JP2005314706A - 有機質無機質複合体粒子、その製造方法およびその用途 - Google Patents

有機質無機質複合体粒子、その製造方法およびその用途 Download PDF

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成史 倉本
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Abstract

【課題】 1対の部材間の隙間距離を一定に保持するために必要な機械的復元性と少ない個数で前記隙間距離を一定に保持するために必要な硬度および破壊強度とを有するとともに、前記部材に対して物理的ダメージを与えにくい粒子を提供する。
【解決手段】 有機ポリマー骨格と、前記有機ポリマー骨格中の少なくとも1個の炭素原子にケイ素原子が直接化学結合した有機ケイ素を分子内に有するポリシロキサン骨格とを含み、前記ポリシロキサン骨格を構成するSiOの量が25wt%以上であり、0.5μm以上の平均粒子径を有し、粒子径の変動係数が20%以下である、有機質無機質複合体粒子。
【選択図】 図1

Description

本発明は、有機質無機質複合体粒子および導電性粒子に関する。
液晶表示板(LCD)は、2枚の対向する電極基板と、前記電極基板間に介在するスペーサーおよび液晶物質とで構成されている。スペーサーは、液晶層の厚みを均一かつ一定に保つために使用される。
液晶表示板の実用に際して要求される表示性能として、一般に、高速応答性、高コントラスト性、広視野角性等が挙げられる。これら諸性能の実現のためには、液晶層の厚み、つまり、2枚の電極基板の隙間距離を厳密に一定に保持しなければならない。
このような要望に応じた液晶表示板用スペーサーとしては、ゾル−ゲル法で製造したシリカ粒子(特許文献1)、前記シリカ粒子を焼成したもの(特許文献2)、スチレン系単量体やジビニルベンゼン系単量体等を懸濁重合させて得られるスチレン系やジビニルベンゼン系ポリマー粒子(特許文献3)等がある。これらは、いずれも、粒子径分布が狭く、粒子径が良く揃った球状粒子である。
しかし、上記従来技術では、次のような問題点がある。
(A) ゾル−ゲル法で製造されたシリカ粒子を焼成したものは、変形性が乏しく、非常に硬いため、液晶表示板を作製するためにプレスを行うと、基板上の電極等の蒸着層、配向膜、カラーフィルター等のコート層に物理的損傷を与え、画像ムラやTFTの断線による画素欠陥を生じさせる。また、このシリカ焼成物粒子と液晶との熱膨張係数の差が大きいため、そのシリカ焼成物粒子を用いた液晶表示板がたとえばマイナス40℃の低温環境に曝された場合、液晶が収縮するほどには粒子が収縮せず、液晶層と電極基板との間に空隙が生じて表示機能が全く作動しないという、いわゆる低温発泡の問題を生じる。
(B) ゾル−ゲル法で製造されたシリカ粒子は、シリカ焼成物粒子と比べて柔らかい。しかし、この未焼成のシリカ粒子は、機械的復元性に劣るため、隙間距離が不均一になり画像ムラを発生させやすい。しかも、未焼成のシリカ粒子は、シリカ焼成物粒子と同様に低温発泡の問題を起こす。
(C) スチレン系やジビニルベンゼン系のポリマー粒子は、有機粒子であり、非常に柔らかいので、散布個数を多くせざるを得ない。このため、製造コストの上昇を招くばかりでなく、画像を形成しない部分の面積が結果として増加する。さらに、イオンや分子等の不純物がスペーサー内部から液晶層中へ溶出する量が増加することにより、コントラストの低下、ざらつきの増加等の諸表示品位を低下させる原因となる。
そこで、ジビニルベンゼンなどの架橋性単量体を多く用いたり、重合開始剤を多く用いて懸濁重合を行うことにより変形しにくくしたポリマー粒子が提案されている(特許文献4)。
また、テトラメチロールメタンテトラアクリレートまたはテトラメチロールメタンテトラアクリレートとジビニルベンゼンとを懸濁重合した後、分級により平均粒子径と標準偏差とを調節したポリマー粒子が提案されている(特許文献5)。
これらのポリマー粒子は、液晶の異常配向が生じ易いという問題がある。液晶表示板において、液晶の異常配向が生じた箇所は表示を行うことができない。
本発明者らは、10%圧縮弾性率と10%変形後の残留変位とが特定範囲にあり、かつ特定の有機質−無機質複合体粒子からなる液晶表示板用スペーサーを提案している(特願平5−288536号)。この液晶表示板用スペーサーは、従来のポリマー粒子よりも大きい硬度を有するため、散布個数を低減できる。しかし、散布個数の低減は、粒子1個あたりにかかる荷重を増大させるため、破壊強度が不足することがある。
従来の導電性粒子は、シリカ粒子などの無機化合物粒子またはポリマー粒子と当該粒子の表面に形成された導体層とを備えている。一般に、導電性粒子は、エレクトロニクス実装分野において、1対の電極間を接続するために使用される。
すなわち、導電性粒子を介在させた1対の電極をプレスして、導電性粒子を介し両電極を電気的に接続させる。
導電性粒子がポリマー粒子を含む場合には柔らかすぎるため、加圧時に導体層が粒子の変形に追従できず、導体層が粒子表面から剥がれ落ちたり、電極同士が引っつきすぎてショートしたりする。他方、導電性粒子が無機化合物粒子を含む場合には硬すぎるため、電極との接触面積が広がらず、接触抵抗値を低くすることができなかったり、変形時に無理な圧力をかけて導電体層が剥がれ落ちたりする。また、導電性粒子の機械的復元性が悪いと、隙間距離を一定に保持しにくくなり接触不良を起こすという問題がある。
特開昭62−269933号公報 特開平 1−234826号公報 特開昭61− 95016号公報 特開平 4−313727号公報 特表平 6−503180号公報
本発明の目的は、正確な間隔で配置されるべき1対の部材間の隙間距離を一定に保持するために必要な機械的復元性と少ない個数で前記隙間距離を一定に保持するために必要な硬度・破壊強度とを有するとともに、前記部材に対して物理的ダメージを与えにくい有機質無機質複合体粒子を提供することである。
本発明の別の目的は、電気的に接続される1対の電極間の隙間距離を一定に保持しやすく、かつ接触不良を起こしにくい導電性粒子を提供することである。
本発明の第1の有機質無機質複合体粒子は、有機ポリマー骨格とポリシロキサン骨格とを含む。ポリシロキサン骨格は、有機ポリマー骨格中の少なくとも1個の炭素原子にケイ素原子が直接化学結合した有機ケイ素を分子内に有する。ポリシロキサン骨格を構成するSiOの量は、粒子の全重量に対して25wt%以上である。平均粒子径は0.5μm以上であり、粒子径の変動係数が20%以下である。
本発明の導電性粒子は、有機ポリマー骨格と、前記有機ポリマー骨格中の少なくとも1個の炭素原子にケイ素原子が直接化学結合した有機ケイ素を分子内に有するポリシロキサン骨格とを含み、0.5μm以上の平均粒子径を有する有機質無機質複合体粒子と、前記有機質無機質複合体粒子表面に形成された導体層とを有する。
本発明の第2の有機質無機質複合体粒子は、有機ポリマー骨格と、前記有機ポリマー骨格中の少なくとも1個の炭素原子にケイ素原子が直接化学結合した有機ケイ素を分子内に有するポリシロキサン骨格とを含み、0.5μm以上の平均粒子径を有する有機質無機質複合体粒子であり、前記粒子表面に接着剤層が形成されてなる。
本発明の有機質無機質複合体粒子は、有機ポリマー骨格と有機ポリマー骨格中の少なくとも1個の炭素原子にケイ素原子が直接化学結合した有機ケイ素を分子内に有するポリシロキサン骨格とを含み、ポリシロキサン骨格を構成するSiOの量が25wt%以上であり、0.5μm以上の平均粒子径を有し、粒子径の変動係数が20%以下であるので、正確な間隔で配置されるべき1対の部材間の隙間距離を一定に保持するために必要な機械的復元性と少ない個数で前記隙間距離を一定に保持するために必要な硬度および破壊強度とを有するとともに、前記部材に対して物理的ダメージを与えにくい。また、粒子径が非常にそろっており、高画質の液晶表示板を作ることのできる液晶表示板用スペーサーとして有用であるという利点をさらに有する。
本発明の導電性粒子は、有機ポリマー骨格と有機ポリマー骨格中の少なくとも1個の炭素原子にケイ素原子が直接化学結合した有機ケイ素を分子内に有するポリシロキサン骨格とを含み、ポリシロキサン骨格を構成するSiOの量が25wt%以上であり、0.5μm以上の平均粒子径を有する有機質無機質複合体粒子と、有機質無機質複合体粒子表面に形成された導体層とを有するので、電気的に接続される1対の電極間の隙間距離を一定に保持しやすく、かつ接触不良を起こしにくい。このため、電極基板間の隙間距離を一定に保持しながら、良好な電気的接続を行うことができ、エレクトロニクスの実装材料として有用である。
〔有機質無機質複合体粒子〕
本発明の第1の有機質無機質複合体粒子は、有機ポリマー骨格と有機ポリマー骨格中の少なくとも1個の炭素原子にケイ素原子が直接化学結合した有機ケイ素を分子内に有するポリシロキサン骨格とを含み、ポリシロキサン骨格を構成するSiOの量が好ましくは25wt%以上であるので、ポリシロキサン骨格の特徴である大きな硬度と、有機ポリマー骨格の特徴である高い機械的復元性および破壊強度とを有する。このため、本発明の第1の有機質無機質複合体粒子は、正確な間隔で配置されるべき1対の部材間の隙間距離を一定に保持するために必要な機械的復元性と少ない個数で前記隙間距離を一定に保持するために必要な硬度および破壊強度とを有するとともに、それらの部材に対して物理的ダメージを与えにくい。しかも、本発明の第1の有機質無機質複合体粒子は、0.5μm以上の平均粒子径を有するので、1対の部材間に隙間を形成するのに有用である。
有機ポリマー骨格は、有機ポリマーに由来する主鎖・側鎖・分岐鎖・架橋鎖のうちの少なくとも主鎖を含む。有機ポリマーの分子量、組成、構造、官能基の有無などに特に限定されない。
有機ポリマーは、たとえば、(メタ)アクリル樹脂、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリオレフィン、およびポリエステルからなる群から選ばれる少なくとも1つである。好ましい有機ポリマー骨格は、機械的復元性に特に優れた粒子を形成するという理由で、繰り返し単位−C−C−から構成される主鎖を有するもの(以下では、「ビニル系ポリマー」と言うことがある)である。
ビニル系ポリマーは、たとえば、(メタ)アクリル樹脂、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、およびポリオレフィンからなる群から選ばれる少なくとも1つである。好ましいビニル系ポリマーは、(メタ)アクリル樹脂、(メタ)アクリル−スチレン系樹脂およびポリスチレンからなる群から選ばれる少なくとも1つである。より好ましいビニル系ポリマーは、(メタ)アクリル樹脂および(メタ)アクリル−スチレン系樹脂である。
ポリシロキサンは、次式4:
Figure 2005314706
で表されるシロキサン単位が連続的に化学結合して、三次元のネットワークを構成した化合物と定義される。
有機ポリマー骨格を構成する炭素原子の少なくとも1個には、ポリシロキサン中のケイ素原子が直接化学結合している。
ポリシロキサン骨格を構成するSiOの量は、本発明の第1の有機質無機質複合体粒子の重量に対して、好ましくは25wt%以上、より好ましくは30〜80wt%、さらに好ましくは33〜70wt%、最も好ましくは37〜60wt%である。前記範囲であると、効果的な、硬度と機械的復元性と破壊強度とを有する粒子となる。25wt%を下回ると無機質の特徴である硬度が発現しにくく、後述する10%圧縮弾性率が小さいという問題がある。前記範囲を上回ると有機ポリマー骨格の有する機械的復元性または破壊強度が損なわれ、残留変位が大きくなったり粒子が割れたりする場合がある。
ポリシロキサン骨格を構成するSiOの量は、粒子を空気などの酸化性雰囲気中で1000℃以上の温度で焼成した前後の重量を測定することにより求めた重量百分率である。
本発明の第1の有機質無機質複合体粒子は、ポリシロキサン以外の無機質成分を含むことができる。ポリシロキサン以外の無機質成分は、たとえば、ホウ素、アルミニウム、チタン、ジルコニウム等の酸化物である。ポリシロキサン以外の無機質成分の量は、0〜20wt%が好ましく、0〜10wt%がより好ましい。前記範囲を外れると、硬度、機械的復元性または破壊強度が効果的に発現しないおそれがある。
本発明の第1の有機質無機質複合体粒子は、0.5μm以上の平均粒子径を有し、好ましくは0.5〜50μm、より好ましくは1〜25μm、もっと好ましくは1.5〜20μmの平均粒子径を有する。0.5μmを下回ると、1対の部材間に隙間を形成するのが困難である。前記範囲を外れると、液晶表示板用スペーサーおよび導電性粒子としては用いられない領域である。
本発明の第1の有機質無機質複合体粒子は、スペーサーとして用いる場合に電極基板の隙間距離の均一性の面から、20%以下、好ましくは10%以下、より好ましくは8%以下の粒子径の変動係数を有する。前記上限値を上回ると隙間距離の均一性が低下して画像ムラを起こしやすくなる。粒子径の変動係数は、次式:
Figure 2005314706
で定義される。
本発明では、平均粒子径と粒子径の標準偏差は、電子顕微鏡撮影像の任意の粒子200個の粒子径を実測して次式より求めた。
Figure 2005314706
本発明の第1の有機質無機質複合体粒子は、上記式4で表される無機質構成単位と有機ポリマー骨格との両方を含有し、かつ、無機質構成単位と有機ポリマー骨格とが化学結合した複合体粒子である。従って、本発明の第1の有機質無機質複合体粒子は、無機質の特徴である大きな硬度と有機ポリマーの特徴である高い機械的復元性および破壊強度とを兼ね備えている。
硬度を示す尺度は10%圧縮弾性率であり、機械的復元性を示す尺度は、10%変形後の残留変位である。
ここで10%圧縮弾性率とは、下記測定方法により測定した値である。島津微小圧縮試験機(株式会社島津製作所製MCTM−200)により、室温(25℃)において、試料台(材質:SKS平板)上に散布した試料粒子1個について、直径50μmの円形平板圧子(材質:ダイヤモンド)を用いて、粒子の中心方向へ一定の負荷速度で荷重をかけ、圧縮変位が粒子径の10%となるまで粒子を変形させ、10%変形時の荷重と圧縮変位のミリメートル数を求める。求められた圧縮荷重、粒子の圧縮変位、粒子の半径を次式:
Figure 2005314706
〔ここで、E:圧縮弾性率(kg/mm
F:圧縮荷重(kg)
K:粒子のポアソン比(定数、0.38)
S:圧縮変位(mm)
R:粒子の半径(mm)である。〕
に代入して計算された圧縮弾性率が10%圧縮弾性率である。その後、すぐに、負荷時と同じ速度で負荷を除き、荷重が0.1gとなるまで除荷を行い、最終的に荷重が0gとなるように荷重−変位曲線を接線に沿って外挿し、粒子になお残留する変位を求める。これを粒子径に対する百分率として残留変位を算出する。
この操作を異なる3個の粒子について行い、その平均値を粒子の10%圧縮弾性率、残留変位とし、それぞれ、粒子の硬度、機械的復元性の尺度とする。
また、破壊強度は、前述した微小圧縮試験機を使用して調べることができる。
前述したように試料台上に散布した試料粒子1個について、円形平板圧子を用いて、粒子の中心方向へ一定速度で荷重をかけ、粒子が破壊する圧縮荷重を求めることができる。
従来のスペーサーとして使用されている粒子の10%圧縮弾性率を上記測定方法により測定した場合、シリカ焼成物粒子は4400kg/mm、スチレン系ポリマー粒子は300kg/mmであった。
これに対し、本発明の第1の有機質無機質複合体粒子は、10%圧縮弾性率が、好ましくは350〜3000kg/mmの範囲、更に好ましくは400〜2500kg/mmの範囲、より一層好ましくは500〜2000kg/mmの範囲で任意の硬度に調整されている。10%圧縮弾性率が前記範囲を下回ると、前述のように、液晶表示板用スペーサーとして使用した場合に粒子の散布個数の増加による製造コストの上昇、コントラストの低下、ざらつきの増加のおそれがあり、上回ると、前述のように、基板上の蒸着層、コート層への物理的損傷や低温発泡のおそれがある。
10%変形後の残留変位については、未焼成のシリカ粒子は残留変位が8%であったが、本発明の第1の有機質無機質複合体粒子は、好ましくは0〜5%の範囲、更に好ましくは0〜4%、一層好ましくは0〜3%の範囲の残留変位を有する機械的復元性に優れた複合体粒子である。10%変形後の残留変位が前記範囲を上回ると液晶表示板用スペーサーとして使用した場合に画像ムラが起こりやすい。
また、破壊強度については、本発明の第1の有機質無機質複合体粒子は、好ましくは次式:
Figure 2005314706
(ここで、GとYとは上述したものを示す)
を、より好ましくは次式:
Figure 2005314706
(ここで、GとYとは上述したものを示す)
を満足する複合体粒子である。破壊強度が前記式を満足しないと、破壊強度が小さいため液晶表示板を作製する際に粒子が破壊する場合があり、電極基板の隙間距離を一定に保つことができなくなる。
上記範囲における10%圧縮弾性率および残留変位の程度は、粒子中に占めるポリシロキサン骨格または有機ポリマー骨格の量を調節することにより達成される。たとえば、ポリシロキサン骨格の量を低くすると、10%圧縮弾性率と残留変位が小さくなり、ポリシロキサン骨格の量を高めると、10%圧縮弾性率と残留変位が大きくなる。
本発明の第1の有機質無機質複合体粒子は、染料および顔料からなる群から選ばれる少なくとも1つを含むことで着色されていてもよい。粒子の色は、光が透過しない色が好ましい。光が透過しない色は、光抜けを防止でき画質のコントラストを向上できるので、液晶表示板用スペーサーの色には好ましい。光が透過しない色としては、黒、濃青、紺、紫、青、濃緑、緑、茶、赤などの色が挙げられるが、特に好ましくは、黒、濃青、または紺である。染料は、着色しようとする色に応じて適宜選択して使用され、たとえば、染色方法によって分類された、分散染料、酸性染料、塩基性染料、反応染料、硫化染料等が挙げられる。これらの染料の具体例は、「化学便覧応用化学編 日本化学会編」(1986年丸善株式会社発行)の1399頁〜1427頁、「日本化薬染料便覧」(1973年日本化薬株式会社発行)に記載されている。
本発明の第1の有機質無機質複合体粒子を染色する方法は従来公知の方法がとられる。たとえば、上記の「化学便覧応用化学編 日本化学会編」や「日本化薬染料便覧」に記載されている方法で行うことができる。染色された本発明の第1の有機質無機質複合体粒子は、上述した硬度と機械的復元性とを兼ね備えているので、液晶表示板の画質向上に特に有用である。
本発明の第1の有機質無機質複合体粒子は、液晶表示板用スペーサーとして使用される場合の好ましい態様は次のとおりである。
a.破壊強度Gが、上記数式4を、より好ましくは上記数式5を満足する。
b.ポリシロキサン骨格の量25wt%以上、10%圧縮弾性率350〜3000kg/mm、10%変形後の残留変位0〜5%、平均粒子径0.5〜50μm、および、粒子径の変動係数20%以下である。
c.ポリシロキサン骨格の量30〜80wt%、10%圧縮弾性率400〜2900kg/mm、10%変形後の残留変位0〜4%、平均粒子径1〜25μm、および、粒子径の変動係数10%以下である。
d.ポリシロキサン骨格の量33〜70wt%、10%圧縮弾性率500〜2800kg/mm、10%変形後の残留変位0〜3%、平均粒子径1.5〜20μm、および、粒子径の変動係数8%以下である。
e.ポリシロキサン骨格の量37〜60wt%、10%圧縮弾性率550〜2700kg/mm、10%変形後の残留変位0〜2%、平均粒子径2〜15μm、および、粒子径の変動係数6%以下である。
f.上記b〜eにおいて、破壊強度G、上記数式4を、より好ましくは上記数式5を満足する。
g.上記a〜fにおいて、染料および顔料からなる群から選ばれる少なくとも1つを含むことで着色されている。
本発明の第1の有機質無機質複合体粒子の形状は、球状、針状、板状、鱗片状、破砕状、俵状、まゆ状、金平糖状等の任意の粒子形状で良く、特に限定されないが、液晶表示板用スペーサーとして用いる場合には隙間距離を均一に一定とする上で球状が好ましい。これは、粒子が球状であると、すべてまたはほぼすべての方向について一定またはほぼ一定の粒径を有するからである。
本発明の第2の有機質無機質複合体粒子は、有機ポリマー骨格と、前記有機ポリマー骨格中の少なくとも1個の炭素原子にケイ素原子が直接化学結合した有機ケイ素を分子内に有するポリシロキサン骨格とを含み、0.5μm以上の平均粒子径を有する有機質無機質複合体粒子であり、前記粒子表面に接着剤層が形成されてなる。ポリシロキサン骨格を構成するSiOの量が25wt%以上であることが好ましい。粒子径の変動係数は20%以下であることが好ましい。その他の実施態様については、本発明の第1の有機質無機質複合体粒子と同様である。また、接着剤層については、後述の液晶表示板用スペーサーの項の「第2の液晶表示板用スペーサー」において詳述する。
本発明の第1および第2の有機質無機質複合体粒子(以下、単に本発明の有機質無機質複合体粒子という場合がある)は、たとえば、以下に述べる製造方法によって作ることができるが、他の製造方法によって作られてもよい。
〔有機質無機質複合体粒子の製造方法〕
本発明の有機質無機質複合体粒子は、縮合工程と重合工程と熱処理工程とを含む製造方法によって作ることができる。
縮合工程は、第1シリコン化合物を用いて加水分解・縮合する工程である。
第1シリコン化合物は、次の一般式1:
Figure 2005314706
(ここで、Rは水素原子またはメチル基を示し;Rは、置換基を有していても良い炭素数1〜20の2価の有機基を示し;Rは、水素原子と、炭素数1〜5のアルキル基と、炭素数2〜5のアシル基とからなる群から選ばれる少なくとも1つの1価基を示す)
と、次の一般式2:
Figure 2005314706
(ここで、Rは水素原子またはメチル基を示し;Rは、水素原子と、炭素数1〜5のアルキル基と、炭素数2〜5のアシル基とからなる群から選ばれる少なくとも1つの1価基を示す)
と、次の一般式3:
Figure 2005314706
(ここで、Rは水素原子またはメチル基を示し;Rは、置換基を有していても良い炭素数1〜20の2価の有機基を示し;Rは、水素原子と、炭素数1〜5のアルキル基と、炭素数2〜5のアシル基とからなる群から選ばれる少なくとも1つの1価基を示す)
とからなる群から選ばれる少なくとも1つの一般式で表される化合物およびその誘導体からなる群から選ばれる少なくとも1つである。
縮合工程では、第1シリコン化合物と下記第2シリコン化合物との両方を用いることができる。第2シリコン化合物は、次の一般式5:
Figure 2005314706
(ここで、Xは、CH=C(−R)−COOR−、CH=C(−R)−またはCH=C(−R)−R−で示される1価ラジカル重合性官能基を示し;RとRとRとは水素原子またはメチル基を示し;RとRとは、置換基を有していても良い炭素数1〜20の2価の有機基を示し;Rは、水素原子と、炭素数1〜5のアルキル基と、炭素数2〜5のアシル基とからなる群から選ばれる少なくとも1つの1価基を示し;R10は、置換基を有していても良い炭素数1〜10のアルキル基と、炭素数6〜10のアリール基とからなる群から選ばれる少なくとも1つの1価基を示し;mは2〜3の整数を示し;nは0〜2の整数を示し;m+nは2〜3の整数を示す。複数のXは互いに異なっていても良いし、2個以上が同じであっても良い。nが2の場合、2個のR10は互いに異なっていても良いし、同じであっても良い。4−m−nが2の場合、2個のRは互いに異なっていても良いし、同じであっても良い)
で表される化合物およびその誘導体からなる群から選ばれる少なくとも1つである。
一般式1〜3および5において、ラジカル重合性基は、CH=C(−R)−COOR−、CH=C(−R)−、または、CH=C(−R)−R−である。一般式5において、ラジカル重合性基が2個以上ある場合には、互いに異なっていても良いし、2個以上が同じであっても良い。ラジカル重合性基をラジカル重合反応させることにより、上述したビニル系ポリマーに由来する有機ポリマー骨格を生成する。ラジカル重合性基は、アクリロキシ基(一般式1および5においてRが水素原子である場合)、メタクリロキシ基(一般式1および5においてRがメチル基である場合)、ビニル基(一般式2および5においてRが水素原子である場合)、イソプロペニル基(一般式2および5においてRがメチル基である場合)、1−アルケニル基もしくはビニルフェニル基(一般式3および5においてRが水素原子である場合)、または、イソアルケニル基もしくはイソプロペニルフェニル基(一般式3および5においてRがメチル基である場合)である。
一般式1〜3および5において、加水分解性基はRO、RO、ROおよびROである。RO基、RO基、RO基およびRO基は、水酸基と炭素数1〜5のアルコキシ基と炭素数2〜5個のアシロキシ基とからなる群から選ばれる1価基である。一般式1〜3において、3個のRO基、3個のRO基およびRO基は、それぞれ、互いに異なっていても良いし、2個以上が同じであっても良い。一般式5において、RO基が2個ある場合には、互いに異なっていても良いし、同じであっても良い。好ましいRO基・RO基・RO基・RO基は、加水分解・縮合速度が大きい点で、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基およびアセトキシ基からなる群から選ばれるものであり、メトキシ基およびエトキシ基がより好ましい。第1シリコン化合物および第2シリコン化合物は、RO基・RO基・RO基・RO基が水により加水分解し、更に縮合することにより、前記一般式4で示されるポリシロキサン骨格を形成する。
一般式1〜3および5において、R基およびR基は、置換基を有していても良い炭素数1〜20の2価の有機基である。この2価の有機基としては、特に限定されないが、たとえば、置換基を有していてもよい、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ヘキシレン基、オクチレン基などのアルキレン基、置換基を有していてもよいフェニレン基、あるいは、これらの置換基を有していてもよいアルキレン基やフェニレン基がエーテル結合を介して結合した基等が挙げられる。容易に入手可能である点で、RおよびRがプロピレン基やフェニレン基であるラジカル重合性基を有するものが好ましい。
一般式5において、R10基は、ケイ素原子に結合した、アルキル基またはアリール基である。このアルキル基は、置換基を有していても良い炭素数1〜10のアルキル基であり、たとえば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基等である。このアリール基は、炭素数6〜10のアリール基であり、たとえば、フェニル基、トリル基等である。一般式5において、R10基が2個ある場合には、互いに異なっていても良いし、同じであっても良い。
一般式1と2と3とからなる群から選ばれる少なくとも1つの一般式で表される化合物は、1個のケイ素原子と、ケイ素原子に結合した3個の加水分解性基と、ケイ素原子に結合した1個のラジカル重合性基とを有する。
一般式1で表される化合物の具体例は、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリアセトキシシラン、γ−メタクリロキシエトキシプロピルトリメトキシシラン(または、γ−トリメトキシシリルプロピル−β−メタクリロキシエチルエーテルともいう)等であり、これらのうちのいずれか1つが単独で使用されたり、2以上が併用されたりする。
一般式2で表される化合物の具体例は、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン等であり、これらのうちのいずれか1つが単独で使用されたり、2以上が併用されたりする。
一般式3で表される化合物の具体例は、1−ヘキセニルトリメトキシシラン、1−オクテニルトリメトキシシラン、1−デセニルトリメトキシシラン、γ−トリメトキシシリルプロピルビニルエーテル、ω−トリメトキシシリルウンデカン酸ビニルエステル、p−トリメトキシシリルスチレン等であり、これらのうちのいずれか1つが単独で使用されたり、2以上が併用されたりする。
一般式1〜3で表される化合物の誘導体は、たとえば、一般式1〜3で表される化合物の有する一部のRO基がβ−ジカルボニル基および/または他のキレート化合物を形成し得る基で置換された化合物と、一般式1〜3で表される化合物および/またはそのキレート化合物を部分的に加水分解・縮合して得られた低縮合物とからなる群から選ばれる少なくとも1つである。
第1シリコン化合物としては、粒子径分布がシャープである有機質無機質複合体粒子を形成しやすいという点から、一般式1で示される化合物が好ましく、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アクリロキシプロピルトリエトキシシランからなる群から選ばれる少なくとも1つが特に好ましい。
一般式5で表される化合物は、次の5つである。
(1) 1個のケイ素原子と、ケイ素原子に結合した1個のラジカル重合性基と、ケイ素原子に結合した1個のアルキル基またはアリール基と、ケイ素原子に結合した2個の加水分解性基とを有する(m=1、n=1)。この化合物の具体例は、γ−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、ビニルメチルジエトキシシラン等であり、いずれか1つが単独で使用されたり、あるいは、2以上が併用されたりする。
(2) 1個のケイ素原子と、ケイ素原子に結合した1個のラジカル重合性基と、ケイ素原子に結合した2個の、アルキル基および/またはアリール基と、ケイ素原子に結合した1個の加水分解性基とを有する(m=1、n=2)。この化合物の具体例は、γ−メタクリロキシプロピルジメチルメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルジメチルエトキシシラン、γ−アクリロキシプロピルジメチルメトキシシラン、γ−アクリロキシプロピルジメチルエトキシシラン、ビニルジメチルメトキシシラン等であり、いずれか1つが単独で使用されたり、あるいは、2以上が併用されたりする。
(3) 1個のケイ素原子と、ケイ素原子に結合した2個のラジカル重合性基と、ケイ素原子に結合した2個の加水分解性基とを有する(m=2、n=0)。この化合物の具体例は、ビス(γ−アクリロキシプロピル)ジメトキシシラン、ビス(γ−メタクリロキシプロピル)ジメトキシシラン等であり、いずれか1つが単独で使用されたり、あるいは、2以上が併用されたりする。
(4) 1個のケイ素原子と、ケイ素原子に結合した2個のラジカル重合性基と、ケイ素原子に結合した1個のアルキル基またはアリール基と、ケイ素原子に結合した1個の加水分解性基とを有する(m=2、n=1)。この化合物の具体例は、ビス(γ−メタクリロキシプロピル)メチルメトキシシラン、ビス(γ−アクリロキシプロピル)メチルメトキシシラン等であり、いずれか1つが単独で使用されたり、あるいは、2以上が併用されたりする。
(5) 1個のケイ素原子と、ケイ素原子に結合した3個のラジカル重合性基と、ケイ素原子に結合した1個の加水分解性基とを有する(m=3、n=0)。この化合物の具体例は、トリス(γ−メタクリロキシプロピル)メトキシシラン、トリス(γ−アクリロキシプロピル)メトキシシラン等であり、いずれか1つが単独で使用されたり、あるいは、2以上が併用されたりする。
第2シリコン化合物としては、粒子径分布がシャープである有機質無機質複合体粒子を形成しやすいという点から、一般式5で表される化合物の中でも、ラジカル重合性基がCH=C(−R)−COOR−基である化合物が好ましい。
一般式5で表される化合物の誘導体は、たとえば、一般式5で表される化合物の有する一部のRO基がβ−ジカルボニル基および/または他のキレート化合物を形成し得る基で置換された化合物と、一般式5で表される化合物および/またはそのキレート化合物を部分的に加水分解・縮合して得られた低縮合物とからなる群から選ばれる少なくとも1つである。
第1シリコン化合物を用いずに第2シリコン化合物を用いて加水分解・縮合したときには得られる粒子の硬度が低下する傾向にあるので、本発明では第1シリコン化合物を必ず用いるのである。
本発明の有機質無機質複合体粒子を得るために、上述した第1および第2シリコン化合物以外に、下記一般式6と7で表されるシラン化合物;その誘導体;ホウ素、アルミニウム、ガリウム、インジウム、リン、チタン、ジルコニウム等の有機金属化合物および無機金属化合物からなる群から選ばれる少なくとも1つの加水分解・縮合可能な金属化合物も併用して良い。
Figure 2005314706
(ここで、R11、R13、R17は、Rと同じであり;R12、R14、R16は、R10と同じであり;R15はRと同じであり;p、q、rは、0又は1である)
一般式6、7で表されるシラン化合物の有するR11、R13、R17基としては、加水分解縮合速度が速い点でメチル基又はエチル基が好ましい。p、q、rは、0又は1であるが、得られる有機質無機質複合体粒子の硬度を高めることができる点でp、q、r=0が好ましい。
一般式7で表されるシラン化合物の例としては、1,2−ビス(トリメトキシシリル)エタン、1,2−ビス(トリエトキシシリル)エタン、1−トリメトキシシリル−2−トリエトキシシリルエタン等が挙げられる。
一般式6、7で表されるシラン化合物の誘導体は、一般式6、7で表される化合物の有する一部のR11O、R13O、R17O基がβ−ジカルボニル基および/または他のキレート化合物を形成し得る基で置換された化合物と、一般式6、7で表される化合物および/またはそのキレート化合物を部分的に加水分解・縮合して得られた低縮合物とからなる群から選ばれる少なくとも1つである。
第1および第2シリコン化合物以外の加水分解・縮合可能な金属化合物の量は、特に限定されないが、多量に使用すると得られる有機質無機質複合体粒子の形状が球状にならなかったり、粒子径の制御が困難になったり、粒度分布が広がったりするので液晶表示板用スペーサーには不適な場合がある。このため、この加水分解・縮合可能な金属化合物の量は、第1および第2シリコン化合物の合計重量に対して、200wt%以下が好ましく、100wt%以下が更に好ましく、50wt%以下がより一層好ましい。
第1シリコン化合物と、必要に応じて使用される第2シリコン化合物および/または加水分解・縮合可能な金属化合物と(以下では、「原料」と言うことがある)は、水を含む溶媒中で加水分解され、縮合する。加水分解と縮合は、一括、分割、連続等、任意の方法を採ることができる。加水分解や縮合させるにあたり、アンモニア、尿素、エタノールアミン、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド、アルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属水酸化物等の触媒を用いてもよい。また、溶媒中には、水や触媒以外の有機溶剤が存在していてもよい。有機溶剤の具体例としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、sec−ブタノール、t−ブタノール、ペンタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール等のアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;酢酸エチル等のエステル類;イソオクタン、シクロヘキサン等の(シクロ)パラフィン類;ジオキサン、ジエチルエーテル等のエーテル類;ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素類等が単独で、または、混合して用いられる。
加水分解と縮合は、たとえば、上記した原料またはその有機溶剤溶液を水を含む溶媒に添加し、0〜100℃、好ましくは0〜70℃の範囲で30分〜100時間攪拌することによって行われる。
また、上記のような方法により得られた粒子を、種粒子として予め合成系に仕込んでおき、上記原料を添加して該種粒子を成長させていっても良い。
このようにして原料を、水を含む溶媒中で適切な条件の下で加水分解、縮合させることにより、粒子が析出しスラリーが生成する。析出した粒子は、上述のラジカル重合性基を有するシリコン化合物を加水分解・縮合したので、平均粒子径が0.5μm以上の任意の粒子径で、しかも、粒度分布のシャープな粒子である。ここで、適切な条件とは、たとえば、得られるスラリーに対して、原料濃度については20重量%以下、水濃度については50重量%以上、触媒濃度については10重量%以下が好ましく用いられる。
加水分解・縮合で生成する粒子の平均粒子径は、水濃度、触媒濃度、有機溶剤濃度、原料濃度、原料の添加時間、温度、種粒子の濃度を、たとえば、それぞれ、50〜99.99重量%、0.01〜10重量%、0〜90重量%、0.1〜30重量%、0.001〜500時間、0〜100℃、0〜10重量%に設定することにより、本発明の有機質無機質複合体粒子が有する上述の平均粒子径の範囲内にすることができる。生成する粒子の粒子径の変動係数は、水濃度、触媒濃度、有機溶剤濃度を、それぞれ、上記範囲内に設定することにより、本発明の有機質無機質複合体粒子の有する、上述の粒子径の変動係数の範囲内にすることができる。
更に、第1シリコン化合物と、必要に応じて使用される第2シリコン化合物および/または加水分解・縮合可能な金属化合物とを加水分解・縮合する際に、平均粒子径0.4μm以下の無機微粒子をさらに用いることが好ましい。この理由は、得られる有機質無機質複合体粒子が、ポリシロキサン骨格と化学結合した無機微粒子を含むことにより、より高い硬度を持ち、向上した破壊強度を有するからである。
無機微粒子の具体例としては、例えば、シリカ、アルミナ、水酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化ジルコニウム等が挙げられるが、原料を加水分解・縮合して得られる粒子中に導入され易い点でシリカが好ましい。
また、無機微粒子の平均粒径は0.4μmを超えると原料を加水分解・縮合して得られる粒子中に導入されにくくなるので好ましくない。従って、無機微粒子の平均粒子径は、小さい程好ましく、好ましくは0.1μm以下、さらに好ましくは30nm以下、より一層好ましくは10nm以下である。無機微粒子としては、好ましくは平均粒子径0.1μm以下、より好ましくは平均粒子径30nm以下、または更により一層好ましくは平均粒子径10nm以下のシリカが挙げられる。
これら無機微粒子としては、微粒子の凝集等が少ない点で水や有機溶媒に分散したゾルが好ましい。さらに好ましくは平均粒子径30nm以下、より一層好ましくは10nm以下の無機微粒子のゾルである。具体例としては、例えば平均粒子径30nm以下のシリカ粒子のゾル(シリカゾル)としては、日産化学株式会社製商品名「スノーテックス20」、「スノーテックスO」、「スノーテックス−C」、「スノーテックス−N」、「スノーテックス−S」、「スノーテックス−20L」、「スノーテックス−XS」、「スノーテックス−XL」、「スノーテックス−YL」、「スノーテックス−ZL」、「メタノールシリカゾル」、「IPA−ST」等が挙げられ、アルミナゾルとしては日産化学株式会社製商品名「アルミナゾル−100」、「アルミナゾル−200」、「アルミナゾル−520」等が挙げられる。
縮合工程中に、および/または、縮合工程後に、ラジカル重合性基をラジカル重合反応させる。すなわち、第1シリコン化合物、必要に応じて使用される第2シリコン化合物を、加水分解・縮合で得られた中間生成物・粒子をラジカル重合する。ラジカル重合性基がラジカル重合反応して有機ポリマー骨格を形成する。
ラジカル重合する方法としては、加水分解・縮合して得られた粒子の水を含む溶媒スラリーに水溶性又は油溶性のラジカル重合開始剤を添加溶解して、そのまま重合しても良いし、また加水分解・縮合して得られた粒子を、濾過、遠心分離、減圧濃縮等の従来公知の方法を用いてスラリーから単離した後、ラジカル重合開始剤を含有する水又は有機溶媒等の溶液に分散させて重合しても良く、これらに限定されるものではない。特に、上記原料を加水分解・縮合しながらラジカル重合開始剤を共存させてラジカル重合を同時に行う方法が好ましい。この理由としては、式4で示されるポリシロキサンの生成と重合による有機ポリマーの生成が並行して生じるため、上述した本発明の有機質無機質複合体粒子が有する、無機質の特徴である硬度と、有機ポリマーの特徴である機械的復元性および破壊強度とを含有する有機質無機質複合体粒子が得られ易く、また硬度、機械的復元性および破壊強度が効果的に発現する有機質無機質複合体粒子となるためである。
ここで、ラジカル重合開始剤としては従来公知の物を使用することができ、特に限定されないが、好ましくはアゾ化合物、過酸化物等から選ばれる少なくとも1つの化合物である。
上記したラジカル重合開始剤の量は、特に限定されないが、多量に使用すると発熱量が多くなって反応の制御が困難となり、一方、少量使用の場合にはラジカル重合が進行しない場合があるので、第1および第2シリコン化合物の合計重量に対して、たとえば0.1〜5wt%、好ましくは0.3〜2wt%の範囲である。
ラジカル重合させる際の温度は、使用するラジカル重合開始剤によって適宜選択可能であるが、反応の制御のし易さから30〜100℃、好ましくは、50〜80℃の範囲である。
また、ラジカル重合する際に、ラジカル重合性基とラジカル重合可能な基を有するモノマーを共存させても良い。モノマーとしては、例えば、アクリル酸やメタクリル酸等の不飽和カルボン酸類;アクリル酸エステル類、メタクリル酸エステル類、クロトン酸エステル類、イタコン酸エステル類、マレイン酸エステル類、フマール酸エステル類等の不飽和カルボン酸エステル類;アクリルアミド類;メタクリルアミド類;スチレン、α−メチルスチレン、ジビニルベンゼン等の芳香族ビニル化合物;酢酸ビニル等のビニルエステル類;塩化ビニル等のハロゲン化ビニル化合物等のビニル化合物類等が挙げられ、これらの一種以上を使用しても良い。中でも、ラジカル重合可能な基を2個以上含有する、ジビニルベンゼン、トリメチロールプロパントリメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート等のモノマーが好ましい。
しかし、モノマーを多量に使用して有機質無機質複合体粒子中のポリシロキサン骨格の含有量が25wt%未満になると、硬度が不充分になるので好ましくない。このため、モノマーの量は、第1および第2シリコン化合物の合計重量に対して、たとえば0〜50wt%、好ましくは0〜30wt%である。
ラジカル重合後、さらに以下に示す再縮合工程を行う方が最終的に得られる有機質無機質複合体粒子の硬度・機械的復元性・破壊強度が向上するので好ましい。再縮合工程は、ラジカル重合により生成した重合体粒子を有機溶媒中で更に縮合を進行させる工程である。縮合を進行させるにあたり、前述した触媒を用いても良いが、縮合をより促進させる点で好ましい触媒としては、チタンテトライソプロポキシド、チタンテトラブトキシド、ジイソプロポキシ−ビス(アセチルアセトネート)チタネート等の有機チタン化合物;アルミニウムトリイソプロポキシド、アルミニウムトリsec-ブトキシド、アルミニウムトリスアセチルアセトネート、アルミニウムイソプロポキシド−ビスアセチルアセトネート等の有機アルミニウム化合物;ジルコニウムテトラブトキシド、テトラキス(アセチルアセトネート)ジルコニウム等の有機ジルコニウム化合物;ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジエチルヘキサノエート、ジブチル錫ジマレエート等の有機錫化合物;(CHO)P(=O)OH、(CHO)P(=O)(OH)、(CO)P(=O)OH、(C17O)P(=O)(OH)等の酸性リン酸エステル等が挙げられ、いずれか1つが単独で使用されたり、または、2以上が併用されたりする。中でも、有機錫化合物および酸性リン酸エステルからなる群から選ばれる少なくとも1つが好ましい。
再縮合工程では、重合体粒子が水を含有しないことが好ましい。この理由は、シラノール基の脱水縮合がより進行し易いからである。従って、再縮合工程では、重合工程で得られたスラリーが水を含有しない場合は、スラリーをそのまま使用することができ、スラリーが水を含有する場合には、重合体粒子を濾過、遠心分離、減圧濃縮等の従来公知の方法を用いてスラリーから分離した後、有機溶媒中に分散させて行うのが好ましい。使用される有機溶媒は、たとえば、前述した、アルコール類、ケトン類、エステル類、パラフィン類、エーテル類、芳香族炭化水素類からなる群から選ばれる少なくとも1つである。また、再縮合工程は、たとえば50〜200℃、好ましくは60〜150℃の温度で30分間〜100時間、重合体粒子を含む有機溶媒スラリーを攪拌することによって行われる。また、圧力は、常圧、減圧、加圧のいずれでも良い。
ついで、ラジカル重合により生成した重合体粒子を濾過、遠心分離、減圧濃縮等の従来公知の方法を用いて上記スラリーより単離した後、800℃以下の温度、好ましくは100〜600℃の温度、更に好ましくは150〜500℃の温度で乾燥および焼成のための熱処理を施すことにより、適当な、硬さと機械的復元性と破壊強度とを持つ、本発明の有機質無機質複合体粒子が得られる。この複合体粒子は、有機ポリマー骨格と、有機ポリマー骨格中の少なくとも1個の炭素原子にケイ素原子が直接化学結合した有機ケイ素を分子内に有するポリシロキサン骨格とを主成分として含む。しかしながら、低い温度での熱処理では、式5で示されるシロキサン単位中に存在する、下式8:
Figure 2005314706
で表されるシラノール基同士の脱水縮合反応が充分に起こらないため、必要な硬度が得られない場合がある。すなわち、粒子の10%圧縮弾性率が350kg/mm以上にならない場合がある。また、800℃より高い温度での熱処理では有機ポリマーの分解が顕著となるため必要な機械的復元性および破壊強度が得られない、すなわち、粒子の10%変形後の残留変位が0〜5%にならないし、しかも、硬すぎて粒子の10%圧縮弾性率が3000kg/mmを越えてしまう。更に、熱処理する際の雰囲気は何ら制限なく用い得るが、有機ポリマーの分解を抑制し、必要な機械的復元性を得るためには、雰囲気中の酸素濃度が10容量%以下である場合もしくは真空中である場合がより好ましい。熱処理温度が200℃〜800℃の範囲だと、本発明の有機質無機質複合体粒子を得るためには熱処理する際の雰囲気中の酸素濃度が10容量%以下であることが好ましく、熱処理温度が200℃以下だと、空気中でも本発明の有機質無機質複合体粒子が生成する。
有機質無機質複合体粒子を作る場合、上述した原料、無機微粒子、加水分解縮合のための水・触媒、モノマー、ラジカル重合開始剤の種類および/または量、熱処理温度・時間・雰囲気中の酸素濃度を適宜選定することによって、ポリシロキサン骨格のSiO2 の量を25wt%以上で任意に制御でき、かつ、平均粒子径を0.5μm以上で任意に制御できる有機質無機質複合体粒子が得られる。
上記した有機質無機質複合体粒子の製造方法は、上述した縮合工程と重合工程と熱処理工程とを含むので、ポリシロキサン骨格と有機ポリマー骨格とがSi−C結合により化学結合した構造を有し、ポリシロキサン骨格の特徴である大きな硬度と、有機ポリマー骨格の特徴である高い機械的復元性および破壊強度とを有する有機質無機質複合体粒子を生成することができる。このため、生成した複合体粒子は、正確な間隔で配置されるべき1対の部材間の隙間距離を一定に保持するために必要な機械的復元性と少ない個数で前記隙間距離を一定に保持するために必要な硬度および破壊強度とを有するとともに、それらの部材に対して物理的ダメージを与えにくい。しかも、この製造方法により得られた複合体粒子は、0.5μm以上の平均粒子径を有するので、1対の部材間に隙間を形成するのに有用である。
縮合工程、重合工程、再縮合工程および熱処理工程から選ばれる少なくとも1つの工程中および/または後に、生成した粒子を着色することにより着色された有機質無機質複合体粒子が得られる。
上記製造方法において、製造時の適宜の工程において染料および/または顔料を共存させて粒子中に染料および/または顔料を導入することにより着色された有機質無機質複合体粒子を生成することができる。
好ましくは、上記製造方法において縮合工程に染料及び/又は顔料を用いることによって着色される。染料および染色の色としては、上記したものが挙げられる。中でも、塩基性染料が好ましい。これは、ポリシロキサン中のシラノール基が酸性であるため、塩基性(カチオン性)染料が吸着されやすく、染色されやすいからである。顔料は、たとえば、カーボンブラック、鉄黒、クロムバーミリオン、モリブデン赤、べんがら、黄鉛、クロム緑、コバルト緑、群青、紺青などの無機顔料;フタロシアニン系、アゾ系、キナクリドン系などの有機顔料がある。しかしながら、顔料は、その平均粒子径が0.4μm以下でないと、本発明の複合体粒子中に導入されない場合があるので、染料を使用する方が好ましい。
このようにして着色された本発明の有機質無機質複合体粒子は、上述した硬度と機械的復元性と破壊強度とを兼ね備えているので、液晶表示板の画質向上に特に有用である。
〔導電性粒子〕
本発明の導電性粒子は、有機ポリマー骨格と、前記有機ポリマー骨格中の少なくとも1個の炭素原子にケイ素原子が直接化学結合した有機ケイ素を分子内に有するポリシロキサン骨格とを含み、0.5μm以上の平均粒子径を有する有機質無機質複合体粒子と、前記有機質無機質複合体粒子表面に形成された導体層とを有する。前記有機質無機質複合体粒子は、ポリシロキサン骨格を構成するSiOの量が25wt%以上であることが好ましい。その他の実施態様については、本発明の第1の有機質無機質複合体粒子と同様である。
本発明の導電性粒子は、有機ポリマー骨格と、前記有機ポリマー骨格中の少なくとも1個の炭素原子にケイ素原子が直接化学結合した有機ケイ素を分子内に有するポリシロキサン骨格とを含み、前記ポリシロキサン骨格を構成するSiOの量が好ましくは25wt%以上であり、0.5μm以上の平均粒子径を有する有機質無機質複合体粒子を有するので、電気的に接続される1対の電極間の隙間距離を一定に保持するために必要な機械的復元性と少ない個数で前記隙間距離を一定に保持するために必要な硬度および破壊強度とを有するとともに、電極に対して物理的ダメージを与えにくい。このため、1対の電極間の隙間距離を一定に保持しやすく、加圧による導体層の剥がれ落ち・電気的に接続されるべきではない電極間のショート・電気的に接続されるべき電極間の接触不良が防がれる。
導体層に使用される金属は、従来公知のものが挙げられ、たとえば、ニッケル、金、銀、銅、インジウムやこれらの合金等が挙げられるが、特に、ニッケル、金、インジウムは導電性が高いので好ましい。導体層の厚みは、充分な導通があれば特に限定されないが、0.01〜5μmの範囲が好ましく、0.02〜2μmの範囲が特に好ましい。厚みが前記範囲よりも薄いと導電性が不充分となることがあり、前記範囲よりも厚いと粒子と導体層の熱膨張率の差により導体層が剥がれ落ちやすくなる。導体層は、1層でも2層以上でも良く、2層以上の場合には異なる導体からなる層が上下に配されてもよい。
本発明の有機質無機質複合体粒子表面に導体層を形成する方法としては、従来公知の方法がとられ、特に限定されないが、たとえば、化学メッキ(無電解メッキ)法、コーティング法、PVD(真空蒸着、スパッタリング、イオンプレーティングなど)法などが挙げられ、中でも、化学メッキ方法が容易に本発明の導電性粒子が得られるので好ましい。このようにして得られる本発明の導電性粒子は、上述した本発明の有機質無機質複合体粒子の特徴である硬度と機械的復元性とを兼ね備えている。このため、液晶表示板、LSI、プリント配線基板等のエレクトロニクスの電気的接続材料として特に有用である。
〔液晶表示板用スペーサー〕
本発明の有機質無機質複合体粒子は、液晶表示板用スペーサーとして使用することができる。
本発明の有機質無機質複合体粒子からなる液晶表示板用スペーサー(第1の液晶表示板用スペーサー)は、正確な間隔で配置されるべき1対の電極基板間の隙間距離を一定に保持するために必要な機械的復元性と少ない個数で前記隙間距離を一定に保持するために必要な硬度および破壊強度とを有するとともに、電極基板に対して物理的ダメージを与えにくい。このため、1対の電極基板間の隙間距離を一定に保持しやすく、加圧による蒸着層・配向膜・コート層が損傷を受けにくくなり、低温環境における収縮が液晶の収縮に近くなり、電極基板間における散布個数が低減する。
上述したように、本発明の有機質無機質複合体粒子は、ポリシロキサン骨格と有機ポリマー骨格との両方を含有し、かつ、ポリシロキサン骨格と有機ポリマー骨格とが化学結合した複合化した粒子であり、無機質の特徴である大きな硬度と有機ポリマーの特徴である高い機械的復元性および破壊強度とを兼ね備えた粒子であるため、液晶表示板用スペーサーとして好適に使用される。
本発明の有機質無機質複合体粒子が染料および/または顔料を含むことで着色されたものであるときには、前記第1の液晶表示板用スペーサーは着色スペーサーとして有用である。
液晶表示板において、電極基板間に電圧を印加することにより、液晶は光学的変化を生じて画像を形成する。これに対しスペーサーは、電圧印加によって光学的変化を示さない。従って、画像を表示させた時の暗部において、着色されていないスペーサーは、光抜けが生じ、輝点として確認される場合があり、画質のコントラストを低下することがある。
第1の液晶表示板用スペーサーは、染料および/または顔料を含むことで着色された本発明の有機質無機質複合体粒子からなるときには、着色されているため光抜けを生じにくくして画質のコントラスト低下を防ぎ、しかも、上述した本発明の複合体粒子の特徴である硬度と機械的復元性と破壊強度とを兼ね備えているので、液晶表示板の画質を向上するために特に有用である。着色された液晶表示板用スペーサーの好ましい色は、光が透過しにくいかまたは透過しない色である。たとえば、黒、濃青、紺、紫、青、濃緑、緑、茶、赤等の色が挙げられるが、特に好ましくは、黒、濃青、紺色である。
また、本発明の第1の有機質無機質複合体粒子と、有機質無機質複合体粒子表面に形成された接着剤層とを含んだ液晶表示板用スペーサー及び本発明の第2の有機質無機質複合体粒子(第2の液晶表示板用スペーサー)は接着性スペーサーとして有用である。接着剤層は、たとえば、加熱すると接着性を示すものである。
第2の液晶表示板用スペーサーは、液晶表示板を構成する電極基板の間に介在して加熱加圧されることにより、接着剤層が溶融して電極基板に付着し、接着剤層が冷却固化することにより固着する。このため、第2の液晶表示板用スペーサーは、電極基板の隙間において移動しにくくなるので、配向膜の損傷防止や隙間距離の均一性を維持でき、画質向上を図ることができる。接着剤層としては、熱可塑性樹脂が好ましい。熱可塑性樹脂のガラス転移温度が150℃以下が好ましく、80℃以下がより一層好ましい。これは、短時間の加熱加圧で基板と接着するからである。ガラス転移温度が高すぎると、加熱しても基板と接着しない場合があり、逆に低すぎると、スペーサー同士が融着し易くなるので、最も好ましくは40〜80℃の範囲である。また、熱可塑性樹脂の種類としては、特に限定されないが、好ましくは(メタ)アクリル系樹脂である。接着剤層は、1層でも2層以上でも良く、2層以上の場合には異なる熱可塑性樹脂からなる層が上下に配されてもよい。
第2の液晶表示板用スペーサーは、たとえば、有機質無機質複合体粒子を接着剤層で被覆することによって得られる。接着剤として熱可塑性樹脂を用いる場合、具体的には、In situ重合法、コーアセルベーション法、界面重合法、液中硬化被覆法、液中乾燥法、高速気流中衝撃法、気中懸濁被覆法、スプレードライング法等の従来公知の樹脂被覆方法によって有機質無機質複合体粒子表面が熱可塑性樹脂層で被覆される。高速気流中衝撃法は、簡単に被覆することができるので好ましい。高速気流中衝撃法は、たとえば、有機質無機質複合体粒子と熱可塑性樹脂の粉体とを混合し、この混合物を気相中に分散させ、衝撃力を主体とする機械的熱的エネルギーを複合体粒子と熱可塑性樹脂粉体とに与えることで、有機質無機質複合体粒子表面を熱可塑性樹脂で被覆する方法であり、簡便に被覆することができるので好ましい。
このような高速気流中衝撃法を利用した装置としては、奈良機械製作所(株)製ハイブリダイゼーションシステムや、ホソカワミクロン(株)製メカノフュージョンシステム、川崎重工業(株)製クリプトロンシステム等がある。
第2の液晶表示板用スペーサーは、上述した本発明の有機質無機質複合体粒子の特徴である硬度と機械的復元性と破壊強度とを兼ね備え、かつ接着性を有しているので、液晶表示板の画質向上に特に有用である。
第2の液晶表示板用スペーサーは、有機質無機質複合体粒子が染料および/または顔料を含むことで着色されているときには、着色されているため光抜けを生じにくく画質のコントラスト低下を防ぎ、接着性を有するため電極基板の隙間において移動しにくくなって配向膜の損傷防止や隙間距離の均一性を維持でき、しかも、上述した本発明の複合体粒子の特徴である硬度と機械的復元性と破壊強度とを兼ね備えているので、着色スペーサーとしても有用な接着性スペーサーであり、液晶表示板の画質を向上するために特に有用である。
〔液晶表示板〕
従来の液晶表示板において、従来のスペーサーの代わりに、上述したような本発明の有機質無機質複合体粒子からなる液晶表示板用スペーサーを電極基板間に介在させた液晶表示板は、同スペーサーの粒子径と同じかまたはほぼ同じ隙間距離を有する。使用されるスペーサーの量は、通常40〜100個/mm、好ましくは40〜80個/mmと、従来の有機質粒子スペーサーに比べると10〜50%程度少なくなっており、画像を形成しない部分の面積が少なくなり、また、イオンや分子等の不純物がスペーサー内部から液晶層中へ溶出する量も減少する。このため、コントラストが高くなり、ざらつきが減り、表示品位の向上が期待される。
このような液晶表示板は、たとえば、第1電極基板と第2電極基板と液晶表示板用スペーサーとシール材と液晶とを備えている。第1電極基板は、第1基板と、第1基板の表面に形成された第1電極とを有する。第2電極基板は、第2基板と、第2基板の表面に形成された第2電極とを有し、第1電極基板と対向している。液晶表示板用スペーサーは、第1電極基板と第2電極基板との間に介在している。シール材は、第1電極基板と第2電極基板とを周辺部で接着する。液晶は、第1電極基板と第2電極基板とシール材とで囲まれた空間に充填されている。
このような液晶表示板には、電極基板、シール材、液晶など、スペーサー以外のものは従来と同様のものが同様のやり方で使用することができる。電極基板は、ガラス基板、フィルム基板などの基板と、基板の表面に形成された電極とを有しており、必要に応じて、電極基板の表面に電極を覆うように形成された配向膜をさらに有する。シール材としては、エポキシ樹脂接着シール材などが使用される。液晶としては、従来より用いられているものでよく、たとえば、ビフェニル系、フェニルシクロヘキサン系、シッフ塩基系、アゾ系、アゾキシ系、安息香酸エステル系、ターフェニル系、シクロヘキシルカルボン酸エステル系、ビフェニルシクロヘキサン系、ピリミジン系、ジオキサン系、シクロヘキシルシクロヘキサンエステル系、シクロヘキシルエタン系、シクロヘキセン系、フッ素系などの液晶が使用できる。
このような液晶表示板を作製する方法としては、たとえば、本発明の有機質無機質複合体粒子からなるスペーサーを面内スペーサーとして2枚の電極基板のうちの一方の電極基板に湿式法または乾式法により均一に散布したものに、本発明の有機質無機質複合体粒子からなるスペーサーをシール部スペーサーとしてエポキシ樹脂等の接着シール材に分散させた後、もう一方の電極基板の接着シール部分にスクリーン印刷などの手段により塗布したものを載せ、適度の圧力を加え、100〜180℃の温度で1〜60分間の加熱、または、照射量40〜300mJ/cmの紫外線照射により、接着シール材を加熱硬化させた後、液晶を注入し、注入部を封止して、液晶表示板を得る方法を挙げることができるが、液晶表示板の作製方法によって本発明が限定されるものではない。面内スペーサーとしては、本発明の有機質無機質複合体粒子からなる液晶表示板用スペーサーの中でも、前記着色された第1の液晶表示板用スペーサーが光抜けを生じにくいので好ましく、前記第2の液晶表示板用スペーサーが基板に固着して移動しにくいのでより好ましく、着色された第2の液晶表示板用スペーサーが光抜けを生じにくく基板に固着して移動しにくいのでさらに好ましい。
このような液晶表示板は、従来の液晶表示板と同じ用途、たとえば、テレビ、パーソナルコンピューター、ワードプロセッサーなどの画像表示素子として使用される。
以下に、本発明の実施例と、本発明の範囲を外れた比較例とを示すが、本発明は下記実施例に限定されない。
下記実施例中の液晶表示板は、以下の方法により作製した。図1にみるように、まず、300mm×345mm×1.1mmの下側ガラス基板11上に、電極(たとえば、透明電極)5及びポリイミド配向膜4を形成した後、ラビングを行って下側電極基板110を得た。その下側電極基板110に、メタノール30容量部、イソプロパノール20容量部、水50容量部の混合溶媒中に本発明の有機質無機質複合体粒子からなる液晶表示板用スペーサー(この場合、面内スペーサー)8が1重量%となるように均一に分散させたものを、1〜10秒間散布した。
一方、300mm×345mm×1.1mmの上側ガラス基板12上に、電極(たとえば、透明電極)5及びポリイミド配向膜4を形成した後、ラビングを行って上側電極基板120を得た。そして、エポキシ樹脂接着シール材2中に本発明の有機質無機質複合体粒子からなる液晶表示板用スペーサー(この場合、シール部スペーサー)3が30容量%となるように分散させたものを、上側電極基板120の接着シール部分にスクリーン印刷した。
最後に、上下側電極基板120,110を、電極5及び配向膜4がそれぞれ対向するように、本発明の有機質無機質複合体粒子からなるスペーサー8を介して貼り合わせ、4kg/cmの圧力を加え、150℃の温度で30分間加熱し、接着シール材2を加熱硬化させた。その後、2枚の電極基板120,110の隙間を真空とし、さらに、大気圧に戻すことにより、作製する液晶表示板の種類に応じてビフェニル系及びフェニルシクロヘキサン系などの液晶物質を混合した液晶7を注入し、注入部を封止した。そして、上下ガラス基板12,11の外側にPVA(ポリビニルアルコール)系偏光膜6を貼り付けて液晶表示板とした。
スペーサー8は、図2に示すように、着色されていない本発明の有機質無機質複合体粒子31からなるものであってもよい。このときには、製造時のプレスによる電極基板の物理的損傷が起こりにくいし、低温発泡と画像ムラとが発生しにくい。しかも、従来のポリマー粒子からなるスペーサーに比べてスペーサーの個数を減らすことができるので、画像を形成しない部分の面積が減り、不純物の液晶への溶出量も減る。このため、コントラストの向上など表示品位の向上ができる。
スペーサー8は、図3に示すように、着色されている本発明の有機質無機質複合体粒子32からなるものであってもよい。このときには、スペーサー8による光抜けが起こりにくくなるので、輝点が目立たなくなり、表示品位がより向上するという利点がさらに得られる。
スペーサー8は、図4に示すように、着色されていない本発明の有機質無機質複合体粒子31とこの粒子31表面に形成された接着剤層33とを含むものであってもよい。このときには、スペーサーが移動しにくくなるため、配向膜の損傷が防がれ、表示品位の向上をより高めるという利点がさらに得られる。
スペーサー8は、図5に示すように、着色された本発明の有機質無機質複合体粒子32とこの粒子32表面に形成された接着剤層33とを含むものであってもよい。このときには、スペーサー8による光抜けが起こりにくくなるので、輝点が目立たなくなり、表示品位がより向上するという利点と、スペーサーが移動しにくくなるため、配向膜の損傷が防がれ、表示品位の向上をより高めるという利点とがさらに得られる。
本発明の導電性粒子は、図6に示すように、有機質無機質複合体粒子34とこの粒子34表面に形成された導体層35とを含む。導体層35は、たとえば、無電解メッキにより形成された金属被膜であり、1層でも2層以上でもよい。
得られた液晶表示板の評価方法に関して、低温発泡についてはマイナス45℃で1000時間保持後の画像表示の有無を、画像ムラ及び画素欠陥については室温(25℃)におけるそれらの有無をそれぞれ目視により観察して行った。
〔実施例1〕
冷却管、温度計、滴下口のついた四つ口フラスコ中に25%アンモニア水溶液2.9g、メタノール10.1g、水141.1gを混合した溶液(A液)を入れ、25±2℃に保持し、攪拌しながら該溶液中に、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン27g、メタノール54g、ラジカル重合開始剤として2,2′−アゾビス−(2.4−ジメチルバレロニトリル)0.14gを混合した溶液(B液)を滴下口から添加して、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランの加水分解・縮合を行った。攪拌を継続しながら20分後、N雰囲気中で70±5℃に加熱し、ラジカル重合を行った。
2時間加熱を続けた後、室温まで冷却し、重合体粒子の懸濁体を得た。この懸濁体を濾過により固液分離し、得られたケーキをメタノールによる洗浄を3回繰り返して行い、得られた重合体粒子を真空乾燥機中で200℃で2時間真空乾燥して複合体粒子(1)を得た。
得られた複合体粒子(1)は、平均粒子径4.24μm、変動係数3.8%、ポリシロキサン骨格を構成するSiOの量34.7wt%、10%圧縮弾性率480kg/mm、10%変形後の残留変位2.2%、破壊強度2.4gであった。複合体粒子(1)について、FT−IR分析により、有機ポリマー骨格の−CH−CH−に帰属されるスペクトル(650〜800cm−1)と−Si−CH−に帰属されるスペクトル(1150〜1300cm−1)とを確認した。
これらの結果から、複合体粒子(1)は、有機ポリマー骨格と、有機ポリマー骨格中の少なくとも1個の炭素原子にケイ素原子が直接化学結合した有機ケイ素を分子内に有するポリシロキサン骨格とを含む有機質無機質複合体粒子であることがわかる。
この複合体粒子(1)を用いて公知の方法によりB版大のSTN型液晶表示板を作製した。その結果、現存する有機質粒子スペーサー(株式会社日本触媒製エポスターGP−H)に対して散布個数を10%以上減少させることができ、また、シリカ焼成物粒子やゾル−ゲル法による未焼成シリカ粒子を用いたときに生じる低温発泡も画像ムラも生じなかった。
〔実施例2〕
実施例1において、B液の組成をγ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン19.2g、メタノール51g、2,2′−アゾビス−(2,4−ジメチルバレロニトリル)0.10g、テトラエトキシシランの2〜5量体(多摩化学株式会社製「シリケート40」SiOとして40wt%)4.2gに変えたこと以外は実施例1の操作を繰り返して、複合体粒子(2)を得た。
得られた複合体粒子(2)は、平均粒子径2.02μm、変動係数7.4%、ポリシロキサン骨格を構成するSiOの量42.7wt%、10%圧縮弾性率720kg/mm、10%変形後の残留変位3.6%、破壊強度1.0gであった。複合体粒子(2)について、実施例1と同様にして、−CH−CH−に帰属されるスペクトル(650〜800cm−1)と−Si−CH−に帰属されるスペクトル(1150〜1300cm−1)とを確認した。
この複合体粒子(2)を用いて公知の方法によりB5版大の強誘電性液晶表示板を作製したところ、実施例1と同様の結果が得られた。
〔実施例3〕
実施例1において、B液の組成をγ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン40.5g、メタノール50.6g、2,2′−アゾビス−(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)0.20g、ジビニルベンゼン4.5gに変え、A液を50±5℃に保持してN雰囲気中で攪拌しながらB液を20分間かけて滴下し、加水分解・縮合しながらラジカル重合を行ったこと以外は実施例1の操作を繰り返して、複合体粒子(3)を得た。
得られた複合体粒子(3)は、平均粒子径8.91μm、変動係数4.8%、ポリシロキサン骨格を構成するSiOの量29.5wt%、10%圧縮弾性率370kg/mm、10%変形後の残留変位2.8%、破壊強度9.7gであった。複合体粒子(3)について、実施例1と同様にして、−CH−CH−に帰属されるスペクトル(650〜800cm−1)と−Si−CH−に帰属されるスペクトル(1150〜1300cm−1)とを確認した。
この複合体粒子(3)を用いて公知の方法によりB5版大のTN型液晶表示板を作製したところ、実施例1と同様の結果が得られた。
〔実施例4〕
実施例1において、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランの代わりにビニルトリメトキシシランを用い、200℃で2時間真空乾燥した後にN雰囲気中で600℃で2時間焼成したこと以外は実施例1の操作を繰り返して、複合体粒子(4)を得た。
得られた複合体粒子(4)は、平均粒子径4.18μm、変動係数7.2%、ポリシロキサン骨格を構成するSiOの量40.9wt%、10%圧縮弾性率1050kg/mm、10%変形後の残留変位3.2%、破壊強度1.9gであった。複合体粒子(4)について、実施例1と同様にして、−CH−CH−に帰属されるスペクトル(650〜800cm−1)と−Si−CH−に帰属されるスペクトル(1150〜1300cm−1)とを確認した。
この複合体粒子(4)を用いて公知の方法によりB5版大のSTN型液晶表示板を作製したところ、実施例1と同様の結果が得られた。
〔実施例5〕
実施例1において、A液にシリカゾル(日産化学株式会社製「スノーテックス−XS」SiO20wt%、粒子径4〜6nm)15gを加えたこと以外は実施例1の操作を繰り返して、複合体粒子(5)を得た。
得られた複合体粒子(5)は、平均粒子径4.77μm、変動係数4.0%、ポリシロキサン骨格を構成するSiOの量42.0wt%、10%圧縮弾性率1130kg/mm、10%変形後の残留変位2.5%、破壊強度3.8gであった。複合体粒子(5)について、実施例1と同様にして、−CH−CH−に帰属されるスペクトル(650〜800cm−1)と−Si−CH−に帰属されるスペクトル(1150〜1300cm−1)とを確認した。
この複合体粒子(5)を用いて公知の方法によりB5版大のTFT型液晶表示板を作製したところ、実施例1と同様の結果が得られた。
〔実施例6〜9〕
実施例5において、シリカゾルの種類および量を表1に示すように変えたこと以外は実施例5の操作を繰り返して、複合体粒子(6)〜(9)を得た。
得られた複合体粒子(6)〜(9)の、平均粒子径、変動係数、ポリシロキサン骨格を構成するSiOの量、10%圧縮弾性率、10%変形後の残留変位、破壊強度を表1に示した。複合体粒子(6)〜(9)について、実施例1と同様にして、−CH−CH−に帰属されるスペクトル(650〜800cm−1)と−Si−CH−に帰属されるスペクトル(1150〜1300cm−1)とを確認した。
複合体粒子(6)〜(9)を用いて公知の方法によりB5版大のSTN型液晶表示板を作製したところ、いずれも実施例1と同様の結果が得られた。
〔実施例10〕
実施例8において得られた複合体粒子(8)を更に窒素95容量%、酸素5容量%の混合気体中で400℃で2時間熱処理し、複合体粒子(10)を得た。
得られた複合体粒子(10)の、平均粒子径、変動係数、ポリシロキサン骨格を構成するSiOの量、10%圧縮弾性率、10%変形後の残留変位、破壊強度を表1に示した。複合体粒子(10)について、実施例1と同様にして、−CH−CH−に帰属されるスペクトル(650〜800cm−1)と−Si−CH−に帰属されるスペクトル(1150〜1300cm−1)とを確認した。
複合体粒子(10)を用いて公知の方法によりB5版大のSTN型液晶表示板を作製したところ、いずれも実施例1と同様の結果が得られた。
Figure 2005314706
〔実施例11〕
酸性染料であるKayacyl Sky Blue R(日本化薬株式会社製)5gを水100gに溶解した溶液と、実施例8で得られた複合体粒子(8)10gを水500gに分散した分散液とを混合し、オートクレーブ中で150℃で1時間加圧加熱処理した。処理後、濃青色に着色された粒子を濾過で捕集し、更に水洗を3回繰り返した後、200℃で真空乾燥して濃青色に着色された複合体粒子(11)を得た。
得られた複合体粒子(11)は、平均粒子径4.26μm、変動係数6.3%、ポリシロキサン骨格を構成するSiOの量40.0wt%、10%圧縮弾性率920kg/mm、10%変形後の残留変位3.0%、破壊強度3.0gであった。複合体粒子(11)について、実施例1と同様にして、−CH−CH−に帰属されるスペクトル(650〜800cm−1)と−Si−CH−に帰属されるスペクトル(1150〜1300cm−1)とを確認した。
この複合体粒子(11)を用いて公知の方法によりB5版大のSTN型液晶表示板を作製したところ、実施例8と同様の結果が得られると共に、輝点(光抜け)が少なかった。
〔実施例12〕
塩基性染料であるKayacryl Black NP200(日本化薬株式会社製)5gを水300gに溶解し、酢酸を加えてpH4とした後、実施例8で得られた複合体粒子(8)10gを加えて良く攪拌しながら95℃で8時間加熱して黒色に着色された複合体粒子(12)を得た。
得られた複合体粒子(12)は、平均粒子径4.41μm、変動係数5.7%、ポリシロキサン骨格を構成するSiOの量40.2wt%、10%圧縮弾性率920kg/mm、10%変形後の残留変位2.8%、破壊強度3.4gであった。複合体粒子(12)について、実施例1と同様にして、−CH−CH−に帰属されるスペクトル(650〜800cm−1)と−Si−CH−に帰属されるスペクトル(1150〜1300cm−1)とを確認した。
この複合体粒子(12)を用いて公知の方法によりB5版大のSTN型液晶表示板を作製したところ、実施例11と同様の結果が得られた。
〔実施例13〕
実施例8において、A液に塩基性染料であるKayacryl BlackNP200(日本化薬株式会社製)1gを加えたこと以外は実施例8の操作を繰り返して黒色に着色された複合体粒子(13)を得た。
得られた複合体粒子(13)は、平均粒子径4.53μm、変動係数5.1%、ポリシロキサン骨格を構成するSiOの量40.4wt%、10%圧縮弾性率970kg/mm、10%変形後の残留変位2.5%、破壊強度3.6gであった。複合体粒子(13)について、実施例1と同様にして、−CH−CH−に帰属されるスペクトル(650〜800cm−1)と−Si−CH−に帰属されるスペクトル(1150〜1300cm−1)とを確認した。
この複合体粒子(13)を用いて公知の方法によりB5版大のSTN型液晶表示板を作製したところ、実施例11と同様の結果が得られた。
〔実施例14〕
実施例8で得られた複合体粒子(8)30gと熱可塑性樹脂粒子(メチルメタクリレート84wt%とn−ブチルアクリレート16wt%との共重合体、ガラス転移温度70℃、平均粒子径0.3μm)2gとを混合し、更に奈良機械製作所製ハイブリダイゼーションシステムNHS−O型を使用して複合体粒子(8)の表面を熱可塑性樹脂で被覆して表面に接着層を有する複合体粒子(14)を得た。得られた、接着層を有する複合体粒子(14)をSEMで観察したところ、複合体粒子(8)の表面は完全に熱可塑性樹脂で被覆されており、その断面をTEMで観察したところ、被覆層の厚みは0.2μmであった。
この接着層を有する複合体粒子(14)を用いて公知の方法によりB5版大のSTN型液晶表示板を作製したところ、実施例1と同様の結果が得られた。また、得られた液晶表示板を振動機を用いて振動する前と振動した後とに同様に表示させたところ全く変化がなかった。
〔実施例15〕
実施例14において、複合体粒子(8)の代わりに実施例13で得られた黒色に着色された複合体粒子(13)を使用したこと以外は実施例14の操作を繰り返して、表面に接着層を有する黒色に着色された複合体粒子(15)を得た。得られた、接着層を有する黒色に着色された複合体粒子(15)をSEMで観察したところ、複合体粒子(13)の表面は完全に熱可塑性樹脂で被覆されており、その断面をTEMで観察したところ、被覆層の厚みは0.2μmであった。
この接着層を有する黒色に着色された複合体粒子(15)を用いて公知の方法によりB5版大のSTN型液晶表示板を作製したところ、実施例14と同様の結果が得られた。
〔実施例16〕
実施例8で得られた複合体粒子(8)に無電解Niメッキを施して導電性粒子(16)を得た。得られた導電性粒子(16)は、平均粒子径4.92μm、変動係数5.4%であった。得られた導電性粒子(16)をSEMとXMAで観察したところ、導電性粒子(16)の表面は完全にNiでメッキ被覆されており、その断面をTEMで観察したところ、被覆層の厚みは0.3μmであった。
〔実施例17〕
実施例8で得られた複合体粒子(8)に無電解Niメッキを施した後、更に無電解金メッキを施し、導電性粒子(17)を得た。得られた導電性粒子(17)は、平均粒子径5.05μm、変動係数5.5%であった。得られた導電性粒子(17)をSEMとXMAで観察したところ、導電性粒子(17)の表面は完全にNiでメッキ被覆され、その上にAuでメッキ被覆されており、その断面をTEMで観察したところ、被覆層の厚みは0.5μmであった。
〔実施例18〕
実施例1で得られた重合体粒子(1)の懸濁体をデカンテーションにより固液分離し、得られたケーキを室温下で一晩乾燥した。この乾燥物から5g採取し、イソプロピルアルコール200g中に超音波分散させた後、この分散液にジブチル錫ジラウレート0.5gを添加して攪拌しながら80℃で2時間加熱した。これにより、再縮合粒子(18)の懸濁体を得、実施例1と同様にして固液分離・洗浄・乾燥を行って、複合体粒子(18)を得た。
得られた複合体粒子(18)は、平均粒子径4.20μm、変動係数3.9%、ポリシロキサン骨格を構成するSiOの量35.1wt%、10%圧縮弾性率950kg/mm、10%変形後の残留変位1.8%、破壊強度3.0gであった。複合体粒子(18)について、実施例1と同様にして、−CH−CH−に帰属されるスペクトル(650〜800cm−1)と−Si−CH−に帰属されるスペクトル(1150〜1300cm−1)とを確認した。
この複合体粒子(18)を用いて公知の方法によりB5版大のSTN型液晶表示板を作製したところ、実施例1と同様の結果が得られた。
〔実施例19〕
冷却管、温度計、滴下口のついた四つ口フラスコ中にN雰囲気中で25%アンモニア水溶液1.8g、水154.8gを混合した溶液を入れ、40±2℃に保持し、攪拌しながら該溶液中に、p−トリメトキシシリルスチレン29g、メタノール70g、ラジカル重合開始剤として2,2′−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)0.12gを混合した溶液を滴下口から添加して、p−トリメトキシシリルスチレンの加水分解・縮合を行った。攪拌を継続しながら7分後、N雰囲気中で55±5℃に加熱し、ラジカル重合を行った。
15分加熱を続けた後、室温まで冷却し、重合体粒子の懸濁体を得た。この懸濁体を濾過により固液分離し、得られたケーキをメタノールによる洗浄を3回繰り返して行い、得られた重合体粒子をN雰囲気中で350℃で2時間加熱して複合体粒子(19)を得た。
得られた複合体粒子(19)は、平均粒子径2.60μm、変動係数6.9%、ポリシロキサン骨格を構成するSiOの量36.7wt%、10%圧縮弾性率745kg/mm、10%変形後の残留変位1.8%、破壊強度1.2gであった。複合体粒子(19)について、実施例1と同様にして、有機ポリマー骨格の−CH−CH−に帰属されるスペクトル(650〜800cm−1)と−Si−C−に帰属されるスペクトル(1400〜1450cm−1、700〜710cm−1)とを確認した。
これらの結果から、複合体粒子(19)は、有機ポリマー骨格と、有機ポリマー骨格中の少なくとも1個の炭素原子にケイ素原子が直接化学結合した有機ケイ素を分子内に有するポリシロキサン骨格とを含む有機質無機質複合体粒子であることがわかる。
この複合体粒子(19)を用いて公知の方法によりB5版大の強誘電性液晶表示板を作製したところ、実施例1と同様の結果が得られた。
〔実施例20〕
カーボンブラックであるラベン1255(コロンビヤン・カーボン日本株式会社製)500gにγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン500gを加えて、熱ロールにて80〜90℃で3回混練したもの13gを、実施例1におけるB液中に分散させたものをB液として用いた以外は実施例1の操作を繰り返して、黒色に着色された複合体粒子(20)を得た。
得られた複合体粒子(20)は、平均粒子径3.92μm、変動係数3.2%、ポリシロキサン骨格を構成するSiOの量27.8wt%、10%圧縮弾性率837kg/mm、10%変形後の残留変位2.3%、破壊強度2.5gであった。複合体粒子(20)について、実施例1と同様にして、有機ポリマー骨格の−CH−CH−に帰属されるスペクトル(650〜800cm−1)と−Si−CH−に帰属されるスペクトル(1150〜1300cm−1)とを確認した。
これらの結果から、複合体粒子(20)は、有機ポリマー骨格と、有機ポリマー骨格中の少なくとも1個の炭素原子にケイ素原子が直接化学結合した有機ケイ素を分子内に有するポリシロキサン骨格とを含む有機質無機質複合体粒子であることがわかる。
この複合体粒子(20)を用いて公知の方法によりB5版大のTFT型液晶表示板を作製したところ、実施例1と同様の結果が得られた。
〔比較例1〕
実施例1で得られた複合体粒子(1)を更に950℃で2時間熱処理して粒子を得た。この粒子のポリシロキサン骨格を構成するSiOの量は99.8wt%であり、FT−IR分析結果からも有機ポリマー骨格が分解・燃焼してしまったシリカ粒子であることがわかった。得られた粒子の10%圧縮弾性率は3250kg/mm、10%変形後の残留変位は6.2%であった。この粒子を用いて、公知の方法によりB5版大のTFT型液晶表示板を作製したところ、電極基板上のTFTの断線による画素欠陥が生じ、かつ、粒子の機械的復元性が充分でないため画像のムラが生じた。
上記実施例で得られた液晶表示板の面内に散布された、本発明のスペーサー個数は、散布面を縦、横それぞれ3等分して合計9つの区域のそれぞれにおいて任意の1mm内の本発明のスペーサーの個数を光学顕微鏡により計数し、計9区域の個数の平均値をもって、散布個数とした。結果は、以下のとおりであった。
実施例1…散布個数73個/mm 実施例10…散布個数63個/mm
実施例2…散布個数70個/mm 実施例11…散布個数70個/mm
実施例3…散布個数69個/mm 実施例12…散布個数69個/mm
実施例4…散布個数68個/mm 実施例13…散布個数71個/mm
実施例5…散布個数69個/mm 実施例14…散布個数69個/mm
実施例6…散布個数66個/mm 実施例15…散布個数70個/mm
実施例7…散布個数64個/mm 実施例18…散布個数65個/mm
実施例8…散布個数68個/mm 実施例19…散布個数75個/mm
実施例9…散布個数52個/mm 実施例20…散布個数63個/mm
〔比較例2〕
実施例1記載の現存する有機質粒子スペーサーを用いて、公知の方法によりB5版大のSTN型液晶表示板を作製したところ、画像ムラが顕著に現れ、液晶表示板として使用に耐えないものであった。このとき、スペーサーの散布個数は、上記のような計数方法によれば66個/mmであった。
(比較例3)
攪拌機、滴下口および温度計を備えた2リットルのガラス製反応器中で、メタノール307重量部、25%アンモニア水6重量部、水1225重量部を均一に混合した。この混合液を20±0.5℃に調整して100rpm で均一に攪拌しながら、メチルトリメトキシシラン60重量部を滴下口より6時間かけて滴下した。滴下後も1時間均一に攪拌を続け、加水分解、縮合を行い、メチルトリメトキシシランの縮合体水和物微粒子の懸濁体を得た。この懸濁体を濾過により固液分離し、得られたケーキにメタノールによる洗浄を3回繰り返して行い、得られた固形分粉体を真空乾燥器中で200℃で3時間乾燥して、平均粒子径2.04μm、変動係数7.6%の有機−無機複合体粒子を得た。得られた複合体粒子の10%圧縮弾性率は370kg/mm、10%変形後の残留変位は2.7%、破壊強度は0.2gであった。この複合体粒子を液晶表示板用スペーサーとして用いて、公知の方法によりB5版大の強誘電性液晶表示板を作製したが、複合体粒子が破壊してしまい、画像ムラが顕著に現れ、液晶表示板としては使用に耐えないものであった。このときのスペーサーの散布個数は上記のような計数方法によれば95個/mmであった。
本発明の有機質無機質複合体粒子は、高画質の液晶表示板を作ることのできる液晶表示板用スペーサーとして有用である。そして、本発明の導電性粒子は、エレクトロニクスの実装材料として有用である。
本発明の有機質無機質複合体粒子を用いた液晶表示板の1実施例を表す部分断面図である。 本発明の有機質無機質複合体粒子からなる液晶表示板用スペーサーの1実施例を表す断面図である。 本発明の有機質無機質複合体粒子からなる液晶表示板用スペーサーの1実施例を表す断面図である。 本発明の有機質無機質複合体粒子からなる液晶表示板用スペーサーの1実施例を表す断面図である。 本発明の有機質無機質複合体粒子からなる液晶表示板用スペーサーの1実施例を表す断面図である。 本発明の導電性粒子の1実施例を表す断面図である。
符号の説明
2 接着シール材
3 シール部スペーサー
4 配向膜
5 電極
6 偏光膜
7 液晶
8 面内スペーサー
11 下側ガラス基板
12 上側ガラス基板
31 有機質無機質複合体粒子
32 有機質無機質複合体粒子
33 接着剤層
34 有機質無機質複合体粒子
35 導体層
110 下側電極基板
120 上側電極基板

Claims (5)

  1. 有機ポリマー骨格と、前記有機ポリマー骨格中の少なくとも1個の炭素原子にケイ素原子が直接化学結合した有機ケイ素を分子内に有するポリシロキサン骨格とを含み、前記ポリシロキサン骨格を構成するSiOの量が25wt%以上であり、0.5μm以上の平均粒子径を有し、粒子径の変動係数が20%以下である、有機質無機質複合体粒子。
  2. 有機ポリマー骨格と、前記有機ポリマー骨格中の少なくとも1個の炭素原子にケイ素原子が直接化学結合した有機ケイ素を分子内に有するポリシロキサン骨格とを含み、0.5μm以上の平均粒子径を有する有機質無機質複合体粒子と、前記有機質無機質複合体粒子表面に形成された導体層とを有する導電性粒子。
  3. 有機ポリマー骨格と、前記有機ポリマー骨格中の少なくとも1個の炭素原子にケイ素原子が直接化学結合した有機ケイ素を分子内に有するポリシロキサン骨格とを含み、前記ポリシロキサン骨格を構成するSiOの量が25wt%以上であり、0.5μm以上の平均粒子径を有する有機質無機質複合体粒子と、前記有機質無機質複合体粒子表面に形成された導体層とを有する導電性粒子。
  4. 有機ポリマー骨格と、前記有機ポリマー骨格中の少なくとも1個の炭素原子にケイ素原子が直接化学結合した有機ケイ素を分子内に有するポリシロキサン骨格とを含み、0.5μm以上の平均粒子径を有する有機質無機質複合体粒子であり、前記粒子表面に接着剤層が形成されてなる有機質無機質複合体粒子。
  5. 有機ポリマー骨格と、前記有機ポリマー骨格中の少なくとも1個の炭素原子にケイ素原子が直接化学結合した有機ケイ素を分子内に有するポリシロキサン骨格とを含み、前記ポリシロキサン骨格を構成するSiOの量が25wt%以上であり、0.5μm以上の平均粒子径を有する有機質無機質複合体粒子であり、前記粒子表面に接着剤層が形成されてなる有機質無機質複合体粒子。
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