JP4209393B2 - エレベータ用調速機及びエレベータ装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、昇降路内に設置され、かごの過速度を検出するエレベータ用調速機、及びその調速機を用いたエレベータ装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来のエレベータ装置においては、かごの速度が予め設定された過速度に達すると、かごに搭載された非常止め装置が調速機により動作され、かごが非常停止される。
非常停止後の復帰作業においては、非常止め装置の制動状態が解除された後、調速機に対する復帰作業が実施される。機械室ではなく、昇降路内の上部に調速機が配置されているエレベータ装置においては、最上階の乗場から乗場の戸を開けて、作業員がかご上に乗り、かご上から調速機に手を伸ばして復帰作業が実施される。
しかし、かごの非常停止位置が最上階の乗場付近である場合、乗場の戸を開けてもかごの天井に乗り移れないことがある。この場合、かごを上昇させて、非常止め装置のかごガイドレールへの制動状態を解除させることはできるが、かご上に作業員が乗るためにかごを下降させることはできない。
これに対し、例えば最上階の乗場の壁部に復帰用開口部を設け、この復帰用開口部を通して昇降路内に作業員が手を入れ、調速機に対する復帰作業を実施する方法が考えられている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、復帰用開口部を設けるためには壁部に穴を明ける工事が必要となり、手間がかかるとともに、耐火性能や意匠性が低下してしまう。また、復帰用開口部は、乗場の戸よりも上方の高所に位置し、しかも調速機は復帰用開口部からさらに奥に位置しているため、復帰用開口部からの復帰作業は難しいものとなってしまう。
【0004】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、かごの非常停止位置が最上階の乗場付近である場合にも、復帰作業を容易に実施することができるエレベータ用調速機、及びその調速機を用いたエレベータ装置を得ることを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
この発明によるエレベータ用調速機は、昇降路内の上部に配置され、かごの速度が予め設定された過速度に達したことを検出して動作し、かごに搭載された非常止め装置を動作させる調速機本体、調速機本体に設けられ、かつ外部操作される作用レバーを有し、作用レバーが操作されることにより、調速機本体の復帰動作を補助するための復帰補助機構、及びかごの上部に設けられ、作用レバーを押圧操作するための操作部材を備え、調速機本体は、非常止め装置を動作させるための調速機ロープが巻かれ、かごの昇降速度に応じて回転する綱車、綱車に回動可能に設けられている爪、綱車に回動可能に設けられ、綱車の回転による遠心力により回動されるフライウエイト、綱車に回動可能に設けられ、かつ通常は爪と係合しており、かごの速度が過速度に達したとき、フライウエイトの回動により回動されて爪との係合が外れるトリップレバー、及びトリップレバーと爪との係合が外れたときに調速機ロープを制動するシューを有し、復帰補助機構は、通常位置と復帰位置との間で変位可能になっており、作用レバーが押圧操作されることにより、通常位置から復帰位置に変位され、爪をトリップレバーに係合させる復帰用レバーを有している。
また、この発明によるエレベータ装置は、昇降路内を昇降されるかご、かごに搭載され、かごを非常停止させる非常止め装置、昇降路内の上部に配置され、かごの速度が予め設定された過速度に達したことを検出して動作し、非常止め装置を動作させる調速機本体、調速機本体に設けられ、かつ外部操作される作用レバーを有し、作用レバーが操作されることにより調速機本体の復帰動作を補助するための復帰補助機構、及びかごの上部に設けられ、作用レバーを押圧操作するための操作部材を備え、調速機本体は、非常止め装置を動作させるための調速機ロープが巻かれ、かごの昇降速度に応じて回転する綱車、綱車に回動可能に設けられている爪、綱車に回動可能に設けられ、綱車の回転による遠心力により回動されるフライウエイト、綱車に回動可能に設けられ、かつ通常は爪と係合しており、かごの速度が過速度に達したとき、フライウエイトの回動により回動されて爪との係合が外れるトリップレバー、及びトリップレバーと爪との係合が外れたときに調速機ロープを制動するシューを有し、復帰補助機構は、通常位置と復帰位置との間で変位可能になっており、作用レバーが押圧操作されることにより、通常位置から復帰位置に変位され、爪をトリップレバーに係合させる復帰用レバーを有している。
【0006】
【発明の実施の形態】
以下、この発明の好適な実施の形態について図面を参照して説明する。
図1はこの発明の実施の形態の一例によるエレベータ装置を示す構成図である。図において、昇降路1内の上部には、駆動装置2が設置されている。駆動装置2の駆動シーブ2aには、主索3が巻回されている。主索3の一端部には、かご4が吊り下げられ、主索3の他端部には、釣合重り5が吊り下げられている。昇降路1内には、かご4及び釣合重り5の昇降を案内する一対のかごガイドレール6及び一対の重りガイドレール(図示せず)が設置されている。
【0007】
かご4の下部には、かご4を非常停止させるための非常止め装置7が搭載されている。かごガイドレール6の上端部近傍には、調速機支持部材8が固定されている。この調速機支持部材8上には、かご6の過速度を検出して非常止め装置7を動作させる調速機本体9が支持されている。
【0008】
昇降路1の底部近傍には、回転自在の張り車10が設けられている。調速機本体9及び張り車10の間には、ループ状の調速機ロープ11が巻き掛けられている。調速機ロープ11は、レバー12を介して非常止め装置7に接続されており、かご4の昇降に伴って循環移動される。
【0009】
乗場13には、乗場の戸14が設けられている。かご4の上部には、棒状の操作部材(操作カム)75が立設され固定されている。操作部材75は、かご4が最上階の乗場13よりも上方へ移動したときに調速機本体9に近接するように配置されている。
【0010】
図2は図1の調速機本体9を示す正面図である。図において、調速機ロープ11が巻かれた綱車21は、綱車軸22を中心に回転自在に基台23に支持されている。綱車21の側面には、ピン24を中心に回動自在な一対のフライウエイト25が取り付けられている。これら一対のフライウエイト25は、リンク26により互いに連結されている。
【0011】
一方のフライウエイト25の一端部には、作動爪37が固定されている。フライウエイト25は、綱車21の回転による遠心力により回動される。これにより、作動爪37は、綱車21の径方向外側へ変位される。一方のフライウエイト25の他端部と綱車21との間には、遠心力に対抗する平衡ばね27が設けられている。基台23には、駆動装置2のブレーキ装置(図示せず)を動作させるかご停止用スイッチ28が取り付けられている。かご停止用スイッチ28は、作動爪37により操作されるスイッチレバー28aを有している。
【0012】
綱車23には、ピン24と平行な軸71を中心に回動可能なトリップレバー72が取り付けられている。トリップレバー72は、その一部が一方のフライウエイト25に当接しており、フライウエイト25の回動により軸71を中心として回動される。軸71には、トリップレバー72をフライウエイト25に当接させる方向(図の時計方向)へ付勢する捻りばね73が設けられている。
【0013】
基台23には、綱車軸22を中心に回転可能なラチェット30が設けられている。このラチェット30の外周部には、多数の歯が設けられている。一方のピン24には、トリップレバー72及びラチェット30のいずれか一方と選択的に係合する爪29が軸支持されている。爪29は、引きばね74によりラチェット30に係合する方向へ付勢されている。爪29は、通常はトリップレバー72と係合しラチェット30から開離しているが、トリップレバー72との係合が外れると、引きばね74のばね力により回動され、ラチェット30の歯に係合する。
【0014】
基台23に回動自在に取り付けられたアーム31には、調速機ロープ11に押し付けられるシュー32が回動自在に取り付けられている。アーム31のばね受け部31aには、ばね軸33が貫通されている。ばね軸33の一端部とラチェット30との間には、接続レバー34が接続されている。ばね軸33の他端部には、ばね受け部材35が設けられている。ばね受け部31aとばね受け部材35との間には、シュー32を調速機ロープ11に押し付けるためのロープ掴みばね36が設けられている。
【0015】
基台23には、復帰用レバー42が取り付けられている。復帰用レバー42は、綱車軸22と平行な軸43を中心に揺動可能である。爪29には、復帰用レバー42が揺動することにより押圧される回転自在の突起44が設けられている。基台23と復帰用レバー42との間には、突起44から開離する方向へ復帰用レバー42を付勢する戻しばね45が設けられている。
【0016】
軸43には、外部から操作されることにより軸43を中心として復帰用レバー42と一体的に回動される作用レバー76が取り付けられている。この実施の形態における復帰補助機構は、復帰用レバー42、軸43、突起44、戻しばね45及び作用レバー76を有している。この復帰補助機構は、作用レバー76が操作されることにより、調速機本体9の一部機構、即ち爪29及びトリップレバー72を過速度検出による動作状態から動作前の状態に復帰させる。即ち、復帰補助機構は、調速機本体9の復帰動作を補助する。
【0017】
また、この実施の形態におけるエレベータ用調速機は、調速機本体9、復帰補助機構及び操作部材75を有している。
【0018】
図3は図2の要部を示す正面図、図4は図3の復帰用レバー42を復帰位置まで揺動させた状態を示す正面図である。図3では、復帰用レバー42は通常位置にあり、突起44から開離している。図3の状態から、操作部材75が上方へ変位されると、作用レバー73が操作部材75により押圧されて回動され、復帰用レバー42も戻しばね45に逆らって復帰位置まで揺動される。これにより、突起44が復帰用レバー42により押圧され、爪29が引きばね74に逆らって図の時計方向へ回動されてトリップレバー72と係合する。
【0019】
次に、動作について説明する。かご4の昇降速度が第1過速度(通常は定格速度の1.3倍程度)に達すると、遠心力によるフライウエイト25の回動によって作動爪37がかご停止用スイッチ28のスイッチレバー28aに当接してスイッチレバー28aを回動させる。これにより、スイッチ28が作動し、駆動装置2の電源が遮断され、駆動装置2のブレーキ装置によりかごが停止される。
【0020】
また、例えば主索3が破断した場合など、駆動装置2が停止しても、かご4が停止することなく下降を続け、かご4の下降速度が第2過速度(通常は定格速度の1.4倍程度)に達すると、フライウエイト25がさらに回動し、これに伴いトリップレバー72の回動量も大きくなり、トリップレバー72と爪29との係合が外れる。これにより、爪29が引きばね74のばね力で回動されてラチェット30の歯に係合する。そして、ラチェット30が綱車21とともに図2の反時計方向へ僅かに回転される。
【0021】
このラチェット30の回転により、アーム31が図2の反時計方向へ回動され、シュー32が調速機ロープ11に当接するとともに、ロープ掴みばね36によりシュー32が調速機ロープ11に押し付けられ、調速機ロープ11が制動される。調速機ロープ11の循環が停止されると、かご4が下降し続けることにより、レバー12が操作され、非常止め装置7が動作する。
【0022】
次に、非常止め装置7及び調速機本体9の動作後の復帰作業について説明する。復帰作業においては、まずかご4を僅かに上昇させ、非常止め装置7のかごガイドレール6への制動状態を解除させる。この後、さらにかご4を上昇させると、綱車21が調速機ロープ3を介して図2の時計方向へ回動され、爪29とラチェット30との係合が外れ、ラチェット30も図の時計方向へ回動して元の位置に戻る。これにより、アーム31が元の位置に戻り、シュー32が調速機ロープ11から離れる。
【0023】
この後、最上階の乗場13からかご4の天井に乗り込める位置までかご4を上昇させた後、最上階の乗場13の乗場の戸14を開けて、作業員がかご4上に乗る。そして、かご4上から調速機本体9に手を伸ばして、爪29をトリップレバー72に係合させることにより、復帰作業が終了する。
【0024】
このように、作業員がかご4上に乗れれば、爪29をトリップレバー72に手動で係合させることができ、復帰補助機構を用いる必要はない。
【0025】
一方、調速機本体9が第2過速度動作をしたときのかご4の位置が最上階の乗場13付近であり、その位置からは乗場の戸14を開けてかご4の天井に乗り込めない場合、かご4をさらに上昇させ、操作部材75により作用レバー76を押圧する。これにより、調速機本体9側では復帰用レバー42が戻しばね45に逆らって図2〜図4の時計方向へ揺動され、突起44が復帰用レバー42によって押圧される。そして、爪29が引きばね73に逆らって図2〜図4の時計方向へ回動され、トリップレバー72に係合する。
【0026】
なお、復帰用レバー42と突起44とが対向する位置関係にない場合には、かご4をそのまましばらく上昇させ、綱車21を時計方向へ回転させる。これにより、操作部材75は作用レバー76に当接し続け、綱車21と一体で回転する突起44が、復帰位置にある復帰用レバー42に当接して押圧される。
【0027】
このように操作することにより、かご4が最上階の乗場13付近にあり、その位置からは乗場の戸14を開けてかご4の天井に乗り込めない場合においても、乗場13側からの遠隔操作によって、爪29をトリップレバー72に係合させることができる。
【0028】
従って、昇降路1内に調速機本体9が配置されている場合でも、調速機本体9へアクセスするための開口部を乗場壁に設けることなく、調速機本体9に対する復帰作業を遠隔から容易に行うことができ、復帰作業の作業性を向上させることができる。
【0029】
また、調速機本体9から乗場13まで遠隔操作用のワイヤ等を配線する必要もなく、昇降路1内の機器レイアウトの自由度の低下を防止できる。
【0030】
なお、最上階よりも下方で非常止め装置7が動作した場合にも、かご4上に作業員が乗り込むことなく、操作部材75を使用して復帰作業を行うことは可能である。但し、かご4を最上階の着床位置よりも上方へ移動させるために、例えば安全装置を解除するなどの手間がかかるので、上述したようにかご4上に乗り込む方が簡単であることが多い。
【0031】
また、上記の例では操作部材75をかご4上に固定したが、操作部材は、かご4に対して上下動可能としてもよい。この場合、かご4を最上階の着床位置よりも上方へ移動させることなく、操作部材を使用して復帰作業を行うことができる。また、操作部材を上下動可能とする場合、かご室内からの手動操作により上下動させてもよく、また電動モータ等の駆動力により上下動させてもよい。
【0032】
さらに、上記の例では、いわゆる機械室レスエレベータを示したが、調速機が昇降路内の上部に配置されているエレベータ装置であれば、機械室を有するエレベータ装置にもこの発明は適用できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 この発明の実施の形態の一例によるエレベータ装置を示す構成図である。
【図2】 図1の調速機本体を示す正面図である。
【図3】 図2の要部を示す正面図である。
【図4】 図3の復帰用レバーを復帰位置まで揺動させた状態を示す正面図である。
Claims (4)
- 昇降路内の上部に配置され、かごの速度が予め設定された過速度に達したことを検出して動作し、上記かごに搭載された非常止め装置を動作させる調速機本体、
上記調速機本体に設けられ、かつ外部操作される作用レバーを有し、上記作用レバーが操作されることにより、上記調速機本体の復帰動作を補助するための復帰補助機構、及び
上記かごの上部に設けられ、上記作用レバーを押圧操作するための操作部材
を備え、
上記調速機本体は、
上記非常止め装置を動作させるための調速機ロープが巻かれ、上記かごの昇降速度に応じて回転する綱車、
上記綱車に回動可能に設けられている爪、
上記綱車に回動可能に設けられ、上記綱車の回転による遠心力により回動されるフライウエイト、
上記綱車に回動可能に設けられ、かつ通常は上記爪と係合しており、上記かごの速度が上記過速度に達したとき、上記フライウエイトの回動により回動されて上記爪との係合が外れるトリップレバー、及び
上記トリップレバーと上記爪との係合が外れたときに上記調速機ロープを制動するシューを有し、
上記復帰補助機構は、
通常位置と復帰位置との間で変位可能になっており、上記作用レバーが押圧操作されることにより、上記通常位置から上記復帰位置に変位され、上記爪を上記トリップレバーに係合させる復帰用レバーを有しているエレベータ用調速機。 - 上記操作部材は、上記かごに対して上下動可能になっている請求項1記載のエレベータ用調速機。
- 昇降路内を昇降されるかご、
上記かごに搭載され、上記かごを非常停止させる非常止め装置、
上記昇降路内の上部に配置され、上記かごの速度が予め設定された過速度に達したことを検出して動作し、上記非常止め装置を動作させる調速機本体、
上記調速機本体に設けられ、かつ外部操作される作用レバーを有し、上記作用レバーが操作されることにより上記調速機本体の復帰動作を補助するための復帰補助機構、及び
上記かごの上部に設けられ、上記作用レバーを押圧操作するための操作部材
を備え、
上記調速機本体は、
上記非常止め装置を動作させるための調速機ロープが巻かれ、上記かごの昇降速度に応じて回転する綱車、
上記綱車に回動可能に設けられている爪、
上記綱車に回動可能に設けられ、上記綱車の回転による遠心力により回動されるフライウエイト、
上記綱車に回動可能に設けられ、かつ通常は上記爪と係合しており、上記かごの速度が上記過速度に達したとき、上記フライウエイトの回動により回動されて上記爪との係合が外れるトリップレバー、及び
上記トリップレバーと上記爪との係合が外れたときに上記調速機ロープを制動するシューを有し、
上記復帰補助機構は、
通常位置と復帰位置との間で変位可能になっており、上記作用レバーが押圧操作されることにより、上記通常位置から上記復帰位置に変位され、上記爪を上記トリップレバーに係合させる復帰用レバーを有しているエレベータ装置。 - 上記操作部材は上記かごの上部に固定されており、上記かごを最上階の着床位置よりも上方へ移動させることにより、上記操作部材が上記作用レバーを押圧操作するようになっている請求項3記載のエレベータ装置。
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