JP4201295B2 - 孔版印刷装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、製版手段でマスタに穿孔製版を行った後、製版されたマスタを多孔性円筒状の版胴に巻装して印刷を行う孔版印刷装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より簡便な印刷方法の1つとして、微細な発熱素子が一列に配置されたサーマルヘッドを感熱孔版用のマスタに接触させ、パルス的に発熱素子に通電させながらマスタを搬送することで、画像情報に応じてマスタを選択的に加熱穿孔した後、穿孔した部分よりインキを透過させ、このインキを印刷用紙に転移させることで印刷画像を形成するデジタル感熱孔版印刷が知られている。
【0003】
このデジタル感熱孔版印刷に用いられるマスタとしては、特開平6−32041号公報図1に符号2で示されているように、ロール状に巻成されたものが既に知られており、このマスタロールは孔版印刷装置のマスタ貯容部に貯容される。新しいマスタロールの装着方法としては、オペレーターが新しいマスタロールを梱包箱から取り出して、マスタ先端部を止めているテープ等を外してマスタロールの表裏を確認した上でマスタ貯容部にセットし、マスタ貯容部よりマスタロールの先端部を引き出して、その先端部を孔版印刷装置の製版手段に挟持させた後、搬送手段あるいは搬送機能を備える製版手段によってマスタを切断手段を越える位置まで一定量搬送させ、切断手段によって先端部を切断してマスタの先端を位置決めし、切断されたマスタの先端部をオペレーターが手作業で孔版印刷装置内より除去することによって完了する方法が採用されている。
【0004】
このようなマスタロールの装着作業は、マスタロールをマスタ貯容部に対して装着・離脱する作業が非常に面倒であり、しかも装着作業は、注意して行わないとマスタにしわが発生してしまい、印刷不良を起こしてしまうという問題点があるために一般のオペレーターでは無理であり、熟練した専任のオペレーターが行わなくてはならないという問題点があった。また、マスタロールよりマスタを引き出す際に過剰にマスタを引き出してしまうと、装置内部でマスタに弛みが発生し、これに起因した製版不良が発生してしまうという問題点もある。
【0005】
上述のマスタロールに使用されるマスタは、インキ透過性の多孔性支持体と熱可塑性樹脂フィルムとを貼り合わせたラミネート構造を呈している。多孔性支持体としては、一般の和紙や合成繊維、あるいは和紙と合成繊維とを混抄したものが用いられるが、その使用されている繊維の太さや長さ、並びに厚みや密度にムラがあるため、そのインキ透過性にバラツキが発生する。すなわち、フィルム穿孔部に繊維の塊のような部分が多数点在する場合や、太い繊維がフィルム穿孔部を横切っている場合等にインキの均一な透過が阻害される。また、熱可塑性樹脂フィルムと多孔性支持体とを貼り合わせるために接着剤が使用されるが、その接着剤のむらにより、接着剤が多量に塗布されたフィルム穿孔部においてもインキの均一な透過が阻害される。
【0006】
このようにインキ透過性の悪い部分が点在すると、熱可塑性樹脂フィルムに対して所定の原稿画像に対応した加熱穿孔製版がなされたとしても、上述のインキ透過性の悪い部分に印刷画像の白抜けが生じ易くなり、所謂、ベタ埋まりの悪い印刷画像となってしまうという問題点があった。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
上述の白抜けを防止するため、多孔性支持体の繊維を細くしたり接着剤の塗布量を少なくする試みがなされている。しかし、このようなマスタを用いると画像は良好になるが、繊維を細くすることで多孔性支持体の強度が低下し、また、接着剤の塗布量を少なくすることで多孔性支持体と熱可塑性樹脂フィルムとの接着力が低下して、多孔性支持体の剥離や破損が発生し易くなる虞がある。また、マスタ自体の腰が低下することにより、マスタの孔版印刷装置への初期セットが行いにくくなるという問題点がある。
【0008】
特開昭60−87095号公報には、多孔性支持体として和紙の代わりに均一な太さの繊維が規則正しく並べられたものを用い、これを熱可塑性樹脂フィルムと貼り合わせてマスタとする技術が開示されている。しかし、このマスタでは、製版したばかりの新しいマスタを版胴に巻装しても、版胴内部より供給されたインキが多孔性支持体に十分に浸透しないと熱可塑性樹脂フィルムまで到達しないため、印刷を開始しても最初の1ないし3枚の印刷用紙上には適正な印刷画像が得られないという問題点がある。また、印刷に使用された使用済みマスタは、版胴から剥離して所定の排版部に収納した後に廃棄されるが、このとき使用済みマスタは、その多孔性支持体に多量のインキを含んだまま廃棄されるため、インキのランニングコストが上がってしまうという問題点がある。
【0009】
この問題点を解消するため、多孔性支持体を薄くしたマスタを用いたり、あるいは多孔性支持体を用いずに実質的に熱可塑性樹脂フィルムのみからなるマスタを用いた印刷が試みられている。しかし、従来のラミネート構造のマスタではその厚さが40〜50μmであったのに対し、実質的に熱可塑性樹脂フィルムのみからなるマスタではその厚さが2〜8μmと非常に薄く、マスタの強度(腰)が大幅に低下してしまう。そのため、新たにマスタを孔版印刷装置にセットする際に静電気によってマスタが手やガイド板等に貼り付き、マスタにしわが発生して正常なセットを行えないという問題点や、初期セットが良好に行われても製版されたマスタが版胴の外周面上に設けられたマスタ係止手段に係止される際にしわが発生して、正常な係止を行うことができないという問題点がある。
【0010】
そこで、マスタ先端の両角部を挟持して製版手段からマスタ係止手段まで搬送するマスタ挟持搬送手段を有する印刷装置が特開昭59−104937号公報に、また、先端部を突出させた状態でマスタを挟持しつつ製版手段からマスタ係止手段まで搬送するマスタ挟持搬送手段を有する印刷装置が特開平6−320853号公報にそれぞれ開示されている。
【0011】
しかし、特開昭59−104937号公報に開示された技術では、マスタ挟持搬送手段で挟持されたマスタ先端の両角部をマスタ係止手段で係止することができないため、版胴への巻装時においてマスタにしわが発生して良好な巻装を行うことができない。また、特開平6−320853号公報に開示された技術では、マスタの先端部がカールしている場合に良好な係止を行うことができず、無理に係止させると巻装時においてマスタにしわが発生してしまう。
【0012】
本発明は、上記各問題点を解決し、マスタロールを着脱する際に、オペレーターの簡単かつ確実な着脱作業性を確保しながら、マスタの種類にかかわらずマスタを確実に、弛みを発生することなく初期セットすることが可能であると共に、製版されたマスタの搬送及び係止を良好に行うことが可能な孔版印刷装置の提供を目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】
請求項1記載の発明は、マスタをロール状に巻成してなるマスタロールを貯容するマスタ貯容部と、前記マスタの先端部をそのほぼ全幅にわたって係止する係止部を有するマスタ係止手段を具備した版胴と、前記マスタに対して画像情報に応じた製版を行う製版手段と、前記マスタを一定の長さに切断する切断手段と、前記マスタの先端部を挟持する開閉自在な一対のマスタ挟持部を有し、前記版胴が前記マスタ係止手段によって前記マスタの先端部を係止するマスタ係止位置に停止したときの前記マスタ係止手段の近傍であって前記切断手段よりも前記マスタの搬送方向上流側の位置である、前記マスタ挟持部により前記マスタの先端部を挟持する第1の位置と、前記係止部を通過して前記係止部で前記マスタの先端部を係止可能な位置である、前記マスタの先端部を挟持した前記マスタ挟持部を開放させる第2の位置との間で往復変位可能なマスタ挟持搬送手段とを具備した印刷装置であって、前記マスタ係止手段は、前記版胴の外周面上に設けられ両端部が前記版胴の外周面から離隔したステージとこのステージに開閉自在に設けられたマスタクランパーとを有し、前記ステージ及び前記マスタクランパーが前記係止部をそれぞれ有することを特徴とする。
【0014】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の孔版印刷装置において、さらに、前記マスタ挟持搬送手段は前記マスタ挟持部が前記マスタの両側部を挟持可能な位置で往復変位することを特徴とする。
【0015】
請求項3記載の発明は、請求項2記載の孔版印刷装置において、さらに、前記マスタ挟持部は開閉自在な上搬送クランパーと下搬送クランパーとを有し、前記マスタ係止手段が前記マスタの先端部を係止した後に前記上搬送クランパーと前記下搬送クランパーとが開放され、前記マスタ挟持搬送手段が第2の位置から第1の位置へ変位する際に、前記上搬送クランパーが前記マスタクランパーの端部上方を、前記下搬送クランパーが前記ステージの端部下方をそれぞれ通過することを特徴とする。
【0016】
請求項4記載の発明は、請求項1、請求項2または請求項3記載の孔版印刷装置において、さらに、前記マスタ挟持部は前記マスタの先端部の両角部を挟持することを特徴とする。
【0017】
【実施例】
本発明の一実施例となる孔版印刷装置について説明する。図1に示すように孔版印刷装置は、熱穿孔製版可能なマスタ2をロール状に巻成してなるマスタロール2Rを貯容するマスタ貯容器1と、マスタ2を製版しつつ搬送する製版手段3と、製版されたマスタ2を巻装する多孔性円筒状の版胴4と、版胴4の外周面4aの一部に設けられたマスタ係止手段5に向けてマスタ2を挟持搬送するマスタ挟持搬送手段6と、製版手段3で製版された製版済みのマスタ2を一定の長さに切断する切断手段7と、マスタ係止手段5に向かって移動するマスタ2に張力を付与する張力付与手段8とを備えている。
【0018】
マスタ貯容器1は、図に矢印Xで示すマスタ搬送方向の最上流に配置され、版胴4はマスタ搬送方向Xの最下流に配置されている。マスタ貯容器1から版胴4までの間にはマスタ通路が形成され、このマスタ通路に沿って、製版手段3、張力付与手段8、マスタ挟持搬送手段6、切断手段7の順で配置されている。
【0019】
マスタ貯容器1は、マスタケース9の内部にマスタロール2Rを収納したものである。樹脂製の芯部材2Pの外周面に巻き付けられてマスタロール2Rを形成するマスタ2は、非常に薄い1〜4μm程度のポリエステル等の熱可塑性樹脂フィルムに多孔性支持体を貼り合わせて構成されている。
【0020】
マスタケース9は、マスタロール2Rを保持する保持部9Aと、マスタロール2Rから引き出されたマスタ2の先端部2A(図2参照)を保持し、その導出を案内する案内部9Bとから主に構成されている。マスタ貯容器1は、図示しない孔版印刷装置本体のマスタ貯容部であるマスタ貯容器装着部10に配設された一対の支持部材10aによって、図1の上下方向に着脱自在に設けられている。
【0021】
芯部材2Pを回転可能に支持する保持部9Aは、図2に示すように箱型形状に形成されており、その内幅は新しいマスタロール2Rの外径よりも若干大きくなるように形成されている。また、保持部9Aは、図3に示すように、マスタ搬送方向Xと直交するその幅W2(図に両矢印Zで示すマスタ幅方向における長さ)がマスタ2(マスタロール2R)の幅W1よりも若干大きくなるように形成されている。
【0022】
芯部材2Pは、その軸線方向の長さW3がマスタ2の幅W1及び保持部9Aの幅W2より長くなるように形成されており、保持部9Aに穿設された一対の支持孔9aに両端部近傍をそれぞれ回動可能に支持され、両端部を保持部9Aの外側に突出させている。芯部材2Pの外径は支持孔9aの直径より若干大きくなるように形成されており、芯部材2Pはその両端部近傍を各支持孔9aに軽圧入されている。このため、マスタロール2Rの回転時には、各支持孔9aと芯部材2Pとの摺接により制動力が作用するように構成されており、各支持孔9aが制動部を構成している。
【0023】
芯部材2Pは、マスタロール2Rの外周面が保持部9Aの内面9bに接触しない位置に配置されている。これにより、マスタロール2Rの回転時における内面9bとの接触が避けられ、マスタロール2R及びマスタ2の帯電や変形が防止されている。また、芯部材2Pの端部が保持部9Aから突出しているので、オペレーターがこの突出した端部を持ってマスタロール2Rを回転させることができ、マスタロール2Rの巻きが解けて弛んだ場合でもその弛みを解消できるように構成されている。
【0024】
案内部9Bは、図2、図3に示すように、マスタ貯容器1の芯部材2Pの軸線と平行な1辺に保持部9Aと一体形成されており、マスタロール2Rから引き出されたマスタ2の表裏面と対向して配置され、マスタ貯容器1の外部へとマスタ2を案内する上突出部9cと下突出部9dとから主に構成されている。上突出部9cと下突出部9dとは、互いの突出長がほぼ同じとなるように形成されると共に所定の隙間をもって配置されており、マスタ貯容器1の外部に連通する前記隙間によってマスタ2を通過させる出口部9eを構成している。マスタロール2Rは、その初期状態時において、マスタ2の先端部2Aが上突出部9cと下突出部9dとの間に挿入され、かつ、先端部2Aが出口部9eより所定長さ突出した状態で保持部9Aと案内部9Bとによって保持されている。
【0025】
上突出部9c及び下突出部9dの各先端の両角部には、先端部2Aの両側部2a,2bをマスタ案内部9Bの外部に臨ませる切欠部9f,9g,9h,9iがそれぞれ形成されている。各切欠部9f,9g,9h,9iは、後述するマスタ挟持搬送手段6に設けられる一対のマスタ挟持部28,29と干渉しない大きさに形成されている。
【0026】
各切欠部9f,9g,9h,9iには、図3、図4に示すように、薄いマイラー等からなる薄板部材としてのガイドフィルム11a,11b,11c,11dが設けられている。各ガイドフィルム11a,11b,11c,11dは、案内部9Bの先端両角部に臨まない2辺を上突出部9cまたは下突出部9dにそれぞれ接着等により固着されており、ガイドフィルム11a,11cは側部2aを、ガイドフィルム11b,11dは側部2bをそれぞれ保持している。
【0027】
製版手段3は、プラテンローラー12とサーマルヘッド13とから主に構成されている。プラテンローラー12は支軸12aと実質一体的に取り付けられており、支軸12aは図示しない孔版印刷装置の側板に回転自在に支持されている。プラテンローラー12は、そのマスタ幅方向の長さが保持部9Aの幅W2よりも長く設定されており、支軸12aの一端に設けられた図示しないギヤによりステップモーター14からの駆動力を伝達され、図1の矢印方向に回転駆動される。プラテンローラー12は、図1に実線で示す押圧位置と二点鎖線で示す離間位置とに移動可能に設けられており、プラテンローラー12とサーマルヘッド13とは圧接・離間可能に構成されている。また、プラテンローラー12は離間位置を占めたときに、図5に示すようにマスタ貯容器1を装置本体にセットする際に保持部9Aの一面9jに当接してガイドローラーとして機能する。
【0028】
サーマルヘッド13はプラテンローラー12の下方に位置し、支軸12aと平行に延在して設けられている。サーマルヘッド13は、図示しない孔版印刷装置の原稿読取部に設けられたA/D変換部及び製版制御部(共に図示せず)で処理されて送出されるデジタル画像情報に基づき、図示しない発熱素子が選択的に発熱することによりマスタ2の所定位置を熱溶融穿孔する周知の機能を有する。また、サーマルヘッド13の配設位置は、マスタ挟持搬送手段6が後述する第1の位置でマスタ2を挟持したときに、マスタ2の製版開始位置と等しい位置、若しくはマスタ2の製版開始位置よりもマスタ搬送方向下流側に位置するように配設されている。
【0029】
版胴4は、多孔性円筒状の支持円筒体と、その外周面に巻き付けられたメッシュスクリーンとを有し、その外周面4aに製版済みのマスタ2を巻装する。版胴4は、回転中心軸を兼ねたインキパイプ15の周りに回転可能に支持されており、版胴駆動源となる駆動モーター16と図示しない駆動力伝達機構とによって矢印方向に回転駆動される。版胴4の内部には、版胴4の回転方向と同一方向に同期して回転して版胴4の内周面にインキを供給するインキローラー17と、インキローラー17と僅かな間隙を設けて平行に配置され、インキローラー17との間に断面楔状のインキ溜まり19を形成するドクターローラー18と、インキ溜まり19へインキを供給するインキパイプ15に設けた開孔部15aとからなるインキ供給手段20が配設されている。
【0030】
インキローラー17と対向する版胴4の外周面4aの下方近傍には、図示しない接離機構によって上下に揺動し、印刷用紙22を版胴4へ押し付けるプレスローラー21が配置されており、その右方には版胴4とプレスローラー21との間に向けて印刷用紙22を所定のタイミングで給送するレジストローラー対60が配設されている。本実施例ではプレスローラー21を用いたが、プレスローラー21に代えて版胴4とほぼ同径の圧胴を用いてもよい。
【0031】
版胴4の外周面4a上の所定位置(非開孔部)には、製版済みのマスタ2の先端部2Aを挾持するマスタ係止手段5が配設されている。マスタ係止手段5は、版胴4の母線方向と平行に延在していて外周面4aと実質一体的に設けられたステージ23と、ステージ23に対してクランパー軸24aを介して図示しない開閉装置により駆動力を伝達されて回動される開閉自在なマスタクランパー24と、マスタクランパー24をステージ23へ磁着するマグネット24bとを備えている。図示しない開閉装置は、クランパー駆動手段となるステップモーター25と周知の駆動力伝達機構から構成されている。
【0032】
図6、図7に示すように、ステージ23は版胴4の外周面4aから突出して設けられており、マスタ搬送方向X側の一方の端部には、マスタクランパー24と同じ幅を有する、磁性体からなる係止部Y1が形成されている。係止部Y1の両端下部と版胴4の外周面との間には、後述する下搬送クランパー28B,29Bがそれぞれ通過可能な空間23Aが設けられており、ステージ23の他方の端部は、後述する下搬送クランパー28B,29Bが開放したときに干渉しないように切り欠かれている。
【0033】
マスタクランパー24は、図8に示すように版胴4の母線と平行に延在しており、その全幅W4は、マスタ2の幅W1よりも幾分長く、且つ版胴4の幅W5よりも短く形成されている。具体的には、印刷可能な最大用紙サイズがA3の場合、用紙の幅297mmに対してW1:320mm、W4:330mm、W5:380mm程度である。マグネット24bは、ステージ23の係止部Y1との対向面に固定されている。マグネット24bの後端24cとクランパー軸24aとの間に位置し、かつ、マスタ幅方向Zに位置するマスタクランパー24の両側縁24A,24Bには、マスタクランパー24の内方に凹んだ切欠24L,24Rがそれぞれ形成されている。この切欠24L,24Rは、マスタ挟持搬送手段6に設けられる一対のマスタ挟持部28,29と干渉しない大きさに形成されている。マスタクランパー24は、マグネット24bを設けた範囲を係止部Yとしている。なお、本願における、マスタの先端部をそのほぼ全幅にわたって係止する係止部とは、使用されるマスタ2の製版画像領域におけるマスタ幅方向の長さよりもその全幅W4が大きいものを示しており、印刷可能な最大用紙サイズがA3の場合、全幅W4は290mm以上となる。
【0034】
図1に示すように、張力付与手段8は、製版手段3とマスタ挟持搬送手段6との間に配置されており、プラテンローラー12と同じマスタ幅方向の長さを有する一対のローラー部材26,27を備えている。ローラー部材26,27はそれぞれの外周面を当接して対向配置されており、この例では、ほぼ水平に搬送されるマスタ2の向きをほぼ垂直方向に方向転換する機能を備えており、マスタ2の移動によって互いに連れ回りする。各ローラー部材26,27は、図1に実線で示す当接位置から二点鎖線で示す離間位置へそれぞれ移動可能に構成されており、互いの当接を解除可能に構成されている。
【0035】
ローラー部材26は、図5に示すように離間位置を占めたときに、マスタ貯容器1を装置本体にセットする際に一面9jに当接してガイドローラーとして機能し、ローラー部材27は、マスタ貯容器1を装置本体にセットする際に一面9jと直交する保持部9Aの一面9kと当接し、各切欠部9f,9g,9h,9iを後述する第1の位置に位置させるマスタ貯容器1のセット時において位置決め部材として機能する。
【0036】
ローラー部材27の一端にはトルクリミッター等のブレーキ装置27aが装着されており、ブレーキ装置27aは、マスタ搬送方向Xに向かって移動するマスタ2に対して、その移動方向に弛みが発生しないように一定の張力を付与する。ローラー部材26,27は、何れか一方を駆動モーターで回転駆動するように構成してもよく、この場合、駆動されるローラー部材の外周面の周速度を版胴4の外周面4aの周速度あるいはマスタ挟持搬送手段6の移動速度よりも遅く設定することで、移動するマスタ2に張力を与えることができる。
【0037】
マスタ挾持搬送手段6は、張力付与手段8とマスタ係止手段5との間に配置されており、マスタ2の先端部2Aを挾持しながらマスタ係止手段5に搬送するものである。マスタ挟持搬送手段6は、図9に示すように、マスタ2の両側部2a,2bを挟持する一対のマスタ挟持部28,29と、図10に示すように、マスタ挟持部28,29を実線で示す第1の位置と二点鎖線で示す第2の位置との間で往復移動させるマスタ挟持部移動手段31とを備えている。マスタ挟持搬送手段6には、切断手段7がマスタ挟持部28,29よりもマスタ搬送方向Xの下流側に装着されている。
【0038】
ここでいう第1の位置とは、図5、図8に実線で示すように、マスタ挟持部28,29が切断手段7よりもマスタ搬送方向Xの上流側に位置した各ガイドフィルム11a,11b,11c,11dを介して先端部2Aの両側部2a,2bの両角部を挟持する位置を指し、第2の位置とは、図10に二点鎖線で示すように、マスタ挟持部28,29が先端部2Aを挟持した状態でマスタ係止位置において開放されたマスタクランパー24の係止部Yを通過し、その係止部Yで先端部2Aを挟持可能な位置を指す。つまり、第1の位置とは、マスタ挟持搬送手段6が案内部9Bに近接する位置を指し、第2の位置とは、マスタ挟持搬送手段6がマスタ係止手段5に近接する位置を指すことになる。
【0039】
マスタ挟持部28,29は、図9に示すように、両側部2a,2bをその表面側及び裏面側から挟持するように開閉自在に設けられた上搬送クランパー28A,29A及び下搬送クランパー28B,29Bと、下搬送クランパー28B,29Bを開閉動作させる2個の電磁ソレノイド33と、2個の引張コイルバネ34とをそれぞれ備えている。
【0040】
上搬送クランパー28A,29Aは、図9に示すように板状部材からなり、マスタ挟持搬送手段6のフレーム32に支持されている。長穴30を有する下搬送クランパー28B,29B(28B側の図示は省略)は、各長穴30を上搬送クランパー28A,29Aに立設された2本の段付きピン35(28A側の図示は省略)に係合されることで上搬送クランパー28A,29Aに上下動自在に支持されている。
【0041】
上搬送クランパー28A,29A及び下搬送クランパー28B,29Bはそれぞれの一端部を曲折形成され、上搬送クランパー28A,29Aの外面と下搬送クランパー28B,29Bの内面とを当接可能に構成されており、各当接面によって上当接部28a,29a及び下当接部28b,29bが構成されている。
【0042】
上搬送クランパー28A,29Aには電磁ソレノイド33がそれぞれ取り付けられており、電磁ソレノイド33のプランジャ33aは下搬送クランパー28B,29Bにそれぞれ取り付けられている。また、上搬送クランパー28A,29Aと下搬送クランパー28B,29Bとの間には、引張コイルバネ34がそれぞれ張設されている。
【0043】
上述の構成により、上搬送クランパー28A,29Aと下搬送クランパー28B,29Bとは、通常は引張コイルバネ32の付勢力によって上当接部28a,29aと下当接部28b,29bとを当接させており、電磁ソレノイド33に通電されることで上当接部28a,29aと下当接部28b,29bとが開放されるように構成されている。
【0044】
切断手段7は、図9、図10に示すように、切断部材となる円形刃部40がマスタ搬送路に臨むように、フレーム32のマスタ搬送路との対向面32aに装着されている。切断手段7は、対向面32aの、マスタ幅方向Zに延在して固定されたレール41と、レール41に摺動自在に支持されたスライダー42と、スライダー42に回転自在に支持された円形刃部40とを有するロータリーカッターからなり、後述する駆動モーター43によってマスタ切断時に摺動する。円形刃部40は、その外周面が当接部28b,29bよりもやや下方に位置するようにスライダー42に支持されている。本実施例では、切断手段7がマスタ挟持搬送手段6と一体的に設けられることで往復移動時におけるマスタ挟持搬送手段6と切断手段7との干渉を防止する構成としたが、マスタ挟持搬送手段6と切断手段7とを別構成とし、切断手段7を、マスタ挟持搬送手段6の搬送経路より退避した位置に配設する構成としてもよい。
【0045】
マスタ挟持部移動手段31は、図10に示すように、フレーム32に支持された回動軸44と、この回動軸44の一端に固定された歯車45と、駆動源となる正逆回転可能な駆動モーター46とを備えている。駆動モーター46はフレーム32に固定されており、その出力軸46aには駆動歯車47が固定されている。歯車45には駆動歯車47が噛合しており、歯車45の駆動歯車47との噛合位置と対向する位置にはラック48が噛合している。回動軸44は、図9に示すように、フレーム32の両側部に起立して設けられた側面32b,32cの上部に軸受49で回転自在に支持されており、その両端を側面32b,32cよりも外方に突出させている。側面32b,32cの下部には、一対のガイドピン50がマスタ幅方向Zに突出して設けられている。
【0046】
回動軸44の両端とガイドピン50,50とは、図10に示すように、図示しない装置のフレームに形成した長孔51,52にそれぞれ遊嵌されている。長孔51,52は、それぞれ張力付与手段8から図1に示すマスタ係止位置にあるマスタ係止手段5に向かって延在して形成されており、マスタ挾持搬送手段6を張力付与手段8の直下流からマスタ係止手段5の係止部Yの下流まで、すなわち第1の位置から第2の位置まで摺動自在に支持している。これにより、マスタ挾持搬送手段6は、マスタ係止手段5まで案内されると共に、往復動作時に揺れないように構成されている。
【0047】
ここでいうマスタ係止位置とは、マスタ係止手段5によってマスタ2を係止するときに版胴4が停止する位置を指し、本実施例では、マスタクランパー24が図1、図5において上方を向いた状態で開閉する、マスタ係止手段5がほぼ真横に置かれた位置を指す。
【0048】
駆動モーター46は、第1の位置から第2の位置までマスタ挾持搬送手段6を移動させる往動時に図10において時計回り方向(正方向)に回転駆動され、第2の位置から第1の位置までマスタ挾持搬送手段6を移動させる復動時に図10において反時計回り方向(逆方向)に回転駆動される。
【0049】
マスタ挾持搬送手段6の近傍には、マスタ挾持搬送手段6が第1の位置に位置決めされたことを検知する第1位置検知センサー53と、第2の位置に位置決めされたことを検知する第2位置検知センサー54とが配置されている。第1位置検知センサー53はマスタ挾持搬送手段6が第1の位置を占めたときに、フレーム32の一部で押されることで第1位置検知信号を出力し、第2位置検知センサー54はマスタ挾持搬送手段6が第2の位置を占めたときに、フレーム32の一部で押されることで第2位置検知信号を出力するリミットスイッチからそれぞれ構成されている。マスタ挾持搬送手段6は、マスタ挟持部28,29が挟持位置(第1の位置)A(図8参照)にあるときをホームポジションとしている。
【0050】
本実施例において、マスタ挾持搬送手段6はほぼ垂直方向に往復移動可能に構成されている。ラック48(図10参照)は長孔51と平行に配置され、図示しないフレームに固定されている。このため、マスタ挾持搬送手段6は、駆動モーター46が駆動しないときに、駆動歯車47と歯車45とラック48との噛合により一定の位置に保持される。つまり、ラック48は、歯車45と相俟ってマスタ挾持搬送手段6の落下防止(ストッパー)手段及び位置決め手段を構成している。
【0051】
孔版印刷装置は、図11に示す制御手段55を備えている。制御手段55は、ROMやRAMを備えた周知のマイクロコンピューターから構成されており、各手段の駆動回路やコントローラーとして機能している。制御手段55には、マスタ設定指令手段となるマスタセットキー56、製版指令手段となる製版スタートキー57、印刷指令手段となる印刷スタートキー58、第1位置検知センサー53、第2位置検知センサー54、ステップモーター14,25、各種駆動モーター16、43、46、電磁ソレノイド33及び電源59がそれぞれ電気的に接続されている。
【0052】
制御手段55は、マスタセットキー56が押下されてマスタセット指令が出力されると、先ずマスタ挟持部28,29が開放されるように電磁ソレノイド33を駆動させる機能と、製版スタートキー57が押下されて製版指令が出力されると、図示しない印刷済みマスタを版胴4から剥離した後、製版済みのマスタ2をマスタ挾持搬送手段6を用いて版胴4上のマスタクランパー24に搬送すると共に、この製版済みのマスタ2を版胴4の外周面4aに巻装する製版動作を行う機能、印刷スタートキー58が押下されて印刷指令が出力されると、図示しないテンキーで設定された印刷枚数の印刷を実行する周知の印刷動作を行う機能等を備えている。
【0053】
以下、第1の実施例における孔版印刷装置の動作を説明する。
本発明の孔版印刷装置では、マスタの初期セット時において、マスタ2の先端2Aの両側部2a,2bの両角部をマスタ挟持部28,29で挟持した状態にする。従って、開いた状態で待機しているマスタ挟持部28,29へ先端2Aを挿入する必要があるが、マスタの腰が弱い場合、例えば熱可塑性樹脂フィルムのみからなるマスタを使用した場合やカールあるいは静電気による貼り付きがある場合には挿入が困難である。
【0054】
そこで、この孔版印刷装置へのマスタの初期セットでは、オペレーターの操作によりプラテンローラー12とローラー部材26,27とを図5に示すように離間位置に置き、次にマスタセットキー56を押下して電磁ソレノイド33を駆動させてマスタ挟持部28、29を開放させ、マスタ2を保持したマスタ貯容器1の保持部9Aの一面9jをプラテンローラー12とローラー部材26とに当接させながら、ローラー部材26,27の間に案内部9Bを上方から挿入する。保持部9Aの一面9kとローラー部材27とが当接するとマスタ貯容器1の移動が規制され、第1の位置で待機しているマスタ挟持部28,29に、マスタ2の両側部2a,2bをガイドフィルム11a,11b,11c,11dでガイドした案内部9Bが挿入される。
【0055】
この状態でオペレーターによって再度マスタセットキー56が押下されると、電磁ソレノイド33がオフされて下搬送クランパー28B,29Bが閉動作され、ガイドフィルム11a,11b,11c,11dがマスタ挟持部28,29によって挟持される。すなわち、図12、図13に示すように、案内部9Bで保持されたマスタ2の両側部2a,2bが、ガイドフィルム11a,11b,11c,11dを介して、第1の位置においてマスタ挟持部28,29に挟持される。
【0056】
次に、マスタ2の両側部2a,2bが、第1の位置でマスタ挟持部28,29に挟持された状態、すなわち図5に示す状態からオペレーターによってマスタ貯容器1が上方に移動されると、閉塞されたマスタ挟持部28,29より案内部9Bが引き出される。
【0057】
このとき、案内部9Bは、ガイドフィルム11a,11b,11c,11dをマスタ挟持部28,29と摺動させつつ上方へと引き抜かれ、マスタ挟持部28,29は、案内部9Bが完全に引き抜かれたときに、出口部9eより突出したマスタ2の先端2Aの両側部2a,2bを挟持する。これにより、腰の弱いマスタやカールがあるマスタを用いた場合であっても、その先端部を確実にマスタ挟持部28,29へセットすることができる。オペレーターは、マスタ貯容器1を上方に引き抜いた後、図1の右方向に移動させてマスタ貯容器装着部10に装着する。マスタ貯容器1が図1に示すようにマスタ貯容器装着部10に装着された後、オペレーターによりローラー部材26,27及びプラテンローラー12がそれぞれ当接位置に戻されてマスタセット動作が終了する。
【0058】
マスタセット動作完了後、製版スタートキー57が押下されると駆動モーター16が所定量回転駆動され、図示しない周知の排版手段によって印刷を終えた図示しない印刷済みマスタが版胴4の外周面4aから排除された後、版胴4がマスタ係止位置で停止する。版胴4がマスタ係止位置を占めると、ステップモーター25が駆動されてマスタクランパー24がマスタ係止位置において開状態となる。
【0059】
この状態で第1位置検知センサー53から第1位置検知信号の出力があると、マスタ挾持搬送手段6がホームポジションにあることが確認された後にステップモーター14が起動してプラテンローラー12が時計回りに回転駆動され、マスタ2が送り出されると同時に画像情報に応じてサーマルヘッド13の発熱素子が選択的に発熱され、プラテンローラー12によりサーマルヘッド13に押圧されたマスタ2が選択的に溶融され穿孔される。このように穿孔された製版済みのマスタ2は、プラテンローラー12によってマスタ搬送方向Xに送り出される。
【0060】
一方、第1位置検知センサー53から第1位置検知信号の出力があると、図10に示す駆動モーター46が時計回り方向に回転駆動され、同図においてマスタ挾持搬送手段6が第2の位置(下方)に向かって移動する。このときのマスタ挾持搬送手段6の移動速度は、プラテンローラー12によるマスタ搬送速度とほぼ同一の速度で搬送される。このように、マスタ挾持搬送手段6が往動することで、製版済みのマスタ2がローラー部材26,27との間で張力を付与されながらマスタクランパー24に向かって搬送される。このため、マスタ挾持搬送手段6で搬送される製版済みのマスタ2は、しわの発生を抑えられつつマスタクランパー24まで搬送される。
【0061】
マスタ挾持搬送手段6が、拡開しているステージ23とマスタクランパー24との間を通過して第2の位置を占めると、第2位置検知センサー54から第2位置検知信号が出力され、駆動モーター46が停止される。これにより図14、図15に示すように、マスタ挟持部28,29はマスタクランパー24の係止部Yを通過して切欠24L,24R内の挟持位置(第2の位置)Bにて停止する。そして、駆動モーター46が停止すると、ステップモーター25が閉方向に所定量回転駆動された後、電磁ソレノイド33が駆動される。
【0062】
これにより、マスタ挟持部28,29で挟持されて搬送された製版済みのマスタ2の先端部2Aは、ステージ23の係止部Y1とマスタクランパー24の係止部Yのマグネット24bとによって係止された後、マスタ挟持部28,29による挟持が開放される。このため、マスタ2が静電気を帯びていたりカールした状態であっても、ローラー部材26,27に巻き付かなくなり、確実にマスタクランパー24まで搬送することができる。
【0063】
電磁ソレノイド33がオンされると、版胴4が図1において矢印方向に回転駆動する。このときの版胴4の周速度は、プラテンローラー12の回転速度よりも僅かに遅い周速度に設定されている。
【0064】
さらに、第1位置検知センサー53から第1位置検知信号の出力があるまで駆動モーター46が反時計回り方向に回転駆動される。このとき、図16に示すように、下搬送クランパー28B,29Bがステージ下(図16において右側)の空間23Aを、上搬送クランパー28A,29Aがマスタクランパー24の上(図16において左側)をそれぞれ通過して移動し、この動作により第2の位置に置かれたマスタ挟持搬送手段6が第1の位置へと復動される。
【0065】
このように、マスタ挟持部28,29は、マスタ挟持搬送手段6の復動時において開放した状態で第2の位置から第1の位置へと移動されるため、その移動中にマスタ2の両側部2a,2bやマスタクランパー24の両側縁24A,24Bと干渉することがなくなると共に、復動時におけるマスタ挟持部28,29のマスタ幅方向Zへの移動(マスタ2の両側部2a,2bからのマスタ挟持部28,29の離脱)を省略することができ、マスタ挟持搬送手段6の構成を簡略化することができる。
【0066】
さらに、マスタ挟持部28,29が常時マスタ2の両側部2a,2bを挟持可能な位置でマスタ挟持搬送手段6が往復動するので、マスタ2の両側部2a,2bに上下方向のカールが発生している場合やマスタ2の先端部2Aに上下方向のカールが発生している場合であっても、マスタ挟持部28,29により確実にマスタ2の両側部2a,2bを挟持することができ、マスタ挟持搬送時におけるジャムの発生を確実に防止することができる。
【0067】
また、上述の構成では、マスタ係止手段5によってマスタ2を係止した状態でマスタ挟持搬送手段6によりマスタ2の両側部2a,2bを挟持することが可能であるので、使用済みのマスタが版胴4のステージ23とマスタクランパー24との間に貼り付いて排版ジャムが発生した場合に、マスタ挟持搬送手段6により貼り付いたマスタの除去を行うことができ、排版ジャム発生時における解除作業を簡易化することができる。
【0068】
ステップモーター14は、マスタ挟持搬送手段6の移動中、すなわち、図8においてマスタ挟持部28,29が第2の位置Bから第1の位置Aに向けて移動している間も駆動されているので、プラテンローラー12による製版搬送は行われている。このため、マスタ2は、プラテンローラー12とローラー部材26,27との間に、製版済みのマスタ2の過分送りを発生させる。駆動モーター16は、マスタ挟持部28,29が第1の位置Aを占めると再駆動され、過分送りされた製版済みのマスタ2が版胴4の回転により外周面4aに製版されつつ巻きつけられる。この際にブレーキ装置27aが作用するので、過分送りされた製版済みのマスタ2に対してマスタ搬送方向Xへの張力が与えられ、マスタ2は弛みを取り除かれて搬送される。
【0069】
ステップモーター14を所定量回転駆動してマスタ2が所定量搬送されると、ステップモーター14の作動が停止される。そして、上述の過分送り分と、版胴4の周速度とプラテンローラー12の回転速度との間の僅かの差により生じる弛み分との合計である、所定量分の版胴4の回転駆動が行われると、版胴4の外周面4aへ製版済みのマスタ2が巻装されたものとして駆動モーター16が停止される。
【0070】
製版動作完了後、制御手段55は電磁ソレノイド33をオフさせ、その状態を保持したまま切断手段7の駆動モーター43を駆動する。これにより、スライダー42が図9において右方から左方に摺動され、製版済みのマスタ2の後端が円形刃部40で切断される。
【0071】
このため、製版済みのマスタ2は、その先端部2Aを版胴4のマスタクランパー24に係止され、その後端部のマスタ搬送方向Xの上流側の部位をマスタ挟持部28,29に挟持された状態で切断されるので、マスタ2を良好に切断できるとともに、切断後にマスタ2の次の製版で使用される先端部2Aを既にマスタ挟持部28,29で挟持していることとなり、次の製版開始時においてマスタ2の先端部2Aをマスタ挟持部28,29まで搬送する必要がなくなる。よって、マスタ2が帯電していたりマスタ2に巻き癖が残っていた場合であっても、製版手段3とマスタ挟持搬送手段6との間においてマスタ2が詰まることが防止される。
切断後、駆動モーター16が版胴4を図1の矢印方向に回転させ、外周面4aに製版済みのマスタ2が巻装される。
【0072】
この後、制御手段55は、駆動モーター16を駆動して版胴4を図1の矢印方向に低速で回転駆動させ、図示しない給紙装置から1枚の印刷用紙22を周知のレジストローラー対60に向けて給紙させる。このとき、インキローラー17も版胴4の回転方向と同方向に回転され、版胴4の内周面にインキが供給される。レジストローラー対60は、版胴4の回転と同期した所定のタイミングで、版胴4とプレスローラー21との間に印刷用紙22を給送する。すると、版胴4の外周面4aから離間したプレスローラー21が、図1において実線で示す離間位置から二点鎖線で示す押圧位置まで移動して、矢印方向に回転駆動する版胴4の外周面4aに巻装された製版済みのマスタ2に印刷用紙22を押圧する。これにより、製版済みのマスタ2の穿孔部分からインキが滲み出しつつ製版済みのマスタ2が外周面4aに密着され、所謂版付けが完了し、各駆動モーターやステップモーターが停止されて印刷待機状態となる。
【0073】
図示しないテンキーにより印刷枚数が設定されて、印刷スタートキー58が押下されると、版胴4が高速で回転されると共にそれと同期した所定のタイミングでプレスローラー21及びレジストローラー対60が駆動され、設定された枚数部の印刷が印刷用紙22に行われる。
【0074】
本実施例では、マスタ2の先端部2Aを、第1の位置(挟持位置A)において開放状態で待機しているマスタ挟持部28,29へ、ガイドフィルム11a,11b,11c,11dによって両側部2a,2bをガイドしつつ挿入し、マスタ挟持部28,29でガイドフィルム11a,11b,11c,11dを介して両側部2a,2bを挟持した後、マスタ貯容器1を上方へと移動させることにより案内部9Bから引き出された先端部2Aがマスタ挟持部28,29に挟持される構成としたが、先端部2Aがマスタ挟持部28,29へ挿入された後、マスタ貯容器1を上方へと移動させる前にマスタ挟持搬送手段6によってマスタ2を搬送し、版胴4のマスタ係止手段5で先端部2Aを係止した後にマスタ貯容器1を上方へと移動させ、その後マスタ貯容器装着部10にマスタ貯容器1を装着させる構成としてもよい。
【0075】
特に腰や引張強度の弱いマスタを用い、両側部2a,2bをマスタ挟持部28,29で挟持した後にマスタ貯容器1を引き抜く場合には、引き抜き作業を慎重に行わないとマスタ挟持部28,29からのマスタ抜けやマスタ2の破れを生じる虞があるが、先端部2Aを版胴4のマスタ係止手段5でマスタ2の全幅にわたって係止した後にマスタ貯容器1の引き抜き作業を行えば上記不具合を解消することができる。
【0076】
また、上記実施例では、先端部2Aをマスタ挟持部28,29で挟持した後に切断手段7で所定の長さに切断しているが、比較的帯電しにくいマスタまたは帯電しにくい環境下の場合には、マスタ2の巻き付き等の不具合がほとんど発生しないので、マスタ挟持部28,29での挟持後に製版済みのマスタ2を切断しなくともよい。
【0077】
上記実施例中、切断手段7をフレーム32に装着し、マスタ挟持搬送手段6の往復動作に伴い切断手段7を一体的に移動させるように構成したが、これに限らず、孔版印刷装置の図示しないフレーム等に切断手段7を装着して、マスタ挟持搬送手段6と切断手段7とを別々に設けても無論構わない。この場合、マスタ挟持搬送手段6が第1の位置を占めるときのマスタ挟持部28,29よりもマスタ搬送方向Xの下流側に切断手段7を配置する。また、切断手段7として円形刃部40を摺動させるロータリーカッターを例示したが、固定刃に対して可動刃を回転させるタイプや所謂ギロチンタイプのもの、さらには熱線方式等の周知のものを採用してもよい。
【0078】
【発明の効果】
請求項1、請求項4記載の発明によれば、マスタ係止手段が、マスタ挟持搬送手段によってその先端部の両角部を挟持搬送されたマスタをそのほぼ全幅にわたって係止する係止部を有するので、腰の弱いマスタや先端がカールしているマスタを用いた場合であっても、しわの発生を防止しつつマスタを良好に版胴外周面上に係止することが可能となる。
【0079】
請求項2記載の発明によれば、マスタ挟持部がマスタの両側部を挟持可能な位置でマスタ挟持搬送手段が往復変位するので、マスタの両側部に上下方向のカールが発生している場合やマスタの先端部に上下方向のカールが発生している場合であってもマスタ挟持部により確実にマスタの両側部を挟持することができ、マスタ挟持搬送時におけるジャムの発生を確実に防止することができる。
【0080】
請求項3記載の発明によれば、マスタ係止手段によってマスタを係止した状態でマスタ挟持搬送手段によりマスタの両側部を挟持することが可能となり、使用済みのマスタが版胴のステージとマスタクランパーとの間に貼り付いて排版ジャムが発生した場合に、マスタ挟持搬送手段により貼り付いたマスタの除去を行うことができ、排版ジャム発生時における解除作業を簡易化することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例を示す孔版印刷装置の要部概略正面図である。
【図2】本発明の一実施例に用いられるマスタ貯容器の一例を示す断面図である。
【図3】本発明の一実施例に用いられるマスタ貯容器の平面図である。
【図4】本発明の一実施例に用いられるマスタ貯容器の案内部を説明する拡大図である。
【図5】本発明の一実施例におけるマスタ貯容器の装着を説明する図である。
【図6】本発明の一実施例に用いられるステージを説明する斜視図である。
【図7】本発明の一実施例に用いられるステージを説明する図である。
【図8】本発明の一実施例に用いられるマスタ挟持搬送手段の第1の位置と第2の位置とを説明する図である。
【図9】本発明の一実施例に用いられるマスタ挟持搬送手段を示す斜視図である。
【図10】本発明の一実施例に用いられるマスタ挟持搬送手段の移動手段を説明する図である。
【図11】本発明の一実施例に用いられる制御手段のブロック図である。
【図12】本発明の一実施例に用いられるマスタ挟持搬送手段の第1の位置を説明する図である。
【図13】本発明の一実施例に用いられるマスタ挟持搬送手段の第1の位置を説明する背面図である。
【図14】本発明の一実施例に用いられるマスタ挟持搬送手段の第2の位置を説明する図である。
【図15】本発明の一実施例に用いられるマスタ挟持搬送手段の第2の位置を説明する背面図である。
【図16】本発明の一実施例に用いられるマスタ挟持搬送手段の第2の位置から第1の位置への移動を説明する背面図である。
【符号の説明】
2 マスタ
2A 先端部
2R マスタロール
2a,2b 両側部
3 製版手段
4 版胴
4a 外周面
5 マスタ係止手段
6 マスタ挟持搬送手段
7 切断手段
10 マスタ貯容部(マスタ貯容器装着部)
23 ステージ
24 マスタクランパー
28,29 マスタ挟持部
28A,29A 上搬送クランパー
28B,29B 下搬送クランパー
A 第1の位置
B 第2の位置
X マスタ搬送方向
Y,Y1 係止部
Claims (4)
- マスタをロール状に巻成してなるマスタロールを貯容するマスタ貯容部と、
前記マスタの先端部をそのほぼ全幅にわたって係止する係止部を有するマスタ係止手段を具備した版胴と、
前記マスタに対して画像情報に応じた製版を行う製版手段と、
前記マスタを一定の長さに切断する切断手段と、
前記マスタの先端部を挟持する開閉自在な一対のマスタ挟持部を有し、前記版胴が前記マスタ係止手段によって前記マスタの先端部を係止するマスタ係止位置に停止したときの前記マスタ係止手段の近傍であって前記切断手段よりも前記マスタの搬送方向上流側の位置である、前記マスタ挟持部により前記マスタの先端部を挟持する第1の位置と、前記係止部を通過して前記係止部で前記マスタの先端部を係止可能な位置である、前記マスタの先端部を挟持した前記マスタ挟持部を開放させる第2の位置との間で往復変位可能なマスタ挟持搬送手段とを具備した印刷装置であって、
前記マスタ係止手段は、前記版胴の外周面上に設けられ両端部が前記版胴の外周面から離隔したステージとこのステージに開閉自在に設けられたマスタクランパーとを有し、前記ステージ及び前記マスタクランパーが前記係止部をそれぞれ有することを特徴とする孔版印刷装置。 - 前記マスタ挟持搬送手段は、前記マスタ挟持部が前記マスタの両側部を挟持可能な位置で往復変位することを特徴とする請求項1記載の孔版印刷装置。
- 前記マスタ挟持部は開閉自在な上搬送クランパーと下搬送クランパーとを有し、前記マスタ係止手段が前記マスタの先端部を係止した後に前記上搬送クランパーと前記下搬送クランパーとが開放され、前記マスタ挟持搬送手段が第2の位置から第1の位置へ変位する際に、前記上搬送クランパーが前記マスタクランパーの端部上方を、前記下搬送クランパーが前記ステージの端部下方をそれぞれ通過することを特徴とする請求項2記載の孔版印刷装置。
- 前記マスタ挟持部は、前記マスタの先端部の両角部を挟持することを特徴とする請求項1、請求項2または請求項3記載の孔版印刷装置。
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