JP3836925B2 - 液晶表示板用スペーサーの製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、振動や衝撃によるスペーサー周囲の光抜けの増大が起きにくい液晶表示板用スペーサーの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
液晶表示板(LCD)は、2枚の対向する電極基板、前記電極基板間に介在するスペーサーおよび液晶物質から構成されている。スペーサーは、液晶層の厚みを均一かつ一定に保つために使用され、たとえば、ゾル−ゲル法で製造したシリカ粒子(特開昭62−269933号公報)、前記シリカ粒子を焼成したもの(特開平1−234826号公報)、スチレン系単量体やジビニルベンゼン系単量体等を懸濁重合させて得られるスチレン系やジビニルベンゼン系のポリマー粒子(特開昭61−95016号公報)等がある。
【0003】
液晶表示板においては、スペーサー周囲で光抜けが起こるという現象がある。光抜けは、液晶分子とスペーサー表面の相互作用により、スペーサー周囲の液晶の配向が乱れ、スペーサー周囲に一種の光透過空間が生じることから起こる。
近年、テレビ、モニター、ノートパソコン、ワープロ等の用途において、その表示面積が大きくなったり(たとえば、11インチ以上)、また、自動車積載用のカーナビゲーションやテレビ等の用途において、その表示面積が大きくなるに従って、液晶表示板に加わる振動や衝撃によって、スペーサー周囲の光抜けの面積が大きくなり、液晶表示板の表示品位が低下する問題がある。したがって、液晶表示板が振動や衝撃を受けても、スペーサー周囲の光抜け増大を防止することが重要となっている。
【0004】
これとは別に、液晶表示板の実用に際して要求される重要な表示性能として、高速応答性、高コントラスト性、広視野角性等が挙げられている。これら諸性能の実現のためには、液晶層の厚み、つまり、2枚の電極基板の隙間距離(セルギャップ)を厳密に一定に保持しなければならない。そのために使用されるスペーサーは、従来、スペーサーを溶媒中に分散させて基板上に散布する(湿式散布法)ようにしていたが、この湿式散布法では、スペーサーの分散に用いる溶媒による配向膜の損傷や汚染、TFT素子への不純物混入が問題となるので、これらを防止するために、近年、溶媒を用いない乾式散布が主流になっている。しかし、乾式散布法では、溶媒を用いないため、スペーサーの凝集が生じ易く高分散性を維持しにくい。そのため、乾式散布法では、スペーサー同士の凝集を低減させることが重要である。凝集を防止することで、基板全体に均一な密度で散布することができるようになり、液晶層の厚みを均一かつ一定に保つことができるようになるからである。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
上記第1の問題点の解消、すなわち、振動や衝撃によるスペーサー周囲の光抜け増大の防止は、乾式散布方法で得られた液晶表示板のみでなく、湿式散布方法で得られた液晶表示板にも共通する課題であり、上記第2の問題点、すなわち、スペーサー同士の凝集を低減させることは乾式散布法に固有の課題である。
【0006】
スペーサー周囲の光抜けを防止する方法としては、スペーサーの表面をシランカップリング剤等で処理する方法(特開昭64−59212号公報、特開平6−11719号公報)、スペーサーの表面を表面エネルギーの小さいシランカップリング剤からなる薄膜で被覆する方法(特開平6−180456号公報)等が知られている。以上の方法は、いずれも、スペーサーの表面を改質して光抜けを防止するものである。
【0007】
上記公知技術では、下記1)、2)に示す問題があり、振動や衝撃が加わった時のスペーサー周囲の光抜けの増大を防止するものではない。
1)上記公報に記載の方法で得られたスペーサーは、いずれについても、粒子表面に形成された、シランカップリング剤、有機変性トリアルコキシシラン等からなる膜にはシラノール基が多く残存し易い。残存シラノール基が多すぎると、スペーサーは親水性となって、液晶分子との強い相互作用が生じ、振動や衝撃が加わった時のスペーサー周囲の光抜けの増大を防止できにくくなる。しかも、膜中のシラノール基の縮合や水素結合等によって粒子同士の凝集が生じやすくなるため、乾式散布法を採用する時には、散布性(分散性、散布密度等)が劣ることになり、セルギャップが不均一となってLCDの表示品位が低下したりする。
【0008】
2)特開平6−11719号、特開平4−177324号、特開平5−232478号、特開平6−180456号の各公報に記載の方法で得られた有機ポリマー系粒子からなるスペーサーの場合は、表面張力の小さい化合物からなる膜は粒子表面と強固に結合しないため、膜が剥離し易くなり、剥離した膜が不純物となって混入する。このため、振動や衝撃が加わった時にスペーサー周囲の光抜けが増大し、セルギャップの不均一性が増えてLCDの表示品位が低下する。乾式散布時においては特に、その装置中の配管やメッシュとの接触や衝突により、膜の剥離が顕著となる。一方、特開平2−297523号、特開平3−293327号、特開昭64−59212号、特開平2−15847号、特開平5−232478号の各公報に記載の方法で得られた無機系粒子からなるスペーサーの場合は、硬いために配向膜に傷が生じ、光抜けが顕著に増大する。
【0009】
そこで、本発明の課題は、振動や衝撃が加わっても自身の周囲の光抜けが増大しにくくい液晶表示板用スペーサーの製造方法を提供することである。
なお、本発明の製造方法で得られるスペーサーは、湿式、乾式のいずれの散布方法であっても使用することが可能であるが、乾式散布して用いる場合に、スペーサーの凝集がなく、均一に散布することもできるので、乾式散布法に特に適する。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、本発明者らは、原料粒子を種々の表面処理剤で処理したスペーサーを製造して詳しく研究した。その結果、前記1)の問題についてはシラノール基の生じない化合物による表面疎水化処理で解決するようにし、前記2)の問題については表面処理剤として原料粒子との密着性を得やすい官能基を有する処理剤にして解決するようにして、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち、本発明の液晶表示板用スペーサーの製造方法は、原料粒子としてベンゾグアナミン−メラミン−ホルムアルデヒド縮合架橋粒子を用い、その表面を、複素環残基およびイソシアナート基のうちの少なくとも1種の官能基と、疎水性基とを有する化合物を有効成分として含む表面処理剤で処理することにより、前記表面処理剤を原料粒子の表面に化学結合させる工程を含む。
本発明の液晶表示板用スペーサーは、上記液晶表示板用スペーサーの製造方法
により得られたものである。
【0012】
本発明の液晶表示板は、電極基板間に介在させるスペーサーとして、上記液晶表示板用スペーサーが用いられてなる。
【0013】
【発明の実施の形態】
まず、本発明の液晶表示板用スペーサーの製造方法について説明する。
液晶表示板用スペーサーの製造方法:
本発明の液晶表示板用スペーサーの製造方法は、原料粒子の表面を表面処理剤で処理する工程を含む。
【0014】
原料粒子の具体例としては、特に限定はされないが、たとえば、無機系粒子、有機架橋重合体粒子、有機質および無機質からなる複合体粒子等が挙げられる。これらの中でも、原料粒子が、有機架橋重合体粒子および複合体粒子のうちの少なくとも1種であると、電極基板、配向膜またはカラーフィルターの損傷が防止され、ギャップの均一性が得られやすくなるため好ましい。
【0015】
前記無機系粒子としては、特に限定はされないが、たとえば、ガラス、シリカ、アルミナ等の球状微粒子等が挙げられる。
前記有機架橋重合体粒子としては、特に限定はされないが、たとえば、ビニル系樹脂、アミノ樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂等の樹脂の架橋粒子が挙げられる。中でも、有機架橋重合体粒子がビニル系樹脂およびアミノ樹脂のうちの少なくとも1種の樹脂の架橋粒子であると、耐熱性および耐溶剤性に優れ、後述の表面処理剤で処理されやすくなるため好ましい。
【0016】
前記ビニル系樹脂の架橋粒子としては、特に限定はされないが、たとえば、ジビニルベンゼンを単独で重合あるいは他のビニル単量体と共重合させて得られるジビニルベンゼン架橋樹脂粒子(特開平1−144429号公報参照)等が挙げられる。
前記アミノ樹脂の架橋粒子としては、特に限定はされないが、たとえば、ベンゾグアナミン、メラミンおよび尿素からなる群の中から選ばれた少なくとも1種のアミノ化合物とホルムアルデヒドとの縮合反応により得られたアミノ樹脂の硬化粒子(特開昭62−068811号公報参照)等が挙げられる。中でも、アミノ樹脂の架橋粒子が、ベンゾグアナミン、メラミンおよび尿素からなる群の中から選ばれた少なくとも1種のアミノ化合物とホルムアルデヒドとの縮合反応により得られたアミノ樹脂の架橋粒子であると、後述の表面処理剤で処理されやすくなるため好ましい。
【0017】
前記複合体粒子は、有機質部分と無機質部分とからなる複合体粒子である。この複合体粒子において、前記無機質部分の割合は、特に限定はされないが、たとえば、前記複合体粒子の重量に対して、無機酸化物換算で、好ましくは10〜90wt%、より好ましくは25〜85wt%、より好ましくは30〜80wt%の範囲である。無機質部分の割合を示す無機酸化物換算とは、複合体粒子を空気中などの酸化雰囲気中で高温(たとえば1000℃)で焼成した前後の重量を測定することにより求めた重量百分率で示される。複合体粒子の無機質部分の割合が、無機酸化物換算で前記範囲を下回ると、複合体粒子が軟らかくなり、電極基板への散布個数が増えることがあり、また、前記範囲を上回ると、硬すぎて配向膜の損傷やTFTの断線が生じやすくなることがある。
【0018】
このような複合体粒子としては、特に限定はされないが、たとえば、有機ポリマー骨格と、前記有機ポリマー骨格中の少なくとも1個の炭素原子にケイ素原子が直接化学結合した有機ケイ素を分子内に有するポリシロキサン骨格とを含み、前記ポリシロキサン骨格を構成するSiO2 の量が25wt%以上であり、0.5μm以上の平均粒子径を有する複合体粒子A等を挙げることができる。複合体粒子Aが、G≧14・Y1.75(ここで、Gは破壊強度〔kg〕を示し;Yは粒子径〔mm〕を示す)を満足する破壊強度であると好ましく、10%圧縮弾性率が300〜2000kg/mm2 、10%変形後の残留変位が0〜5%であるとさらに好ましい。複合体粒子Aは、以下でも述べるが、染料および/または顔料を含むことで着色されていてもよい。
【0019】
複合体粒子Aの製造方法については、特に限定されないが、たとえば、下記に示す縮合工程と重合工程と熱処理工程とを含む製造方法が挙げられる。
縮合工程は、ラジカル重合性基含有第1シリコン化合物を用いて加水分解・縮合する工程である。
第1シリコン化合物は、次の一般式(1):
【0020】
【化1】
【0021】
(ここで、Ra は水素原子またはメチル基を示し;Rb は、置換基を有していても良い炭素数1〜20の2価の有機基を示し;Rc は、水素原子と、炭素数1〜5のアルキル基と、炭素数2〜5のアシル基とからなる群から選ばれる少なくとも1つの1価基を示す)
と、次の一般式(2):
【0022】
【化2】
【0023】
(ここで、Rd は水素原子またはメチル基を示し;Re は、水素原子と、炭素数1〜5のアルキル基と、炭素数2〜5のアシル基とからなる群から選ばれる少なくとも1つの1価基を示す)
と、次の一般式(3):
【0024】
【化3】
【0025】
(ここで、Rf は水素原子またはメチル基を示し;Rg は、置換基を有していても良い炭素数1〜20の2価の有機基を示し;Rh は、水素原子と、炭素数1〜5のアルキル基と、炭素数2〜5のアシル基とからなる群から選ばれる少なくとも1つの1価基を示す)
とからなる群から選ばれる少なくとも1つの一般式で表される化合物およびその誘導体からなる群から選ばれる少なくとも1つである。
【0026】
重合工程は、縮合工程中および/または縮合工程後に、ラジカル重合性基をラジカル重合反応させる工程である。熱処理工程は、重合工程で生成した重合体粒子を800℃以下の温度で乾燥および焼成する工程である。
熱処理工程は、たとえば、10容量%以下の酸素濃度を有する雰囲気中で行われる。
【0027】
縮合工程、重合工程および熱処理工程から選ばれる少なくとも1つの工程中および/または後に、生成した粒子を着色する着色工程をさらに含んでいてもよい。
原料粒子の平均粒子径は、特に限定はされないが、たとえば、0.5〜25μmであり、好ましくは1〜22μm、より好ましくは1〜20μm、さらに好ましくは1〜18μmである。上記範囲を外れると、得られるスペーサーが液晶表示板用スペーサーとしては用いられにくくなる。
【0028】
原料粒子は、電極基板の隙間距離の均一性の面から、たとえば、15%以下、好ましくは10%以下、より好ましくは8%以下、さらに好ましくは6%以下、最も好ましくは5%以下の粒子径変動係数を有する。粒子径の変動係数が15%を超えると、得られたスペーサーを液晶表示板に使用した場合、液晶層の厚みを均一かつ一定に保持することが困難となり、画像ムラを起こしやすくなる傾向がある。
【0029】
なお、本発明における、平均粒子径および粒子径変動係数の定義や、その測定方法は、後述の実施例に記載されるものが採用される。
原料粒子の形状は、球状、針状、板状、鱗片状、破砕状、俵状、まゆ状、金平糖状等の任意の粒子形状で良く、特に限定されないが、隙間距離を均一に一定とする上で球状が好ましい。これは、球状であると、すべてまたはほぼすべての方向について一定またはほぼ一定の粒径を有するスペーサーを得ることができるからである。
【0030】
原料粒子は、その表面に、アミノ基、水酸基、カルボキシル基およびメルカプト基からなる群の中から選ばれた少なくとも1種の基を有することが好ましく、アミノ基、水酸基およびカルボキシル基からなる群の中から選ばれた少なくとも1種の基を有することがさらに好ましい。これらの基は、後述の表面処理剤の有効成分の有する官能基と反応して容易に化学結合を形成することができる。
【0031】
原料粒子は、必要に応じて、たとえば、着色剤を含むことで着色された着色粒子であってもよい。着色剤は、染料および顔料からなる群から選ばれる少なくとも1つである。着色剤の色は、光が透過しにくいか、または、光が透過しない色が、得られるスペーサー自身の光抜けを防止でき画質のコントラストを向上できるので好ましい。光が透過しにくいか、または、光が透過しない色としては、黒、濃青、紺、紫、青、濃緑、緑、茶、赤などの色が挙げられるが、特に好ましくは、黒、濃青または紺である。なお、染料および/または顔料は、単に原料粒子に含まれるものでもよく、あるいは、染料および/または顔料と原料粒子を構成するマトリックスとが化学結合によって結び付けられた構造を有するものでもよい。
【0032】
また、スペーサーを、基板上に固着させて移動しにくくすることで液晶表示板の画質を向上させるために、必要に応じて、原料粒子は、その表面の少なくとも一部が接着層で被覆されてなるもの(接着性粒子)であってもよい。また、この接着層の少なくとも一部が原料粒子本体の表面と化学結合していても良い。接着層としては特に限定はないが、熱可塑性樹脂を含む層が好ましい。
【0033】
前記接着層の厚みは、特に限定はされないが、通常、0.01〜2μmの範囲、好ましくは0.05〜0.5μmの範囲である。厚みが上記範囲より小さいと、接着性が低下するおそれがあり、また、厚みが上記範囲より大きいと、配向膜やカラーフィルター等を覆う面積が広くなって、液晶表示板の表示品位が低下する恐れがある。
【0034】
前記接着層に含まれる熱可塑性樹脂としては、電極基板などに対して接着剤として作用するものであれば、特に限定されることはないが、接着性をより向上させる観点からは、(メタ)アクリル系樹脂および(メタ)アクリル−スチレン系樹脂からなる群の中から選ばれた少なくとも1種が最も好ましい。
熱可塑性樹脂は、1種のみ用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0035】
熱可塑性樹脂のガラス転移温度は、好ましくは40〜100℃、より好ましくは45〜90℃、さらに好ましくは50〜80℃である。また、熱可塑性樹脂の融解開始温度は、好ましくは50〜160℃、より好ましくは60〜150℃、さらに好ましくは70〜140℃である。ガラス転移温度や融解開始温度が低いと、接着性スペーサーが貯蔵中に融着等を起こしたり、乾式散布性か悪くなる場合がある。一方、ガラス転移温度や融解開始温度が高いと、液晶表示板を組み立てる際の加熱加圧時に、接着層に含まれる熱可塑性樹脂が溶融しにくく、そのため、電極基板との接着性が不充分となる場合がある。
【0036】
熱可塑性樹脂は、染料および顔料からなる群から選ばれる少なくとも1つ等を含むことで着色されていてもよい。
原料粒子の表面処理に用いられる表面処理剤は、官能基と疎水性基とを有する化合物(以下、これを「化合物A」と称する)を有効成分として含む。
前記官能基としては、複素環残基(環を有し、その環が2種類以上の元素で構成された残基、たとえば、エポキシ基、オキサゾリン基、アジリジン基、チオエポキシ基等)やイソシアナート基が挙げられる。中でも、官能基が、エポキシ基やイソシアナート基であると、反応性が高く、原料粒子の表面が容易に処理されるため好ましい。
【0037】
前記疎水性基としては、水分子との間に結合をつくりにくい基(原子団)であればよく、たとえば、アルキルシリル基、アリールシリル基、アルケニルシリル基、炭素数6以上のアルキル基、アリール基、アラルキル基およびフルオロアルキル基からなる群の中から選ばれた少なくとも1種等が挙げられる。なお、フルオロアルキル基は、炭素数1以上のアルキル基の水素原子の少なくとも1個がフッ素原子で置換されたものである。
【0038】
前記疎水性基として用いられるアルキルシリル基、アリールシリル基およびアルケニルシリル基としては、特に限定はされないが、たとえば、
一般式R1 m X3-m Si− …(4)
(ここで、R1 は炭素数1〜20のアルキル基、アリール基またはアルケニル基を示し;Xは水素原子、アルコキシ基、水酸基、ハロゲン原子またはシリコーン残基(R1 SiO−等)を示し;mは1〜3の整数である)
で表されるもの等が挙げられる。前記一般式(4)で表されるアルキルシリル基の中でも、ジアルキルシリル基(R1 =アルキル基、m=2)およびトリアルキルシリル基(R1 =アルキル基、m=3)が、疎水性が大きくなるため好ましい。なお、前記一般式(4)中、Xがアルコキシ基であると、入手しやすく、表面処理時に塩化水素等の有毒ガスが発生しないため好ましい。
【0039】
前記疎水性基として用いられる炭素数6以上のアルキル基としては、特に限定はされないが、たとえば、ヘキシル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基、トリデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基等が挙げられる。中でも、炭素数6以上のアルキル基が、オクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基、トリデシル基であると、疎水性が大きくなるため好ましい。
【0040】
前記疎水性基として用いられるアリール基としては、特に限定はされないが、たとえば、フェニル基、トリル基、キシリル基等が挙げられる。
前記疎水性基として用いられるアラルキル基としては、特に限定はされないが、たとえば、ベンジル基等が挙げられる。
前記疎水性基として用いられるフルオロアルキル基としては、特に限定されないが、たとえば、トリフルオロアルキル基、ペンタフルオロアルキル基、ヘプタフルオロアルキル基等が挙げられる。なお、上記フルオロアルキル基はいずれも、アルキル基の炭素数は1〜20である。中でも、フルオロアルキル基が、炭素数2〜18のアルキル基の水素原子の少なくとも1個がフッ素原子で置換された基であると、疎水性が大きくなるため好ましい。
【0041】
化合物Aの有する疎水性基は、上記の基の中でも、疎水性の点から、アルキルシリル基、炭素数6以上のアルキル基、アリール基およびフルオロアルキル基が好ましく、中でも、炭素数1〜16のアルキルシリル基、炭素数2〜18のフルオロアルキル基、および、炭素数6〜16のアルキル基がより好ましい。
化合物Aは、上記官能基および疎水性基を有するものであれば特に限定されないが、たとえば、3−グリシドキシプロピルジメチルメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメチルシラン、(3−グリシドキシプロピル)ビス(トリメチルシロキシ)メチルシラン、(3−グリシドキシプロピル)ペンタメチルジシロキサン、3−グリシドキシプロピルフェニルジメチルシラン、3−グリシドキシプロピルジビニルメトキシシラン、1,2−エポキシエイコサン、ラウリルアルコールのグリシジルエーテル、2−エチルヘキシルアルコールのグリシジルエーテル、1,2−エポキシ−1H,1H,2H,3H,3H−ヘプタデカフルオロウンデカン、1,1,1−トリフルオロ−3,4−エポキシブタン、p−t−ブチルフェニルグリシジルエーテル等のエポキシ化合物;上記エポキシ化合物のエポキシ基の酸素原子をイオウ原子に置換したチオエポキシ化合物;2−エチルヘキシルイソシアナート、フルオロフェニルイソシアナート、2,6−ジメチルフェニルイソシアナート、オクタデシルイソシアナート、トリルイソシアナート、トリフルオロメチルフェニルイソシアナート等のイソシアナート化合物;上記イソシアナート化合物のイソシアナート基をオキサゾリン基に置換したオキサゾリン化合物;上記イソシアナート化合物のイソシアナート基をアジリジン基に置換したアジリジン化合物等が挙げられる。
【0042】
化合物Aは、オリゴマーやポリマー等の高分子量体であっても良く、分子中に上記に挙げた官能基および疎水性基を有しておれば特に限定されない。このような化合物Aとしては、たとえば、グリシジルメタクリレートとラウリルメタクリレートとの共重合体、グリシジルメタクリレートとスチレンのと共重合体、イソプロペニルオキサゾリンとラウリルメタクリレートとの共重合体(これら共重合体はメチルメタクリレート等の他の共重合可能な単量体が共重合されていても良い。)、エポキシ基、オキサゾリン基、アジリジン基等で変性したシリコーンオイル等が挙げられる。
【0043】
原料粒子の表面を表面処理剤で処理する方法は、従来公知の方法が採用され、特に限定されるものではないが、たとえば、以下に示す方法▲1▼〜▲4▼等が挙げられる。
▲1▼ 表面処理剤を含む処理液中に原料粒子を浸漬した後、そのまま、または、濾過した後、乾燥する方法。
【0044】
▲2▼ 原料粒子の分散液に表面処理剤を添加した後、そのまま、または、濾過した後、乾燥する方法。
▲3▼ 表面処理剤を含む処理液を原料粒子に噴霧または混合し乾燥する方法。
▲4▼ 表面処理剤を気化させ、そのガスを原料粒子と接触させる方法。
なお、上記▲1▼〜▲3▼の方法で用いられる溶媒(分散媒)としては、トルエン、キシレン等のように官能基を持たない非極性溶媒が、化合物Aの官能基と反応しないため好ましい。
【0045】
表面処理剤の使用量は、特に限定されないが、原料粒子の表面を十分に処理するためには、たとえば、表面処理剤の有効成分である化合物Aが原料粒子に対して、好ましくは0.1〜100wt%、より好ましくは0.5〜70wt%、さらに好ましくは1〜40wt%である。前記範囲内であると、原料粒子表面の疎水化が容易に実現できるため好ましい。化合物Aの量が0.1wt%より少ないと、化合物Aによる処理効率が低下する恐れがある。化合物Aの量が100wt%より多いと、未反応の化合物Aが多量に残存するため、乾式散布性が低下する恐れがある。
【0046】
表面処理する際の温度は50〜250℃が好ましく、100〜200℃がさらに好ましい。表面処理する際の時間は1〜24時間が好ましく、2〜10時間がさらに好ましい。これらの温度または時間が前記範囲を外れると、表面の疎水化を実現できない恐れがある。また、減圧または真空乾燥すると、表面処理が促進されるため好ましい。
【0047】
化合物Aを有効成分として含む表面処理剤で原料粒子を表面処理することによって、得られる液晶表示板用スペーサーの表面は、化合物Aの有していた疎水性基を有するようになると考えられ、スペーサーの表面の疎水性が大きくなり、振動や衝撃が加わってもスペーサー周囲の光抜けが増大しにくくなる。
このように、表面処理剤で処理した後、残存の表面処理剤を除去するため、水や、アルコール等の溶媒で洗浄後、ろ過や、遠心分離等で分離し、解砕して単粒子化することにより、液晶表示板用スペーサーが得られる。
【0048】
次に、本発明の液晶表示板用スペーサーおよび液晶表示板について説明する。
液晶表示板用スペーサーおよび液晶表示板:
本発明の液晶表示板用スペーサーは、上記製造方法により得られたものである。この液晶表示板用スペーサーは、特に乾式散布法で使用すると、凝集しにくいので適しているが、湿式散布法で使用することもできる。
【0049】
本発明の液晶表示板は、従来の液晶表示板において、従来のスペーサーの代わりに、上記製造方法で得られた液晶表示板用スペーサーを電極基板間に介在させたものである。
本発明の液晶表示板は、たとえば、第1電極基板と第2電極基板と液晶表示板用スペーサーとシール材と液晶とを備えている。第1電極基板は、第1基板と、第1基板の表面に形成された第1電極とを有する。第2電極基板は、第2基板と、第2基板の表面に形成された第2電極とを有し、第1電極基板と対向している。液晶表示板用スペーサーは、第1電極基板と第2電極基板との間に介在しており、本発明の液晶表示板用スペーサーである。シール材は、第1電極基板と第2電極基板とを周辺部で接着する。液晶は、第1電極基板と第2電極基板とシール材とで囲まれた空間に充填されている。
【0050】
本発明の液晶表示板には、電極基板、シール材、液晶など、スペーサー以外のものは従来と同様のものが同様のやり方で使用することができる。電極基板は、ガラス基板、フィルム基板などの基板と、基板の表面に形成された電極とを有しており、必要に応じて、基板の表面に電極を覆うように形成された配向膜をさらに有する。シール材としては、エポキシ樹脂接着シール材などが使用される。液晶としては、従来より用いられているものでよく、たとえば、ビフェニル系、フェニルシクロヘキサン系、シッフ塩基系、アゾ系、アゾキシ系、安息香酸エステル系、ターフェニル系、シクロヘキシルカルボン酸エステル系、ビフェニルシクロヘキサン系、ピリミジン系、ジオキサン系、シクロヘキシルシクロヘキサンエステル系、シクロヘキシルエタン系、シクロヘキセン系、フッ素系などの液晶が使用できる。
【0051】
本発明の液晶表示板を作製する方法としては、たとえば、本発明のスペーサーを面内スペーサーとして2枚の電極基板のうちの一方の電極基板に静電気分散方式による乾式法により均一に散布したものに、本発明のスペーサーをシール部スペーサーとしてエポキシ樹脂等の接着シール材に分散させた後、もう一方の電極基板の接着シール部分にスクリーン印刷などの手段により塗布したものを載せ、適度の圧力を加え、100〜180℃の温度で1〜60分間の加熱、または、照射量40〜300mJ/cm2 の紫外線照射により、接着シール材を加熱硬化させた後、液晶を注入し、注入部を封止して、液晶表示板を得る方法を挙げることができるが、液晶表示板の作製方法によって本発明が限定されるものではない。面内スペーサーとしては、本発明のスペーサーの中でも、前述のように着色されたものがスペーサー自身の光抜けを生じにくいので好ましい。
【0052】
また、スペーサーの移動防止を目的として、本発明のスペーサーの表面の少なくとも一部が、熱可塑性樹脂で被覆された接着性スペーサーあってもよい。
本発明の液晶表示板は、従来の液晶表示板と同じ用途、たとえば、テレビ、モニター、パーソナルコンピューター、ワードプロセッサー、カーナビゲーションシステム、PHS(携帯情報端末)などの画像表示素子として使用され、振動や衝撃を加えてもスペーサー周囲の光抜けの増大が小さいため、中でも、11インチ以上の大型表示素子や、自動車積載用の表示素子として特に有用なものである。
【0053】
【実施例】
以下に、本発明の実施例と比較例とを示すが、本発明は下記実施例に限定されない。
下記例中、平均粒子径および粒子径変動係数は、以下の方法で測定したものである。
平均粒子径と粒子径変動係数:
試料を電子顕微鏡により観察して、その撮影像の任意の試料200個の粒子径を実測し、次式に従って、平均粒子径、粒子径の標準偏差および粒子径の変動係数を求めた。
【0054】
【数1】
【0055】
【数2】
【0056】
【数3】
【0057】
<実施例1>
原料粒子として白色のベンゾグアナミン−メラミン−ホルムアルデヒド縮合架橋粒子(平均粒子径6.0μm、粒子径変動係数3.2%)5gを用い、これをトルエン45g中に分散させた後、表面処理剤として(3−グリシドキシプロピル)ペンタメチルジシロキサン1gを添加し、115℃で加熱攪拌しながらトルエンを留去した。得られた粉体を150℃で真空乾燥した後、トルエンおよびメタノールで順次洗浄後、100℃で真空乾燥することにより、表面処理粒子(1)を得た。
【0058】
表面処理粒子(1)を静電気分散方式による乾式散布法により300mm×345mmの長方形の電極基板上へ散布し、基板上の同一面積の観察区を25か所選び、粒子が3個以上凝集した塊のある観察区をカウントしたところ、1か所であった。
次に、表面処理粒子(1)をスペーサーとして用いて以下の方法により、液晶表示板を作製した。図1にみるように、まず、300mm×345mm×1.1mmの下側ガラス基板111上に、電極(たとえば、透明電極)5およびポリイミド配向膜4を形成した後、ラビングを行って下側電極基板を110を得た。この下側電極基板を110に、表面処理粒子(1)からなるスペーサー(この場合、面内スペーサー)8を静電気分散方式による乾式散布法により散布した。
【0059】
一方、300mm×345mm×1.1mmの上側ガラス基板12上に、電極(たとえば、透明電極)5およびポリイミド配向膜4を形成した後、ラビングを行って上側電極基板を120を得た。そして、エポキシ樹脂接着シール材112中に表面処理粒子(1)からなるスペーサー(この場合、シール部スペーサー)113が30容量%となるように分散させたものを、上側電極基板120の接着シール部分にスクリーン印刷した。
【0060】
最後に、上下側電極基板120、110を、電極5および配向膜4がそれぞれ対向するように、スペーサー8を介して貼り合わせ、1kg/cm2 の圧力を加え、150℃の温度で30分間加熱し、接着シール材112を加熱硬化させた。その後、2枚の電極基板を120、110の隙間を真空とし、さらに、大気圧に戻すことにより、STN型液晶7を注入し、注入部を封止した。そして、上下ガラス基板12、111の外側にPVA(ポリビニルアルコール)系偏光膜6を貼り付けて13インチの液晶表示板(1)とした。
【0061】
上記のような方法に従い、スペーサーとして表面処理粒子(1)を使用して作製された液晶表示板(1)は、隙間距離が均一化されており、これに、透過率5%となるように電圧を印加したところ、スペーサー周囲の光抜けが少なく、良好な表示品位であった。
次に、120℃でアニール後、液晶表示板(1)を1000回の殴打試験を受けさせた後、同様に透過率5%となるように電圧を印加して、殴打試験前後のスペーサー周囲の光抜け状態を比較したところ、スペーサー周囲の光抜けの増大は認められず、隙間距離も均一であり、良好な表示品位を維持していた。
【0062】
<実施例2〜12>
実施例1において、使用した原料粒子および表面処理剤の種類と量を表1および2に示す通りとしたこと以外は実施例1と同様にして、表面処理粒子(2)〜(12)を得た。これらの表面処理粒子の乾式散布性を実施例1と同様の方法で調べた。その結果を表3に示す。
【0063】
次に、表面処理粒子(2)〜(12)をスペーサーとして用い、実施例1と同様にして13インチのSTN型液晶表示板(2)〜(12)を作製した。これらの液晶表示板について、実施例1と同様の方法で、1000回の殴打試験前後の電極基板間の隙間距離の均一性、スペーサー周囲の光抜けの程度および表示品位を調べた。その結果を表3に示す。
【0064】
<比較例1〜8>
実施例1において、使用した原料粒子および表面処理剤の種類と量を表4および5に示す通りとしたこと以外は実施例1と同様にして、比較用粒子(21)〜(28)を得た。これらの比較用粒子の乾式散布性を実施例1と同様の方法で調べた。その結果を表6に示す。
【0065】
次に、比較用粒子(21)〜(28)をスペーサーとして用い、実施例1と同様にして13インチのSTN型比較用液晶表示板(21)〜(28)を作製した。これらの液晶表示板について、実施例1と同様の方法で、1000回の殴打試験前後の電極基板間の隙間距離の均一性、スペーサー周囲の光抜けの程度および表示品位を調べた。その結果を表6に示す。
【0066】
【表1】
【0067】
【表2】
【0068】
【表3】
【0069】
【表4】
【0070】
【表5】
【0071】
【表6】
【0072】
なお、上記表中、粒子の乾式散布性と、殴打試験前後の液晶表示板の特性の評価の基準は以下の通りである。
〔乾式散布性〕
○:良好。△:普通。×:悪い。
〔殴打試験前後の隙間距離均一性〕
○:色ムラなし。△:色ムラ少しあり。×:色ムラ多い。
〔殴打試験前のスペーサー周囲の光抜けの程度〕
小:光抜け少ない。中:光抜けあり。大:光抜け多い。
〔殴打試験後のスペーサー周囲の光抜けの増大の程度〕
○:殴打試験前に比べてほとんど変化なし。△:殴打試験前に比べて少し増加。×:殴打試験前に比べて大きく増加。
〔殴打試験前後の表示品位〕
○:良好。△:普通。×:悪い。
【0073】
【発明の効果】
本発明の液晶表示板用スペーサーの製造方法によれば、液晶表示板に振動や衝撃が加わっても自身の周囲の光抜けが増大しにくく、長期間にわたって液晶表示板の高表示品位を維持することができるとともに、乾式散布に適し、静電気分散方式を利用した乾式法で電極基板上に散布する時には分散性が良好であるため、電極基板間の隙間距離を均一に設定できる液晶表示板用スペーサーを得ることができる。
【0074】
本発明の液晶表示板用スペーサーは、上記製造方法により得られたものであるので、このスペーサーを用いて作製された液晶表示板に振動や衝撃が加わってもスペーサー周囲の光抜けが増大しにくく、長期間にわたって高表示品位を維持することができる。また、このスペーサーは、乾式散布に適しており、静電気分散方式を利用した乾式法で電極基板上に散布する時には、分散性が良好である。このため、電極基板間の隙間距離を均一に設定できる。
【0075】
本発明の液晶表示板は、電極基板間に介在させるスペーサーとして、上記特性を有するスペーサーを用いてなるので、振動や衝撃が加わってもスペーサー周囲の光抜けが増大しにくく、長期間にわたって高表示品位を維持することができる。また、電極基板上にスペーサーを散布する時には、分散性が良好であるため、電極基板間の隙間距離は均一に設定されるようになる。したがって、表示面積が大きな液晶表示板および自動車積載用のカーナビゲーションやテレビ用の液晶表示板として、特に有用なものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の液晶表示板の1実施例を表す部分断面図である。
【符号の説明】
7 液晶
8 面内スペーサー
113 シール部スペーサー
110 下側電極基板
120 上側電極基板
Claims (3)
- 原料粒子としてベンゾグアナミン−メラミン−ホルムアルデヒド縮合架橋粒子を用い、その表面を、複素環残基およびイソシアナート基のうちの少なくとも1種の官能基と疎水性基とを有する化合物を有効成分として含む表面処理剤で処理することにより、前記表面処理剤を原料粒子の表面に化学結合させる工程を含む、液晶表示板用スペーサーの製造方法。
- 請求項1に記載の液晶表示板用スペーサーの製造方法により得られた液晶表示板用スペーサー。
- 電極基板間に介在させるスペーサーとして、請求項2に記載の液晶表示板用スペーサーが用いられてなる液晶表示板。
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