムの38.3g(1.58mol)とテトラヒドロフラン129.8g(1.80mol)を仕込み、攪拌開始後、これに滴下濾斗より、パラブロモクロロベンゼン287.2g(1.50mol)とエチルブロマイド8.20g(0.0753mol)をテトラヒドロフラン259.6g(3.60mol)で希釈した溶液を、内温が40℃以下となるように水浴にて冷却しつつ、2時間かけて滴下した。滴下終了の後、室温にて2時間攪拌し、p−クロロフェニルマグネシウムブロミドのテトラヒドロフラン溶液を得た。
【0030】
<クロスカップリング反応>
このp−クロロフェニルマグネシウムブロミドのテトラヒドロフラン溶液に、テトラヒドロフラン259.6g(3.60mol)を加え希釈し、塩化第二鉄(III)1.22g(7.52mmol)にトリエチルアルミニウムの0.94mol/Lのへキサン溶液40.0ml(37.60mmol)を混合した触媒を加えた。室温で5分間攪拌の後、塩化ビニル93.8g(1.50mol)を積算流量計により、反応系が40℃以下となるように、氷浴により冷却しつつ、2時間で吹き込んだ。吹き込み終了後、室温にて更に1時間攪拌した。
【0031】
反応終了後、反応液を塩化アンモニウム水溶液1Lに加え反応を停止させた。この反応混合液にn−ヘキサン1Lを加え、目的物であるp−クロロスチレンを抽出した。得られたヘキサン溶液を硫酸マグネシウムによる乾燥の後、生成したp−クロロスチレン量をガスクロマトグラフィーによる内部標準法により定量したところ、p−クロロスチレンは、129.5g(0.934mol)であり、これは、収率62.3%に相当した。結果を表1に示す。
【0032】
【表1】
【0033】
実施例2
実施例1のクロスカップリング反応において、p−クロロフェニルマグネシウムブロミドのテトラヒドロフラン溶液の希釈溶媒をテトラヒドロフラン259.6g(3.60mol)に代えて、トルエン252.6g(2.74mol)としたこと以外は、実施例1と同様にp−クロロスチレンの合成を行った。結果は、p−クロロスチレン収率71.6%であった。結果を表1にあわせて示す。
【0034】
比較例1
実施例1のクロスカップリング反応において、トリエチルアルミニウムの0.94mol/Lのへキサン溶液40.0ml(37.60mmol)を触媒成分として添加せず、塩化第二鉄(III)1.22g(7.52mmol)のみを触媒成分とした以外は、実施例1と同様にp−クロロスチレンの合成を行った。結果は、p−クロロスチレン収率25.8%であり、更にポリ(p−クロロスチレン)が、p−クロロスチレンユニット換算で71.3%の収率で回収された。結果を表1にあわせて示す。
【0035】
比較例2
実施例1のクロスカップリング反応において、触媒成分として、塩化第二鉄(III)1.22g(7.52mmol)にトリエチルアルミニウムの0.94mol/Lのへキサン溶液80.0ml(75.20mmol)を混合し、室温にて1時間攪拌の後、ヘキサンでトリエチルアルミウムが検出されなくなるまで洗浄した鉄触媒系を用いたこと以外は、実施例1と同様にp−クロロスチレンの合成を行った。結果は、p−クロロスチレン収率19.9%であり、更にポリ(p−クロロスチレン)が、p−クロロスチレンユニット換算で77.5%の収率で回収され、トリエチルアルミニウムの共存が必須であることが示された。結果を表1にあわせて示す。
【0036】
実施例3
実施例1のクロスカップリング反応において、触媒成分として、塩化第二鉄(III)及びトリエチルアルミウムに変えて、二塩化[1,3−ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン]鉄(II)4.05g(7.52mmol)にトリイソブチルアルミニウムの0.96mol/Lのへキサン溶液39.2ml(37.60mmol)を混合した触媒系を用いたこと以外は、実施例1と同様にp−クロロスチレンの合成を行った。結果は、p−クロロスチレン収率59.0%であった。結果を表1にあわせて示す。
【0037】
比較例3
実施例1のクロスカップリング反応において、触媒成分として、塩化第二鉄(III)及びトリエチルアルミウムに変えて、二塩化[1,3−ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン]鉄(II)4.05g(7.52mmol)のみを用いたこと以外は、実施例1と同様にp−クロロスチレンの合成を行った。結果は、p−クロロスチレン収率11.6%であった。更にポリ(p−クロロスチレン)が、p−クロロスチレンユニット換算で69.6%の収率で回収され、トリイソブチルアルミニウムの共存が必須であることが示された。結果を表1にあわせて示す。
【0038】
実施例4
実施例1のクロスカップリング反応において、触媒成分として、塩化第二鉄(III)及びトリエチルアルミウムに変えて、二塩化[1,3−ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン]コバルト(II)3.97g(7.52mmol)にトリエチルアルミニウムの0.94mol/Lのへキサン溶液40.0ml(37.60mmol)を混合した触媒系を用いたこと以外は、実施例1と同様にp−クロロスチレンの合成を行った。結果は、p−クロロスチレン収率64.2%であった。結果を表1にあわせて示す。
【0039】
比較例4
実施例1のクロスカップリング反応において、触媒成分として、塩化第二鉄(III)及びトリエチルアルミウムに変えて、二塩化[1,3−ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン]コバルト(II)3.97g(7.52mmol)のみを用いたこと以外は、実施例1と同様にp−クロロスチレンの合成を行った。結果は、p−クロロスチレン収率55.6%であった。結果を表1にあわせて示す。
【0040】
実施例5
実施例1のクロスカップリング反応において、触媒成分として、塩化第二鉄(III)及びトリエチルアルミウムに変えて、二塩化[1,3−ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン]ニッケル(II)4.08g(7.52mmol)にトリイソブチルアルミニウムの0.96mol/Lのへキサン溶液39.2ml(37.60mmol)を混合した触媒系を用いたこと以外は、実施例1と同様にp−クロロスチレンの合成を行った。結果は、p−クロロスチレン収率79.9%であった。結果を表1にあわせて示す。
【0041】
実施例6
実施例1のクロスカップリング反応において、触媒成分として、塩化第二鉄(III)及びトリエチルアルミウムに変えて、二塩化[1,3−ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン]ニッケル(II)3.97g(7.52mmol)にトリイソブチルアルミニウムの0.96mol/Lのへキサン溶液39.2ml(37.60mmol)を混合した触媒系を用いたこと以外は、実施例1と同様にp−クロロスチレンの合成を行った。結果は、p−クロロスチレン収率69.0%であった。結果を表1にあわせて示す。
【0042】
比較例5
実施例1の有機マグネシウム化合物の合成において、パラブロモクロロベンゼンに変えてパラジクロロベンゼンを用い、更にクロスカップリング反応において、触媒成分として、塩化第二鉄(III)及びトリエチルアルミウムに変えて、二塩化[1,3−ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン]ニッケル(II)4.08g(7.52mmol)のみを用いたこと以外は、実施例1と同様にp−クロロスチレンの合成を行った。結果は、p−クロロスチレン収率9.6%であり、未反応p−クロロフェニルマグネシウムクロリドに由来するクロロベンゼンを収率78.8%で回収した。
【0043】
このように、テトラヒドロフラン単一溶媒及び二塩化[1,3−ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン]ニッケル(II)触媒を用いたクロスカップリング反応は、進行し難いことが確認された。結果を表1にあわせて示す。
【0044】
【発明の効果】
本発明の第一の効果は、ビニル−アリールクロスカップリング反応及びアリールアリールクロスカップリング反応を高効率かつ高選択的に行うことができることにあり、副生成物であるホモカップリング物や重合体を低減できることにある。よって、機能性高分子用モノマー、液晶等の電子材料、医農薬中間体を製造するに極めて有利である。
【0045】
第二の効果は、触媒系が従来技術のそれよりも、安価にかつ大量に調達でき、経済的に極めて有利なことである。殊に、ハロゲン化鉄とアルキルアルミニウムとから成る触媒系は、工業的に極めて有利である。
【0046】
第三の効果は、従来困難であったテトラヒドロフラン単一溶媒中でのビニル−アリールクロスカップリング反応を円滑に進行させることが可能なことであり、機能性高分子用モノマー製造に殊に有効なことにある。
Claims (4)
- 下記一般式(8)
ArLi (8)
(式中、Arは、アリール基及び置換アリール基を示す。)
で示されるアリールリチウム化合物又は下記一般式(9)
ArMX (9)
(式中、Arは、アリール基及び置換アリール基を示し、Mは、Mg、Zn、B、Al、Si又はSnを示し、Xは、ハロゲン又はアルコキシ基を示す。)
で示される有機金属化合物と、下記一般式(10)
RX (10)
(式中、Rはビニル基、アリール基又は置換アリール基を示し、Xはハロゲンを示す。)
で示されるハロゲン化炭化水素を、ハロゲン化鉄化合物、ハロゲン化コバルト化合物又はハロゲン化ニッケル化合物から選ばれる少なくとも一種の周期律表第四周期VIII族金属化合物と、有機アルミニウム化合物又は有機亜鉛化合物から選ばれる少なくとも一種の金属ヒドリド構造をもたない周期律表IIB族及びIIIB族有機金属化合物からなる触媒の存在下反応させることを特徴とする置換スチレン誘導体又は置換ビアリール誘導体の製造方法。 - 下記一般式(8)
ArLi (8)
(式中、Arは、アリール基及び置換アリール基を示す。)
で示されるアリールリチウム化合物又は下記一般式(9)
ArMX (9)
(式中、Arは、アリール基及び置換アリール基を示し、Mは、Mg、Zn、B、Al、Si又はSnを示し、Xは、ハロゲン又はアルコキシ基を示す。)
で示される有機金属化合物と、下記一般式(10)
RX (10)
(式中、Rはビニル基、アリール基又は置換アリール基を示し、Xはハロゲンを示す。)
で示されるハロゲン化炭化水素を、ハロゲン化鉄化合物、ハロゲン化コバルト化合物又はハロゲン化ニッケル化合物から選ばれる少なくとも一種の周期律表第四周期VIII族金属化合物、有機アルミニウム化合物又は有機亜鉛化合物から選ばれる少なくとも一種の金属ヒドリド構造をもたない周期律表IIB族及びIIIB族有機金属化合物と、アミン化合物又はホスフィン化合物から選ばれる少なくとも一種の電子供与性化合物からなる触媒の存在下反応させることを特徴とする置換スチレン誘導体又は置換ビアリール誘導体の製造方法。 - 置換フェニルブロミドと塩化ビニルを反応させることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の製造方法。
- 単一のエーテル溶媒中で反応を行なうことを特徴とする請求項1乃至請求項3に記載の製造方法。
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