JP4231202B2 - 圧電磁器組成物および圧電共振子 - Google Patents

圧電磁器組成物および圧電共振子 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、圧電磁器組成物および圧電共振子に関し、例えば、共振子、超音波振動子、超音波モータ、あるいは加速度センサ、ノッキングセンサ、およびAEセンサ等の圧電センサなどに適し、特に、厚み滑り振動の基本波振動を利用したエネルギ一閉じ込め型発振子の高周波発振子用として好適に用いられる圧電磁器組成物および圧電共振子に関するものである。
【0002】
【従来技術】
従来から、圧電磁器を利用した製品としては、例えば、フィルタ、圧電共振子(以下、発振子を含む概念である)、超音波振動子、超音波モータ、圧電センサ等がある。
【0003】
ここで、発振子は、マイコンの基準信号発振用として、例えば、コルピッツ発振回路等の発振回路に組み込まれて利用される。図1はコルピッツ発振回路を基本とした回路構成においてインダクタの部分を圧電発振子に置き換えたピアス発振回路を示すものである。このピアス発振回路は、コンデンサ11、12と、抵抗13と、インバータ14及び発振子15により構成されている.そして、ピアス発振回路において、発振信号を発生するには、以下の発振条件を満足する必要がある。
【0004】
即ち、インバータ14と抵抗13からなる増幅回路における増幅率をα、移相量をθ1とし、また、発振子15とコンデンサ11、12からなる帰還回路における帰還率をβ、移相量をθ2としたとき、ループゲインがα×β≧1であり、かつ、移相量がθ1+θ2=360゜×n(但しn=1,2,…)であることが必要となる。
【0005】
一般的に抵抗13及びインバータ14からなる増幅回路は、マイコンに内蔵されている。誤発振や不発振を起さない、安定した発振を得るためにはループゲインを大きくしなければならない。ループゲインを大きくするには、帰還率βのゲインを決定する、発振子のP/V、すなわち共振インピーダンスR0及び反共振インピーダンスRaの差を大きくする事が必要となる。なお、P/Vは20×Log(Ra/R0)の値として定義される。
【0006】
また、位相量の条件を満足させるためには、共振周波数と反共振周波数の間及びその近傍の周波数で、位相が約−90゜から約+90゜まで移相反転し、且つ共振周波数と反共振周波数の間及びその近傍にスプリアス振動による移相歪みが発生しない事も重要となる。
【0007】
従来、圧電性が高く例えば高いP/Vが得られるPZT、PT系材料が使用されていた。しかしながら、PZT、PT系材料には鉛が自重の約60%の割合で含有されているため酸性雨により鉛の溶出が起こり環境汚染を招く危険性が指摘されている。そこで、鉛を含有しない圧電材料への高い期待が寄せられている。鉛を含有しないビスマス層状化合物を主体とする材料系においては、PZT、PT系材料と比較して機械的品質係数(Qm)が比較的高くさらに比誘電率が小さいという特徴があり、発振子用の非鉛圧電材料としての応用が可能である。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来のビスマス層状化合物を主体とする圧電磁器組成物を、圧電発振子の圧電磁器として用いた場合、充分なP/Vが得られられないばかりか、加工性が悪くチッピング(共振子用磁器エッジの欠け)により共振周波数と反共振周波数の間にスプリアス振動に伴う移相歪みが発生し、移相の条件を満足しなくなり、不発振が生じたり、安定した発振が得られないという問題があった。
【0009】
また、従来の圧電磁器組成物を圧電発振子の圧電磁器として用いた場合、共振周波数の温度変化率が±5000ppmよりも大きく、電子機器から要求される温度特性に対する周波数の許容公差±5000ppm以内の精度には対応できないという問題があった。
【0010】
従って、本発明は、共振周波数と反共振周波数の間及びその近傍の周波数で移相歪みが発生せず、厚み滑り振動や厚み縦振動の基本波振動のP/Vを大きくできる非鉛系の圧電磁器組成物および圧電共振子を提供することを目的とし、さらには、−20℃〜+80℃の温度範囲で発振周波数の温度安定性に優れた圧電磁器組成物および圧電共振子を提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明の圧電磁器組成物は、モル比による組成式を
(A1-xBix)Bi4Ti415
と表したとき、0<x≦0.3、AはSrおよび/またはBa
を満足する主成分と、該主成分100重量部に対してMnをMnO2換算で0.05〜1重量部含有するものである。
【0012】
このような圧電磁器組成物からなる圧電磁器を用いて圧電共振子を作製した場合、共振周波数と反共振周波数の間及びその近傍の周波数で移相歪みが発生せず、特に厚み滑り基本波振動や厚み縦の基本波、及び3次オーバートーン振動でのP/V値を大きくすることができる。
【0013】
さらに、AがSrである場合、即ち、主成分が、モル比による組成式を(Sr1-xBix)Bi4Ti415と表したとき、0<x≦0.3を満足することが望ましい。このような主成分を用いることにより、厚み滑り基本波振動や厚み縦の基本波、及び3次オーバートーン振動でのP/V値をさらに大きくできる。
【0014】
また、AがSrおよびBaであり、Srの一部がBaで0.8モル以下置換されるとともに、0.05≦x≦0.3を満足する場合、即ち、主成分が、モル比による組成式を{(Sr1-aBaa1-xBix}Bi4Ti415と表したとき、0.05≦x≦0.3、0<a≦0.8を満足することが望ましい。これにより、特に厚み滑り振動における基本波振動のP/Vを大きくしながら、発振周波数の温度安定性を向上することができる。例えば、厚み滑り基本波振動の−20〜80℃における共振周波数の温度変化率が±5000ppm以内の範囲となり、かつ共振インピーダンスR0と反共振インピーダンスRaとした時、20×Log(Ra/R0)で表されるP/Vを55dB以上とすることができる。
【0015】
さらに、本発明の圧電共振子では、圧電磁器の両主面に電極を形成してなるとともに、前記圧電磁器が、上記圧電磁器組成物からなるものである。このような圧電共振子、例えば、厚み滑り基本波振動を適用した発振子では、上記したようにP/Vが大きくなることから発振余裕度が高まり、且つ共振周波数と反共振周波数の間及びその近傍の周波数で移相歪みが発生しないことから安定した発振が得られ、さらに発振周波数の温度安定性に優れた高精度な発振が得られ、特に2〜20MHzの周波数に適応できる圧電発振子を得ることができる。
【0016】
【発明の実施の形態】
本発明の圧電磁器組成物は、モル比による組成式を
(A1-xBix)Bi4Ti415
と表したとき、0<x≦0.3、AはSrおよび/またはBa
を満足する主成分と、該主成分100重量部に対してMnをMnO2換算で0.05〜1重量部含有するものである。
【0017】
ここで、Aの種類及びxを上記の範囲に設定した理由ついて説明する。xを0<x≦0.3の範囲に設定した理由は、xが0.3より多いと体積固有抵抗値が下がり、圧電共振子を作製した場合、分極時に電流が流れ充分な分極ができず厚み滑り振動のP/Vが低くなるからである。
【0018】
一方、x=0の時、加工時にチッピングが起こり易く、圧電共振子を作製すると、共振周波数と反共振周波数の間で位相が約−90゜から約+90゜に位相反転した後の周波数帯域において、10゜を超える移相歪みが発生し、発振条件を満足しなくなり発振停止がおこるためである。
【0019】
AにおけるBiの置換量を示すxは厚み滑り振動のP/Vを大きくし、移相歪みの発生を抑制するという点から、0.05≦x≦0.2、特には0.1≦x≦0.2であることが望ましい。
【0020】
また、Aの種類をSr、Baのうち少なくとも1種としたのは、圧電共振子を作製した場合にP/Vを55dBよりも大きくできるからである。特に、Aとしては、BaとSrの組合せが望ましい。
【0021】
さらに、本発明では、上記主成分100重量部に対して、MnをMnO2換算で0.05〜1重量部含有することが望ましい。Mnを含有せしめることにより、P/Vの向上に大きく向上できるが、MnO2含有量が主成分l00重量部に対してl重量部よりも多くなると体積固有抵抗値が下がり、分極時に電流が流れ充分な分極ができず厚み滑り振動のP/Vが低くなるからである。一方、0.05重量部よりも少なくなると、P/Vが低下し、移相歪みが出やすくなるからである。
【0022】
Mnは、焼結性を高め、P/Vを大きくすると言う理由から、主成分100重量部に対して、MnO2換算で0.3〜0.7重量部含有することが望ましい。
【0023】
また、本発明の圧電磁器組成物では、主成分が、モル比による組成式を(Sr1-xBix)Bi4Ti415と表したとき、0<x≦0.3を満足することが望ましい。AがSrで、0<x≦0.3を満足する場合、極めて大きな厚み滑り振動のP/Vが得られるからである。AがSrの場合、SrのBiによる置換量を示すxは、厚み滑り振動のP/Vを大きくするという点から、0.05≦x≦0.15であることが望ましい。
【0024】
さらに、主成分が、モル比による組成式を{(Sr1-aBaa1-xBix}Bi4Ti415と表したとき、0.05≦x≦0.3、0<a≦0.8を満足することが望ましい。aは0.1≦a≦0.8であることが望ましい。AがSrおよびBaで、0.05≦x≦0.3、0<a≦0.8の場合、P/Vが60dBを超える大きな値を得ながら、特に発振周波数の温度変化率を±3000ppm以内に減少できるからである。
【0025】
一方、xが0.05よりも小さい場合には、P/Vが小さくなる傾向にあり、0.3よりも大きい場合には、移相歪みができやすく損失が大きくなることからP/Vが小さくなるからであり、aが0.8よりも大きい場合にはP/Vが小さくなるとともに移相歪みが出やすくなる傾向があるからである。
【0026】
AがSrおよびBaの場合、P/Vを大きくし、発振周波数の温度変化率を小さくするという点から、0.05≦x≦0.12、0.3≦a≦0.7であることが望ましい。
【0027】
本発明の圧電磁器組成物は、粉砕時のZrO2ボールからZr等が混入する場合もあるが、微量であれば特性上問題ない。
【0028】
本発明の圧電磁器組成物からなる圧電磁器は、実質的に、一般式が(A1-xBix)Bi4Ti415で表わされるBi層状化合物からなる結晶相で構成されており、Mnは前記Bi層状化合物に殆ど固溶するが、ごくわずかMn化合物の結晶として粒界に析出する場合がある。Biについても、Bi層状化合物に殆ど固溶するが、ごくわずか粒界に析出する場合がある。
【0029】
また、本発明の圧電磁器組成物は、一般式が(A1-xBix)Bi4Ti415で表わされ、Mnが固溶したBi層状化合物からなる結晶相で構成されることが望ましいが、その他に、パイロクロア相、ペロブスカイト相、構造の異なるBi層状化合物がごくわずか存在することもあるが、微量であれば特性上問題ない。
【0030】
本発明の圧電磁器組成物では、例えば、原料として、SrCO3、BaCO3、Bi23、MnO2、TiO2の各種酸化物、或いはその塩を用いることができる。原料はこれに限定されず、焼成により酸化物を生成する炭酸塩、硝酸塩等の金属塩を用いても良い。
【0031】
これらの原料を上記した組成となるように秤量し、混合後の平均粒度分布(D50)が0.5〜1μmの範囲になるように粉砕し、この混合物を850〜1050℃で仮焼し、所定の有機バインダを加え湿式混合し造粒する。このようにして得られた粉体を、公知のプレス成形等により所定形状に成形し、大気中等の酸化性雰囲気において1000〜1300℃の温度範囲で2〜5時間焼成し、本発明の組成の圧電磁器が得られる。
【0032】
本発明の組成からなる圧電磁器は、図1に示すようなピアス発振回路の発振子15の圧電磁器、特に厚み滑り振動の基本波振動を利用する高周波用として最適であるが、それ以外の圧電共振子、超音波振動子、超音波モータ及び加速度センサ、ノッキングセンサ、AEセンサ等の圧電センサなどに用いることができる。
【0033】
図2に本発明の圧電共振子(圧電発振子)を示す。この圧電共振子は、上記した組成の圧電磁器1の両面に電極2、3を形成して構成されている。このような圧電共振子では、厚み滑り振動における基本波のP/Vを高くでき、発振余裕度が高まり、共振周波数と反共振周波数の間及びその近傍の周波数で移相歪みが発生しないことから安定した発振が得られ、さらに発振周波数の温度安定性に優れた高精度な発振が得られ、特に2〜20MHzの周波数に適応できる圧電発振子を得ることができる。
【0034】
【実施例】
まず、出発原料として純度99.9%のSrCO3粉末、BaCO3粉末、Bi23粉末、TiO2粉末を、モル比による組成式(A1-xBix)Bi4Ti415、または{(Sr1-aBaa1-xBix}Bi4Ti415と表したとき、A、x、aが表1に示すような元素、値の主成分と、この主成分100重量部に対してMnO2粉末を表1に示すような重量部となるように秤量混合し、純度99.9%のジルコニアボール、イソプロピルアルコール(IPA)と共に500mlポリポットに投入し、16時間回転ミルにて混合した。
【0035】
混合後のスラリ−を大気中にて乾燥し、#40メッシュを通し、その後、大気中950℃、3時間保持して仮焼し、この合成粉末を純度99.9%のZrO2ボールとイソプロピルアルコール(IPA)と共に500mlポリポットに投入し、20時間粉砕して評価粉末を得た。
【0036】
この粉末に適量の有機バインダーを添加して造粒し、金型プレスにて150MPaで長さ25mm、幅38mm、厚みlmmの板状に成形し、大気中において1160℃の温度で3時間本焼成し圧電磁器を得た。
【0037】
この圧電磁器について、x線回折測定を行って結晶相を確認したところ、本発明の組成の圧電磁器は、一般式が(A1-xBix)Bi4Ti415で表わされた結晶相からなり、Mnが固溶した結晶相から構成されていた。
【0038】
その後、長さ6mm、幅30mm、厚み0.17mmに加工し、長さ方向に分極するための端面電極を形成し分極処理を施した。その後、分極用電極を除去し、長さ6mmと幅30mmからなる面の両面にCr−Agを蒸着し、電極と磁器との密着強度を高めるために250℃で12時間のアニール処理を施した。
【0039】
その後、図2に示す電極構造となるように、無電極に相当する部位の電極をエッチングで除去し、長さ4.45mm(L)、幅0.9mm(W)、厚み0.17mm(H)形状にダイシングソーやワイヤーソーを用いて加工し、8MHz発振に相当する厚み滑り振動の基本波振動用発振子を得た。図2において、Pは分極方向である。
【0040】
発振子の特性は、インピーダンスアナライザによリインピーダンス波形を測定し、厚み滑り振動の基本波振動でのP/VをP/V=20×Log(Ra/R0)の式により算出した(Ra:反共振インピーダンス、R0:共振インピーダンス)。
【0041】
さらにインピーダンス波形より、共振周波数と反共振周波数の間で位相が約−90゜から約+90゜に位相反転した後の約+90゜の位相からなる周波数帯域において、10゜を超える移相歪みが発生するか否かを調査した。移相歪みの評価は、移相歪み=|(+)側の最大位相値−最大値から局所的に変化した位相値|により求め、共振子100個中5個以上において10゜を超える移相歪みが発生した場合においては×、それ以下の場合は○とした。
【0042】
さらに、発振周波数の温度変化率は、25℃の発振周波数を基準にして、−20℃もしくは+80℃での発振周波数の変化を以下の式により算出した。
【0043】
Fosc変化率(ppm)={(Fosc(drift)一Fosc(25))/Fosc(25)}×100、但し、Fosc(dfift)は、−20℃もしくは+80℃での発振周波数であり、Fosc(25)は25℃での発振周波数である。これらの結果を表1に示す。
【0044】
【表1】
Figure 0004231202
【0045】
表1から明らかなように、本発明の範囲内の試料は、厚み滑り振動における基本波振動のP/V値を56dB以上、特には60dB以上と大きくでき、且つ移相歪みの発生が起こりにくいことから安定した発振を得ることができる。
【0046】
さらに、発振周波数の温度変化率が±5000ppm以内となり小さいことが判る。特に、AとしてSrおよびBaを用いた場合には、高いP/V値を維持した状態で、特に60dB以上を維持し、発振周波数の温度変化率が±3500ppm以内、特には±2500ppm以内と小さくできることが判る。
【0047】
図3に試料No.4のインピーダンス特性を、図4に発振周波数の温度変化率を、図5に試料No.4のx線回折測定結果を示す。本発明の組成の圧電磁器は、図5に示すように、一般式が(A1-xBix)Bi4Ti415で表わされた結晶相からなり、Mnのピークが存在しないことにより、Mnが固溶した上記結晶相から構成されていることが判る。
【0048】
本発明の圧電磁器組成物では、+2価で構成されるA元素に対して、+3価のBiを置換することで、正方晶性が高くなることがわかった。すなわち、図6は比較例である試料No.9のX線回折図であり、2θの角度で約39゜近傍に存在する正方晶を示す(0,0,18)と(1,1,10)面のピークがほぼ一致しており斜方晶性が極めて高いことがわかる。
【0049】
また、比較例である試料No.9に対しSrの一部をBaで置換した試料No.21のX線回折図である図7をみると、(0,0,18)と(1,1,10)の面間隔はわずかに広がる程度であり斜方晶性は高い。
【0050】
さらに、比較例として示した試料No.9の組成に対して、Aの構成元素の一部をBiで置換した、本発明の試料No.4のX線回折図である図5から明らかに(0,0,18)と(1,1,10)の面間隔が広がっており、正方晶性が高まっていることがわかる。斜方晶に比較して対称性の高い正方晶を有することになることで分極により自発分極の方向がそろいやすくなることから、例えば実施例である試料No.4はP/Vが大きくなったと考えられる。さらに、厚み滑り基本波振動を使用する場合、結晶系の違いが発振周波数の温度変化率に影響を及ぼす事も本結果から推察することができる。
【0051】
また、比較例である、試料No.14のMnを含有しない場合には、焼結体の密度が低く、P/V値が48dBと小さく且つ発振周波数の変化率も±5000ppmを大きく上回った。
【0052】
また、xの値が0の試料No.9の場合、試作した発振子100個中、11個において10゜を上回る移相歪みが発生し、安定した発振が得られられないことがわかる。この試料No.9の移相とインピーダンス特性を図8に示す。この図8から、共振周波数と反共振周波数の間で位相が約−90゜から約+90゜に位相反転した後の約+90゜の位相からなる周波数帯域において、図8の符号Aで示す移相が10゜を超える移相歪みが発生していることが判る。
【0053】
一方xの値が0.3より多い試料No.11の場合、P/Vが42dBと小さくなり安定した発振が得られられないことがわかる。
【0054】
また、Aの種類をSrにした試料No.1の場合、P/Vを87dBと著しく大きなP/V特性が得られることがわかる。
【0055】
さらに、Aの種類をSrとBaとした試料、特にNo.4の場合、aの値が0.5でP/Vが78dBと大きな値を有しながら、−20〜80℃の発振周波数の温度変化率が±2500ppm以内と優れた温度特性を有し発振子として最も好ましい特性となる。
【0056】
比較例である試料No.20は、SrBi4Ti415からなる主成分に対して0.3重量部のBi23を添加したものであるが、P/Vは比較的高いものの発振周波数の温度変化率が大きく、さらに移相歪みが多く発生する問題を有していることがわかる。この試料No.20のX線回折図を図9に示す。この図9から(0,0,18)と(1,1,10)の面間隔が試料No.21のX線回折図の図7とほぼ一致する。即ち、添加したBiは殆ど粒界に存在していることが推察され、特に試料No.4のA元素をBiで置換するような効果は認められず、粒内への固溶が進んでいないことが判る。
【0057】
従って、本発明の圧電磁器組成物は、一般式、(A1-xBix)Bi4Ti415(0<x≦0.3、AはSrおよび/またはBa)で表わされ、Mnが一部固溶した結晶相からなることで、高いP/Vを有し、優れた温度特性と移相歪みの無い圧電磁器が得られることが判る。
【0058】
このように、本発明の圧電磁器組成物においては、特に、厚み滑り振動の基本波振動のP/Vを大きくするとともに、共振周波数と反共振周波数の間において、10゜を超える移相歪みの発生が著しく少なく、さらに、−20℃〜80℃での発振周波数の温度変化率を小さくすることができ、安定した発振子として使用することができることが判る。
【0059】
【発明の効果】
以上詳述したように、本発明の圧電磁器組成物では、厚み滑り振動における基本波振動のP/V値を大きくしながら、共振周波数と反共振周波数の間で10゜を超える移相歪みの発生を著しく少なくすることができ、さらに共振周波数の温度変化率が小さく、これにより、発振子を構成した場合、発振余裕度が高まり安定した発振と、発振周波数の温度安定性に優れた高精度な発振特性が得られ、厚み滑り振動の基本波振動を用いた2〜20MHz発振子用素子として好適な発振子を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】コルピッツ型発振回路を原型としたピアス発振回路を示した概略図である。
【図2】8MHz用発振子の概略図である。
【図3】本発明の試料No.4のインピーダンスと移相特性を示すグラフである。
【図4】本発明の試料No.4の発振周波数の温度変化率を示すグラフである。
【図5】本発明の試料No.4のX線回折図である。
【図6】比較例である試料No.9のX線回折図である。
【図7】比較例である試料No.21のX線回折図である。
【図8】比較例である試料No.9のインピーダンスと移相歪みを示すグラフである。
【図9】比較例である試料20のX線回折図である。
【符号の説明】
l・・・圧電磁器
2、3・・・電極
ll、12・・・コンデンサ
13・・・抵抗
14・・・インバータ
15・・・発振子

Claims (3)

  1. モル比による組成式を
    (A1-xBix)Bi4Ti415
    と表したとき、
    0<x≦0.3
    AはSrおよび/またはBa
    を満足する主成分と、該主成分100重量部に対してMnをMnO2換算で0.05〜1重量部含有することを特徴とする圧電磁器組成物。
  2. 主成分が、モル比による組成式を
    {(Sr1-aBaa1-xBix}Bi4Ti415
    と表したとき、
    0.05≦x≦0.3
    0<a≦0.8
    を満足することを特徴とする請求項1記載の圧電磁器組成物。
  3. 圧電磁器の両主面に電極を形成してなるとともに、前記圧電磁器が、請求項1または2記載の圧電磁器組成物からなることを特徴とする圧電共振子。
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