JP3896990B2 - 感熱転写記録用インドアニリン系色素、並びにそれを用いた感熱転写記録用インク及び感熱転写記録用シート - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、感熱転写記録、特に色素転写型感熱転写記録に使用される色素、並びにそれを用いた感熱転写記録用インク及び感熱転写記録用シートに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
色素転写型感熱転写記録は、ベースフィルム上に熱移行性の色素を含む色材層を有する感熱転写記録用シートと色素受容層を表面に有する受像シートとを重ね合わせ、感熱転写記録用シートを加熱して感熱転写記録用シート中の色素を受像シートに転写することにより記録を行うものである。この記録方法は、加熱エネルギーの大きさで色素の転写量を制御することにより、階調表現を容易に行うことができるため、ビデオプリンターなどのフルカラー画像記録用に用いられている。
【0003】
このような色素転写型感熱転写記録においては、感熱転写記録用シートに用いられる色素が、転写記録のスピード、記録物の画質、保存安定性などに大きな影響を与えることが知られている。したがって、色素転写型感熱転写記録に用いられる色素は、以下のような条件を満たすことが必要である。
▲1▼ 熱記録ヘッドの作動条件で容易に昇華及び/又は熱拡散すること。
▲2▼ 熱記録ヘッドの作動条件で熱分解しないこと。
▲3▼ 色再現上、好ましい色相を有すること。
▲4▼ 分子吸光係数が大きいこと。
▲5▼ 熱、光、湿気、薬品などに対して安定であること。
▲6▼ 合成が容易であること。
▲7▼ インク化適性が優れていること。
▲8▼ 安全性上問題のないこと。
【0004】
感熱転写記録に用いられるシアン系色素としては、インドアニリン系色素が広く用いられており、特許文献1〜5には種々の感熱転写記録用インドアニリン系色素が記載されている。
【0005】
例えば、特許文献1には下記構造式で表される色素が具体的に開示されている。
【0006】
【化2】
【0007】
特許文献2には下記構造式の色素が具体的に開示されている。
【0008】
【化3】
【0009】
特許文献3には下記構造式の色素が具体的に開示されている。
【0010】
【化4】
【0011】
特許文献4には下記構造式の色素が具体的に開示されている。
【0012】
【化5】
【0013】
特許文献5には下記構造式の色素が具体的に開示されている。
【0014】
【化6】
【0015】
ところで、近年、更に記録物の転写濃度や耐光性などに優れる色素が要求されるようになってきた。しかしながら、特許文献1〜5に具体的に記載されている色素又は色素混合物ではいずれもこれらの要求を満たすことができず、より優れた性質を有する感熱転写記録用色素、特に、色相及び色濃度に優れ、耐光性の良好な色素の出現が望まれている。
【0016】
【特許文献1】
特開昭61−31292号公報
【特許文献2】
特開昭61−35994号公報
【特許文献3】
特開平4−284294号公報
【特許文献4】
特開平5−8562号公報
【特許文献5】
特開平5−169859号公報
【0017】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、感熱転写記録用色素に要求される前記条件、特に記録物の色相、色濃度、及び耐光性の条件を満たす感熱転写記録用色素、並びにこれを用いた感熱転写記録用インク、及び感熱転写記録用シートを提供することを課題とする。
【0018】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、鋭意検討した結果、インドアニリン系化合物において、2つの環の特定の位置にそれぞれ置換基を有し、かつイミノ基のp位のジアルキルアミノ基の両方のアルキル基がアシルオキシ基で置換された構造の色素を用いることにより上記課題が解決されることを見出し、本発明を完成した。
【0019】
すなわち、本発明は、下記一般式(I)
【0020】
【化7】
【0021】
(式中、R1 はアルキル基又はトリフルオロメチル基を表し、R2 はハロゲン原子を表し、R3 はアルキル基を表し、R4 はアルキル基又はアルコキシ基を表し、R5 及びR6 はそれぞれ独立してアルキル基、アルコキシアルキル基、アルコキシ基又はトリフルオロメチル基を表す。m及びnはそれぞれ独立して1〜3の整数を表す。)
で表される感熱転写記録用インドアニリン系色素、並びにそれを用いた感熱転写記録用インク及び感熱転写記録用シート、に存する。
【0022】
【発明の実施の形態】
本発明に係る感熱転写記録用色素は、前記一般式(I)で表されるものである。
本発明の色素は、R2にハロゲン原子を導入し、かつ、イミノ基のp位のジアルキルアミノ基に2つのアシルオキシ基を置換させ、これを組み合わせた点を特徴とするものであり、一般式(I)におけるR1、R3、R4、R5及びR6としては、公知のインドアニリン系色素において知られている置換基の範囲のものを用いることができる。
【0023】
具体的には、R1は、直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基、直鎖状若しくは分岐鎖状のアルコキシ基又はトリフルオロメチル基を表す。アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、n−ヘキシル基、n−オクチル基及び2−エチルヘキシル基等の炭素数1〜10のアルキル基が挙げられる。これらのうち、炭素数1〜4のアルキル基、特にメチル基又はエチル基が好ましい。アルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロピルオキシ基、n−ブトキシ基、イソブチルオキシ基、t−ブチルオキシ基、n−ヘキシルオキシ基、n−オクチルオキシ基、2−エチルヘキシルオキシ基等の炭素数1〜10のアルコキシ基が挙げられる。これらのうち、炭素数1〜4のアルコキシ基、特にメトキシ基又はエトキシ基が好ましい。
【0024】
R2は、フッ素原子、塩素原子、臭素原子又は沃素原子を表す。これらのうち塩素原子又は臭素原子、特に塩素原子が好ましい。
R3は、直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基を表す。アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、n−ヘキシル基、n−オクチル基、2−エチルヘキシル基等の炭素数1〜10のアルキル基が挙げられる。これらのうち、炭素数1〜4のアルキル基、特にメチル基又はエチル基が好ましい。
【0025】
R4は、直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基又は直鎖状若しくは分岐鎖状のアルコキシ基を表す。アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、n−ヘキシル基、n−オクチル基、2−エチルヘキシル基等の炭素数1〜10のアルキル基が挙げられる。これらのうち、炭素数1〜4のアルキル基、特にメチル基又はエチル基が好ましい。アルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロピルオキシ基、n−ブトキシ基、イソブチルオキシ基、t−ブトキシ基、n−ヘキシルオキシ基、n−オクチルオキシ基、2−エチルヘキシルオキシ基等の炭素数1〜10のアルコキシ基が挙げられる。これらのうち、炭素数1〜4のアルコキシ基、特にメトキシ基又はエトキシ基が好ましい。
【0026】
R5及びR6は、それぞれ独立して直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基、直鎖状若しくは分岐鎖状のアルコキシアルキル基、直鎖状若しくは分岐鎖状のアルコキシ基又はトリフルオロメチル基を表す。アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、n−ヘキシル基、n−オクチル基、2−エチルヘキシル基等の炭素数1〜10のアルキル基が挙げられる。これらのうち、炭素数1〜4、特にメチル基、エチル基、n−プロピル基又はイソプロピル基が好ましい。アルコキシアルキル基としては、例えば、メトキシメチル基、メトキシエチル基、メトキシプロピル基、エトキシエチル基、n−プロポキシエチル基、イソプロピルオキシエチル基、n−ブトキシプロピル基、イソブチルオキシエチル基、t−ブトキシエチル基、n−プロポキシブチル基等の炭素数2〜15のアルコキシアルキル基が挙げられる。これらのうち、炭素数2〜4のアルコキシアルキル基、特にメトキシエチル基、エトキシエチル基又はメトキシプロピル基が好ましい。アルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロピルオキシ基、n−ブトキシ基、イソブチルオキシ基、t−ブトキシ基、n−ヘキシル基、2−エチルヘキシルオキシ基等の炭素数1〜10のアルコキシ基が挙げられる。これらのうち炭素数1〜4のアルコキシ基、特にメトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基又はイソプロピルオキシ基が好ましい。
m及びnは、それぞれ独立して1〜3の整数を表すが、共に2であるのが好ましい。
【0027】
本発明の色素は、通常、水又は有機溶媒に可溶のものである。一般に、インドアニリン系色素では、R1、R5及びR6の炭素数が大きくなるほど感熱転写記録用インクに用いる媒体への溶解性が高くなり、転写濃度が低くなる傾向がみられる。本発明者の検討によれば、感熱転写記録用インクに用いる媒体への溶解性と転写濃度とが両立するのは、R1、R5及びR6の炭素数の合計が4以上7以下であり、R1、R5及びR6の炭素数の合計をこの範囲内とするのが好ましい。
【0028】
したがって、本発明に係る感熱転写記録用色素としては、R1がメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、メトキシ基、エトキシ基又はトリフルオロメチル基を表し、R2が塩素原子を表し、R3がメチル基又はエチル基を表し、R4はメチル基、エチル基又はメトキシ基を表し、R5及びR6はそれぞれ独立してメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、メトキシエチル基、エトキシエチル基、メトキシプロピル基、メトキシ基、エトキシ基又はトリフルオロメチル基を表し、かつ、m及びnはそれぞれ2を表すものが好ましい。
【0029】
本発明においては、一般式(I)で表される色素を用いる限りにおいて、本発明の効果を得ることができるが、本発明の効果を十分に発現させるためには色素の分子量が、通常800以下、特に700以下、とりわけ400〜600であることが好ましい。本発明の色素はシアン系の色調を示すが、その色素の最大吸収波長(λmax)は、通常、600〜750nmである。
【0030】
本発明に係る色素のいくつかを表1に例示するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0031】
【表1】
【0032】
本発明の一般式(I)で表される色素の製造方法としては、下記一般式(II)で表されるフェノール類と一般式(III)で表されるアニリン類とを硝酸銀等の酸化剤の存在下で反応させる方法が挙げられる(特許文献1参照)。
【0033】
【化8】
【0034】
(式中、R1、R2及びR3は一般式(I)と同じ意味を表す。Xは水素原子又は塩素原子を表す。)
【0035】
【化9】
【0036】
(式中、R4、R5、R6、m及びnは一般式(I)と同じ意味を表す。)
また、一般式(I)で表される色素は、前記フェノール類(II)と下記一般式(IV)で表されるアニリン類とを反応させて一般式(V)で表されるインドアニリン系化合物とし、この2つの水酸基をそれぞれアシル化することによっても製造することができる(特許文献3参照)。
【0037】
【化10】
【0038】
(式中、R4、m及びnは一般式(I)と同じ意味を表す。)
【0039】
【化11】
【0040】
(式中、R1、R2、R3、R4、m及びnは一般式(I)と同じ意味を表す。)
本発明の色素を用いて感熱転写記録用インクを調製するには、常法に従い、色素を適当な媒体に結着剤と共に溶解又は分散すればよい。
媒体としては、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、イソブチルアルコールなどのアルコール類;メチルセロソルブ、エチルセロソルブなどのセロソルブ類;トルエン、キシレン、クロロベンゼンなどの芳香族類;酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン類;塩化メチレン、クロロホルム、トリクロロエチレンなどの塩素系溶剤;テトラヒドロフラン、ジオキサンなどのエーテル類;N,Nージメチルホルムアミド、N−メチルピロリドンなどの極性溶剤等の有機溶剤及び水を挙げることができる。これらの溶剤は1種を単独で用いても、2種以上を混合して用いてもよい。インク中に、色素が0.5〜20重量%、特に1〜15重量%、とりわけ2〜15重量%となるように用いるのが好ましい。感熱転写記録用インクは、本発明の効果を妨げない範囲で、他の色素とを混合したものを上記媒体に溶解又は分散させることにより調製してもよい。
【0041】
結着剤としては、セルロース系、アクリル酸系、澱粉系、エポキシ系などの水溶性樹脂;アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリエーテルスルホン、ポリビニルブチラール、エチルセルロース、アセチルセルロース、ポリエステル、AS樹脂、フェノキシ樹脂などの有機溶剤に可溶性の樹脂が挙げられる。これらの結着剤は単独で用いても、2種以上を混合して用いてもよい。感熱転写記録用インク中の結着剤:色素の比率が、重量比で1:2〜2:1となるように用いるのが好ましい。
【0042】
また、本発明の感熱転写記録用インクには、必要に応じて有機、無機の非昇華性微粒子、分散剤、帯電防止剤、消泡剤、酸化防止剤、粘度調製剤などの添加剤を添加することもできる。インク中に含まれるこれら添加剤の上限値は、通常5重量%以下であり、3重量%以下が好ましい。また、添加剤の下限値は、通常0.01重量%以上であり、0.5重量%以上が好ましい。
【0043】
感熱転写記録用シートを調製するには、常法に従って、この感熱転写記録用インクを基材上に塗布し乾燥することにより、基材上に色材層を形成させればよい。
基材となるベースフィルムとしては、例えば、コンデンサー紙、グラシン紙のような薄葉紙;ポリエステル、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリイミド、ポリアラミドのような耐熱性の良好なプラスチックのフィルムが挙げられる。ベースフィルムの厚さとしては、3〜50μmが好ましい。これらのベースフィルムのうち、ポリエチレンテレフタレートフィルムが、機械的強度、耐溶剤性、経済性などから好ましい。
【0044】
感熱転写記録用インクは、例えばグラビアコーター、リバースロールコーター、ロッドコーター、エアドクタコーター等を使用して、上記ベースフィルムへ塗布すればよい。インクは、色材層の乾燥後の厚さが0.1〜5μmの範囲となるように塗布するのが好ましい。
本発明の感熱転写記録用シートの加熱手段としては、通常、サーマルヘッド、赤外線、レーザー光などが用いられる。また、ベースフィルムそのものに電気を流すことによって発熱する通電発熱フィルムを用いて、通電型感熱転写記録用シートとして用いることもできる。
【0045】
なお、ポリエチレンテレフタレートフィルムを用いて作製した感熱転写記録用シートをサーマルヘッドで加熱すると、サーマルヘッドの走行性が不十分となることがある。このような場合には、色材層の反対面にアミノ変性シリコーン化合物、カルボキシ変性シリコーン化合物等の変性シリコーン化合物などの潤滑剤;シリカ等の滑性の高い耐熱性微粒子;界面活性剤;アクリル系樹脂等の結着剤などを含む耐熱性樹脂層等を、適宜、設けることにより、サーマルヘッドの走行性を改良することができる。この耐熱性樹脂層の厚みとしては、0.1〜50μmが好ましい。
【0046】
感熱転写記録では、通常、イエロー、マゼンタ、シアンの3色、又はブラックを加えた4色の感熱転写記録用シートについて感熱転写記録操作を繰り返すことにより、カラー印刷が行われる。得られた画像の色相は、CIELAB空間におけるL*値、a*値、b*値で表される。類似の色濃度及びL*値を有する画像について、a*値及びb*値を測定することにより色相を比較することができる。
【0047】
本発明によれば、カラー画像の色再現上、シアン色の色相として好ましい色相、すなわち、D50光源を用いて2度視野角に設定した色濃度1.0におけるa*値が−60以上−20以下、特に−55以上−25以下であり、b*値が−50以上−5以下、特に−45以上−10以下を達成することができる。なお、これらの数値は、印刷工業に用いられるカラープルーフインクの色基準SWOP(Specifications Web Offset Publications)を満たすものである。また、本発明によれば、得られた記録物を分光測色計で測定した場合の色濃度が1.2以上であり、カラー画像の色再現上シアン色として好ましい色濃度を達成することができる。更に、この記録物は、耐光性試験の前後で行ったCIELAB色差が14以下という、優れた耐光性を有するものである。なお、色濃度、色相及び耐光性は以下により測定した。
【0048】
【実施例】
以下に実施例及び比較例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。なお、色濃度、色相及び耐光性は以下により測定した。
(色相)
色濃度約1.0の記録物について、D50光源を用いて2度視野角に設定し測定したa*値が−55以上−25以下であり、かつ、b*値が−45以上−10以下であるものは○とし、上記○の範囲外ではあるが、a*値が−60以上−20以下、かつ、b*値が−50以上−5以下に入っているものを△とした。
(色濃度)
感熱転写記録用シートをデジタルカラープリンタ(「P−330N」、オリンパス光学工業社製)の専用プリントパックオーバーコートセットP−60NOCのインクリボンとつなぎ合わせ、P−60NOC記録紙にデジタルカラープリンタで階調画像を記録し、記録物の最高印字濃度の色濃度を分光測色計(「SPM−50」、グレタグ社製)を用いて測定した。
(耐光性)
この記録物(色濃度約1.0のもの)について、キセノンウエザオメーター(「Ci4000」、アトラス社製)を用いて80時間耐光性試験を実施し(ブラックパネル温度:58±3℃)、試験前後の記録物のCIELAB色差(△E)を測定した。
【0049】
実施例1
(a)色素の合成例
下記式で表されるm−トルイジン誘導体(VI)3.18g、水12mL及び濃塩酸2.9mLの混合液に、0〜5℃で、亜硝酸ソーダ0.87gの水溶液3mLを滴下し、同温度で2時間撹拌した。この反応液に水7mL及び濃塩酸7mLを添加し、次いで20℃以下で亜鉛粉末3.56gを添加し30分撹拌した後、固形分を濾別することにより4−N,N−ジ(2−アセトキシエチル)アミノ−o−トルイジン水溶液を調製した。
【0050】
【化12】
【0051】
o−アミノフェノール誘導体(VII)3.0g、アセトン57mL及び28%アンモニア水10mLの混合液に、0〜5℃で、過硫酸アンモニウム2.6gの水溶液10mLと、前記4−N,N−ジ(2−アセトキシエチル)アミノ−o−トルイジン水溶液とを同時に滴下し、0〜5℃で2時間撹拌した。析出した結晶を濾別し水洗し、乾燥した後、カラムクロマトグラフィーで精製し、表1のNo.1の色素0.4gを得た。このものはマススペクトルでm/z:444のピークを有していた。融点は91.1℃であり、アセトン中での吸収スペクトル測定でλmax629 nm、分子吸光係数21000を示した。
【0052】
【化13】
【0053】
(b)インクの調製例
(a)の色素6.0重量部、フェノキシ樹脂(「PKHJ」、ユニオンカーバイド社製)10重量部、及びテトラヒドロフラン90重量部を混合し、超音波洗浄機で30分間処理して感熱転写記録用インクを調製した。
(c)感熱転写記録用シートの作製例
(b)の感熱転写記録用インクを、ワイヤバーを用いてポリエチレンテレフタレートフィルム(6μm厚)上に塗布し、乾燥することにより乾燥膜厚約1μmの色材層を形成させた。次いで、このポリエチレンテレフタレートフィルムの背面にアクリル樹脂(「BR−80」、三菱レイヨン社製)10重量部、アミノ変性シリコーンオイル(「KF393」、信越化学工業社製)1重量部、及びトルエン89重量部からなる液を塗布し、乾燥して乾燥膜厚約1μmの耐熱性樹脂層を形成させることにより感熱転写記録用シートを作製した。記録物の評価結果を表2に示す。
【0054】
実施例2〜4
実施例1において、表1の色素1に代えて、表1の色素2、3、5を用いた以外は実施例1と同様にして、感熱転写記録用インク及び感熱転写記録用シートを製造した。評価結果を表2に示す。
比較例1〜5
実施例1において、表1の色素1に代えて、下記構造式で表される色素A(特許文献1の実施例No.2−52の色素)、色素B(特許文献2の実施例No.2−56の色素)、色素C(特許文献3の実施例1の染料1)、色素D(特許文献4の実施例15の色素)、色素E(特許文献5の実施例10の色素)を用いた以外は実施例1と同様にして、感熱転写記録用インク及び感熱転写記録用シートを製造した。評価結果を表2に示す。
【0055】
【化14】
【0056】
【表2】
【0057】
実施例5
実施例1において、(b)の感熱転写記録用インクに代えて、(a)の色素6.0重量部、AS樹脂(「デンカAS−S」、電気化学工業社製)10重量部、トルエン70重量部及びテトラヒドロフラン10重量部を混合し、超音波洗浄機で30分間処理して調製したインクを用いた以外は実施例1と同様にして、感熱転写記録用シートを製造した。上記の方法により、記録物の色濃度、耐光性を評価したところ、いずれも良好であった。
【0058】
【発明の効果】
以上詳述した通り、本発明によれば、感熱転写記録用色素に要求されるすべての特性において総合的に優れた性能を有し、しかも感度が高く、記録濃度が高く、記録物の色調が鮮明で、安定性が高い感熱転写記録用色素、並びにそれを用いた感熱転写記録用インク及び感熱転写記録用シートが提供される。
Claims (7)
- R2 が、塩素原子であることを特徴とする請求項1記載の感熱転写記録用インドアニリン系色素。
- R5 及びR6 が、それぞれ独立して炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基又はトリフルオロメチル基であることを特徴とする請求項1又は2記載の感熱転写記録用インドアニリン系色素。
- R1 が炭素数1〜4のアルキル基又はトリフルオロメチル基を表し、R3 が炭素数1〜4のアルキル基を表し、かつ、R4 が炭素数1〜4のアルキル基又は炭素数1〜4のアルコキシ基を表すことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の感熱転写記録用インドアニリン系色素。
- m及びnがそれぞれ2を表すことを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の感熱転写記録用インドアニリン系色素。
- 請求項1乃至5のいずれかに記載の感熱転写記録用インドアニリン系色素及び有機溶剤を含有することを特徴とする感熱転写記録用インク。
- 基材上に、請求項1乃至5のいずれかに記載の感熱転写記録用インドアニリン系色素及び結着材を含む色材層を有することを特徴とする感熱転写記録用シート。
Priority Applications (2)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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