JP3680581B2 - 感熱転写シート - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明はいわゆる感熱転写記録方式によるカラーハードコピーに使用される感熱転写シートに関するものであり、特に昇華感熱記録方式に使用される感熱転写シートに関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、ビデオ画像等の電気信号によるカラー画像をカラーハードコピーに変換するための技術が進歩してきており、例えば、電子写真、インクジェット、感熱転写等の方式が検討されている。これらのなかでも、特に感熱転写方式は、装置の保守や操作の容易な点、装置の小型化の可能な点等から有利である。感熱転写方式には、基材上の色材層を加熱によって溶融させ、それを受像シートに転写する溶融転写方式と、色材層中の色素のみを被記録材に移行させるいわゆる昇華転写方式とが知られている。昇華転写方式は、移行する色素の量を加熱の程度で制御することができることから、濃度階調性の表現が可能であり、フルカラープリントをはじめ、精細な画像を得ることに適している。通常のカラープリントは、黄色、マゼンタ、シアンの3原色によって表現され、昇華転写方式に用いられる感熱転写シートも、通常は黄色、マゼンタ、シアンの3色、目的によってはさらに黒を含む4色の色材層が基材上に順に配置されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
近年、消費電力の低減や印画スピードの高速化のために、より少ないエネルギーでより高濃度の出る材料が必要とされている。一方、感熱転写シートやできあがった画像は、劣悪な環境での保管に耐えられるように、感熱転写シートの色材層には熱的安定性が求められている。さらに、できあがった画像には光や物理的刺激に対する耐性が求められている。
具体的には、色材層が熱的に不安定であると、例えば色材層から色素結晶が析出するという問題が生じる。結晶析出した色材層を用いて印画を行うと、結晶の跡が画像として現れ、醜い画像となる。また、印画物は様々な条件下で使用・保管されるが、その際に光で退色したり、こすられた部分から結晶が析出して変色したりするという問題もある。
【0004】
【課題を解決するための手段】
複数の色素を配合したときの色素同士や色素・樹脂間の相互作用は一般に非常に複雑であり、特に結晶析出や光退色の問題に対して、どの種の色素のどの組み合わせが適当であるかは試験・検討の結果はじめて明らかになるものである。本発明者らは鋭意検討の結果、2種の色素を配合した場合や特定の色素を含まない3種の色素を配合したときには色材層の熱的安定性、感度、画像安定性の各性能を同時に満足することは不可能であったが、特定の骨格を有する色素を含む少なくとも3種の色素を黄色色材層に含有する感熱転写シートを用いることにより色材層は良好な熱的安定性を有し、高濃度の画像が得られ、かつ良好な画像保存安定性が得られることを見いだし、本発明に到った。すなわち、本発明の要旨は、基材の少なくとも一方の面に少なくとも黄色色材層を設けた感熱転写シートにおいて、前記黄色色材層が少なくとも、下記一般式(1)で示されるビスピラゾロンメチン系色素、下記一般式(2)で示されるピリドンアゾ系色素、および下記一般式(3)で示されるキノフタロン系色素を含有することを特徴とする感熱転写シートに存する。
【化4】
(式中、R 1 およびR 2 はそれぞれ独立に、メチル基またはハロゲン原子で置換されていてもよいフェニル基を表し、R 3 およびR 4 はそれぞれ独立に、低級アルキル基を表し、R 5 は水素原子を表す。)
【化5】
(式中、R 6 およびR 7 はそれぞれ独立に、低級アルキル基を表し、R 8 およびR 9 は水素原子を表し、R 10 は、ハロゲン原子、または−COOX基を表し、Xはアラルキル基を表す。)
【化6】
(式中、R 11 は水素原子を表し、R 12 はハロゲン原子を表し、Aは−CONR 14 R 15 基を表し、R 14 及びR 15 はそれぞれ独立に、低級アルキル基を表す。)
【0005】
【発明の実施の形態】
以下に本発明を詳細に説明する。
本発明における感熱転写シートは、基材と、その少なくとも一方の面に設けられた、少なくとも黄色色材層から構成される。本発明の感熱転写シートの好ましい形態は、基材の一方の面に少なくとも黄色色材層を設け、他方の面には耐熱滑性層を設けたものである。
【0006】
基材としては薄葉状フィルムが用いられ、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリアミドフィルム、ポリアラミドフィルム、ポリイミドフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリフェニレンサルファイドフィルム、ポリスルホンフィルム、セロファン、トリアセテートフィルム、ポリプロピレンフィルムなどが挙げられる。中でもポリエチレンテレフタレートフィルムは、機械的強度、寸法安定性、耐熱性、価格などの面から好ましく、特に2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムが好ましく、これらの基材の厚さは、通常1〜30μm、好ましくは2〜10μmである。
【0007】
基材には、色材層との接着性を向上させるために、基材表面にコロナ処理を行っても、ポリエステル系樹脂、セルロース系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ウレタン樹脂、ポリ塩化ビニリデン系樹脂などの樹脂によるアンカーコートを設けてもよい。
【0008】
色材層は色素とバインダー樹脂を含有しており、好ましくは黄色、マジェンタ、シアンの3原色の色材層を面順次に有している。4色目として黒色の色材層を有していてもよい。本発明において黄色色材層とは、400nmから700nmの範囲における吸収の最大波長が400nmから500nmの間にある色材層をいう。また、本発明において黄色色素とは、アセトン中での380nmから700nmの範囲における吸収の最大波長が380nmから500nmの間にある色素をいう。
【0009】
本発明の感熱転写シートは、黄色色材層が少なくとも3種類の黄色色素を含有し、かつ、3種類の黄色色素のうち少なくとも1種類がピラゾール骨格を有する色素であることを特徴とする。本発明でいうピラゾール骨格を有する色素としてはピラゾロンメチン系色素およびピラゾールアゾ系色素が挙げられる。
【0010】
本発明の感熱転写シートにおける黄色色材層の好ましい形態は、少なくとも3種類の黄色色素を含有し、これらのうち少なくとも1種類がピラゾロンメチン系色素であるものである。より好ましくは、ピラゾロンメチン系色素がビスピラゾロンメチン系色素であるものである。より好ましくは、黄色色材層に含まれる少なくとも3種類の黄色色素のうち少なくとも1種類がビスピラゾロンメチン系色素であり、少なくとも1種類がビスピラゾロンメチン系色素以外のピラゾロンメチン系色素、ピラゾールアゾ系色素、ピリドンアゾ系色素およびキノフタロン系色素からなる群から選ばれた色素である。より好ましくは、黄色色材層に含まれる少なくとも3種類の黄色色素のうち少なくとも1種類がビスピラゾロンメチン系色素であり、少なくとも2種類がピリドンアゾ系色素、キノフタロン系色素、ピラゾールアゾ系色素およびピラゾロンメチン系色素からなる群から選ばれた色素である。より好ましくは、黄色色材層に含まれる少なくとも3種類の黄色色素のうち少なくとも1種類がビスピラゾロンメチン系色素であり、少なくとも2種類がビスピラゾロンメチン系色素以外のピラゾロンメチン系色素、ピラゾールアゾ系色素、ピリドンアゾ系色素およびキノフタロン系色素からなる群から選ばれた色素であるものである。より好ましくは、黄色色材層に含まれる少なくとも3種類の黄色色素のうち少なくとも1種類がビスピラゾロンメチン系色素であり、少なくとも2種類がピリドンアゾ系色素およびキノフタロン系色素からなる群から選ばれた色素であるものである。とりわけ好ましくは、黄色色材層に含まれる少なくとも3種類の黄色色素のうち少なくとも1種類がビスピラゾロンメチン系色素であり、少なくとも1種類がピリドンアゾ系色素であり、少なくとも1種類がキノフタロン系色素である。
【0011】
本発明のピラゾロンメチン系色素は下記一般式(4)で示される色素であり、ピラゾールアゾ系色素は一般式(5)で示される色素である。
【0012】
【化7】
【0013】
【化8】
【0014】
一般式(4)で示されるピラゾロンメチン系色素において、R16は置換されていてもよい、メチル基、エチル基、iso−ブチル基、n−ブチル基、t−ブチル基、n−ヘキシル基、n−オクチル基、2−エチル−ヘキシル基などの低級アルキル基、置換されていてもよい、ビニル基、アリル基、ブテニル基、オクテニル基、2−エチル−ヘキセニル基などの低級アルケニル基、または置換されていてもよい、フェニル基、ナフチル基などのアリール基を表し、R17は置換されていてもよい、メチル基、エチル基、iso−ブチル基、n−ブチル基、t−ブチル基、n−ヘキシル基、n−オクチル基、2−エチル−ヘキシル基などの低級アルキル基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基などのジ低級アルキルアミノ基(アルキル基は置換されていてもよい)、−COOQ2 基、または−CONZ2 T2 基を表し、Q2 は置換されていてもよい、メチル基、エチル基、iso−ブチル基、n−ブチル基、t−ブチル基、n−ヘキシル基、n−オクチル基、2−エチル−ヘキシル基などの低級アルキル基、置換されていてもよい、ビニル基、アリル基、ブテニル基、オクテニル基、2−エチル−ヘキセニル基などの低級アルケニル基、または置換されていてもよい、フェニル基、ナフチル基などのアリール基を表し、Z2 およびT2 はそれぞれ独立に、水素原子、置換されていてもよい、メチル基、エチル基、iso−ブチル基、n−ブチル基、t−ブチル基、n−ヘキシル基、n−オクチル基、2−エチル−ヘキシル基などの低級アルキル基、置換されていてもよい、ビニル基、アリル基、ブテニル基、オクテニル基、2−エチル−ヘキセニル基などの低級アルケニル基、または置換されていてもよい、フェニル基、ナフチル基などのアリール基を表す。R18は水素原子またはメチル基、エチル基、iso−ブチル基、n−ブチル基、t−ブチル基、n−ヘキシル基、n−オクチル基、2−エチル−ヘキシル基などの低級アルキル基を表し、Gは置換されていてもよい、ビニル基、アリル基、ブテニル基、オクテニル基、2−エチル−ヘキセニル基などのアルケニル基、置換されていてもよい、フェニル基、ナフチル基などのアリール基、または置換されていてもよいピラゾロン基を表す。
【0015】
好ましくはR16は置換されていてもよい低級アルキル基または置換されていてもよいアリール基を表し、R17は置換されていてもよい低級アルキル基またはジ低級アルキルアミノ基(アルキル基は置換されていてもよい)を表し、R18は水素原子を表し、Gは置換されていてもよいアルケニル基、置換されていてもよいアリール基、または置換されていてもよいピラゾロン基を表す。
なお、本発明において低級とはアルキル基においては炭素数1〜8、アルケニル基においては炭素数2〜8、アルコキシアルキル基においては総炭素数2〜8を意味する。
【0016】
一般式(5)で示されるピラゾールアゾ系色素において、R19は置換されていてもよい、メチル基、エチル基、iso−ブチル基、n−ブチル基、t−ブチル基、n−ヘキシル基、n−オクチル基、2−エチル−ヘキシル基などの低級アルキル基、置換されていてもよい、ビニル基、アリル基、ブテニル基、オクテニル基、2−エチル−ヘキセニル基などの低級アルケニル基、または置換されていてもよい、フェニル基、ナフチル基などのアリール基を表し、R20は置換されていてもよい、メチル基、エチル基、iso−ブチル基、n−ブチル基、t−ブチル基、n−ヘキシル基、n−オクチル基、2−エチル−ヘキシル基などの低級アルキル基、置換されていてもよい、ビニル基、アリル基、ブテニル基、オクテニル基、2−エチル−ヘキセニル基などの低級アルケニル基、または置換されていてもよい、フェニル基、ナフチル基などのアリール基を表し、R21は置換されていてもよい、メチル基、エチル基、iso−ブチル基、n−ブチル基、t−ブチル基、n−ヘキシル基、n−オクチル基、2−エチル−ヘキシル基などの低級アルキル基、水酸基、アミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基などのジ低級アルキルアミノ基(アルキル基は置換されていてもよい)、−COOQ3 基、または−CONZ3 T3 基を表し、Q3 は置換されていてもよい、メチル基、エチル基、iso−ブチル基、n−ブチル基、t−ブチル基、n−ヘキシル基、n−オクチル基、2−エチル−ヘキシル基などの低級アルキル基、置換されていてもよい、ビニル基、アリル基、ブテニル基、オクテニル基、2−エチル−ヘキセニル基などの低級アルケニル基、または置換されていてもよい、フェニル基、ナフチル基などのアリール基を表し、Z3 およびT3 はそれぞれ独立に、水素原子、置換されていてもよい、メチル基、エチル基、iso−ブチル基、n−ブチル基、t−ブチル基、n−ヘキシル基、n−オクチル基、2−エチル−ヘキシル基などの低級アルキル基、置換されていてもよい、ビニル基、アリル基、ブテニル基、オクテニル基、2−エチル−ヘキセニル基などの低級アルケニル基、または置換されていてもよい、フェニル基、ナフチル基などのアリール基を表す。Dは置換されていてもよい、ビニル基、アリル基、ブテニル基、オクテニル基、2−エチル−ヘキセニル基などのアルケニル基または置換されていてもよい、フェニル基、ナフチル基などのアリール基を表す。
【0017】
好ましくはR19は置換されていてもよいアリール基を表し、R20は置換されていてもよい低級アルキル基または置換されていてもよいアリール基を表し、R21は置換されていてもよい低級アルキル基、アミノ基、またはジ低級アルキルアミノ基(アルキル基は置換されていてもよい)を表す。Dは置換されていてもよいアリール基を表す。
本発明におけるビスピラゾロンメチン系色素は、好ましくは一般式(1)で示される色素である。
【0018】
【化9】
【0019】
一般式(1)中、R1 およびR2 はそれぞれ独立に、置換されていてもよい、メチル基、エチル基、iso−ブチル基、n−ブチル基、t−ブチル基、n−ヘキシル基、n−オクチル基、2−エチル−ヘキシル基などの低級アルキル基、置換されていてもよい、ビニル基、アリル基、ブテニル基、オクテニル基、2−エチル−ヘキセニル基などの低級アルケニル基、置換されていてもよい、フェニル基、ナフチル基などのアリール基、または置換されていてもよい、フリル基、ピリジル基、チエニル基などの複素環を表し、R3 およびR4 はそれぞれ独立に、置換されていてもよい、メチル基、エチル基、iso−ブチル基、n−ブチル基、t−ブチル基、n−ヘキシル基、n−オクチル基、2−エチル−ヘキシル基などの低級アルキル基、置換されていてもよい、ビニル基、アリル基、ブテニル基、オクテニル基、2−エチル−ヘキセニル基などの低級アルケニル基、置換されていてもよい、フェニル基、ナフチル基などのアリール基、置換されていてもよい、フリル基、ピリジル基、チエニル基などの複素環、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基などのジアルキルアミノ基(アルキル基は置換されていてもよい)、−COOQ1 基、または−CONZ1 T1 基を表し、Q1 は置換されていてもよい、メチル基、エチル基、iso−ブチル基、n−ブチル基、t−ブチル基、n−ヘキシル基、n−オクチル基、2−エチル−ヘキシル基などの低級アルキル基、置換されていてもよい、ビニル基、アリル基、ブテニル基、オクテニル基、2−エチル−ヘキセニル基などの低級アルケニル基、または置換されていてもよい、フェニル基、ナフチル基などのアリール基を表し、Z1 およびT1 はそれぞれ独立に、水素原子、置換されていてもよい、メチル基、エチル基、iso−ブチル基、n−ブチル基、t−ブチル基、n−ヘキシル基、n−オクチル基、2−エチル−ヘキシル基などの低級アルキル基、置換されていてもよい、ビニル基、アリル基、ブテニル基、オクテニル基、2−エチル−ヘキセニル基などの低級アルケニル基、または置換されていてもよい、フェニル基、ナフチル基などのアリール基を表す。R5 は水素原子、置換されていてもよい、メチル基、エチル基、iso−ブチル基、n−ブチル基、t−ブチル基、n−ヘキシル基、n−オクチル基、2−エチル−ヘキシル基などの低級アルキル基、置換されていてもよい、ビニル基、アリル基、ブテニル基、オクテニル基、2−エチル−ヘキセニル基などの低級アルケニル基、置換されていてもよい、フェニル基、ナフチル基などのアリール基、または置換されていてもよい、フリル基、ピリジル基、チエニル基などの複素環を表す。
【0020】
好ましくは、R1 およびR2 はそれぞれ独立に、低級アルキル基;低級アルキル基、ハロゲン原子などで置換されていてもよいフェニル基;またはアラルキル基を表し、R3 およびR4 はそれぞれ独立に、低級アルキル基または−COOQ1 基を表し、Q1 は低級アルキル基、置換されていてもよいフェニル基、またはアラルキル基を表す。R5 は水素原子を表す。
【0021】
さらに好ましくは、R1 およびR2 はそれぞれ独立に、低級アルキル基;メチル基またはハロゲン原子で置換されていてもよいフェニル基;またはベンジル基を表し、R3 およびR4 はそれぞれ独立に、低級アルキル基または−COOQ1 基を表し、Q1 は低級アルキル基、メチル基またはハロゲン原子で置換されていてもよいフェニル基、またはベンジル基を表す。R5 は水素原子を表す。
【0022】
特に好ましくは、R1 およびR2 はそれぞれ独立に、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、フェニル基、またはトルイル基を表し、R3 およびR4 はそれぞれ独立に、メチル基または−COOQ1 基を表し、Q1 はエチル基、プロピル基、またはブチル基を表す。R5 は水素原子を表す。
【0023】
本発明におけるピリドンアゾ系色素は、好ましくは一般式(2)で示される色素である。
【0024】
【化10】
【0025】
一般式(2)中、R6 はメチル基、エチル基、iso−ブチル基、n−ブチル基、t−ブチル基、n−ヘキシル基、n−オクチル基、2−エチル−ヘキシル基などの低級アルキル基を表し、R7 は置換されていてもよい、メチル基、iso−ブチル基、n−ブチル基、t−ブチル基、n−ヘキシル基、n−オクチル基、2−エチル−ヘキシル基などのアルキル基または置換されていてもよい、ビニル基、アリル基、ブテニル基、オクテニル基、2−エチル−ヘキセニル基などのアルケニル基を表し、R8 、R9 、およびR10はそれぞれ独立に、水素原子、フッ素原子、臭素原子、塩素原子などのハロゲン原子、置換されていてもよい、メチル基、エチル基、iso−ブチル基、n−ブチル基、t−ブチル基、n−ヘキシル基、n−オクチル基、2−エチル−ヘキシル基などの低級アルキル基、CN基、−OX基、−COX基、または−COOX基を表し、Xは置換されていてもよい、メチル基、エチル基、iso−ブチル基、n−ブチル基、t−ブチル基、n−ヘキシル基、n−オクチル基、2−エチル−ヘキシル基などの低級アルキル基、置換基されていてもよい、フェニル基、ナフチル基などのアリール基、または置換されていてもよい、フリル基、ピリジル基、チエニル基などの複素環を表す。
【0026】
好ましくは、R6 はメチル基またはエチル基を表し、R7 はアルキル基、アラルキル基、またはアルコキシアルキル基を表し、R8 、R9 、およびR10はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、ハロゲン原子などで置換されていてもよい低級アルキル基、−OX基、または−COOX基を表し、Xは低級アルキル基、アルコキシアルキル基、アルコキシアルコキシアルキル基などの1つ以上のエーテル結合を有するアルキル基、置換されていてもよいフェニル基、アラルキル基、または置換されていてもよい複素環を表す。
【0027】
さらに好ましくは、R6 はメチル基を表し、R7 は低級アルキル基、ベンジル基、または低級アルコキシアルキル基を表し、R8 は水素原子を表し、R9 およびR10はそれぞれ独立に、水素原子、フッ素原子、塩素原子、低級アルキル基、トリフルオロメチル基、−OX基、または−COOX基を表し、Xは低級アルキル基、低級アルコキシアルキル基、置換されていてもよいフェニル基、置換されていてもよいベンジル基、または置換されていてもよい複素環を表す。
【0028】
本発明におけるキノフタロン系色素は、好ましくは一般式(3)で示される色素である。
【0029】
【化11】
【0030】
一般式(3)中、R11は水素原子または低級アルキル基を表し、R12は水素原子、フッ素原子、臭素原子、塩素原子などのハロゲン原子、アルコキシ基、または置換されていてもよいフェノキシ基を表し、Aは−COOR13基または−CONR14R15基を表し、R13は置換されていてもよい、メチル基、エチル基、iso−ブチル基、n−ブチル基、t−ブチル基、n−ヘキシル基、n−オクチル基、2−エチル−ヘキシル基などの低級アルキル基、置換されていてもよい、ビニル基、アリル基、ブテニル基、オクテニル基、2−エチル−ヘキセニル基などの低級アルケニル基、または置換されていてもよい、フェニル基、ナフチル基などのアリール基を表し、R14及びR15はそれぞれ独立に、水素原子、置換されていてもよい、メチル基、エチル基、iso−ブチル基、n−ブチル基、t−ブチル基、n−ヘキシル基、n−オクチル基、2−エチル−ヘキシル基などの低級アルキル基、置換されていてもよい、ビニル基、アリル基、ブテニル基、オクテニル基、2−エチル−ヘキセニル基などの低級アルケニル基、または置換されていてもよい、フェニル基、ナフチル基などのアリール基を表す。ただし、R14及びR15は同時に水素原子ではない。
【0031】
好ましくは、R11は水素原子または炭素数1〜4のアルキル基を表し、R12は水素原子またはハロゲン原子を表し、Aは−COOR13基または−CONR14R15基を表し、R13は置換されていてもよい炭素数3〜12のアルキル基または置換されていてもよいフェニル基を表し、R14及びR15はそれぞれ独立に、置換されていてもよい低級アルキル基または置換されていてもよいアリール基を表す。
【0032】
さらに好ましくは、R11は水素原子または炭素数1〜4のアルキル基を表し、R12は水素原子または臭素原子を表し、Aは−COOR13基または−CONR14R15基を表し、R13は炭素数3〜8のアルキル基または総炭素数3〜8のアルコキシアルキル基を表し、R14及びR15は低級アルキル基を表す。
【0033】
本発明で黄色色材層に用いられる各黄色色素の、黄色色材層中の全黄色色素に対する重量比率は、各々5重量%以上、好ましくは各々15重量%以上となるように色素を配合して用いるのが、画像の物理的刺激に対する耐性を向上させるうえで好ましい。
【0034】
本発明の感熱転写シートは黄色色材層の他に少なくともシアン色材層を有するのが好ましい。シアン色材層には感度や耐光性等の点からインドアニリン系シアン色素、またはアントラキノン系シアン色素を用いるのが好ましいが、特に好ましいのはインドアニリン系シアン色素である。シアン色材層においてインドアニリン系シアン色素、アントラキノン系シアン色素は、一種類でも、複数種類のものを配合して用いてもよい。
【0035】
本発明に用いられるインドアニリン系色素は、好ましくは一般式(6)で示される色素である。下記一般式(6)で示されるインドアニリン系色素において、アリール基、アラルキル基としては炭素数6〜10のものが通常用いられる。
【0036】
【化12】
【0037】
一般式(6)において、−E−は−NHCO−、−NHCOO−、−CONH−、または−CONR27−を表し、R27は置換されていてもよい、メチル基、エチル基、iso−ブチル基、n−ブチル基、t−ブチル基、n−ヘキシル基、n−オクチル基、2−エチル−ヘキシル基などの低級アルキル基、置換されていてもよい、ビニル基、アリル基、ブテニル基、オクテニル基、2−エチル−ヘキセニル基などの低級アルケニル基、置換されていてもよい、フェニル基、ナフチル基などのアリール基、置換されていてもよい、ベンジル基、フェネチル基などのアラルキル基、またはアルキル基もしくはハロゲン原子で置換されていてもよい複素環を表す。R22は置換されていてもよい、メチル基、エチル基、iso−ブチル基、n−ブチル基、t−ブチル基、n−ヘキシル基、n−オクチル基、2−エチル−ヘキシル基などのアルキル基;置換されていてもよい、ビニル基、アリル基、ブテニル基、オクテニル基、2−エチル−ヘキセニル基などの低級アルケニル基;置換されていてもよい、フェニル基、ナフチル基などのアリール基;置換されていてもよい、ベンジル基、フェネチル基などのアラルキル基;アルキル基またはハロゲン原子で置換されていてもよい、フリル基、ピリジル基、チエニル基などの複素環を表す。R23およびR24はそれぞれ独立に置換されていてもよい、メチル基、エチル基、iso−ブチル基、n−ブチル基、t−ブチル基、n−ヘキシル基、n−オクチル基、2−エチル−ヘキシル基などのアルキル基を表し、R25は水素原子または置換されていてもよい、メチル基、エチル基、iso−ブチル基、n−ブチル基、t−ブチル基、n−ヘキシル基、n−オクチル基、2−エチル−ヘキシル基などの低級アルキル基を表し、R26は水素原子または置換されていてもよい、メチル基、エチル基、iso−ブチル基、n−ブチル基、t−ブチル基、n−ヘキシル基、n−オクチル基、2−エチル−ヘキシル基などの低級アルキル基を表し、Xは水素原子またはフッ素原子、臭素原子、塩素原子などのハロゲン原子を表す。また、XはR25と連結して、置換されていてもよい環を形成してもよい。
【0038】
好ましくは、−E−は−NHCO−、−NHCOO−、または−CONH−を表し、R22はアルキル基、低級アルケニル基、アラルキル基、アリール基、ハロゲン原子で置換された低級アルキル基、ヒドロキシル基で置換された低級アルキル基、シアノ基で置換された低級アルキル基、エーテル結合を有するアルキル基、複素環で置換されたアルキル基、または複素環を表し、R23は低級アルキル基を表し、R24は低級アルキル基、ハロゲン原子で置換された低級アルキル基、ヒドロキシル基で置換された低級アルキル基、アミノ基で置換された低級アルキル基、エーテル結合を有するアルキル基、アミド結合を有するアルキル基、またはスルフォニルアミノ結合を有するアルキル基を表し、R25は水素原子、メチル基、またはエチル基を表し、R26は水素原子またはメチル基を表し、Xは水素原子、塩素原子、または臭素原子を表す。また、XはR25と連結して、置換されていてもよい環を形成してもよい。
【0039】
より好ましくは、−E−は−NHCO−または−NHCOO−を表し、R22は低級アルキル基、低級アルケニル基、炭素数7〜10のアラルキル基、炭素数6〜10のアリール基、クロロエチル基、低級アルコキシアルキル基、テトラヒドロフルフリル基、炭素数9〜12のアラルキルオキシエチル基、炭素数8〜12のアリールオキシエチル基、低級アルケニルオキシエチル基、またはヘテロ原子としてO、NあるいはSを含んでいる複素環を表し、R23はメチル基またはエチル基を表し、R24は低級アルキル基、クロルエチル基、ヒドロキシエチル基、低級アルコキシエチル基、炭素数9〜12のアラルキルオキシエチル基、または炭素数8〜12のアリールオキシエチル基を表し、R25はメチル基またはエチル基を表し、R26は水素原子またはメチル基を表し、Xは水素原子または塩素原子を表す。
【0040】
さらに好ましくは、−E−は−NHCO−または−NHCOO−を表し、R22は低級アルキル基、低級アルケニル基、フェニル基、トルイル基、ベンジル基、テトラヒドロフルフリル基、低級アルコキシ低級アルキル基、フリル基、ピリジル基、またはチエニル基を表し、R23およびR24はエチル基、プロピル基、またはブチル基を表し、R25はメチル基またはエチル基を表し、R26は水素原子またはメチル基を表し、Xは水素原子または塩素原子を表す。また、Xが塩素原子の場合には、R22は炭素数2以上であると色素の溶解度が向上するので好ましい。
【0041】
特に好ましくは、−E−は−NHCO−または−NHCOO−を表し、R22はメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ベンジル基、低級アルコキシエチル基、またはフリルを表し、R23およびR24はエチル基を表し、R25はメチル基またはエチル基を表し、R26は水素原子またはメチル基を表し、Xは水素原子または塩素原子を表す。
【0042】
本発明に用いられるアントラキノン系色素は、好ましくは一般式(7)で示される色素であり、R28およびR29はそれぞれ独立に、水素原子、置換されていてもよい、メチル基、エチル基、iso−ブチル基、n−ブチル基、t−ブチル基、n−ヘキシル基、n−オクチル基、2−エチル−ヘキシル基などの低級アルキル基、置換されていてもよい、ビニル基、アリル基、ブテニル基、オクテニル基、2−エチル−ヘキセニル基などの低級アルケニル基、置換されていてもよい、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などのシクロアルキル基、置換されていてもよい、フェニル基、ナフチル基などのアリール基、または置換されていてもよい、フリル基、ピリジル基、チエニル基などの複素環基を表す。
【0043】
好ましくは、R28およびR29はそれぞれ独立に、水素原子、置換されていてもよい低級アルキル基、または置換されていてもよいアリール基を表し、より好ましくは、R28およびR29はそれぞれ独立に、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、フェニル基、またはトルイル基を表す。
【0044】
【化13】
【0045】
これらアルキル基、アルケニル基、アラルキル基、アルコキシ基に置換していてもよい基としては、アルコキシ基、アリール基、ハロゲン原子などが挙げられ、これらアリール基に置換していてもよい基としては、アルキル基、ハロゲン原子などが挙げられる。
【0046】
色材層は通常、色素とバインダー樹脂を溶剤に溶解または分散させて得られるインクを基材に塗布、乾燥することによって形成される。
本発明において用いることができるバインダー樹脂の例としてはポリカーボネート樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルアセトアセタール樹脂、セルロース系樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、フェノキシ樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアラミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、アクリロニトリル・スチレン共重合樹脂等が挙げられる。これらの中で好ましい樹脂はポリカーボネート樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルアセトアセタール樹脂、セルロース系樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、フェノキシ樹脂、アクリロニトリル・スチレン共重合樹脂である。
【0047】
高い濃度の印画物を得るためには、色素とバインダー樹脂が溶媒に溶解しているのが好ましい。本発明において用いることができる溶剤の例としては、トルエン、キシレン等の芳香族系溶剤;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶剤;エタノール、イソプロパノール、ブタノール等のアルコール系溶剤、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル系溶剤、ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン等のアミド系溶剤等を挙げることができる。特にテトラヒドロフランは色素、樹脂の溶解力が高いので好ましく用いることができる。
【0048】
上記インクの中には他の成分として必要に応じて、有機または無機の非昇華性粒子、分散剤、帯電防止剤、ブロッキング防止剤、消泡剤、可塑剤、酸化防止剤、粘度調節剤等の添加剤を加えることができる。また、レーザー光を用いる昇華転写方式に用いるために赤外線吸収剤やカーボンブラックを添加することもできる。
【0049】
インクを基材に塗布する塗布方式には特に制限はないが、グラビアコート、グラビアリバースコート、ロールコート、ダイコート等を用いることができる。塗布膜厚は乾燥膜厚で0.1〜5μmが好ましく、特に好ましくは0.2〜3μmである。
【0050】
色材層におけるバインダー樹脂重量に対する色素の合計重量の比が高い方が一般に転写感度や最高到達濃度が高い。しかし、高感度・高濃度を得るべくバインダー樹脂重量に対する色素重量を大きくしすぎると、高温あるいは高湿下の保存で色材層から結晶が析出したり、色材層と反対の面に耐熱活性層が塗布してある感熱転写シートを巻いて保存した場合には色材層と耐熱活性層がブロッキングを起こす危険がある。従って、転写感度や最高到達濃度は用いる色素によって自ずから限界が生じるが、本発明の感熱転写シートは高感度・高濃度を得るべくバインダー樹脂重量に対する色素重量を大きくしてもこれらの問題が非常に起こりにくい。本発明の色材層においてバインダー樹脂と色素の重量比は3:1〜1:3が好ましく、より好ましくは2:1〜1:2、特に好ましくは1.5:1〜1:1.5である。
【0051】
本発明の感熱転写シートにおいて基材の色材層と反対の面には耐熱滑性層を設けることが好ましい。耐熱滑性層としては特に制限はないが、例えばガラス転移温度の高い熱可塑性樹脂を用いたもの、紫外線硬化樹脂や熱硬化樹脂を用いたものを用いることができる。また、滑性を出すためにシリコーンオイル等の滑剤を添加するのが好ましい。
【0052】
感熱転写記録を行うには、本発明の感熱転写シートの色材層面と、基材の片面に好ましくは受像層を設けた被記録材の受像面とを向かい合うように重ね合わせ、感熱転写シートの色材層面とは反対側からライン型サーマルヘッドやレーザー等の熱源を用いて、画像信号に応じた熱を加え、色材層中の色素を受像層に移行させるのが一般的である。その際、加えられる熱量に応じて、移行する色素量が変更できることから、濃淡の表現が可能であり、精細な画像を得ることが可能である。黄色、マジェンタ、シアンの3色、または黒を加えた4色について同様の操作を繰り返すことで、フルカラーの写真調の画像を得ることができる。
【0053】
画像を得るための感熱転写シートとしては、各色別々の感熱転写シートを用いる場合と面順次の感熱転写シートを用いる場合とがあり、どちらでもよいが、好ましくは面順次の感熱転写シートの方が画像を得るのに1本の転写シートで済み、転写を行う装置が簡便となることから好ましい。
【0054】
色材層の1つとしてマジェンタの色材層を有する場合には、マジェンタ色素として、アントラキノン系色素、イミダゾールアゾ系色素、チアジアゾールアゾ系色素、ベンゼンアゾ系色素を好適に用いることができ、必要に応じて配合して用いてもよい。
【0055】
色素を移行させるための熱源としては、ライン型サーマルヘッドが一般的であるが、レーザー光線を使用することも知られている。その際には、レーザー光を熱に変換するための、光熱変換材を使用する必要があり、赤外線吸収剤やカーボンブラックを感熱転写シートの色材層中、色材層と基材との間、あるいは色材層とは反対面に添加することが知られている。
【0056】
本発明においては、基材に対して色材層と同じ側に熱転写可能な保護層を設けることができる。本発明の保護層は、指のあぶら、水、埃等による画像の汚染、湿気、空気等による色素の分解、機械的衝撃等による画像の傷付きから画像を保護する目的で画像の上に設けられる。画像の上に塗工によって設けることもできるが、基材上に熱転写可能に設けられることが好ましい。その場合、基材の保護層とは反対の面から加熱することによって、画像上に保護層を設けることができる。基材上に保護層のみを設けたシート、あるいは基材上に色材層と保護層を面順次に設けたシートのどちらも好ましく用いることができるが、後者の場合、画像形成後に連続して同じ熱源で画像上に保護層を形成することができることから簡便で特に好ましい。画像上に保護層を設けることによって画像の安定性が向上するという利点があるが、印画時間が余計にかかったり、コストアップになるという可能性がある。従って、保護層なしでも安定な画像を与える感熱転写シートを用いることも重要である。
【0057】
以下に、保護層が基材上に熱転写可能に設けられた場合について述べるが、その用法はこれに限定されるものではない。
保護層を設ける基材は、色材層を設けるのに用いられる基材と同様の物を用いることができる。保護層を設ける面には保護層の剥離性を調整するための剥離調整層を設けてもよい。保護層は、基材側から、表面層と接着層の少なくとも2層を有する構造が好ましい。基材の保護層とは反対面には、耐熱滑性層を設けることが好ましい。
【0058】
表面層は耐摩擦性、耐候性等に優れた種々の樹脂、例えば、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリエステル樹脂、アクリルウレタン樹脂、これらの樹脂のシリコーン変性樹脂、及びこれらの樹脂の混合物等を用いることができる。これらの樹脂の中では、アクリル樹脂が好ましい。
【0059】
これらの樹脂は強靱な被膜を形成するから、基材の反対面から加熱された転写時における端部の切れが不十分になりやすい。これを改善するため表面層には、シリカ等の微粒子やワックス等を添加することができる。基材上に表面層を形成する方法としては、色材層を形成する場合に説明した方法と同様の方法を用いることができる。表面層の厚みは好ましくは、0.1〜10μm程度であり、好ましくは1〜5μm程度である。
【0060】
表面層には、耐光性、耐候性を向上させる目的で、ヒンダードアミン系光安定剤、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系、又はベンゾエート系紫外線吸収剤、酸性燐酸エステルの金属塩類、微粒子無機顔料などを添加するのが好ましい。これらの添加剤の中で特に好ましいのは紫外線吸収剤である。紫外線吸収剤を添加することで表面層、ひいては保護層に紫外線吸収能を持たせることは、保護層の耐光性だけでなく、画像の耐光性も向上させることができるので好ましい。紫外線吸収剤の添加量は表面層に重量で0.01〜20%が好ましく、より好ましくは、0.1〜10%である。添加による紫外線部の光透過率が300nmで3%以下であることが好ましい。以下に用いることができる添加剤の例を挙げるが、これらの添加剤は複数併用しても構わない。
【0061】
ヒンダードアミン系光安定剤の例としては、部分構造として、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジン等のピペリジン構造を有するものが好ましく、例えば、コハク酸ジメチル・1−(2−ヒドロキシエチル)−4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン重縮合物、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、(ポリ〔{6−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)アミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル}{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}ヘキサメチレン{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}〕)等を挙げることができる。
【0062】
また好ましく用いることができる紫外線吸収剤の例としては、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤として、2−(5−メチル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−〔2−ヒドロキシ−3,5−ビス(α,α−ジメチルベンジル)フェニル〕−2H−ベンゾトリアゾール、2−(3,5−ジ−t−ブチル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(3−t−ブチル−5−メチル−2−ヒドロキシフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(3,5−ジ−t−ブチル−2−ヒドロキシフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(3,5−ジ−t−アミル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−t−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール等が、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤としては、2、4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−n−オクトキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、p−t−ブチルフェニルサリシレート−2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノンなどが、ベンゾエート系紫外線吸収剤としては、2,4−ジ−t−ブチルフェニル−3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシベンゾエート、p−t−ブチルフェニル−サリシレートなどを挙げることができる。
【0063】
また酸性燐酸エステルの金属塩類の例としては、ステアリルアシッドホスフェイト、マグネシウムステアリルホスフェイト、アルミニウムステアリルホスフェイト、カルシウムステアリルホスフェイト、ジンクステアリルホスフェイト、バリウムステアリルホスフェイトなどが挙げられる。微粒子無機顔料の例としては、酸化亜鉛、酸化錫系導電性微粉末、酸化チタン、TiO2 ・SnO2 (Sbドープ)、硫酸バリウム系導電粉末などが挙げられる。
【0064】
接着層は、アクリル樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリエステル樹脂、酢酸ビニル樹脂、塩化ビニル・酢酸ビニル共重合樹脂、ポリアミド樹脂、シリコン樹脂等の熱時接着性の良好な樹脂を主に含有する。添加剤として、表面層と同様のものを添加していてもよい。接着層の形成は、樹脂や添加剤の溶液を塗布及び乾燥することによって、表面層を形成するのと同様の方法で、好ましくは0.1〜5μm程度の厚みに表面層上に形成される。
感熱転写記録において本発明の感熱転写シートと一緒に用いる被記録材は特に制限はないが、好ましくは被記録材の基材の少なくとも一方の面に受像層が設けられているものである。
【0065】
被記録材の基材は、合成紙、セルロース紙、キャストコート紙、合成樹脂フィルム、合成樹脂によるカード、セルロース紙の両側に合成紙や合成樹脂フィルムを貼り合わせた基材等が使用される。色材層との密着性が高い方が記録時の色素の転写が均一に行われることから、その表面は平滑であることが好ましく、できればベック平滑度で10000秒以上の基材を用いることが好ましい。この点から合成紙、合成樹脂フィルム、セルロース・合成紙貼合基材、セルロース・合成樹脂フォルム貼合基材、カードを使用した基材が好ましい。
【0066】
受像層は樹脂を主体とした層で、色素を受容して画像を形成する役目を持つ。樹脂としては色素の染まりやすい樹脂が好ましい。例えば、酢酸ビニル樹脂、塩化ビニル樹脂、塩化ビニル・酢酸ビニル共重合樹脂、セルロース樹脂、ポリエステル樹脂、アクリロニトリル・スチレン共重合樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリビニルアセタール系樹脂等を挙げることができる。これらは混合、共重合して用いることが可能である。ガラス転移点の低すぎる樹脂を使用すると画像が保存時ににじんでしまうので、好ましくない。
【0067】
受像層には樹脂の他に、必要に応じて添加剤を加えることができる。添加剤としては、樹脂を硬化させるためのイソシアネート等の硬化剤、熱転写時の色材層との融着防止のために添加されるシリコーンなどの剥離剤等を挙げることができるがこの限りではない。受像層と基材の間には接着性を高めるためのアンカーコートを設けることもできる。
【0068】
被記録材の基材に透明フィルムを用い、画像を受像層に形成した後、受像層面を他の不透明な基材に圧着させ、画像を基材の透明フィルム越しに見る構成にして、基材である透明フィルム自身に保護層の役目をさせる用法も可能であり、その場合、透明フィルムに紫外線吸収剤、酸化防止剤等の添加剤が含まれていることが好ましい。
【0069】
また、被記録材の基材上に受像層を剥離可能に形成し、その剥離可能な受像層を中間記録層として用いる用法ある。この場合、中間記録層に画像を形成した後、中間記録層を他の最終記録材の表面に圧着させてから基材を剥がして、中間記録層を最終記録材上に残し、画像を中間受像層越しに見る構成にして、中間記録層そのものに保護層の役目をさせる。この場合中間記録層に紫外線吸収剤、酸化防止剤等の添加剤が含まれていることが好ましい。
【0070】
【実施例】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はその要旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。なお、以下において特に明記しない限り、「%」、「部数」はそれぞれ「重量%」、「重量部」を表わす。
【0071】
<実施例1〜4、比較例1〜6>
(a)黄色感熱転写シートの作成
表1に記載の色素を表1に記載の重量部で、ポリビニルブチラール樹脂(商品名:BX−1、積水化学(株)製)100部、テトラヒドロフラン1200部、トルエン1000部、シクロヘキサノン200部に混合、攪拌し、色素と樹脂を完溶させてインクを作成した。このインクを厚さ6μmのポリエステルフィルムにバーコーターを用いて乾燥膜厚が0.8μmになるように塗布、乾燥し、黄色色材層を形成した。その背面(ポリエステルフィルムのインクを塗布していない面)にアクリル樹脂(商品名:BR−100、三菱レイヨン(株)製)10部、アミノ変成シリコーンオイル(商品名:KF−393、信越化学(株)製)1部、トルエン89部を混合した液をバーコーターを用いて乾燥膜厚が1μmになるように塗布、乾燥し耐熱滑性層を形成した。
【0072】
(b)被記録材(受像体)の作成
ポリビニルフェニルアセタール樹脂65部、塩化ビニル/酢酸ビニル/ビニルアルコール共重合樹脂(商品名:VAGD、ユニオンカーバイド(株)製)35部、変性用シリコーンワニス(商品名:TSR−160、固形分濃度60%、東芝シリコーン(株)製)15部、ヘキサメチレンジイソシアネート系多官能イソシアネート化合物(商品名:マイテックNY−710A、固形分濃度75%、三菱化学(株)製)6部、アミノ変性シリコーンオイル(商品名:KF393、信越化学工業(株)製)1部、メチルエチルケトン300部、トルエン300部を混合撹拌して得られた液を、厚み150μmのポリプロピレン製合成紙(商品名:ユポFPG150、王子油化合成紙(株)製)にワイヤーバーで塗布、乾燥し(乾燥膜厚約5μm)、さらにオーブン中で60℃で48時間熱処理することにより受像体を作製した。上記のポリビニルフェニルアセタール樹脂はポリビニルアルコール(鹸化度99モル%、重合度1700)をフェニルアセトアルデヒドでアセタール化することにより得たものであり、下記式で示される構造であった。
【0073】
【化14】
【0074】
(c)感熱転写記録(黄色の印画)
上記(a)の様にして作製された黄色感熱転写シートの色材層面と、上記(b)の様にして作成された受像体の樹脂塗布面を重ね、5.6ドット/mmの発熱抵抗体密度を有する部分グレース型ラインサーマルヘッドを耐熱滑性層面に当てて、送り方向に6ライン(ドット)/mmで、13ms/ラインの速度で、印加電力0.20W/ドットで印画を行った。1ライン当たりのヘッドに印加する時間を9msにして印画を行った。
【0075】
(d)印画濃度測定
上記(c)の様にして印画された印画物の濃度を分光測色計(商品名:SPM−50、グレタグ社製)を用いてDIN−NBフィルターを使って測定した。
【0076】
(e)色材層の安定性試験(色材層からの結晶析出)
上記(a)の様にして作成された感熱転写シートを55℃において2週間保存したのち、その表面を200倍の顕微鏡で観察して、結晶が析出しているかどうかを調べた。
【0077】
(f)印画物の安定性試験(印画物からの結晶析出)
上記(c)の様にして印画された印画物の表面を、市場から入手した受像体(商品名:VW−MPA50 松下電器産業(株)製)の裏側(非印画面)で軽くこすることにより印画物表面に微細な傷を多数付け、さらに45℃において2週間保存したのち、その表面を200倍の顕微鏡で観察して、結晶が析出しているかどうかを調べた。
【0078】
(g)耐光性試験
印加時間を6ms/ラインにした他は(c)と同様にして黄色の印画物を作成した。この様にして得られた印画物(保護層なし黄色)を、キセノンランプを用いた耐光性試験機(商品名:キセノンフェードメーターFAL−25AX、スガ試験機(株)製)を用いて、80時間耐光性試験を行い、試験前の印画物と試験後のそれとのCIELAB色差(△E)を分光測色計(商品名:SPM−50、グレタグ社製)を用いて、D50光源、視野角2度を使って測定した。
【0079】
【表1】
【0080】
色素1−1:次式で示される一般式(1)においてR1 とR2 がフェニル基、R3 とR4 がメチル基、R5 が水素原子の色素
【0081】
【化15】
【0082】
色素2−1:次式で示される一般式(2)においてR6 がメチル基、R7 がn−ブチル基、R8 とR9 が水素原子、R10が塩素原子の色素
【0083】
【化16】
【0084】
色素2−2:次式で示される一般式(2)においてR6 がメチル基、R7 がn−ブチル基、R8 とR9 が水素原子、R10が−COOX基、Xがベンジル基の色素
【0085】
【化17】
【0086】
色素3−1:次式で示される一般式(3)においてR11が水素原子、R12が臭素原子、Aが−CONR14R15基、R14とR15がプロピル基の色素
【0087】
【化18】
【0088】
これらの試験(d)、(e)、(f)、(g)の結果を表2にまとめる。
【0089】
【表2】
【0090】
<実施例5,6、比較例7>
(h)シアン感熱転写シートの作成
次式で示される色素4(一般式(6)において、−E−が−NHCOO−を表し、R22がエチル基、R23とR24がエチル基、R25とR26がメチル基、Xが塩素原子の色素)80部、ポリビニルブチラール樹脂(商品名:BX−1、積水化学(株)製)100部、テトラヒドロフラン1200部、トルエン1000部、シクロヘキサノン200部を混合、攪拌し、色素と樹脂を完溶させてインクを作成した。このインクを厚さ6μmのポリエステルフィルムにバーコーターを用いて乾燥膜厚が0.8μmになるように塗布、乾燥し、シアン色材層を形成した。その背面にアクリル樹脂(商品名:BR−100、三菱レイヨン(株)製)10部、アミノ変成シリコーンオイル(商品名:KF−393、信越化学(株)製)1部、トルエン89部を混合した液をバーコーターを用いて乾燥膜厚が1μmになるように塗布、乾燥し耐熱滑性層を形成した。
【0091】
【化19】
【0092】
(i)保護層付き感熱転写シートの作成
アクリル樹脂(BR−100、三菱レイヨン製)80部、紫外線線吸収剤(2−(3,5−ジ−t−ブチル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、商品名:TINUVIN320 日本チバガイギー(株)製)5部、メチルエチルケトン40部、トルエン40部を攪拌して得られた塗工液を、剥離性を持たせた厚さ6μmのポリエステルフィルムに塗工し、乾燥厚み2μmの樹脂層を形成した。その上に、接着層として、アクリル系樹脂エマルジョン(商品名:ポリゾールAT2011、昭和高分子(株)製)のメチルエチルケトン溶液を乾燥厚みが表面層を合わせた総計として、3μmの保護層を設けた。また、ポリエステルフィルムの保護層とは反対の面に、(a)と同様にして耐熱滑性層を形成した。
【0093】
(j)耐光性試験(緑色の印画、保護層の転写)
印加時間を6ms/ラインにした他は(c)と同様にして黄色の印画物を作成した。実施例5では実施例1と同じ黄色色材層を用い、実施例6では実施例4と同じ黄色色材層を用い、比較例7では比較例5と同じ黄色色材層を用いた。
【0094】
黄色の印画物の上から(h)で作成したシアン感熱転写シートのシアン色材層を重ねて印画(印加時間6ms)することで緑色の印画物を得た(保護層なし緑)。この緑の印画物についてさらに、印画面と(i)で作成した保護層の接着層が接するように重ね、前述したサーマルヘッドを用いて耐熱滑性層の面から加熱し(印加時間9ms)、画像と保護層とを接着させた。その後保護層の基材を剥離することで、表面に保護層の形成された画像を得た(保護層あり緑)。この様にして得られた印画物(保護層なし緑、保護層あり緑)を、キセノンランプを用いた耐光性試験機(商品名:キセノンフェードメーターFAL−25AX、スガ試験機(株)製)を用いて、80時間耐光性試験を行い、試験前の印画物と試験後のそれとのCIELAB色差(△E)を分光測色計(商品名:SPM−50、グレタグ社製)を用いて、D50光源、視野角2度を使って測定した。
【0095】
試験(j)の結果を表3にまとめる。
【0096】
【表3】
【0097】
表2と表3の結果から明らかなように、本発明の感熱転写シートは高濃度を得るべく色材層における色素重量/バインダー樹脂重量の比を高くしても色材層が熱的に安定であり、感熱転写により高濃度の画像が得られ、かつ良好な画像保存安定性、すなわち光や物理的刺激に対する耐性を持つ画像を与えることがわかる。さらに、緑色印画物について保護層を施したときにはその効果が一層顕著になる。
【0098】
【発明の効果】
本発明の感熱転写シートは色材層が熱的に安定であり、感熱転写により高濃度の画像が得られ、かつ良好な画像保存安定性、すなわち光や物理的刺激に対する耐性を持つ画像が得られる。
Claims (3)
- 基材の少なくとも一方の面に少なくとも黄色色材層を設けた感熱転写シートにおいて、前記黄色色材層が少なくとも、下記一般式(1)で示されるビスピラゾロンメチン系色素、下記一般式(2)で示されるピリドンアゾ系色素、および下記一般式(3)で示されるキノフタロン系色素を含有することを特徴とする感熱転写シート。
表す。)
- 基材の黄色色材層と同一の面にシアン色材層を面順次に設け、かつ、シアン色材層がシアン色素としてインドアニリン系色素またはアントラキノン系色素を含有することを特徴とする請求項1に記載の感熱転写シート。
- 基材の少なくとも一方の面に熱転写可能な保護層を設けたことを特徴とする請求項1または2に記載の感熱転写シート。
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