JP2004345270A - 感熱転写記録用イソチアゾールアゾ系色素、並びにそれを用いた感熱転写記録用インク及び感熱転写記録用シート - Google Patents
感熱転写記録用イソチアゾールアゾ系色素、並びにそれを用いた感熱転写記録用インク及び感熱転写記録用シート Download PDFInfo
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Abstract
【課題】感熱転写記録用色素に要求される条件、特に記録物の色相、色濃度、及び耐光性の条件を満たす感熱転写記録用色素、並びにこれを用いた感熱転写記録用インク、及び感熱転写記録用シートを提供する。
【解決手段】下記一般式(I)で示される感熱転写記録用イソチアゾールアゾ系色素。
【化1】
(式中、R1は水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基又は置換基を有していてもよいアリール基を表し、R2は置換基を有していてもよいアシル基又は置換基を有していてもよいアルキルスルホニル基を表し、R3及びR4はそれぞれ独立してアルキル基、アルコキシアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基又はトリフルオロメチル基を表す。m,nはそれぞれ独立して1〜3の整数を表す。)
【選択図】 なし
【解決手段】下記一般式(I)で示される感熱転写記録用イソチアゾールアゾ系色素。
【化1】
(式中、R1は水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基又は置換基を有していてもよいアリール基を表し、R2は置換基を有していてもよいアシル基又は置換基を有していてもよいアルキルスルホニル基を表し、R3及びR4はそれぞれ独立してアルキル基、アルコキシアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基又はトリフルオロメチル基を表す。m,nはそれぞれ独立して1〜3の整数を表す。)
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、感熱転写記録、特に色素転写型感熱転写記録に使用される色素、並びにそれを用いた感熱転写記録用インク及び感熱転写記録用シートに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
色素転写型感熱転写記録は、ベースフィルム上に熱移行性の色素を含む色材層を有する感熱転写記録用シートと色素受容層を表面に有する受像シートとを重ね合わせ、感熱転写記録用シートを加熱して感熱転写記録用シート中の色素を受像シートに転写することにより記録を行うものである。この記録方法は、加熱エネルギーの大きさで色素の転写量を制御することにより、階調表現を容易に行うことができるため、ビデオプリンターなどのフルカラー画像記録用に用いられている。
【0003】
このような色素転写型感熱転写記録においては、感熱転写記録用シートに用いられる色素が、転写記録のスピード、記録物の画質、保存安定性などに大きな影響を与えることが知られている。したがって、色素転写型感熱転写記録に用いられる色素は、以下のような条件を満たすことが必要である。
▲1▼ 熱記録ヘッドの作動条件で容易に昇華及び/又は熱拡散すること。
▲2▼ 熱記録ヘッドの作動条件で熱分解しないこと。
▲3▼ 色再現上、好ましい色相を有すること。
▲4▼ 分子吸光係数が大きいこと。
▲5▼ 熱、光、湿気、薬品などに対して安定であること。
▲6▼ 合成が容易であること。
▲7▼ インク化適性が優れていること。
▲8▼ 安全性上問題のないこと。 感熱転写記録に用いられるマゼンタ系色素としては、イソチアゾールアゾ系マゼンタ色素が広く用いられており、特許文献1〜3には種々の色素転写型の感熱転写記録用イソチアゾールアゾ系色素が記載されている。
【0004】
例えば、特許文献1には、下記構造式で表される色素が具体的に開示されている。
【0005】
【化2】
【0006】
また、特許文献2には、下記構造式の色素が具体的に開示されている。
【0007】
【化3】
【0008】
更に、特許文献3には、下記構造式の色素が具体的に開示されている。
【0009】
【化4】
【0010】
ところで、近年、更に記録物の転写濃度や耐光性などに優れる色素が要求されるようになってきた。しかしながら、特許文献1〜3に具体的に記載されている色素又は色素混合物ではいずれもこれらの要求を満たすことができず、より優れた性質を有する感熱転写記録用色素、特に、色相及び色濃度に優れ、耐光性の良好な色素の出現が望まれている。
【0011】
【特許文献1】
特開昭62−55194号公報
【特許文献2】
特開昭62−294593号公報
【特許文献3】
特開平4−148987号公報
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
したがって、本発明は、感熱転写記録用色素に要求される前記条件、特に記録物の色相、色濃度、及び耐光性の条件を満たす感熱転写記録用色素、並びにこれを用いた感熱転写記録用インク、及び感熱転写記録用シートを提供することを課題とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、鋭意検討した結果、イソチアゾールアゾ系化合物の2つの環の特定の位置に置換基を有し、アゾ基のp位のジアルキルアミノ基の両方のジアルキル基がアシルオキシ基で置換された構造の色素を用いることにより上記課題が解決されることを見出し、本発明を完成した。 すなわち、本発明は、下記一般式(I)
【0014】
【化5】
【0015】
(式中、R1は水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基又は置換基を有していてもよいアリール基を表し、R2は置換基を有していてもよいアシル基又は置換基を有していてもよいアルキルスルホニル基を表し、R3及びR4はそれぞれ独立してアルキル基、アルコキシアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基又はトリフルオロメチル基を表す。m,nはそれぞれ独立して1〜3の整数を表す。)
で示される感熱転写記録用イソチアゾールアゾ系色素、並びにそれを用いた感熱転写記録用インク及び感熱転写記録用シート、に存する。
【0016】
【発明の実施の形態】
本発明に係る色素は、前記一般式(I)で表されるものである。
本発明の色素は、アゾ基のp位のジアルキルアミノ基に2つのアシルオキシ基を置換させた点を特徴とするものであり、R1、R2、R3及びR4としては、公知のイソチアゾールアゾ系色素において知られている置換基の範囲のものを用いることができる。なお、R1又はR2が有していてもよい置換基は、いずれも本発明の目的とする効果を損なわないものである。
【0017】
R1のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、n−ヘキシル基、n−オクチル基、2−エチルヘキシル基等の炭素数1〜12の直鎖状もしくは分岐鎖状のアルキル基が挙げられる。
【0018】
アルキル基が有していてもよい置換基としては、ハロゲン原子、アルコキシ基、アリール基、シアノ基、アリールオキシ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アシルオキシ基等が挙げられる。すなわち、置換基を有するアルキル基としては、例えば、2−エトキシエチル基、2−n−プロポキシエチル基、2−n−ブトキシエチル基、4−イソプロピルオキシブチル基、3−イソブチルオキシプロピル基等のアルコキシアルキル基;2−クロロエチル基、4−クロロブチル基、トリフルオロメチル基等のハロゲン化アルキル基;シアノエチル基等のシアノアルキル基;ベンジル基、2−フェニルエチル基、p−クロロベンジル基等のアラルキル基;フェノキシメチル基、2−フェノキシエチル基、4−フェノキシブチル基等のアリールオキシアルキル基;2−メトキシカルボニルエチル基、3−n−ブトキシカルボニルプロピル基等のアルコキシカルボニルアルキル基;2−アリルオキシカルボニルエチル基等のアルケニルオキシカルボニルアルキル基;2−フェノキシカルボニルエチル基、4−p−クロロフェノキシカルボニルブチル基等のアリールオキシカルボニルアルキル基;2−ベンジルオキシエチル基、4−ベンジルオキシブチル基等のアラルキルオキシアルキル基;2−アセトキシエチル基、2−ベンゾイルオキシエチル基、4−アセトキシブチル基等のアシルオキシアルキル基などが挙げられる。
【0019】
アリール基としては、炭素数1〜8の直鎖状もしくは分岐鎖状のアルキル基;フッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子;炭素数1〜4のフルオロアルキル基;及び炭素数1〜8の直鎖状もしくは分岐鎖状のアルコキシ基等からなる群より選ばれる置換基で置換されていてもよいフェニル基が挙げられる。
これらのR1のうち、炭素数1〜4のアルキル基、特にメチル基が好ましい。
【0020】
R2のアシル基としては、例えば、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、イソブチリル基、バレリル基、イソバレリル基、ピバロイル基、n−ヘキシルカルボニル基、n−オクチルカルボニル基、2−エチルヘキシルカルボニル基等の炭素数2〜13の直鎖状もしくは分岐鎖状のアルキルカルボニル基又はベンゾイル基等の炭素数12以下のアリールカルボニル基が挙げられる。アシル基が有していてもよい置換基としては、ハロゲン原子、アルコキシ基、アリール基、シアノ基、アリールオキシ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アシルオキシ基等が挙げられる。なお、アシル基がベンゾイル基の場合には、上記置換基の他、直鎖状もしくは分岐鎖状のアルキル基;フルオロアルキル基で置換されていてもよい。
【0021】
アルキルスルホニル基としては、例えば、メチルスルホニル基、エチルスルホニル基、n−プロピルスルホニル基、イソプロピルスルホニル基、n−ブチルスルホニル基、イソブチルスルホニル基、t−ブチルスルホニル基、n−ヘキシルスルホニル基、n−オクチルスルホニル基、2−エチルヘキシルスルホニル基等の炭素数1〜12の直鎖状もしくは分岐鎖状のアルキルスルホニル基が挙げられる。アルキルスルホニル基が有していてもよい置換基としては、ハロゲン原子、アルコキシ基、アリール基、シアノ基、アリールオキシ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アシルオキシ基等が挙げられる。
これらのR2のうち、炭素数2〜5のアルキルカルボニル基、ベンゾイル基又は炭素数1〜4のアルキルスルホニル基、特に、アセチル基、プロピオニル基、トリフルオロメチルカルボニル基、ベンゾイル基又はメチルスルホニル基が好ましい。
【0022】
R3及びR4のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、n−ヘキシル基、n−オクチル基、2−エチルヘキシル基等の炭素数1〜12のアルキル基が挙げられる。
【0023】
アルコキシアルキル基としては、例えば、2−エトキシエチル基、2−n−プロポキシエチル基、2−n−ブトキシエチル基、4−イソプロピルオキシブチル基、3−イソブチルオキシプロピル基等の炭素数2〜13のアルコキシアルキル基が挙げられる。
アルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロピルオキシ基、n−ブトキシ基、イソブチルオキシ基、t−ブトキシ基、n−ヘキシルオキシ基、n−オクチルオキシ基、2−エチルヘキシルオキシ基等の炭素数1〜12のアルコキシ基が挙げられる。
【0024】
アリール基としては、例えば、炭素数1〜8の直鎖状もしくは分岐鎖状のアルキル基;フッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子;炭素数1〜4のフルオロアルキル基;及び炭素数1〜8の直鎖状もしくは分岐鎖状のアルコキシ基等からなる群より選ばれる置換基を有していてもよいフェニル基が挙げられる。
アリールオキシ基としては、炭素数1〜8の直鎖状もしくは分岐鎖状のアルキル基;フッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子;炭素数1〜4のフルオロアルキル基;及び炭素数1〜8の直鎖状もしくは分岐鎖状のアルコキシ基等からなる群より選ばれる置換基を有していてもよいフェノキシ基が挙げられる。
【0025】
これらのR3及びR4のうち、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数2〜7のアルコキシアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基、フェニル基、フェノキシ基又はトリフルオロメチル基等、特に炭素数2〜4のアルキル基又は炭素数1〜4のアルコキシ基が好ましい。
m,nとしては、いずれも2であるのが好ましい。
【0026】
本発明の色素は、その色素の最大吸収波長(λmax)が500〜600nmであり、マゼンタ系の色調を示し、色濃度に優れ、かつ耐光性が良好な色素である。本発明の効果を十分に発現させるためには、分子量が、通常800以下、特に700以下、とりわけ450〜600である色素を用いるのが好ましい。したがって、本発明で使用されるイソチアゾールアゾ系色素としては、R1がメチル基を表し、R2がアセチル基、ベンゾイル基又はメチルスルホニル基を表し、R3及びR4がそれぞれ独立してエチル基、nープロピル基、イソプロピル基、トリフルオロメチル基、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロピルオキシ基、メトキシエチル基又はエトキシエチル基を表し、m及びnが2を表すものが特に好ましい。
【0027】
本発明の一般式(I)で表される色素の製造方法としては、常法に従い、下記一般式(II)で表されるアミノイソチアゾール化合物をジアゾ化し、次いで下記一般式(III)とカップリングさせることにより方法が挙げられる(特許文献1〜3参照)。
【0028】
【化6】
【0029】
(式中、R1は一般式(I)と同じ意味を表す。)
【0030】
【化7】
【0031】
(式中、R2、R3、R4、m及びnは一般式(I)と同じ意味を表す。)
本発明に係る色素のいくつかを表1に例示するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0032】
【表1】
【0033】
本発明の色素を用いて感熱転写記録用インクを調製するには、常法に従い、色素を適当な媒体に結着剤と共に溶解又は分散すればよい。
媒体としては、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、イソブチルアルコールなどのアルコール類;メチルセロソルブ、エチルセロソルブなどのセロソルブ類;トルエン、キシレン、クロロベンゼンなどの芳香族類;酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン類;塩化メチレン、クロロホルム、トリクロロエチレンなどの塩素系溶剤;テトラヒドロフラン、ジオキサンなどのエーテル類;N,Nージメチルホルムアミド、N−メチルピロリドンなどの極性溶剤等の有機溶剤及び水を挙げることができる。これらの溶剤は1種を単独で用いても、2種以上を混合して用いてもよい。インク中に、色素が0.5〜20重量%、特に1〜15重量%、とりわけ2〜15重量%となるように用いるのが好ましい。感熱転写記録用インクは、本発明の効果を妨げない範囲で、他の色素とを混合したものを上記媒体に溶解又は分散させることにより調製してもよい。
【0034】
結着剤としては、セルロース系、アクリル酸系、澱粉系、エポキシ系などの水溶性樹脂;アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリエーテルスルホン、ポリビニルブチラール、エチルセルロース、アセチルセルロース、ポリエステル、AS樹脂、フェノキシ樹脂などの有機溶剤に可溶性の樹脂が挙げられる。これらの結着剤は単独で用いても、2種以上を混合して用いてもよい。感熱転写記録用インク中の結着剤:色素の比率が、重量比で1:2〜2:1となるように用いるのが好ましい。
【0035】
また、本発明の感熱転写記録用インクには、必要に応じて有機、無機の非昇華性微粒子、分散剤、帯電防止剤、消泡剤、酸化防止剤、粘度調製剤などの添加剤を添加することもできる。インク中に含まれるこれら添加剤の上限値は、通常5重量%以下であり、3重量%以下が好ましい。また、添加剤の下限値は、通常0.01重量%以上であり、0.5重量%以上が好ましい。
【0036】
感熱転写記録用シートを調製するには、常法に従って、この感熱転写記録用インクを基材上に塗布し乾燥することにより、基材上に色材層を形成させればよい。
基材となるベースフィルムとしては、例えば、コンデンサー紙、グラシン紙のような薄葉紙;ポリエステル、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリイミド、ポリアラミドのような耐熱性の良好なプラスチックのフィルムが挙げられる。ベースフィルムの厚さとしては、3〜50μmが好ましい。これらのベースフィルムのうち、ポリエチレンテレフタレートフィルムが、機械的強度、耐溶剤性、経済性などから好ましい。
【0037】
感熱転写記録用インクは、例えばグラビアコーター、リバースロールコーター、ロッドコーター、エアドクタコーター等を使用して、上記ベースフィルムへ塗布すればよい。インクは、色材層の乾燥後の厚さが0.1〜5μmの範囲となるように塗布するのが好ましい。
本発明の感熱転写シートの加熱手段としては、通常、サーマルヘッド、赤外線、レーザー光などが用いられる。また、ベースフィルムそのものに電気を流すことによって発熱する通電発熱フィルムを用いて、通電型染料転写シートとして用いることもできる。
【0038】
なお、ポリエチレンテレフタレートフィルムを用いて作製した感熱転写シートをサーマルヘッドで加熱すると、サーマルヘッドの走行性が不十分となることがある。このような場合には、色材層の反対面にアミノ変性シリコーン化合物、カルボキシ変性シリコーン化合物等の変性シリコーン化合物などの潤滑剤;シリカ等の滑性の高い耐熱性微粒子;界面活性剤;アクリル系樹脂等の結着剤などを含む耐熱性樹脂層等を、適宜、設けることにより、サーマルヘッドの走行性を改良することができる。この耐熱性樹脂層の厚みとしては、0.1〜50μmが好ましい。
【0039】
本発明によれば、カラー画像の色再現上、マゼンタ色として好ましい色濃度、すなわち、得られた記録物を分光測色計で測定した場合の色濃度1.5以上を達成することができる。また、得られた記録物は耐光性試験の前後で行ったCIELAB色差が10以下という優れた耐光性を達成することができる。
【0040】
【実施例】
以下に実施例及び比較例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。なお、色濃度、色相及び耐光性は以下により測定した。
(色濃度)
感熱転写記録用シートをデジタルカラープリンタ(「P−330N」、オリンパス光学工業社製)の専用プリントパックオーバーコートセットP−60NOCのインクリボンとつなぎ合わせ、P−60NOC記録紙にデジタルカラープリンタで階調画像を記録し、記録物の最高印字濃度の色濃度を分光測色計(「SPM−50」、グレタグ社製)を用いて測定した。
(色相)
色濃度約1.0の記録物について、D50光源を用いて2度視野角に設定し測定したa*値が55以上であり、かつ、b*値が0以下であるものは○とし、上記○の範囲外ではあるが、a*値が50以上、かつ、b*値が5以下に入っているものを△とした。
(耐光性)
この記録物(色濃度約1.0のもの)について、キセノンウエザオメーター(「Ci4000」、アトラス社製)を用いて80時間耐光性試験を実施し(ブラックパネル温度:58±3℃)、試験前後の記録物のCIELAB色差(△E)を測定した。
【0041】
実施例1
(a)色素の合成例
下記式で示されるアミノイソチアゾール誘導体(VI)2.64g、酢酸19mL及び85%硫酸水溶液17mLの混合液に、0〜5℃で、ニトロシル硫酸の43.0%硫酸溶液5.89gを滴下し、同温度で2時間撹拌してジアゾ化液を調製した。下記式で示されるアセトアニリド化合物(VII)7.19g、水160mL及び濃塩酸7.4mLの混合液に、0〜5℃で、スルファミン酸0.37gを添加した後、上記ジアゾ化液を滴下した。次いで、液温を0〜5℃に保ちながら20%水酸化ナトリウム水溶液をゆっくりと滴下して反応液を中和し、同温度で1時間撹拌して析出した結晶を濾別し、水洗した。得られた結晶を乾燥した後、カラムクロマトグラフィーで精製し、表1のNo.4の色素4.1gを得た。このものはマススペクトルでm/z528のピークを有していた。融点は112.5℃であり、アセトン中での吸収スペクトル測定でλmax537nm、分子吸光係数57000を示した。
【0042】
【化8】
【0043】
【化9】
【0044】
(b)インクの調製例
(a)の色素6.0重量部、フェノキシ樹脂(「PKHJ」、ユニオンカーバイド社製)10重量部、及びテトラヒドロフラン90重量部を混合し、超音波洗浄機で30分間処理して感熱転写記録用インクを調製した。
(c)感熱転写記録用シートの作製例
(b)の感熱転写記録用インクを、ワイヤバーを用いてポリエチレンテレフタレートフィルム(6μm厚)上に塗布し、乾燥することにより乾燥膜厚約1μmの色材層を形成させた。次いで、このポリエチレンテレフタレートフィルムの背面にアクリル樹脂(「BR−80」、三菱レイヨン社製)10重量部、アミノ変性シリコーンオイル(「KF393」、信越化学工業社製)1重量部、及びトルエン89重量部からなる液を塗布し、乾燥して乾燥膜厚約1μmの耐熱性樹脂層を形成させて感熱転写シートを作製した。
得られた感熱転写シートを用いて記録した記録物について、色相、色濃度及び耐光性を評価した。結果を表2に示す。
【0045】
実施例2〜3
実施例1において、表1の色素4に代えて、表1の色素1、2を用いた以外は実施例1と同様にして、感熱転写記録用インク及び感熱転写記録用シートを製造した。評価結果を表2に示した。
【0046】
比較例1〜3
実施例1において、表1の色素4に代えて、下記構造式で表される色素A(特許文献1の染料27)、色素B(特許文献2の実施例1の化合物3)及び色素C(特許文献3の色素No.1)を用いた以外は実施例1と同様にして、感熱転写記録用インク及び感熱転写記録用シートを製造した。評価結果を表2に示す。
【0047】
【化10】
【0048】
【化11】
【0049】
【化12】
【0050】
【表2】
【0051】
実施例4
実施例1において、(b)の感熱転写記録用インクに代えて、(a)の色素6.0重量部、AS樹脂(「デンカAS−S」、電気化学工業社製)10重量部、トルエン70重量部及びテトラヒドロフラン10重量部を混合し、超音波洗浄機で30分間処理して調製したインクを用いた以外は実施例1と同様にして、感熱転写記録用シートを作製した。上記の方法により、記録物の色相、色濃度及び耐光性を評価したところ、いずれも良好であった。
【0052】
【発明の効果】
以上詳述した通り、本発明によれば、感熱転写記録用色素に要求されるすべての特性において総合的に優れた性能を有し、しかも感度が高く、記録濃度が高く、記録物の色調が鮮明で、記録物の安定性が高い感熱転写記録用色素、並びにそれを用いた感熱転写記録用インク及び感熱転写記録用シートが提供される。
【発明の属する技術分野】
本発明は、感熱転写記録、特に色素転写型感熱転写記録に使用される色素、並びにそれを用いた感熱転写記録用インク及び感熱転写記録用シートに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
色素転写型感熱転写記録は、ベースフィルム上に熱移行性の色素を含む色材層を有する感熱転写記録用シートと色素受容層を表面に有する受像シートとを重ね合わせ、感熱転写記録用シートを加熱して感熱転写記録用シート中の色素を受像シートに転写することにより記録を行うものである。この記録方法は、加熱エネルギーの大きさで色素の転写量を制御することにより、階調表現を容易に行うことができるため、ビデオプリンターなどのフルカラー画像記録用に用いられている。
【0003】
このような色素転写型感熱転写記録においては、感熱転写記録用シートに用いられる色素が、転写記録のスピード、記録物の画質、保存安定性などに大きな影響を与えることが知られている。したがって、色素転写型感熱転写記録に用いられる色素は、以下のような条件を満たすことが必要である。
▲1▼ 熱記録ヘッドの作動条件で容易に昇華及び/又は熱拡散すること。
▲2▼ 熱記録ヘッドの作動条件で熱分解しないこと。
▲3▼ 色再現上、好ましい色相を有すること。
▲4▼ 分子吸光係数が大きいこと。
▲5▼ 熱、光、湿気、薬品などに対して安定であること。
▲6▼ 合成が容易であること。
▲7▼ インク化適性が優れていること。
▲8▼ 安全性上問題のないこと。 感熱転写記録に用いられるマゼンタ系色素としては、イソチアゾールアゾ系マゼンタ色素が広く用いられており、特許文献1〜3には種々の色素転写型の感熱転写記録用イソチアゾールアゾ系色素が記載されている。
【0004】
例えば、特許文献1には、下記構造式で表される色素が具体的に開示されている。
【0005】
【化2】
【0006】
また、特許文献2には、下記構造式の色素が具体的に開示されている。
【0007】
【化3】
【0008】
更に、特許文献3には、下記構造式の色素が具体的に開示されている。
【0009】
【化4】
【0010】
ところで、近年、更に記録物の転写濃度や耐光性などに優れる色素が要求されるようになってきた。しかしながら、特許文献1〜3に具体的に記載されている色素又は色素混合物ではいずれもこれらの要求を満たすことができず、より優れた性質を有する感熱転写記録用色素、特に、色相及び色濃度に優れ、耐光性の良好な色素の出現が望まれている。
【0011】
【特許文献1】
特開昭62−55194号公報
【特許文献2】
特開昭62−294593号公報
【特許文献3】
特開平4−148987号公報
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
したがって、本発明は、感熱転写記録用色素に要求される前記条件、特に記録物の色相、色濃度、及び耐光性の条件を満たす感熱転写記録用色素、並びにこれを用いた感熱転写記録用インク、及び感熱転写記録用シートを提供することを課題とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、鋭意検討した結果、イソチアゾールアゾ系化合物の2つの環の特定の位置に置換基を有し、アゾ基のp位のジアルキルアミノ基の両方のジアルキル基がアシルオキシ基で置換された構造の色素を用いることにより上記課題が解決されることを見出し、本発明を完成した。 すなわち、本発明は、下記一般式(I)
【0014】
【化5】
【0015】
(式中、R1は水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基又は置換基を有していてもよいアリール基を表し、R2は置換基を有していてもよいアシル基又は置換基を有していてもよいアルキルスルホニル基を表し、R3及びR4はそれぞれ独立してアルキル基、アルコキシアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基又はトリフルオロメチル基を表す。m,nはそれぞれ独立して1〜3の整数を表す。)
で示される感熱転写記録用イソチアゾールアゾ系色素、並びにそれを用いた感熱転写記録用インク及び感熱転写記録用シート、に存する。
【0016】
【発明の実施の形態】
本発明に係る色素は、前記一般式(I)で表されるものである。
本発明の色素は、アゾ基のp位のジアルキルアミノ基に2つのアシルオキシ基を置換させた点を特徴とするものであり、R1、R2、R3及びR4としては、公知のイソチアゾールアゾ系色素において知られている置換基の範囲のものを用いることができる。なお、R1又はR2が有していてもよい置換基は、いずれも本発明の目的とする効果を損なわないものである。
【0017】
R1のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、n−ヘキシル基、n−オクチル基、2−エチルヘキシル基等の炭素数1〜12の直鎖状もしくは分岐鎖状のアルキル基が挙げられる。
【0018】
アルキル基が有していてもよい置換基としては、ハロゲン原子、アルコキシ基、アリール基、シアノ基、アリールオキシ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アシルオキシ基等が挙げられる。すなわち、置換基を有するアルキル基としては、例えば、2−エトキシエチル基、2−n−プロポキシエチル基、2−n−ブトキシエチル基、4−イソプロピルオキシブチル基、3−イソブチルオキシプロピル基等のアルコキシアルキル基;2−クロロエチル基、4−クロロブチル基、トリフルオロメチル基等のハロゲン化アルキル基;シアノエチル基等のシアノアルキル基;ベンジル基、2−フェニルエチル基、p−クロロベンジル基等のアラルキル基;フェノキシメチル基、2−フェノキシエチル基、4−フェノキシブチル基等のアリールオキシアルキル基;2−メトキシカルボニルエチル基、3−n−ブトキシカルボニルプロピル基等のアルコキシカルボニルアルキル基;2−アリルオキシカルボニルエチル基等のアルケニルオキシカルボニルアルキル基;2−フェノキシカルボニルエチル基、4−p−クロロフェノキシカルボニルブチル基等のアリールオキシカルボニルアルキル基;2−ベンジルオキシエチル基、4−ベンジルオキシブチル基等のアラルキルオキシアルキル基;2−アセトキシエチル基、2−ベンゾイルオキシエチル基、4−アセトキシブチル基等のアシルオキシアルキル基などが挙げられる。
【0019】
アリール基としては、炭素数1〜8の直鎖状もしくは分岐鎖状のアルキル基;フッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子;炭素数1〜4のフルオロアルキル基;及び炭素数1〜8の直鎖状もしくは分岐鎖状のアルコキシ基等からなる群より選ばれる置換基で置換されていてもよいフェニル基が挙げられる。
これらのR1のうち、炭素数1〜4のアルキル基、特にメチル基が好ましい。
【0020】
R2のアシル基としては、例えば、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、イソブチリル基、バレリル基、イソバレリル基、ピバロイル基、n−ヘキシルカルボニル基、n−オクチルカルボニル基、2−エチルヘキシルカルボニル基等の炭素数2〜13の直鎖状もしくは分岐鎖状のアルキルカルボニル基又はベンゾイル基等の炭素数12以下のアリールカルボニル基が挙げられる。アシル基が有していてもよい置換基としては、ハロゲン原子、アルコキシ基、アリール基、シアノ基、アリールオキシ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アシルオキシ基等が挙げられる。なお、アシル基がベンゾイル基の場合には、上記置換基の他、直鎖状もしくは分岐鎖状のアルキル基;フルオロアルキル基で置換されていてもよい。
【0021】
アルキルスルホニル基としては、例えば、メチルスルホニル基、エチルスルホニル基、n−プロピルスルホニル基、イソプロピルスルホニル基、n−ブチルスルホニル基、イソブチルスルホニル基、t−ブチルスルホニル基、n−ヘキシルスルホニル基、n−オクチルスルホニル基、2−エチルヘキシルスルホニル基等の炭素数1〜12の直鎖状もしくは分岐鎖状のアルキルスルホニル基が挙げられる。アルキルスルホニル基が有していてもよい置換基としては、ハロゲン原子、アルコキシ基、アリール基、シアノ基、アリールオキシ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アシルオキシ基等が挙げられる。
これらのR2のうち、炭素数2〜5のアルキルカルボニル基、ベンゾイル基又は炭素数1〜4のアルキルスルホニル基、特に、アセチル基、プロピオニル基、トリフルオロメチルカルボニル基、ベンゾイル基又はメチルスルホニル基が好ましい。
【0022】
R3及びR4のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、n−ヘキシル基、n−オクチル基、2−エチルヘキシル基等の炭素数1〜12のアルキル基が挙げられる。
【0023】
アルコキシアルキル基としては、例えば、2−エトキシエチル基、2−n−プロポキシエチル基、2−n−ブトキシエチル基、4−イソプロピルオキシブチル基、3−イソブチルオキシプロピル基等の炭素数2〜13のアルコキシアルキル基が挙げられる。
アルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロピルオキシ基、n−ブトキシ基、イソブチルオキシ基、t−ブトキシ基、n−ヘキシルオキシ基、n−オクチルオキシ基、2−エチルヘキシルオキシ基等の炭素数1〜12のアルコキシ基が挙げられる。
【0024】
アリール基としては、例えば、炭素数1〜8の直鎖状もしくは分岐鎖状のアルキル基;フッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子;炭素数1〜4のフルオロアルキル基;及び炭素数1〜8の直鎖状もしくは分岐鎖状のアルコキシ基等からなる群より選ばれる置換基を有していてもよいフェニル基が挙げられる。
アリールオキシ基としては、炭素数1〜8の直鎖状もしくは分岐鎖状のアルキル基;フッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子;炭素数1〜4のフルオロアルキル基;及び炭素数1〜8の直鎖状もしくは分岐鎖状のアルコキシ基等からなる群より選ばれる置換基を有していてもよいフェノキシ基が挙げられる。
【0025】
これらのR3及びR4のうち、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数2〜7のアルコキシアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基、フェニル基、フェノキシ基又はトリフルオロメチル基等、特に炭素数2〜4のアルキル基又は炭素数1〜4のアルコキシ基が好ましい。
m,nとしては、いずれも2であるのが好ましい。
【0026】
本発明の色素は、その色素の最大吸収波長(λmax)が500〜600nmであり、マゼンタ系の色調を示し、色濃度に優れ、かつ耐光性が良好な色素である。本発明の効果を十分に発現させるためには、分子量が、通常800以下、特に700以下、とりわけ450〜600である色素を用いるのが好ましい。したがって、本発明で使用されるイソチアゾールアゾ系色素としては、R1がメチル基を表し、R2がアセチル基、ベンゾイル基又はメチルスルホニル基を表し、R3及びR4がそれぞれ独立してエチル基、nープロピル基、イソプロピル基、トリフルオロメチル基、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロピルオキシ基、メトキシエチル基又はエトキシエチル基を表し、m及びnが2を表すものが特に好ましい。
【0027】
本発明の一般式(I)で表される色素の製造方法としては、常法に従い、下記一般式(II)で表されるアミノイソチアゾール化合物をジアゾ化し、次いで下記一般式(III)とカップリングさせることにより方法が挙げられる(特許文献1〜3参照)。
【0028】
【化6】
【0029】
(式中、R1は一般式(I)と同じ意味を表す。)
【0030】
【化7】
【0031】
(式中、R2、R3、R4、m及びnは一般式(I)と同じ意味を表す。)
本発明に係る色素のいくつかを表1に例示するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0032】
【表1】
【0033】
本発明の色素を用いて感熱転写記録用インクを調製するには、常法に従い、色素を適当な媒体に結着剤と共に溶解又は分散すればよい。
媒体としては、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、イソブチルアルコールなどのアルコール類;メチルセロソルブ、エチルセロソルブなどのセロソルブ類;トルエン、キシレン、クロロベンゼンなどの芳香族類;酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン類;塩化メチレン、クロロホルム、トリクロロエチレンなどの塩素系溶剤;テトラヒドロフラン、ジオキサンなどのエーテル類;N,Nージメチルホルムアミド、N−メチルピロリドンなどの極性溶剤等の有機溶剤及び水を挙げることができる。これらの溶剤は1種を単独で用いても、2種以上を混合して用いてもよい。インク中に、色素が0.5〜20重量%、特に1〜15重量%、とりわけ2〜15重量%となるように用いるのが好ましい。感熱転写記録用インクは、本発明の効果を妨げない範囲で、他の色素とを混合したものを上記媒体に溶解又は分散させることにより調製してもよい。
【0034】
結着剤としては、セルロース系、アクリル酸系、澱粉系、エポキシ系などの水溶性樹脂;アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリエーテルスルホン、ポリビニルブチラール、エチルセルロース、アセチルセルロース、ポリエステル、AS樹脂、フェノキシ樹脂などの有機溶剤に可溶性の樹脂が挙げられる。これらの結着剤は単独で用いても、2種以上を混合して用いてもよい。感熱転写記録用インク中の結着剤:色素の比率が、重量比で1:2〜2:1となるように用いるのが好ましい。
【0035】
また、本発明の感熱転写記録用インクには、必要に応じて有機、無機の非昇華性微粒子、分散剤、帯電防止剤、消泡剤、酸化防止剤、粘度調製剤などの添加剤を添加することもできる。インク中に含まれるこれら添加剤の上限値は、通常5重量%以下であり、3重量%以下が好ましい。また、添加剤の下限値は、通常0.01重量%以上であり、0.5重量%以上が好ましい。
【0036】
感熱転写記録用シートを調製するには、常法に従って、この感熱転写記録用インクを基材上に塗布し乾燥することにより、基材上に色材層を形成させればよい。
基材となるベースフィルムとしては、例えば、コンデンサー紙、グラシン紙のような薄葉紙;ポリエステル、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリイミド、ポリアラミドのような耐熱性の良好なプラスチックのフィルムが挙げられる。ベースフィルムの厚さとしては、3〜50μmが好ましい。これらのベースフィルムのうち、ポリエチレンテレフタレートフィルムが、機械的強度、耐溶剤性、経済性などから好ましい。
【0037】
感熱転写記録用インクは、例えばグラビアコーター、リバースロールコーター、ロッドコーター、エアドクタコーター等を使用して、上記ベースフィルムへ塗布すればよい。インクは、色材層の乾燥後の厚さが0.1〜5μmの範囲となるように塗布するのが好ましい。
本発明の感熱転写シートの加熱手段としては、通常、サーマルヘッド、赤外線、レーザー光などが用いられる。また、ベースフィルムそのものに電気を流すことによって発熱する通電発熱フィルムを用いて、通電型染料転写シートとして用いることもできる。
【0038】
なお、ポリエチレンテレフタレートフィルムを用いて作製した感熱転写シートをサーマルヘッドで加熱すると、サーマルヘッドの走行性が不十分となることがある。このような場合には、色材層の反対面にアミノ変性シリコーン化合物、カルボキシ変性シリコーン化合物等の変性シリコーン化合物などの潤滑剤;シリカ等の滑性の高い耐熱性微粒子;界面活性剤;アクリル系樹脂等の結着剤などを含む耐熱性樹脂層等を、適宜、設けることにより、サーマルヘッドの走行性を改良することができる。この耐熱性樹脂層の厚みとしては、0.1〜50μmが好ましい。
【0039】
本発明によれば、カラー画像の色再現上、マゼンタ色として好ましい色濃度、すなわち、得られた記録物を分光測色計で測定した場合の色濃度1.5以上を達成することができる。また、得られた記録物は耐光性試験の前後で行ったCIELAB色差が10以下という優れた耐光性を達成することができる。
【0040】
【実施例】
以下に実施例及び比較例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。なお、色濃度、色相及び耐光性は以下により測定した。
(色濃度)
感熱転写記録用シートをデジタルカラープリンタ(「P−330N」、オリンパス光学工業社製)の専用プリントパックオーバーコートセットP−60NOCのインクリボンとつなぎ合わせ、P−60NOC記録紙にデジタルカラープリンタで階調画像を記録し、記録物の最高印字濃度の色濃度を分光測色計(「SPM−50」、グレタグ社製)を用いて測定した。
(色相)
色濃度約1.0の記録物について、D50光源を用いて2度視野角に設定し測定したa*値が55以上であり、かつ、b*値が0以下であるものは○とし、上記○の範囲外ではあるが、a*値が50以上、かつ、b*値が5以下に入っているものを△とした。
(耐光性)
この記録物(色濃度約1.0のもの)について、キセノンウエザオメーター(「Ci4000」、アトラス社製)を用いて80時間耐光性試験を実施し(ブラックパネル温度:58±3℃)、試験前後の記録物のCIELAB色差(△E)を測定した。
【0041】
実施例1
(a)色素の合成例
下記式で示されるアミノイソチアゾール誘導体(VI)2.64g、酢酸19mL及び85%硫酸水溶液17mLの混合液に、0〜5℃で、ニトロシル硫酸の43.0%硫酸溶液5.89gを滴下し、同温度で2時間撹拌してジアゾ化液を調製した。下記式で示されるアセトアニリド化合物(VII)7.19g、水160mL及び濃塩酸7.4mLの混合液に、0〜5℃で、スルファミン酸0.37gを添加した後、上記ジアゾ化液を滴下した。次いで、液温を0〜5℃に保ちながら20%水酸化ナトリウム水溶液をゆっくりと滴下して反応液を中和し、同温度で1時間撹拌して析出した結晶を濾別し、水洗した。得られた結晶を乾燥した後、カラムクロマトグラフィーで精製し、表1のNo.4の色素4.1gを得た。このものはマススペクトルでm/z528のピークを有していた。融点は112.5℃であり、アセトン中での吸収スペクトル測定でλmax537nm、分子吸光係数57000を示した。
【0042】
【化8】
【0043】
【化9】
【0044】
(b)インクの調製例
(a)の色素6.0重量部、フェノキシ樹脂(「PKHJ」、ユニオンカーバイド社製)10重量部、及びテトラヒドロフラン90重量部を混合し、超音波洗浄機で30分間処理して感熱転写記録用インクを調製した。
(c)感熱転写記録用シートの作製例
(b)の感熱転写記録用インクを、ワイヤバーを用いてポリエチレンテレフタレートフィルム(6μm厚)上に塗布し、乾燥することにより乾燥膜厚約1μmの色材層を形成させた。次いで、このポリエチレンテレフタレートフィルムの背面にアクリル樹脂(「BR−80」、三菱レイヨン社製)10重量部、アミノ変性シリコーンオイル(「KF393」、信越化学工業社製)1重量部、及びトルエン89重量部からなる液を塗布し、乾燥して乾燥膜厚約1μmの耐熱性樹脂層を形成させて感熱転写シートを作製した。
得られた感熱転写シートを用いて記録した記録物について、色相、色濃度及び耐光性を評価した。結果を表2に示す。
【0045】
実施例2〜3
実施例1において、表1の色素4に代えて、表1の色素1、2を用いた以外は実施例1と同様にして、感熱転写記録用インク及び感熱転写記録用シートを製造した。評価結果を表2に示した。
【0046】
比較例1〜3
実施例1において、表1の色素4に代えて、下記構造式で表される色素A(特許文献1の染料27)、色素B(特許文献2の実施例1の化合物3)及び色素C(特許文献3の色素No.1)を用いた以外は実施例1と同様にして、感熱転写記録用インク及び感熱転写記録用シートを製造した。評価結果を表2に示す。
【0047】
【化10】
【0048】
【化11】
【0049】
【化12】
【0050】
【表2】
【0051】
実施例4
実施例1において、(b)の感熱転写記録用インクに代えて、(a)の色素6.0重量部、AS樹脂(「デンカAS−S」、電気化学工業社製)10重量部、トルエン70重量部及びテトラヒドロフラン10重量部を混合し、超音波洗浄機で30分間処理して調製したインクを用いた以外は実施例1と同様にして、感熱転写記録用シートを作製した。上記の方法により、記録物の色相、色濃度及び耐光性を評価したところ、いずれも良好であった。
【0052】
【発明の効果】
以上詳述した通り、本発明によれば、感熱転写記録用色素に要求されるすべての特性において総合的に優れた性能を有し、しかも感度が高く、記録濃度が高く、記録物の色調が鮮明で、記録物の安定性が高い感熱転写記録用色素、並びにそれを用いた感熱転写記録用インク及び感熱転写記録用シートが提供される。
Claims (7)
- R1が、炭素数1〜4のアルキル基であることを特徴とする請求項1記載の感熱転写記録用イソチアゾールアゾ系色素。
- R2が、炭素数2〜5のアルキルカルボニル基、炭素数2〜5のアルキルスルホニル基又はベンゾイル基であることを特徴とする請求項1又は2記載の感熱転写記録用イソチアゾールアゾ系色素。
- R3及びR4が、それぞれ独立して、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数2〜7のアルコキシアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基、フェニル基、フェニルオキシ基又はトリフルオロメチル基であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の感熱転写記録用イソチアゾールアゾ系色素。
- m及びnが、共に2であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の感熱転写記録用イソチアゾールアゾ系色素。
- 請求項1乃至5のいずれかに記載の感熱転写記録用イソチアゾールアゾ系色素及び有機溶剤を含有することを特徴とする感熱転写記録用インク。
- 基材上に、請求項1乃至5のいずれかに記載の感熱転写記録用イソチアゾールアゾ系色素及び結着剤を含む色材層を有することを特徴とする感熱転写記録用シート。
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-
2003
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