JP4234898B2 - 圧電磁器組成物および圧電共振子 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、圧電磁器組成物および圧電共振子に関し、例えば、共振子、超音波振動子、超音波モータ、あるいは加速度センサ、ノッキングセンサ、およびAEセンサ等の圧電センサなどに適し、特に、厚み滑り振動の基本波振動を利用したエネルギ一閉じ込め型発振子の高周波発振子用として好適に用いられる圧電磁器組成物および圧電共振子に関するものである。
【0002】
【従来技術】
従来から、圧電磁器を利用した製品としては、例えば、フィルタ、圧電共振子(以下、発振子を含む概念である)、超音波振動子、超音波モータ、圧電センサ等がある。
【0003】
ここで、発振子は、マイコンの基準信号発振用として、例えば、コルビッツ発振回路等の発振回路に組み込まれて利用される。図1はコルピッツ発振回路を基本とした回路構成においてインダクタの部分を圧電発振子に置き換えたピアス発振回路を示すものである。このピアス発振回路は、コンデンサ11、12と、抵抗13と、インバータ14および発振子15により構成されている.そして、ピアス発振回路において、発振信号を発生するには、以下の発振条件を満足する必要がある。
【0004】
即ち、インバータ14と抵抗13からなる増幅回路における増幅率をα、移相量をθ1とし、また、発振子15とコンデンサ11、12からなる帰還回路における帰還率をβ、移相量をθ2としたとき、ループゲインがα×β≧1であり、かつ、移相量がθ1+θ2=360゜×n(但しn=1,2,…)であることが必要となる。
【0005】
一般的に抵抗13およびインバータ14からなる増幅回路は、マイコンに内蔵されている。誤発振や不発振を起さない、安定した発振を得るためにはループゲインを大きくしなければならない。ループゲインを大きくするには、帰還率βのゲインを決定する、発振子のP/V、すなわち共振インピーダンスR0および反共振インピーダンスRaの差を大きくすることが必要となる。なお、P/Vは20×Log(Ra/R0)の値として定義される。
【0006】
また、移相量の条件を満足させるためには、共振周波数と反共振周波数の間およびその近傍の周波数で、移相が約−90゜から約+90゜まで移相反転し、且つ共振周波数と反共振周波数の間およびその近傍にスプリアス振動による移相歪みが発生しないことも重要となる。
【0007】
従来、圧電性が高く例えば大きなP/Vが得られるPZTやPT系材料が使用されていた。しかしながら、PZTやPT系材料には鉛が自重の約60%の割合で含有されているため酸性雨により鉛の溶出が起こり環境汚染を招く危険性が指摘されている。そこで、鉛を含有しない圧電材料への高い期待が寄せられている。鉛を含有しないビスマス層状化合物を主体とする材料系においては、PZTやPT系材料と比較して機械的品質係数(Qm)が比較的高いという特徴があり、発振子用の圧電材料としての応用が可能である。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来のビスマス層状化合物を主体とする圧電磁器組成物を、圧電発振子の圧電磁器として用いた場合、充分なP/Vが得られられないばかりか、加工性が悪くチッピング(共振子用磁器エッジの欠け)により共振周波数と反共振周波数の間にスプリアス振動に伴う移相歪みが発生し、移相の条件を満足しなくなり、不発振が生じたり、安定した発振が得られないという問題があった。
【0009】
また、従来の圧電磁器組成物を圧電発振子の圧電磁器として用いた場合、共振周波数の温度変化率が±5000ppmよりも大きく、電子機器から要求される温度特性に対する周波数の許容公差±5000ppm以内の精度には対応できないという問題があった。
【0010】
さらに、磁器密度の焼成温度依存性が急峻であるとともに磁器の焼成温度範囲が狭く、焼成ばらつきによる特性変動が大きくなるという問題があった。
【0011】
従って、本発明は、共振周波数と反共振周波数の間およびその近傍の周波数で移相歪みが発生せず、厚み滑り振動や厚み縦振動の基本波振動のP/Vを大きくできるとともに、−20℃〜+80℃の温度範囲で発振周波数の温度安定性に優れ、且つ焼成温度の範囲を広くして焼成ばらつきによる特性変動を抑制できる圧電磁器組成物および圧電共振子を提供することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明の圧電磁器組成物は、金属元素として少なくともSr、BiおよびTiを含有するビスマス層状化合物であって、モル比による組成式を
Bi4Ti3O12・x(Sr1-aAa)TiO3
と表したとき、前記x、aが、0.5≦x≦0.8、0≦a≦0.8、AはBa、(Bi0.5Na0.5)、(Bi0.5Li0.5)および(Bi0.5K0.5)のうち少なくとも1種を満足する主成分と、該主成分100重量部に対してMnをMnO2換算で0.05〜1重量部含有することを特徴とする。
【0013】
このような圧電磁器組成物によれば、特に厚み滑り基本波振動やあるいは厚み縦の基本波および3次オーバートーン振動でのP/V値を大きくすることができるとともに、a>0とすることにより、−20℃〜+80℃の温度範囲で発振周波数の温度安定性に優れ、且つ焼成温度の範囲を広くして焼成ばらつきによる特性変動を抑制できる。
【0014】
本発明では、AがBaの場合、即ち、主成分が、Bi4Ti3O12・x(Sr1-aBaa)TiO3と表わされるものが望ましい。この場合には、特に、厚み滑り基本波振動の基本波および3次オーバートーン振動でのP/V値を大きくできるとともに、−20℃〜+80℃の温度範囲における発振周波数の温度安定性を向上し、焼成温度の範囲を広くして焼成ばらつきによる特性変動を抑制できる。
【0015】
本発明の圧電共振子は、圧電磁器の両主面に電極を形成してなるとともに、前記圧電磁器が上記圧電磁器組成物からなるものである。
【0016】
このような圧電共振子によれば、例えば、厚み滑り基本波振動を適用した発振子ではP/Vが大きくなることから発振余裕度が高まり、且つ共振周波数と反共振周波数の間およびその近傍の周波数で移相歪みが発生しないことから安定した発振が得られるとともに、発振周波数の温度安定性に優れた高精度な発振が得られ、さらに、焼成温度の範囲が広くなることから焼成ばらつきによる特性変動を著しく抑制した2〜20MHzの広い周波数に適応できる発振子を得ることができる。
【0017】
【発明の実施の形態】
本発明の圧電磁器組成物は、金属元素として少なくともSr、BiおよびTiを含有するビスマス層状化合物であって、モル比による組成式を
Bi4Ti3O12・x(Sr1-aAa)TiO3
と表したとき、前記xが、0.5≦x≦0.8、0≦a≦0.8、AはBa、(Bi0.5Na0.5)、(Bi0.5Li0.5)および(Bi0.5K0.5)のうち少なくとも1種を満足する主成分と、該主成分100重量部に対してMnをMnO2換算で0.05〜1重量部含有するものである。
【0018】
ここで、係数であるxを上記の範囲に設定した理由ついて説明する。上記組成式において、xを0.5≦x≦0.8の範囲に設定した理由は、xが0.5より少ないとP/Vが55dBより小さくなるからである。一方xが0.8より多いとP/Vが55dBより小さくなるとともに、移相歪みの発生頻度が大きくなり安定した発振子を得ることができないからである。
【0019】
また、0.5≦x≦0.8の範囲においては、焼成密度の焼成温度依存性が小さくなることから焼成温度の範囲を広く設定でき、焼成ばらつきによるP/Vの特性変動や移相歪みの発生を著しく抑制できることから、歩留まりが高く安定した発振子を得ることができる。xは、P/Vをより大きくするとともに、移相歪みの発生を著しく抑制するという理由から、0.6≦x≦0.75であることが望ましい。
【0020】
また、本発明ではa>0を満足することが望ましい。Srの一部を、Ba、(Bi0.5Na0.5)、(Bi0.5Li0.5)および(Bi0.5K0.5)のうち少なくとも1種で置換することにより、低温焼成が可能で、且つ焼成温度の範囲が広くなることから、焼成ばらつきによるP/Vなどの特性変動を著しく低下させることができるからである。特に、焼成温度範囲を広くし焼成ばらつきによるP/Vの特性変動を著しく小さくするという理由から、0.2≦a≦0.75とすることが望ましい。
【0021】
また、Srの一部は、P/Vを55dBより大きくし、特に発振周波数の温度変化率を±3000ppm以内に減少するとともに、焼成温度の範囲を広くでき、焼成ばらつきによる特性変動を低下させるという点から、Srの一部をBaで置換することが望ましく、特にP/Vをより大きくするとともに、優れた温度特性を有するという理由から、0.35≦a≦0.8とすることが望ましい。
【0022】
即ち、主成分が、モル比による組成式をBi4Ti3O12・x(Sr1-aBaa)TiO3と表したとき、0.5≦x≦0.8、0<a≦0.8、特に0.35≦a≦0.8を満足することが望ましい。特に、AがBaと(Bi0.5Na0.5)の組合せであることが望ましい。
【0023】
また、主成分に対してMnO2を含有せしめることにより、P/Vの向上に大きく向上できるが、MnO2含有量を主成分l00重量部に対してl重量部より多いと体積固有抵抗値が下がり、分極時に電流が流れ充分な分極ができず厚み滑り振動のP/Vが低くなるからである。一方、0.05重量部よりも少なくなると、P/Vが低下し、移相歪みが出やすくなるからである。Mnは、焼結性を高め、P/Vを大きくするという点から、主成分100重量部に対して、MnO2換算で0.3〜0.7重量部含有することが望ましい。
【0024】
本発明の圧電磁器組成物においては、組成式としてBi4Ti3O12・x(Sr1-aAa)TiO3で表されるが、主結晶相としてはビスマス層状化合物からなるものである。即ち、本発明の圧電磁器組成物は、(Sr1-aAa)xBi4Ti3+xO12+3xと表すことができ、(Bi2O2)2+(αm-1βmO3m+1)2-で書き表されるビスマス層状化合物の一般式において、αサイトとβサイト及び酸素サイトに欠陥をともないながらがらm=4の結晶構造を有し、Mnが一部固溶したビスマス層状化合物になっていると考えられる。Mnは主結晶相中に固溶し、一部Mn化合物の結晶として粒界に析出する場合がある。また、その他の結晶相として、パイロクロア相、ペロブスカイト相、構造の異なるBi層状化合物が存在することもあるが、微量であれば特性上問題ない。
【0025】
本発明の圧電磁器組成物は、粉砕時のZrO2ボールからZr等が混入する場合もあるが、微量であれば特性上問題ない。
【0026】
本発明の組成を有する圧電磁器は、例えば、原料として、SrCO3、BaCO3、Bi2O3、MnO2、TiO2、Na2CO3、K2CO3、Li2CO3からなる各種酸化物或いはその塩を用いることができる。原料はこれに限定されず、焼成により酸化物を生成する炭酸塩、硝酸塩等の金属塩を用いても良い。
【0027】
これらの原料を上記した組成となるように秤量し、混合後の平均粒度分布(D50)が0.3〜1μmの範囲になるように粉砕し、この混合物を850〜1050℃で仮焼し、仮焼後の平均粒度分布(D50)が0.3〜1μmの範囲になるように粉砕し、再度所定の有機バインダを加え湿式混合し造粒する。
【0028】
このようにして得られた粉体を、公知のプレス成形等により所定形状に成形し、大気中等の酸化性雰囲気において1000〜1300℃の温度範囲で2〜5時間焼成し、本発明の組成を有する圧電磁器が得られる。
【0029】
本発明の組成を有する圧電磁器は、図1に示すようなピアス発振回路の発振子の圧電磁器、特に厚み滑り振動の基本波振動を利用する高周波発振子用として最適であるが、それ以外の圧電共振子、超音波振動子、超音波モータおよび加速度センサ、ノッキングセンサ、AEセンサ等の圧電センサなどにも用いることができる。
【0030】
図2に本発明の圧電共振子(圧電発振子)を示す。この圧電共振子は、上記した組成の圧電磁器1の両面に電極2、3を形成して構成されている。このような圧電共振子では、厚み滑り振動における基本波のP/Vを高くでき、発振余裕度が高まり、共振周波数と反共振周波数の間及びその近傍の周波数で移相歪みが発生しないことから安定した発振が得られ、さらに発振周波数の温度安定性に優れた高精度な発振が得られ、特に2〜20MHzの周波数に適応できる圧電発振子を得ることができる。
【0031】
【実施例】
まず、出発原料として純度99.9%のSrCO3粉末、BaCO3粉末、Bi2O3粉末、MnO2粉末、TiO2粉末、Na2CO3粉末、K2CO3粉末、Li2CO3粉末を、モル比による組成式を主成分Bi4Ti3O12・x(Sr1-aAa)TiO3と表したとき、A、x、aが表1に示すような元素、値の主成分と、この主成分100重量部に対してMnO2粉末を表1に示すような重量部となるように秤量混合した。
【0032】
秤量した原料粉末を、純度99.9%のジルコニアボール、イソプロピルアルコール(IPA)と共に500mlポリポットに投入し、16時間回転ミルにて混合した。
【0033】
混合後のスラリ−を大気中にて乾燥し、#40メッシュを通し、その後、大気中950℃、3時間保持して仮焼し、この合成粉末を純度99.9%のZrO2ボールとイソプロピルアルコール(IPA)と共に500mlポリポットに投入し、20時間粉砕して評価粉末を得た。
【0034】
この粉末に適量の有機バインダーを添加して造粒し、金型プレスにて150MPaで長さ25mm、幅38mm、厚みlmmの板状に成形し、大気中において1200℃で3時間本焼成し圧電磁器を得た。
【0035】
その後、長さ6mm、幅30mmに加工後、長さ方向に分極するための端面電極を形成し分極処理を施した。その後、分極用電極を除去し、厚み約0.17mmとなるようにラップ機により加工した。その後、長さ6mmと幅30mmからなる面の両面にCr−Agを蒸着し、電極と磁器との密着強度を高めるために250℃で12時間のアニール処理を施した。
【0036】
その後、図2に示す電極構造となるように、無電極に相当する部位の電極をエッチングで除去し、長さ4.45mm(L)、幅0.9mm(W)、厚み0.17mm(H)形状にダイシングソーやワイヤーソーを用いて加工し、8MHzの発振に相当する厚み滑り振動の基本波振動用発振子を得た。図2において、Pは分極方向を示す。
【0037】
発振子の特性は、インピーダンスアナライザによリインピーダンス波形を測定し、厚み滑り振動の基本波振動でのP/VをP/V=20×Log(Ra/R0)の式により算出した(但し、Ra:反共振インピーダンス、R0:共振インピーダンス)。
【0038】
さらにインピーダンス波形より、共振周波数と反共振周波数の間で移相が約−90゜から約+90゜に移相反転した後の約+90゜の移相からなる周波数帯域において、10゜を超える移相歪みが発生するか否かを調査した。移相歪みの評価は、移相歪み=|(+)側の最大移相値−最大値から局所的に変化した移相値|により求め、共振子100個中5個以上において10゜を超える移相歪みが発生した場合においては×、それ以下の場合は○とした。
【0039】
さらに密度とP/Vの焼成温度依存性を求め、焼成温度が15℃変化した場合においてもP/Vの変化が10%以下である場合を○、P/Vの差が10%より大きい場合を×として、表1に焼成分布特性として表記した。
【0040】
さらに、発振周波数の温度変化率は、P/Vが最大となる焼成温度の発振子を用いて、25℃の発振周波数を基準にして、−20℃もしくは+80℃での発振周波数の変化を以下の式により算出した。
【0041】
Fosc変化率(ppm)={(Fosc(drift)一Fosc(25))/Fosc(25)}×100、但し、Fosc(dfift)は、−20℃もしくは+80℃での発振周波数であり、Fosc(25)は25℃での発振周波数である。これらの結果を表1に示す。
【0042】
【表1】
【0043】
表1から明らかなように、本発明の範囲内の試料は、厚み滑り振動における基本波振動のP/V値を55dB以上、特には60dB以上と大きくでき、且つ10゜を超える移相歪みが発生しないことから安定した発振を得ることができるとともに、焼成温度範囲が広く、焼成温度変化による特性バラツキが小さく、さらに、発振周波数の温度変化率が±5000ppm以内となり小さいことが判る。また、Srの一部をBa等で置換した場合には、±4500ppm以内、特には±4000ppm以内とできることが判る。
【0044】
一方、比較例である、試料No.20のMnを含有しない場合には、焼結体の密度が低く、P/V値が43dBと小さく、且つ10゜を上回る移相歪みが発生し、安定した発振が得られられないことが判る。
【0045】
また、係数xの値が1の試料No.1の場合、大きなP/Vは得られるものの試作した発振子100個中24個において10゜を上回る移相歪みが発生し、さらに、P/Vの焼成温度依存性が大きいことから、焼成ばらつきを招きやすく安定した発振が得られられないことがわかる。一方xの値が0.8より大きい試料No.1、2、9の場合、移相歪みが発生しやすく、さらにP/Vの焼成温度依存性が大きいことから、歩留まりが悪く安定した特性を示す発振子が得られられないことがわかる。
【0046】
また、Aの種類をBaにした試料No.12の場合、P/Vを60dBと実用レベルまで高めながら、−20〜80℃の発振周波数の温度変化率を±2000ppm以内と優れた温度安定性を有していることがわかる。
【0047】
さらに、Srの一部をBa0.7(Bi0.5Na0.5)0.3で置換した試料No.10の場合、aの値が0.75でP/Vが74dBと大きな値を有しながら、−20〜80℃の発振周波数の温度変化率が±3000ppm以内と優れた温度特性を有し発振子として最も好ましい特性となる。
【0048】
図3に、本発明の試料No.10のインピーダンスと移相特性を、図4に試料No.10の発振周波数の温度変化率を示した。図5に移相歪みが発生した比較例の試料No.1のインピーダンスと移相特性を示した。
【0049】
図4から本発明の試料No.10では大きな移相歪みが発生せず、また、図3から−20〜80℃の発振周波数の温度変化率が±3000ppm以内と優れた温度特性を有することが判る。一方、図5から、No.1では、共振周波数と反共振周波数の間で移相が約−90゜から約+90゜に移相反転した後の約+90゜の移相からなる周波数帯域において、符号Aで示す、移相が10゜を超える大きな移相歪みが発生していることが判る。
【0050】
さらに、図6に試料No.10と試料No.1の密度の焼成温度依存性を示し、図7に試料No.10と試料No.1のP/Vの焼成温度依存性を示した。これらのグラフから、本発明の試料では、広い焼成温度範囲で磁器密度が高くかつ一定であることから、焼成温度が多少ばらついたとしても磁器密度が殆ど変化せず、P/Vも殆ど変化しないことが判る。
【0051】
このように、本発明の組成を有する圧電磁器においては、特に、厚み滑り振動の基本波振動のP/Vを大きくできるとともに、共振周波数と反共振周波数の間において、10゜を超える移相歪みが発生せず、さらに、−20℃〜80℃での発振周波数の温度変化率を小さくすることができ、さらに焼成温度依存性を小さくしたことから発振子の安定性を向上できる。
【0052】
また、図8に試料No.4のX線回折図を示す。図8からビスマス層状化合物を主結晶相としていることが分かる。試料No.4は組成式としてはBi4Ti3O12・0.75(Sr0.65Ba0.35)TiO3のビスマス層状化合物とペロブスカイト化合物の組み合わせとして書き表している。一方ビスマス層状化合物は一般式として(Bi2O2)2+(αm-1βmO3m+1)2-で書き表されるが、Bi4Ti3O12は一般式のαの元素はBi3+で、βの元素はTi4+からなるm=3のビスマス層状化合物であり電気的な中性条件は保たれている。
【0053】
図8のX線回折図からビスマス層状化合物が主結晶相として認められる事から、ペロブスカイト化合物はm=3からなるビスマス層状化合物に取りこまれて、m=4の結晶を有するようになったものと考えることができる。即ち、試料4のαはBi、Sr、Baからなる元素からなり、またβはTiからなる元素で構成され、αサイトとβサイト及び酸素サイトに欠陥をともないながらがらm=4の結晶構造を有し、具体的には(Sr0.65Ba0.35)0.75Bi4Ti3。75O14。25にMnが一部固溶したビスマス層状化合物になっているものと考えている。
【0054】
【発明の効果】
以上詳述したように、本発明の圧電磁器組成物では、厚み滑り振動における基本波振動のP/V値を大きくしながら、共振周波数と反共振周波数の間で10゜を超える移相歪みの発生を著しく少なくすることができ、さらに共振周波数の温度変化率が小さく、さらに焼成温度範囲が広くなることから焼成ばらつきによるP/Vの特性変動を抑制でき、高い歩留まりが実現できることになる。
【図面の簡単な説明】
【図1】コルピッツ型発振回路を原型としたピアス発振回路を示した概略図である。
【図2】8MHz用発振子の概略図である。
【図3】本発明の試料No.10のインピーダンスと移相特性を示すグラフである。
【図4】本発明の試料No.10の発振周波数の温度変化率を示すグラフである。
【図5】比較例の試料No.1のインピーダンスと移相歪みを表すグラフである。
【図6】試料No.10と試料No.1の密度の焼成温度依存性を示すグラフである。
【図7】試料No.10と試料No.1のP/Vの焼成温度依存性を示すグラフである。
【図8】試料No.4のX線回折図を示す。
【符号の説明】
l・・・圧電磁器
2、3・・・電極
Claims (2)
- 金属元素として少なくともSr、BiおよびTiを含有し、モル比による組成式を
Bi4Ti3O12・x(Sr1-aAa)TiO3
と表したとき、前記x、aが
0.5≦x≦0.8
0≦a≦0.8
Aは、Ba、(Bi0.5Na0.5)、(Bi0.5Li0.5)および
(Bi0.5K0.5)のうち少なくとも1種
を満足する主成分と、該主成分100重量部に対してMnをMnO2換算で0.05〜1重量部含有することを特徴とする圧電磁器組成物。 - 圧電磁器の両主面に電極を形成してなるとともに、前記圧電磁器が、請求項1記載の圧電磁器組成物からなることを特徴とする圧電共振子。
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