JP4205193B2 - 液晶表示板用の接着性スペーサー、その製造方法および液晶表示板 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、液晶表示板用の接着性スペーサー、その製造方法および液晶表示板に関する。
【0002】
【従来の技術】
テレビ、パーソナルコンピューター、ワードプロセッサー、PHS(携帯情報端末)、カーナビゲーションシステム等の画像表示素子として、液晶表示板(LCD)が広く用いられている。液晶表示板のうちでも、TFT−LCDと呼ばれる液晶表示板は、高速応答や視野角拡大への対応が可能であり、ブラウン管(CRT)からの置き換えを目指して、13インチ以上の大画面TFT−LCDの開発が検討されている。
【0003】
大画面TFT−LCDを製造する際、液晶パネルの製造工程において、基板搬送時、基板切断時、液晶パネルの輸送時に、振動や衝撃が加わって、液晶パネル内部のスペーサーが動いて、下記▲1▼および▲2▼に示すような、液晶パネルの表示品位低下の問題がある。
▲1▼ 液晶の配向の乱れや配向膜の損傷が生じて、光抜けが増加し、コントラストが低下する。
【0004】
▲2▼ ギャップムラや色ムラが発生する。
スペーサーの移動・脱落の防止を目的として、スペーサー粒子表面に接着剤をコートした接着性スペーサーが開発されている。接着性スペーサーは、基板上に乾式散布または湿式散布し、加熱(通常はシール樹脂を溶融させる位の温度140〜160℃)することによって、基板に接着、固定される。
【0005】
接着性スペーサーの製造は、簡便に実施できると言う観点から、衝撃力を用いて粒子表面を熱可塑性樹脂で被覆する方法が行われている(特開昭63−94224号公報、特開平1−154028号公報、特開平8−328022号公報および特開平9−235527号公報)。接着性スペーサーの製造は、熱可塑性樹脂を用いて粒子表面をポリマー鎖でグラフト化する方法も行われている(特開平5−188384号公報、特開平5−232480号公報、特開平7−300586号公報、特開平7−300587号公報、特開平7−301810号公報、特開平7−333623号公報、特開平8−43834号公報、特開平8−48979号公報、特開平8−328018号公報、特開平9−244034号公報、特開平9−194842号公報)。
【0006】
粒子表面をポリマー鎖でグラフト化する方法では、粒子表面とポリマーとの間の密着性は強いが、ポリマーの分子量が小さく、かつ、その量も少ないことに起因して、ポリマーと基板間の密着性は悪く、単に基板に付着しているだけであり、LCDが強い振動や衝撃を受けると、スペーサーが容易に動いてしまうという問題がある。そこで、衝撃力を用いて粒子表面を熱可塑性樹脂で被覆する上記の方法が検討されているが、以下の問題(1)〜(2)を有している。
【0007】
(1)熱可塑性樹脂と基板間の密着性は優れるが、粒子表面とポリマー間の密着性が低いため、LCDが強い振動や衝撃を受けると、スペーサーが容易に動いてしまうという問題がある。
(2)接着性スペーサーを製造する際に、非常に強い衝撃(摩擦)エネルギーが粒子および熱可塑性樹脂に与えられるため、熱可塑性樹脂の分解や解重合が生じやすく、低い分子量のポリマーやオリゴマーが生成しやすい。このため、分解したポリマーやオリゴマー等は、スペーサーを洗浄しても残存しやすく、不純物として液晶に溶出しやすくなり、STN−LCDと比較して液晶への不純物の混入を特に嫌うTFT−LCDにおいて、液晶の電気特性の低下(電圧保持率の低下等)や、配向特性の低下(プレチルト角の低下)等を引き起こし、液晶表示板の信頼性が低下することになる。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明が解決しようとする課題は、接着性に優れ、不純物が液晶に混入しにくく、液晶表示板の信頼性を高める接着性スペーサー、その製造方法および液晶表示板を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明にかかる液晶表示板用の接着性スペーサーは、
表面にポリマーがグラフト化されてなるポリマーグラフト粒子の表面の少なくとも一部を、熱可塑性樹脂で被覆してなるスペーサーである。
本発明にかかる液晶表示板用の接着性スペーサーの製造方法は、
原料粒子の表面をポリマーでグラフト化してポリマーグラフト粒子を製造するグラフト化工程と、
前記ポリマーグラフト粒子の表面の少なくとも一部を熱可塑性樹脂で被覆する被覆工程と、
を含む製造方法である。
【0010】
本発明にかかる液晶表示板は、電極基板間に介在させるスペーサーとして、上記液晶表示板用の接着性スペーサーが用いられてなる。
【0011】
【発明の実施の形態】
液晶表示板用の接着性スペーサー:
本発明の液晶表示板用の接着性スペーサーは、表面にポリマーがグラフト化されてなるポリマーグラフト粒子の表面の少なくとも一部を、熱可塑性樹脂で被覆してなる接着性スペーサーである。ポリマーグラフト粒子は、原料粒子の表面をグラフト化して得られる。
〔原料粒子〕
原料粒子は、液晶表示板に使用する場合に液晶層の厚みを均一かつ一定に保持するものである。
【0012】
原料粒子の平均粒子径は、好ましくは1〜30μm、より好ましくは1〜20μm、最も好ましくは1〜15μmである。平均粒子径が上記範囲を外れると、液晶表示板用の接着性スペーサーとしては用いられないことがある。
原料粒子の粒子径の変動係数(CV)は、好ましくは10%以下、より好ましくは8%以下、さらに好ましくは6%以下である。粒子径変動係数が10%を超えると、液晶表示板に使用した場合、液晶層の厚みを均一かつ一定に保持することが困難となり、画像ムラを起こしやすくなる。
【0013】
本発明における平均粒子径および粒子径の変動係数の定義や測定方法は、後述の実施例に記載されるものが採用される。
原料粒子の形状は、球状、針状、板状、鱗片状、破砕状、俵状、まゆ状、金平糖状等の任意の粒子形状で良く、特に限定されないが、液晶表示板の隙間距離を均一に一定とする上では球状が好ましい。これは、粒子が球状であると、すべてまたはほぼすべての方向について一定またはほぼ一定の粒径を有するからである。
【0014】
原料粒子としては、種々のものがあり、特に限定はされないが、たとえば、有機架橋重合体粒子、無機系粒子、有機質無機質複合体粒子等が挙げられる。これらのうちでも、ビニル系架橋重合体粒子等の有機架橋重合体粒子や、有機質無機質複合体粒子が、電極基板、配向膜またはカラーフィルターの損傷防止や両電極基板間の隙間距離の均一性を得やすい点で好ましい。
【0015】
前記有機架橋重合体粒子としては、特に限定はされないが、たとえば、ベンゾグアナミン、メラミンおよび尿素からなる群の中から選ばれた少なくとも1種のアミノ化合物とホルムアルデヒドとから縮合反応により得られるアミノ樹脂の硬化粒子(特開昭62−068811号公報参照);ジビニルベンゼンを単独で重合あるいは他のビニル単量体と共重合させて得られるジビニルベンゼン架橋樹脂粒子(特開平1−144429号公報参照)や、メチルメタクリレート等の単官能モノマーとグリシジルメタクリレートやγ−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン等の多官能モノマーとを分散重合系で共重合させて得られる(メタ)アクリル系架橋樹脂粒子等のビニル系架橋重合体粒子等が挙げられる。
【0016】
前記無機系粒子としては、特に限定はされないが、たとえば、ガラス、シリカ、アルミナ等の球状微粒子等が挙げられる。
前記有機質無機質複合体粒子は、有機質部分と無機質部分とからなる有機質無機質複合体粒子である。この有機質無機質複合体粒子において、前記無機質部分の割合は、特に限定はされないが、たとえば、前記有機質無機質複合体粒子の重量に対して、無機酸化物換算で、好ましくは10〜90wt%、より好ましくは15〜90wt%、より好ましくは25〜85wt%の範囲である。無機質部分の割合を示す無機酸化物換算とは、有機質無機質複合体粒子を空気中などの酸化雰囲気中で高温(たとえば1000℃)で焼成した前後の重量を測定することにより求めた重量百分率で示される。有機質無機質複合体粒子の無機質部分の割合が、無機酸化物換算で前記範囲を下回ると、有機質無機質複合体粒子が軟らかくなり、電極基板への散布個数が増えることがあり、また、前記範囲を上回ると、硬すぎて配向膜の損傷やTFTの断線が生じやすくなることがある。
【0017】
このような有機質無機質複合体粒子としては、特に限定はされないが、たとえば、有機ポリマー骨格と、前記有機ポリマー骨格中の少なくとも1個の炭素原子にケイ素原子が直接化学結合した有機ケイ素を分子内に有するポリシロキサン骨格とを含み、前記ポリシロキサン骨格を構成するSiO2 の量が25wt%以上である、有機質無機質複合体粒子A等を挙げることができる。有機質無機質複合体粒子Aが、G≧14・Y1.75(ここで、Gは破壊強度〔kg〕を示し;Yは粒子径〔mm〕を示す)を満足する破壊強度であると好ましく、10%圧縮弾性率が300〜2000kg/mm2 、10%変形後の残留変位が0〜5%であるとさらに好ましい。
【0018】
有機質無機質複合体粒子Aの製造方法については、特に限定されないが、たとえば、下記に示す縮合工程と重合工程と熱処理工程とを含む製造方法が挙げられる。
縮合工程は、ラジカル重合性基含有第1シリコン化合物を用いて加水分解・縮合する工程である。
【0019】
第1シリコン化合物は、次の一般式(1):
【0020】
【化1】
【0021】
(ここで、Ra は水素原子またはメチル基を示し;Rb は、置換基を有していても良い炭素数1〜20の2価の有機基を示し;Rc は、水素原子と、炭素数1〜5のアルキル基と、炭素数2〜5のアシル基とからなる群から選ばれる少なくとも1つの1価基を示す)
と、次の一般式(2):
【0022】
【化2】
【0023】
(ここで、Rd は水素原子またはメチル基を示し;Re は、水素原子と、炭素数1〜5のアルキル基と、炭素数2〜5のアシル基とからなる群から選ばれる少なくとも1つの1価基を示す)
と、次の一般式(3):
【0024】
【化3】
【0025】
(ここで、Rf は水素原子またはメチル基を示し;Rg は、置換基を有していても良い炭素数1〜20の2価の有機基を示し;Rh は、水素原子と、炭素数1〜5のアルキル基と、炭素数2〜5のアシル基とからなる群から選ばれる少なくとも1つの1価基を示す)
とからなる群から選ばれる少なくとも1つの一般式で表される化合物およびその誘導体からなる群から選ばれる少なくとも1つである。
【0026】
重合工程は、縮合工程中および/または縮合工程後に、ラジカル重合性基をラジカル重合反応させる工程である。熱処理工程は、重合工程で生成した重合体粒子を800℃以下の温度で乾燥および焼成する工程である。
熱処理工程は、たとえば、10容量%以下の酸素濃度を有する雰囲気中で行われる。
【0027】
原料粒子は、染料および顔料からなる群から選ばれる少なくとも1つ等を含むことで着色されていてもよい。その色は、光が透過しにくいか、または、透過しない色が、接着性スペーサー自身の光抜けを防止でき画質のコントラストを向上できる点で好ましい。光が透過しにくいか、または、透過しない色としては、たとえば、黒、濃青、紺、紫、青、濃緑、緑、茶、赤等の色が挙げられるが、特に好ましくは、黒、濃青、紺色である。
【0028】
なお、染料および/または顔料は、単に原料粒子に含まれるものでもよく、あるいは、染料および/または顔料と原料粒子を構成するマトリックスとが化学結合によって結び付けられた構造を有するものでもよい。
〔ポリマーグラフト粒子〕
ポリマーグラフト粒子は、表面にポリマーがグラフト化されてなる粒子である。このポリマーは、原料粒子と後述の熱可塑性樹脂との親和性を高めて、接着性スペーサーの接着性を向上させ、振動や衝撃を受けた場合に接着性スペーサーの移動を抑制する作用を発揮する。ポリマーは、たとえば、シロキサン結合、エーテル結合、ウレタン結合、C−N結合、Si−C結合等の化学結合を介して、原料粒子にグラフト化している。
【0029】
ポリマーとしては、たとえば、(メタ)アクリル系ポリマー、(メタ)アクリル−スチレン系ポリマー、スチレン系ポリマー等を挙げることができ、接着性スペーサー中に1種のみ存在するほか、2種以上共存することもできる。これらのポリマーのうち、後述の熱可塑性樹脂を構成する単量体と同じ構成単位からなるポリマーは、スペーサーの接着性が向上するため、好ましい。
〔熱可塑性樹脂〕
熱可塑性樹脂は、ポリマーグラフト粒子の表面の少なくとも一部、すなわち、その表面の一部または全体を、被覆して、ポリマーグラフト粒子の表面に熱可塑性樹脂の接着層となる。この接着層は電極基板等に対する接着剤として作用する。
【0030】
熱可塑性樹脂としては、たとえば、エチレン性不飽和単量体の単独重合体または共重合体を含む樹脂等を挙げることができる。熱可塑性樹脂が、単量体単位として(メタ)アクリレートを必須成分とする(メタ)アクリル系重合体を含む樹脂((メタ)アクリル系樹脂)、単量体単位としてスチレン化合物を必須成分とするスチレン系重合体を含む樹脂(スチレン系樹脂)、および、単量体単位としてスチレン化合物および(メタ)アクリレートを必須成分とする(メタ)アクリル−スチレン系重合体を含む樹脂((メタ)アクリル−スチレン系樹脂)からなる群の中から選ばれた少なくとも1種であると、基板への接着力が大きい。熱可塑性樹脂としては、(メタ)アクリル系樹脂および/または(メタ)アクリル−スチレン系樹脂がさらに好ましい。
【0031】
熱可塑性樹脂としては、単独重合体のガラス転移温度(Tg)が60℃以上となる単量体を必須単位として含有してなる重合体を含む樹脂が上下両方の基板に強固に接着し易くなるため好ましい。前記単独重合体のTgは好ましくは70℃以上、さらに好ましくは80℃以上である。
熱可塑性樹脂としては、接着性を向上させ、スペーサー周囲の光抜けを抑制できる点で、単量体単位として炭素数6以上のアルキル基を有する(メタ)アクリレートまたはスチレンを45wt%以上(好ましくは50wt%以上、さらに好ましくは60wt%以上)含有する(メタ)アクリル−スチレン系重合体を含む(メタ)アクリル−スチレン系樹脂が好ましい。
【0032】
上記エチレン性不飽和単量体としては、特に限定はされないが、たとえば、エチレン、プロピレン、塩化ビニル、酢酸ビニル、スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン、(メタ)アクリル酸エステル(たとえば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、トリフルオロプロピル(メタ)アクリレート等)等を挙げることができる。これらのうちでも、エチレン性不飽和単量体が、芳香族残基(たとえば、フェニル基等)、水素結合可能な残基(エステル基等)を含有していると、配向膜との分子間力が大きくなり、基板への接着力が大きくなるため好ましく、(メタ)アクリル酸エステルおよびスチレンから選ばれる少なくとも1種以上がさらに好ましい。
【0033】
特に、(メタ)アクリル酸エステルやスチレンを重合して熱可塑性樹脂を製造する場合、ソープフリー重合して得られるものが好ましい。この理由は、ソープフリー重合ではフリーの界面活性剤等の導電性不純物を使用しないため、液晶表示板の信頼性が向上しやすいからである。
熱可塑性樹脂は、上記のものに限定されない。たとえば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル;各種ポリアミド;各種ポリカーボネート;各種エポキシ樹脂等も熱可塑性樹脂として使用できる。熱可塑性樹脂としては、上記に挙げたものが1種のみ存在するほか、2種以上共存することもできる。
【0034】
熱可塑性樹脂はポリマーグラフト粒子と非反応性、つまり、熱可塑性樹脂には、ポリマーグラフト粒子と反応する置換基はなく、熱可塑性樹脂とポリマーグラフト粒子とが化学結合によって結びつけられないものであってもよい。この場合は、熱可塑性樹脂に含まれる低分子量のオリゴマーやポリマー等の不純物が液晶に溶出しても、ポリマーグラフト粒子と反応する置換基を不純物は有しないため、液晶表示板の電気特性(電圧保持率)や、配向特性の低下が避けられることがある。
【0035】
熱可塑性樹脂と上記ポリマーとの数平均分子量の比率(熱可塑性樹脂/ポリマー)については、特に限定はないが、好ましくは1.1以上、より好ましくは1.2以上、さらに好ましくは1.5以上、最も好ましくは2以上である。上記数平均分子量の比率が、1.1未満であると、接着性が低下するおそれがある。
熱可塑性樹脂は、染料および顔料からなる群から選ばれる少なくとも1種を含むことで着色されていてもよい。その好ましい色としては、スペーサーの原料粒子の好ましい色として前述した色が挙げられる。
〔液晶表示板用の接着性スペーサー〕
本発明の液晶表示板用の接着性スペーサーの平均粒子径は、特に限定はされないが、好ましくは1μmを超え32μm以下、より好ましくは1μmを超え22μm以下、さらに好ましくは1μmを超え17μm以下である。
【0036】
熱可塑性樹脂から得られる接着層の重量割合は、特に限定はされないが、ポリマーグラフト粒子に対して、好ましくは0.1〜30%、より好ましくは1〜25%、最も好ましくは2〜20%である。接着層の重量割合が30%を超えると、溶融した際に電極基板や配向膜やカラーフィルターを覆う面積が大きくなり、液晶表示板の画質低下を招くおそれがある。一方、接着層の重量割合が少ないと、接着性が低下する。
【0037】
接着層の厚みは、特に限定はされないが、通常、0.01〜2μmの範囲、好ましくは0.05〜1μmの範囲である。厚みが上記範囲より小さいと、接着性が低下するおそれがあり、また、厚みが上記範囲より大きいと、配向膜やカラーフィルター等を覆う面積が広くなって、液晶表示板の表示品位が低下するおそれがある。
【0038】
本発明の液晶表示板用の接着性スペーサーは、湿式、乾式のいずれの散布方法であっても使用することができる。本発明の接着性スペーサーは、ポリマーグラフト粒子の表面と熱可塑性樹脂との化学的親和性が高いため、接着性が高く、この接着性スペーサーを用いた液晶表示板が強い衝撃を受けても、スペーサーの移動が防止される。また、この接着性スペーサーでは、熱可塑性樹脂に由来する低分子量のポリマーやオリゴマー等の不純物が液晶中に溶出することが抑制されるため、その信頼性は高い。
【0039】
本発明の液晶表示板用の接着性スペーサーを製造する方法については、特に限定されないが、好ましいものとして、以下に詳しく説明する製造方法を挙げることができる。
接着性スペーサーの製造方法:
本発明にかかる液晶表示板用の接着性スペーサーの製造方法は、グラフト化工程と被覆工程とを含む。
〔グラフト化工程〕
グラフト化工程は、原料粒子の表面をポリマーでグラフト化してポリマーグラフト粒子を製造する工程である。
【0040】
グラフト化工程で用いられる原料粒子としては、前述の原料粒子の構成を有し、さらに、表面にエポキシ基、水酸基、カルボキシル基、メルカプト基、アミノ基、ハロアルキル基、シラノール基、アルコキシシリル基等の官能基を有する粒子を挙げることができる。官能基は、グラフト化工程で用いられる原料粒子の表面に1種のみ存在するほか、2種以上共存することもできる。
【0041】
グラフト化工程で用いられる原料粒子は、その表面が表面処理されていてもよい。表面処理の方法については、特に限定はなく、原料粒子の核となる核粒子に対して、たとえば、下記に示す表面処理剤を用いて、混合、加熱する方法等を挙げることができる。核粒子としては、原料粒子として挙げた前述のものがそのまま用いられる。
【0042】
エポキシ基を導入するための表面処理剤:3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン等のエポキシ基含有シランカップリング剤。
水酸基を導入するための表面処理剤:ヒドロキシプロピルトリメトキシシラン等の水酸基含有シランカップリング剤。なお、上記エポキシ基含有シランカップリング剤で処理した後、エポキシ基を酸やアルカリで開環させてもよい。
【0043】
メルカプト基を導入するための表面処理剤:3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン等のメルカプト基含有シランカップリング剤。
アミノ基を導入するための表面処理剤:3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン等の1〜3級のアミノ基含有シランカップリング剤。
【0044】
グラフト化工程で用いられるポリマーとしては、前述のポリマーの構成を有し、さらに、上記官能基と反応する反応性基を有するものを挙げることができる。グラフト化工程で用いられるポリマーに含まれる反応性基としては、たとえば、エポキシ基、水酸基、カルボキシ基、メルカプト基、アミノ基、ハロアルキル基、シラノール基、アルコキシシリル基等を挙げることができ、1種のみ存在するほか、2種以上共存することもできる。
【0045】
原料粒子をポリマーでグラフト化する具体的な方法としては、特に限定はされないが、たとえば、原料粒子とポリマーとをポリマーが溶解する溶媒の存在下で、加熱しながら混合し、原料粒子の官能基と、ポリマー中の反応性基とを反応させる方法等を挙げることができる。
グラフト化工程はこのように液相中で行うのが好ましく、原料粒子の凝集を抑制できるという利点がある。
〔被覆工程〕
被覆工程は、上記グラフト化工程で得られたポリマーグラフト粒子の表面の少なくとも一部を熱可塑性樹脂で被覆する工程である。
【0046】
被覆工程で用いられるポリマーグラフト粒子および熱可塑性樹脂としては、前述のものが用いられる。
ポリマーグラフト粒子の表面を熱可塑性樹脂で被覆して接着層を形成する具体的な方法としては、特に限定はされないが、たとえば、熱可塑性樹脂の溶液中に、ポリマーグラフト粒子を分散させ、充分攪拌混合した後、溶媒を蒸発除去し、得られた塊状物を粉砕する方法や、溶融させた熱可塑性樹脂中に、ポリマーグラフト粒子を分散させ、混練して充分に分散させ、冷却後に塊状物を粉砕する方法等がある。
【0047】
また、上記方法以外に、「表面の改質」(日本化学会編化学総説No.44 、第45〜52頁、1987年発行)や「粉体の表面改質と高機能化技術」(「表面」第25巻第1号第1〜19頁および表紙写真、1987年発行)に詳細に記載されている、モノマーや重合触媒を芯物質界面に局在させて高分子壁を形成しカプセル化するIn situ重合法;濃厚相の分散滴(コアセルベート)を発生させるコアセルベーション法;液々分散系の連続相と分散相に重縮合を行うモノマーを別々に加えておき、界面で均質な高分子膜を形成させる界面重合法;液中硬化被覆法;液中乾燥法;乾式で高速混合する高速気流中衝撃法;気中懸濁被覆法;スプレードライング法等の従来公知の樹脂被覆方法によっても、被覆することができる。
【0048】
特に、高速気流中衝撃法は、ポリマーグラフト粒子と熱可塑性樹脂の粉末とを混合し、この混合物を気相中に分散させ、衝撃力を主体とする機械的熱的エネルギーをポリマーグラフト粒子および熱可塑性樹脂の粉末に与えることで、ポリマーグラフト粒子の表面を熱可塑性樹脂で被覆する方法であり、簡便に被覆することができるので、最も好ましい。
【0049】
高速気流中衝撃法を行う際に用いられる熱可塑性樹脂の粉末の平均粒子径は、特に限定はされないが、好ましくは2μm以下、より好ましくは1μm以下、最も好ましくは0.5μm以下である。熱可塑性樹脂の粉末の平均粒子径が2μmを超えるとポリマーグラフト粒子の表面を均一に被覆できなくなるおそれがある。
【0050】
高速気流中衝撃法を行う際のポリマーグラフト粒子に対する熱可塑性樹脂の粉末の割合は、好ましくは0.1〜30wt%、より好ましくは1〜25wt%、最も好ましくは2〜20wt%である。熱可塑性樹脂の粉末の割合が30wt%を超えると、接着層の厚みが大きくなり、溶融した際に電極基板や配向膜やカラーフィルター等を覆う面積が大きくなり、液晶表示板の画質が低下するおそれがある。他方、熱可塑性樹脂の粉末の割合が0.1wt%未満であると、接着性が低下するおそれがある。
【0051】
上記高速気流中衝撃法を利用した装置としては、特に限定はされないが、たとえば、奈良機械製作所(株)製ハイブリダイゼーションシステムや、ホソカワミクロン(株)製メカノフュージョンシステム、川崎重工業(株)製クリプトロンシステム等がある。
高速気流中衝撃法は、接着性の高いスペーサーが得られやすいが、熱可塑性樹脂を分解、解重合させる衝撃エネルギーがかかるため、熱可塑性樹脂の低分子量物、オリゴマーや、モノマー等が副生しやすい。これらの副生物は、接着性スペーサーを用いて得られる液晶表示板において、液晶中へ不純物として溶出し易く、液晶表示板の信頼性が低下する。しかしながら、本発明の接着性スペーサーでは、表面にポリマーがグラフト化した粒子を用いているので、熱可塑性樹脂由来の不純物の低減と液晶へのブリードが抑制され、しかも、接着性に優れるため表示品位が高く、信頼性の高い液晶表示板用スペーサーとすることができる。
【0052】
次に、本発明の液晶表示板について説明する。
液晶表示板:
本発明の液晶表示板は、従来の液晶表示板において、従来のスペーサーの代わりに、本発明の液晶表示板用の接着性スペーサーおよび/または本発明の製造方法で得られた液晶表示板用の接着性スペーサーを電極基板間に介在させて電極基板の間隔を保持させたものであり、同スペーサーの粒子径と同じかまたはほぼ同じ隙間距離を有する。
【0053】
本発明の液晶表示板は、たとえば、第1電極基板と、第2電極基板と、スペーサーと、シール材と、液晶とを備えている。第1電極基板は、第1基板と、第1基板の表面に形成された第1電極とを有する。第2電極基板は、第2基板と、第2基板の表面に形成された第2電極とを有し、第1電極基板と対向している。このスペーサーは、液晶表示板用の接着性スペーサーであり、第1電極基板と第2電極基板との間に介在してこれら両電極基板間の間隔を保持する役目をする。シール材は、第1電極基板と第2電極基板とを周辺部で接着する。液晶は、第1電極基板と第2電極基板との間に封入されており、第1電極基板と第2電極基板とシール材とで囲まれた空間に充填されている。
【0054】
本発明の液晶表示板には、電極基板、シール材、液晶など、スペーサー以外のものは従来と同様のものが同様のやり方で使用することができる。電極基板は、ガラス基板、フィルム基板などの基板と、基板の表面に形成された電極とを有しており、必要に応じて、電極基板の表面に電極を覆うように形成された配向膜をさらに有する。シール材としては、エポキシ樹脂接着シール材などが使用される。液晶としては、従来より用いられているものでよく、たとえば、ビフェニル系、フェニルシクロヘキサン系、シッフ塩基系、アゾ系、アゾキシ系、安息香酸エステル系、ターフェニル系、シクロヘキシルカルボン酸エステル系、ビフェニルシクロヘキサン系、ピリミジン系、ジオキサン系、シクロヘキシルシクロヘキサンエステル系、シクロヘキシルエタン系、シクロヘキセン系、フッ素系などの液晶が使用できる。
【0055】
本発明の液晶表示板を作製する方法としては、たとえば、接着性スペーサーを面内スペーサーとして2枚の電極基板のうちの一方の電極基板に均一に散布したものに、本発明で用いられる原料粒子をシール部スペーサーとしてエポキシ樹脂等の接着シール材に分散させた後、もう一方の電極基板の接着シール部分にスクリーン印刷などの手段により塗布したものを載せ、適度の圧力を加え、140〜160℃の温度で1〜60分間の加熱により、接着シール材を加熱硬化させた後、液晶を注入し、注入部を封止して、液晶表示板を得る方法を挙げることができるが、液晶表示板の作製方法によって本発明が限定されるものではない。面内スペーサーとしては、接着性スペーサーの中でも、着色されたものがスペーサー自身の光抜けを生じにくいので好ましい。
【0056】
本発明の液晶表示板は、上記接着性スペーサーを用いたものであるため、上下両方の基板への接着力が強く、スペーサーの移動が少なくなって、液晶層の厚みが均一化され、色ムラが発生せず、しかも、熱可塑性樹脂由来の不純物の低減と、液晶中への不純物の混入が抑制され、表示品位および信頼性が高くなる。したがって、振動や衝撃のかかり易い用途、たとえば、カーナビゲーション等の車載用に好適に使用されるが、従来の液晶表示板と同じ用途、たとえば、テレビ、パーソナルコンピューター、ワードプロセッサー、PHS(携帯情報端末)などの画像表示素子として使用してもよい。
【0057】
【実施例】
以下に、本発明の実施例と比較例とを示すが、本発明は下記実施例に限定されない。
以下の例中、原料粒子等の平均粒子径および粒子径の変動係数、電圧保持率(50℃、500時間後)は、以下の方法で測定したものである。
平均粒子径と粒子径の変動係数:
試料を電子顕微鏡により観察して、その撮影像の任意の試料200個の粒子径を実測し、次式に従って、平均粒子径、粒子径の標準偏差および粒子径の変動係数を求めた。
【0058】
【数1】
【0059】
【数2】
【0060】
【数3】
【0061】
電圧保持率:
一対のパターン化されたITO電極付きガラス基板上にポリイミド配向膜を形成し、ラビング処理を行った後、TN配向となるように貼りあわせ液晶セルを作製した。次に、液晶電圧保持率測定システムを用いて、25℃において、初期の電圧保持率を測定して、電圧保持率が90%以上あるのを確認後、50℃、500時間後の電圧保持率(測定温度:25℃)を測定した。
【0062】
実施例および比較例に先立ち、原料粒子を合成例1〜3により合成し、ポリマーを合成例4〜5により合成した。得られた原料粒子およびポリマーを用いて、ポリマーグラフト粒子を合成例6〜8により合成した。
<合成例1>
γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランおよびビニルトリメトキシシラン(45/55重量比)を使用して、アルコキシシリル基の共加水分解・重縮合と、二重結合のラジカル重合を行うことにより、表面にシラノール基を有する白色の有機質無機質複合体粒子(1)を得た。
【0063】
この複合体粒子(1)は、平均粒子径5.0μm、粒子径の変動係数3.2%、ポリシロキサン骨格の割合が、複合体粒子(1)の重量に対して、SiO2 換算量で55wt%(空気中1000℃で焼成した場合)であった。
<合成例2>
合成例1で得られた複合体粒子(1)をメタノール中に分散させて、3−アミノプロピルトリエトキシシランを添加・混合し、還流温度下で、混合物を加熱・攪拌した。この混合物を冷却後、混合物中に含まれるメタノールをエバポレーターを用いて加熱しながら留去した。得られた残留物を150℃で2時間真空乾燥した後、メタノールで数回洗浄し、この残留物を濾過、乾燥し、解砕を行って、表面にアミノ基を有する白色の有機質無機質複合体粒子(2)を得た。有機質無機質複合体粒子(2)は、平均粒子径5.0μm、粒子径の変動係数3.5%であった。
【0064】
<合成例3>
ヒドロキシプロピルセルロースをメタノールに溶解させたメタノール溶液に、スチレン、ジビニルベンゼンおよびメタクリル酸(60/30/10重量比)と、ラジカル重合開始剤としての2,2’−アゾビスイソブチロニトリルとを混合した。この混合物を、窒素雰囲気下、8時間還流させ、析出重合を行い、表面にカルボキシル基を有するビニル系架橋重合体粒子(3)を得た。ビニル系架橋重合体粒子(3)は、平均粒子径5.5μm、粒子径の変動係数3.6%であった。
【0065】
<合成例4>
γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン12.4g、テトラメトキシシラン144.4g、メタノール100g、水18gおよび固体触媒としてのアンバーリスト15(ロームアンドハース・ジャパン社製の陽イオン交換樹脂)5gを混合し、65℃で2時間攪拌して、アルコキシシリル基の共加水分解・重縮合を行った。反応混合物を冷却した後、減圧加熱しながらエバポレーターでメタノールを留去し、アンバーリスト15を濾別して、数平均分子量1800の重合性シロキサンを得た。
【0066】
次いで、上記で得た重合性シロキサン、スチレンおよびラウリルメタクリレート(10/45/45重量比)と、ラジカル重合開始剤としての2,2’−アゾビスイソブチロニトリルと、溶媒としてのエチルセロソルブとを混合した。この混合物を、窒素雰囲気下、80℃で3時間加熱・攪拌して、溶液重合を行い、側鎖にポリアルコキシシロキサン基を有するポリマー(4)のエチルセロソルブ溶液(固形分濃度:50wt%)を得た。このポリマー(4)の数平均分子量は8200であった。
【0067】
<合成例5>
メチルメタクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、スチレンおよびグリシジルメタクリレート(4/16/75/5重量比)と、ラジカル重合開始剤としての2,2’−アゾビスイソブチロニトリルと、溶媒としてのトルエンとを混合した。この混合物を、窒素雰囲気下、60℃で5時間加熱・攪拌して、溶液重合を行い、側鎖にエポキシ基を有するポリマー(5)のトルエン溶液(固形分濃度:50wt%)を得た。このポリマー(5)の数平均分子量は25000であった。
【0068】
<合成例6>
合成例1で得られた表面にシラノール基を有する複合体粒子(1)40gを原料粒子として、エチルセロソルブ500gに分散させた。合成例4で得られた側鎖にポリアルコキシシロキサン基を有するポリマー(4)のエチルセロソルブ溶液16g(固形分:16g)をポリマーとして、上記で得られた分散液に混合した。得られた混合液を加熱しながら、エバポレーターでエチルセロソルブを留去し、得られた残留物を120℃で2時間真空乾燥した後、エチルセロソルブで数回洗浄して、複合体粒子(1)の表面にポリマー(4)がグラフトした、ポリマーグラフト粒子(6)を得た。
【0069】
<合成例7>
合成例6において、原料粒子として合成例2で得られた表面にアミノ基を有する複合体粒子(2)を用い、ポリマーとして合成例5で得られた側鎖にエポキシ基を有するポリマー(5)を用い、溶媒としてトルエンを用いた以外は、合成例6と同様にして、複合体粒子(2)の表面にポリマー(5)がグラフトした、ポリマーグラフト粒子(7)を得た。
【0070】
<合成例8>
合成例6において、原料粒子として合成例3で得られた表面にカルボキシル基を有する架橋重合体粒子(3)を用い、ポリマーとして合成例5で得られた側鎖にエポキシ基を有するポリマー(5)を用い、溶媒としてトルエンを用いた以外は、合成例6と同様にして、架橋重合体粒子(3)の表面にポリマー(5)がグラフトした、ポリマーグラフト粒子(8)を得た。
【0071】
<実施例1>
合成例6で得られたポリマーグラフト粒子(6)35gと、熱可塑性樹脂粉末としてソープフリー重合して得られたメチルメタクリレート−スチレン−2−エチルヘキシルアクリレートの共重合体(15/65/20重量比、数平均分子量85,000)の粉末7gとを混合した。混合後、奈良機械製作所(株)製ハイブリダイゼーションシステムNHS−0型を使用し、高速気流中衝撃法(16000rpm、5分間)により、ポリマーグラフト粒子(6)の表面を、メチルメタクリレート−スチレン−2−エチルヘキシルアクリレートの共重合体で被覆処理した接着性スペーサー(1)を得た。
【0072】
この接着性スペーサー(1)を用いて液晶セルを作製し、その電圧保持率(50℃、500時間後)を測定したところ、98%であり、電圧保持率の変化はほとんどなかった。次に、接着性スペーサー(1)を用いて13インチTFT液晶液晶表示板(1)を作製し、所定電圧を印加したところ、液晶表示板(1)の駆動安定性は長期間安定であり、液晶の配向特性も良好レベルであった。
【0073】
液晶表示板(1)を、X軸、Y軸およびZ軸方向に、それぞれ1時間ずつ2Gの加速度をかけながら振動させた。振動後の面内ギャップ均一性は良好であり、スペーサーの移動によって配向膜が傷つけられることに起因した光抜けの増大や、スペーサー周囲の光抜けの増大は、認められず、光抜けの程度は、いずれも、振動前と同等であった。これらの結果は表2にも記載した。
【0074】
<実施例2〜3>
実施例1において、ポリマーグラフト粒子の種類および熱可塑性樹脂粉末(いずれもソープフリー重合によって合成)の種類を、表1に示すものに変更する以外は、実施例1と同様にして、接着性スペーサー(2)〜(3)を得た。
得られた接着性スペーサー(2)〜(3)を用い、実施例1と同様にして電圧保持率(50℃、500時間後)を測定した。また、実施例1と同様にして13インチのTFT液晶表示板である液晶表示板(2)〜(3)を作製し、駆動安定性および液晶の配向特性や、振動付与した後の面内ギャップ均一性、配向膜が傷つけられることに起因した光抜けおよびスペーサー周囲の光抜けを評価した。これらの結果を表2に記載した。表2には、実施例1の結果もあわせて記載した。
【0075】
【表1】
【0076】
【表2】
【0077】
<比較例1>
実施例3において、ポリマーグラフト粒子(8)の代わりに、架橋重合体粒子(3)を用いた以外は、実施例3と同様にして、比較接着性スペーサー(1)を得た。
得られた比較接着性スペーサー(1)を用い、実施例1と同様にして電圧保持率(50℃、500時間後)を測定した。また、実施例1と同様にして13インチのTFT液晶表示板である比較液晶表示板(1)を作製し、駆動安定性および液晶の配向特性や、振動付与した後の面内ギャップ均一性、配向膜が傷つけられることに起因した光抜けおよびスペーサー周囲の光抜けを評価した。これらの結果を表3に記載した。
【0078】
<比較例2>
合成例8で得られたポリマーグラフト粒子(8)を、そのまま、比較接着性スペーサー(2)とした。
得られた比較接着性スペーサー(2)を用い、実施例1と同様にして電圧保持率(50℃、500時間後)を測定した。また、実施例1と同様にして13インチのTFT液晶表示板である比較液晶表示板(2)を作製し、駆動安定性および液晶の配向特性や、振動付与した後の面内ギャップ均一性、配向膜が傷つけられることに起因した光抜けおよびスペーサー周囲の光抜けを評価した。これらの結果を表3に記載した。
【0079】
<比較例3>
実施例3において、ポリマーグラフト粒子(8)の代わりに、架橋重合体粒子(3)を用い、熱可塑性樹脂粉末として、乳化重合によって得られたメチルメタクリレート−スチレン−2−エチルヘキシルアクリレート−グリシジルメタクリレートの共重合体(10/65/20/5重量比、数平均分子量100,000)の粉末を用いた以外は、実施例3と同様にして、比較接着性スペーサー(3)を得た。
【0080】
得られた比較接着性スペーサー(3)を用い、実施例1と同様にして電圧保持率(50℃、500時間後)を測定した。また、実施例1と同様にして13インチのTFT液晶表示板である比較液晶表示板(3)を作製し、駆動安定性および液晶の配向特性や、振動付与した後の面内ギャップ均一性、配向膜が傷つけられることに起因した光抜けおよびスペーサー周囲の光抜けを評価した。これらの結果を表3に記載した。
【0081】
【表3】
【0082】
【発明の効果】
本発明にかかる液晶表示板用の接着性スペーサーは、接着性に優れ、不純物が液晶に混入しにくく、液晶表示板の信頼性を高めることができる。
本発明にかかる液晶表示板用の接着性スペーサーの製造方法は、接着性に優れ、不純物が液晶に混入しにくく、液晶表示板の信頼性を高める接着性スペーサーを容易に得させることができる。
【0083】
本発明にかかる液晶表示板は、上記接着性スペーサーを電極基板間に介在させているため、接着性に優れ、不純物が液晶に混入しにくく、信頼性が高い。
Claims (12)
- 表面にポリマーがグラフト化されてなるポリマーグラフト粒子の表面の少なくとも一部を、該ポリマーグラフト粒子と非反応性である熱可塑性樹脂で被覆してなる、液晶表示板用の接着性スペーサー。
- 前記熱可塑性樹脂の数平均分子量と前記ポリマーの数平均分子量の比率((熱可塑性樹脂の数平均分子量)/(ポリマーの数平均分子量))が、1.5以上である、請求項1に記載の液晶表示板用の接着性スペーサー。
- 前記ポリマーグラフト粒子が、有機質無機質複合体粒子である、請求項1または2に記載の液晶表示板用の接着スペーサー。
- 前記有機質無機質複合体粒子の無機質部分の割合が、該有機質無機質複合体粒子の重量に対して、無機酸化物換算で10〜90wt%である、請求項3に記載の液晶表示板用の接着スペーサー。
- 前記有機質無機質複合体粒子が、有機ポリマー骨格と、該有機ポリマー骨格中の少なくとも1個の炭素原子にケイ素原子が直接化学結合した有機ケイ素を分子内に有するポリシロキサン骨格とを含み、該ポリシロキサン骨格を構成するSiO2の量が25wt%以上である、請求項3または4に記載の液晶表示板用の接着スペーサー。
- 前記有機質無機質複合体粒子が、G≧14・Y(ここで、Gは破壊強度(kg)を示し;Yは粒子径(mm)を示す)を満足する、請求項3から5のいずれかに記載の液晶表示板用の接着スペーサー。
- 前記有機質無機質複合体粒子の10%圧縮弾性率が300〜2000kg/mmである、請求項3から6のいずれかに記載の液晶表示板用の接着スペーサー。
- 前記有機質無機質複合体粒子の10%変形後の残留変位が0〜5%である、請求項3から7のいずれかに記載の液晶表示板用接着スペーサー。
- 原料粒子の表面をポリマーでグラフト化してポリマーグラフト粒子を製造するグラフト化工程と、
前記ポリマーグラフト粒子の表面の少なくとも一部を熱可塑性樹脂で被覆する被覆工程とを含み、
該グラフト工程を液相中で行い、該被覆工程を高速気流中衝撃法で行う、
液晶表示板用の接着性スペーサーの製造方法。 - 前記熱可塑性樹脂が前記ポリマーグラフト粒子と非反応性である、請求項9に記載の液晶表示板用の接着性スペーサーの製造方法。
- 前記熱可塑性樹脂が熱可塑性樹脂粉末である、請求項9または10に記載の液晶表示板用の接着スペーサーの製造方法。
- 電極基板間に介在させるスペーサーとして、請求項1から8のいずれかに記載の液晶表示板用の接着性スペーサーが用いられてなる液晶表示板。
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