JP4169447B2 - 有機質無機質複合体粒子、その製造方法およびその用途 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、有機質無機質複合体粒子、その製造方法および用途に関する。
【0002】
【従来の技術】
液晶表示板(LCD)は、2枚の対向する電極基板と、前記電極基板間に介在するスペーサーおよび液晶物質とで構成されている。スペーサーは、液晶層の厚みを均一かつ一定に保つために使用される。
【0003】
液晶表示板の実用に際して要求される表示性能として、一般に、高速応答性、高コントラスト性、広視野角性等が挙げられる。これら諸性能の実現のためには、液晶層の厚み、つまり、2枚の電極基板の隙間距離を厳密に一定に保持しなければならない。
【0004】
このような要望に応じた液晶表示板用スペーサーとしては、ゾル−ゲル法で製造したシリカ粒子(特開昭62−269933号公報)、前記シリカ粒子を焼成したもの(特開平1−234826号公報)、スチレン系単量体やジビニルベンゼン系単量体等を懸濁重合させて得られるスチレン系やジビニルベンゼン系ポリマー粒子(特開昭61−95016号公報)、重合性不飽和基とアルコキシシリル基とを有するシラン化合物を、加水分解・縮合、重合させた後、熱処理して得られる有機質無機質複合体粒子(特開平8−81561号公報)等がある。これらは、いずれも、粒子径分布が狭く、粒子径が良く揃った球状粒子である。
【0005】
これらのうちでも、有機質無機質複合体粒子は、凝集しにくく、液晶表示板等の正確な間隔で配置されるべき1対の部材間の隙間距離を一定に保持するために必要な機械的復元性と、少ない個数で隙間距離を一定に保持するために必要な強度とを有している。しかしながら、有機質無機質複合体粒子を液晶表示板のスペーサーとして用いる場合、ポリイミド等からなる液晶配向膜への付着性が低いことから、スペーサーが移動しやすく、そのために輝点の発生や粒子周囲の光抜けが増大し、表示品位が低下するという問題がある。また、粒子表面に導体層を設けて導電性粒子として使用する場合、粒子表面と導体層との密着性が低いことから、加圧による導体層の剥がれ落ち・電気的に接続されるべきではない電極間のショート・電気的に接続されるべき電極間の接触不良が起こるという問題がある。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
したがって、本発明が解決しようとする課題は、衝撃や振動を受けても電極基板や液晶配向膜等に物理的損傷を与えにくく、ポリイミド等の液晶配向膜への付着力が高く、しかも粒子径分布が狭くて凝集のない有機質無機質複合体粒子、その製造方法および用途を提供することである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため、本発明は、以下の構成を提供する。
(1) 一般式(1)
【0008】
【化3】
【0009】
(ここで、R1 はエポキシ基を有する一価の有機基を表し、R2 は水素原子、炭素数1〜5のアルキル基および炭素数2〜5のアシル基からなる群から選ばれる少なくとも一つの一価の有機基を表し、R3 は炭素数1〜5のアルキル基およびフェニル基からなる群から選ばれる少なくとも一つの一価の有機基を表す。X+Y+Z=4、Xは1または2、Yは2または3、Zは0または1である。)
で表される化合物およびその誘導体からなる群から選ばれた少なくとも一つの第1シリコン化合物の加水分解・縮合と、R1 中のエポキシ基の硬化剤による硬化とにより得られる有機質無機質複合体粒子。
(2) 上記一般式(1)で表される化合物およびその誘導体からなる群から選ばれた少なくとも一つの第1シリコン化合物を加水分解・縮合する縮合工程と、
前記縮合工程中および/または縮合工程後に、R1 中のエポキシ基を硬化剤により硬化させる硬化工程とを含む、有機質無機質複合体粒子の製造方法。
(3) 上記(1) 記載の有機質無機質複合体粒子を本体とし、その表面に導体層が形成されてなる、導電性粒子。
(4) 上記(1) 記載の有機質無機質複合体粒子を本体とする、液晶表示板用スペーサー。
(5) 電極基板間に介在させるスペーサーとして、上記(4) 記載の液晶表示板用スペーサーが用いられてなる液晶表示板。
【0010】
【発明の実施の形態】
[有機質無機質複合体粒子およびその製造方法]
本発明の有機質無機質複合体粒子の製造方法は、縮合工程と硬化工程とを含む。
【0011】
縮合工程は、一般式(1)
【0012】
【化4】
【0013】
(ここで、R1 はエポキシ基を有する一価の有機基を表し、R2 は水素原子、炭素数1〜5のアルキル基および炭素数2〜5のアシル基からなる群から選ばれる少なくとも一つの一価の有機基を表し、R3 は炭素数1〜5のアルキル基およびフェニル基からなる群から選ばれる少なくとも一つの一価の有機基を表す。X+Y+Z=4、Xは1または2、Yは2または3、Zは0または1である。)
で表される化合物およびその誘導体からなる群から選ばれた少なくとも一つの第1シリコン化合物の加水分解・縮合を行う工程である。
【0014】
縮合工程では、第1シリコン化合物とともに、下記の第2シリコン化合物を併用することができる。第2シリコン化合物は、次の一般式(2):
【0015】
【化5】
【0016】
(ここで、R4 はアルキル基、アリール基および不飽和脂肪族残基からなる群から選ばれた少なくとも1種の基を示し、前記基は置換基を有していてもよい;R5 は水素原子と、炭素数1〜5のアルキル基と、炭素数2〜5のアシル基とからなる群から選ばれた少なくとも1つの1価基を示し;nは0〜2の整数を示す)で表される化合物およびその誘導体からなる群から選ばれる少なくとも1つである。
【0017】
一般式(1)および(2)において、加水分解性基はR2 O、R5 Oであり、水酸基と炭素数1〜5のアルコキシ基と炭素数2〜5のアシロキシ基とからなる群から選ばれる少なくとも一つの一価の有機基である。一般式(1)および(2)において、R2 O基の数(Y)は2個または3個であり、R5 O基の数(4−n)は2〜4個であるが、それぞれ互いに異なっていても良いし、2個以上が同じであっても良い。好ましいR2 O基、R5 O基は、加水分解・縮合速度が大きい点で、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基およびアセトキシ基であり、メトキシ基およびエトキシ基がより好ましい。第1シリコン化合物および第2シリコン化合物は、R2 O基、R5 O基が水により加水分解し、更に縮合することにより、ポリシロキサン骨格を形成する。
【0018】
一般式(1)において、R1 はエポキシ基を有する一価の有機基である。一般式(1)において、R1 の数(X)は1個または2個であるが、2個の場合、それぞれ互いに異なっていても良いし、同じであっても良い。また、R1 に含まれるエポキシ基の数は2個以上であっても良い。R1 の種類は特に限定されないが、粒子の凝集を防止し、粒子径分布のシャープな粒子が得られる点、また、ポリイミド等からなる液晶配向膜への付着性が高い点で、エポキシシクロヘキシル基、グリシドキシ基を有する炭素数1〜20の一価の有機基が好ましい。
【0019】
一般式(1)において、R3 は、炭素数1〜5のアルキル基およびフェニル基から選ばれる少なくとも一つの一価の有機基である。R3 としては、メチル基、エチル基、プロピル基等が挙げられるが、粒子の凝集を防止し、粒子径分布のシャープな粒子が得られる点でメチル基およびエチル基が好ましい。
【0020】
一般式(1)で表される化合物の具体例としては、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3,4−エポキシブチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。
【0021】
一般式(2)において、R4 は、アルキル基、アリール基および不飽和脂肪族残基からなる群から選ばれた少なくとも1種の基を示し、前記基は置換基を有していてもよい。一般式(2)において、R4 の数(n)は0〜2個であるが、2個の場合、それぞれ互いに異なっていても良いし、同じであっても良い。
【0022】
一般式(2)で表される化合物の具体例としては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラブトキシシラン、テトラアセトキシシラン等の一般式(2)でn=0の4官能性シラン;メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、メチルトリアセトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン等の一般式(2)でn=1の3官能性シラン;ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、ジアセトキシジメチルシラン、ジフェニルジシランジオール等の一般式(2)でn=2の2官能性シラン等が挙げられる。
【0023】
一般式(1)および(2)で表される化合物の誘導体としては、たとえば、一般式(1)および(2)で表される化合物の有する一部のR2 O基やR5 O基がβ−ジカルボニル基および/または他のキレート化合物を形成し得る基で置換された化合物;一般式(1)および(2)で表される化合物および/またはそのキレート化合物を部分的に加水分解・縮合して得られた低縮合物等を挙げることができる。
【0024】
これらの第1シリコン化合物、第2シリコン化合物はそれぞれ単独で用いてもよいし、2種以上併用してもよい。
第2シリコン化合物の量は、特に限定されないが、多量に使用すると種類によっては得られる有機質無機質複合体粒子の形状が球状にならなかったり、粒子径の制御が困難になったり、粒子径分布が広がったりすることもあるので、第1シリコン化合物に対して、好ましくは1〜50重量%、さらに好ましくは5〜25重量%である。
【0025】
縮合工程では、第1シリコン化合物と、必要に応じて使用される第2シリコン化合物と(以下では、両者をまとめて「原料」と言うことがある)を、水を含む溶媒中で、加水分解し、縮合させる。加水分解と縮合は、一括、分割、連続等、任意の方法を採ることができる。加水分解や縮合させるにあたり、アンモニア、尿素、エタノールアミン、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド、アルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属水酸化物等の触媒を用いてもよい。また、溶媒中には、水や触媒以外の有機溶剤が存在していてもよい。有機溶剤の具体例としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、sec−ブタノール、t−ブタノール、ペンタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール等のアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;酢酸エチル等のエステル類;イソオクタン、シクロヘキサン等の(シクロ)パラフィン類;ジオキサン、ジエチルエーテル等のエーテル類;ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素類等が単独で、または、混合して用いられる。
【0026】
加水分解と縮合は、たとえば、上記した原料またはその有機溶剤溶液を水を含む溶媒に添加し、0〜100℃、好ましくは0〜70℃の範囲で30分〜100時間攪拌することによって行われる。
【0027】
また、上記のような方法により得られた粒子を、種粒子として予め合成系に仕込んでおき、上記原料を添加して該種粒子を成長させていっても良い。
このようにして原料を、水を含む溶媒中で適切な条件の下で加水分解、縮合させることにより、粒子が析出しスラリーが生成する。析出した粒子は平均粒子径が0.5μm以上の任意の粒子径でしかも粒度分布のシャープな粒子である。ここで、適切な条件とは、たとえば、得られるスラリーに対して、原料濃度については30重量%以下、水濃度については50重量%以上、触媒濃度については10重量%以下が好ましく用いられる。
【0028】
たとえば、水濃度、触媒濃度、有機溶剤濃度、原料濃度、原料の添加時間、温度、種粒子の濃度を、たとえば、それぞれ、50〜99.99重量%、0.01〜10重量%、0〜90重量%、0.1〜30重量%、0.001〜500時間、0〜100℃、0〜10重量%に設定することにより、加水分解・縮合で生成する粒子の平均粒子径を、後述の範囲内にすることができる。また、水濃度、触媒濃度、有機溶剤濃度を、それぞれ、上記範囲内に設定することにより、生成する粒子の粒子径の変動係数を、後述の範囲内にすることができる。
【0029】
硬化工程は、R1 中のエポキシ基を硬化剤により硬化する工程であり、これにより有機ポリマー骨格が形成されるようになる。エポキシ基を硬化剤により硬化しない場合には、粒子内の架橋形成が不十分となるために、粒子間の合着が起こり易く、凝集物が発生する。硬化剤により硬化することで、粒子の合着を防止し、単分散状態の粒子を得ることができる。硬化工程は、縮合工程の前、縮合工程中、縮合工程の後のいずれであってもよいが、縮合工程中および/または縮合工程後であることが好ましい。すなわち、第1シリコン化合物を含む原料を加水分解・縮合して得られた中間生成物・粒子が有するエポキシ基を硬化剤により硬化することが好ましい。
【0030】
ここで硬化剤による硬化としては、(1)エポキシ基の開環による重付加反応と、(2)触媒によりイオン的にエポキシ基を開環−付加重合させる反応とが挙げられる。
【0031】
(1)のエポキシ基の開環による重付加反応を行うための硬化剤としては、活性水素を有する化合物が挙げられ、前記化合物は加水分解性シリル基を有していても良い。硬化剤に加水分解性シリル基を有する場合はエポキシ基と硬化剤との反応に加えて、硬化前の粒子中に存在するシラノール基および/またはアルコキシシリル基と硬化剤中の加水分解性シリル基との縮合による硬化が行われる。また、エポキシ基と反応する活性水素を有する有機基を2個以上硬化剤中に有する場合、それらは互いに同一であっても良いし、異なっていても良い。活性水素を有する硬化剤としては、アミノ基、カルボン酸無水物、水酸基、メルカプト基等を有する化合物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0032】
前記アミノ基を有する硬化剤として、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、イソホロンジアミン、m−キシレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルホン、メラミン、ジアリルメラミン等のポリアミン類;モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、プロパノールアミン等のアルコールアミン類が挙げられる。
【0033】
前記カルボン酸無水物を有する硬化剤としては、無水フタル酸、無水マレイン酸、無水ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸無水物、無水トリメリット酸、ピメリン酸等が挙げられる。
【0034】
前記水酸基を有する硬化剤としては、ビスフェノールA、フェノールノボラック等が挙げられる。
前記メルカプト基を有する硬化剤としては、トリオキサントリメチレンメルカプタン、トリアジントリチオール、トリアジンジチオール類、ポリスルフィド等が挙げられる。
【0035】
また、エポキシ基と反応可能な有機基と加水分解性シリル基とを有する化合物としては、例えばアミノ基と加水分解性シリル基とを有する化合物、メルカプト基と加水分解性シリル基とを有する化合物が例示される。
【0036】
アミノ基と加水分解性シリル基とを有する化合物としては、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン等の加水分解性シリル基を3個有する3官能性シラン化合物、3−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシランなどの加水分解性シリル基を2個有する2官能性シラン化合物、3−アミノプロピルジメチルエトキシシラン等の加水分解性シリル基を1個有する1官能性シラン化合物が挙げられる。
【0037】
メルカプト基と加水分解性シリル基とを有する化合物としては、メルカプトメチルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン等の加水分解性シリル基を3個有する3官能性シラン化合物、メルカプトメチルジエトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン等の加水分解性シリル基を2個有する2官能性シラン化合物が挙げられる。
【0038】
これらのエポキシ基と反応可能な有機基と加水分解性シリル基とを有する化合物のうち、3官能性および2官能性化合物が十分に硬化反応を行う上で好ましい。
【0039】
(2)のイオン的にエポキシ基を開環−付加重合させるための硬化剤としては、第3アミン類、イミダゾール類等のエポキシ基をアニオン重合により重合させる化合物と、ルイス酸等のエポキシ基をカチオン重合により重合させる化合物が挙げられる。
【0040】
前記第3アミン類としては、ベンジルジメチルアミン、2−(ジメチルアミノメチル)フェノール、2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール等が挙げられる。
【0041】
前記イミダゾール類としては、2−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール等が挙げられる。
前記ルイス酸としては、三フッ化ホウ素・アミン錯体等が挙げられる。
【0042】
硬化剤の量としては、原料(第1シリコン化合物と第2シリコン化合物の総量)に対して、0.1〜80重量%であることが好ましく、より好ましくは1〜50重量%である。前記範囲を下回る場合にはエポキシ基の硬化が不十分となり、粒子間の合着が起こり易くなる。また、前記範囲を上回る場合には余剰の硬化剤が多量に発生し硬化工程後の粒子洗浄に時間を要するため好ましくない。
【0043】
エポキシ基を硬化する方法としては、加水分解・縮合して得られた粒子の水を含む溶媒スラリーに硬化剤を添加溶解して、そのまま硬化しても良いし、また、加水分解・縮合して得られた粒子を、濾過、遠心分離、減圧濃縮等の従来公知の方法を用いてスラリーから単離した後、硬化剤を含有する水、または有機溶媒等の溶液に分散させて硬化しても良く、これらに限定されるものではない。特に上記原料を加水分解・縮合した後、反応系に硬化剤を共存させて硬化反応を行う方法が好ましい。また前記方法により得られた硬化粒子中のエポキシ基の開環により生成する水酸基を水酸基と反応可能な硬化剤によりさらに硬化反応を行っても良い。水酸基と反応可能な硬化剤としては、例えばイソシアネート基を2個以上有する化合物が例示され、具体的にはトリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等が挙げられる。
【0044】
前記縮合工程、硬化工程により本発明の付着性の優れた有機質無機質複合体微粒子が得られるが、生成した粒子を濾過、遠心分離、減圧濃縮等の従来公知の方法を用いて上記スラリーより単離した後、熱処理を行っても良い。熱処理は、800℃以下の温度が好ましく、より好ましくは100〜600℃の温度、更に好ましくは150〜500℃の温度で、乾燥および焼成のための熱処理を施す。ここで、低い温度で熱処理を行うと、シロキサン単位中に存在するシラノール基同士の脱水縮合反応が充分に起こらないため、必要な強度が得られない場合がある。
【0045】
熱処理する際の雰囲気は何ら制限なく用い得るが、有機ポリマーの分解を抑制し、必要な機械的復元性を得るためには、雰囲気中の酸素濃度が10容量%以下である場合がより好ましい。熱処理温度が200℃〜800℃の範囲であると、有機質無機質複合体粒子を得るためには熱処理する際の雰囲気中の酸素濃度が10容量%以下であることが好ましく、熱処理温度が200℃以下であると、空気中でも有機質無機質複合体粒子を得ることができる。また、熱処理する際に減圧下で行っても良い。 縮合工程、硬化工程および熱処理工程から選ばれる少なくとも1つの工程中および/または後に、生成した粒子を着色することにより着色された有機質無機質複合体粒子が得られる。すなわち、本発明の製造方法は、製造時の適宜の工程において染料および/または顔料を共存させて粒子中に染料および/または顔料を導入することにより着色された有機質無機質複合体粒子を生成することができる。
【0046】
着色する場合の有機質無機質複合体微粒子の色は、光が透過しない色が好ましい。光が透過しない色は、光抜けを防止でき、画質のコントラストを向上できるので、液晶表示板用スペーサーの色として好ましい。光が透過しない色としては、黒、濃青、紺、紫、青、濃緑、緑、茶、赤などの色が挙げられるが、特に好ましくは、黒、濃青または紺である。染料は着色しようとする色に応じて適宜選択して使用され、例えば、染色方法によって分類された、分散染料、酸性染料、塩基性染料、反応染料、硫化染料等が挙げられる。これらの染料の具体例は、「化学便覧応用科学編 日本化学会編」(1986年丸善株式会社発行)の1399頁〜1427頁、「日本化薬染料便覧」(1973年日本化薬株式会社発行)に記載されている。
【0047】
染料および染色の色としては、上記したものが挙げられる。中でも、塩基性染料が好ましい。これは、ポリシロキサン中のシラノール基が酸性であるため、塩基性(カチオン性)染料が吸着されやすく、染色されやすいからである。顔料は、たとえば、カーボンブラック、鉄黒、クロムバーミリオン、モリブデン赤、べんがら、黄鉛、クロム緑、コバルト緑、群青、紺青などの無機顔料;フタロシアニン系、アゾ系、キナクリドン系などの有機顔料がある。しかしながら、顔料は、その平均粒子径が0.4μm以下でないと、本発明の有機質無機質複合体微粒子中に導入されない場合があるので、染料を使用する方が好ましい。
【0048】
有機質無機質複合体粒子の平均粒子径については、特に限定はないが、好ましくは0.5μm以上、より好ましくは0.5〜50μm、さらに好ましくは1〜25μm、最も好ましくは1.5〜20μmである。平均粒子径が0.5μmを下回ると1対の部材間に隙間を形成するのが困難であり、後述の液晶表示板用スペーサーおよび導電性粒子としては用いられない領域である。
【0049】
有機質無機質複合体粒子は、スペーサーとして用いる場合に電極基板の隙間距離の均一性の面から、たとえば、好ましくは20%以下、さらに好ましくは10%以下、最も好ましくは8%以下の粒子径の変動係数を有する。前記上限値を上回ると隙間距離の均一性が低下して画像ムラを起こしやすくなる。粒子径の変動係数は、次式:
【0050】
【数1】
【0051】
で定義される。
本発明では、平均粒子径と粒子径の標準偏差は、電子顕微鏡撮影像の任意の粒子200個の粒子径を実測して次式より求めた。
【0052】
【数2】
【0053】
有機質無機質複合体粒子の形状は、球状、針状、板状、鱗片状、破砕状、俵状、まゆ状、金平糖状等の任意の粒子形状で良く、特に限定されないが、液晶表示板用スペーサーとして用いる場合には隙間距離を均一に一定とする上で球状が好ましい。これは、粒子が球状であると、すべてまたはほぼすべての方向について一定またはほぼ一定の粒径を有するからである。
【0054】
本発明の有機質無機質複合体粒子は、凝集しにくく、液晶表示板等の正確な間隔で配置されるべき1対の部材間の隙間距離を一定に保持するために必要な機械的復元性と、少ない個数で隙間距離を一定に保持するために必要な強度とを有している。しかも、原料として、従来技術の重合性不飽和基を有するシリコン化合物に代えて、エポキシ基を有するシリコン化合物を用いるので、得られる粒子の表面にはエポキシ基に由来する水酸基やエーテル結合と、エポキシ基の硬化剤に由来するアミノ基、エステル結合、チオエーテル結合等の官能基が存在するため、ポリイミド等からなる液晶配向膜への付着性が向上し、衝撃や振動を与えても電極基板や配向膜等への物理的損傷を与えにくい。
[導電性粒子]
本発明の導電性粒子は、上記で得られた有機質無機質複合体粒子を本体とし、その表面に導体層を有する。
【0055】
本発明の導電性粒子は、上記の本発明の有機質無機質複合体粒子を本体とし、粒子の表面にエポキシ基に由来する水酸基やエーテル結合と、エポキシ基の硬化剤に由来するアミノ基、エステル結合、チオエーテル結合等の官能基が存在しており、粒子表面に親水性が付与されている。そのため、粒子表面と導体層との密着性に優れ、一対の電極間の隙間距離を一定に保持しやすく、加圧による導体層の剥がれ落ち・電気的に接続されるべきではない電極間のショート・電気的に接続されるべき電極間の接触不良が起こらない。
【0056】
導体層に使用される金属としては、従来公知のものが挙げられ、たとえば、ニッケル、金、銀、銅、インジウムやこれらの合金等が挙げられるが、特に、ニッケル、金、インジウムは導電性が高いので好ましい。導体層の厚みは、充分な導通があれば特に限定されないが、0.01〜5μmの範囲が好ましく、0.02〜2μmの範囲が特に好ましい。厚みが前記範囲よりも薄いと導電性が不充分となることがあり、前記範囲よりも厚いと粒子と導体層の熱膨張率の差により導体層が剥がれ落ちやすくなる。導体層は、1層でも2層以上でも良く、2層以上の場合には異なる導体からなる層が上下に配されてもよい。
【0057】
導体層を有機質無機質複合体粒子表面に形成する方法としては、従来公知の方法がとられ、特に限定されないが、たとえば、化学メッキ(無電解メッキ)法、コーティング法、PVD(真空蒸着、スパッタリング、イオンプレーティングなど)法などが挙げられ、中でも、化学メッキ方法が容易に本発明の導電性粒子が得られるので好ましい。
【0058】
本発明の導電性粒子は、液晶表示板、LSI、プリント配線基板等のエレクトロニクスの電気的接続材料として特に有用である。
[液晶表示板用スペーサー]
本発明の液晶表示板用スペーサーは、上記で得られた有機質無機質複合体粒子を本体とする。
【0059】
本発明の液晶表示板用スペーサーは、実質的には上記有機質無機質複合体粒子からなるので、凝集しにくく、液晶表示板等の正確な間隔で配置されるべき1対の部材間の隙間距離を一定に保持するために必要な機械的復元性と、少ない個数で隙間距離を一定に保持するために必要な強度とを有している。しかもエポキシ基に由来する水酸基やエーテル結合と、エポキシ基の硬化剤に由来するアミノ基、エステル結合、チオエーテル結合等の官能基が存在しており、ポリイミド等の材質中に存在する官能基との相互作用が強いことから、ポリイミド等からなる液晶配向膜への付着性が高く、スペーサーが移動しにくい。そのため、衝撃や振動を受けたときに電極基板や配向膜等の部材に対して物理的損傷を与えることがなく、またスペーサーの移動による輝点の発生や粒子周囲の光抜けの増大を起こすことがなく、液晶表示板の画質向上を図ることができる。
【0060】
上記有機質無機質複合体粒子が染料および/または顔料を含むことで着色されたものであるときには、本発明の液晶表示板用スペーサーは着色スペーサーとして有用である。
【0061】
液晶表示板において、電極基板間に電圧を印加することにより、液晶は光学的変化を生じて画像を形成する。これに対しスペーサーは、電圧印加によって光学的変化を示さない。従って、画像を表示させた時の暗部において、着色されていないスペーサーは、光抜けが生じ、輝点として確認される場合があり、画質のコントラストを低下することがある。本発明の液晶表示板用スペーサーを実質的に構成する有機質無機質複合体粒子が、染料および/または顔料で着色されているときには、光抜けが生じにくく、画質のコントラスト低下が起きにくい。着色された液晶表示板用スペーサーの好ましい色は、光が透過しにくいかまたは透過しない色である。たとえば、黒、濃青、紺、紫、青、濃緑、緑、茶、赤等の色が挙げられるが、特に好ましくは、黒、濃青、紺色である。
【0062】
本発明の有機質無機質複合体粒子は、それ自身でも優れた付着性を有するが、さらにその表面に被覆または化学結合によって接着剤層が形成された液晶表示板用スペーサーは、接着性スペーサーとして有用である。接着剤層は、たとえば、加熱すると接着性を示すものであってもよい。
【0063】
接着性スペーサーは、加熱加圧されることにより接着剤層が溶融して電極基板に付着し、接着剤層が冷却固化することにより電極基板に固着する。接着性スペーサーは、その接着性により電極基板の隙間において移動しにくくなるので、配向膜の損傷防止や隙間距離の均一性を維持でき、画質向上を図ることができる。
【0064】
接着剤層としては、熱可塑性樹脂が好ましい。熱可塑性樹脂のガラス転移温度が150℃以下が好ましく、100℃以下がより好ましく、80℃以下がより一層好ましい。これは、短時間の加熱加圧で基板と接着するからである。ガラス転移温度が高すぎると、加熱しても基板と接着しない場合があり、逆に低すぎると、スペーサー同士が融着し易くなるので、最も好ましくは40〜80℃の範囲である。また、熱可塑性樹脂の種類としては、特に限定されないが、好ましくは(メタ)アクリル系樹脂である。接着剤層は、1層でも2層以上でも良く、2層以上の場合には異なる熱可塑性樹脂からなる層が上下に配されてもよい。
【0065】
接着性スペーサーは、たとえば、上記有機質無機質複合体粒子に接着剤層を被覆または化学結合させることによって得られる。接着剤として熱可塑性樹脂を用いる場合、具体的には、In situ重合法、コーアセルベーション法、界面重合法、液中硬化被覆法、液中乾燥法、高速気流中衝撃法、気中懸濁被覆法、スプレードライング法等の従来公知の樹脂被覆方法によって本発明の有機質無機質複合体粒子表面が熱可塑性樹脂層で被覆または化学結合される。高速気流中衝撃法は、簡単に被覆することができるので好ましい。高速気流中衝撃法は、たとえば、本発明の有機質無機質複合体粒子と熱可塑性樹脂の粉体とを混合し、この混合物を気相中に分散させ、衝撃力を主体とする機械的熱的エネルギーを複合体粒子と熱可塑性樹脂粉体とに与えることで、有機質無機質複合体粒子表面を熱可塑性樹脂で被覆する方法であり、簡便に被覆することができるので好ましい。
【0066】
このような高速気流中衝撃法を利用した装置としては、奈良機械製作所(株)製ハイブリダイゼーションシステムや、ホソカワミクロン(株)製メカノフュージョンシステム、川崎重工業(株)製クリプトロンシステム等がある。
【0067】
接着性スペーサーは、上述した有機質無機質複合体粒子の特徴をそのまま有し、しかも、接着性を有しているので、液晶表示板の画質向上に特に有用である。
接着性スペーサーも、着色時には前述と同じ作用効果を持つ。
[液晶表示板]
本発明の液晶表示板は、従来の液晶表示板において、従来のスペーサーの代わりに、上述したような本発明の液晶表示板用スペーサーを電極基板間に介在させたものであり、同スペーサーの粒子径と同じかまたはほぼ同じ隙間距離を有する。使用されるスペーサーの量は、通常30〜400個/mm2 、好ましくは50〜300個/mm2 である。
【0068】
本発明の液晶表示板に用いられる上記スペーサーは、ポリイミド等への配向膜への付着性が高く、液晶表示板に衝撃や振動を与えても、スペーサーの移動が抑制され、電極基板や配向膜等の部材に対しての物理的損傷が防止される。また、スペーサーの移動による、スペーサー周囲の輝点の発生や光抜けの増大が抑制され、表示品位の向上が期待される。
【0069】
本発明の液晶表示素子は、たとえば、図1に見るように、第1電極基板110と、第2電極基板120と、液晶表示素子用スペーサと、シール材と液晶とを備えている。第1電極基板110は、第1基板11と、第1基板11の表面に形成された第1電極5とを有する。第2電極基板120は、第2基板12と、第2基板12の表面に形成された第2電極5とを有し、第1電極基板110と対向している。液晶表示素子用スペーサとしては上述の本発明のものが使用され、第1電極基板110と第2電極基板120との間に介在し、その電極基板間の間隔を保持する。シール材2は、第1電極基板110と第2電極基板120とを周辺部で接着する。液晶7は、第1電極基板110と第2電極基板120との間に封入されており、第1電極基板110と第2電極基板120とシール材2とで囲まれた空間に充填されている。
【0070】
本発明の液晶表示板において、スペーサー以外の、電極基板、シール材、液晶などについては従来と同様のものを同様に使用することができる。
電極基板は、ガラス基板、フィルム基板などの基板と、基板の表面に形成された電極とを有しており、必要に応じて、電極基板の表面に電極を覆うように形成された配向膜をさらに有する。シール材としては、エポキシ樹脂接着シール材などが使用される。液晶としては、従来より用いられているものでよく、たとえば、ビフェニル系、フェニルシクロヘキサン系、シッフ塩基系、アゾ系、アゾキシ系、安息香酸エステル系、ターフェニル系、シクロヘキシルカルボン酸エステル系、ビフェニルシクロヘキサン系、ピリミジン系、ジオキサン系、シクロヘキシルシクロヘキサンエステル系、シクロヘキシルエタン系、シクロヘキセン系、フッ素系などの液晶が使用できる。
【0071】
本発明の液晶表示板を作製する方法としては、たとえば、本発明のスペーサーを面内スペーサーとして2枚の電極基板のうちの一方の電極基板に湿式法または乾式法により均一に散布したものに、本発明のスペーサーをシール部スペーサーとしてエポキシ樹脂等の接着シール材に分散させた後、もう一方の電極基板の接着シール部分にスクリーン印刷などの手段により塗布したものを載せ、適度の圧力を加え、100〜180℃の温度で1〜60分間の加熱、または、照射量40〜300mJ/cm2 の紫外線照射により、接着シール材を加熱硬化させた後、液晶を注入し、注入部を封止して、液晶表示板を得る方法を挙げることができるが、液晶表示板の作製方法によって本発明が限定されるものではない。
【0072】
本発明の液晶表示板は、上記液晶表示板用スペーサーを電極基板間に介在させているので、電極基板間の隙間距離が一定に保持される。また、衝撃や振動を受けても電極基板が物理的損傷を受けることはなく、スペーサーが移動しにくいため、輝点の発生やスペーサ周囲の光抜けの問題がなく、液晶表示板の画質が高い。
【0073】
本発明の液晶表示板は、従来の液晶表示板と同じ用途、たとえば、テレビ、モニター、パーソナルコンピューター、ワードプロセッサー、カーナビゲーションシステム、DVD、デジタルビデオカメラ、PHS(携帯情報端末)などの画像表示素子として使用される。
【0074】
【実施例】
以下に、本発明の実施例と、本発明の範囲を外れた比較例とを示すが、本発明は下記実施例に限定されない。
【0075】
下記実施例中の液晶表示板は、以下の方法により作製した。図1にみるように、まず、300mm×345mm×1.1mmの下側ガラス基板11上に、電極(たとえば、透明電極)5及びポリイミド配向膜4を形成した後、ラビングを行って下側電極基板110を得た。その下側電極基板110に、メタノール30容量部、イソプロパノール20容量部、水50容量部の混合溶媒中に本発明の液晶表示板用スペーサー(この場合、面内スペーサー)8が1重量%となるように均一に分散させたものを、1〜10秒間散布した。
【0076】
一方、300mm×345mm×1.1mmの上側ガラス基板12上に、電極(たとえば、透明電極)5及びポリイミド配向膜4を形成した後、ラビングを行って上側電極基板120を得た。そして、エポキシ樹脂接着シール材2中にシリカスペーサー(この場合、シール部スペーサー)3が30容量%となるように分散させたものを、上側電極基板120の接着シール部分にスクリーン印刷した。
【0077】
最後に、上下側電極基板120,110を、電極5及び配向膜4がそれぞれ対向するように、本発明のスペーサー8を介して貼り合わせ、0.5kg/cm2 の圧力を加え、150℃の温度で30分間加熱し、接着シール材2を加熱硬化させた。その後、2枚の電極基板120,110の隙間を真空とし、さらに、大気圧に戻すことにより、作製する液晶表示板の種類に応じてビフェニル系及びフェニルシクロヘキサン系などの液晶物質を混合した液晶7を注入し、注入部を封止した。そして、上下ガラス基板12,11の外側にPVA(ポリビニルアルコール)系偏光膜6を貼り付けて液晶表示板とした。
【0078】
スペーサー8は、図2に示すように、着色されていない有機質無機質複合体粒子31からなるものであってもよい。このときには、パネルに振動や衝撃を加えても物理的損傷が起こりにくいし、スペーサー周囲の光抜けの増大が抑制される。このため、コントラストの向上など表示品位の向上ができる。
【0079】
スペーサー8は、図3に示すように、着色されている有機質無機質複合体粒子32からなるものであってもよい。このときには、スペーサー8による光抜けが起こりにくくなるので、輝点が目立たなくなり、表示品位がより向上するという利点がさらに得られる。
【0080】
スペーサー8は、図4に示すように、着色されていない有機質無機質複合体粒子31とこの粒子31表面に形成された接着剤層33とを含むものであってもよい。このときには、スペーサーがさらに移動しにくくなるため、配向膜等の部材の損傷が防がれ、表示品位の向上をより高めるという利点がさらに得られる。
【0081】
スペーサー8は、図5に示すように、着色された有機質無機質複合体粒子32とこの粒子32表面に形成された接着剤層33とを含むものであってもよい。このときには、スペーサー8による光抜けが起こりにくくなるので、輝点が目立たなくなり、表示品位がより向上するという利点と、スペーサーが移動しにくくなるため、配向膜等の部材の損傷が防がれ、表示品位の向上をより高めるという利点とがさらに得られる。
【0082】
導電性粒子は、図6に示すように、有機質無機質複合体粒子34とこの粒子34表面に形成された導体層35とを含む。導体層35は、たとえば、無電解メッキにより形成された金属被膜であり、1層でも2層以上でもよい。
[実施例1]
冷却管、温度計、滴下口のついた4つ口フラスコ中に25%アンモニア水5g、水600gを混合した溶液(A液)を入れ、25±2℃に保持し、攪拌しながらこの溶液中に、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン60g、メタノール160gを混合した溶液(B液)を滴下口から添加して、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランの加水分解・縮合を行った。撹拌を継続しながら、1時間後に硬化剤としての2−ジ−n−ブチルアミノ−4,6−ジメルカプト−s−トリアジン5gを滴下口から添加し、さらに1時間撹拌を行った。その後、50℃に昇温し、硬化反応を進めた。
【0083】
加熱を1時間続けた後、室温まで冷却し、硬化粒子の懸濁体を得た。得られた懸濁体を光学顕微鏡で観察したところ粒子間の合着は認められなかった。
次に、この懸濁体を濾過により固液分離し、得られたケーキをメタノールによる洗浄を3回繰り返して行い、得られた硬化粒子を窒素雰囲気下280℃で2時間加熱して複合体粒子(1)を得た。複合体粒子(1)は平均粒子径5.1μm、変動係数3.0%であった。
【0084】
上記で得られた複合体粒子(1)を用いて従来公知の方法によりB版大のTFT型液晶表示板(1)を作製した。液晶表示板(1)は隙間距離が非常に均一化されており、非常に良好な表示品位であった。次に、120℃でアニールした後、液晶表示板(1)に1000回の殴打試験を行い、透過率が5%となるように電圧を印可して、殴打試験前後のスペーサ周囲の光抜け状態を目視で観察したところ、スペーサの移動による配向膜の傷付けによる輝点、及びスペーサー周囲の光抜けの増大はほとんど認められず、隙間距離も均一であり良好な表示品位を維持していた。
[実施例2]
実施例1において硬化剤をジアミノジフェニルメタンに変更した以外は実施例1の操作を繰り返して、複合体粒子(2)を得た。得られた複合体粒子(2)は平均粒子径4.9μm、変動係数3.4%であった。
【0085】
この複合体粒子(2)を用いて従来公知の方法によりB版大のTFT型液晶表示板(2)を作製したところ、実施例1と同様の結果が得られた。
[実施例3]
実施例1において硬化剤をベンジルジメチルアミンに変更した以外は実施例1の操作を繰り返して、複合体粒子(3)を得た。得られた複合体粒子(3)は平均粒子径6.0μm、変動係数3.6%であった。
【0086】
この複合体粒子(3)を用いて従来公知の方法によりB版大のTFT型液晶表示板(3)を作製したところ、実施例1と同様の結果が得られた。
[実施例4]
実施例1において硬化剤を無水ピロメリット酸に変更した以外は実施例1の操作を繰り返して、複合体粒子(4)を得た。得られた複合体粒子(4)は平均粒子径5.3μm、変動係数3.6%であった。
【0087】
この複合体粒子(4)を用いて従来公知の方法によりB版大のTFT型液晶表示板(4)を作製したところ、実施例1と同様の結果が得られた。
[実施例5]
冷却管、温度計、滴下口のついた4つ口フラスコ中に25%アンモニア水5g、水600gを混合した溶液(A液)を入れ、25±2℃に保持し、攪拌しながらこの溶液中に、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン60g、メタノール160gを混合した溶液(B液)を滴下口から添加して、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランの加水分解・縮合を行った。撹拌を継続しながら、1時間後に硬化剤としての2−ジ−n−ブチルアミノ−4,6−ジメルカプト−s−トリアジン5gを滴下口から添加し、さらに1時間撹拌を行った。その後、50℃に昇温し、硬化反応を進めた。加熱を1時間続けた後、室温まで冷却し、硬化粒子の懸濁体を得た。
【0088】
次に、この懸濁体を濾過により固液分離し、得られたケーキをメタノールによる洗浄を3回繰り返して行い、得られた硬化粒子を冷却管、温度計、滴下口のついた4つ口フラスコに入れた。次いで滴下口からトルエン100g、及びトリレンジイソシアネート(TDI)10gを加えて、80℃で3時間撹拌を行い、エポキシ基の開環により生成した水酸基のイソシアネートによる硬化反応を行った。撹拌後室温まで冷却し硬化粒子の懸濁体を得た。 次に、この懸濁体を濾過により固液分離し、得られたケーキをトルエンによる洗浄を2回とそれに引き続くメタノールによる洗浄を1回行い、得られた硬化粒子を窒素雰囲気下280℃で2時間加熱して複合体粒子(5)を得た。複合体粒子(5)は平均粒子径5.0μm、変動係数3.7%であった。
【0089】
上記で得られた、複合体粒子(5)を用いて従来公知の方法によりB版大のTFT型液晶表示板(5)を作製したところ、実施例1と同様の結果が得られた。[実施例6]
冷却管、温度計、滴下口のついた4つ口フラスコ中に25%アンモニア水5g、水600gを混合した溶液(A液)を入れ、25±2℃に保持し、攪拌しながらこの溶液中に、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン60g、メタノール160gを混合した溶液(B液)を滴下口から添加して、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランの加水分解・縮合を行った。撹拌を継続しながら、1時間後に硬化剤としての3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン10gを滴下口から添加し、さらに1時間撹拌を行った。その後、50℃に昇温し、硬化反応を進めた。
【0090】
加熱を1時間続けた後、室温まで冷却し、硬化粒子の懸濁体を得た。得られた懸濁体を光学顕微鏡で観察したところ粒子間の合着は認められなかった。
次に、この懸濁体を濾過により固液分離し、得られたケーキをメタノールによる洗浄を3回繰り返して行い、得られた硬化粒子を窒素雰囲気下280℃で2時間加熱して複合体粒子(6)を得た。複合体粒子(6)は平均粒子径4.8μm、変動係数3.6%であった。
【0091】
上記で得られた、複合体粒子(6)を用いて従来公知の方法によりB版大のTFT型液晶表示板(6)を作製したところ、実施例1と同様の結果が得られた。[実施例7]
酸性染料であるKayacyl Sky Blue R(日本化薬(株)製)4gを水100gに溶解した溶液と、実施例1で得られた複合体粒子(1)15gを水500gに分散した分散液とを混合し、オートクレーブ中で150℃で1時間加圧加熱処理した。処理後、濃青色に着色された粒子を濾過で捕集し、更に水洗を3回繰り返した後、200℃で真空乾燥して濃青色に着色された複合体粒子(7)を得た。複合体粒子(7)は平均粒子径5.0μm、変動係数3.8%であった。
【0092】
この複合体粒子(7)を用いて従来公知の方法によりB版大のSTN型液晶表示板(7)を作製したところ、実施例1と同様の結果が得られるとともに、輝点(光抜け)が少なかった。
[実施例8]
塩基性染料であるKayacryl Black NP200(日本化薬(株)製)4gを水250gに溶解し、酢酸を加えてpHを4とした後、実施例1で得られた複合体粒子(1)10gを加えて良く撹拌しながら95℃で8時間加熱して黒色に着色された複合体粒子(8)を得た。複合体粒子(8)は平均粒子径4.9μm、変動係数4.1%であった。
【0093】
この複合体粒子(8)を用いて従来公知の方法によりB版大のSTN型液晶表示板(8)を作製したところ、実施例7と同様の結果が得られた。
[実施例9]
実施例1において、A液に塩基性染料であるKayacryl Black NP200(日本化薬(株)製)3gを加えたこと以外は実施例1の操作を繰り返して、黒色に着色された複合体粒子(9)を得た。複合体粒子(9)は平均粒子径5.2μm、変動係数4.0%であった。
【0094】
この複合体粒子(9)を用いて従来公知の方法によりB版大のSTN型液晶表示板(9)を作製したところ、実施例7と同様の結果が得られた。
[実施例10]
実施例1で得られた複合体粒子(1)30gと熱可塑性樹脂粒子(メチルメタクリレート84wt%とn−ブチルアクリレート16wt%との共重合体、ガラス転移温度70℃、平均粒子径0.3μm)1gとを混合し、更に奈良機械製作所製ハイブリダイゼーションシステムNHS−0型を使用して複合体粒子(1)の表面を熱可塑性樹脂で被覆して表面に接着層を有する複合体粒子(10)を得た。得られた接着層を有する複合体粒子(10)をSEM観察したところ複合体粒子(10)の表面は完全に熱可塑性樹脂で被覆されており、その断面をTEMで観察したところ、被覆層の厚みは0.08μmであった。
【0095】
この複合体粒子(10)を用いて従来公知の方法によりB版大のTFT型液晶表示板(10)を作製した。液晶表示板(10)は隙間距離が非常に均一化されており、非常に良好な表示品位であった。次に120℃でアニールした後、液晶表示板(10)に1000回の殴打試験を行い、透過率が5%となるように電圧を印可して、殴打試験前後のスペーサ周囲の光抜け状態を目視で観察したところ、スペーサの移動による配向膜の傷付けによる輝点、及びスペーサー周囲の光抜けの増大はほとんど認められず、隙間距離も均一であり良好な表示品位を維持していた。
[実施例11]
実施例10において、複合体粒子(1)の代わりに実施例9で得られた複合体粒子(9)を使用したこと以外は実施例10の操作を繰り返して、表面に接着層を有する黒色に着色された複合体粒子(11)を得た。得られた接着層を有する複合体粒子(11)をSEM観察したところ複合体粒子(11)の表面は完全に熱可塑性樹脂で被覆されており、その断面をTEMで観察したところ、被覆層の厚みは0.08μmであった。
【0096】
この複合体粒子(11)を用いて従来公知の方法によりB版大のSTN型液晶表示板(11)を作製したところ、実施例10と同様の結果が得られるとともに、輝点(光抜け)が少なかった。
[実施例12]
実施例1で得られた複合体粒子(1)に無電解Niメッキを施した後、さらに無電解金メッキを施し、導電性粒子(12)を得た。得られた導電性粒子(12)は平均粒子径5.9μm、変動係数4.2%であった。得られた導電性粒子(12)をSEM及びXMAで観察したところ、導電性粒子(12)の表面は完全にNiでメッキ被覆され、その上に金でメッキ被覆されており、その断面をTEMで観察したところ、被覆層の厚みは0.3μmであった。導電性粒子(12)のメッキ層の密着性を下記の手法で評価したところ、評価結果は○であり、非常に良好な耐剥離性を示した。
<導電性粒子のメッキ層の密着性の評価方法>
導電性粒子とジルコニアビーズ90gをマヨネーズ瓶に入れ、ホールピペットでヘキサン10mlを加える。次にペイントシェーカーで10分間振とうを行い、終了後、ピペットで試料溶液を吸い上げ、金属顕微鏡で観察し最もメッキ層剥離の激しい視野を観察し、その剥離数から下記の判定基準で判定する。
【0097】
メッキ層の剥離した粒子数:1個…○,2〜10個…△,10個以上…×
[比較例1]
冷却管、温度計、滴下口のついた4つ口フラスコに25%アンモニア水5g、水600gを混合した溶液(A液)を入れ、25±2℃に保持し、攪拌しながらこの溶液中に、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン60g、メタノール160gを混合した溶液(B液)を滴下口から添加して、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランの加水分解・縮合を行った。硬化剤を加えずに撹拌を2時間行った後、50℃に昇温した。
【0098】
加熱を1時間続けた後、室温まで冷却し得られた懸濁体を光学顕微鏡で観察したところ粒子間の合着が多数認められた。
[比較例2]
冷却管、温度計、滴下口のついた4つ口フラスコ中に25%アンモニア水2.9g、メタノール10.1g、水141.1gを混合した溶液(A液)を入れ、25±2℃に保持し、攪拌しながらこの溶液中に、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン27g、メタノール54g、ラジカル重合開始剤として2,2′−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)0.14gを混合した溶液(B液)を滴下口から添加して、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランの加水分解・縮合を行った。撹拌を継続しながら、20分後、窒素雰囲気中で70±5℃に加熱し、ラジカル重合を行った。
【0099】
加熱を2時間続けた後、室温まで冷却し、重合体粒子の懸濁体を得た。懸濁体を濾過により固液分離し、得られたケーキをメタノールによる洗浄を3回繰り返して行い、得られた重合体粒子を窒素雰囲気下200℃で2時間加熱して比較複合体粒子(2)を得た。比較複合体粒子(2)は平均粒子径4.2μm、変動係数3.8%であった。
【0100】
比較複合体粒子(2)を用いて実施例1と同様の方法により作製したB版大のTFT型液晶表示板の1000回の殴打試験前後のスペーサー周囲の光抜けの程度、スペーサーの移動による配向膜の傷付けによる輝点の程度、及び表示品位を目視で評価した。結果を表1に示す。比較複合体粒子(2)では1000回殴打試験前後の性能が複合体粒子(1)よりも劣っていた。
[比較例3]
比較例2で得られた比較複合体粒子(2)に無電解Niメッキを施した後、さらに無電解金メッキを施し、比較導電性粒子(3)を得た。得られた比較導電性粒子(3)は平均粒子径4.51μm、変動係数4.2%であった。得られた比較導電性粒子(3)をSEM及びXMAで観察したところ、比較導電性粒子(3)の表面は完全にNiでメッキ被覆され、その上に金でメッキ被覆されており、その断面をTEMで観察したところ、被覆層の厚みは0.47μmであった。比較導電性粒子(3)のメッキ層の密着性を上記の手法で評価したところ、評価結果は△であり、導電性粒子(11)よりは劣った性能であった。
【0101】
【表1】
【0102】
【発明の効果】
本発明の有機質無機質複合体粒子は、原料として、従来技術の重合性不飽和基を有するシリコン化合物に代えて、エポキシ基を有するシリコン化合物を用いるので、得られる粒子の表面にはエポキシ基に由来する水酸基やエーテル結合と、エポキシ基の硬化剤に由来するアミノ基、エステル結合、チオエーテル結合等の官能基が存在しており、ポリイミド等の材質からなる液晶配向膜等に対する付着性が高い。
【0103】
本発明にかかる有機質無機質複合体粒子の製造方法は、粒子間の合着が起こらず、粒子径分布の狭い、前記有機質無機質複合体粒子を簡便にかつ歩留まり良く製造することができる。
【0104】
本発明の導電性粒子は、粒子の表面にエポキシ基に由来する水酸基やエーテル結合と、エポキシ基の硬化剤に由来するアミノ基、エステル結合、チオエーテル結合等の官能基が存在するため、粒子表面に親水性が付与されており、粒子表面と導体層との密着性に優れるため、一対の電極間の隙間距離を一定に保持しやすく、加圧による導体層の剥がれ落ち・電気的に接続されるべきではない電極間のショート・電気的に接続されるべき電極間の接触不良が起こらず、接着信頼性が高い。このためエレクトロニクスの実装材料として有用である。
【0105】
本発明の液晶表示板用スペーサーは、上記有機質無機質複合体粒子からなるので、正確な間隔で配置されるべき1対の電極基板間の隙間距離を一定に保持することができるとともに、液晶配向膜等への付着性が高く、強い衝撃や振動を受けても電極基板や配向膜等に対して物理的損傷を与えることがない。また、スペーサーが移動しにくく、配向膜の傷付けによる輝点の発生や粒子周囲の光抜けの増大を抑制するため、液晶表示板の画質向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の液晶表示板の1実施例を表す部分断面図である。
【図2】 本発明の液晶表示板用スペーサーの1実施例を表す断面図である。
【図3】 本発明の液晶表示板用スペーサーの1実施例を表す断面図である。
【図4】 本発明の液晶表示板用スペーサーの1実施例を表す断面図である。
【図5】 本発明の液晶表示板用スペーサーの1実施例を表す断面図である。
【図6】 本発明の導電性粒子の1実施例を表す断面図である。
【符号の説明】
2 接着シール材
3 シール部スペーサー
4 配向膜
5 電極
6 偏光膜
7 液晶
8 面内スペーサー
11 下側ガラス基板
12 上側ガラス基板
31 有機質無機質複合体粒子
32 有機質無機質複合体粒子
33 接着剤層
34 有機質無機質複合体粒子
35 導体層
110 下側電極基板
120 上側電極基板
Claims (5)
- 一般式(1)
で表される化合物およびその誘導体からなる群から選ばれた少なくとも一つの第1シリコン化合物を加水分解・縮合する縮合工程と、
前記縮合工程中および/または縮合工程後に、R1 中のエポキシ基を硬化剤により硬化させる硬化工程とを含む、有機質無機質複合体粒子の製造方法。 - 請求項1記載の有機質無機質複合体粒子を本体とし、その表面に導体層が形成されてなる、導電性粒子。
- 請求項1記載の有機質無機質複合体粒子を本体とする、液晶表示板用スペーサー。
- 電極基板間に介在させるスペーサーとして、請求項4記載の液晶表示板用スペーサーが用いられてなる液晶表示板。
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