JP3802619B2 - 遮光性粒子およびその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は遮光性粒子およびその製造方法に関し、さらに詳しくは、特に液晶とスペーサーの界面における液晶分子の異常配向を防止しうるとともに、カラーフィルターへの粒子のめり込みなどを抑制しうる液晶表示装置用スペーサー粒子などとして好適な遮光性粒子、およびこのものを効率よく製造する方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、液晶表示装置の発展は目ざましく、時計、電卓、ノート型パソコンなどの小型の表示部をもつものだけではなく、ワードプロセッサー、デスクトップパソコン、テレビなどの大型の表示部をもつ機器の表示装置などとして利用されている。
【0003】
この液晶表示装置は、一般に配向層を形成した2枚の透明電極基板を、スペーサー粒子を介して所定の間隙になるように対向配置し、周辺をシールして液晶セルを形成し、その電極基板の間隙に液晶材料を挾持した構造を有している。該スペーサー粒子は電極基板間の間隙、すなわち液晶層の厚みを均一に保つための機能を有しており、液晶セルの周辺シール部および液晶セル内部(面内、表示部分)に使用される。
【0004】
近年、液晶表示装置の大型化、高速応答性、視野角増大、コントラストの向上などが求められるに伴い、特に液晶セル内部で使用されるスペーサー粒子には次のような性能が求められている。
【0005】
(イ)高速応答性や視野角増大のためには、セルギャップの減少が必要であり、したがって、スペーサーの粒子径はより小さいものが好ましく、また、ギャップ不良による色ムラを防止するために、粒子径精度に優れ、均一散布性を有すること。
【0006】
(ロ)スペーサー粒子およびその周辺での光抜けにより、コントラストが低下するのを防止するために、光を透さない遮光性粒子であること。
【0007】
(ハ)スペーサー粒子と液晶の界面で液晶分子の異常配向が生じると、光抜けなどが起こり、液晶表示装置の画面上で明点または暗点が生じ、画面の表示品質が低下するので、液晶異常配向を防止しうること。なお、液晶異常配向による光抜けを低減するには、粒子の散布個数を減少させるのが有効であるが、この場合、散布個数を減少させてもギャップ精度の出せる高強度の粒子であることが必要となる。
【0008】
(ニ)カラーフィルターへの粒子のめり込みなどを防止しうること。
上記要求性能をある程度満足させるものとして、例えば着色した無機粒子があり、その製造方法として、
(1)金属酸化物の種粒子の存在下、金属アルコキシドを加水分解して得た金属酸化物粒子を高温焼成して粒子内部の残留有機物を炭化させ、黒色粒子を得る方法(特開昭63−89408号公報、同63−89890号公報)、
(2)アルカリ金属を含まないシリカ粒子をフッ素化剤および有機溶媒と接触させた後、500℃以上の温度で加熱してシリカ粒子中の残留有機物を炭化して黒色粒子を得る方法(特開平3−279209号公報)、
(3)金属酸化物からなる球状微粒子の表面に酸化チタンの薄膜をコーティングした後、還元性雰囲気で還元処理して酸化チタンの薄膜を黒色化することにより黒色粒子を得る方法(特開平5−9027号公報)、
などが知られている。
【0009】
しかしながら、上記(1)の方法は、(a)有機物の残留量をコントロールしにくく、従って黒色の度合をコントロールするのが難しい、(b)シリカ粒子を成長させる工程において、反応液中にアルカリ金属を存在させて粒子の分散を安定させる操作を行っているが、シリカ粒子内部にアルカリ金属が残りやすく、液晶表示装置においてスペーサーとして用いたとき液晶物質に損傷を与える、(c)黒色粒子の絶縁性が不十分(109Ω・cm程度)であり、スペーサーとしての絶縁性(1011Ω・cm以上)を確保するためには、さらに最外層として絶縁層を設ける必要がある、等の欠点を有している。
【0010】
また上記(2)の方法は、アルカリ金属を含まないシリカ粒子を用いているので、上記(b)の欠点(液晶物質の損傷)は解消されているが、方法(1)と同様に黒色化をシリカ粒子中の残留有機物の炭化により行なっているため、上記(a)の欠点(黒色化のコントロールの困難性)を同様に有する。また黒色化により絶縁性が不十分となり、上記(c)の欠点(絶縁層形成の必要性)をも同様に有する。
【0011】
また上記(3)の方法は、上記(1)および(2)の方法に比べ、無機顔料としての酸化チタン層を黒色化に用いているため、安定した着色性を有する微粒子が得られるという点で優れている。また黒色粒子の絶縁性も向上しているが、今後予想される液晶表示装置の高機能化を考えると未だ不十分である。
【0012】
さらに、これらの方法で得られた着色無機粒子は、一般に硬すぎてカラーフィルターへのめり込みなどが生じることがあるという問題も有している。
【0013】
そこで、本発明者らは、このような問題を解決するために、研究を重ね、先に、重合性シラン系カップリング剤で表面処理された金属酸化物からなる球状粒子の表面に、共役π電子を有するポリマーの脱ドープ体を含む層が被覆されてなる着色粒子を見出した。
【0014】
しかしながら、この着色粒子は、従来技術で得られる着色無機粒子に比べて、液晶表示装置用スペーサー粒子として優れた性能を有するものの、液晶分子の異常配向やカラーフィルターへのめり込みなどの防止性については、必ずしも充分に満足しうるものではなかった。
【0015】
【発明が解決しようとする課題】
本発明はこのような状況下で、特に液晶とスペーサーの界面における液晶分子の異常配向を防止しうるとともに、カラーフィルターへの粒子のめり込みなどを抑制しうる液晶表示装置用スペーサー粒子などとして好適な遮光性粒子を提供することを目的とするものである。
【0016】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、前記の好ましい性質を有する遮光性粒子を開発すべく鋭意研究を重ねた結果、金属酸化物や有機基を有する金属酸化物からなる球状粒子表面に、共役π電子を有するポリマーの脱ドープ体を含む遮光性の層が被覆され、さらにこの上に特定のポリマー層が被覆されてなる粒子が、その目的に適合しうることを見出し、この知見に基づいて本発明を完成するに至った。
【0017】
すなわち、本発明は、金属酸化物および/または有機基を有する金属酸化物からなる球状粒子の表面に、共役π電子を有するポリマーの脱ドープ体を含む遮光性の層が被覆され、さらにこの上に直鎖状炭化水素基を有するビニル化合物のポリマーからなる層が被覆されていることを特徴とする遮光性粒子を提供するものである。 上記遮光性粒子は、本発明の方法に従えば、金属酸化物および/または有機基を有する金属酸化物からなる球状粒子を含む分散液に、π電子を有するポリマーを形成しうるモノマーを加え、酸化重合させて該球状粒子表面に共役π電子を有するポリマー層を形成させたのち、このポリマー層を脱ドープ処理し、次いでこれに直鎖状炭化水素基を有するビニル化合物を加え、重合させることにより、製造することができる。
【0018】
【発明の実施の形態】
本発明の遮光性粒子においては、母材粒子として金属酸化物および/または有機基を有する金属酸化物からなる球状粒子が用いられる。金属酸化物からなる球状粒子としては、例えばシリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニアおよびこれらの複合体などの球状粒子が挙げられるが、これらの中で、性能の点から、特にシリカからなる球状粒子が好適である。このシリカ球状粒子は公知の種々の方法で製造可能であるが、特に好ましい方法としては、テトラアルコキシシラン類を加水分解して、粒径分布がシャープな単分散シリカ微粒子を得る方法が挙げられる。
【0019】
一方、有機基を有する金属酸化物からなる球状粒子としては、例えば金属原子に結合した有機基を有する、ケイ素酸化物、アルミニウム酸化物、チタニウム酸化物、ジルコニウム酸化物およびこれらの複合体などの球状粒子が挙げられるが、これらの中で、性能の点から、特に有機基を有するケイ素酸化物からなる球状粒子が好適である。この有機基を有するケイ素酸化物球状粒子としては、例えば平均組成が一般式(III)
R4mSiO(4-m)/2 (III)
(式中、R4は直接ケイ素原子に結合する炭素原子を有する有機基を示し、mは0<m≦1を満たす数である。)
で示されるポリオルガノシロキサンからなる球状粒子を好ましく挙げることができる。上記一般式(III)において、mが1のものはポリオルガノシルセスキオキサンである。R4の有機基としては、例えば置換基を有する若しくは有しないアルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アリール基などが挙げられる。また、分子内のR4はたがいに同一でも異なっていてもよい。
【0020】
この一般式(III)で表されるポリオルガノシロキサンからなる球状粒子は、公知の種々の方法により製造することができるが、例えば一般式(IV)
R4kSiX1 4-k (IV)
(式中、R4は上記と同じであり、X1は水素原子、ハロゲン原子、水酸基、アルコキシ基またはアシロキシ基、kは0〜3の整数である。)
で示されるケイ素化合物の中から選ばれる少なくとも1種(ただし、kが0、2または3である化合物の単独使用は除く。)を加水分解し、縮合させることにより製造することができる。加水分解の方法としては、各種の方法、例えば特開昭60−13813号公報、同61−243828号公報、特開平1−145317号公報、同6−179751号公報、同6−263875号公報、特公平4−7033号公報、同8−25739号公報、同8−32553号公報などに記載されている方法を併用することができる。
【0021】
この有機基を有するケイ素酸化物からなる球状粒子の代表例としては、ポリオルガノシルセスキオキサン球状粒子を挙げることができる。
【0022】
本発明においては、母材粒子として、前記金属酸化物や有機基を有する金属酸化物からなる球状粒子を1種用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよいが、有機基を有する金属酸化物球状粒子は、一般に金属酸化物球状粒子に比べて低硬度であるので、例えばカラーフィルターへの粒子のめり込みなどが生じにくく、母材粒子として好適である。
【0023】
この金属酸化物球状粒子や有機基を有する金属酸化物球状粒子の粒径は、通常0.1〜30.0μmであるが、好ましくは0.5〜15.0μm、特に好ましくは、0.8〜12μmである。またこの球状粒子の粒度分布の変動係数(以下CV値という)は、2%以下のCV値の遮光性粒子が得られる値であればよく、概ね2%以下であるが、1.5%以下が特に好ましい。
【0024】
なお変動係数(CV値)は下式により求められる。
【0025】
CV値(%)=(粒径の標準偏差)÷(平均粒径)×100
本発明においては、この金属酸化物球状粒子や有機基を有する金属酸化物球状粒子の表面に、共役π電子を有するポリマーの脱ドープ体を含む遮光性の層を被覆するが、母材粒子とこの被覆層との密着性を良好なものとするために、所望により該金属酸化物球状粒子や有機基を含む金属酸化物球状粒子を、重合性カップリング剤により表面処理することができる。この重合性カップリング剤としては、金属酸化物球状粒子や有機基を含む金属酸化物球状粒子の表面にビニル基、アリル基、(メタ)アクリル基、(メタ)アクリロイル基、グリシジル基などの重合性官能基を導入しうるものであれば特に制限されず、例えば公知の重合性のシラン系、チタネート系、アルミニウム系、クロム系、ジルコニウム系カップリング剤などが挙げられる。母材粒子として、シリカ球状粒子や有機基を有するケイ素酸化物球状粒子を用いる場合には、重合性カップリング剤としては、特に重合性シリカ系カップリング剤が好適である。この重合性シリカ系カップリング剤の例としては、トリメトキシビニルシラン、トリエトキシビニルシラン、アリルトリエトキシシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、メチルビニルジクロロシラン、γ−(メタ)アクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリス(β−メトキシ)シラン、γ−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、N−β−(N−ビニルベンジルアミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、γ−メタクリルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリルオキシプロピルトリエトキシシラン、γ−メタクリルオキシプロピルメチルジエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、メチルトリ(グリシジルオキシ)シラン等が挙げられる。なお本明細書において(メタ)アクリル基はアクリル基およびメタクリル基の両者を、(メタ)アクリロイル基はアクリロイル基およびメタクリロイル基の両者を意味する。
【0026】
本発明においては、重合性カップリング剤は1種用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよく、また、その使用量は、金属酸化物球状粒子や有機基を有する金属酸化物球状粒子表面に導入された重合性官能基が、後記する共役π電子を有するポリマーを形成し得るモノマーと反応して該球状粒子表面に密着性に優れたポリマー被覆層を形成し得る量であればよいが、より具体的には表面処理時の仕込量で、球状粒子の全表面について重合性カップリング剤を単位面積当たり0.01〜10ミリモル/m2の処理量とするのが好ましく、特に0.1〜5ミリモル/m2とするのが好ましい。
【0027】
また、重合性カップリング剤として重合性シラン系カップリング剤を用いる場合には、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトラブトキシシラン等のアルコキシシランを併用してもよい。アルコキシシランを併用する場合、アルコキシシランを重合性シラン系カップリング剤と同時または重合性シラン系カップリング剤よりも先に仕込むのが好ましく、特に後者が好ましい。アルコキシシランの使用量は重合性シラン系カップリング剤に対するモル比で0.5以下が好ましく、特に0.25以下が好ましい。
【0028】
本発明においては、このようにして所望により重合性カップリング剤で表面処理された金属酸化物球状粒子や有機基を有する金属酸化物球状粒子の表面に、まず、共役π電子を有するポリマーの脱ドープ体を含む層からなる被覆層を形成させる。
【0029】
上記共役π電子を有するポリマーとしては、様々なものがあるが、例えば次に示すものを好ましく挙げることができる。
【0030】
(A)一般式(I)
【化3】
(式中、Rは芳香環のオルト位および/またはメタ位に置換されたC1〜C18アルキル基またはハロゲン原子、nは0〜2の整数を示し、xは、nが0のときは0〜4の整数、nが1のときは0〜2の整数、nが2のときは0または1であり、Rが複数ある場合、各Rはたがいに同一であっても異なっていてもよいし、また2つのRがたがいに結合してベンゼン環とともにナフタレン環を形成していてもよく、R1は水素原子又はC1〜C18アルキル基である。)
で示される芳香族アミン化合物を重合して得たポリマー、
(B)一般式(II)
【化4】
(式中、R2及びR3は、それぞれ水素原子、ハロゲン原子、C1〜C18アルキル基またはC1〜C18アルコキシ基であり、それらはたがいに同一であっても異なっていてもよく、Xは硫黄原子、酸素原子またはNH基である。)
で示される複素環式化合物を重合して得たポリマー、または
(C)上記一般式(I)および(II)で示される化合物よりなる群から選ばれる少なくとも2種の化合物を逐次的にまたは同時に重合して得たポリマー。
上記ポリマー(A)の具体例としては、アニリンまたはその誘導体の重合体、ナフチルアミンまたはその誘導体の重合体、フェニレンジアミンまたはその誘導体の重合体、ナフチレンジアミンまたはその誘導体の重合体、トリアミノベンゼンまたはその誘導体の重合体、トリアミノナフタレンまたはその誘導体の重合体などが挙げられる。
【0031】
ポリマー(B)の具体例として、ピロールまたはその誘導体の重合体、チオフェンまたはその誘導体の重合体、フランまたはその誘導体の重合体などが挙げられる。
【0032】
ポリマー(C)の具体例としては、アニリンまたはその誘導体とフェニレンジアミンまたはその誘導体とを逐次的にまたは同時に重合して得たポリマー、ピロールまたはその誘導体とフェニレンジアミンまたはその誘導体とを逐次的にまたは同時に重合して得たポリマーなどが挙げられる。なお本明細書において「逐次的に重合」とは一のモノマーを先ず重合させたのち、他のモノマーを次いで重合させることを意味し、「同時に重合」とは全モノマーを一緒に共重合させることを意味する。
【0033】
上記共役π電子を有するポリマーはその分子構造に起因する着色性(ポリアニリンは緑色〜深緑色、ポリピロールは黒色、ポリm−フェニレンジアミンは焦げ茶色、ポリα−ナフチルアミンは黒色、ポリアニリン/ポリm−フェニレンジアミンは黒色など)を有しており、従って遮光性を有する。しかしドープ状態の共役π電子を有するポリマーは導電性を有するため、脱ドープ処理して脱ドープ体とすることが必要である。
【0034】
共役π電子を有するポリマーの脱ドープによる脱ドープ体の形成は、アンモニア、第1、第2もしくは第3アルキルアミン(例えばモノ、ジ、トリエチルアミン)、ヒドラジンなどの電子供与体を用いて行なわれるが、その詳細は、後記する遮光性粒子の製造方法において説明する。
【0035】
ドープ状態の共役π電子を有するポリマーと異なり、脱ドープ処理により得られた脱ドープ体は、絶縁性を有している。また色の変化はあるが、脱ドープ体も着色性(ポリアニリンの脱ドープ体は紺色、ポリピロール脱ドープ体は黄土色、ポリm−フェニレンジアミンの脱ドープ体は茶色、ポリα−ナフチルアミンの脱ドープ体は焦げ茶色、ポリアニリン/ポリm−フェニレンジアミンの脱ドープ体は黒色など)、すなわち遮光性を有している。
【0036】
なお、共役π電子を有するポリマー層を逐次的重合反応により2層以上形成させる場合には、各層毎に脱ドープ処理するのが望ましい。
【0037】
本発明の遮光性粒子においては、この共役π電子を有するポリマーの脱ドープ体を含む被覆層の厚さは、母材球状粒子の粒径にもよるが、通常は0.01〜1μmの範囲、好ましくは0.05〜0.5μmの範囲である。
【0038】
本発明の遮光性粒子においては、上記共役π電子を有するポリマーの脱ドープ体を含む被覆層の上に、さらに直鎖状炭化水素基を有するビニル化合物のポリマーからなる被覆層が設けられるが、遮光性粒子としての性能をさらに向上させるために、所望により両層の間に架橋樹脂被膜を介在させてもよい。
【0039】
また、この脱ドープ体を含む被覆層は、その上に設けられる直鎖状炭化水素基を有するビニル化合物のポリマーからなる層または架橋樹脂被膜との密着性を向上させるために、所望により表面処理して、その被覆層の表面に重合性官能基を導入してもよい。この際用いられる表面処理剤としては、該被覆層の表面に重合性官能基を導入しうるものであればよく、特に制限はないが、例えばハロゲン化オレフィンなどを好ましく挙げることができる。
【0040】
上記架橋樹脂被膜の具体例としては、スチレン系樹脂、アクリル系樹脂およびメタクリル系樹脂からなる群より選択された1種または複数種からなる架橋樹脂被膜であって、多官能性ビニルモノマーの割合が仕込比率で、通常1〜100モル%、好ましくは5〜100モル%、特に好ましくは8〜70モル%である単官能性ビニルモノマーと多官能性ビニルモノマーとの混合物を分散重合法により重合させることで得た架橋樹脂被膜が挙げられる。
【0041】
前記単官能性ビニルモノマーの具体例としては、ビニル芳香族炭化水素(スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトリエン、α−クロロスチレン、o−クロロスチレン、m−クロロスチレン、p−クロロスチレン、p−エチルスチレン等)、アクリル酸、アクリル酸のエステル(メチルアクリレート、エチルアリクレート、プロピルアクリレート、ブチルアクリレート、ヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、β−ヒドロキシエチルアクリレート、β−アミノエチルアクリレート、N,N−ジメチルアミノエチルアクリレート、γ−ヒドロキシプロピルアクリレート等)、メタクリル酸、メタクリル酸のエステル(メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、プロピルメタクリレート、ブチルメタクリレート、ヘキシルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、β−ヒドロキシエチルメタクリレート、β−アミノエチルメタクリレート、N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート、γ−ヒドロキシプロピルメタクリレート、グリシジルメタクリレート等)、およびビニルシラン(ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメチルシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン等)が挙げられる。
【0042】
また、前記多官能性ビニルモノマーの具体例としては、ジビニルベンゼン、多価アルコールのアクリレート(エチレングリコールジアクリレート、グリセリンジアクリレート、グリセリントリアクリレート等)、および多価アルコールのメタクリレート(エチレングリコールジメタクリレート、グリセリンジメタクリレート、グリセリントリメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート等)が挙げられる。
【0043】
この架橋樹脂被膜の厚さは、母材球状粒子の粒径にもよるが、通常0.01〜0.5μm、好ましくは0.02〜0.2μmの範囲である。
【0044】
一方、最外層のポリマー被覆層の形成に用いられる直鎖状炭化水素基を有するビニル化合物としては、直鎖状炭化水素基を有し、かつ重合性のビニル化合物であればよく特に制限はないが、例えば(メタ)アクリル酸のC8〜C20直鎖状アルキルエステル、具体的には(メタ)アクリル酸n−デシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ミリスチル、(メタ)アクリル酸パルミチル、(メタ)アクリル酸ステアリルなどが、また炭素数10〜22の直鎖状α−オレフィン、具体的にはn−ドデセン−1、n−テトラデセン−1、n−ヘキサデセン−1、n−オクタデセン−1などが挙げられる。これらの中で、(メタ)アクリル酸のC8〜C20直鎖状アルキルエステルが好適である。これらのビニル化合物は単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0045】
本発明の遮光性粒子においては、この直鎖状炭化水素基を有するビニル化合物のポリマーからなる被覆層の厚さは、母材球状粒子の粒径にもよるが、通常は0.01〜0.5μm、好ましくは0.05〜0.3μmの範囲である。
【0046】
このような構成の本発明の遮光性粒子の粒径は、通常は0.8〜12μm、好ましくは1.0〜10μm、特に好ましくは1.4〜8μmの範囲である。また、この遮光性粒子の粒度分布の変動係数(CV値)は、2%以下が好ましく、特に1.5%以下が好適である。
【0047】
本発明の遮光性粒子は、遮光性、絶縁性、液晶物質非損傷性を有する上、液晶分子の異常配向やカラーフィルターへの粒子のめり込みなどを防止することができ、液晶表示装置用スペーサーなどとして好ましく用いられる。
【0048】
次に、この遮光性粒子を製造するための本発明の方法について説明する。
本発明においては、金属酸化物球状粒子や有機基を有する金属酸化物球状粒子が、母材粒子として用いられる。この母材粒子は、その表面に設けられる被覆層との密着性を向上させるために、所望により重合性カップリング剤で表面処理されたものを用いるのが有利である。この重合性カップリング剤による表面処理は、次のようにして行なわれる。まず、超音波振動等を利用して、球状粒子をメタノール、エタノール、2−プロパノール等のアルコール溶媒中に分散させて所望の分散液を得る。このときの溶媒は1種類のアルコールであってもよいし、複数種のアルコールからなる混合物であってもよい。アルコール溶媒の量は球状粒子の重量に対して5〜30倍が好適である。このようにして得られた分散液に、球状粒子の重量に対して2〜30倍程度の5〜30重量%のアンモニア水を添加し、さらに、好ましくは重合性シラン系カップリング剤を添加する。必要に応じて少量(重合性シラン系カップリング剤に対するモル比で0.5以下)のアルコキシシランを好ましくは重合性シラン系カップリング剤の添加前または添加時に添加してもよい。アルコキシシランを添加する目的は、加水分解速度の速いアルコキシシランを共存させることで球状粒子表面への重合性シランの結合量を均一化することにある。重合性シラン系カップリング剤およびアルコキシシランの具体例は、前述した本発明の遮光性粒子の説明の中で例示したとおりである。この後、分散液の液温を20〜80℃程度に保ちつつ1〜24時間程度撹拌する。これにより、球状粒子が重合性カップリング剤により表面処理され、球状粒子の表面には重合性官能基が導入される。
【0049】
次に、このようにして所望により重合性カップリング剤で表面処理された金属酸化物球状粒子や有機基を有する金属酸化物球状粒子を含む分散液に、共役π電子を有するポリマーを形成し得るモノマーを加え酸化重合させて、該球状粒子の表面にドープ状態の共役π電子を有するポリマー層を形成させる。
【0050】
このポリマー層の形成には、酸化重合が採用され、基本的にはPOLYMER、1991年、第32巻、第13号、第2325〜2330頁に記載の方法によって行なわれる。しかしこの文献の方法では、シリカ粒子を何ら表面処理することなくそのまま酸化触媒等を含む媒体に分散させ、得られた分散液にアニリンやピロールなどのモノマーを注入して酸化重合を行なっているが、この文献記載の方法では、(i) 重合中にシリカ粒子同士が凝集してしまい、ポリマー被覆層を有する単分散のシリカ粒子を得ることができない、(ii) シリカ粒子表面に均一なポリマー層を形成しにくく、また不均一なポリマー層の付着力が小さく、剥離しやすい、(iii) シリカ粒子が例えば1μmを超える粒径を有する大径粒子の場合には、シリカ粒子上にポリマー層を殆んど形成できない、などの欠点を有する。
【0051】
このような欠点を改良するために、本発明においては、前記したように重合性カップリング剤で表面処理された金属酸化物球状粒子や有機基を有する金属酸化物球状粒子が好ましく用いられる。このような表面処理された球状粒子を用いることにより、球状粒子同士の凝集が防止され、また球状粒子とポリマー層との間に重合性カップリング剤が介在するので、球状粒子が大径であっても均一かつ密着性に優れたポリマー層を球状粒子上に形成できる。
【0052】
共役π電子を有するポリマーを形成しうるモノマーとしては、上記一般式(I)で示される芳香族アミン化合物および一般式(II)で示される複素環式化合物などが好ましく挙げられる。
【0053】
そして、一般式(I)で示される芳香族アミン化合物から選ばれる1種のモノマーを単独重合することにより、上記ポリマー(A)が得られる。また、一般式(II)で示される複素環式化合物から選ばれる1種のモノマーを単独重合することにより、上記ポリマー(B)が得られる。さらに、一般式(I)で示される芳香族アミン化合物および一般式(II)で示される複素環式化合物からなる群より選ばれる少なくとも2種のモノマーを逐次的にまたは同時に重合することによりポリマー(C)が得られる。ポリマー(C)の製造において用いられるモノマーは、同一モノマー群の中から2種以上選択してもよく、異種モノマー群から各1種以上選択してもよい。例えば一般式(I)で示される芳香族アミン化合物から2種以上のモノマーを選択することもでき、また、一般式(I)で示される芳香族アミン化合物から1種のモノマーを、一般式(II)で示される複素環式化合物から1種のモノマーを選択することができる。
【0054】
酸化重合における分散液中のモノマーの濃度は臨界的ではないが、好ましくは0.1〜500m mol/リットルの範囲であり、特に好ましくは1〜200m mol/リットルの範囲である。
【0055】
分散液の媒体としては、一般の酸化重合に用いられる溶媒であれば特に限定されないが、具体的には水、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコールなどのアルコール類、アセトニトリル、ベンゾニトリル等のニトリル系溶媒等が挙げられる。さらに、これらの溶媒を複数混合して用いてもよく、また溶媒に塩酸、硫酸、硝酸、ハロゲン化水素類、過塩素酸等のプロトン酸を0.01〜10mol/リットル添加したものを媒体として用いることも可能である。
【0056】
重合時の酸化剤としては、モノマーを酸化させるものであれば特に限定されないが、具体的には三塩化鉄等の3価鉄の塩、塩化第二銅を始めとした2価銅の塩、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウムなどの過硫酸塩、過酸化水素などを挙げることができる。酸化剤の添加量は、モノマーに対して好ましくは0.01〜100倍モルの範囲であり、より好ましくは0.1〜10倍モルの範囲である。
【0057】
本発明の方法の特に好ましい態様によれば、分散液に分散安定剤を加えることにより、母材球状粒子同士の凝集がポリマー層の形成前、形成中および形成後において、より一層防止され、また球状粒子およびモノマーの分散状態もより均一に保持されるので、均一なポリマー被覆層を有する単分散球状粒子を得ることができる。
【0058】
粒子同士が凝集せずに均一なポリマーを形成させるための分散安定剤としては、ポリビニルピロリドン、ポリビニルメチルエーテル、ポリエチレンイミン、ポリアクリル酸、ポリビニルアルコール、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、アクリル樹脂、ポリカーボネート等が挙げられる。
【0059】
分散安定剤の添加量は分散液に対して0.02〜20重量%が好ましく、0.2〜6重量%が特に好ましい。0.02重量%より添加量が少ないと母材球状粒子が凝集・合着して、均一な粒子径分布の遮光性スペーサー粒子を得ることができなくなることがある。また20重量%より添加量が多くなると、共役π電子を有するポリマーを均一に被覆することができにくくなり、着色した微粒子を得ることができなくなることがある。
【0060】
本発明の遮光性粒子の製造方法においては、前記酸化重合工程の後、得られたポリマー層を脱ドープしてポリマーの脱ドープ体を含む層とすることが必要である。この脱ドープ処理は、電子供与体を用いて常法により行なうのが好ましい。電子供与体としては、アンモニア、第1、第2もしくは第3アルキルアミン、ヒドラジン及びそれらの誘導体などが挙げられる。
【0061】
この脱ドープ処理により得られたポリマーの脱ドープ体層は、ドープ状態のポリマー層の色と異なるが着色性を有しており、遮光性を有する。またこのポリマー脱ドープ体層は、共役π電子を有するポリマーが脱ドープされた状態にあり、絶縁性を有する。
【0062】
共役π電子を有するポリマー層を逐次重合反応により2層以上形成させる場合には、まず、共役π電子を有するポリマー層を形成したのち、上記の脱ドープ処理を施し、次いでその上に共役π電子を有する別のポリマー層を形成したのち、同様に脱ドープ処理を施す、といった各層毎に脱ドープ処理を施すのが有利である。
【0063】
また、金属酸化物球状粒子や有機基を有する金属酸化物球状粒子を重合性カップリング剤で表面処理した場合、上記ポリマーの脱ドープ体層は、重合性カップリング剤を介して、母材球状粒子に化学的に結合しているため、母材球状粒子からの剥離・溶出が実質的に起こらない。
【0064】
またこのポリマー脱ドープ体層が、フェニレンジアミンなどの多官能アミンを用いて得られた場合には、架橋構造を取り得ることから被覆耐久性が向上すると共に、被覆表面の平滑性が向上する。またアニリンなどの単官能アミンと比較してドープされにくいため、絶縁信頼性が更に向上する。
【0065】
なお、このようにして、金属酸化物球状粒子や有機基を有する金属酸化物球状粒子の表面に、共役π電子を有するポリマーの脱ドープ体を含む層が被覆されたものを被覆粒子Iと称する。
【0066】
次に、この被覆粒子Iの脱ドープ体層を、所望により、ハロゲン化オレフィンなどを用いて表面処理し、該ドープ体層の表面に重合性官能基を導入する。
【0067】
本発明においては、この被覆粒子Iの脱ドープ体層の上に、所望により架橋樹脂被膜が形成されるが、この架橋樹脂被膜は、例えば次のようにして形成するこどができる。
【0068】
前記被覆粒子Iを、分散安定剤を用いて極性有機溶媒中に分散させたのち、この分散液に、多官能性ビニルモノマーの割合が仕込比率で、通常1〜100モル%、好ましくは5〜100モル%、特に好ましくは8〜70モル%である単官能性ビニルモノマーと多官能性ビニルモノマーとの混合物を加えて溶解させ、ラジカル重合開始剤の存在下に、該モノマー混合物を重合させることにより、該被覆粒子Iの脱ドープ体層の上に、架橋樹脂被膜が形成される。この際用いられる単官能性ビニルモノマー及び多官能性ビニルモノマーの具体例は、前述した本発明の遮光性粒子の説明の中で例示したとおりである。また用いられる分散安定剤の具体例としては、ポリビニルピロリドン、ポリビニルメチルエーテル、ポリエチレンイミン、ポリアクリル酸、ポリビニルアルコール、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース等が挙げられる。また、極性有機溶媒の具体例としては、2−プロパノール、ブタノール、アミンアルコール、ベンジンアルコール等のアルコール類や、酢酸エチル等のエステル類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、アセトニトリル等のニトリル類、ホルムアミド、ジメチルホルムアミド等のアミド類が挙げられる。さらに、ラジカル重合開始剤の具体例としては、2,2′−アゾビスイソブチロニトリルなどのアゾ系重合開始剤や、過酸化ベンゾイルなどの過酸化物が挙げられる。
【0069】
ラジカル重合開始剤の量は、モノマー混合物の量に対して1〜50モル%が好ましく、特に10〜30モル%が好ましい。また、モノマー混合物の重合は、モノマー混合物およびラジカル重合開始剤が添加された後の分散液の液温を20〜80℃程度に保ちながら、該分散液を1〜24時間程度撹拌することにより、行うことができる。なお重合反応は、反応液を放冷した後に、または放冷することなくそのまま、所定量の有機溶媒(メタノール,2−プロパノール等のアルコール類、アセトン、N−メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド等)または有機溶媒と水との混合溶媒に投入する等の常法により終了させることができる。
【0070】
このようにして重合反応終了後、反応液を静置して脱ドープ体層の上に架橋樹脂被膜が形成された球状粒子を沈降させ、上澄み液を除去したのちに、適当な溶媒を用いて洗浄することにより、金属酸化物球状粒子や有機基を有する金属酸化物球状粒子の表面に、共役π電子を有するポリマーの脱ドープ体を含む層が被覆され、さらにその上に架橋樹脂被膜が設けられたもの(被覆粒子IIと称す)が得られる。
【0071】
次に、本発明においては、前記の被覆粒子Iの脱ドープ体層の上に、または被覆粒子IIの架橋樹脂被膜の上に、直鎖状炭化水素基を有するビニル化合物のポリマーからなる層を形成させる。このポリマー層は、例えば次のようにして形成することができる。
【0072】
前記の被覆粒子Iまたは被覆粒子IIを、分散安定剤を用いて極性有機溶媒中に分散させたのち、この分散液に、直鎖状炭化水素基を有するビニル化合物を加えて溶解させ、ラジカル重合開始剤の存在下に、該ビニル化合物を重合させることにより、被覆粒子Iの脱ドープ体層の上に、または被覆粒子IIの架橋樹脂被膜の上に、直鎖状炭化水素基を有するビニル化合物のポリマーからなる層が形成される。この際、形成するポリマーの液晶物質に対する耐性を向上させ、液晶分子の異常配向をより効果的に防止するために、該ビニル化合物とともに、多官能性ビニルモノマーを適宜量併用するのが好ましい。
【0073】
前記の分散安定剤、極性有機溶媒、ラジカル重合開始剤および多官能性ビニルモノマーの具体例は、それぞれ前述した架橋性樹脂被膜の形成の説明の中で例示したとおりである。また、直鎖状炭化水素基を有するビニル化合物の具体例は、前述した本発明の遮光性粒子の説明の中で例示したとおりである。
【0074】
被覆粒子Iまたは被覆粒子IIを分散安定剤を用いて極性有機溶媒中に分散させる方法に特別の制限はないが、例えば下記(i)または(ii)の方法により所望の分散液を得ることができる。
【0075】
(i)まず、極性有機溶媒に分散安定剤を溶解させて、分散安定剤の濃度が数重量%の溶液を調製する。次に、この溶液に被覆粒子Iまたは被覆粒子IIを加え、超音波振動等を利用して前記粒子を分散させて目的とする分散液を得る。このときの前記粒子の添加量は、極性有機溶媒に対して数重量%とする。
【0076】
(ii)まず、極性有機溶媒に被覆粒子Iまたは被覆粒子IIを加え、超音波振動等を利用して前記粒子を分散させる。このときの前記粒子の添加量は、最終的に得られる分散液において前記粒子の割合が極性有機溶媒に対して数重量%になる量とする。また、別途、極性有機溶媒に分散安定剤を溶解させた溶液を調製する。この溶液における分散安定剤の濃度は、最終的に得られる分散液において分散安定剤の割合が極性有機溶媒に対して数重量%になる量とする。そして、前記粒子を分散させた極性有機溶媒と前記分散安定剤を溶解させた極性有機溶媒とを混合して、目的とする分散液を得る。
【0077】
また、直鎖状炭化水素基を有するビニル化合物および所望により用いられる多官能性ビニルモノマーからなる原料モノマーの添加は、前記分散液にラジカル重合開始剤を添加した後に行ってもよいし、ラジカル重合開始剤の添加と同時に行ってもよい。原料モノマーの添加に先だって前記分散液にラジカル重合開始剤を添加する場合、この添加は例えば前記分散液にラジカル重合開始剤をそのまま投入することにより行うことができる。また、前記分散液への原料モノマーの添加をラジカル重合開始剤の添加と同時に行う場合、この添加は例えば原料モノマーとラジカル重合開始剤との混合物を前記分散液に投入することにより行うことができる。いずれの場合においても、原料モノマーの添加量はこれを添加した後の分散液における当該原料モノマーの濃度が0.5重量%以上になる量とすることが好ましく、特に1.0〜10重量%の範囲内となる量が好ましい。一方、ラジカル重合開始剤の添加量は、いずれの場合においても原料モノマーの添加量に対して1〜50モル%とすることが好ましく、特に10〜30モル%とすることが好ましい。
【0078】
重合は、原料モノマーおよびラジカル重合開始剤が添加された後の分散液の液温を20〜80℃程度に保ちながら、該分散液を1〜24時間程度撹拌することにより、行うことができる。この重合により、被覆粒子Iの脱ドープ体層上に、または被覆粒子IIの架橋樹脂被膜上に所望のポリマー層が形成される。このポリマー層の厚さは、分散液中の原料モノマーの濃度やラジカル重合開始剤の濃度、重合時間などを適宜変更することにより制御することができる。なお重合反応は、反応液を放冷した後に、または放冷することなくそのまま、所定量の有機溶媒(メタノール、2−プロパノール等のアルコール類、アセトン、N−メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド等)または有機溶媒と水との混合溶媒に投入する等の常法により終了させることができる。
【0079】
重合反応終了後は静置して、最外層に該ポリマー層を有する被覆粒子IまたはIIを沈降させ、上澄み液を除去した後に、有機溶媒(メタノール、2−プロパノール等のアルコール類、アセトン、N−メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド等)または有機溶媒と水との混合溶媒を洗浄液として加えてから液中の該被覆粒子を再び分散させ、その後、被覆粒子の沈降、上澄み液の除去を順次行うことで洗浄処理する。このとき、洗浄液の添加、液中の被覆粒子の再分散および沈降、ならびに上澄み液の除去は、透明な上澄み液が得られるまで必要回数繰り返し行う。また、沈降時間を短縮するため遠心分離機を用いることもできる。
【0080】
なお、前記の分散液の調製方法、重合方法および後処理方法は、前述した架橋樹脂被膜の形成においても適用することができる。
【0081】
また、本発明においては、このようにして得られた最外層に該ポリマー層を有する被覆粒子IまたはIIに対し、前記の分散液の調製操作、重合操作および後処理操作を、該ポリマー層が所望の厚さになるまで、順次繰り返し施すことができる。
【0082】
最外層に所望の厚さの直鎖状炭化水素基を有するビニル化合物のポリマーからなる層が形成された被覆粒子IまたはIIは、水で十分に洗浄したのち、凍結乾燥などの方法で乾燥処理することにより、本発明の遮光性粒子が得られる。
【0083】
【実施例】
次に本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明は、これらの方法によってなんら限定されるものではない。
【0084】
製造参考例(メチル基を有するケイ素酸化物の製造)
温度計、還流器および攪拌機を備えた5リットルセパラブルフラスコに純水3200mlと25wt%アンモニア水0.62mlを入れ、30rpmでゆっくり撹拌し、液温を30℃に保持した。その後液面が落ち着いたところで、メチルトリメトキシシラン280gを器壁に伝わらせて添加した。この際、上層がメチルトリメトキシシラン層、下層がアンモニア水溶液層の2層に分かれた。なお、メチルトリメトキシシラン層とアンモニア水溶液層との接触面積は254.5cm2であった。液温を30℃に保持しながら、ゆっくり撹拌することで、メチルトリメトキシシランが徐々に加水分解され、メチルトリメトキシシラン層がなくなると同時に、25wt%アンモニア水15mlを加え、液温を50℃まで昇温し、ゆっくり撹拌しながらこの温度で10時間保持した。
【0085】
反応終了後は静置して上澄液を除去したのち、メタノールで十分に置換後、メタノールを留去して、乾燥したポリメチルシルセスキオキサン(以下、PMSOと略記する)粉末を得た。
【0086】
このようにして得られたPMSO粉末は、平均粒子径4.3μm、CV値1.2%の単分散PMSO微粒子からなる集合体であった。
【0087】
実施例1
(1)重合性シラン系カップリング剤によるシリカ粒子の表面処理
単分散シリカ微粒子(平均粒子径3.35μm、CV値0.81%)の粉末98gを内容積5リットルのフラスコに入れ、これにイソプロピルアルコール617gを加えた後、超音波振動を加えて分散液を得た。この分散液にメタノール617gと25wt%アンモニア水367.5gを添加し液温30℃で30分間撹拌して混合液を得た。この混合液に重合性シラン系カップリング剤であるγ−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン42.14g(0.17モル)とアルコキシシランの1つであるテトラエトキシシラン5.49g(0.026モル)の混合物を15分間かけて添加した。添加終了後、得られた混合液の液温を60℃まで昇温させてから、この混合液を10時間撹拌しながら表面処理を行った。表面処理終了後、液を静置してシリカ粒子を沈降させ、上澄み液を除去して沈降粒子(表面処理後のシリカ粒子)を得た。この粒子についてメタノール中で沈降、デカンテーションを繰り返すことにより洗浄を行い、メタノールを除去した後に150℃のオーブン中で1時間乾燥した。このようにして表面に重合性官能基が導入されたシリカ微粒子の粉末を得た。
【0088】
(2)ポリメタフェニレンジアミン脱ドープ体/ポリアニリン脱ドープ体積層被覆シリカ微粒子の粉末の製造
分散安定剤であるポリビニルピロリドンK−90(和光純薬工業社製:分子量40万)12gを1.2N塩酸水溶液600mlに溶解させた溶液に、(1)で得られた重合性官能基導入シリカ微粒子の粉末30gを添加し、超音波振動を与えて重合性官能基導入シリカ微粒子を良く分散させて分散液を得た。この分散液にメタフェニレンジアミン16.95gを加えて撹拌した後、酸化剤としてペルオキソ二硫酸アンモニウム37.5gを添加し、室温で撹拌しながら酸化重合反応を行った。2時間後、反応液を水500ml中に注いで酸化重合反応を終了させた。
【0089】
混合液をそのまま静置して、表面にポリメタフェニレンジアミン被覆層を有するシリカ微粒子を沈降させた。沈降後、上澄み液を除去し、まず水800mlを洗浄液として添加し撹拌して前記粒子を洗浄液に分散させた。次いで、ポリメタフェニレンジアミン被覆シリカ微粒子の沈降、上澄み液の除去の一連の操作を3回行った。その後、電子供与体である2wt%アンモニア水500mlを添加し、室温で30分間撹拌してポリメタフェニレンジアミンを脱ドープさせた。撹拌終了後、液をそのまま静置して、表面にポリメタフェニレンジアミンの脱ドープ体からなる被覆層を有するシリカ微粒子を沈降させた。沈降後、上澄み液を除去し、メタノール800mlを洗浄液として添加し、撹拌して該粒子を洗浄液中に分散させた。次いで、ポリメタフェニレンジアミンの脱ドープ体被覆シリカ微粒子の沈降、上澄み液の除去の一連の操作を5回行うことにより洗浄を行った。洗浄後メタノールを留去させたのち、100℃で1時間乾燥を行った。このようにして得られたポリメタフェニレンジアミンの脱ドープ体被覆シリカ微粒子の粉末は焦げ茶色を呈しており、走査型電子顕微鏡観察によると、個々の粒子間に合着はなく、平均粒子径は3.46μm(CV値0.79%)で、ポリメタフェニレンジアミンの脱ドープ体が0.06μmの厚さで均一に被覆されていた。
【0090】
次に、ポリビニルピロリドン(K−90)24gを1.2N塩酸水溶液1200mlに溶解させた溶液に、上記で得られたポリメタフェニレンジアミンの脱ドープ体被覆粒子の粉末30gを添加し、超音波振動を与えて該微粒子を良く分散させて分散液を得た。この分散液に酸化剤としてペルオキソ二硫酸アンモニウム12gを加えてよく撹拌したのち、アニリン4.8mlを添加し、室温で撹拌しながら酸化重合反応を行った。2時間後、反応液を水1000ml中に注いで酸化重合反応を終了させた。
【0091】
混合液をそのまま静置して、表面にポリアニリン被覆層を有するシリカ微粒子を沈降させた。沈降後、上澄み液を除去し、まず水800mlを洗浄液として添加し撹拌して前記粒子を洗浄液に分散させた。次いで、表面にポリアニリン被覆層を有するシリカ微粒子の沈降、上澄み液の除去の一連の操作を3回行った。その後、電子供与体である2wt%アンモニア水800mlを添加し、室温で30分間撹拌してポリアニリンを脱ドープさせた。撹拌終了後、液をそのまま静置して、表面にポリアニリンの脱ドープ体からなる被覆層を有するシリカ微粒子を沈降させた。沈降後、上澄み液を除去し、メタノール800mlを洗浄液として添加し、撹拌して該粒子を洗浄液中に分散させた。次いで、表面にポリアニリンの脱ドープ体被覆層を有するシリカ微粒子の沈降、上澄み液の除去の一連の操作を5回行うことにより洗浄を行った。洗浄後メタノールを留去させたのち、100℃で1時間乾燥を行った。このようにして得られた表面にポリアニリンの脱ドープ体被覆層を有するシリカ微粒子の粉末は黒色を呈しており、走査型電子顕微鏡観察によると、個々の粒子間に合着はなく、平均粒子径は3.65μm(CV値1.02%)で、ポリアニリンの脱ドープ体が0.10μmの厚さで均一に被覆されていた。
【0092】
(3)3−ブロモ−プロペンによるポリメタフェニレンジアミン脱ドープ体/ポリアニリン脱ドープ体積層被覆シリカ微粒子の表面処理
上記(2)で得られたポリメタフェニレンジアミン脱ドープ体/ポリアニリン脱ドープ体積層被覆シリカ微粒子の粉末30gを500ml三角フラスコに入れ、これに3−ブロモ−1−プロペン150gを添加したのち、超音波振動を与えて分散させた。その後、この溶液を液温30℃で4時間撹拌しながら表面処理を行った。表面処理終了後、メタノール200mlを添加し、30分間撹拌後、この液を静置して表面処理ポリメタフェニレンジアミン脱ドープ体/ポリアニリン脱ドープ体積層被覆シリカ微粒子を沈降させ、上澄み液を除去して沈降粒子を得た。この粒子について、メタノール中で沈降、デカンテーションを繰り返すことで洗浄を行い、洗浄液を最後に2−プロパノールに置換し、上澄み液を除去した。このようにして、表面に重合性官能基が導入されたポリメタフェニレンジアミン脱ドープ体/ポリアニリン脱ドープ体積層被覆シリカ微粒子の粉末を得た。
【0093】
(4)ポリメタフェニレンジアミン脱ドープ体/ポリアニリン脱ドープ体/架橋ポリメタクリル酸メチル被覆シリカ微粒子の粉末の製造
2−プロパノール337.5gにポリビニルピロリドン(K−90)30gを溶解させた溶液に、上記(3)で得られた表面に重合性官能基が導入されたポリメタフェニレンジアミン脱ドープ体/ポリアニリン脱ドープ体積層被覆シリカ微粒子の粉末30gを加え、超音波振動を利用して該微粒子を良く分散させて分散液を得た。この分散液に2,2′−アゾビスイソブチロニトリル2.4gを加えたのち、メタクリル酸メチル4g(0.04モル)とジメタクリル酸エチレングリコール4g(0.02モル)との混合液からなるモノマー混合物を添加し、溶解させた。その後、分散液の液温を60℃にまで昇温させ、この温度で分散液を撹拌しながら重合反応を行った。
【0094】
8時間後に反応液を放冷したのち、2−プロパノールとメタノールとの1:1(体積比)混合液1000cc中に注いで重合反応を終了させた。この重合反応により、表面に架橋ポリメタクリル酸メチル(PMMA)の被覆層を有するシリカ微粒子が生成した。また、この反応液中には、重合反応に伴って副生した多数の架橋樹脂微粒子が懸濁状態で副生していた。
【0095】
次に、上記混合液を静置して、表面に架橋PMMA被覆層を有するシリカ微粒子を沈降させたのち、上澄み液を除去し、メタノール500ccを洗浄液として加え撹拌して該微粒子を分散させた。次いで、表面に架橋PMMA被覆層を有するシリカ微粒子の沈降、上澄み液の除去を順次行うことで洗浄を行った。この洗浄操作を更に4回くり返し行ったところ、透明な上澄み液が得られるまでになったので、最後に水で洗浄してから凍結乾燥を行った。
【0096】
このようにして得られたポリメタフェニレンジアミン脱ドープ体/ポリアニリン脱ドープ体/架橋PMMA被覆シリカ微粒子の粉末は、これを構成する個々の粒子間に合着は認められなかった。この粉末から約70子の粒子を無作為に抽出して走査型電子顕微鏡で観察したところ、個々の粒子は実質的に真球であり、これらの粒子は表面に架橋PMMAからなる被膜が隙間なく形成されたものであることが確認された。また、この粒子は平均粒子径が3.75μmで、CV値は1.0%であった。
【0097】
(5)ポリメタフェニレンジアミン脱ドープ体/ポリアニリン脱ドープ体/架橋PMMA/架橋ポリメタクリル酸ラウリル被覆シリカ微粒子の粉末の製造
メタノール319.7gにポリビニルピロリドン(K−90)47.8gを溶解させた溶液に、上記(4)で得られた被覆微粒子の粉末30gを加えたのち、室温で超音波振動を利用して該微粒子を5分間分散させ、分散液を得た。この分散液に2,2′−アゾビスイソブチロニトリル2.74gを加えたのち、メタクリル酸ラウリル5.0gとジメタクリル酸エチレングリコール1.9gとからなるモノマー混合物を添加し、溶解させた。その後、分散液の液温を60℃にまで昇温させ、この温度で分散液を撹拌しながら重合反応を行った。
【0098】
8時間後に反応液を放冷したのち、メタノール1000cc中に注いで重合反応を終了させた。この重合反応により、表面に架橋ポリメタクリル酸ラウリルの被覆層を有するシリカ微粒子が生成した。
【0099】
次いで、上記混合液を静置して、表面に架橋ポリメタクリル酸ラウリルの被覆層を有するシリカ微粒子を沈降させたのち、上澄み液を除去し、メタノール500ccを洗浄液として加え撹拌して該微粒子を分散させた。次いで、表面に架橋ポリメタクリル酸ラウリルの被覆層を有するシリカ微粒子の沈降、上澄み液の除去を順次行うことで洗浄を行った。この洗浄操作をさらに4回繰り返し行った。この被覆シリカ微粒子の平均粒子径は3.80μmで、CV値は1.1%であった。
【0100】
次に、この被覆シリカ微粒子に対して、上記の架橋ポリメタクリル酸ラウリルの被覆操作におけるメタクリル酸ラウリルの量を10.0g、ジメタクリル酸エチレングリコールの量を3.9gに変えた以外は、同様にして架橋ポリメタクリル酸ラウリルの被覆操作を行った。さらに、上記と同様にして、表面に架橋ポリメタクリル酸ラウリルの被覆層を有するシリカ微粒子の沈降、上澄み液の除去を行うことで洗浄する操作を合計5回繰り返したのち、水で充分に洗浄後、凍結乾燥を行い、ポリメタフェニレンジアミン脱ドープ体/ポリアニリン脱ドープ体/架橋PMMA/架橋ポリメタクリル酸ラウリル被覆シリカ微粒子(遮光性粒子)の粉末を得た。この被覆シリカ微粒子の平均粒子径は3.85μmで、CV値は1.2%であった。
【0101】
実施例2
実施例1において、単分散シリカ微粒子(平均粒子径3.35μm、CV値0.81%)の粉末の代わりに、製造参考例で得られた単分散PMSO微粒子(平均粒子径4.3μm、CV値1.2%)の粉末を用いた以外は、実施例1と同様にして、ポリメタフェニレンジアミン脱ドープ体/ポリアニリン脱ドープ体/架橋PMMA/架橋ポリメタクリル酸ラウリル被覆PMSO微粒子(遮光性粒子)の粉末を得た。この被覆PMSO微粒子の平均粒子径は4.8μmで、CV値は1.45%であった。
【0102】
応用例1
ITO(インジウムチンオキシド)膜付きガラス基板(30×24×1.1mm)2枚を用意し、このITO膜上にポリイミド配向膜を形成したのち、この2枚の基板で液晶が240°ツイストとなるようにラビングを行った。この配向膜がコートされた一方の基板の配向膜が設けられている側の面に実施例1で得られた遮光性粒子を散布し、他方の基板には、シリカシールスペーサー(シリカ粒子表面に被覆層を有していないもの)を含有する一液型エポキシ樹脂(三井東圧化学社製、ストラクトボンド)を基板の周縁部に印刷したのち、2枚の基板をそれぞれの配向膜が内側に位置するように貼り合わせた。次いで、これをオーブンに入れ、150℃にて90分間かけてエポキシ樹脂を加熱硬化させた。得られたセルに液晶物質を注入することにより、STN液晶セルを作製した。
【0103】
この液晶セルを用いた液表示素子は、図1の電子顕微鏡写真のように点灯作動時に液晶分子と液晶表示素子用スペーサー粒子界面での液晶分子の異常配向に起因する光り抜けはほとんどなく、表示画面の欠陥の一つであるディスクリネーションラインの発生は全く観察されなかった。これより、液晶分子はスペーサー界面からの影響を全く受けず、スペーサー界面での液晶分子は、配向膜からの配向規制力のみに支配されていることが分かった。
【0104】
応用例2
応用例1において、実施例1で得られた遮光性粒子の代わりに、実施例2で得られた遮光性粒子を用いた以外は、応用例1と同様にして、STN液晶セルを作製し、その評価を行ったところ、ディスクリネーションラインの発生は全く観察されず、応用例1と同様な結果が得られた。
【0105】
さらに実施例2の粒子をオーバーコート材つきカラーフィルター印刷、基板(オーバーコート及びカラーフィルターの厚み約3μm)の上に散布し、島津製作所製微小圧縮試験機にて圧縮試験を行った。面内スペーサー1個が受ける荷重(0.05〜0.15gf/個)に近い0.2gfを最大荷重として圧縮試験を行い、同様にスペーサーのめり込みが生じない銅板上における圧縮試験の結果と比較した。その結果荷重に対する圧縮変位がカラーフィルター上及び銅板上でほぼ同一となり、カラーフィルター(実質的にはオーバーコート材)にスペーサーがめり込まないことが確認できた。
【0106】
比較応用例1
実施例1(4)で得られたポリメタフェニレンジアミン脱ドープ体/ポリアニリン脱ドープ体/架橋PMMA被覆シリカ微粒子の粉末を、架橋ポリメタクリルラウリルを被覆することなく、そのまま遮光性粒子として用い、応用例1と同様にしてSTN液晶セルを作製し、評価を行った。その結果、図2に示すようにスペーサー周辺からの光抜けが観察された。
【0107】
【発明の効果】
本発明の遮光性粒子は、特に液晶とスペーサーの界面における液晶分子の異常配向を防止しうるとともに、カラーフィルターへの粒子のめり込みなどを抑制しうる液晶表示装置用スペーサー粒子などとして好適に用いられる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1で得られた架橋ポリメタクリル被覆層を有する本発明の遮光粒子をスペーサーとして用いて得られた液晶表示装置の点灯作動時の電子顕微鏡写真。
【図2】架橋ポリメタクリル被覆層を有しない比較の遮光粒子をスペーサーとして用いて得られた液晶表示装置の点灯操作時の電子顕微鏡写真。
Claims (9)
- 金属酸化物および/または有機基を有する金属酸化物からなる球状粒子の表面に、共役π電子を有するポリマーの脱ドープ体を含む遮光性の層が被覆され、さらにこの上に直鎖状炭化水素基を有するビニル化合物のポリマーからなる層が被覆されていることを特徴とする遮光性粒子。
- 金属酸化物および/または有機基を有する金属酸化物からなる球状粒子が重合性カップリング剤で表面処理されたものである、請求項1に記載の遮光性粒子。
- 金属酸化物からなる球状粒子が重合性シラン系カップリング剤で表面処理されたシリカ球状粒子である、請求項2に記載の遮光性粒子。
- 有機基を有する金属酸化物からなる球状粒子が重合性シラン系カップリング剤で表面処理された有機基を有するケイ素酸化物球状粒子である、請求項2に記載の遮光性粒子。
- 有機基を有するケイ素酸化物球状粒子がポリオルガノシルセスキオキサン球状粒子である、請求項4に記載の遮光性粒子。
- 共役π電子を有するポリマーが、
(A)一般式(I)
で示される芳香族アミン化合物を重合して得たポリマー、
(B)一般式(II)
で示される複素環式化合物を重合して得たポリマー、または
(C)上記一般式(I)および(II)で示される化合物よりなる群から選ばれる少なくとも2種の化合物を逐次的にまたは同時に重合して得たポリマーである、請求項1に記載の遮光性粒子。 - 共役π電子を有するポリマーの脱ドープ体が、共役π電子を有するポリマーを電子供与体により脱ドープして得られたものである、請求項1に記載の遮光性粒子。
- 直鎖状炭化水素基を有するビニル化合物が、アクリル酸およびメタクリル酸のC8〜C20直鎖状アルキルエステルよりなる群から選ばれる少なくとも1種である、請求項1に記載の遮光性粒子。
- 金属酸化物および/または有機基を有する金属酸化物からなる球状粒子を含む分散液に、π電子を有するポリマーを形成しうるモノマーを加え、酸化重合させて該球状粒子表面に共役π電子を有するポリマー層を形成させたのち、このポリマー層を脱ドープ処理し、次いでこれに直鎖状炭化水素基を有するビニル化合物を加え、重合させることを特徴とする請求項1ないし8のいずれかに記載の遮光性粒子の製造方法。
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