JP4223550B2 - ウイルスの精製および除去方法 - Google Patents
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Description
本発明は、研究および医薬の分野で利用可能な簡便なウイルスの処理方法及び一連の発明を提供する。
従来の技術
マウス、牛、鳥、猿及びヒト等の動物の多くの疾病は、種々のウイルスにより引き起こされる。ヒトにおける代表的なウイルス性疾患としてはたとえばインフルエンザが挙げられるが、近年ではレトロウイルスであるHIV(ヒト免疫不全ウイルス)により引き起こされる後天性免疫不全(AIDS)が社会問題となっている。
一方、遺伝子工学の発展により、細胞に外来遺伝子を導入するための種々のウイルスベクターが開発されている。すでにヒトを含めた哺乳動物の細胞に遺伝子を導入するためのウイルスベクターとしてレトロウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス等に由来するベクターが実用化されているが、さらにこの技術を利用してヒトの疾病を治療する遺伝子治療法が実用化されつつある。また、バキュロウイルスを利用して昆虫、あるいは昆虫細胞に導入した外来遺伝子を発現させ、所望のタンパクを大量生産する手法が注目されている。
発明が解決しようとする課題
ウイルスにより引き起こされる疾病の予防及び治療法の一つとしてワクチンがある。ワクチンには野生型ウイルスに不活化処理を施したものや病原性の低下した弱毒性ウイルス、あるいはウイルスの構成成分の一部(例えばウイルスの表面タンパク等)などが使用されるが、一般にはこれらのワクチンの製造には精製されたウイルスが原料として使用される。このため、工業的スケールで利用可能であり、かつ信頼性の高いウイルスの精製法が必要とされている。
細胞への遺伝子導入用のベクターとして使用されるウイルスは、使用される目的に応じて十分な純度、及び/あるいは濃度を維持している必要があり、簡便なウイルスの精製、濃縮法は利用価値が高い。
また、輸血用血液や血液由来製剤のような医薬品には血液の供給者が感染していたウイルスが混在している場合があり、患者へのこれらの医薬品の投与がウイルス感染症を引き起こしてしまう可能性がある。このようなウイルスの混在は治療上極めて重要な問題であり、可能ならばウイルスが完全に除去されていることが望ましい。このため、血液や製剤を60〜80℃で加熱するなどのウイルス不活化処理が施されることがあるが、熱処理はこれらの医薬品中に含まれる成分のうちの熱安定性の低いものを不活化してしまうおそれがあり、もっと温和で効果的なウイルスの除去方法の開発が望まれている。
本発明の目的は、上記のような種々の状況で利用できる効果的なウイルスの精製方法、及びウイルスの除去方法、ウイルス精製物、ウイルス除去物、及びウイルス吸着担体を提供することにある。
課題を解決するための手段
本発明を概説すれば、本発明の第1の発明はウイルスの精製方法に関し、ウイルス含有試料中のウイルスをフコース硫酸含有多糖及び/又はその分解物に吸着させる工程を含有することを特徴とする。
また、本発明の第2の発明はウイルスの除去方法に関し、ウイルス含有試料中のウイルスをフコース硫酸含有多糖及び/又はその分解物に吸着させる工程を含有することを特徴とする。
また、本発明の第3の発明は第1の発明の方法で得られるウイルス精製物に関し、第4の発明は第2の発明の方法で得られるウイルス除去物に関する。
さらに、本発明の第5の発明はフコース硫酸含有多糖及び/又はその分解物を含有するウイルス吸着担体に関する。
本発明者らはウイルスを含有する試料より簡単な方法でウイルスのみを単離、精製する、あるいはウイルスのみを除去する方法を見出すべく鋭意研究を重ねた結果、フコース硫酸含有多糖及び/又はその分解物が種々のウイルスに対して高い親和性を有することを見出し、フコース硫酸含有多糖及び/又はその分解物を含有するアフィニティ担体を用いることにより、簡単な操作で、しかも高い純度、回収率でウイルスを精製または除去できることを見出し、本発明を完成した。
【図面の簡単な説明】
図1は本発明の方法によるレトロウイルスの精製を示すものである。
図2はFF−セルロファインと硫酸化セルロファインのレトロウイルス吸着能の比較を示すものである。
図3はフコース硫酸含有多糖の沈殿形成率を示すものである。
図4はセファクリルS−500を用いたゲルろ過法により測定したフコース硫酸含有多糖−Fの分子量分布を示すものである。
図5はフコース硫酸含有多糖−FのIRスペクトルを示すものである。
図6はフコース硫酸含有多糖−Fの1H−NMRスペクトルを示すものである。
図7はエンド型フコース硫酸含有多糖分解酵素のpHと相対活性の関係を示すものである。
図8はエンド型フコース硫酸含有多糖分解酵素の温度と相対活性の関係を示すものである。
図9はセルロファインGCL−300を用いたゲルろ過法により測定した、フコース硫酸含有多糖−Fをエンド型フコース硫酸含有多糖分解酵素により分解する前後の分子量分布を示すものである。
図10はセファクリルS−500を用いたゲルろ過法により測定したフコース硫酸含有多糖−Uの分子量分布を示すものである。
図11はフコース硫酸含有多糖−UのIRスペクトルを示すものである。
図12はフコース硫酸含有多糖−Uの1H−NMRスペクトルを示すものである。
図13は糖化合物(a)のピリジル−(2)−アミノ化糖化合物(PA−a)をL−カラムにより分離したときの溶出パターンを示すものである。
図14は糖化合物(b)のピリジル−(2)−アミノ化糖化合物(PA−b)をL−カラムにより分離したときの溶出パターンを示すものである。
図15は糖化合物(c)のピリジル−(2)−アミノ化糖化合物(PA−c)をL−カラムにより分離したときの溶出パターンを示すものである。
図16は糖化合物(a)のマス分析(ネガティブ測定)により得られた結果を示すものである。
図17は糖化合物(b)のマス分析(ネガティブ測定)により得られた結果を示すものである。
図18は糖化合物(c)のマス分析(ネガティブ測定)により得られた結果を示すものである。
図19は糖化合物(a)のマスマス分析(ネガティブ測定)により得られた結果を示すものである。
図20は糖化合物(b)のマスマス分析(ネガティブ測定)により得られた結果を示すものである。
図21は糖化合物(c)のマスマス分析(ネガティブ測定)により得られた結果を示すものである。
図22は糖化合物(a)の1H−NMRスペクトルを示すものである。
図23は糖化合物(b)の1H−NMRスペクトルを示すものである。
図24は糖化合物(c)の1H−NMRスペクトルを示すものである。
発明の実施の形態
以下、本発明に関して具体的に説明する。
本発明において、フコース硫酸含有多糖とは、分子中にフコース硫酸を含有する多糖であり、特に限定はないが、例えば褐藻植物、ナマコ等に含有されている〔左右田徳郎監修、江上不二夫編集、共立出版株式会社、昭和80年12月15日発刊、多糖類化学、第319頁、第321頁〕。なお褐藻植物由来のフコース含有多糖はフコイダン、フコイジン、フカンと通称されている。
本発明において使用するフコース硫酸含有多糖としては、褐藻植物、ナマコ等のフコース硫酸含有多糖含有物を、例えばそのまま乾燥、粉砕して用いても良く、またフコース硫酸含有多糖含有物よりのフコース硫酸含有多糖抽出液、該抽出液よりの精製物を使用しても良い。フコース含有多糖抽出液の調製方法、抽出液からの精製方法は公知の方法で行えばよく、特に限定はない。
また、本発明に使用する、フコース硫酸含有多糖分解物とは、フコース硫酸含有多糖を酵素化学的方法、化学的方法、物理学的方法で分解して得られるものであり、公知の酵素化学的方法、化学的方法、物理学的方法を使用することができる。
また、本発明において使用するフコース硫酸含有多糖、フコース硫酸含有多糖分解物とはその薬学的に許容される塩を包含する。フコース硫酸含有多糖は硫酸基を分子中に有しており、該基は種々の塩基と反応し塩を形成する。これらのフコース硫酸含有多糖、それらの分解物は塩になった状態が安定であり、通常ナトリウム及び/又はカリウム等の塩の形態で単離される。これらの物質の塩はダウエックス50W等の陽イオン交換樹脂で処理することによって遊離のフコース硫酸含有多糖、遊離のそれらの分解物に導くことが可能である。また、これらは、更に必要に応じ公知慣用の塩交換を行い、所望の種々の境に交換することができる。フコース硫酸含有多糖、それらの分解物の塩としては、薬学的に許容される塩が用いられ、例えばカリウム、ナトリウム等のアルカリ金属塩、カルシウム、マグネシウム、バリウム等のアルカリ土類金属塩、ピリジニウム等の有機塩基との塩、及びアンモニウム塩等が挙げられる。
フコース硫酸含有多糖を含有する褐藻植物としては、例えば、山田幸雄序、瀬川宗吉著、保育社、昭和52年発刊の原色日本海藻図鑑、第22〜52頁に記載の褐藻植物があり、例えば、ヒバマタ(Fucus evanescens)、ガゴメ昆布(Kjellmaniella crassifolia)、マ昆布(Laminaria japonica)、ワカメ(Undaria pinnatifida)等を使用し、フコース硫酸含有多糖を調製することができる。
フコース硫酸含有多糖を含有するナマコとしては、例えば、特開平4−91027号公報記載のナマコがあり、例えばマナマコ(Stichopus japonicus)、ニセクロナマコ(Holothuria leucospilota)等を使用することができ、該公報記載の方法にて、フコース硫酸含有多糖を調製することができる。
フコース硫酸含有多糖には、ウロン酸を実質的に含まず構成糖の主成分がフコースのものと、ウロン酸を数%含み構成糖にフコースやマンノースを含むもの等がある。以下、本明細書においてはウロン酸を実質的に含まない方をフコース硫酸含有多糖−Fとし、ウロン酸を含むフコース硫酸含有多糖をフコース硫酸含有多糖−Uとし、両者の混合物をフコース硫酸含有多糖混合物と記載する。これらのフコース硫酸含有多糖−F、フコース硫酸含有多糖−U、フコース硫酸含有多糖混合物及びこれらの分解物を本発明に使用することができる。
フコース硫酸含有多糖を含有する褐藻植物、ナマコ等は乾燥後、粉砕処理を行うことにより、フコース硫酸含有多糖含有粉体を調製することができる。
フコース硫酸含有多糖含有粉体から熱水抽出、希酸抽出を行うことによってフコース硫酸含有多糖抽出液を調製することができる。
フコース硫酸含有多糖含有物からの抽出温度、時間としては0〜200℃、1〜360分の範囲から目的に応じ選択すれば良いが、通常10〜150℃、5〜240分、好適には50〜130℃、10〜180分の範囲より選択して行うのが良い。
フコース硫酸含有多糖含有率を高めるための抽出物精製手段としては、塩化カルシウム、酢酸バリウム等を用いたフコース硫酸含有多糖の分画方法、塩化セチルピリジニウム等の酸性多糖凝集剤を用いたフコース硫酸含有多糖の分画方法、塩類の存在下で酸性多糖凝集剤を用いるフコース硫酸含有多糖の分画方法、ゲルろ過、イオン交換クロマトグラフィー等があり、必要に応じこれらを組合せて、精製を行うことができる。
フコース硫酸含有多糖の分解方法としては、フコース硫酸含有多糖分解酵素を使用する方法、酸分解を行う方法、超音波処理を行う方法等フコース硫酸含有多糖分解方法として公知の方法を使用することができ、分解物の精製は上記方法にて行えばよい。
通常、褐藻類には複数種のフコース硫酸含有多糖が存在するが、本発明に使用される褐藻類の種類は特に限定されるものではなく、例えばヒバマタ由来のもの、ガゴメ昆布由来のもの、マ昆布由来のもの、ワカメ由来のもの、その他すべての褐藻類由来のものを使用することができる。
フコース硫酸含有多糖の製造にはまず、褐藻類の水系溶媒による抽出液を得る。
また、抽出に供する褐藻類はそのまま抽出に供しても良いが、抽出液を得る前に褐藻を乾燥したり、乾燥粉末にしたり、60〜100%のアルコールやアセトン等で洗浄したり、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、グルタルアルデヒド、アンモニア等を含む水溶液に浸しておけばフコース硫酸含有多糖への着色性物質の混入が大幅に減少するため有利である。
また、褐藻類あるいは褐藻類のアルコール洗浄残渣等からフコース硫酸含有多糖を抽出する際に可溶性の酢酸カルシウム、酢酸バリウム、塩化バリウム、又は塩化カルシウムを使用するとアルギン酸の混入を抑えることができるため後の精製が有利である。酢酸カルシウムを使用し抽出する際には、1mM〜1M程度の酢酸カルシウム溶液で50〜130℃で抽出するのが好ましい。
褐藻類が厚手で粉末(粒子)が大きい場合、最初から0.2M以上の酢酸カルシウムを用いると抽出効率が悪くなることがあるので、まず水で抽出したものに、酢酸カルシウムを加えて、生じるアルギン酸の沈殿を除去すれば良い。
しかしながらフコース硫酸含有多糖をアルギン酸と同時に抽出したい場合や、抽出時ある程度分解したものを得たい場合等では溶媒及び抽出条件は特に限定されるものではなく、水あるいは、食塩、塩化マグネシウム等の様々な濃度の中性塩類水溶液、クエン酸、リン酸、塩酸等様々な濃度の酸性水溶液、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の様々な濃度のアルカリ性水溶液が使用でき、緩衝剤や防腐剤を加えても良い。抽出液のpHや抽出温度、抽出時間なども特に限定されないが、一般にフコース硫酸含有多糖は酸やアルカリに対して弱いため、酸性溶液やアルカリ性溶液を使用する場合低分子化が進行し易い。加熱温度、時間、pH等を調整することにより、任意の分解物を調製することができ、例えばゲルろ過処理、分子分画膜処理等により、分解物の平均分子量、分子量分布等を調整することができる。
すなわち本発明で使用するフコース硫酸含有多糖混合物、フコース硫酸含有多糖−U、フコース硫酸含有多糖−F及びこれらの分解物の分子量及び糖組成はフコース硫酸含有多糖の原料の収穫期、該原料の乾燥方法、該原料の保存方法により異なり、またフコース硫酸含有多糖の抽出時の加熱条件、pH条件等により異なる。例えば酸によりフコース硫酸含有多糖は加水分解され、アルカリ条件下ではウロン酸のβ−脱離により、低分子化が進行する。従って本明細書に記載したフコース硫酸含有多糖−U、フコース硫酸含有多糖−Fの分子量、分子量分布はその1例にすぎず、フコース硫酸含有多糖の処理条件により、その分子量、分子量分布は容易に変化させ得る。例えば、弱アルカリ性で100℃、1時間加熱し、脱塩に際し、ポアサイズ300の分子ふるい膜を使用すれば、分子量分布1000から1万程度のフコース硫酸含有多糖−U、フコース硫酸含有多糖−Fが調製でき、使用する条件によって任意の分子量、分子量分布のフコース硫酸含有多糖−U及びフコース硫酸含有多糖−Fを調製できる。
上記の褐藻類の抽出液からアルギン酸や中性糖等を除くためには、例えば0.2〜0.6Mの濃度の食塩などの塩類の存在下、これ以上沈殿が生じなくなるまで塩化セチルピリジニウム等の酸性多糖凝集剤を加え、沈殿を集めれば良い。必要に応じてこの沈殿を0.2〜0.6Mの濃度の食塩などの塩類溶液で洗浄後、沈殿中の塩化セチルピリジニウムを食塩飽和アルコールで洗い落とし、フコース硫酸含有多糖混合物を得る。こうして得られたフコース硫酸含有多糖混合物から色素を除くために、この沈殿を溶解後陰イオン交換樹脂や多糖性の樹脂で処理したり限外ろ過等を行っても良い。また脱塩後凍結乾燥すれば乾燥標品を得ることもできる。フコース硫酸含有多糖−Fのみを効率的に製造したい場合は、塩化セチルピリジニウム等で凝集させる際に、0.2〜0.6Mの塩濃度ではなく、例えば2Mの塩濃度にすれば沈殿はフコース硫酸含有多糖−Fのみを含む。またフコース硫酸含有多糖混合物の水溶液からフコース硫酸含有多糖−Uを分離することができる。
まずフコース硫酸含有多糖混合物の水溶液に1種又は2種以上の境類を添加しその総濃度を0.6〜2Mとする。添加する塩類は例えば塩化ナトリウム、塩化カルシウム等で特に限定されるものではない。
通常フコース硫酸含有多糖−Fとフコース硫酸含有多糖−Uを分離する場合1.5M程度の塩濃度で目的は達成できる(後記図3の説明参照)。例えば上記塩類の塩濃度を1.5Mに調整した後塩化セチルピリジニウム等の酸性多糖凝集剤をこれ以上沈殿が生じなくなるまで添加するとフコース硫酸含有多糖−Fが沈殿を形成するので、沈殿を除去するとフコース硫酸含有多糖−Uの溶液が得られる。必要に応じてこの溶液を濃縮後、4倍量のエタノールなどで溶液中のフコース硫酸含有多糖−Uを沈殿させ、沈殿中の塩化セチルピリジニウムを食塩飽和アルコールで洗い落とし、フコース硫酸含有多糖−Uを得る。こうして得られたフコース硫酸含有多糖−Uから色素を除くために、この沈殿を溶解後限外ろ過等を行っても良い。また脱塩後凍結乾燥すれば乾燥標品を得ることもできる。また、工程中防腐剤などを添加してもよい。
フコース硫酸含有多糖−Fは下記理化学的性質を有するフコース硫酸含有多糖であって、例えば後記参考例3〜5に記載のように得ることができる。以下、このフコース硫酸含有多糖−Fの理化学的性質を示す。
(1)構成糖:ウロン酸を実質的に含有しない。
(2)フラボバクテリウム(Flavobacterium)sp.SA−0082(FERM BP−5402)の生産するフコイダン分解酵素により実質上低分子化されない。
フコース硫酸含有多糖−Uは下記理化学的性質を有するフコース硫酸含有多糖であって、例えば後記参考例5、6に記載のように調製することができる。以下、このフコース硫酸含有多糖−Uの理化学的性質を示す。
(1)構成糖:ウロン酸を含有する。
(2)フラボバクテリウム(Flavobacterium)sp.SA−0082(FERM BP−5402)の生産するフコイダン分解酵素により低分子化する。
次に本発明で使用するフコース硫酸含有多糖−F及びその製造方法について更に詳細に記載する。本発明で使用するフコース硫酸含有多糖−Fを製造する際にはフコース硫酸含有多糖−Uを分解する能力を有する分解酵素をフコース硫酸含有多糖混合物に作用させればよく、酵素反応が終了後低分子化したフコース硫酸含有多糖−Uを限外ろ過などで除去すればよい。上記分解酵素はフコース硫酸含有多糖−Uを選択的に分解できる酵素であればいかなる酵素でもよいが、具体例としては例えば、WO96/34004公報に記載のフラボバクテリウム(Flavobacterium)sp.SA−0082株(FERM BP−5402)が生産する上記のエンド型フコイダン分解酵素が挙げられる。
本酵素を作用させる場合は酵素反応が有利に進むように基質濃度や温度、pH等を設定すればよいが、基質濃度は通常0.1から10%程度、温度は20から40℃付近、pHは6から9付近が望ましい。
また、フコース硫酸含有多糖混合物を培地に添加し、フコース硫酸含有多糖−Uを分解する能力を有する分解酵素生産能を有する微生物をその培地で培養し、培養後の培地から精製してもよい。使用する微生物はフコース硫酸含有多糖−Uを分解する能力を有する分解酵素を生産する微生物であればいかなる微生物でもよいが、具体的には上記記載のフラボバクテリウム sp.SA−0082株(FERM BP−5402)又はWO96/34004公報に記載のフコイダノバクター マリナス(Fucoidanobacter marinus)SI−0098株(FERM BP−5403)が挙げられる。
なお上記のフラボバクテリウム sp.SA−0082株はFlavobacterium sp.SA−0082と表示され、通商産業省工業技術院生命工学工業技術研究所[日本国茨城県つくば市東1丁目1番3号(郵便番号305)]に平成7年3月29日よりFERM P−14872として寄託され、前記通商産業省工業技術院生命工学工業技術研究所にFERM BP−5402(国際寄託への移管請求日:平成8年2月15日)として寄託されている。
また、上記のフコイダノバクター マリナス SI−0098株はFucoidanobacter marinus SI−0098と表示され、通商産業省工業技術院生命工学工業技術研究所[日本国茨城県つくば市東1丁目1番3号(郵便番号305)]に平成7年3月29日よりFERM P−14873として寄託され、前記通商産業省工業技術院生命工学工業技術研究所にFERM BP−5403(国際寄託への移管請求日:平成8年2月15日)として寄託されている。
前述のように0.6〜3Mの1種類又は2種類以上の塩類の存在下でフコース硫酸含有多糖−Fとフコース硫酸含有多糖−Uが酸性多糖凝集剤に対して全く異なる挙動を示す。
従ってフコース硫酸含有多糖混合物の水溶液からフコース硫酸含有多糖−Fを分離することができる。
まずフコース硫酸含有多糖混合物の水溶液に1種又は2種以上の塩類を添加しその総濃度を0.6〜3Mとする。添加する塩類は例えば塩化ナトリウム、塩化カルシウム等で特に限定されるものではない。こうして塩濃度を調整した後塩化セチルピリジニウム等の酸性多糖凝集剤をこれ以上沈殿が生じなくなるまで添加し、沈殿を集めると本発明で使用するフコース硫酸含有多糖−Fが得られる。
しかし上記塩濃度を2M超にすると本発明のフコース硫酸含有多糖−Fが塩化セチルピリジニウムにより沈殿を形成しにくくなるので注意を要する。本発明で使用するフコース硫酸含有多糖−Fとフコース硫酸含有多糖−Uを分離する目的では通常1.5M程度の塩濃度で目的は達成できる。
フコース硫酸含有多糖−F、及びフコース硫酸含有多糖−Uの各塩化ナトリウム濃度における、過剰量の塩化セチルピリジニウム存在下における沈殿形成性を図3に示す。
図3の縦軸は沈殿形成率(%)を示し、横軸は塩化ナトリウム濃度(M)を示す。図中、点線及び白三角はフコース硫酸含有多糖−Fの各塩化ナトリウム濃度での沈殿形成率を示し、図3中、実線及び白丸はフコース硫酸含有多糖−Uの各塩化ナトリウム濃度(M)での沈殿形成率を示す。
沈殿形成率の測定は、溶液温度87℃にて、以下のように行った。
フコース硫酸含有多糖−U及びフコース硫酸含有多糖−Fをそれぞれ2%の濃度で水及び4Mの塩化ナトリウムに溶解し、これらを様々な割合で混合することにより様々な濃度の塩化ナトリウムに溶解したフコース硫酸含有多糖−U及びフコース硫酸含有多糖−F溶液を各125μlずつ調製した。次に、塩化セチルピリジニウムを2.5%の濃度で水及び4Mの塩化ナトリウムに溶解し、それらを混合することにより様々な濃度の塩化ナトリウムに溶解した1.25%の塩化セチルピリジニウム溶液を調製した。
水に溶解している2%のフコース硫酸含有多糖−U及びフコース硫酸含有多糖−Fを1.25%の塩化セチルピリジニウムで完全に沈殿させるには容量で3.2倍必要であった。そこで、各濃度の塩化ナトリウムに溶解した2%のフコース硫酸含有多糖−U及びフコース硫酸含有多糖−Fの各125μlに対して各々の濃度の塩化ナトリウムに溶解した塩化セチルピリジニウム溶液を400μl添加後、十分かくはんし、30分放置後、遠心分離し上清中の糖含量をフェノール−硫酸法〔アナリティカル ケミストリー(Analytical Chemistry)、第28巻、第350頁(1956)〕により測定し、各塩化ナトリウム濃度下での各フコース硫酸含有多糖の沈殿形成率を算出した。
次に必要に応じてこの沈殿を洗浄後、沈殿中の塩化セチルピリジニウムを食塩飽和アルコールで洗い落とし、フコース硫酸含有多糖−Fを得る。こうして得られたフコース硫酸含有多糖−Fから色素を除くために、この沈殿を溶解後限外ろ過等を行っても良い。また脱塩後凍結乾燥すれば乾燥標品を得ることもできる。また、工程中防腐剤などを添加してもよい。
フコース硫酸含有多糖を陰イオン交換樹脂で精製する際に2価の陽イオンが共存すると単位樹脂量当りに吸着するフコース硫酸含有多糖量が増加し、フコース硫酸含有多糖の分離が良くなる。すなわち、本発明で使用するフコース硫酸含有多糖−Fを製造する際には、まずフコース硫酸含有多糖混合物に2価の陽イオン源となる薬品を好ましくは1mM以上添加する。次に、陰イオン交換樹脂を2価の陽イオンを好ましくは1mM以上含む液で平衡化し、上記フコース硫酸含有多糖混合物を吸着させる。この陰イオン交換樹脂を平衡化した液で十分洗浄後、例えば塩化ナトリウムのグラジェントによりフコース硫酸含有多糖−Fを溶出させる。本方法を用いる場合、添加する2価陽イオンの濃度は1mM以上ならばよい。また本方法に用いる二価の陽イオン源となる薬品はカルシウム塩やバリウム塩が特にその効果が優れているが、特に限定されるものではなく、硫酸マグネシウム、塩化マンガン等も使用することができる。
本発明で使用するフコース硫酸含有多糖−Fは例えば参考例3に記載のように得ることができる。以下、このフコース硫酸含有多糖の理化学的性質を示すが、本発明で使用するフコース硫酸含有多糖−Fはこの例に限定されるものでは無い。
得られたフコース硫酸含有多糖−Fの分子量をセファクリルS−500(ファルマシア社製)を用いたゲルろ過法により求めたとζろ、約19万を中心とした分子量分布を示した(図4参照)。なお、図4において、縦軸はフェノール−硫酸法により測定した試料中の糖含量を480nmの吸光度で示し、横軸はフラクション ナンバーを示す。
また、ゲルろ過の条件を下記に示す。
カラムサイズ:3.08×162.5cm
溶媒:0.2Mの塩化ナトリウムと10%のエタノールを含む10mMのリン酸ナトリウム緩衝液(pH6.0)
流速:1.5ml/分
サンプル濃度:0.25%
サンプル液量:20ml
分子量標準物質:Shodex STANDARD P-82(昭和電工社製)
次に、得られたフコース硫酸含有多糖−Fの成分を分析した。
まず、ジャーナル オブ バイオロジカル ケミストリー(Journal of Biological Chemistry)、第175巻、第595頁(1948)の記載に従いフコース量を定量した。
次に、得られたフコース硫酸含有多糖−Fの乾燥標品を1規定の塩酸に0.5%の濃度で溶解し、110℃で2時間処理し、構成単糖に加水分解した。次に、グライコタッグ及びグライコタッグ リージェント キット(ともに宝酒造社製)を用いて加水分解して得られた単糖の還元性末端をピリジル−(2)−アミノ化(PA化)し、HPLCにより構成糖の比率を調べた。なお、HPLCの条件は下記によった。
装置:L−6200型(日立製作所製)
カラム:パルパックタイプA(4.6mm×150mm)(宝酒造社製)
溶離液:700mMホウ酸緩衝液(pH9.0):アセトニトリル=9:1
検出:蛍光検出器F−1150(日立製作所製)にて励起波長310nm、蛍光波長380nmで検出。
流速:0.3ml/分
カラム温度:65℃
次に、アナリティカル バイオケミストリー(Analytical Biochemistry)、第4巻、第330頁(1962)の記載に従いウロン酸量を定量した。
次に、バイオケミカル ジャーナル(Biochemical Journal)、第84巻、第106頁(1962)の記載に従い硫酸含量を定量した。
以上の結果、得られたフコース硫酸含有多糖−Fの構成糖はフコース、ガラクトースで、そのモル比は約10:1であった。ウロン酸及びその他の中性糖は実質的に含有されていなかった。また、フコースと硫酸基のモル比は約1:2であった。
1%のフコース硫酸含有多糖−F溶液16mlと、50mMのリン酸緩衝液(pH8.0)12mlと4Mの塩化ナトリウム4mlと32mU/mlのWO96/34004公報に記載のフラボバクテリウム sp.SA−0082(FERM BP−5402)由来のエンド型フコイダン分解酵素溶液8mlを混合し、25℃で48時間反応させた。反応による分解物の生成は認められず、その低分子化も認められなかった。
次に、得られたフコース硫酸含有多糖−Fのカルシウム塩のIRスペクトルをフーリェ変換赤外分光光度計 JIR−DIAMOND20(日本電子社製)により測定したところ図5に示すスペクトルが得られた。なお、図5において縦軸は透過率(%)、横軸は波数(cm-1)を示す。
次に、得られたフコース硫酸含有多糖−Fのナトリウム塩のNMRスペクトルを500MHzの核磁気共鳴装置JNM−α500型核磁気共鳴装置(日本電子社製)により測定したところ、図6に示すスペクトルが得られた。
図6中、縦軸はシグナルの強度、横軸は化学シフト値(ppm)を示す。なお、1H−NMRでの化学シフト値はHODの化学シフト値を4.65ppmとして表した。
1H−NMR(D2O)
5.30(フコースの1位のH)、1.19(フコースの5位のCH3のH)
次に、得られたフコース硫酸含有多糖−Fの凍結乾燥物の比旋光度を高速・高感度旋光計SEPA−300(堀場製作所製)により測定したところ、−135度であった。
以上フコース硫酸含有多糖−Uと分離され、純化されたフコース硫酸含有多糖−Fが提供される。本発明で使用するフコース硫酸含有多糖−Fは構成糖としてウロン酸を実質的に含有せず、フラボバクテリウム sp.SA−0082(FERM BP−5402)の生産するフコイダン分解酵素により低分子化されない。その分子量、分子量分布、糖組成はフコース硫酸含有多糖−Fをなんら限定するものではなく、任意の分子量、分子量分布のフコース硫酸含有多糖−Fを調製することができ、本発明において糖組成、還元末端等の理化学的性質が明確で、硫酸化度が極めて高いフコース硫酸含有多糖−Fを使用することができる。
次にフコース硫酸含有多糖−Fのみを選択的に分解する酵素を使用することによりフコース硫酸含有多糖−Fの低分子化分解物が提供される。
酵素源の微生物としてはエンド型フコース硫酸含有多糖−F分解酵素生産能を有する菌株であればいかなる菌株でもよいが、該エンド型フコース硫酸含有多糖−F分解酵素生産能を有する菌株の具体例としては、例えば特願平8−204187号明細書に記載のアルテロモナス(Alteromonas)sp.SN−1009株が挙げられる。該菌株由来のエンド型フコース硫酸含有多糖−F分解酵素をフコース硫酸含有多糖−Fに作用させれば、フコース硫酸含有多糖−Fの酵素学的低分子化物を得ることができる。
本菌株はアルテロモナス sp.SN−1009と命名され、Alteromonas sp. SN−1009と表示され、通商産業省工業技術院生命工学工業技術研究所[日本国茨城県つくば市東1丁目1番3号(郵便番号305)]に平成8年2月13日よりFERM P−15436として寄託され、前記通商産業省工業技術院生命工学工業技術研究所にFERM BP−5747(国際寄託への移管請求日:平成8年11月15日)として寄託されている。
本発明に使用する菌株の培地に加える栄養源は使用する菌株が利用し、エンド型フコース硫酸含有多糖−F分解酵素を生産するものであればよく、炭素源としては例えばフコース硫酸含有多糖、海藻粉末、アルギン酸、フコース、ガラクトース、グルコース、マンニトール、グリセロール、サッカロース、マルトース等が利用でき、窒素源としては、酵母エキス、ペプトン、カザミノ酸、コーンスティープリカー、肉エキス、脱脂大豆、硫安、塩化アンモニウム等が適当である。その他にナトリウム塩、リン酸塩、カリウム塩、マグネシウム塩、亜鉛塩等の無機質、及び金属塩類を加えてもよい。
また本菌株は上記栄養源を含んだ海水あるいは人工海水中で非常に良く生育する。
該エンド型フコース硫酸含有多糖−F分解酵素の生産菌を培養するに当り、生産量は培養条件により変動するが、一般に培養温度は、15℃〜30℃、培地のpHは6〜9がよく、5〜72時間の通気かくはん培養でエンド型フコース硫酸含有多糖−F分解酵素の生産量は最高に達する。
培養条件は使用する菌株、培地組成等に応じ、エンド型フコース硫酸含有多糖−F分解酵素の生産量が最大になるように設定するのは当然のことである。エンド型フコース硫酸含有多糖−F分解酵素は菌体中にも培養物上清中にも存在する。
上記のアルテロモナス sp.SN−1009を適当な培地で培養し、その菌体を集め、通常用いられる細胞破壊手段、例えば、超音波処理などで菌体を破砕すると無細胞抽出液が得られる。
次いで、この抽出液から通常用いられる精製手段により精製酵素標品を得ることができる。例えば、塩析、イオン交換カラムクロマト、疎水結合カラムクロマト、ゲルろ過等により精製を行い、他のフコイダン分解酵素を含まない純化されたエンド型フコース硫酸含有多糖−F分解酵素を得ることができる。
また、上述の培養液から菌体を除去した培養液上清中にも本酵素が大量に存在するので、菌体内酵素と同様の精製手段により精製することができる。
エンド型フコース硫酸含有多糖−F分解酵素の化学的及び理化学的性質は次の通りである。
(I)作用:下記理化学的性質を有するフコース硫酸含有多糖、すなわちフコース硫酸含有多糖−Fに作用して、該フコース硫酸含有多糖−Fを低分子化させる。
(a)構成糖:ウロン酸を実質的に含有しない。
(b)フラボバクテリウム(Flavobacterium)sp.SA−0082(FERM BP−5402)の生産するフコイダン分解酵素により実質上低分子化されない。
下記理化学的性質を有するフコース硫酸含有多糖、すなわちフコース硫酸含有多糖−Uに作用しない。
(c)構成糖:ウロン酸を含有する。
(d)フラボバクテリウム(Flavobacterium)sp.SA−0082(FERM BP−5402)の生産するフコイダン分解酵素により低分子化し、少なくとも下記式(I)、(II)、(III)より選択される少なくとも一種以上の化合物が生成する。
(II)至適pH:本酵素の至適pHは7〜8付近である(図7)。
すなわち図7は本酵素のpHと相対活性の関係を表すグラフであり、縦軸は相対活性(%)、横軸はpHを示す。実線は、還元性末端をPA化したフコース硫酸含有多糖−F(PA−FF)を基質に用いた曲線であり、点線はネイティブのフコース硫酸含有多糖−Fを基質に用いた場合の曲線である。
(III)至適温度:本酵素の至適温度は30〜35℃付近である(図8)。
すなわち図8は、本酵素の温度と相対活性の関係を表すグラフであり、縦軸は相対活性(%)、横軸は温度(℃)を示す。実線は、還元性末端をPA化したフコース硫酸含有多糖−F(PA−FF)を基質に用いた場合の曲線であり、点線はネイティブのフコース硫酸含有多糖−Fを基質に用いた場合の曲線である。
(IV)分子量:本酵素の分子量を、セファクリル(Sephacryl)S−200(ファルマシア社製)を用いたゲルろ過法により求めたところ、約10万であった。
(V)酵素活性の測定方法:
エンド型フコース硫酸含有多糖−F分解酵素活性の測定は次のようにして行った。
まず、エンド型フコース硫酸含有多糖−F分解酵素の基質となるフコース硫酸含有多糖−F、及びPA−FFを下記(1)から(3)の工程により調製した。
(1)ガゴメ昆布フコース硫酸含有多糖混合物の調製
乾燥ガゴメ昆布2Kgを自由粉砕機M−2型(奈良機械製作所製)により粉砕し、4.5倍量の80%エタノール中で80℃、2時間処理後、ろ過した。残渣に対し、上記80%エタノール抽出、ろ過という工程をさらに3回繰り返し、エタノール洗浄残渣1870gを得た。残渣に36リットルの水を加え、100℃、2時間処理し、ろ過により抽出液を得た。抽出液の塩濃度を400mMの塩化ナトリウム溶液と同じにした後、5%の塩化セチルピリジニウムをこれ以上沈殿が生じなくなるまで添加し、遠心分離した。その沈殿を、80%のエタノールで繰り返し洗浄し、塩化セチルピリジニウムを完全に除去した後、3リットルの2M塩化ナトリウムに溶解し、不溶物を遠心分離で除去し、2Mの塩化ナトリウムで平衡化した100mlのDEAE−セルロファインA−800を懸濁し、かくはん後ろ過し、樹脂を除いた。このろ液を、2Mの塩化ナトリウムで平衡化した100mlのDEAE−セルロファインA−800(生化学工業社製)のカラムにかけ、通過画分を限外ろ過器(ろ過膜の排除分子量10万)により脱塩及び低分子除去を行い、この際生じた沈殿を遠心分離により除去した。この上清を凍結乾燥して精製ガゴメ昆布フコース硫酸含有多糖混合物82.2gを得た。
(2)フコース硫酸含有多糖−Fの調製
上記のガゴメ昆布由来フコース硫酸含有多糖混合物6gを600mlの0.2Mの塩化カルシウムを含む20mMの酢酸ナトリウム(pH6.0)に溶解後、あらかじめ0.2Mの塩化カルシウムを含む20mMの酢酸ナトリウム(pH6.0)で平衡化した3600mlのDEAE−セファロースFF(ファルマシア社製)のカラムにかけ、0.2Mの塩化カルシウムを含む20mMの酢酸ナトリウム(pH6.0)で十分カラムを洗浄後、0〜2Mの塩化ナトリウムのグラジエントで溶出した。
塩化ナトリウム濃度が0.75M以上で溶出してくるフコース硫酸含有多糖−F画分を集め、排除分子量10万の限外ろ過膜を装着した限外ろ過器で濃縮脱塩後凍結乾燥し、フコース硫酸含有多糖−Fの凍結乾燥原品を、3.3g得た。
(3)PA−FFの調製
上記のフコース硫酸含有多糖−Fの凍結乾燥標品12mgを水480μlに溶解し、12μlずつ36本に分注後、凍結乾燥しグライコタッグ及びグライコタッグ リージェント キットを用いて還元性末端をPA化し、PA−FFを得た。
得られたPA−FFを15mlの10%のメタノールを含む10mMの酢酸アンモニウム溶液に溶解し、セルロファインGCL−300(生化学工業社製)のカラム(40x900mm)によりゲルろ過し、高分子画分を集めた。得られた高分子画分をポアサイズ3500の透析膜を用いて十分透析して脱塩し、次にエバポレーターにより5mlに濃縮してエンド型フコース硫酸含有多糖−F分解酵素の基質用PA−FFとした。
また、こうして得られたPA−FFを、市販のピリジル−(2)−アミノ化フコース(宝酒造社製)の蛍光強度(励起波長320nm、蛍光波長400nm)と比較することにより定量したところ約40nmolであった。
上記(1)及び(2)の工程により得られたフコース硫酸含有多糖−Fを用いてエンド型フコース硫酸含有多糖分解酵素の活性を測定するときは下記の要領で行った。
すなわち、2.5%のフコース硫酸含有多糖−F溶液12μlと、6μlの1M塩化カルシウム溶液と12μlの1M塩化ナトリウム溶液と、72μlの50mMの酢酸とイミダゾールとトリス−塩酸を含む緩衝液(pH7.5)と、18μlのエンド型フコース硫酸含有多糖−F分解酵素とを混合し、30℃、3時間反応させた後、反応液を100℃、10分間処理し、遠心分離後、100μlをHPLCにより分析し、低分子化の程度を測定した。
対照として、エンド型フコース硫酸含有多糖−F分解酵素の代りに、エンド型フコース硫酸含有多糖−F分解酵素溶液の調製に使用した緩衝液を用いて同様の条件により反応させたもの及びフコース硫酸含有多糖−F溶液の代りに水を用いて反応を行ったものを用意し、それぞれ同様にHPLCにより分析した。
1単位の酵素は、上記反応系において1分間に1μmolのフコース硫酸含有多糖−Fのフコシル結合を切断する酵素量とする。切断されたフコシル結合の定量は下記式により求めた。
{(12×2.5)/(100×MF)}×{(MF/M)-1}×{0.12/(180×0.01)}=U/ml
(12×2.5)/100:反応系中に添加したフコース硫酸含有多糖−F(mg)
MF:基質フコース硫酸含有多糖−Fの平均分子量
M:反応生成物の平均分子量
(MF/M)−1:1分子のフコース硫酸含有多糖−Fが酵素により切断された数
180:反応時間(分)
0.01:酵素液量(ml)
0.12:反応液総量(ml)
なお、HPLCの条件は下記によった。
装置:L−6200型(日立製作所製)
カラム:OHpak KB−804(8mm×300mm)(昭和電工社製)
溶離液:5mMのアジ化ナトリウム、25mMの塩化カルシウム、及び50mMの塩化ナトリウムを含む25mMのイミダゾール緩衝液(pH8)
検出:視差屈折率検出器(Shodex RI−71、昭和電工社製)
流速:1ml/分
カラム温度:25℃
反応生成物の平均分子量の測定のために、市販の分子量既知のプルラン(STANDARD P−82、昭和電工社製)を上記のHPLC分析と同条件で分析し、プルランの分子量とOHpak KB−804の保持時間との関係を曲線に表し、上記酵素反応生成物の分子量測定のための標準曲線とした。
上記(1)〜(3)の工程により得られたPA−FFを用いてエンド型フコース硫酸含有多糖−F分解酵素の活性を測定するときは下記の要領で行った。
すなわち、8pmol/μlのPA−FF溶液2μlと、5μlの1M塩化カルシウム溶液と10μlの1M塩化ナトリウム溶液と、23μlの水と、50μlの50mMの酢酸とイミダゾールとトリス−塩酸を含む緩衝液(pH8.2)と、10μlのエンド型フコース硫酸含有多糖−F分解酵素とを混合し、30℃、3時間反応させた後、反応液を100℃、10分間処理し、遠心分離後、80μlをHPLCにより分析し、低分子化の程度を測定した。
対照として、エンド型フコース硫酸含有多糖−F分解酵素の代りに、エンド型フコース硫酸含有多糖−F分解酵素溶液の調製に使用した緩衝液を用いて同様の条件により反応させたもの及びPA−FF溶液の代りに水を用いて反応を行ったものを用意し、それぞれ同様にHPLCにより分析した。
1単位の酵素は、上記反応系において1分間に1μmolのフコース硫酸含有多糖−Fのフコシル結合を切断する酵素量とする。切断されたフコシル結合の定量は下記式により求めた。
16×10-6×{(MF/M)-1}×{1/(180×0.01)}=U/ml
16x10-6:反応系中に添加したPA−FF(μmol)
MF:基質PA−FFの平均分子量
M:反応生成物の平均分子量
(MF/M)−1:1分子のフコース硫酸含有多糖−Fが酵素により切断された数
180:反応時間(分)
0.01:酵素液量(ml)
なお、HPLCの条件は下記によった。
装置:L−6200型(日立製作所製)
カラム:OHpak SB−803(8mm x 300mm)(昭和電工社製)
溶離液:5mMのアジ化ナトリウム及び10%のジメチルスルホキシドを含む200mMの塩化ナトリウム溶液
検出:蛍光検出器F-1150(日立製作所製)にて励起波長320nm、蛍光波長400nmで検出。
流速:1ml/分
カラム温度:50℃
反応生成物の平均分子量の測定のために、市販の分子量既知のプルラン(STANDARD P−82、昭和電工社製)をグライコタッグ及びグライコタッグ リージェント キットを用いて還元性末端を、PA化し、様々な分子量のPA化プルランを得た。得られた様々な分子量のPA化プルランを上記のHPLC分析と同条件で分析し、プルランの分子量とOHpak SB−803の保持時間との関係を曲線に表し、上記酵素反応生成物の分子量測定のための標準曲線とした。
タンパク質の定量は、酵素液の280nmの吸光度を測定することにより行った。その際1mg/mlのタンパク質溶液の吸光度を1.0として計算した。
次にエンド型フコース硫酸含有多糖−F分解酵素の作用機作を決定し、分解物を調製した。
(1)エンド型フコース硫酸含有多糖−F分解酵素によるフコース硫酸含有多糖−Fの分解及び分解物の調製
精製したガゴメ昆布由来のフコース硫酸含有多糖−Fにエンド型フコース硫酸含有多糖−F分解酵素を作用させ、分解物の調製を行った。
まず、フコース硫酸含有多糖−F分解酵素の生産を行った。すなわち、アルテロモナス sp.SN−1009(FERM BP−5747)を、グルコース0.25%、ペプトン1.0%、酵母エキス0.05%を含む人工海水(ジャマリンラボラトリー社製)pH8.2からなる培地600mlを分注して殺菌した(120℃、20分)2リットルの三角フラスコに接種し、25℃で26時間培養して種培養液とした。ペプトン1.0%、酵母エキス0.02%、前記のガゴメ昆布由来のフコース硫酸含有多糖0.2%、及び消泡剤(信越化学工業社製KM70)0.01%を含む人工海水pH8.0からなる培地20リットルを30リットル容のジャーファーメンターに入れて120℃で20分殺菌した。冷却後、上記の種培養液600mlを接種し、24℃で24時間、毎分10リットルの通気量と毎分250回転のかくはん速度の条件で培養した。培養終了後、培養液を遠心分離して菌体及び培養上清を得た。得られた培養上清を、分画分子量1万の限外ろ過器により濃縮後85%飽和硫安塩析し、生じた沈殿を遠心分離により集め、10分の1濃度の人工海水を含む20mMのトリス−塩酸緩衝液(pH8.2)に対して十分透析し、600mlの粗酵素を得た。
こうして得られた粗酵素のうち40mlと、人工海水44mlと、前記のフコース硫酸含有多糖−Fの510mgと水86mlを混合し、pHを8に調整し、25℃で48時間反応後、セルロファインGCL−300によりゲルろ過を行い、4画分に分け、分子量の大きな方から順に、F−Fd−1(分子量25000超)、F−Fd−2(分子量25000〜12000超)、F−Fd−8(分子量12000〜6500超)、及びF−Fd−4(分子量6500以下)とした。これらの4画分を脱塩後凍結乾燥し、乾燥品をそれぞれ170mg、270mg、3000mg、及び340mg得た。
フコース硫酸含有多糖−Fの酵素分解物、すなわち低分子化物のセルロファインGCL−300によるゲルろ過の結果を図9に示す。図9において縦軸は480nmの吸光度(フェノール硫酸法による発色量)、横軸はフラクションナンバーを示し、1フラクション10mlである。カラムボリュームは1075mlであり、溶出液は10%のエタノールを含む0.2Mの酢酸アンモニウム溶液である。
図9中、白丸印はフコース硫酸含有多糖−Fの酵素分解物を、黒三角印は酵素分解前のフコース硫酸含有多糖−Fをそれぞれゲルろ過した結果を表す。
上記セルロファインGCL−800の結果から、フコース硫酸含有多糖−F分解酵素の反応生成物の分子量分布は約1000〜3万程度である。
(2)酵素反応生成物の還元末端糖及び中性糖組成の分析
上記のF−Fd−1、F−Fd−2、F−Fd−3、及びF−Fd−4の一部をグライコタッグ及びグライコタッグ リージェント キットを用いて還元性末端をPA化し、得られた各PA化糖(PA−F−Fd−1)、(PA−F−Fd−2)、(PA−F−Fd−3)、及び(PA−F−Fd−4)を4規定の塩酸、100℃、8時間処理により加水分解し、HPLCにより還元末端糖を調べた。
なお、HPLCの条件は下記によった。
装置:L−6200型(日立製作所製)
カラム:パルパックタイプA(4.6mm×150mm)(宝酒造社製)
溶離液:700mMほう酸緩衝液(pH9):アセトニトリル=9:1
検出:蛍光検出器F−1150(日立製作所製)にて励起波長310nm、蛍光波長380nmで検出。
流速:0.3ml/分
カラム温度:65℃
この結果、(PA−F−Fd−1)、(PA−F−Fd−2)、(PA−F−Fd−3)、及び(PA−F−Fd−4)の還元末端糖は総てフコースであった。
また、F−Fd−1、F−Fd−2、F−Fd−3、及びF−Fd−4の中性糖組成を下記の方法により測定した。なお、基質に用いたフコース硫酸含有多糖−Fを硫酸加水分解後グライコタッグ及びグライコタッグ リージェント キットを用いて構成糖の還元性末端をPA化し、上記の酵素反応生成物の還元性末端を分析したときと同じHPLC条件で分析したところ、フコースとガラクトースのみしか検出されず、それらの立体配位はそれぞれL及びDであったので生成物に関してもL−フコースとD−ガラクトースのみを測定した。
すなわち、構成糖の一つであるD−ガラクトースの含量を調べるためにF−キット 乳糖/ガラクトース(ベーリンガーマンハイム山之内社製)を用い、説明書に従ってD−ガラクトースのみを測定できる反応系を構築し、別に4規定の塩酸で100℃、2時間加水分解したF−Fd−1、F−Fd−2、F−Fd−3、及びF−Fd−4を中和後この反応系で測定した。
更にもう一方の構成糖であるL−フコースを定量するために、クリニカル ケミストリー(Clincal Chemistry)、第36巻、第474〜476頁(1990)記載の方法に従って、別に4規定の塩酸で100℃、2時間加水分解したF−Fd−1、F−Fd−2、F−Fd−3、及びF−Fd−4を中和後この反応系で測定した。
以上の結果L−フコースとD−ガラクトースの比率はF−Fd−1、F−Fd−2、F−Fd−3、及びF−Fd−4それぞれおよそ100:44、100:27、100:5、及び100:1であった。
以上の結果をまとめると、エンド型フコース硫酸含有多糖−F分解酵素は、フコース硫酸含有多糖−Fに作用してフコシル結合を加水分解し、分子量約1000〜3万程度の低分子化物を生成し、その低分子化物は分子量が大きいほどガラクトース含量が高い。なお、低分子化物の還元性末端はすべてL−フコースであった。
次に、本酵素の基質特異性を調べるためにフコース硫酸含有多糖−Uにフコース硫酸含有多糖−F分解酵素を作用させた。
すなわち、2.5%のフコース硫酸含有多糖−U溶液12μlと、6μlの1M塩化カルシウム溶液と12μlの1M塩化ナトリウム溶液と、72μlの50mMのイミダゾール緩衝液(pH7.5)と、18μlのエンド型フコース硫酸含有多糖分解酵素(1.6mU/ml)とを混合し、30℃、3時間反応させた後、反応液を100℃、10分間処理し、遠心分離後、100μlをHPLCにより分析し、低分子化の程度を測定した。
対照として、エンド型フコース硫酸含有多糖−F分解酵素の代わりに、エンド型フコース硫酸含有多糖−F分解酵素溶液の調製に使用した緩衝液を用いて同様の条件により反応させたものを用意し、同様にHPLCにより分析した。
なお、HPLCの条件は次の通りである。
装置:L−6200型(日立製作所製)
カラム:OHpak KB−804(8mm×300mm)(昭和電工社製)
溶離液:5mMのアジ化ナトリウム、25mMの塩化カルシウム、及び50mMの塩化ナトリウムを含む25mMのイミダゾール緩衝液(pH8)
検出:視差屈折率検出器(Shodex RI−71、昭和電工社製)
流速:1ml/分
カラム温度:25℃
その結果、フコース硫酸含有多糖−F分解酵素は、フコース硫酸含有多糖−Uを全く低分子化しなかった。
以上、フコース硫酸含有多糖−F分解酵素をフコース硫酸含有多糖−F含有物に作用させることによって、フコース硫酸含有多糖−Fの低分子化物を調製することができる。フコース硫酸含有多糖−F含有物としては、例えばフコース硫酸含有多糖−F精製品でもよく、また前述フコース硫酸含有多糖混合物でもよく、更に褐藻類海藻の水性溶媒抽出物でもよい。フコース硫酸含有多糖−F含有物の溶解は通常の方法で行えばよく、溶解液中のフコース硫酸含有多糖濃度はその最高溶解濃度でもよいが、通常はその操作性、酵素力価を考慮して選定すればよい。
フコース硫酸含有多糖−F溶解液としては水、緩衝液等より目的に応じて選択すればよい。溶解液のpHは通常中性で、酵素反応は通常80℃付近で行う。酵素量、反応時間などを調整することによって、低分子化物の分子量を調整することができる。
次に低分子化物を分子量分画することによって、更に均一な分子量分布のフコース硫酸含有多糖−F低分子化物を調製することができる。分子量分画は通常よく使用されている方法を適用することができ、例えばゲルろ過法や分子量分画膜を使用すればよい。低分子化物は、必要に応じて更にイオン交換樹脂処理、活性炭処理などの精製操作を行ってもよく、必要に応じて脱塩処理、無菌処理を行い、凍結乾燥することによって、本発明に使用するフコース硫酸含有多糖−Fの分解物の乾燥品を調製することもできる。
フコース硫酸含有多糖−Uは例えば参考例5、6に記載のように調製することができる。以下、このフコース硫酸含有多糖−Uの理化学的性質を示すが、本発明で使用するフコース硫酸含有多糖−Uはこの例に限定されるものではない。なおフコース硫酸含有多糖−Uの理化学的性質は前記フコース硫酸含有多糖−Fの理化学的性質の測定方法に順じ行った。
得られた本発明に使用するフコース硫酸含有多糖−Uの分子量をセファクリルS−500を用いたゲルろ過法により求めたところ、約19万を中心とした分子量分布を示した(図10参照)。なお、図10において、縦軸はフェノール−硫酸法により測定した試料中の糖含量を480nmの吸光度で示し、横軸はフラクション ナンバーを示す。
次に、得られたフコース硫酸含有多糖−Uの成分を分析した。
得られたフコース硫酸含有多糖−Uの構成糖はフコース、マンノース、ガラクトース、グルコース、ラムノース、キシロース、ウロン酸であった。その他の中性糖は実質的に含有されていなかった。また、主要成分のフコース:マンノース:ガラクトース:ウロン酸:硫酸基はモル比で約10:7:4:5:20であった。
次に、フコース硫酸含有多糖−UのIRスペクトルを測定したところ図11に示すスペクトルが得られた。なお、図11において縦軸は透過率(%)、横軸は波数(cm-1)を示す。
次に、フコース硫酸含有多糖−Uのカルシウム塩のNMRスペクトルを測定したところ図12に示すスペクトルが得られた。
図12中、縦軸はシグナルの強度、横軸は化学シフト値(ppm)を示す。なお、1H−NMRでの化学シフト値はHODの化学シフト値を4.65ppmとして表した。
1H−NMR(D2O)
δ5.27(マンノースの1位のH)、5.07(フコースの1位のH)、4.49(フコースの8位のH)、4.37(グルクロン酸の1位のH)、4.04(フコースの4位のH)、3.82(フコースの2位のH)、3.54(グルクロン酸の3位のH)、3.28(グルクロン酸の2位のH)、1.09(フコースの5位のCH3のH)
このフコース硫酸含有多糖−Uの凍結乾燥物の比旋光度を高速・高感度旋光計SEPA−300(堀場製作所製)により測定したところ、−53.6度であった。
フコース硫酸含有多糖−Uの構造は特願平8−45583号明細書に記載の様に決定されている。
フコース硫酸含有多糖−Uを分解する能力を有する分解酵素によるフコース硫酸含有多糖−Uの分解及び分解物の精製
精製したフコース硫酸含有多糖−UにWO96/34004公報記載のエンド型フコイダン分解酵素を作用させ分解物の精製を行った。
すなわち、1%のフコース硫酸含有多糖−U溶液16mlと、50mMのリン酸緩衝液(pH8.0)12mlと4Mの塩化ナトリウム4mlと32mU/mlのエンド型フコイダン分解酵素溶液8mlを混合し、25℃で48時間反応させた。反応の進行と共に230nmの吸光度が増加することを確認し、本酵素によりフコース硫酸含有多糖−Uが分解されていることが判明した。この反応液をマイクロアシライザーG3(旭化成社製)により脱塩後、DEAE−セファロースFFにより3つの画分(a)、(b)、及び(c)に分離精製した。
なお、上記のエンド型フコイダン分解酵素の生産に用いる菌株としては、該エンド型フコイダン分解酵素生産能を有する菌株であればいかなる菌株でもよいが、具体例としては例えば、WO96/34004公報記載のフラボバクテリウム(Flavobacterium)sp.SA−0082株(FERM BP−5402)が挙げられる。
酵素反応生成物の構造解析
上記のエンド型フコイダン分解酵素は、フコース硫酸含有多糖−U中に存在するD−マンノースとD−グルクロン酸の間のα1→4結合を脱離的に分解する酵素であり、得られたフコース硫酸含有多糖−Uに作用させると下記式(I)、(II)、及び(III)の構造を有するオリゴ糖が生成した。
以下、詳細に説明する。
上記のDEAE−セファロースFFで分離精製した3つの画分(a)、(b)、及び(c)をそれぞれ一部だけグライコタッグ及びグライコタッグ リージェント キットを用いて還元性末端を、ピリジル−(2)−アミノ化(PA化)し、各PA化糖(PA−a)、(PA−b)、及び(PA−c)を得た。(PA−a)、(PA−b)、及び(PA−c)をHPLCにより分析した。
なお、HPLCの条件は下記によった。
(ア)分子量分画カラムを用いたHPLC分析
装置:L−6200型(日立製作所製)
カラム:SHODEX SB−803(4、6×250mm)(昭和電工社製)
溶離液:0.2M塩化ナトリウム:ジメチルスルホキシド=9:1
検出:蛍光検出器 F−1150(日立製作所製)にて励起波長320πm、蛍光波長400nmで検出
流速:1ml/分
カラム温度:50℃
(イ)逆相カラムを用いたHPLC分析
装置:L−6200型(日立製作所製)
カラム:L−カラム(4.6×250mm)〔(財)化学薬品検査協会〕
溶離液:50mM酢酸−トリエチルアミン(pH5.5)
検出:蛍光検出器 F−1150(日立製作所製)にて励起波長320nm、蛍光波長400nmで検出
流速:1ml/分
カラム温度:40℃
図13、14、及び15には各々ピリジル−(2)−アミノ化糖化合物(PA−a)、(PA−b)、及び(PA−c)のHPLCの各溶出パターンを示し、図において縦軸は相対蛍光強度、横軸は保持時間(分)を示す。
下記に式(I)、式(II)、及び式(III)で表される化合物、すなわち(a)、(b)、及び(c)の物性を示す。
図16に(a)の、図17に(b)の、図18に(c)のマスのスペクトルを示し、図19に(a)の、図20に(b)の、図21に(c)のマスマスのスペクトルを示し、各図において縦軸は相対強度(%)、横軸はm/z値を示す。
更に図22は(a)の、図23は(b)の、図24は(c)の1H−NHRスペクトルを示し、各図において縦軸はシグナルの強度、横軸は化学シフト値(ppm)を示す。
なお、1H−NHRでの化学シフト値はHODの化学シフト値を4.65ppmとして表した。
(a)の物性
分子量 564
MS m/z 568〔M−H+〕-
MS/MS m/z 97〔HSO4〕-、157〔不飽和D−グルクロン酸−H2O−H+〕-、175〔不飽和D−グルクロン酸−H+〕-、225〔L−フコース硫酸−H2O−H+〕-、243〔L−フコース硫酸−H+〕-、319〔不飽和D−グルクロン酸とD−マンノースが結合したもの−H2O−H+〕-、405〔M−不飽和D−グルクロン酸−H+〕-、483〔M−SO3−H+〕+
1H−NMR(D2O)
δ5.78(1H,d,J=3.7Hz,4″−H)、5.26(1H,d,J=1.2Hz,1−H)、5.12(1H,d,J=4.0Hz,1′−H)、5.03(1H,d,J=6.1Hz,1″−H)、4.47(1H,d−d,J=3.4,10.4Hz,3′−H)、4.21(1H,br−s,2−H)、4.12(1H,m,5′−H)、4.10(1H,d−d,J=3.7,5.8Hz,3″−H)、4.03(1H,d,J=3.4Hz,4′−H)、3.86(1H,m,3−H)、3.83(1H,d−d,J=4.0,10.4Hz,2′−H)、3.72(1H,m,4−H)、3.72(1H,m,5−H)、3.70(2H,m,5−CH2のH2)、3.65(1H,d−d,J=5.8,6.1Hz,2″−H)、1.08(3H,d,J=6.7Hz,5′−CH3のH3)
糖組成 L−フコース:不飽和D−グルクロン酸:D−マンノース=1:1:1(各1分子)
硫酸塩 1分子(L−フコースの3位)
なお、1H−NMRにおけるピークの帰属の番号は下記式(IV)の通りである。
(b)の物性
分子量 724
MS m/z 723〔M−H+〕-、361〔M−2H+〕2-
MS/MS m/z 97〔HSO4〕-、175〔不飽和D−グルクロン酸−H+〕-、243〔L−フコース硫酸−H+〕-、321〔M−SO3−2H+〕2-、405〔M−不飽和D−グルクロン酸−SO3−H+〕-、417(M−L−フコース−2SO3−2H+〕+
1H−NMR(D2O)
δ5.66(1H,d,J=3.4Hz,4″−H)、5.27(1H,d,J=7.3Hz,1″−H)、5.22(1H,d,J=1.8Hz,′−H)、5.21(1H,d,J=3.7Hz,1′−H)、4.50(1H,d,J=3.1Hz,4′−H)、4.32(1H,q,J=6.7Hz,5′−H)、4.27(1H,d−d,J=3.7,10.4Hz,2′−H)、4.21(1H,d−d,J=3.4,6.7Hz,3″−H)、4.18(1H,d−d,J=1.8,11.0Hz,5−CHのH)、4.15(1H,br−s,2−H)、4.10(1H,d−d,J=5.8,11.0Hz、5−CHのH)、3.99(1H,d−d,J=3.1,10.4Hz,3′−H)、3.90(1H,m,5−H)、3.82(1H,m,3−H)、8.82(1H,m,4−H),3.54(1H,br−t,J=7.3Hz,2″−H)、1.11(3H,d,J=6.7Hz,5′−CH3のH3)
糖組成 L−フコース:不飽和D−グルクロン酸:D−マンノース=1:1:1(各1分子)
硫酸塩 3分子(L−フコースの2位と4位及びD−マンノースの6位)
なお、1H−NMRにおけるピークの帰属の番号は下記式(V)の通りである
(c)の物性
分子量 1128
MS m/z 1127〔M−H+〕-
MS/MS m/z 97〔HSO4〕-、175〔不飽和D−グルクロン酸−H+〕-、225〔L−フコース硫酸−H2O−H+〕-、243〔L−フコース硫酸−H+〕-、371〔M−不飽和D−グルクロン酸−L−フコース−SO3−2H+〕2-、405(硫酸化L−フコースとD−マンノースが結合したもの−H+〕-、721〔M−D−マンノース−L−フコース−SO3−H2O−H+〕-
1H−NMR(D2O)
δ5.69(1H,d,J=3.7Hz,(4)″−H)、5.34(1H,s,(1)−H)、5.16(1H,s,1−H)、5.10(1H,d,J=4.0Hz,(1)′−H)、5.50(1H,d,J=3.7Hz,1′−H)、4.93(1H,d,J=6.4Hz,(1)″−H)、4.50(1H,d−d,J=3.4,10.7Hz,3′−H)、4.47(1H,d−d,J=3.4,10.4Hz,(3)′−H)、4.39(1H,d,J=7.9Hz,1″−H)、4.33(1H,br−s,(2)−H)、4.14(1H,m,2−H)、4.12(1H,m,(3)″−H)、4.12(1H,m,5′−H)、4.12(1H,m,(5)′−H)、4.04(1H,m,4′−H)、4.03(1H,m,(4)′−H),3.85(1H,m,2′−H)、3.85(1H,m,(2)′−H)、3.82(1H,m,3−H)、3.82(1H,m,(3)−H)、3.73(1H,m,4−H)、3.73(1H,m,5−H)、3.73(1H,m,(4)−H)、3.70(2H,m,5−CH2のH2)、3.70(2H,m,(5)−CH2のH2)、3.67(1H,m,5″−H)、3.62(1H,m,4″−H)、3.62(1H,m,(2)″−H)、3.62(1H,m,(5)−H)、3.51(1H,t,J=8.9Hz,3″−H)、3.28(1H,t,J=7.9Hz,2″−H)、1.09(3H,d,J=6.7Hz,(5)′−CH3のH3)、1.07(1H,d,J=6.7Hz,5′−CH3のH3)
糖組成 L−フコース:不飽和D−グルクロン酸:D−グルクロン酸:D−マンノース=2:1:1:2(L−フコースとD−マンノース各2分子と不飽和D−グルクロン酸とD−グルクロン酸各1分子)
硫酸塩 2分子(各L−フコースの3位)
なお、1H−NMRにおけるピークの帰属の番号は下記式(VI)の通りである。
得られたフコース硫酸含有多糖−Uに上記エンド型フコイダン分解酵素を作用させると反応の進行と共に脱離反応が起こって280nmの吸光度が増加するが、脱離反応の生成物となる不飽和ヘキスロン酸基が主要反応生成物のすべてにることから得られたフコース硫酸含有多糖−Uの分子内にヘキスロン酸とマンノースが交互に結合した糖鎖の存在が示唆された。得られたフコース硫酸含有多糖−Uの構成糖の多くはフコースであるためフコース硫酸含有多糖−Uは一般の多糖より酸に分解され易い。一方、ヘキスロン酸やマンノースの結合は比較的酸に強いことが知られている。ガゴメ昆布のフコース硫酸含有多糖混合物の分子内に存在するヘキスロン酸とマンノースが交互に結合している糖鎖中のヘキスロン酸の種類を明らかにするためにカーボハイドレート リサーチ(Carbohydrate Research)、第125巻、第288〜290頁(1984)の方法を参考にして、まずフコース硫酸含有多糖混合物を0.3Mのシュウ酸に溶解し100℃、3時間処理したものを分子量分画し、分子量が8000以上の画分を集め、更に陰イオン交換樹脂により吸着分を集めた。この物質を凍結乾燥後4Nの塩酸で酸加水分解し、pH8に調整後、PA化し、HPLCによりウロン酸の分析を行った。なおHPLCの条件は下記によった。
装置:L−6200型(日立製作所製)
カラム:パルパックタイプN(4.6mm×250mm)(宝酒造社製)
溶離液:200mM酢酸−トリエチルアミン緩衝液(pH7.3):アセトニトリル=25:75
検出:蛍光検出器 F−1150(日立製作所製)にて励起波長320nm、蛍光波長400nmで検出
流速:0.8ml/分
カラム温度:40℃
なお、PA化ヘキスロン酸の標準物質はグルクロン酸はシグマ社製、ガラクツロン酸は和光純薬社製、イズロン酸はシグマ社製の4−メチルウンベリフェリルα−L−イズロニドを加水分解したもの、マンヌロン酸及びグルロン酸はアクタ・ケミカ・スカンヂナヴィカ(Acta Chemica Scandinavica)、第15巻、第1397〜1398頁(1961)記載の方法に従い、和光純薬社製のアルギン酸を加水分解後陰イオン交換樹脂で分離したものをPA化することにより得た。
この結果、上記フコース硫酸含有多糖混合物の糖鎖中に含まれるヘキスロン酸はグルクロン酸のみであることが判明した。
更に上記糖鎖の加水分解物中のグルクロン酸を陰イオン交換樹脂によりD−マンノースと分離し凍結乾燥後その比旋光度を測定したところ右旋性でありグルクロン酸はD−グルクロン酸であることが判明した。
また、ガゴメ昆布由来のフコース硫酸含有多糖混合物をあらかじめ上記のエンド型フコイダン分解酵素で処理したものについても上記と同様にシュウ酸で酸加水分解したが、D−グルクロン酸とD−マンノースが交互に結合したポリマーは検出されなかった。このことから、上記のエンド型フコイダン分解酵素が脱離反応により切断するフコース硫酸含有多糖の骨格構造はD−グルクロン酸とD−マンノースが交互に結合した構造を持つことが判明した。
更に、D−グルクロン酸とD−マンノースのそれぞれの結合位置とグリコシド結合のアノメリック配置を調べるため、シュウ酸分解により得られたポリマーをNMR分析した。
ポリマーのNMRの測定結果を以下に示す。但し、1H−NMRでの化学シフト値はトリエチルアミンのメチル基の化学シフト値を1.13ppmに、13C−NMRではトリエチルアミンのメチル基の化学シフト値を9.32ppmとして表した。
1H−NMR(D2O)
δ5.25(1H,br−s,1−H)、4.32(1H,d,J=7.6Hz,1′−H)、4.00(1H,br−s,2−H)、3.71(1H,m,5′−H)、3.69(1H,m,5−CHのH)、3.68(1H,m,3−H)、3.63(1H,m,5−CHのH)、3.63(1H,m,4′−H)、3.57(1H,m,4−H)、3.54(1H,m,3′−H).、3.53(1H,m,5−H)、3.25(1H,t,J=8.5Hz、2′−H)13C−NMR(D2O)
δ175.3(5′−COOHのC)、102.5(1′−C)、99.6(1−C)、78.5(2−C)、77.9(4′−C)、77.0(3′−C)、76.7(5′−C)、73.9(5−C)、73.7(2′−C)、70.6(3−C)、67.4(4−C)、61.0(5−CH2OHのC)
なお、ピークの帰属の番号は下記式(VII)の通りである:
D−グルクロン酸の1位の立体配置はそのビシナル結合定数が7.6Hzであることからβ−D−グルクロン酸であると決定した。
また、マンノースの1位の立体配置はその化学シフト値から5.25ppmであることからα−D−マンノースであると決定した。
構成糖の結合様式は1H検出異極核検出法であるHMBC法を用いて行った。1H−NMRの帰属にはDQF−COSY法及びHOHAHA法を、13C−NMRの帰属にはHSQC法を用いた。
HMBCスペクトルにより1−Hと4′−Cの間及び4′−Hと1−Cの間、1′−Hと2−Cの聞及び2−Hと1′−Cの間にそれぞれクロスピークが認められた。このことからD−グルクロン酸はβ結合でD−マンノースの2位に、D−マンノースはα結合でD−グルクロン酸の4位にそれぞれ結合していることが明らかとなった。
上記の結果を考え併せると、(a)は、還元末端残基であるD−マンノースに不飽和D−グルクロン酸と、硫酸基が結合したL−フコースが結合した構造を持つこと、(b)は硫酸基が結合した還元末端残基であるD−マンノースに不飽和D−グルクロン酸と、2個の硫酸基が結合したL−フコースが結合した構造を持つこと、(c)は還元末端残基であるD−マンノースにD−グルクロン酸と、硫酸基が結合したL−フコースが結合し、そのD−グルクロン酸にD−マンノースが結合し、更にそのD−マンノースに不飽和D−グルクロン酸と、硫酸基が結合したL−フコースが結合した構造を持つことが判明した。
以上、得られたフコース硫酸含有多糖−Uは、D−グルクロン酸とD−マンノースが交互に結合した構造を持ち、少なくとも1つ以上のD−マンノースにL−フコースが結合している構造を有する。
また、下記一般式(VIII)で表される部分構造を有する(但し、式中の少なくとも1つのアルコール性水酸基は硫酸エステル化しており、またnは1以上の整数を表す)。
以上フコース硫酸含有多糖−Fと分離され、純化されたフコース硫酸含有多糖−Uが提供される。本発明で使用するフコース硫酸含有多糖−Uは構成糖としてウロン酸を含有し、フラボバクテリウム sp.SA−0082(FERM BP−5402)の生産するフコイダン分解酵素により低分子化し、少なくとも上記式(I)、(II)、(III)で表される化合物より選択される1種以上の化合物が生成する。その分子量、分子量分布、糖組成は本発明で使用するフコース硫酸含有多糖−Uをなんら限定するものではなく、任意の分子量、分子量分布のフコース硫酸含有多糖−Uを調製することができ、糖組成等の理化学的性質が明確なフコース硫酸含有多糖−Uを提供することができる。
このフコース硫酸含有多糖−Uを化学的、物理的、酵素学的に処理することによりその分解物を調製することができ、例えば上記式(I)、(II)、(III)等の構造を有するオリゴ糖も本発明に使用することができる。
本発明に使用するフコース硫酸含有多糖及び/又はその分解物はウイルスに高い親和性を有し、これらのフコース硫酸含有多糖及び/又はその分解物をウイルス吸着担体として利用することにより、ウイルスの精製やウイルスの除去が簡便に達成される。
フコース硫酸含有多糖及び/又はその分解物を含有するウイルス吸着担体としてはフコース硫酸含有多糖及び/又はその分解物の有効量を含有すれば良く、使用する目的により、任意のウイルス吸着担体を作製すれば良い。
本発明のウイルス吸着担体をウイルスを含有する試料に接触させ、フコース硫酸含有多糖及び/又はその分解物に目的のウイルスを吸着させた後、フコース硫酸含有多糖及び/又はその分解物を選択的に分別することにより、ウイルスの除去又は精製を簡便に行うことができる。ウイルス吸着後のフコース硫酸含有多糖及び/又はその分解物の分別方法としては、例えば前述のフコース硫酸含有多糖及び/又はその分解物の分別方法が使用できる。こうして試料からフコース硫酸含有多糖及び/又はその分解物を分別することにより、試料からのウイルスの除去が達成される。ウイルスの精製が目的の場合には、分別されたフコース硫酸含有多糖及び/又はその分解物から吸着されたウイルスを適当な方法で溶離、回収すればよい。
また、本発明のウイルス吸着担体は、適当な修飾を施されたフコース硫酸含有多糖及び/又はその分解物に適当な修飾を施されたものを含有したものでも良い。たとえば、ビオチンを結合させたフコース硫酸含有多糖及び/又はその分解物を含有するウイルス吸着担体を使用する場合には、試料との分別操作にアビジンを固定化した担体を用いることにより、ウイルスを吸着したフコース硫酸含有多糖及び/又はその分解物をアビジン固定化担体上に回収することができる。なお、フコース硫酸含有多糖及び/又はその分解物の修飾方法としては、公知の化学的、あるいは酵素的修飾方法を使用することができる。
一方、フコース硫酸含有多糖及び/又はその分解物を担体に固定化したウイルス吸着担体を作製することができる。特に不溶性の担体を用いて作製されたウイルス吸着担体は特別な分別操作を行うことなく液体試料や空気中などのウイルスの精製、除去に用いることができる。
フコース硫酸含有多糖及び/又はその分解物の固定化に用いられる担体には特に制限はなく、たとえばゲル、あるいは粒子状の担体を使用することができる。なお、粒子状の担体としては粒子の表面積の大きな多孔性のものが好適である。また薄膜状支持体や中空糸状支持体を固定化用担体として用いても良い。固定化に用いる担体の材質はアガロース、セルロース、デキストラン等の多糖類、ポリアクリルアミド、アクリル酸ポリマー、スチレンジビニルベンゼンボリマー、ポリメタクリレート等の合成高分子、シリカゲル、ガラス等の無機高分子等から使用の目的、方法に応じて適当なものを選択すればよい。
フコース硫酸含有多糖及び/又はその分解物の固定化は、利用する担体に応じ、常法(例えば、「新生化学実験講座・タンパク質I」第227〜287頁、1990年、東京化学同人発行等)に従って実施されるが、例えば、多糖類ゲルを固定化用担体として用いる場合には、多糖類ゲルの有する導入基にフコース硫酸含有多糖及び/又はその分解物中の官能基を共有結合させることにより行われる。
多糖類ゲルへのフコース硫酸含有多糖及び/又はその分解物の固定化に当っては、フコース硫酸含有多糖及び/又はその分解物中の官能基との結合に適した導入基を有する多糖類ゲルを選択することが必要である。例えば、フコース硫酸含有多糖及び/又はその分解物中に存在するカルポキシル基を利用する場合には導入基としてω−アミノアルキル基、あるいはチオール基を有する多糖類ゲルを、また、水酸基を利用する場合には導入基としてエポキシ基を有する多糖類ゲルを使用することにより固定化を実施できる。多糖類ゲルが適当な導入基を有していない場合には、まず公知方法により適当な導入基を付加したうえで固定化に使用すればよい。
こうしてフコース硫酸含有多糖及び/又はその分解物が共有結合によって担体に固定化されたウイルス吸着担体は物理、化学的に安定であり、ウイルス吸着操作、および/あるい溶出操作時においてフコース硫酸含有多糖及び/又はその分解物の試料中への脱離は見られない。このため該担体は、例えば医薬品の製造等へも支障なく使用することができる。
以上のようにして作製されたフコース硫酸含有多糖及び/又はその分解物を含有するウイルス吸着担体を用いてウイルスの精製、あるいはその除去を行うことができる。本発明の方法に適用されるウイルス含有試料としては、例えばウイルス感染培養細胞の上清や細胞の破砕物、血液や血清のような生体物質、医薬品、飲料水等の液体試料が挙げられる。また、気体、例えば空気中に浮遊するウイルスを本発明の方法によって除去することも可能である。
本発明のウイルス吸着担体は各種のウイルスに対して結合能を有しており、たとえばレトロウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス(AAV)、インフルエンザウイルス、ヘルペスウイルス、バキュロウイルス等のウイルスを本発明の方法により精製、あるいは除去することが可能である。
以上、本発明のフコース硫酸含有多糖及び/又はその分解物を含有するウイルス吸着担体はウイルス除去用の担体、ウイルス精製用の担体として有用である。
本発明の方法はウイルスの精製方法として有用であり、研究を目的として、あるいはワクチンの製造のために高純度のウイルスが必要とされる場合に効果を発揮する。ウイルス濃度の希薄な試料ではウイルスの濃縮手段としても重要である。また、細胞の培養に用いられる培地のような研究用試薬や医薬品などのようにウイルスの混在が望ましくないものについては、ウイルスの除去に本発明の方法を利用することができる。更に、試料中のウイルスの検出を行う場合には、本発明の方法を利用したウイルスの濃縮操作を組み合わせることにより、検出感度を向上させることもできる。
試料中のウイルスを検出する際、その感度を決定する最大の要因は試料中のウイルスの濃度である。本発明を利用することにより、従来法に比べて高感度なウイルスの検出が可能になる。すなわち、検出対象となる試料中のウイルスを本発明のウイルス吸着担体上に捕集した後、担体をそのまま、あるいは担体上のウイルスを適当な操作で回収した後にウイルス検出操作に供することにより、ウイルスを高感度に検出することができる。ウイルス検出の対象となる試料には特に限定はなく、組織、血液、尿といった生体由来試料のほか、医薬品、食品、飲料水、排水、空気、あるいは自然環境中の様々な試料について本発明の方法を適用できる。また、ウイルスの検出方法にも特に限定はなく、検出しようとするウイルスを認識する抗体を使用する方法や、ウイルスの持つ核酸を検出する方法などを適宜選択して使用すればよい。例えば、本発明のウイルス吸着担体を含有する溶液でうがいをした後、うがい液よりウイルス吸着担体を回収し、該担体、あるいは該担体より溶離、回収された濃縮ウイルス試料をウイルス検出操作に用いることにより、口腔中に存在するウイルスの有無やその量を調べることができる。
ウイルスの精製、例えばフコース硫酸含有多糖及び/又はその分解物を多糖類ゲルに固定化して作製されたウイルス吸着担体を用いたカラムクロマトグラフィー法による液体試料中のウイルスの精製は以下のようにして行われる。まず上記の担体を充てんしたカラムを調製し、適当な開始緩衝液を用いてカラムを平衡化する。次にウイルスを含有する試料を上記カラムに負荷した後、開始緩衝液等を用いて非吸着物質を洗浄する。必要であれば吸着したウイルスが溶離しない条件で緩衝液の組成を変化させてカラムを洗浄し、ウイルス以外の吸着物を減らすことができる。その後に適当な溶出操作、例えば高濃度の塩を含む緩衝液の使用により吸着したウイルスを溶出液中に回収する。ゲルあるいは粒子状のウイルス吸着担体は上記のカラムクロマトグラフィー法の他、バッチ法による精製にも利用できる。また、薄膜状、あるいは中空糸状支持体を用いて作製されたウイルス吸着担体はそれぞれの担体に適した使用方法で、例えば適当な装置に装着した上で使用することができる。
本発明のウイルス精製方法は簡便、かつ生理的条件に近い状態でのウイルスの精製、及び除去を可能にする。
従来のウイルス精製方法としてはポリエチレングリコールや硫酸アンモニウムを用いた沈殿法があるが、この方法ではウイルスの感染能の低下が大きな問題であり、特に腎症候性出血熱(HFRS)ウイルスでは感染能力が全く失われてしまう。また超遠心分離法や限外ろ過膜を用いた膜濃縮によるウイルス精製法も知られているが、これらの方法は操作が煩雑であり、また、ある程度の感染能の低下は免れない。本発明の方法では試料中のウイルスを不活化させることなく精製、濃縮することが可能となり、ワクチンの製造やウイルスに関する研究を行う上で有用である。
ウイルスの精製に利用可能なクロマトグラフィー用担体としては、硫酸化セルロースが知られており、日本脳炎ウイルス(特公昭62−33879号公報)、インフルエンザウイルス(特公昭62−30752号公報)、狂犬病ウイルス(特公昭62−30753号公報)、レトロウイルス(米国特許5447859号公報)、アデノ随伴ウイルス[ヒューマン ジーン セラピー(Human Gene Therapy)、第7巻、第507〜513頁(1996)]等の精製に利用できることが知られている。しかしながら、下記実施例に示すように本発明のウイルス吸着担体は硫酸化セルロースに比べて高いウイルス吸着容量を有している。また、担体上に存在する硫酸基当たりのレトロウイルス吸着量を比較した場合も本発明のウイルス吸着担体は硫酸化セルロースに比較して優れている。このため、本発明のウイルス吸着担体を使用することにより、より効率的にウイルスの精製、濃縮、あるいは除去を行うことができる。さらに、アデノウイルスは硫酸化セルロースには吸着しないが[バイオ/テクノロジー(Bio/Technology)、第11巻、第173〜178頁(1993)]、本発明のウイルス吸着担体はアデノウイルスに対しても吸着能を有しており、より広範なウイルス種に対して適用することができる。
また、本発明のウイルス吸着担体を利用することにより、試料中の有効成分を損なうことなく混在するウイルスを除去することも可能であり、医薬品等の製造において特に有用である。
実施例
以下に本発明を実施例をもって更に具体的に示すが、本発明が以下の実施例の範囲のみに限定されるものではない。
参考例1
ガゴメ昆布のフコース硫酸含有多糖混合物の抽出
ガゴメ昆布を十分乾燥後、2kgを自由粉砕機(奈良機械製作所製)により粉砕し、得られた乾燥粉末を9リットルの80%エタノールに懸濁し80℃、2時間処理した。処理後ろ紙によりろ過し残渣を得た。この残渣に対して上記エタノール洗浄、ろ過という操作を3回繰り返しエタノール洗浄残渣を得た。この残渣を36リットルの0.2M酢酸カルシウム溶液に懸濁後、95℃、2時間処理し、ろ過した。残渣を4リットルの0.2M酢酸カルシウム溶液で洗浄し、ガゴメ昆布のフコース硫酸含有多糖混合物抽出液36リットルを得た。
参考例2
ガゴメ昆布のフコース硫酸含有多糖混合物の精製
参考例1で得られたろ液に5%の塩化セチルピリジニウムをそれ以上沈殿が生じなくなるまで添加し遠心分離により沈殿を集めた。この沈殿を3リットルの0.4M食塩水に懸濁後遠心分離し、洗浄した。この洗浄操作を3回繰り返した後沈殿に1リットルの4M食塩水を添加しよくかくはん後エタノールを80%となるように添加し、かくはん後遠心分離により沈殿を得た。この沈殿を80%エタノール中に懸濁し遠心分離するという操作を、上清中の260nmの吸光度が0になるまで繰り返した。この沈殿を2Mの食塩水3リットルに溶解し、不溶物を遠心分離により除去後、2Mの食塩水で平衡化した100mlのDEAE−セルロファインA−800(生化学工業社製)を添加し、かくはん後、加えた樹脂をろ過により除去した。ろ液を2Mの食塩水で平衡化したDEAE−セルロファインA−800カラムにかけ非吸着分を排除分子量10万以下のホロファイバーを備えた限外ろ過装置で限外ろ過し、着色性物質及び食境を完全に除去後、遠心分離及びろ過により不溶性物質を除去し、凍結乾燥した。凍結乾燥フコース硫酸含有多糖混合物の重量は90gであった。
参考例3
フコース硫酸含有多糖−Fの製造方法
参考例2で得られたフコース硫酸含有多糖混合物を1.2g秤量し、1.5Mの塩化ナトリウム溶液に終濃度0.2%となるように溶解し、1.25%の塩化セチルピリジニウムの1.5M塩化ナトリウム溶液をこれ以上沈殿が生じなくなるまで添加した。生じた沈殿を遠心分離により集め、この沈殿を500mlの1.5M食塩水に懸濁後遠心分離し、洗浄した。この洗浄操作を8回繰り返した後沈殿に1リットルの4M食塩水を添加しよくかくはん後エタノールを80%となるように添加し、かくはん後遠心分離により沈殿を得た。この沈殿を80%エタノール中に懸濁し遠心分離するという操作を、上清中の260nmの吸光度が0になるまで繰り返した。この沈殿を2Mの食塩水500mlに溶解し、不溶物を遠心分離により除去後、2Mの食塩水で平衡化した1mlのDEAE−セルロファインA−800(生化学工業社製)を添加し、かくはん後、加えた樹脂をろ過により除去した。ろ液を2Mの食塩水で平衡化したDEAE−セルロファインA−800カラムにかけ非吸着分を排除分子量10万以下のホロファイバーを備えた限外ろ過装置で限外ろ過し、着色性物質及び食塩を完全に除去後、遠心分離及びろ過により不溶性物質を除去し、凍結乾燥した。凍結乾燥フコース硫酸含有多糖−Fの重量は710mgであった。
参考例4
フコース硫酸含有多糖−Fの培養的精製方法
参考例2で得られたフコース硫酸含有多糖は2種のフコース硫酸含有多糖の混合物であるが、これを60g秤量し、20リットルの人工海水に溶解後ペプトン200gと酵母エキス4gを加え、30リットル容のジャーファーメンターに入れ滅菌後、前記WO96/34004号公報記載のフラボバクテリウム sp.SA−0082株(FERM BP−5402)を植菌して25℃、24時間培養した。培養液を遠心分離し菌体を除去後、排除分子量10万以下のホロファイバーを備えた限外ろ過装置で限外ろ過し、低分子性物質を完全に除去後、遠心分離及びろ過により不溶性物質を除去し、凍結乾燥した。凍結乾燥フコース硫酸含有多糖−Fの重量は36gであった。
参考例5
フコース硫酸含有多糖−U、フコース硫酸含有多糖−Fの分別精製
参考例2記載のフコース硫酸含有多糖混合物の凍結乾燥物を7g秤量し、0.2Mの塩化カルシウムに溶解した。次に、これを0.2Mの塩化カルシウムで平衡化した4000mlのDEAE−セファロースFF(ファルマシア社製)のカラムにかけ、0.2Mの塩化カルシウムで十分洗浄し、次に、0〜4Mの塩化ナトリウムのグラジェントで溶出を行った。溶出面分のうち塩化ナトリウム濃度が0.05〜0.8Mの画分を集め透析により脱塩後凍結乾燥し、フコース硫酸含有多糖−Fと分離されたフコース硫酸含有多糖−Uを2.1g得た。
また、上記溶出画分のうち塩化ナトリウム濃度が0.9〜1.5Mの画分を集め透析により脱塩後凍結乾燥し、フコース硫酸含有多糖−Uと分離されたフコース硫酸含有多糖−Fを4.7g得た。
参考例6
ガゴメ昆布を十分乾燥後、2kgを自由粉砕機(奈良機械製作所製)により粉砕し、得られた乾燥粉末を9リットルの80%エタノールに懸濁し80℃、2時間処理した。処理後ろ紙によりろ過し残渣を得た。この残渣に対して上記エタノール洗浄、ろ過という操作を3回繰り返しエタノール洗浄残漣を得た。この残渣を36リットルの0.2M酢酸カルシウム溶液に懸濁後、95℃、2時間処理し、ろ過した。残渣を4リットルの0.2M酢酸カルシウム溶液で洗浄し、ガゴメ昆布のフコース硫酸含有多糖混合物抽出液36リットルを得た。
このろ液を排除分子量10万の限外ろ過膜を装着した限外ろ過器により2リットルに濃縮し、次に、終濃度が1.5Mとなるように食塩を添加し5%の塩化セチルピリジニウムをこれ以上沈殿が生じなくなるまで添加した。生じた沈殿を遠心分離により除去した。得られた上清を限外ろ過により1リットルに濃縮し、4リットルのエタノールを添加し、生じた沈殿を遠心分離により集めた。この沈殿に100mlの4M食塩水を添加しよくかくはん後エタノールを80%となるように添加し、かくはん後遠心分離により沈殿を得た。この沈殿を80%エタノール中に懸濁し遠心分離するという操作を、上清中の260nmの吸光度が0になるまで繰り返した。この沈殿を2Mの食塩水2リットルに溶解し、不溶物を遠心分離により除去後、2Mの食塩水で平衡化した50mlのDEAE−セルロファインA−800(生化学工業社製)を添加し、かくはん後、加えた樹脂をろ過により除去した。ろ液を2Mの食塩水で平衡化したDEAE−セルロファインA−800カラムにかけ非吸着分を排除分子量10万以下のホロファイバーを備えた限外ろ過装置で限外ろ過し、着色性物質及び食塩を完全に除去後、遠心分離及びろ過により不溶性物質を除去し、凍結乾燥した。凍結乾燥したフコース硫酸含有多糖−Uの重量は15gであった。
またこのフコース硫酸含有多糖−Uは、前記エンド型フコイダン分解酵素を作用させると上記式(I)、(II)、及び(III)で表されるオリゴ糖が生じた。
実施例1
FF−セルロファインの調製
参考例3記載のフコース硫酸含有多糖−F 840mgを50g(湿重量)のアミノセルロファイン(生化学工業社製)とともに500mgのNaCNBH4を含む80mlの反応溶液(0.2Mリン酸緩衝液、pH7.0、0.1M NaCl)に添加し、60℃、60時間の縮合反応を行った。得られた反応生成物を純水で洗浄した後、420mgのグルコースと210mgのNaCNBH4を含む80mlの反応溶液(0.2Mリン酸緩衝液、pH7.0、0.1M NaCl)を加えてさらに60℃、60時間縮合反応を行った。得られた反応生成物を3M NaCl、次いで純水で洗浄した。以下この反応生成物をFF−セルロファインと呼ぶ。
上記のFF−セルロファインは38μmol/mlの硫酸基を有していた。
実施例2
(1)ウイルス上清液の調製
マウス白血病ウイルス由来の組換えレトロウイルスを含有する上清液は以下のようにして調製した。レトロウイルスプラスミド、PM5neoベクター〔エクスペリメンタル・ヘマトロジー(Exp. Hematol.)、第23巻、第630〜638頁(1995)〕を含有するGP+E86産生細胞(ATCC CRL−9642)は10%ウシ胎児血清(FCS、ギブコ社製)並びに50単位/mlのペニシリン及び50μg/mlのストレプトマイシン(共にギブコ社製)を含有するダルベッコ改変イーグル培地(DMEM、JRHバイオサイエンス社製)中で培養した。なお、実施例2〜4において使用したDMEMはすべて50単位/mlのペニシリン及び50μg/mlのストレプトマイシンを含んだものである。ウイルス含有上清液は上記産生細胞をセミコンフルエントに生育させたプレートに10%FCSを含有するDMEMを添加し、一夜培養した後に採集して調製した。採集した培地上清を0.45μmのフィルター(ミリポア社製)でろ過してレトロウイルス上清液とし、使用するまでは−80℃で保存した。
上清液のウイルス力価はNIH/3T3細胞(ATCC CRL−1658)を使用して標準的な方法〔ジャーナル・オブ・ウイロロジー(J. Virol.)、第62巻、第1120〜1124頁(1988)〕に従って測定した。すなわち、6ウエルの組織培養プレートの1ウエルあたりに2000個のNIH/3T3細胞を含むDMEMを添加し、一夜培養させた後、系列希釈したウイルス上清液と終濃度7.5μg/mlのヘキサジメトリン・ブロミド(ポリブレン:アルドリッチ社製)とを各ウエルに加えた。これを37℃で24時間インキュベートした後、培地をG418(終濃度0.75mg/ml、ギブコ社製)を含有するものと交換してさらにインキュベートを続けた。10〜12日後に生育したG418耐性(G418r)コロニーをクリスタルバイオレットで染色しその数を記録した。各ウエルのコロニー数と添加されたウイルス上清液の希釈倍率をもとに上清1ml当りに含まれる感染性粒子数(cfu/ml)を算出し、力価を求めた。
(2)FF−セルロファインを用いたレトロウイルスの精製
実施例2で調製したFF−セルロファイン3mlを脱気し、ディスポーザブルカラム(セパコールミニ、生化学工業社製)に充てんしてベッド体積3mlのカラムを作製した。PBS(リン酸緩衝生理食塩水)でカラムを十分に平衡化した後、実施例1で調製したレトロウイルス上清液3mlをカラムにアプライした。次にカラムを30mlのPBSで洗浄し、溶出緩衝液A(360mM NaClを含むPBS)15ml、溶出緩衝液B(860mM NaClを含むPBS)15ml、溶出緩衝液C(1860mM NaClを含むPBS)15mlを順に添加して吸着物質を溶出させた。カラムからの溶出液はウイルス上清液のアプライ時のものを含めて3mlずつ分取した。
分取された溶出液について280nmにおける吸光度を測定すると共に、そこに含まれるウイルス量の測定を行った。ウイルス量の測定には実施例1に記載のウイルス力価の測定法を用いた。分取された溶出液より200μlを取り、これに800μlのDMEM、及び終濃度7.5μg/mlのヘキサジメトリン・ブロミドを加えたものを系列希釈したウイルス上清液の代りに用いて、上記同様の操作で出現するG418耐性コロニーの数を調べた。
得られた結果を図1に示す。ウイルス上清液に含まれる280nmに吸収を持つ物質のほとんどはカラムへの添加直後に溶出されているが、ウイルスのほとんどは溶出緩衝液Aで溶出を行ったところで溶出さ討ている。このことはウイルスがFF−セルロファインカラムに特異的に吸着し、これによって試料中の多くの夾雑物との分離が可能であることを示している。
(3)FF−セルロファイン、硫酸化セルロファインのレトロウイルス吸着能の比較
FF−セルロファインと硫酸化セルロースとの性能を比較を以下に示す操作により行った。なお、硫酸化セルロースとしては硫酸化セルロファイン(生化学工業社製)を使用した。この硫酸化セルロファインは8μmol/mlの硫酸基を有していた。
FF−セルロファインと硫酸化セルロファインのそれぞれを用いて実施例2−(2)に記載のレトロウイルスの精製操作を行った。ただし溶出緩衝液B、およびCによる溶出操作は省略した。結果を図2に示す。FF−セルロファインカラムを用いた場合には非吸着画分(素通り、およびPBS洗浄による溶出画分)にはウイルスが検出されないが、硫酸化セルロファインではこの面分にウイルスの漏出が見られる。また、カラムに吸着した後、溶出緩衝液Aにより回収されるウイルス量、および両担体に存在する硫酸基当りのウイルス回収量を表1に示す。総回収ウイルス量、硫酸基当りの回収ウイルス量のどちらを比較した場合も、FF−セルロファインでの値が硫酸化セルロファインを上回っている。このことからFF−セルロファインは硫酸化セルロファインに比較して高いレトロウイルス吸着容量を有していることがわかる。
実施例3
(1)組換えアデノ随伴ウイルスの作製
以下に示す操作に従い、レポーター遺伝子として大腸菌のlacZ遺伝子を含有する組換えアデノ随伴ウイルスを作製した。アデノ随伴ウイルス(AAV)ゲノム全長を含むプラスミドpAV1〔ATCC No.37215、ジーン(Gene)第23巻、第65〜73頁(1983)参照〕にはベクター(pA11P)に由来する2カ所のXbaI部位が存在する。まずこれらを除くためにpAV1をXbaI(宝酒造社製)で消化し、DNAブランティングキット(宝酒造社製)を用いて末端を平滑化した後、ライゲーションキット(宝酒造社製)を用いてセルフ−ライゲーションさせた。こうして得られた組換えプラスミド(pA11P由来のXbaI−XbaI小断片が除かれたもの)について、AAVゲノム上のタンパクをコードする領域と、末端配列(ITR)とを容易に分離できるようにXbaIリンカーの導入を行った。すなわち、上記のプラスミドをNcoI(宝酒造社製)で部分消化した後、配列表の配列番号1で示される塩基配列を有するXbaIリンカーと混合してライゲーションを行った。得られたプラスミドのうち、AAVゲノムの5’末端より4481塩基の位置に存在するNcoIサイトに上記のリンカーが挿入されたものを選び、さらにこのプラスミドをAvaII(宝酒造社製)で部分消化した後、配列表の配列番号2、3で示される塩基配列を有するオリゴヌクレオチドから構成されるXbaIリンカーと混合してライゲーションを行った。こうして作製されたプラスミドのうち、AAVゲノムの5’末端より190塩基の位置に存在するAvaIIサイトに上記のリンカーが挿入されたものを選んだ。こうして得られた、新たに2カ所のXbaIサイトが導入されたプラスミドをpAV1xと命名した。
プラスミドpAV1xをXbaIで消化してアガロースゲル電気泳動を行い、AAVゲノム由来のタンパクをコードする領域を含む約4.3kbのDNA断片と、AAV末端配列を含む約4.4kbのDNA断片とをそれぞれゲルより回収した。
プラスミドベクターpCMVβ(クロンテック社製)をEcoRI、HindIII(ともに宝酒造社製)で消化した後、アガロースゲル電気泳動を行ってCMV(サイトメガロウイルス)immediate early promoter、大腸菌lacZ遺伝子、およびSV40ポリAシグナルを含む約4.5kbのDNA断片を回収した。該断片、および上記のプラスミドpAV1x由来の約4.4kb DNA断片の末端をそれぞれDNAブランティングキットを用いて平滑化した後、これらを混合してライゲーションを行い、組換えプラスミドを作製した。該プラスミドをAAVベクタープラスミドと命名した。
一方、プラスミドベクターpUC18(宝酒造社製)をXbaIで消化し、これと上記のプラスミドpAV1x由来の約4.3kb DNA断片とを混合してライゲーションを行い、組換えプラスミドを作製した。該プラスミドをAAVヘルパープラスミドと命名した。
(2)アデノ随伴ウイルス上清液の調製
ヒトアデノウイルス5型(ATCC VR−5)を感染させた293細胞(ATCC CRL−1573)にAAVベクタープラスミド、およびAAVヘルパープラスミドをリン酸カルシウム法によって導入した。この細胞を10%FCSを含有するDMEM中で2〜3日間培養した後、遠心分離を行って上清を回収した。この上清を0.45μmのフィルター(ミリポア社製)でろ過した後、56℃、30分間の加熱処理によって混在するアデノウイルスを不活化し、これをアデノ随伴ウイルス上清液として以下の実験に用いた。
アデノ随伴ウイルス上清液のウイルス力価は以下の操作に従って測定した。コラーゲンコートされた24ウエルのプレート(岩城硝子社製)を用い、この1ウエルにつき15000個の293細胞と、10%FCSを含むDMEMとを添加して培養した。翌日、培地を除き、新たに10%FCSを含むDMEM 0.5mlと系列希釈したウイルス上清液0.1mlとを添加し、37℃で一晩培養した。プレートより培地を除き、PBSで洗浄した後、0.5%グルタルアルデヒド溶液を加えて室温で30分間放置し、細胞を固定した。プレートをPBSで洗浄し、X−Gal溶液(0.04%X−Gal、5mM K3Fe(CN)6、5mM K4Fe(CN)6、1mM MgCl2)を添加して37℃で一晩放置した。lacZ遺伝子上にコードされるβ−ガラクトシダーゼの活性によって青く染まっている細胞の数を顕微鏡下で計数し、これとウエルに添加されたウイルス上清液の希釈倍率をもとに上清1mlあたりに含まれる感染性粒子数(pfu/ml)を算出してこれを上清液の力価とした。
(3)FF−セルロファイン、および硫酸化セルロファインを用いたアデノ随伴ウイルスの精製
FF−セルロファイン、および硫酸化セルロファインカラムを脱気し、それぞれディスポーザブルカラム(セパコールミニ)に充てんしてベッド体積0.5mlのカラムを作製した。PBS(リン酸緩衝生理食塩水)でカラムを十分に平衡化した後、上記のアデノ随伴ウイルス上清液30mlづつをアプライした。次にカラムを9mlのPBSで洗浄し、溶出緩衝液A(360mM NaClを含むPBS)9ml、溶出緩衝液B(860mM NaClを含むPBS)9ml、溶出緩衝液C(1860mM NaClを含むPBS)9mlを順に添加して吸着物質を溶出させた。この際、溶出緩衝液A〜Cでの溶出液をそれぞれ3mlずつ分取した。
得られた溶出液に含まれるウイルス量を実施例3−(2)に記したアデノ随伴ウイルスの力価測定法に従って定量した。なお、このとき各溶出液の希釈は行わなかった。FF−セルロファイン、硫酸化セルロファインのどちらの溶出液でも、溶出緩衝液Aで溶出を行った最初の画分にのみウイルスが存在しており、該面分の感染細胞の数はそれぞれFF−セルロファインが126、硫酸化セルロファインが33であった。このことからFF−セルロファインは硫酸化セルロファインと比較してアデノ随伴ウイルスに対して高い吸着容量を有していることが明らかとなった。
実施例4
(1)アデノウイルス上清液の謂製
ヒトアデノウイルス5型を含有する上清液は以下のようにして調製した。5%FCSを含有するDMEM中で50〜70%コンフルエントとなるまで培養した293細胞(ATCC CRL−1578)にヒトアデノウイルス5型(ATCC VR−5)を感染させ、1%FCSを含むDMEMを添加して2〜8日間培養してウイルス粒子を生産させた。培養終了後、回収した293細胞を凍結融解を3回繰り返すことによって破砕し、さらに遠心分離を行って上清を回収した。こうして得られた上清をアデノウイルス上清液とし、使用するまでは−80℃で保存した。
アデノウイルス上清液のウイルス力価は、298細胞を使用したプラークアッセイによって測定した。すなわち、24ウエルの組織培養プレートを用い、この1ウエルにつき200000個の293細胞と、5%FCSを含むDMEMとを添加して2日間培養した。ウエルを1%のFCSを含むDMEMで洗浄した後、1%FCSを含むDMEMで系列希釈したウイルス上清液100μlを添加し、37℃で1.5時間培養し感染を成立させ、さらに1%FCSを含むDMEMを1ml/ウエル添加して培養を続けた。3〜5日間培養を続けた後に顕微鏡観察によりウエルあたりのプラークの数を数え、ウエルに添加されたウイルス上清液の希釈倍率をもとに上清1mlあたりに含まれる感染性粒子数(pfu/ml)を算出し、これを上清液の力価として用いた。本発明において使用されたアデノウイルス上清液は2.4×109pfu/mlの力価を有していた。
(2)FF−セルロファインへのアデノウイルスの吸着
FF−セルロファインカラムは実施例2−(2)と同様の方法で作製した。上記のアデノウイルス上清液を1×105pfu/mlになるようにPBSで希釈し、そのうちの1mlをカラムにアプライした。次にカラムを30mlのPBSで洗浄し、続いてカラムに吸着した物質を溶出緩衝液1(860mM NaClを含むPBS)15ml、および溶出緩衝液2(1500mM NaClを含むPBS)15mlを用いて順次溶出させた。
カラムからの溶出液を3mlづつ分取し、そのそれぞれについて実施例4−(1)に記載の方法でウイルス粒子数を計数した。その結果、非吸着面分(素通り、およびPBS洗浄による溶出画分)には1×104pfuのウイルス粒子が含まれており、アプライされたアデノウイルスの90%がカラムに吸着したことが示された。また、溶出緩衝液1による溶出画分には2×104pfu、溶出緩衝液2による溶出画分には3×103pfuのウイルス粒子がそれぞれ含まれていた。
一方、FF−セルロファインにかえて硫酸化セルロファインを用いてカラムを作製し、上記のとおりのウイルス吸着〜溶出の操作を行った。この場合には、アプライしたウイルスのほとんどすべてが非吸着画分に回収されており、アデノウイルスの硫酸化セルロファインへの吸着は見られなかった。
実施例5
(1)FF−セルロファインへのバキュロウイルスの吸着
オートグラファ・カリフォルニカ(Autographa carifornica)マルチヌクレオキャプシド核多角体病ウイルス(AcMNPV)について本発明のウイルス吸着担体への吸着を調べた。ウイルスの基本的な取り扱い操作はW H フリーマン アンド カンパニー社、1992年発行、オレイリー(O’Reilly)ら著、バキュロウイルス エクスプレッション ベクター(Baculovirus Expression Vector)に記載の方法に準じて行った。
実施例2−(2)に記載の方法に準じてベッド体積2mlのFF−セルロファインカラムを作製し、30mlのPBSでカラムを平衡化した。野生型AcMNPV高力価ストック(インビトロジェン社製)を1×107pfu/mlになるようにSF900II培地で希釈し、そのうちの1mlをカラムにアプライした。次にカラムを16mlのPBSで洗浄し、この際のカラムからの溶出液を4mlずつ分取した(このそれぞれを画分A〜Dとした)。さらに20mlのPBSでカラムを洗浄し、この溶出液を画分Eとした。次にカラムに吸着した物質を200mM NaClを含むPBS、300mM NaClを含むPBS、400mM NaClを含むPBS、700mM NaClを含むPBS、1M NaClを含むPBSそれぞれ4mlずつを用いて順次溶出した。なお、溶出操作に使用したPBSには終濃度0.2%のウシ血清アルブミン(BSA)を添加した。各NaCl濃度のPBSで回収された溶出液を分取し、それぞれを画分F〜Jとした。画分A〜Jより2mlずつを取り、それぞれをSF900II培地に対して透析した後、0.2μmのフィルターでろ過した。35mm径のウエルに3mlのTC 100培地(ギブコ社製)および1.5×105個/cm2の細胞密度のSf9M細胞[ウイスコンシン大学、ディーン モシャー(Deane Mosher)博士より恵与]を添加したものを準備し、このそれぞれに上記のろ液1mlずつを加えて培養した。また、ポジティブコントロールとして2.5×106pfuのウイルスを含む1mlのSF900II培地を加えたウエル、およびネガティブコントロールとして1mlのSF900II培地を加えたウエルを用意して同様に培養した。4、7、11日後にウエルを観察し、プラークの出現、およびプラーク内での多角体の形成からウイルス感染の有無を調べた。結果を表2に示す。表中、(+)はウイルスの感染が見られたことを、また(−)は感染が認められなかったことを示す。
表2に示されるように、培養7日後には画分I、Jのウエルのみにウイルス感染が認められたが11日後では画分A、G〜Jのウエルに感染が見られた。この結果より、バキュロウイルスはFF−セルロファインに吸着されること、およびカラムに吸着されたパキュロウイルスの大部分が700mM以上の濃度のNaClを含むPBSによって溶出されることが示された。
発明の効果
以上詳細に説明したように、本発明によれば、効果的なウイルスの精製又は除去を行うことができ、その各方面における利用は極めて有用である。
本発明の方法では試料中のウイルスを不活化させることなく精製、濃縮することが可能となり、ワクチン等のウイルス由来の生理活性物質、逆転写酵素等の製造やウイルスに関する研究を行う上で有用である。
また、試料中の有効成分を損なうことなく混在するウイルスを除去することも可能であり、ウイルスフリーの血液製剤等の医薬品などの製造において特に有用である。
またウイルスの簡便な濃縮が可能となり、ウイルスの検出等、診断の分野においても極めて有用である。
更に、本発明のウイルス吸着担体を使用することにより、空気中のウイルス除去が高度に可能になり、インフルエンザウイルスの予防、清浄空気の作成において特に有用である。
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配列:
Claims (8)
- ウイルス含有試料中のウイルスを、下記理化学的性質を有するガゴメ昆布由来のフコース硫酸含有多糖及び/又はその分解物に吸着させる工程を含有することを特徴とするウイルスの精製方法:
(1)構成糖:ウロン酸を実質的に含有しない;
(2)フラボバクテリウム(Flavobacterium)sp.SA−0082(FERM BP−5402)の生産するフコイダン分解酵素により実質上低分子化されない;
(3)1.5Mの塩化ナトリウムの存在下、塩化セチルピリジニウムにより沈殿を形成する。 - ウイルス含有試料中のウイルスを、下記理化学的性質を有するガゴメ昆布由来のフコース硫酸含有多糖及び/又はその分解物に吸着させる工程を含有することを特徴とするウイルスの除去方法:
(1)構成糖:ウロン酸を実質的に含有しない;
(2)フラボバクテリウム(Flavobacterium)sp.SA−0082(FERM BP−5402)の生産するフコイダン分解酵素により実質上低分子化されない;
(3)1.5Mの塩化ナトリウムの存在下、塩化セチルピリジニウムにより沈殿を形成する。 - フコース硫酸含有多糖及び/又はその分解物が担体に固定化されている請求項1又は2に記載の方法。
- ウイルスがレトロウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、バキュロウイルス、インフルエンザウイルス、ヘルペスウイルスより選択される請求項1〜3いずれか1項に記載の方法。
- ウイルス含有試料が液体又は気体である請求項1〜3いずれか1項に記載の方法。
- 担体がゲル状担体、粒子状担体、薄膜状支持体または中空糸状支持体である請求項3記載の方法。
- 下記理化学的性質を有するガゴメ昆布由来のフコース硫酸含有多糖及び/又はその分解物が共有結合により担体に固定化されているウイルス吸着担体:
(1)構成糖:ウロン酸を実質的に含有しない;
(2)フラボバクテリウム(Flavobacterium)sp.SA−0082(FERM BP−5402)の生産するフコイダン分解酵素により実質上低分子化されない;
(3)1.5Mの塩化ナトリウムの存在下、塩化セチルピリジニウムにより沈殿を形成する。 - 担体がゲル状担体、粒子状担体、薄膜状支持体または中空糸状支持体である請求項7記載のウイルス吸着担体。
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