JP4211336B2 - 感熱転写用インク、感熱転写用シート並びにこれを用いた感熱転写記録方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は感熱転写記録、特に色素転写型感熱転写記録用に使用される感熱転写用インク、感熱転写記録用シート、並びにこれを用いた感熱転写記録方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
色素転写型感熱転写記録は、ベースフィルム上に熱移行性の色素を含む色材層を有する感熱転写シートと、色素受容層を表面に有する受像シートとを重ね合わせ、感熱転写シートを加熱することにより感熱転写シート中の色素を受像シートに転写することにより記録を行う記録方法である。本記録方法は、加熱エネルギーの大きさにより色素の転写量を制御して、階調表現を行うことができるため、ビデオプリンターなどのフルカラー画像記録用に応用されている。
【0003】
このような色素転写型感熱転写記録においては、転写シート及び転写シート用のインキ組成物に用いられる色素が、転写記録のスピード、記録物の画質、保存安定性などに大きな影響を与えることから、この色素の特性が非常に重要であり、このような色素としては、以下のような条件を満たすことが必要である。
▲1▼ 熱記録ヘッドの作動条件で容易に昇華及び/又は熱拡散すること。
▲2▼ 熱記録ヘッドの作動条件で熱分解しないこと。
▲3▼ 色再現上、好ましい色相を有すること。
▲4▼ 分子吸光係数が大きいこと。
▲5▼ 熱、光、湿気、薬品などに対して安定であること。
▲6▼ 合成が容易であること。
▲7▼ インク化適性が優れていること。
▲8▼ 安全性上問題のないこと。
【0004】
従来、このような感熱転写記録に用いられる色素のうち、イエロー色素としては、本発明で使用される色素と同様の基本骨格を有する一般式(I)で表されるピラゾロンメチン系色素を、昇華方式の感熱転写記録用の色素として用いることが、特開平2−3450号公報、特開平4−265792号公報、特開平4−275184号公報等に示されている。また、特開平4−265792号公報には、ピラゾロンメチン系色素と特定のジシアノメチン系イエロー色素との併用系が、また、特開平4−275184号公報には、ピラゾロンメチン系色素と特定のピリドンアゾ系イエロー色素との併用系が記載されている。特開昭63−189289号公報にはキノフタロン系色素が、特開平1−225592号公報にはアミノピラゾールアゾ系色素が記載されている。
【0005】
【特許文献1】
特開平2−3450号公報
【特許文献2】
特開平4−265792号公報
【特許文献3】
特開平4−275184号公報
【特許文献4】
特開平4−265792号公報
【特許文献5】
特開平4−275184号公報
【特許文献6】
特開昭63−189289号公報
【特許文献7】
特開平1−225592号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上記従来技術のいずれのものであっても、具体的に開示されている色素又は色素混合物では、後述する比較例に示すように、未だ十分な性能を得ることができなかった。このため、記録濃度が高く、記録物の色調が鮮明で、記録物の安定性が高い、感熱転写記録用色素としての特性に総合的に優れた感熱転写用インク及びシートの開発が望まれていた。
【0007】
本発明は、感熱転写記録用色素に要求される前記の▲1▼〜▲8▼のすべての特性において総合的に優れた性能を有し、特に、記録濃度が高く、記録物の色調が鮮明で、記録物の安定性が高い、感熱転写用インク、感熱転写用シート、並びに感熱転写記録方法を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明の感熱転写用インクは、下記式(I−1)で表されるピラゾロンメチン骨格を有する色素と、下記式( II −1)で表されるキノフタロン骨格を有する色素と、媒体とを含有することを特徴とする。
【0009】
本発明の感熱転写用シートは、基材上に、下記式(I−1)で表されるピラゾロンメチン骨格を有する色素と、下記式( II −1)で表されるキノフタロン骨格を有する色素とを含む色材層を有することを特徴とする。
【化5】
【化6】
【0010】
本発明の感熱転写記録方法は、このような本発明の感熱転写用シートを用いて感熱転写記録を行う方法であって、記録された画像が、D50光源を用いて2度視野角に設定した場合の、色濃度1.0におけるCIELAB空間でのa*値が−13以上10以下で、b*値が60以上であることを特徴とする。
【0011】
即ち、本発明者らは、上記目的を達成すべく、感熱転写記録用イエロー色素混合物について詳しく検討を行った結果、下記(A)のピラゾロンメチン骨格を有する色素と、下記(B)のキノフタロン骨格を有する色素及び/又は下記(C)のアミノピラゾールアゾ骨格を有する色素とを組み合わせて用いることにより、記録濃度が高く、記録物の色調が鮮明で、記録物の安定性が高い、従来品に比べて総合的に優れた記録物を得ることができることを見出し、本発明に到達した。
【0012】
【化7】
【0013】
なお、上記式中、点線は無置換又は任意の置換基を有することを表し、−NRR’はアミノ基又は置換アミノ基を表す。
【0014】
即ち、上記のピラゾロンメチン骨格を有する色素は感熱転写記録において高感度であるものの、イエロー色素としては赤みを帯びており、色調の点で不十分である。このようなピラゾロンメチン骨格を有する色素に、キノフタロン骨格を有する色素及び/又はアミノピラゾールアゾ骨格を有する色素を組み合わせることで、色調、感度、耐光性等の総合的に優れた色素が得られる。これは、キノフタロン骨格を有する色素及びアミノピラゾールアゾ骨格を有する色素が、緑味のイエローの色調を示すことから、上記ピラゾロンメチン骨格を有する色素の赤味を抑え、且つ感度と、耐光性を維持させることができることによるものである。
【0015】
本発明の感熱転写用インク及びシートは、感熱転写用イエローインク、感熱転写用イエローシートとして好適であり、色素の最大吸収波長(λmax)が350〜480nmに相当するものを好適に得ることができる。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下に本発明の実施の形態を詳細に説明する。
【0017】
まず、本発明において用いるピラゾロンメチン骨格を有する色素、キノフタロン骨格を有する色素、アミノピラゾールアゾ骨格を有する色素について説明する。
【0018】
なお、以下において、例示した基の好適な炭素数は、当該基が置換基を有する場合は、その置換基の炭素数も含めた合計の炭素数を示す。
【0019】
本発明で使用されるピラゾロンメチン骨格を有する色素は、好ましくは、下記一般式(I)で表されるピラゾロンメチン系色素である。なお、下記一般式において、▲1▼〜▲4▼は環Aの置換基の位置を示す。
【0020】
【化8】
【0021】
一般式(I)式中、環Aは任意の置換基を有していても良いベンゼン環、好ましくは、置換基を有していないか、或いは置換基として炭素数1〜10の、置換されていても良いアルキル基、炭素数1〜10の、置換されていても良いアルコキシ基、又はハロゲン原子を有するベンゼン環であり、ベンゼン環が置換基を有する場合、その置換位置は1〜4位(▲1▼〜▲4▼の位置)のいずれでも良いが、好ましくは3位(▲3▼の位置)である。
【0022】
R1及びR2は、それぞれ独立に、水素原子、置換されていても良いアルキル基、アリル基、置換されていても良いアリール基、又は置換されていても良いシクロアルキル基、好ましくは、炭素数1〜12の、置換されていても良いアルキル基、アリル基、炭素数6〜10の、置換されていても良いアリール基、又は炭素数5〜7の、置換されていても良いシクロアルキル基を表し、R3は、水素原子、置換されていても良いアルキル基、NR9R10基、置換されていても良いアルコキシ基、置換されていても良いアルコキシカルボニル基、置換されていても良いアリール基、又はC(O)NR9AR10A基、好ましくは、水素原子、炭素数1〜10の、置換されていても良いアルキル基、炭素数1〜8のNR9R10基、炭素数1〜8の、置換されていても良いアルコキシ基、炭素数2〜9の、置換されていても良いアルコキシカルボニル基、炭素数6〜10の、置換されていても良いアリール基、又は炭素数3〜9のC(O)NR9AR10A基を表し、R4は、置換されていても良いアルキル基、又は置換されていても良いアリール基、好ましくは、炭素数1〜12の、置換されていても良いアルキル基、又は、炭素数6〜10の、置換基を有していても良いアリール基を表す。
【0023】
なお、R9、R10、R9A、R10Aは、それぞれ独立に、水素原子、置換されていても良いアルキル基、又は置換されていても良いアリール基、好ましくは水素原子、炭素数1〜10の、置換されていても良いアルキル基、又は炭素数6〜10の、置換されていても良いアリール基を表す。
【0024】
特に、R1、R2としては、それぞれ独立に、炭素数1〜8の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基が好ましく、R3としては、炭素数1〜4の直鎖状又は分岐鎖状のアルコキシ基、炭素数1〜8の直鎖状又は分岐鎖状のジアルキルアミノ基、或いは炭素数2〜9の直鎖状又は分岐鎖状のアルコキシカルボニル基が好ましく、R4としては、フェノニル基又は置換基としてハロゲン原子を有するフェニル基が好ましい。
【0025】
本発明で使用されるキノフタロン骨格を有する色素は、好ましくは、下記一般式(II)で表されるキノフタロン系色素である。
【0026】
なお、下記一般式において、▲1▼〜▲4▼は環B,Cの置換位置を示す。
【0027】
また、下記一般式(II)で表されるキノフタロン系色素は、電子の非局在化により、水素原子が共役の別の原子に結合することにより、下記一般式(II)で表される構造、下記一般式(II−a)で表される構造、及び下記一般式(II−b)で表される構造、或いはこれらの中間の構造を包含するものである。即ち、下記一般式(II)で表されるキノフタロン系色素は、電子の非局在化により、水素原子が共役の別の原子に結合することを示す下記一般式(II−x)で表される構造のすべてを包含し(下記一般式(II−x)において、一点鎖線部分は電子の非局在化部分を示す。)、本発明においては、従来からの慣用的な表記方法に従って、これらのすべての構造を採り得るキノフタロン系色素を代表して、下記一般式(II)で表した。従って、本発明で用いる下記一般式(II)で表されるキノフタロン系色素は、下記一般式(II)で表されるキノフタロン系色素に限らず、下記一般式(II−a),(II−b)或いはこれらの中間の構造を包含する、下記一般式(II−x)で表される形態のいずれであっても良い。
【0028】
同様に、前記(B)式で表されるキノフタロン骨格においても、下記(B−a)式、(B−b)式で表されるもの、或いは前記(B)式と下記(B−a)式と(B−b)式との中間の構造のものであっても良く、電子の非局在化により、水素原子が共役の別の原子に結合することを示す下記(B−x)で表される構造のすべてを包含する(下記(B−x)式において、一点鎖線部分は電子の非局在化部分を示す。)。本発明においては、従来からの慣用的な表記方法に従って、これらのすべての構造を採り得るキノフタロン骨格を代表して、前記(B)式で表した。従って、前記(B)式で表されるキノフタロン骨格は、前記(B)式で表されるキノフタロン骨格に限らず、下記(B−a)式,(B−b)式或いはこれらの中間の構造を包含する、下記(B−x)式で表される形態のいずれであっても良い。
【0029】
【化9】
【0030】
【化10】
【0031】
一般式(II)中、環B及び環Cは、各々独立に、任意の置換基を有していても良いベンゼン環を表し、Xは水素原子又はハロゲン原子を表す。好ましくは、環Bは置換基を有していないか、或いは置換基として、炭素数1〜8の、置換されていても良いアルキル基を有するベンゼン環であり、環Bのベンゼン環が置換基を有する場合、その置換位置は1〜4位(▲1▼〜▲4▼の位置)のいずれでも良いが、好ましくは、3位(▲3▼の位置)又は4位(▲4▼の位置)である。また、環Cは、好ましくは、置換基として、炭素数1〜10特に2〜8の、置換されていても良いアルキル基、炭素数1〜12特に2〜8の、置換されていても良いアルコキシ基、炭素数6〜10の、置換されていても良いアリール基、炭素数6〜10の、置換されていても良いアリールオキシ基、炭素数2〜11特に3〜9の、置換されていても良いCOOR9D基、炭素数3〜9のC(O)NR9ER10E基、炭素数2〜11特に3〜9のOC(O)R9Fを有するベンゼン環であり、環Cのベンゼン環の置換基の位置は、1〜4位(▲1▼〜▲4▼の位置)のいずれでも良いが、好ましくは1位(▲1▼の位置)又は2位(▲2▼の位置)である。なお、R9D,R9E,R10Eは、それぞれ独立に水素原子、置換されていても良いアルキル基、又は置換されていても良いアリール基、好ましくは水素原子、炭素数1〜10の、置換されていても良いアルキル基、又は炭素数6〜10の、置換されていても良いアリール基を表し、R9Fは、水素原子、置換されていても良いアルキル基、置換されていても良いアリール基、置換されていても良いアルコキシ基、置換されていても良いアリールオキシ基、又はNR9FaR9Fb基、好ましくは、水素原子、炭素数1〜10の、置換されていても良いアルキル基、炭素数6〜10の、置換されていても良いアリール基、炭素数1〜10の、置換されていても良いアルコキシ基、炭素数6〜10の、置換されていても良いアリールオキシ基、又は炭素数1〜16のNR9FaR9Fb基を表す。R9Fa,R9Fbはそれぞれ独立に水素原子、又は置換されていても良いアルキル基、置換されていても良いアリール基、好ましくは、炭素数1〜10の、置換されていても良いアルキル基、又は炭素数6〜10の、置換されていても良いアリール基を表す。
【0032】
特に、環Bとしては、置換基のないベンゼン環、或いは炭素数1〜8の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基を置換基として有するベンゼン環が好ましく、環Cとしては、置換基としてCOOR9D基、C(O)NR9ER10E基、又はOC(O)R9F基を有するベンゼン環が好ましく、Xとしては、水素原子又は臭素原子が好ましい。
【0033】
本発明で使用されるアミノピラゾールアゾ骨格を有する色素は、好ましくは、下記一般式(III)で表されるアミノピラゾールアゾ系色素である。なお、下記一般式において、▲1▼〜▲5▼は環Dの置換基の位置を示す。
【0034】
【化11】
【0035】
一般式(III)中、環Dは、任意の置換基を有していても良いベンゼン環、好ましくは、置換基を有していないか、或いは、置換基として、炭素数1〜10特に1〜6の、置換基を有さないか置換基を有していても良いアルキル基、炭素数1〜10特に1〜6の、置換基を有していても良いアルコキシ基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、又は炭素数2〜11特に2〜9のCOOR9G基(R9Gは、水素原子、炭素数1〜10の、置換されていても良いアルキル基、又は炭素数6〜10の、置換されていても良いアリール基を表す。)を有するベンゼン環を表す。環Dのベンゼン環が置換基を有する場合、その置換位置は1〜5位(▲1▼〜▲5▼の位置)のいずれでも良いが、好ましくは1位(▲1▼の位置)及び/又は3位(▲3▼の位置)である。
【0036】
R5は、水素原子、置換されていても良いアルキル基、置換されていても良いアルコキシ基、置換されていても良いアリール基、置換されていても良いアルコキシカルボニル基、NR9BC(O)R10B基、又はSO2R9C基、好ましくは、水素原子、炭素数1〜10の、置換されていても良いアルキル基、炭素数1〜10の、置換されていても良いアルコキシ基、炭素数6〜19の、置換されていても良いアリール基、炭素数2〜10の、置換されていても良いアルコキシカルボニル基、炭素数2〜9のNR9BC(O)R10B基、又は炭素数1〜8のSO2R9C基を表し、R6は、水素原子、置換されていても良いアルキル基、又は置換されていても良いアリール基、好ましくは、炭素数1〜10の、置換されていても良いアルキル基、炭素数6〜10の、置換されていても良いアリール基を表し、R7及びR8は、それぞれ独立に、水素原子、置換されていても良いアルキル基、好ましくは、水素原子、又は炭素数1〜10の、置換されていても良いアルキル基を表す。
【0037】
なお、R9B、R9C、R10Bは、それぞれ独立に、水素原子、置換されていても良いアルキル基、好ましくは炭素数1〜10の、置換されていても良いアルキル基又は置換されていても良いアリール基、好ましくは炭素数6〜10の、置換されていても良いアリール基を表す。
【0038】
環Dとしては、特に、置換基として炭素数1〜4の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基、ハロゲン原子、トリフルオロメチル基、シアノ基、或いはニトロ基を有するベンゼン環が好ましい。また、R5としては、炭素数1〜8の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基が好ましく、R6としては、フェノニル基又は置換基としてハロゲン原子を有するフェニル基が好ましく、R7、R8としては、それぞれ独立に、水素原子或いは炭素数1〜8の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基が好ましい。
【0039】
なお、一般式(I)〜(III)において、R1〜R8、R9、R9A、R9B、R9C、R9D、R9E、R9F、R9Fa、R9Fb、R9G、R10、R10A、R10B、R10E、或いは環A〜D等の置換基としてのアルキル基としては、炭素数1〜12、好ましくは炭素数1〜10の直鎖状もしくは分岐鎖状のアルキル基が挙げられ、具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、t−ブチル基、n−ヘキシル基、n−オクチル基、2−エチルヘキシル基等が挙げられる。
【0040】
アルキル基が置換されている場合、置換基としては、ハロゲン原子、アルコキシ基、アリール基、シアノ基、アリールオキシ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基等が挙げられ、置換基を有するアルキル基の炭素数は特に1〜8であることが好ましい。
【0041】
置換されたアルキル基としては、次のようなものが挙げられる。
【0042】
2−エトキシエチル基、2−n−プロポキシエチル基、2−n−ブトキシエチル基、4−i−プロポキシブチル基、3−i−ブトキシプロピル基等のアルコキシ基置換アルキル基;2−クロロエチル基、4−クロロブチル基、トリフルオロメチル基等のハロゲン原子置換アルキル基;シアノエチル基等のシアノ基置換アルキル基;ベンジル基、2−フェニルエチル基、p−クロロベンジル基等のアリール基置換アルキル基;フェノキシメチル基、2−フェノキシエチル基、4−フェノキシブチル基等のアリールオキシ基置換アルキル基;2−メトキシカルボニルエチル基、3−n−ブトキシカルボニルプロピル基、2−アリルオキシカルボニルエチル基等のアルコキシカルボニル基置換もしくはアリールオキシカルボニル基置換アルキル基;2−フェノキシカルボニルエチル基、4−p−クロロフェノキシカルボニルブチル基等のアリールオキシカルボニル基置換アルキル基;2−ベンジルオキシエチル基、4−ベンジルオキシブチル基等のアラルキルオキシ基置換アルキル基;2−アセトキシエチル基、2−ベンゾイルオキシエチル基、4−アセトキシブチル基等のアシルオキシ基置換アルキル基。
【0043】
R1〜R6、R9、R9A、R9B、R9C、R9D、R9E、R9F、R9Fa、R9Fb、R9G、R10、R10A、R10B、R10E、環C等の置換基としてのアリール基としては、炭素数1〜8の直鎖状もしくは分岐鎖状のアルキル基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子、炭素数1〜4のフルオロアルキル基、炭素数1〜8の直鎖状又は分岐鎖状のアルコキシ基等の置換基を有していても良いフェニル基が挙げられる。
【0044】
R1、R2のシクロアルキル基としては、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等の炭素数5〜7のシクロアルキル基が挙げられる。
【0045】
R3、R5、R9F、環Cの置換基等としてのアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、i−プロピルオキシ基、n−ブチルオキシ基、i−ブチルオキシ基、s−ブチルオキシ基、t−ブチルオキシ基、n−へキシルオキシ基、n−オクチルオキシ基、s−オクチルオキシ基、2−エチルヘキシルオキシ基、2−エトキシエトキシ基、3−メトキシブチルオキシ基、2−n−ブトキシエトキシ基等の炭素数1〜12、好ましくは炭素数1〜8のアルコキシ基が挙げられる。
【0046】
アルコキシ基が置換されている場合、置換基としては、ハロゲン原子、アルコキシ基、アリール基、シアノ基、アリールオキシ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基等が挙げられ、これらの置換基を有する炭素数1〜12、好ましくは炭素数1〜8の直鎖状もしくは分岐鎖状のアルコキシ基が挙げられる。
【0047】
R3、R5のアルコキシカルボニル基としては、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、n−プロポキシカルボニル基、i−プロピルオキシカルボニル基、n−ブチルオキシカルボニル基、i−ブチルオキシカルボニル基、t−ブチルオキシカルボニル基、n−ヘキシルオキシカルボニル基、n−オクチルオキシカルボニル基、2−エチルヘキシルオキシカルボニル基等の炭素数2〜12、好ましくは炭素数2〜10のアルコキシカルボニル基が挙げられる。
【0048】
アルコキシカルボニル基が置換されている場合、置換基としては、ハロゲン原子、アルコキシ基、アリール基、シアノ基、アリールオキシ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基等が挙げられ、これらの置換基を有する炭素数2〜12、好ましくは炭素数2〜10の直鎖状もしくは分岐鎖状のアルコキシカルボニル基が挙げられる。
【0049】
Xのハロゲン原子、或いは、環A,D、その他の置換基としてのハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等が挙げられる。
【0050】
R9F、環C、その他の置換基としてのアリールオキシ基としては、置換基として、炭素数1〜8の直鎖状もしくは分岐鎖状のアルキル基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子、炭素数1〜4のフルオロアルキル基、炭素数1〜8の直鎖状又は分岐鎖状のアルコキシ基等を有していても良いフェニルオキシ基が挙げられる。
【0051】
本発明においては、前記骨格構造を有する色素を組み合わせて用いる限りにおいて、本発明の効果を得ることができるが、これらの組み合わせによる本発明の効果を十分に発現させるために、当該骨格部分その他の部分構造も含めて、ピラゾロンメチン骨格を有する色素は、分子量として、通常600以下、特に500以下、とりわけ240〜500、キノフタロン骨格を有する色素は、分子量として、通常800以下、特に600以下、とりわけ350〜600、アミノピラゾールアゾ骨格を有する色素は、分子量として、通常600以下、特に500以下、とりわけ200〜500の範囲であることが好ましい。
【0052】
前記一般式(I)〜(III)で表される色素の具体例を、下記表1〜6に例示するが、何らこれらに限定されるものではない。これらの色素は、例えば、特開平2−3450号公報、特開昭63−189289号公報、及び特開平1−225592号公報に記載された方法に従ってそれぞれ製造することができる。
【0053】
一般式(I)で表されるピラゾロンメチン系色素
【0054】
【表1】
【0055】
【表2】
【0056】
一般式(II)で表されるキノフタロン系色素
【0057】
【表3】
【0058】
【表4】
【0059】
【表5】
【0060】
一般式(III)で表されるアミノピラゾールアゾ系色素
【0061】
【表6】
【0062】
【表7】
【0063】
本発明の感熱転写用インク及び感熱転写用シートにおいて、ピラゾロンメチン骨格を有する色素とキノフタロン骨格を有する色素及び/又はアミノピラゾールアゾ骨格を有する色素との比率は、ピラゾロンメチン骨格を有する色素:キノフタロン骨格を有する色素及び/又はアミノピラゾールアゾ骨格を有する色素(キノフタロン骨格を有する色素及びアミノピラゾールアゾ骨格を有する色素併用の場合はその合計)=1:9〜9:1(重量比)、特に2:8〜8:2、とりわけ3:7〜7:3であることが好ましい。上記範囲を超えてピラゾロンメチン骨格を有する色素が多くても少なくても、ピラゾロンメチン骨格を有する色素とキノフタロン骨格を有する色素及び/又はアミノピラゾールアゾ骨格を有する色素とを組み合わせて用いることによる本発明の効果を十分に得ることはできない。なお、キノフタロン骨格を有する色素とアミノピラゾールアゾ骨格を有する色素とを共に使用する場合、その比率はキノフタロン骨格を有する色素:アミノピラゾールアゾ骨格を有する色素=10:1〜1:10(重量比)の範囲とすることが好ましい。
【0064】
SWOP(Specifications Web Offset publications)色目の要求基準を満たすためには、上記範囲において適宜比率を選定すれば良いが、例えば、ピラゾロンメチン骨格を有する色素:キノフタロン骨格を有する色素及び/又はアミノピラゾールアゾ骨格を有する色素=3:7〜5:5(重量比)とするのが好ましい。
【0065】
本発明の感熱転写用インクは、ピラゾロンメチン骨格を有する色素とキノフタロン骨格を有する色素及び/又はアミノピラゾールアゾ骨格を有する色素とを媒体に溶解ないし分散させたものである。
【0066】
この媒体としては、水、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、イソブチルアルコールなどのアルコール類、メチルセロソルブ、エチルセロソルブなどのセロソルブ類、トルエン、キシレン、クロロベンゼンなどの芳香族類、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン類、塩化メチレン、クロロホルム、トリクロロエチレンなどの塩素系溶剤、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどのエーテル類、N,Nージメチルホルムアミド、N−メチルピロリドンなどの有機溶剤を挙げることができ、これらは1種を単独で用いても、2種以上を混合して用いても良い。
【0067】
本発明のインク中には、上記色素及び媒体の他に、必要に応じて有機、無機の非昇華性微粒子、分散剤、帯電防止剤、消泡剤、酸化防止剤、粘度調製剤などの添加剤を添加することができる。
【0068】
なお、色素としては、本発明の効果を妨げない範囲で、ピラゾロンメチン骨格を有する色素とキノフタロン骨格を有する色素及び/又はアミノピラゾールアゾ骨格を有する色素以外の他の構造のイエロー色素を併用しても良い。
【0069】
本発明の感熱転写用インクにおいて、色素の合計濃度は、インク100重量部中において、0.5〜20重量部、特に1〜15重量部、とりわけ4〜15重量部とするのが好ましい。また、色素以外の上記のような添加剤の割合は、インク100重量部中において5重量部以下、特に3重量部以下であり、これらの添加剤を添加する場合の下限値としては0.01重量部以上、特に0.5重量部以上であることが好ましい。
【0070】
本発明の感熱転写用シートは、基材上に、ピラゾロンメチン骨格を有する色素とキノフタロン骨格を有する色素及び/又はアミノピラゾールアゾ骨格を有する色素とを含む色材層を有するものである。なお、この色材層には、本発明の効果を妨げない範囲で、ピラゾロンメチン骨格を有する色素、キノフタロン骨格を有する色素、アミノピラゾールアゾ骨格を有する色素以外の他の構造のイエロー色素が含まれていても良い。
【0071】
基材上に色材層を形成する方法は特に限定されないが、通常、色素を結着剤と共に前述の媒体中に溶解或いは微粒子状に分散させることによりインクを調製し、該インクを、基材上に塗布、乾燥する方法が採用される。
【0072】
ここで使用される結着剤としては、セルロース系、アクリル酸系、澱粉系、エポキシ系などの水溶性樹脂や、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリスチレン、ポリカーボオネート、ポリエーテルスルホン、ポリビニルブチラール、エチルセルロース、アセチルセルロース、ポリエステル、AS樹脂、フェノキシ樹脂などの有機溶剤に可溶性の樹脂を挙げることができ、色材層形成用の感熱転写インク中の結着剤と色素との比率は、通常、結着剤:色素=1:2〜2:1(重量比)の範囲が適当である。なお、結着剤についても1種を単独で用いても良く、2種以上を混合して用いても良い。
【0073】
転写シート作成のためのインクを塗布する基材となるベースフィルムとしては、コンデンサー紙、グラシン紙のような薄葉紙、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリイミド、ポリアラミドのような耐熱性の良好なプラスチックのフィルムが好適であり、その厚さとしては、通常3〜50μmの範囲が適当である。
【0074】
上記のベースフィルムのなかでは、ポリエチレンテレフタレートフィルムが機械的強度、耐溶剤性、経済性などを考慮すると特に有利である。しかし、場合によってはポリエチレンテレフタレートフィルムは必ずしも耐熱性が十分でなく、サーマルヘッドの走行性が不十分であるので、色材層を形成した面とは反対側の面に潤滑剤、滑性の高い耐熱性微粒子、界面活性剤及び結着剤などを含む耐熱性樹脂層を設けることにより、サーマルヘッドの走行性を改良したものを用いることができる。この場合、潤滑剤としては、例えばアミノ変性シリコーン化合物、カルボキシ変性シリコーン化合物等の変性シリコーン化合物が挙げられ、耐熱性微粒子としては、シリカ等の微粒子、結着剤としてはアクリル系樹脂等が挙げられる。この耐熱性樹脂層の厚みは、通常0.1〜50μmの範囲が好適である。
【0075】
ベースフィルムへのインクの塗布は、グラビアコーター、リバースロールコーター、ロッドコーター、エアドクタコーター等を使用して実施することができ、インクは、色材層の乾燥後の厚さが0.1〜5μmの範囲となるように塗布するのが好ましい。
【0076】
本発明の感熱転写シートは加熱手段としてサーマルヘッドのみならず赤外線、レーザー光なども利用することができる。また、ベースフィルムそのものに電気を流すことによって発熱する通電発熱フィルムを用いて、通電型染料転写シートとして用いることもできる。
【0077】
感熱転写記録では、通常、イエロー、マゼンタ、シアンの3色、あるいはクロを加えた4色の転写シートについて熱記録操作を繰り返すことで、カラー印刷が行われる。得られる画像の色相については、CIELAB空間におけるL*値、a*値、b*値で表され、類似の色濃度及びL*値を有する画像におけるa*値及びb*値から色相を比較することができる。
【0078】
本発明によれば、カラー画像の色再現上、イエロー色の色相として好ましい色相、即ち、D50光源を用いて、2度視野角に設定した場合の、色濃度1.0におけるa*値が、−13以上10以下、特に−13以上5以下、b*値が60以上、特に70以上であるものを達成することができる。なお、この範囲には、印刷工業に用いられるカラープルーフインクの色基準SWOP(Specifications Web Offset Publications)も含まれる。
【0079】
本発明の感熱転写用インク及び感熱転写用シートは、感熱転写記録の記録濃度が高く、記録物の色調が鮮明で、記録物の安定性が高い総合的に優れ、特に記録物の耐光性にも優れており、しかも、色素の製造も容易であるため、工業的に有利に製造することができる。
【0080】
【実施例】
以下に実施例及び比較例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
【0081】
実施例1
下記配合組成の混合物を超音波洗浄機で30分間処理してインクを調製した。
【0082】
[インクの配合(重量部)]
No.I−1の色素 :2.4
No.II−1の色素 :3.6
フェノキシ樹脂(ユニオンカーバイド社製 「PKHJ」) :10
テトラヒドロフラン :90
【0083】
得られたインクをワイヤバーを用いてポリエチレンテレフタレートフィルム(6μm厚)上に塗布、乾燥(乾燥膜厚約1μm)して色材層を形成した後、このポリエチレンテレフタレートフィルムの背面にアクリル樹脂(商品名:BR−80;三菱レイヨン(株)製)10重量部、アミノ変性シリコーンオイル(商品名:KF393;信越化学工業(株)製)1重量部、及びトルエン89重量部からなる液を塗布、乾燥(乾燥膜厚約1μm)することにより耐熱性樹脂層を形成して感熱転写シートを得た。
【0084】
得られた感熱転写シートを松下電器産業(株)製プリンタ「NV−MPX5」のVM−MPA50のインクリボンとつなぎ合わせ、VM−MPA50記録紙に松下電器産業(株)製プリンタ「NV−MPX5」で階調画像の記録を行ったところ、表8に示す色濃度の記録物が得られた。
【0085】
また、色濃度1.0で、D50光源を用いて、2度視野角に設定した場合の、CIELAB空間におけるa*値、及びb*値を測定し、結果を表8に示した。
【0086】
なお、色濃度、CIELAB a*値、b*値は、分光測色計(商品名:SPM−50、グレタグ社製)を用いて測定した。
【0087】
また、得られた記録物(色濃度約1.0のもの)について、キセノンランプフェードメーター(スガ試験器(株)製)を用いて80時間耐光性試験を実施し(ブラックパネル温度:63±2℃)、試験前後の記録物のCIELAB色差(△E)を測定することにより耐光性を調べ、結果を表8に示した。
【0088】
実施例2〜4、比較例1〜6
実施例1において、色素として、表8に示すものを用いたこと以外は同様にして、インクの調製、感熱転写シートの作成、転写記録及び評価を行い、結果を表8に示した。
【0089】
【表8】
【0090】
以上の結果から、本発明で用いられるそれぞれの色素を単独で用いた場合には、色濃度、a*値、b*値及び耐光性といった性能バランスの点で未だ不十分であるが、本発明のようにそれらを組み合わせることにより、優れた性能バランスを得ることができることが分かる。
加えて、本発明の組み合わせによれば、公知文献に記載されているような色素A又は色素Bとの組み合わせよりも優れた性能バランスを得ることができることも分かる。
【0091】
実施例5
実施例1で用いたインクのかわりに下記方法で調製したインクを用いて、実施例1と同様の方法により転写シートを作製、転写記録及び評価を行った結果、均一な色濃度の記録を得ることができ、また得られた記録物の耐光性は良好であることが確認された。
【0092】
[インクの配合(重量部)]
No.I−1の色素 :2.4
No.II−1の色素 :3.6
AS樹脂(製品名:デンカAS−S;電気化学工業(株)製品) :10
トルエン :70
シクロヘキサノン :10
【0093】
【発明の効果】
以上詳述した通り、本発明によれば、感熱転写記録用色素に要求されるすべての特性において総合的に優れた性能を有し、記録濃度が高く、記録物の色調が鮮明で、記録物の安定性が高い感熱転写用インク、感熱転写用シートとこれを用いた感熱転写記録方法が提供される。特に、本発明によれば、低エネルギーで高い濃度の鮮明な黄色を呈し、色調もイエロー色として好ましい色相で、耐光性も著しく良好な感熱転写記録物を得ることができる。
Claims (3)
- 請求項2に記載の感熱転写用シートを用いて感熱転写記録を行う方法であって、記録された画像が、D50光源を用いて2度視野角に設定した場合の、色濃度1.0におけるCIELAB空間でのa*値が−13以上10以下で、b*値が60以上であることを特徴とする感熱転写記録方法。
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