本発明は、複数の構造ユニットを互いに連結して構築された建築構造体、特に六角形格子を単位格子として面状に延在するハニカム形状のメインフレームを有する建築構造体に関する。さらにその構造ユニット並びにこれを用いた建築構造体の構築工法に関する。
従来、プレキャストコンクリート部材からなる構造ユニットを用いて構造躯体を構築する工法がいくつか知られている。
特許文献1では、三角形の単位格子を接合してドーム形状とした建築構造体に用いるプレキャストコンクリート部材とその接合方法が開示されている。特許文献1の建築構造体は、三角形格子の各頂点を中心に6本の辺が放射状に分岐している。この構造を構築するためのプレキャストコンクリート部材として、中心に位置する平面六角形の接合部材と、この接合部材の6つの側面に接合される6本の柱状部材とが用いられる。各柱状部材は両端部に大径部分を有しており、PC鋼材を1つの柱状部材の大径部分の肩部から挿入し接合部材を貫通させて対向する柱状部材の肩部まで通し、ポストテンションを導入して定着し接合する。放射状に分岐する柱状部材が偶数本の場合はこのように接合される。
なお、特許文献1の図8及び図9には、略三角形の接合部材の側面に3本(すなわち奇数本)の柱状部材を接合する方法が示されており、接合部材の内部に定着部とPC鋼材を埋設しPC鋼材の先端を突出させておき、これを柱状部材の大径部分に通しポストテンションを導入して定着している。
特許文献2では、建築物の構造柱や高架橋の橋脚を六角構造とするための三つ又柱が開示されている。この三つ又柱は、鉛直に配置される六角支柱の下端部に斜め下方に延びる3本の梁柱が接合されている。六角支柱の上端と3本の梁柱の下端とを順次連結することにより、特許文献2の図4の平面図に示すように上方から見た場合に六角形格子に見える構造が形成される。
一方、従来、高層または超高層の建築構造体としては直柱と水平梁とを3次元格子状に組み合わせた純ラーメン架構が一般的であったが、全ての柱間に梁があるため内部設計に制約が多いという欠点があった。これに対し、建築物の外周に連続的に配置した柱とそれをつなぐ梁で構成されるチューブ架構は、内部に柱や梁のない空間を確保できるため、設計上の自由度が大きいという利点がある。また、建築物全体がチューブ状に変形することにより耐震性、耐風圧性にも優れるとされている。
また、従来、単位格子を六角形格子として繰り返しパターンで連結したハニカム形状をもつ構造は、強固であることが知られており、建築物の種々の箇所または建築部材として利用されている(特許文献1、3、4等)。ハニカム形状のチューブ架構への適用例として、特許文献5には、水平面内で六角形格子を連結し、さらに鉛直方向に直柱を介して積層した構造が知られている。
ハニカム形状のチューブ架構への他の適用例として、特許文献6には、プレキャストコンクリート製の断面六角形の柱状の型枠エレメントを用い、それらの外側面同士を当接させて水平断面がハニカム状となる壁を組み立て、壁で囲まれた内部の柱状空間にコンクリートを打設することを繰り返して上方へ延ばすことにより構築される橋脚構造が記載されている。
さらに、本願の優先権主張の基礎とする国際特許出願PCT/JP2006/316868の国際調査報告において特許文献7〜8が引用されている。特許文献7は、三角形のパネルユニットの頂部に設けたヒンジ部を介してパネル同士を揺動自在に結合し、複数個のパネルユニットを平面上で接合してから、吊り下げまたは押し上げてドーム状とした後に固定する構造を開示している。特許文献8は、六角形ではない直方形状のパネルユニット同士を緊張材で接合した壁構造を開示している。特許文献9は、六角形または五角形のパネルを結合したドーム構造を開示している。
特開2000−144909号公報
特開平9−328816号公報
特開平9−4130号公報
特開平10−18431号公報
特開平9−60301号公報
特開平6−287913号公報
特開昭61−83738号公報
特開昭53−43217号公報
特開昭61−36435号公報
特許文献5に示された構造は、水平方向に平坦面として延在するハニカム形状を有するが、この構造は、建築物の外周側面を構成するチューブ架構のようにほぼ鉛直方向に立設されて面状に延在するハニカム形状とは本質的に異なるものである。特許文献6についても同様である。
六角形格子をハニカム形状に接合したチューブ架構が実現されれば、極めて強固な構造となることが期待される。このようなチューブ架構を構築するには、六角形格子を連結して立設された平面または曲面を形成する工法が必要となる。ハニカム構造は基本的に同じ形状の単位構造の集合であるから、これを構築する際には、1つ1つの柱と梁を接合していくよりも、一定形状の構造ユニットを繰り返し連結して構築すれば施工性がよい。従って、ハニカム形状をもつ構造を効率的に構築することができる一定形状の構造ユニットに対する要望がある。
特許文献1のプレキャストコンクリート部材は、中心から複数の辺が放射状に延びている単位構造をもつ建築構造体を構築することが可能である。しかしながら、全ての辺の端点となる中心は最も応力が集中する点であるため、この中心の位置において1つの接合部材に対し全ての柱状部材の接合を行うことは構造安定性の点から好ましくない。
また、特許文献2の三つ又柱は、中心から4つの辺が放射状にかつ立体的に延びている単位構造であるため、これらを接合した六角構造は必然的に立体的な六角構造となる。従って、六角形格子をハニカム状に接合したチューブ架構の平面または曲面を構築することはできない。
なお、特許文献7は、1つ1つのパネルユニットを順次連結して全体を構築していく工法ではなく予め全パネルを平面的に連結した後にドーム形状に変形させて固定する工法である。また、特許文献8では、緊張材を垂直方向または水平方向に配置してパネルユニット同士を連結する構造であり、ハニカム形状とは無関係である。特許文献9についても、主としてドーム形状とすることにより強度を確保する構造である。従って、特許文献7〜8に基づいては、構造ユニット同士が接合されたハニカム形状のメインフレームをもつチューブ架構を実現できない。
以上の現状に鑑み本発明は、立設され面状に延在するハニカム形状のメインフレームをもつ建築構造体を提供することを目的とする。また、斯かる建築構造体を構築するための構造ユニット及びその工法を提供することを目的とする。
上記の目的を達成するべく、本発明は以下の構成を提供する。
請求項1に係る建築構造体は、複数の構造ユニットを連結したメインフレームを有する建築構造体であって、
左右対称の六角形格子(H1,H2)を単位格子として面状に延在しかつ立設された仮想ハニカム形状に対し、前記複数の構造ユニットを配置することにより形成されており、
前記構造ユニット(1,2,3,4,5,6)はプレキャストコンクリート製であって、その外周面は、前記仮想ハニカム形状の面に沿って配置される正面と背面とからなる一対のパネル面と、前記一対のパネル面の各々の周縁間に延在する側面とを備え、該側面には、同一形状の3つの接合面と、各接合面の間に延在する非接合面とが交互に設けられており、
前記複数の構造ユニットは、各々のパネル面が前記仮想ハニカム形状に面に沿うように前記六角形格子(H1,H2)の各頂点(h1,h2,h3,h4,h5,h6)に1つずつ配置され、かつ、各構造ユニットは、正面視にて該六角形格子の1つの頂点を内部に含むとともにその頂点から分岐した3つの辺の各中点までを内部に含むように配置され、
隣り合う2つの前記構造ユニットは、前記六角形格子の辺の中点にて互いの接合面同士を対向させて接合されかつ該接合面(s1,s2,s3,s4,s5,s6)はその辺と交差しており、
各六角形格子の中央部分には、その六角形格子上に配置された全ての構造ユニットの各々の非接合面により囲まれた開口部(W)が形成されていることを特徴とする。
請求項2に係る建築構造体は、請求項1における前記プレキャストコンクリート製の構造ユニットにおいて、正面視にて前記一対のパネル面の各々の形状が六角形であり、前記六角形の1つおきの辺同士の間の側面を前記接合面としたことを特徴とする。
請求項3に係る建築構造体は、請求項2における前記一対のパネル面の六角形が短辺と長辺とを交互に配置されており、前記短辺同士の間の側面を前記接合面としたことを特徴とする。
請求項4に係る建築構造体は、請求項1における前記プレキャストコンクリート製の構造ユニットにおいて、正面視にて前記パネル面の形状が中心から三方向に分岐して延びる3本の脚部を具備し、前記3本の脚部の各々の先端における側面を前記接合面としたことを特徴とする。
請求項5に係る建築構造体は、複数の構造ユニットを連結したメインフレームを有する建築構造体であって、立設されかつ面状に延在する仮想ハニカム形状に対し、正面視にてその単位格子である六角形格子(H1,H2)における隣り合う2つの頂点の双方を含む位置に1つの前記構造ユニット(7,8,9,10,11,12,13,14,15)がそれぞれ配置され、隣り合う2つの前記構造ユニットの各々の外周面の一部に設けた接合面同士を対向させて該2つの構造ユニットを接合する手段を備え、前記接合された面は前記六角形格子のいずれかの辺と交差し、かつ各六角形格子の中央部分にはその六角形格子上に配置された全ての構造ユニットにより囲まれた開口部(W)が形成されたことを特徴とする。
請求項6に係る建築構造体は、請求項5における前記構造ユニットがプレキャストコンクリート製であってその外周面が互いに対向する正面と背面とからなる一対のパネル面と前記一対のパネル面の各々の周縁間に延在する側面とを備え、前記側面の一部として複数の前記接合面を設けたことを特徴とする。
請求項7に係る建築構造体は、請求項6における前記プレキャストコンクリート製の構造ユニットにおいて、正面視にて前記一対のパネル面の各々の形状が八角形であり、前記八角形の1つおきの辺同士の間の側面を前記接合面としたことを特徴とする。
請求項8に係る建築構造体は、請求項7において、前記一対のパネル面の八角形は短辺と長辺とを交互に配置されており、前記短辺同士の間の側面を前記接合面としたことを特徴とする。
請求項9に係る建築構造体は、請求項6における前記プレキャストコンクリート製の構造ユニットにおいて、正面視にて前記パネル面の形状が中心から四方向に分岐して延びる4本の脚部を具備し、前記4本の脚部の各々の先端における側面を前記接合面としたことを特徴とする。
請求項10に係る建築構造体は、請求項1または6において、隣り合う2つの前記プレキャストコンクリート製の構造ユニット同士を接合する手段が、前記対向した接合面と交差して双方の構造ユニットを貫通する緊張材と、前記緊張材にポストテンションを付加してその両端を各々の構造ユニットにおける前記側面上でそれぞれ定着する定着具とを備えたことを特徴とする。
請求項11に係る建築構造体は、請求項5において、前記構造ユニットが鉄骨造、鉄筋コンクリート造、鉄骨鉄筋コンクリート造、または木造であることを特徴とする。
請求項12に係る建築構造体は、複数の構造ユニットを連結したメインフレームを有する建築構造体であって、立設されかつ面状に延在する仮想ハニカム形状に対し、正面視にてその単位格子である六角形格子(H1,H2)における1つの頂点を含む位置に配置された第1の構造ユニット(1,2,3,4,5,6)と、前記六角格子における隣り合う2つの頂点の双方を含む位置に配置された第2の構造ユニット(8,9,10,11,12,14,15,16)とを備え、隣り合う2つの前記第1及び/または第2構造ユニットの各々の外周面の一部に設けた接合面同士を対向させて接合する手段を備え、前記接合された面は前記六角形格子のいずれかの辺と交差し、かつ各六角形格子の中央部分にはその六角形格子上に配置された第1及び/または第2の全ての構造ユニットにより囲まれた開口部(W)が形成されたことを特徴とする。
請求項13に係る建築構造体は、請求項1、5、6または12において、鉛直方向に連続的に接合された複数の前記構造ユニットにおける相対的に上方に配置される前記構造ユニットと相対的に下方に配置される前記構造ユニットの形状が異なることにより、前記上方に配置される構造ユニットにより形成される前記開口部の大きさが、前記下方に配置される構造ユニットにより形成される前記開口部よりも大きいことを特徴とする。
請求項14に係る構造ユニットは、請求項1〜13のいずれかに記載の建築構造体を構築するために用いられるものである。
請求項15に係る構造ユニットは、請求項1に記載の建築構造体のメインフレームに用いられる構造ユニットであって、
前記3つの接合面の各々と、該接合面に隣り合っていない非接合面との間にそれぞれ貫通する3つの緊張材挿入孔を互いに重ならないように設けたことを特徴とする。
請求項16に係る構造ユニットは、請求項15における前記プレキャストコンクリート製の構造ユニットにおいて、正面視にて前記パネル面の形状が六角形であり、前記六角形の1つおきの辺同士の間の側面を前記接合面としたことを特徴とする。
請求項17に係る構造ユニットは、請求項16における前記パネル面の六角形が短辺と長辺とを交互に配置されており、前記短辺同士の間の側面を前記接合面としたことを特徴とする。
請求項18に係る構造ユニットは、請求項15における前記プレキャストコンクリート製の構造ユニットにおいて、正面視にて前記パネル面の形状が中心から三方向に分岐して延びる3本の脚部を具備し、前記3本の脚部の各々の先端における側面を前記接合面としたことを特徴とする。
請求項19に係る構造ユニットは、請求項5に記載の建築構造体のメインフレームに用いられるプレキャストコンクリート製の構造ユニットであって、その外周面が互いに対向する正面と背面とからなる一対のパネル面と前記一対のパネル面の各々の周縁間に延在する側面とを備え、連結される際に隣接する構造ユニットと接合するための複数の接合面が前記側面の部分的な面として設けられ、前記複数の接合面の各々と前記側面の別の部分との間を貫通する複数の緊張材挿入孔を互いに重ならないように設けたことを特徴とする。
請求項20に係る構造ユニットは、請求項19における前記プレキャストコンクリート製の構造ユニットにおいて、正面視にて前記パネル面の形状が八角形であり、前記八角形の1つおきの辺同士の間の側面を前記接合面としたことを特徴とする。
請求項21に係る構造ユニットは、請求項20における前記パネル面の八角形が短辺と長辺とを交互に配置されており、前記短辺同士の間の側面を前記接合面としたことを特徴とする。
請求項22に係る構造ユニットは、請求項19における前記プレキャストコンクリート製の構造ユニットにおいて、正面視にて前記パネル面の形状が中心から四方向に分岐して延びる4本の脚部を具備し、前記4本の脚部の各々の先端における側面を前記接合面としたことを特徴とする。
請求項23に係る構造ユニットは、請求項19における前記プレキャストコンクリート製の構造ユニットにおいて、1つの前記構造ユニットにおける互いに対向する一対の非接合面と交差する分割面で等分割した半ユニットを、前記分割面を対向させて接合することにより前記1つの構造ユニットが形成されることを特徴とする。
請求項24に係る半ユニットは、請求項19に記載の構造ユニットを、互いに対向する一対の非接合面と交差する分割面で等分割した2つの部材の一方の形状を有することを特徴とする。
請求項25に係る構造ユニットは、請求項15または19において、前記一対のパネル面に対し垂直な方向に前記構造ユニットを貫通する複数のスラブ接続孔を設けたことを特徴とする。
請求項26に係る構造ユニットは、請求項15または19において、前記接合面が山形の2つの傾斜面または谷形の2つの傾斜面のいずれかにより形成されたことを特徴とする。
請求項27に係る構造ユニットは、請求項15または19において、前記仮想ハニカム形状が曲面である部分に配置され、屈曲部を有することを特徴とする。
請求項28に係る建築構造体の構築工法は、請求項15または19に記載の構造ユニットを複数個連結したメインフレームを有する建築構造体の構築工法であって、隣り合う2つの構造ユニットを、各々の前記緊張材挿入孔が互いに連通するように各々の接合面を対向させて配置し、前記連通した前記緊張材挿入孔に緊張材を貫挿し、前記緊張材にポストテンションを付加して定着することにより前記2つの構造ユニットを接合することを特徴とする。
(A)主として請求項1、5、12または14に係る発明の効果は、次の通りである。本発明の建築構造体は、複数の構造ユニットを連結したメインフレームを有し、一実施形態においては各構造ユニットは、立設されかつ面状に延在する仮想ハニカム形状の正面視にてその単位格子である左右対称の六角形格子の各頂点を内部に含むとともに、その頂点から分岐する3つの辺の各中点までの辺を内部に含む位置にそれぞれ配置されている。また、別の実施形態では、単位格子である六角形格子における隣り合う2つの頂点の双方を含む位置に1つの構造ユニットがそれぞれ配置されている。さらに別の実施形態では、1つの頂点を含む位置に配置された第1の構造ユニットと2つの頂点を含む位置に配置された第2の構造ユニットが混在している。ここで、「仮想ハニカム形状(以下、単に「ハニカム形状」と略称する場合がある)」自体は、実体をもつ部材ではないが、各構造ユニットを配置する位置及び隣接する構造ユニット同士の位置関係を規定するために、実空間に存在するものと想定された形状である。
上記いずれの配置形態においても、隣り合う2つの構造ユニット同士の各々の外周面の一部に設けた接合面を対向させ、六角形格子の辺の中点において接合され、その接合面は辺と交差している。さらに、このように複数の構造ユニットを連結したとき、各六角形格子の中央部分にはその六角形格子上に配置された全ての構造ユニットの各々の非接合面により囲まれた開口部が形成される。
このようにして連結された複数の構造ユニットが、仮想ハニカム形状を構成する全ての六角形格子の各頂点及び各辺を覆うように配置することができる。すなわち、1つの六角形格子に着目すると、6つの辺に沿って複数(6個、5個、4個または3個)の構造ユニットが環状に連結され中央部分に開口部が形成される。この結果、立設され面状に延在するハニカム形状のメインフレームをもつ建築構造体が実現される。特に、チューブ架構の周面自体をハニカム構造とすることができる。また、このハニカム形状のメインフレームを構成する構造ユニットに対しては、任意の位置においてスラブを設けることができるため、各階層の高さを自在に設計できる。
本発明によるハニカム形状のメインフレームをもつ建築構造体では、最も応力の集中する六角形格子の各頂点の位置を含むように構造ユニットが配置されている。すなわち、各頂点の位置では構造ユニット同士の接合を行わないので応力に対して非常に強い。例えば、前述の特許文献1や特許文献5のように、応力集中する三角形や六角形の各頂点において線状部材を接合する構造に比べ、構造安定性に優れている。さらに、本発明によるハニカム形状の建築構造体では、2つの構造ユニット同士を接合した面は六角形格子のいずれかの辺と交差している。すなわち、2つの構造ユニットの接合は、六角形格子の各辺上で行われるが、この部分は最も応力が小さいため好適である。この結果、本発明の構造ユニットを用いたメインフレームでは、大スパンの架構が可能となる。
また、本発明の構造ユニットは、上記の配置条件及び接合条件に関係しない部分の形状については比較的自由に設計できる。例えば、構造ユニットにおける接合面以外の外周面(すなわち非接合面)の形状を変えることで、六角形格子の中央部分に形成される開口部の大きさを変えることができる。また、デザイン的なバリエーションにも対応できる。
また、本発明の構造ユニットを用いた建築構造体は、同形状または類似形状の構造ユニットを、基本的に繰り返しパターンに従って連結して構築するものであるから、構造ユニットを、例えば1種類、または多くとも2、3種類に統一することが可能である。これにより、量産性にも優れる。この結果、製造コストを低減でき、施工性の向上も図れ、工期の短縮も可能である。但し、本発明の構造ユニットは、互いに接合可能な極めて多種の類似形状を作製することが可能であるため、その種類の数に上限があるわけではない。
(B)請求項1〜4、6〜10、15〜27に係る発明の効果は、次の通りである。本発明の構造ユニットはプレキャストコンクリート(以下、「PC」と略称する)製とすることが好適である。(以下、PC製の構造ユニットを「PCパネル」と称する場合がある。)PCパネルは、その外周面が互いに対向する正面と背面とからなる一対のパネル面と、これら一対のパネル面の各々の周縁間に延在する側面とを備え、側面の一部として複数の上記接合面が設けられている。PCパネルは、そのパネル面が仮想ハニカム形状の面に沿うように配置されることになる。パネル面の形状としては、例えば、三股形、六角形、八角形またはX形等がある。型枠により自在に形状を設計できる。
PCパネルは、一般の鉄筋コンクリートに比べて強度が高いため、振動に強い建築構造体を構築できる。この結果、揺れが少なく居住性の高い建築物が実現できる。
PCパネルは、一般的に建築用部品として工場生産されるため、品質管理が容易である。従って、生産された構造ユニット及びこれを用いて構築された建築構造体の安全性に対する信頼性を獲得し易い。構造の履歴情報を保存管理し易い。
また、PCパネルは、そのパネル面が面的な拡がりの大きい形状(例えば、六角形や八角形)である方が剛性が高い。加えて、面的な拡がりが大きい形状であるほど、コンクリート量も大きくなり重量がある。そして、面的な拡がりが大きいことの相反効果として、これらの構造ユニットにより形成される開口部は小さくなる。これに対し、面的な拡がりの小さい形状すなわち線材に近い形状(例えば、三股形やX形よりも)では、相対的に剛性は低く、コンクリート量も少なく軽量となる。そして、面的な拡がりが小さいことの相反効果として、これらの構造ユニットにより形成される開口部は大きくなる。これらの形状の異なる(すなわち剛性の異なる)複数種のPCパネルを組み合わせて、剛性を自在に制御した建築構造体を構築することができる。
例えば、下層階では面的拡がりの大きいPCパネルを用いて開口部を小さくし、上層階では面的拡がりの小さいPCパネルを用いて開口部を大きくすることが好適である(請求項13)。段階的に開口部を大きくしていってもよい。このように構築された建築構造体は、耐震性に優れている。これは、高層または超高層建築物では、上部が軽く下部が重く強固な形状であるほど耐震性が高いためである。また、このような建築構造物では、上層階のコンクリート量が低減されることにより、コンクリートを無駄なく合理的に使用できる。
さらに、構造ユニットをPCパネルとした場合、運搬の効率化のために輸送車両の大きさに適した大きさに設定することもできる。また、PC製とすることにより、型枠を効率的に転用できる。
またさらに、高強度コンクリートを使用すれば建築構造体を長寿命化できるため、省資源に寄与でき、SI(スケルトン・インフィル)分離工法のスケルトンとして好適である。
(C)主として請求項10、15または19に係る発明の効果は、次の通りである。構造ユニットをPCパネルとした場合、隣り合う2つの構造ユニット同士を接合する手段が、対向した接合面と交差して双方の構造ユニットを貫通する緊張材と、緊張材にポストテンションを付加してその両端を各々の構造ユニットにおける側面上でそれぞれ定着する定着具とを備えていることが好適である。ポストテンションを付加して定着することにより強固な接合強度が得られる。
また、1つのPCパネルが三方または四方の異なる方向に延在する3本または4本の緊張材により隣り合う別のパネルユニットとそれぞれ接合されることによっても強固な接合強度を確保している。
また、ポストテンションによるプレストレスの導入により、長期応力に対しても曲げやひび割れを発生せず(発生してもプレストレスによって塞がる)、コンクリートの全断面が圧縮に対しても引張に対しても有効に働く。加えて、ひび割れを生じないことから、挿入された緊張材の防食の点でも優れている。
本発明によるプレストレスを導入されたPCパネルの構造ユニットを用いて構築されたハニカム形状のメインフレームは、従来のプレストレストコンクリート・ラーメン構造による架構に比べて強固となる。例えば、従来の15階建てのラーメン架構は固有周期が約1.5秒とかなり柔軟な躯体であるの対し、本発明による15階建ての架構は固有周期が約0.3秒であり、非常に硬い躯体となる。このことにより、本発明は、免震構造の上部躯体の構築に好適である。免震構造の上部躯体が柔軟であると、アイソレータの免震効果を低減させるおそれがあるからである。
(D)主として請求項25に係る発明の効果は次の通りである。構造ユニットをPCパネルとした場合、一対のパネル面に対し垂直な方向に構造ユニットを貫通する複数のスラブ接続孔を設けることが好適である。スラブを接続可能な適宜の位置にスラブ接続孔を設けておくことにより、コンクリートスラブとの間で緊張材を貫挿させてポストテンションを付加し定着することができる。これによりスラブとの強固な接合強度が得られる。
(E)主として請求項26に係る発明の効果は次の通りである。構造ユニットをPCパネルとした場合、その接合面が山形の2つの傾斜面または谷形の2つの傾斜面のいずれかにより形成されていることが好適である。接合面が山形に形成された構造ユニットと、接合面が谷形に形成された構造ユニットとを互いに嵌合させることができる。これにより接合面に垂直な軸周りの負荷回転運動を確実に阻止することができ、剛接合を確保できる。
(F)主として請求項27に係る発明の効果は次の通りである。構造ユニットをPCパネルとした場合、仮想ハニカム形状が曲面である部分に用いられる構造ユニットが、屈曲部すなわち折れ曲がり部分を有する。この屈曲部を、仮想ハニカム形状の立設方向に沿うように構造ユニットを配置すると、屈曲部の両側の各面同士に角度を形成できる。屈曲部の折れ曲がり角度は、比較的微小とし、この僅かな屈曲を複数回繰り返すことにより全体として実質的な曲面とすることができる。これにより、水平断面において曲線形状(円形、楕円形またはこれらの一部等)をもつチューブ架構を構築することができる。
(G)主として請求項11に係る発明の効果は次の通りである。本発明では、PCパネル以外にも同等の形状の構造ユニットを作製できる限りにおいて、鉄骨造、鉄筋コンクリート造、鉄骨鉄筋コンクリート造、または木造のハニカム形状のメインフレームをもつ建築構造体を構築することができる。
(H)主として請求項23または24に係る発明の効果は次の通りである。六角形格子における隣り合う2つの頂点に配置される構造ユニットをPCパネルとした場合、一般的なPCパネルと比較して相当な大きさと重量となる場合がある。そのような場合には、PCパネルを2つに等分割した半ユニットを用いることが好適である。これにより、製造、運搬、組立てに支障なく本発明によるメインフレームを構築することができる。
(I)主として請求項28に係る発明の効果は次の通りである。上記のPCパネルによる構造ユニットを複数個連結したメインフレームを有する建築構造体の構築工法は、隣り合う2つの構造ユニットを、各々の緊張材挿入孔が互いに合致するように各々の接合面を対向させて配置し、2つの構造ユニットに連通した緊張材挿入孔に緊張材を貫挿し、緊張材にポストテンションを付加して定着することにより2つの構造ユニットを連結するものである。この工法では、複数のPCパネルの連結が2つずつ完結するため施工性がよい。その作業においては、1本の緊張材を挿貫しポストテンションを付加してその両端を定着するだけであるので作業量が少なくかつ簡易な作業である。これに対し、例えば、従来のラーメン構造の場合、長いスパンの梁と柱を全て連結しなければならないため、2つの部材毎に連結作業を完結することは困難である。
加えて、本発明による工法は、乾式工法であるため現場打ち鉄筋コンクリート造等の湿式工法のような養生期間が不要であり、工期を短縮できる。
以下、図1〜図6を参照して、本発明の基本的な実施形態を説明する。なお、図1〜図6では、本発明に好適なPCパネルによる構造ユニットを用いた実施例を用いて説明するが、本発明の構造ユニットはPCパネルに限定されない。以下、「構造ユニット」を単に「ユニット」と称する場合がある。
図1は、本発明の構造ユニットを複数個用いて構築した建築構造体のメインフレームの一実施例を示す部分的な正面構成図である。例えば、建築物の外周部分を構成するチューブ架構の一部に相当する部分である。両矢印XYは、水平方向を示し、両矢印Zは鉛直方向を示す(以下の図において同じ)。図1(A1)は、ユニット1を用いたメインフレームの一部である。図1(A2)は、ユニット1の変形形態であるユニット2及び3を示す。図1(B1)は、ユニット4を用いたメインフレームの一部である。図1(B2)は、ユニット4の変形形態であるユニット5及び6を示す。
なお、図1は、メインフレーム及び構造ユニットの正面視の形状を示しており、PCパネルである構造ユニット1〜6は、所定の厚さ(紙面に垂直な方向)を有している(以下、類似の図において同じ)。
図1には、鉛直方向に立設されかつ面状に延在する仮想ハニカム形状の一部が一点破線で示されている。その単位格子である六角形格子H1は、上辺(頂点h1とh2の間)と下辺(頂点h4とh5の間)が水平方向となる向きに配置されている。
本発明における「仮想ハニカム形状」とは、六角形格子H1(または図2の六角形格子H2)を、上下左右方向に隙間無く繰り返した蜂の巣状パターンをもつ仮想物である。ここで、「仮想」とは、このハニカム形状が実体をもつ部材からなるものではないことを意味する。しかしながら、仮想ハニカム形状は、実体をもつ部材である構造ユニットの位置及び隣接する構造ユニット同士の位置関係を規定するために重要な概念である。従って、本明細書では、「仮想ハニカム形状」が実空間に存在するものと想定して本発明を説明する。
仮想ハニカム形状は、基本的には鉛直方向に立設され面状に拡がっている。なお、デザイン的要請等のために仮想ハニカム形状の面を鉛直方向から所定の角度だけ傾斜させて立設する場合も本発明に含まれるものとする。「面状」とは、平面状及び曲面状を含む(以下同じ)。
単位格子である六角形格子H1は、必ずしも正六角形でなくともよいが、少なくとも左右対称である(図2の六角形格子H2において同じ)。単位格子における6つの辺の各々は、隣り合う2つの単位格子により共有され、6つの頂点h1〜h6の各々は、隣り合う3つの単位格子により共有されている。
図1(A1)を参照すると、6個のユニット1が、六角形格子H1の各頂点h1、h2、h3、h4、h5、h6をそれぞれ含む位置に配置されている。隣り合う頂点(例えばh1とh2、h2とh3)にそれぞれ配置された2つのユニット同士は、各々の外周面の一部に設けた接合面を対向させて互いに接合されている。これらの接合された6つの面s1、s2、s3、s4、s5、s6の各々は、六角形格子H1のいずれかの辺と交差している。例えば、面s1は、頂点h1とh2の間の辺と交差している。言い換えるならば、ユニット同士の接合は、六角形格子H1の頂点ではなく辺上で行われる。この結果、六角形格子H1上に配置された全てのユニット1は環状に連結され、これらのユニットにより囲まれた1つの開口部Wが、六角形格子H1の中央部分に形成される。開口部Wは、各ユニットの非接合面により囲まれるということもできる。
このように、ハニカム形状を形成する複数の六角形格子の全ての頂点及び辺を占めるように複数の構造ユニットを配置し、隣り合う2つの構造ユニット同士を互いの接合面を対向させて接合する。接合手段としては、例えば、PCパネルの構造ユニットにおいては、2つのユニットの対向した接合面と交差するように緊張材を貫挿し、ポストテンションを負荷して定着する手段が好適であるが、これに限定されない。また、ユニット同士の接合は、剛接合が好適であるが、必要に応じて剛接合と柔接合の中間的なものでもよく、柔接合でもよい。ハニカム構造には、曲げ応力の一部を軸力に変換して伝達する効果があるが、さらにユニット同士を剛接合とした場合は、軸力に変換されなかった曲げ応力を吸収するために有効である。
図1(A1)に示したユニット1は、正面視にて三股形のパネル面を有し、中心から三方に延びる3つの脚部の先端における側面が、隣り合うユニットとの接合面となる。接合面と接合面の間の谷形の側面は非接合面である。
図1(A2)はその変形形態を示す。ユニット2は、正面視にて六角形であり、その6つの辺は長辺と短辺が交互に配置されている。短辺を含む側面a、b、cが、隣り合うユニットとの接合面となり、長辺を含む側面d、e、fは非接合面である。ユニット3は、ユニット2の長辺の中央を山形に変形した形状である。図1(A1)に、破線でユニット2及び3を示すように、ユニット1〜3の形状は、接合面の位置及び形状(六角形格子に対する相対的な位置及び形状、以下同じ)が共通しており、非接合面のみを変形した関係となっている。接合面が共通しているユニット同士は、非接合面の形状が異なっていても接合可能である(以下の他のユニット実施例においても同じ)。非接合面の形状は、例えば、ユニット1の谷形からユニット3の山形の間で連続的に変形可能である。例えば、非接合面は、複数からなる平面または曲面、谷形の面、山形の面のいずれでもよい。幾つかのユニットの形状については、後述する各実施例で詳細に説明する。
図1(A1)から明らかなように、ユニット1により形成される開口部Wが最も大きく、ユニット3により形成される開口部Wが最も小さくなる。このようにユニットのパネル面が、面的に拡がった形状であるほど、形成される開口部Wは小さくなる。また、非接合面の形状が異なれば、それらにより囲まれる開口部Wの形状も異なる。
図1(B1)では、6個のユニット4が、六角形格子H1の各頂点h1、h2、h3、h4、h5、h6をそれぞれ含む位置に配置されている。破線でユニット5及び6を示すように、ユニット4〜6は、接合面の位置及び形状が共通し、非接合面の形状のみが異なる。ユニット4〜6は、図1(A1)と同じ六角形格子H1上に配置されているが、ユニット1〜3より接合面の面積が広い。従って、隣り合うユニット同士を接合した面s1〜s6の面積が図1(A1)の場合より広くなっており、また、形成される開口部Wの大きさは小さくなる。ユニット4は、非接合面が凹曲面である。ユニット5は正六角形のパネル面を有し、ユニット2に類似する形態である。ユニット6は、非接合面が凸曲面である。
ここで、メインフレームは、構造躯体(スケルトンとも称される)の主要部であり、構造耐力上主要な部分である。図1に示すように、複数の構造ユニットを仮想ハニカム形状の六角形格子の頂点及び辺上に配置し連結したメインフレームでは、六角形格子の各辺に位置する構造ユニットの部材が、構造要素としての斜柱または梁に相当する。例えば、図1の六角形格子H1からなるハニカム形状に従って構築されたチューブ架構は、実質的に、ジグザグに連続する柱と、水平梁と傾斜梁が交互に配置された梁とで構成されていることになる。この点で、連続的な水平梁と垂直柱とから構成される一般ラーメン構造のチューブ架構とは全く異なる構造となる。
図2は、本発明の構造ユニットを複数個用いて構築した建築構造体のメインフレームの別の実施例を示す部分的な正面構成図である。図2(A)は、図1に示したユニット2を用いたメインフレームの一部である。破線で、ユニット1及び3を示すように、これらのユニットについても同様に用いられる。図2(B)は、図1に示したユニット5を用いたメインフレームの一部である。破線で、ユニット4及び6を示すように、これらのユニットについても同様に用いられる。
図2における一点破線で示す仮想ハニカム形状の単位格子である六角形格子H2は、左辺(頂点h5とh6の間)と右辺(頂点h2とh3の間)が鉛直方向となる向きで配置されている。六角形格子H2と上記の六角形格子H1は、正六角形の場合は互いに60°回転したものとなる。この六角形格子H2からなるハニカム形状に従って構築されたチューブ架構は、実質的に、鉛直柱と斜柱が交互に配置された柱と、ジグザグに連続する梁とで構成されることになる。
図1及び図2に示したユニット1〜6では、六角形格子H1またはH2の各頂点に1つのユニットが配置されている。従って、1つのユニットが、3つの隣り合う六角形格子H1またはH2により共有されていることになる。
図3は、本発明の構造ユニットを複数個用いて構築した建築構造体のメインフレームの別の実施例を示す部分的な正面構成図である。例えば、建築物の外周部分を構成するチューブ架構の一部に相当する部分である。図3(A1)は、ユニット7を用いたメインフレームの一部である。図3(A2)は、ユニット7の変形形態であるユニット8及び9を示す。図3(B1)は、ユニット10を用いたメインフレームの一部である。図3(B2)は、ユニット10の変形形態であるユニット11及び12を示す。
図3には、鉛直方向に立設されかつ面状に延在する仮想ハニカム形状の一部が一点破線で示されている。その単位格子である六角形格子H1は、上辺(頂点h1とh2の間)と下辺(頂点h4とh5の間)が水平方向となる向きに配置されている。
図3(A1)を参照すると、3個のユニット7が、六角形格子H1の隣り合う2つの頂点の対である第1の対(h1とh2)、第2の対(h3とh4)、及び第3の対(h5とh6)のそれぞれの対を含む位置に配置されている。隣り合う頂点の対(例えば第1の対(h1とh2)と第2の対(h2とh3))にそれぞれ配置された2つのユニット同士は、各々の外周面の一部に設けた接合面を対向させて互いに接合されている。これらの接合された3つの面s2、s4、s6の各々は、六角形格子H1のいずれかの辺と交差している。例えば、面s2は、頂点h2とh3の間の辺と交差している。言い換えるならば、ユニット同士の接合は、六角形格子H1の頂点ではなく辺上で行われる。この結果、六角形格子H1上に配置された全てのユニット7は環状に連結され、これらのユニットにより囲まれた1つの開口部Wが、六角形格子H1の中央部分に形成される。開口部Wは、各ユニットの非接合面により囲まれるということもできる。
「隣り合う頂点」とは、ハニカム形状を形成する六角形格子の1つの辺の両端に位置するもの同士をいう。1つの六角形格子上に環状に配置された複数のユニットの各々が、必ずしも当該六角形格子内の2つの頂点に配置されていなくともよく、当該六角形格子の1つの頂点と隣の六角形格子の1つの頂点を対としていてもよい(後述する図5及び図6参照)。
図3(A1)に示したユニット7は、正面視にて、1本の棒状部分の両端がそれぞれ二方向に分岐した4つの脚部をもつ形状であり、四方に延びる4つの脚部の先端における側面が、隣り合うユニットとの接合面となる。接合面と接合面の間の凹側面は非接合面である。ユニット7の形状は、図1に示したユニット1を2つ用いて、各々の1つの脚部の接合面を接合して一体化した形状ということができる。つまり、図1に示す各ユニットを2つ配置することと、図3に示す各ユニットを1つ配置することは、結果的に同じ形状となる場合がある。
図3(A2)は、変形形態を示す。ユニット8は、正面視にて八角形であり、その8つの辺は長辺と短辺が交互に配置されている。短辺を含む側面a、b、c、dが、隣り合うユニットとの接合面となり、長辺を含む側面e、f、g、hは非接合面である。ユニット9は、ユニット8の長辺の中央を山形に変形した形状である。図3(A1)に破線でユニット8及び9を示すように、ユニット7〜9の形状は、接合面の位置及び形状が共通しており、非接合面のみを変形した関係となっている。非接合面の形状は、例えば、ユニット7の谷形からユニット9の山形の間で連続的に変形可能である。幾つかのユニットの形状については、後述する実施例で詳細に説明する。
図3(A1)から明らかなように、ユニット7により形成される開口部Wが最も大きく、ユニット9により形成される開口部Wが最も小さくなる。このようにユニットのパネル面が、面的に拡がった形状であるほど、形成される開口部Wは小さくなる。また、非接合面の形状が異なれば、それらにより囲まれる開口部Wの形状も異なる。
図3(B1)では、3個のユニット10が、六角形格子H1の隣り合う2つの頂点の対である第1の対(h1とh2)、第2の対(h3とh4)、及び第3の対(h5とh6)のそれぞれの対を含む位置に配置されている。破線でユニット11及び12を示すように、ユニット10〜12は、接合面の位置及び形状が共通し、非接合面の形状のみが異なる。ユニット10〜12は、図3(A1)と同じ六角形格子H1上に配置されているが、ユニット7〜9より接合面の面積が広い。従って、隣り合うユニット同士を接合した面s2、s4、s6の面積が図3(A1)の場合より広くなっており、また、形成される開口部Wの大きさは小さくなる。ユニット10は非接合面が凹曲面である。ユニット11は八角形のパネル面を有し、ユニット8に類似するが短辺と長辺の長さの比が異なる変形形態である。ユニット12は、非接合面が凸曲面である。
図4は、本発明の構造ユニットを複数個用いて構築した建築構造体のメインフレームの別の実施例を示す部分的な正面構成図である。図4(A)は、図3に示したユニット8を用いたメインフレームの一部である。破線で、ユニット7及び9を示すように、これらのユニットについても同様に用いられる。図4(B)は、図3に示したユニット11を用いたメインフレームの一部である。破線で、ユニット10及び12を示すように、これらのユニットについても同様に用いられる。
図4における一点破線で示す仮想ハニカム形状の単位格子である六角形格子H2は、左辺(頂点h5とh6の間)と右辺(頂点h2とh3の間)が鉛直方向となる向きで配置されている。従って、この六角形格子H2からなるハニカム形状に従って構築されたチューブ架構は、実質的に、鉛直柱と斜柱が交互に配置された柱と、ジグザグに連続する梁とで構成されていることになる。
図3及び図4に示した各ユニットの配置は一例であり、六角形格子H1またはH2の隣り合う2つの頂点の対を含むように配置するパターンはこれに限られない。図示しないが、例えば、図3及び図4において第1の対をh2とh3とし、第2の対をh4とh5とし、第3の対をh6とh1として、3個のユニットをそれぞれ配置してもよい。
また、図3及び図4に示した各ユニットの配置例では、3個のユニット全てが1つの六角形格子に含まれる3対の頂点の上にそれぞれ配置されているが、いずれかのユニットが、この六角形格子の1つの頂点と別の六角形格子の1つの頂点の対に配置されていてもよい(但し、それらの頂点同士は1つの辺の両端に位置する)。配置パターンのその他の変形例については図5及び図6において後述する。
図3及び図4に示したユニット7〜12では、1つのユニットが六角形格子H1またはH2の2つの頂点を含むように配置されている。従って、1つのユニットは、4つの六角形格子H1またはH2により共有されていることになる。
図5は、六角形格子H1から形成されるハニカム形状に基づいた構造ユニットの配置パターンの一例を示す正面構成図である。一例として、図3に示したユニット8を、上方側の配置パターンAと下方側の配置パターンBに従ってそれぞれ配置している。図3に示したユニット7〜9のいずれを用いても、またこれらのユニットを混在させても同様に配置することができる。
配置パターンAは、図3に示した3個のユニットの配置を繰り返すことにより構成されている。配置パターンAにおいては、3種類の開口部Wa、Wb、Wcが形成される。開口部Wa及びWbは互いに逆向きの三角形であり、開口部Wcは六角形である。開口部Waは3個のユニットにより囲まれ、これら3個のユニットは、この六角形格子に含まれる2つの頂点を占めている(開口部Wbについても同様)。一方、開口部Wcは6個のユニットにより囲まれ、これら6個のユニットの各々は、この六角形格子の2つの頂点を占めておらず、この六角形格子の1つの頂点と隣の六角形格子の1つの頂点とを占めている。
配置パターンBは、全ての六角形格子H1において上辺と下辺(水平方向)の両端の2頂点を1つのユニットが占めるように配置されている。従って、1つの六角形格子に4個のユニットが配置されている。4個のユニットのうち、2個が上辺と下辺の4頂点を占め、他の2個はこの六角形格子の1つの頂点と隣の六角形格子の1つの頂点とを占めている。配置パターンBにおいては、四角形の開口部Wdが形成される。
さらに、配置パターンAとBとは連続的に接続することが可能である。その境界部分には、五角形の開口部Weが形成される。
図6は、六角形格子H2から形成されるハニカム形状に基づいた構造ユニットの配置パターンの一例を示す正面構成図である。一例として、図3に示したユニット8を、左側の配置パターンAと右側の配置パターンBに従ってそれぞれ配置している。図3に示したユニット7〜9のいずれを用いても、またこれらのユニットを混在させても同様に配置することができる。
配置パターンAは、図4に示した3個のユニットの配置を繰り返すことにより構成されている。配置パターンAにおいては、3種類の開口部Wa、Wb、Wcが形成される。開口部Wa及びWbは互いに逆向きの三角形であり、開口部Wcは六角形である。開口部Waは3個のユニットにより囲まれ、これら3個のユニットは、この六角形格子に含まれる2つの頂点を占めている(開口部Wbについても同様)。一方、開口部Wcは6個のユニットにより囲まれ、これら6個のユニットの各々は、この六角形格子の2つの頂点を占めておらず、この六角形格子の1つの頂点と隣の六角形格子の1つの頂点とを占めている。
配置パターンBは、全ての六角形格子H2において左辺と右辺(鉛直方向)の両端の2頂点を1つのユニットが占めるように配置されている。従って、1つの六角形格子に4個のユニットが配置されている。4個のユニットのうち、2個が左辺と右辺の4頂点を占め、他の2個はこの六角形格子の1つの頂点と隣の六角形格子の1つの頂点とを占めている。配置パターンBにおいては、四角形の開口部Wdが形成される。
さらに、配置パターンAとBとは連続的に接続することが可能である。その境界部分には、五角形の開口部Weが形成される。
また、図6では、一例として、上方の一部分に別の混在パターンを示している。混在パターンの左側では、配置パターンAのユニット8の最上ユニットの上にユニット7を接続している。ユニット8と7とは接続面が共通しているため、接続可能である。混在パターンの右側では、配置パターンBのユニット8の最上ユニットの上に、図1に示したユニット1を接続し、さらにユニット1の上にユニット7を接続している。このように、図1に示したユニット1〜3及び図3に示したユニット7〜9は、接続面が共通しているため、混在させて接続可能である。
図示しないが、同様に、図1に示したユニット4〜6及び図3に示したユニット10〜12も、接続面が共通しているため、混在させて接続可能である。
前述の図1〜図4に示した構造ユニットの形状に多様性に加えて、図5及び図6に示すように配置パターンにも多様性があるため、本発明により構築される建築構造体のメインフレームには非常に多くの変形形態があり得ることになる。
以下に示す具体的な実施例は、これらの変形形態の一例であり、本発明をこれらの形態に限定するものではない。
図7〜図14を参照し、仮想ハニカム形状に構造ユニットを配置し連結したメインフレームをもつ建築構造体の実施例について説明する。
図7(A)〜(C)は、図1に示した三股形の構造ユニット1を用いて構築された建築構造体のメインフレームの一例を示す図である。(A)は、メインフレームであるチューブ架構100の全体の外観斜視図である。(B)は、図7(A)のチューブ架構100の一部を拡大して示した正面図である。(C)は上面図である。
図7(A)に示すチューブ架構100は、図1に示した六角形格子H1を単位格子とする仮想ハニカム形状に基づいて構築され、この仮想ハニカム形状は全体として筒体すなわちチューブ形状を有する。チューブの軸は鉛直方向に沿って延びている。仮想ハニカム形状上に配置する構造ユニットとして、三股形のユニット1を用いた場合は、完成したメインフレームの外観形状が、基とした仮想ハニカム形状とほぼ一致する。これは、隣り合う2つのユニット1の脚部同士が接合されることにより1本の斜柱または梁が形成され、この斜柱または梁が仮想ハニカム形状の六角形格子の一辺を占めることになるためである。
なお、六角形格子H1を正六角形とすることは一例であり、左右対称であれば必ずしも正六角形でなくともよい。
図7(B)に示すように、1つの六角形格子H1に配置された6個のユニット1から六角形の構造が形成される(これを「六角形構造部」と称する)。但し、1つの六角形構造部には、各ユニット1の3本の脚部のうち2本の脚部のみが含まれる。六角形構造部は、上辺部材r1、右上辺部材r2、右下辺部材r3、下辺部材r4、左下辺部材r5、左上辺部材r6の6つの線状構造部材から構成される。このようにして構築されたチューブ架構は、梁が水平方向に連続しておらず、柱も全てジグザグに連続する斜柱で構成されている点で、従来の一般ラーメン構造のチューブ架構とは全く異なる構成である。
図7(B)に示すように、6個のユニット1から形成される六角形構造部は、左右対称であり、例えば右辺についてはそれぞれ鉛直方向に対して互いに逆向きに傾斜した2本の斜柱である右上辺部材r2と右下辺部材r3を連結し配置させている。右上辺部材r2は鉛直方向に対して角度αだけ傾斜しており、右下辺部材r3は鉛直方向に対して角度−αだけ傾斜している。左辺を構成する左上辺部材r6と左下辺部材r5についても同様に傾斜した斜柱である。上辺部材r1と下辺部材r4は水平な梁である。柱同士、柱と梁との接合は剛接合である。
斯かる建築構造体は、チューブ構造であることによりいずれの方向からの水平負荷に対しても大きな支持力を発揮することができる。また、六角形構造部からなるチューブ架構においては全ての柱と梁の結合がバランス的に安定している。この結果、負荷力により柱と梁の結節点において生じる曲げ応力が、一般ラーメン構造からなるチューブ架構における応力に比べて小さくなる。これは、曲げ応力の一部が部材(斜柱や梁)の軸力に変換されて伝わるためである。加えて、PC部材は圧縮力に対して強いため、軸力を支持することに関して有利である。
さらに、図7(B)に示すように、このチューブ架構100においては、柱と梁の結節点にはユニット1同士の接合面はなく、ユニット1同士の接合面は、柱と梁の中間点にある。この点でも本発明によるチューブ架構は、構造耐力上有利である。
図7(C)の上面図に示すように、図示の例では、チューブ架構100の断面形状はほぼ四角形である。断面形状の四隅にそれぞれ形成された六角形構造部の面は四角形の頂点の方向に向けられており、四角形の四隅が切り欠かれた形状となっている。なお、図7のチューブ架構100の側面は、ほぼ平面から構成されているが、断面形状が円形(チューブ架構が曲面で構成される)または任意の多角形のいずれでもよく、また凹部を含む形状でもよい。仮想ハニカム形状が曲面や折り曲げ部分を有する場合は、それらの部分には特殊な形状の構造ユニットを用いればよいが、これについては後述する。
図8は、図7のメインフレーム100の部分拡大図である(図8では、六角形格子H1を正六角形として示している)。図示の通り、1つの六角形格子H1上に6個のユニット1(1)〜1(6)が用いられている(符号に添えたカッコ付き数字は、1つの六角形格子に配置される各ユニットに付した番号である。以下、同じ)。1つのユニット1は、中心から三方向に延びる3本の脚部を有するPC部材である。正面視におけるパネル面の形状は三股形である。各ユニット1における分岐部は、六角形格子H1の各頂点h1〜h6に位置している。隣り合うユニット1同士の接合部s1〜s6は、六角形格子H1の各辺の中点に位置しており、六角形格子H1の頂点にはない。ユニット1の各脚部は、六角形格子H1の各辺の長さの1/2を占める。3本の脚部のうち2本は、1つの六角形格子に属し、残りの1本は別の六角形格子に属している。また、いずれのユニット1も、3本の脚部のうち2本が斜柱として用いられ、1本が梁として用いられている。
六角形格子H1の中央部分には、六角形格子H1上に配置された6個のユニット1(1)〜1(6)により囲まれる開口部Wが形成される。この例では、開口部Wの形状は、六角形格子H1と同じ向きの六角形である。
図8に示す通り、六角形格子H1の各辺の中点では、隣り合う2つのユニット1の接合面同士が対向し、ユニット同士が接合されている。隣り合うユニット同士の接合は、破線で示す緊張材21a、21b、21cにより行っている。例えば、ユニット1(1)と1(2)では、互いに対向した接合面を緊張材21aが貫通している。この緊張材21aにポストテンションを付加した後、両端を一対の定着具22a、22aで定着している。同様に、ユニット1(2)と1(3)では、緊張材21bが貫通し定着具22b、22bで定着している。同様にユニット1(3)と1(4)では、緊張材21cが貫通し定着具22c、22cで定着している。このように全ユニットに含まれる隣り合うユニット対同士が接合されることにより、各接合面は回転を阻止され、剛接合となる。さらに、緊張材によるポストテンションによって剛接合の強度が強化される。
図9は、2つの構造ユニットの接合状態をさらに詳細に示す拡大斜視図である。図9において、ユニット1(3)の下側の脚部と、ユニット1(4)の上側の脚部とが接合されることにより、六角形構造部の右下片部材の斜柱を形成している。その接合面は、斜柱の中点位置にある。なお、両ユニットの脚部先端の接合面同士が対向するとき、各々のユニット内部に設けられた緊張材挿入孔(図10において詳述する)が連通するように位置合わせされる。その後、連通した緊張材挿入孔に緊張材21cを挿入する。緊張材21cは、通常PC鋼材である。緊張材21cは、ユニット1(3)の他の2本の脚部間の谷部から、ユニット1(4)の他の2本の脚部間の谷部まで貫挿される。続いて、緊張材21cにポストテンションを付加した状態で定着具22c、22cにより両端を固定し定着する。
隣り合う2つのユニット同士の接合は、全て上記のように行われる。従って、ユニット1の内部の中心部分では、異なる方向に延びる3本の緊張材が見かけ上交差することとなる。ユニット1の中心部分は、六角形格子の各頂点に位置するため構造的に最も応力が集中する部分であるが、この部分に接合部がなくかつ内部には3重に緊張材が配置されているため極めて強固な構造が実現される。また、2つのユニット同士の接合は、比較的応力の小さい各辺の中央部で行われており、構造的に有利である。
ポストテンションによりプレストレスを導入することで長期応力に対しても曲げやひび割れを発生せず、コンクリートの全断面が圧縮にも引張にも有効に働く。この結果、大スパンの架構が可能となる。また、ひび割れを生じないことから、挿入された緊張材の防食の点でも優れている(以下の各実施例においても同様)。
なお、2つのユニットの接合面を接合する際、対向する2つの接合面の間に僅かな間隙を設け、その間隙にPCより強度の大きいモルタル、樹脂モルタル、グラウト等を充填することが好適である。これらの充填物により施工誤差を簡易に吸収することができ、施工性が極めて向上する(以下の各実施例においても同様)。
図10は、ユニット1の構成を詳細に示す図である。図10(A)は、1本の脚部先端の接合面1a側から見た側面図であり、図10(B)は、(A)のX−X断面図である。
ユニット1は、所定の型枠を用いて製造されるPCパネルである。図10(B)から明らかな通り、ユニット1は、正面視にて三股形のパネル面を備え、図10(A)に示すように正面のパネル面1iと背面のパネル面1j間には所定の厚さがある。ユニット1は、中心Cから三方向に分岐して延びる3本の脚部を具備し、各々の脚部の先端における側面1a、1b、1cは接合面である。各接合面1a、1b、1cは、各脚部の延びる方向に対して垂直である。各脚部の正面視における幅は一定であり、各脚部の断面は矩形となる。各脚部の厚さと幅は、構築しようとする建築構造体に適合するように設定される。
各脚部の先端以外の側面は、非接合面である。接合面1aと1bの間では、非接合面1d2と1d3が谷形を形成している。接合面1bと1cの間では、非接合面1e2と1e3が谷形を形成している。接合面1cと1aの間では、非接合面1f2と1f3が谷形を形成している。
図10(B)に示すように、ユニット1の内部には3つの緊張材挿入孔1a3、1b3、1c3が穿設されている。なお、これらの緊張材挿入孔はPC製造時に設けられ、緊張材を通すためのシース(図示せず)が埋設される。これら3つの緊張材挿入孔1a3、1b3、1c3は、正面視においては交差して見えるが、図10(A)に示す通り、実際には互いに重ならないように厚さ方向において異なる位置に設けられている。緊張材挿入孔1a3は、接合面1aから第1脚部の軸方向に沿って第2脚部と第3脚部の間の谷底部1e1まで貫通している。同様に緊張材挿入孔1b3は、接合面1bから第2脚部の軸方向に沿って第3脚部と第1脚部の間の谷底部1f1まで貫通している。同様に緊張材挿入孔1c3は、接合面1cから第1脚部と第2脚部の間の谷底部1d1まで貫通している。
図10に示したユニット1は、3つの脚部が同じ長さでかつ等角度間隔(すなわち120度毎)に設けられている。このようなユニット1は、図8に示したように六角形格子H1が正六角形である場合に用いられる。この場合は、いずれの脚部も、斜柱または梁のいずれとしても用いることができる。すなわち、ユニット1をどの向きでも用いることができ、施工性がよい。
しかしながら、図7で説明した通り、六角形格子H1は左右対称形状ではあるが必ずしも正六角形である必要はなく、斜柱となる辺の長さと、梁となる辺の長さとが異なっていてもよい。その場合、ユニット1は、梁として用いられる1本の脚部の長さと、斜柱として用いられる2本の脚部の長さとが異なるものとなる。なお、その場合も斜柱となる2本の脚部同士は同じ長さとする。また、梁となる1本の脚部と、斜柱となる他の2本の脚部の各々とが、それぞれなす角度は互いに等しくなければならないが、その角度は、斜柱となる2本の脚部同士がなす角度とは異なっていてもよい。
図11は、ユニット1の変形形態により構築したメインフレームの一部を示す斜視図である。この変形形態は、2種類のユニット1Aと1Bとの組合せからなり、六角形格子上に交互に配置される。前述のユニット1と相違する点は、各脚部における接合面の形状である。
ユニット1Aの3つの脚部の接合面は、それぞれ2つの傾斜面(1a4と1a5、1b4と1b5、1c4と1c5)からなる山形をなしている。一方、ユニット1Bの3つの脚部の接合面は、それぞれ2つの傾斜面(1a6と1a7、1b6と1b7、1c6と1c7)からなる谷形をなしている。
ユニット1Aの接合面の山形と、ユニット1Bの接合面の谷形とは、互いに嵌合する形状である。従って、ユニット1Aと1Bは必ず交互に配置され、その接合面同士を嵌合するように接合される。なお、緊張材によるポストテンション付加状態での定着方法は前述の実施形態と同様である。このように接合面同士を嵌合させて接合すると、山形と谷形の噛み合いにより脚部の軸周りの回転を確実に阻止することができ、より強固な構造が得られる。
なお、互いに嵌合する2種のユニットの接合面の形状は、図11に示した山形と谷形に限られない。軸周りの回転を阻止する効果が得られれば他の形状の組合せも可能である。例えば、一方の接合面の中央部に角形凸部を形成し、他方の接合面の中央部に角形凹部を形成し、これらの角形凸部と角形凹部とを互いに嵌合させる。図11に示した山形と谷形の嵌合形状の例は、単純であるので加工が容易であることに加え、当接面が傾斜面であるので接触面積が広くなる結果、接合強度が向上する効果もある。
図12は、ユニット1とスラブとの接合方法を示す斜視図である。ユニット1の3本の脚部のうち1本の脚部に対し、正面と背面のパネル面を貫通する複数のスラブ接続孔1gを設けている。そして、スラブ接続孔1gを設けた脚部が梁となるようにユニット1を配置する。一方、PCスラブ30には、予め複数の緊張材31が埋設されている。各スラブ接続孔1gは、複数の緊張材31の各々に対応する位置に設けられ、緊張材31を挿入できる径に設定される。
ユニット1とPCスラブ30とを接合する際には、各緊張材31を各スラブ接続孔1gに挿入し、緊張材31にポストテンションを付加した状態で定着具により定着する。
図13(A)は、ユニット1のさらに別の変形形態を用いて構築したメインフレーム101の一例を部分的に示した図である。メインフレーム101は、基とする仮想ハニカム形状として平面ではなく曲面のものを用いている。このメインフレーム101の全体形状は、円筒状のチューブ架構となる。図13(B)は、(A)のメインフレーム101を構築するためのユニット1Cの上面図を示し、図13(C)は同じく正面図を示している。
図13(B)及び(C)に示すように、ユニット1Cは、梁を形成する脚部(この例では、先端に接合面1Caをもつ)のパネル面1Ci1が、斜柱を形成する他の2本の脚部(この例では、それぞれ先端に接合面1Cb、1Ccをもつ)のパネル面1Ci2に対して角度βをなしている。すなわち、前者の1本の脚部が、後者の2本の脚部に対し屈曲部1Ckで折れ曲がっている。このような屈曲部1Ckをもつユニット1C同士を接合することにより、曲面のメインフレームを構築することができる。また、別の実施例として、この屈曲形のユニット1Cは、メインフレームにおける2つの平面の交わる折れ曲がり部分(例えば、図7に示したチューブ架構の隅部)に用いることもできる。なお、角度βの大きさは、ポストテンションを付加した緊張材による2つのユニット1C同士の接合、またはユニット1Cと他の接合可能なユニットとの接合に支障のない程度とする。
さらに、屈曲形のユニット1Cを用いると、一方向へ曲がる曲面のみではなく、その逆方向へ曲がる曲面を連続的に形成することもできる。例えば、上面から見た場合に波状となる曲面である。
図13(A)に示したチューブ架構のように曲面部分においてもメインフレームが鉛直方向に対して平行である場合は、屈曲部1Ckが鉛直方向と平行となるようにユニット1Cを配置する。別の実施例では、曲面部分においてメインフレームが鉛直方向に平行でない場合もある(例えば、ドームの一部のような曲面形状)が、その場合は、屈曲部1Ckの向きは、メインフレームの面の曲がる方向に対応して配置するようにする。
図10に示した平坦形のユニット1と、図13に示した屈曲形のユニット1Cとを組み合わせて用いることにより、平面部分と曲面部分をもつメインフレームを自在に構築することもできる。
図14は、図10に示したユニット1の変形形態であるユニット1Dを示し、(A)は外観斜視図であり、(B)は六角形格子上に6個のユニット1Dを配置し連結したメインフレームの一部を示す正面図である。
ユニット1Dは、その接合面1Da、1Db、1Dcの形状及び位置は、ユニット1と共通であり、上記のユニット1またはユニット1Cと接合することも可能である。ユニット1Dは、非接合面の形状がユニット1と異なる。ユニット1Dは、ユニット1の非接合面の谷の深さを浅くした形状といえる。ユニット1Dでは、各脚部の幅が一定ではなく、接合面1Da、1Db、1Dcから中心へ向かって幅広となっている。例えば、側面1Df3が隣り合う接合面1Daに対してなす角度δ(側面1Df2が接合面1Dcに対してなす角度も同様)が鈍角となる(ユニット1ではδは90度である)。なお、ユニット1の変形形態として、パネル面形状において90°≦δ<120°の範囲に含まれるものを全て「三股形」に含めるものとする。
なお、δ=120°のときは谷がなくなり、図1に示したユニット2のように六角形となる。
図14(A)に示すように、谷形側面1Df2、1Df3の谷底部1Df1に緊張材挿入孔1Db3が開口する。
図14(B)に示すように、6個のユニット1Dを環状に連結した場合、その中央部分の開口部Wは、図8に示したユニット1により囲まれる開口部より小さくなる。
なお、図14のユニット1Dでは、図10のユニット1に対して全ての脚部の幅を変形しているが、別の変形形態として、1つまたは2つの脚部の幅のみを変形してもよい。互いに接合可能な接合面をもつユニット1、ユニット1D及びさらに別の変形形態を混在させてメインフレームを構築してもよい。これにより、開口部の大きさやデザイン状の要請に広く対応できる。
図15〜図21を参照し、仮想ハニカム形状に構造ユニットを配置し連結したメインフレームをもつ建築構造体の別の実施例について説明する。
図15は、構造ユニットを用いて構築した建築構造体のメインフレーム102の一部を示す正面図である。例えば、上述の図7(A)と同様のチューブ架構の一部である。図16は、図15のメインフレーム102の部分拡大斜視図である。
図15に示すメインフレームは、図1に示した六角形格子H1(太い一点破線で示す)を単位格子とする仮想ハニカム形状に対し、図1に示した構造ユニット2を配置し連結して構築される。
1つのユニット2は、図15に示すように正面視にて6つの辺をもつ六角形のパネル面をもち、所定の厚さ(紙面に垂直な方向)をもつ。従って、図16に示すように、正面と背面の一対のパネル面の各々の各辺間に延在する6つの側面を具備する。図示の例では、六角形のパネル面の周縁を構成する6つの辺は、長さの異なる2種の辺を交互に配置して構成されている。長い方の辺を「長辺」と称し、短い方の辺を「短辺」と称することとする。これに対応して両パネル面の短辺間に延在する側面は「短い側面」となり、長辺間に延在する側面は「長い側面」となる。各ユニットにおいて3つの短い側面と3つの長い側面は、交互に配置されている。さらに、各ユニットにおける3つの短い側面を接合面とし、3つの長い側面は非接合面とすることが好適である。短い側面を接合面とした場合、長い側面を接合面とした場合よりも広い開口部Wが得られる。しかしながら、用途によっては、長い側面を接合面としてもよい。特別な例として、短辺と長辺の長さが同じであれば正六角形となる(図1に示した構造ユニット5)。
図15に示すように、仮想ハニカム形状の単位格子である六角形格子H1の各頂点h1、h2、h3、h4、h5、h6を含む位置に、6個のユニット2(1)、2(2)、2(3)、2(4)、2(5)、2(6)が配置される。隣り合うユニットの各々の短い側面である接合面を対向させ接合する。接合された面s1、s2、s3、s4、s5、s6は、六角形格子H1のいずれかの辺と交差する。六角形格子H1上において各ユニットは両隣りのユニットと接合するために2つの接合面を用いることになる。これにより、6個のユニットが環状に連結され、その中央部分には、これらのユニットで囲まれた開口部W(太い二点鎖線で示す)が形成される。このとき各ユニットにおける残りの1つの接合面は、中心から放射方向に向いており、隣の六角形格子に含まれる1つのユニットの短い側面と連結することができる。
図15から明らかな通り、1つのユニット2は、隣り合う3つの六角形格子H1により共有される1つの頂点に配置され、3つの六角形格子H1により共有されることとなる。
ユニット2のパネル面の六角形には、長辺と短辺の比率の異なる変形形態があり得る。差し渡し直径(互いに対向する長辺と短辺間の距離)の同じ六角形で比較した場合、長辺と短辺の差が大きいほど、六角形格子H1の中央部分の開口部Wが大きくなり、各辺の長さが同一のときに開口部Wは正六角形で最も小さくなる。一方、長辺と短辺の差が大きいほど短い側面同士の接合部の面積が小さくなり、各辺の長さが同一のときに接合部の面積が最大となる。接合部の面積が大きいほど強度的には有利である。長辺と短辺の長さの絶対値及びその比率は、対象とする建築構造体に要求される強度、開口部の大きさ、その他種々の条件により設定する。しかしながら、本発明は、ハニカム形状に基づく構造であるので、長辺と短辺の差を比較的大きくしても十分な強度を得ることができ、その場合、開口部を広く採れるので有利である。
図15及び図16において、各ユニット内部の破線で示す位置には、緊張材挿入孔が予め設けられている。緊張材挿入孔にはシース(図示せず)が埋設されている。1つの緊張材挿入孔は、そのユニットにおけるいずれか1つの接合面に対して垂直にそのユニットを貫通している。よって、1つのユニットには、3つの異なる方向(互いに60度の角度をなす)に延在する3本の緊張材挿入孔が存在することになる。
例えば、図16に示すように、2つのユニット2(1)と2(2)の短い側面同士を対向させると、双方に設けた緊張材挿入孔が連通し、ユニット2(1)の向かって右側の長い側面からユニット2(2)の向かって左側の長い側面まで連続した1つの緊張材挿入孔が形成される。言い換えるならば、2つのユニットの互いの緊張材挿入孔の位置を合わせるように短い側面同士を当接させている。
この緊張材挿入孔に緊張材21aを挿通させ、ポストテンションを付加してその両端を一対の定着具22a、22aを用いて定着することにより、ユニット2(1)と2(2)とを強固に接合することができる。さらに、ユニット2(2)は、第2の緊張材21b及び定着具22b、22bによりユニット2(3)と接合される。またさらに、ユニット2(2)は、第3の緊張材21c’及び定着具22c’、22c’により、隣の六角形格子に含まれるユニット2(5)’と接合される。
このようにしてユニット同士を連結した場合、1つのユニットは、3つの異なる方向に延在する3本の緊張材21a、21b、21c’により隣合う3つのパネルユニットとそれぞれ接合されるため、各接合部は回転を阻止され剛接合となる。これにより、ハニカム状に剛接合したメインフレームをもつ建築構造体を構築することができる。
ここで、再び図15を参照すると、六角形格子H1を単位格子とする仮想ハニカム形状に構造ユニットを配置連結したメインフレームでは、六角形格子H1の上下2辺が水平方向に平行となるように配置される。ここで、鉛直方向においてm列とn列の縦に並んだ2列の各ユニットを見ると、各列の各ユニットがジグザグに配置され剛接合で連結されている。この形態は、鉛直方向に並んだ複数の六角形格子H1の各頂点h3”、h2、h3、h4、h3’、h4’を連結してジグザグに配置される斜柱(例えば、前述の図8の実施例)を想定した場合、そのような斜柱と同様の機能を有しており、鉛直荷重及び水平負荷を軸力に変換しやすい構造となっている。加えて、斜柱のような線状部材ではなく面状部材であるため、更に強固な構造となる。
ユニット2を用いたハニカム構造では、最も応力の集中する六角形格子H1の各頂点に位置するパネルユニットが拡がりをもった面状部材であり、またこの部分には接合部がないため、応力に対して非常に強い構造である。接合部は、六角形格子H1の各辺の中点に位置しており、この部分は応力が小さいため有利である。
図17及び図18を用いて、図15及び図16に示したユニット2の構成を詳細に説明する。図17は、ユニット2の外観斜視図である。図18は、(A)正面図、(B)上面図、(C)Y−Y断面図及び(D)Z−Z断面図である。ユニット2は、所定の型枠を用いて製造されるPCパネルである。
図17及び図18に示すように、正面のパネル面2iと、背面のパネル面2j(図17では下側)とは、同形状の六角形であり、対応する各辺同士が互いに平行に配置されている。例えば、パネル面2iの短辺2a1と、パネル面2jの短辺2a2とは互いに平行であり、また、パネル面2iの長辺2f1と、パネル面2jの長辺2f2とは互いに平行である。パネル面2iとパネル面2jの間の距離が、ユニット2の厚さとなる。
パネル面2i、2jにおいては短辺と長辺とが交互に配置されている。例えば、パネル面2iにおいては、短辺2a1、長辺2d1、短辺2b1、長辺2e1、短辺2c1、長辺2f1の順に配置されている。短辺同士は同じ長さであり、長辺同士もまた同じ長さである。
さらに、パネル面2i、2jに対し垂直であって対応する各辺同士の間に延在する6つの側面2a、2d、2b、2e、2c、2fを備えている。短辺間に延在する側面2a、2b、2cは短い側面であり接合面となる。それに対して長辺間に延在する側面2d、2e、2fは長い側面であり非接合面である。
さらに、図18(A)に示すように、6つの側面のうち互いに対向する側面同士の間に、緊張材挿入孔2a3(短い側面2aと長い側面2eの間)、2b3(短い側面2bと長い側面2fの間)、2c3(短い側面2cと長い側面2dの間)がそれぞれ設けられる。各緊張材挿入孔2a3、2b3、2c3は、対向する一対の側面に対しそれぞれ垂直である。各緊張材挿入孔2a3、2b3、2c3は、それぞれの側面のほぼ中心に開口していることが好ましい。正面図においてはいずれの緊張材挿入孔もユニットの中心部を通り、互いのなす角度γは60度である。3つの緊張材挿入孔は、正面視においては交差しているように見えるが、図18(B)及び(C)に示すように、ユニットの厚さ範囲内において互いに重ならない位置に設けられている。もっとも、バランスの観点から、全ての緊張材挿入孔がユニット厚さ範囲内においてできるだけ中央近傍に位置することが好ましい。
ユニット2の各部位の寸法は、構築すべき建築構造物に要求される条件あるいは輸送条件等により適宜設定される。
図19は、ユニット2の特別な場合に相当するユニット5の外観斜視図である。図17に示したユニット2と対応する部分は同じ符号で示している。図17のユニット2と比較して、一対のパネル面5i及び5jが正六角形、すなわち6つの辺の長さが同じである点が相違する。ユニット5同士を接合する場合は、例えば、1つおきの側面5a、5b、5cを接合面として用いればよく、その他の点については、図17に示したユニット2と同じである。
図示しないが、ユニット2の変形形態として、パネル面の3つの長辺のうち2つの長辺を同じ長さとし残りの一辺を異なる長さとした六角形でもよい。
図20(A)は、仮想ハニカム形状が曲面または折れ曲がりをもつ場合に用いられる構造ユニットの一実施例であり、図17のユニット2と接合可能な構造ユニット2Aを示す外観斜視図である。図20(A)は、その外観斜視図を示している。
ユニット2Aでは、1つの短い側面2Acが、パネル面2Ai、2Ajに対して垂直な方向Cから僅かな角度β1をなしている。このようなユニット2Aを用いることにより、曲面のハニカム構造を構築することができる。
図20(B)は、(A)に示したユニット2A(1)と、同じ形状のもう1つの構造パネルユニット2A(2)とを、それぞれの短い側面2Ac(1)と2Ac(2)を対向させて接合した状態の背面図(メインフレームの内面側)であり、図20(C)は上面図である。上面図に示されるように、接合された2つのユニット2A(1)と2A(2)の各々のパネル面2Aj(1)と2Aj(2)とは、角度180°−2β1となって屈曲部が形成される。このような接合を連続させていくと曲面を形成することができる。
但し、角度β1は僅かな角度であり、双方のユニット2A(1)と2A(2)に緊張材を貫挿させて図16に示すユニット2と同様にポストテンションを付与して定着させることにより、ほぼ同様の接合強度が得られる程度とする。よって、接合面となる短い側面2Acは、傾斜があるといってもパネル面2Ai、2Ajに対してほぼ垂直といってよく、また、短い側面2Acに開口する緊張材挿入孔2Ac3もまた、この側面に対してほぼ垂直といってよい。
図21(A)は、仮想ハニカム形状が曲面または折れ曲がりをもつ場合に用いられる構造ユニットの別の実施例であり、上記のユニット2と接合可能なユニット2Bを示す正面図である。(B)はその上面図を示している。
図21(A)及び(B)に示すように、ユニット2Bの正面のパネル面は、直線状の屈曲部2Bkを境界として互いに角度β2をなす2つの面2Bi1と2Bi2からなる。背面のパネル面についても同様である。すなわち、ユニット2Bは、屈曲部2Bkで折れ曲がっている。このような屈曲部2Bkをもつユニット2B同士を接合することにより、曲面のメインフレームを構築することができる。例えば、図13(A)に示した円筒チューブ架構のように曲面部分においてもメインフレームが鉛直方向に対して平行である場合は、屈曲部2Bkが鉛直方向と平行となるようにユニット2Bを配置する。屈曲部2Bkの向きは、メインフレームの面の曲がる方向に対応して配置するようにする。図示の例では、屈曲部2Bkの位置が中央であるが、左または右に片寄っていてもよい。また、この屈曲形のユニット2Bは、メインフレームにおける2つの平面の交わる折れ曲がり部分(例えば、図7に示したチューブ架構の隅部)に用いることもできる。なお、角度β2の大きさは、ポストテンションを付加した緊張材による2つのユニット2B同士の接合、またはユニット2Bと他の接合可能なユニットとの接合に支障のない程度とする。
さらに、屈曲形のユニット2Bを用いると、一方向へ曲がる曲面のみではなく、その逆方向へ曲がる曲面を連続的に形成することもできる。例えば、上面から見た場合に波状となる曲面である。
図17に示した平坦形のユニット2と、図21に示した屈曲形のユニット2Bとを組み合わせて用いることにより、平面部分と曲面部分をもつメインフレームを自在に構築することもできる。
図22〜図25を参照し、仮想ハニカム形状に構造ユニットを配置し連結したメインフレームをもつ建築構造体の別の実施例について説明する。
図22は、構造ユニットを用いて構築した建築構造体のメインフレーム103の一部を示す正面図である。例えば、上述の図7(A)と同様のチューブ架構の一部である。図23は、図22のメインフレーム103の部分拡大斜視図である。
図22に示すメインフレームは、図2に示した六角形格子H2(太い一点破線で示す)を単位格子とする仮想ハニカム形状に対し、下方部分K1については図2に示した構造ユニット5を配置し連結して構築され、上方部分K2については図2に示した構造ユニット4を配置し連結して構築される。ユニット5については、上述の図19においてユニット2の変形形態の1つとして説明した通り、パネル面が正六角形のユニットである。ユニット4は、ユニット5における非接合面を凹曲面としたユニットである。
下方部分K1では、6個のユニット4が、六角形格子H2の各頂点h1〜h6の位置を含むように配置され、隣り合う2つのユニット同士は各辺の中点で接合面同士を対向させて接合されている。接合された面s1〜s6は、それぞれ各辺と垂直に交差している。これにより6個のユニット4は環状に連結される。上方部分K2では、6個のユニット5が同様に六角形格子H2上に配置され連結されている。ユニット4とユニット5は、非接合面の形状は異なるが、接合面の位置及び形状が共通するので互いに接合可能である。
下方部分K1では、六角形格子H2の中央部分に六角形の開口部Wfが形成され、上方部分K2では、六角形格子H2の中央部分にほぼ円形の開口部Wgが形成されている。境界部分では変則的な形状の開口部Whが形成される。ユニット4は、ユニット5よりパネル面積が狭く(すなわち体積が小さく)、その分だけ開口部Wgが開口部fより広くなる。ユニットの体積が小さいことは、軽量でありコンクリート量が少ないことを意味する。軽量であることは、荷重負荷の比較的少ない上層階に適しておりまた下層階への負担も少なくなるため、上層階へ行くほど体積の小さいユニットを用いることが好適である。一方、下層階では十分なコンクリート量をもつユニットを用いることにより上層階からの過重負荷を支持することができる。
図22及び図23において、各ユニット内部の破線で示す位置には、緊張材挿入孔が予め設けられている。緊張材挿入孔にはシース(図示せず)が埋設されている。1つの緊張材挿入孔は、そのユニットにおけるいずれか1つの接合面に対して垂直にそのユニットを貫通している。よって、1つのユニットには、3つの異なる方向(互いに60度の角度をなす)に延在する3本の緊張材挿入孔が存在することになる。
例えば、図23に示すように、2つのユニット4(1)とユニット4(2)の接合面同士を対向させると、双方に設けた緊張材挿入孔が連通する。この緊張材挿入孔に緊張材21aを挿通させ、ポストテンションを付加してその両端を一対の定着具22a、22aを用いて定着することにより、ユニット4(1)とユニット4(2)とを強固に接合することができる。さらに、ユニット4(2)とユニット4(3)は、第2の緊張材21b及び定着具22b、22bにより接合され、ユニット4(3)とユニット4(4)は、第3の緊張材21c及び定着具22c、22cにより接合される。
このようにしてユニット同士を連結した場合、1つのユニットは、3つの異なる方向に延在する3本の緊張材21a、21b、21cにより隣合う3つのユニットとそれぞれ接合されるため、各接合部は回転を阻止され剛接合となる。これにより、ハニカム状に剛接合したメインフレームをもつ建築構造体を構築することができる。
図24を用いて、図22及び図23に示したユニット4の構成を詳細に説明する。(A)は正面図、(B)は上面図、(C)は外観斜視図である。
図24に示すように、正面のパネル面4iと背面のパネル面4jとは同形状である。パネル面4i、4jの輪郭形状は、正六角形の一つおきの3辺とそれらの間の3つの凹曲線とから形成される。直線の3辺を含む平坦な側面4a、4b、4cは、隣り合うユニットとの接合面となる。接合面と接合面の間の凹曲面4d、4e、4fは、非接合面である。
さらに、6つの側面のうち互いに対向する側面同士の間に、緊張材挿入孔4a3(接合面4aと凹曲面4eの間)、4b3(接合面4bと凹曲面4fの間)、4c3(接合面4cと凹曲面4dの間)がそれぞれ設けられる。各緊張材挿入孔4a3、4b3、4c3は、接合面4a、4b、4cに対しそれぞれ垂直である。各緊張材挿入孔4a3、4b3、4c3は、それぞれの接合面および凹曲面のほぼ中心に開口していることが好ましい。図24(A)の正面図においてはいずれの緊張材挿入孔もユニットの中心部を通り、互いのなす角度γは60度である。また、図24(B)及び(C)に示すように、各緊張材挿入孔は、ユニットの厚さ範囲内において互いに重ならない位置に設けられている。もっとも、バランスの観点から、全ての緊張材挿入孔がユニット厚さ範囲内においてできるだけ中央近傍に位置することが好ましい。
ユニット4の各部位の寸法は、構築すべき建築構造物に要求される条件あるいは輸送条件等により適宜設定される。
図25(A)は、仮想ハニカム形状が曲面または折れ曲がりをもつ場合に用いられる構造ユニットの一実施例であるユニット4Aを示しており、上記のユニット4と接合した状態の正面図である。(B)はその上面図である。
図25(A)及び(B)に示すように、ユニット4Aの正面のパネル面は、直線状の屈曲部4Akを境界として互いに角度βをなす2つの面4Ai1と4Ai2からなる。背面のパネル面についても同様である。すなわち、ユニット4Aは、屈曲部4Akで折れ曲がっている。このような屈曲部4Akをもつユニット4Aを上記のユニット4と接合することにより、曲面のメインフレームを構築することができる。ユニット4Aに対しさらにユニット4Aを接続していけば、曲がりの度合いが大きくなる。例えば、図13(A)に示した円筒チューブ架構のように曲面部分においてもメインフレームが鉛直方向に対して平行である場合は、屈曲部4Bkが鉛直方向と平行となるようにユニット4Aを配置する。屈曲部4Akの向きは、メインフレームの面の曲がる方向に対応して配置するようにする。図示の例では、屈曲部4Akの位置が中央であるが、左または右に片寄っていてもよい。
また、この屈曲形のユニット4Aは、メインフレームにおける2つの平面の交わる折れ曲がり部分(例えば、図7に示したチューブ架構の隅部)に用いることもできる。なお、角度βの大きさは、ポストテンションを付加した緊張材による2つのユニット4A同士の接合、またはユニット4Aと他の接合可能なユニットとの接合に支障のない程度とする。
さらに、屈曲形のユニット4Aを用いると、一方向へ曲がる曲面のみではなく、その逆方向へ曲がる曲面を連続的に形成することもできる。例えば、上面から見た場合に波状となる曲面である。
図26〜図31を参照し、仮想ハニカム形状に構造ユニットを配置し連結したメインフレームをもつ建築構造体の別の実施例について説明する。
図26は、構造ユニットを用いて構築した建築構造体のメインフレーム104の一部を示す正面図である。例えば、上述の図7(A)と同様のチューブ架構の一部である。図27は、図26のメインフレーム104と同じユニットから構成されたメインフレームの部分斜視図である。
図26に示すメインフレームの最下部分K1では、六角形格子H2(太い一点破線で示す)を単位格子とする仮想ハニカム形状に対し、図6に示した配置パターンBにより図4に示した構造ユニット8を配置している。最下部分K1の上にそれぞれ異なる形状の構造ユニットからなる第2部分K2、第3部分K3、さらに最上部分K4が連続的に構築されている。第2部分K2、第3部分K3及び最上部分K4にそれぞれ用いられている構造ユニット13、構造ユニット14、構造ユニット15は、いずれも図3及び図4に示した構造ユニット7に類似する変形形態である。
ユニット8、13、14及び15は、いずれも六角形格子H2の隣り合う2つの頂点の対を含む位置に配置されている。例えば、最下部分K1のユニット8は、8(1)が頂点h1と隣の六角形格子の1つの頂点を占め、ユニット8(2)は頂点h2とh3を占め、ユニット8(3)は対h4と隣の六角形格子の1つの頂点を占め、ユニット8(4)はh5とh6を占めている。このように配置された各ユニットは、右上、左上、右下、左下の各側面を接合面とする。隣り合う2つのユニット同士は、各々の接合面を対向させて互いに接合され、4個のユニット8は環状に連結される。これらの接合は、剛接合である。これらの接合された4つの面s1、s3、s4、s6の各々は、六角形格子H2のいずれかの辺と交差している。第2部分K2におけるユニット13、第3部分K3におけるユニット14、最上部分K4におけるユニット15についても、六角形格子H2の各辺の長さは異なるが、ユニットの配置及び接合形態は同様である。ユニット8、13、14及び15は、パネル面の非接合面の形状はそれぞれ異なるが、接合面の位置と形状が共通するので、互いに接合可能である。
図26に示す実施例のように、仮想ハニカム形状の単位格子である六角形格子の形状が下方から上方へ行くにつれて変形している場合もある。形状は異なるが個々の六角形格子は左右対称である。そして、1つの形状から異なる形状へと移行する部分においては、上下対称ではない形状の六角形格子が存在する。
最下部分K1では、六角形格子H2の中央部分に四角形の開口部Whが形成され、第2部分K2では六角形格子H2の中央部分にほぼ楕円形の開口部Wiが形成され、第3部分K3では六角形格子H2の中央部分にほぼ菱形の開口部Wjが形成され、最上部分K4では六角形格子H2の中央部分に菱形開口部Wkが形成される。最下部分K1から最上部分K4へと上層階に行くにつれて、ユニットのパネル面積が狭く(すなわち体積が小さく)、その分だけ開口部がより広くなる。ユニットの体積が小さいことは、軽量でありコンクリート量が少ないことを意味する。軽量であることは、荷重負荷の比較的少ない上層階に適しておりまた下層階への負担も少なくなるため、上層階へ行くほど体積の小さいユニットを用いることが好適である。一方、下層階では十分なコンクリート量をもつユニットにより上層階からの過重負荷を支持することができる。
図26及び図27において、各ユニット内部の破線で示す位置には、緊張材挿入孔が予め貫通している。緊張材挿入孔にはシース(図示せず)が埋設されている。1つの緊張材挿入孔の一端はいずれか1つの接合面に開口し、他端はいずれかの非接合面に開口している。よって、1つのユニットには、4つの異なる方向に延在する4本の緊張材挿入孔が存在することになる。
例えば、図27に示すように、1つのユニット8は、左上の接合面を左上のユニット13の右下の接合面と対向させると、双方に設けた緊張材挿入孔が連通する。この緊張材挿入孔に緊張材21aを挿通させ、ポストテンションを付加してその一端はユニット8の下側面で定着具22aを用いて定着し、他端はユニット13の上側面で定着具を用いて定着する。
第2の緊張材21bは、ユニット8と左下の別のユニット8の緊張材挿入孔に挿通され、その一端はユニット8の上側面で定着具22bを用いて定着され、他端は左下の別のユニット8の下側面で定着具22bにより定着される。
第3の緊張材21cは、ユニット8と右下の別のユニット8の緊張材挿入孔に挿通され、その一端はユニット8の上端で定着具22cにより定着され、他端は右下の別のユニット8の下側面で定着具22cにより定着される。
第4の緊張材21dは、ユニット8と右上のユニット13の緊張材挿入孔に挿通され、その一端はユニット8の下側面で定着具22dにより定着され、他端は右上のユニット13の上側面で定着具22dにより定着される。
図27に示した全てのユニットが、同様に、ポストテンションを付加した緊張材により接合される。1つのユニットは、4つの異なる方向に延在する4本の緊張材21a、21b、21c、21dにより隣合う4つのユニットとそれぞれ接合されるため、各接合部は回転を阻止され剛接合となる。これにより、ハニカム状に剛接合したメインフレームをもつ建築構造体を構築することができる。
なお、図26及び図27に示したメインフレームでは、2つのユニット間に連通する緊張材挿入孔が必ずしも直線状ではないが、PCパネル内部にシースを曲線状に埋設することは一般的に行われていることである。
図28は、図26及び図27に示した各ユニットの外観斜視図であり、(A)がユニット8、(B)がユニット13、(C)がユニット14及び(D)がユニット15である。
図28(A)に示すように、ユニット8は、正面に八角形のパネル面8iを備える(背面も同様)。この八角形は長方形の四隅を切り取った形状であり、パネル面の周縁は、交互に配置された長辺と短辺により構成される。短辺同士の間の小さい4つの側面8a、8b、8c、8dが接合面となる。その他の4つの大きい側面8e、8f、8g、8hは非接合面である。さらに、接合面8aと非接合面8gの間に緊張材挿入孔8a3が、接合面8bと非接合面8gの間に緊張材挿入孔8b3が、接合面8cと非接合面8eの間に緊張材挿入孔8c3が、接合面8dと非接合面8eの間に緊張材挿入孔8d3が、それぞれ設けられる。そして、緊張材挿入孔8a3と8b3は、非接合面8gのほぼ中心に開口していることが好ましい。緊張材挿入孔8c3と8d3は、非接合面8eのほぼ中心に開口していることが好ましい。
パネル面8i側から見ると、緊張材挿入孔8a3と8d3が交差して見え、緊張材挿入孔8b3と8c3が交差して見える。しかしながら、各緊張材挿入孔は、ユニット8の厚さ範囲内において互いに重ならない位置に設けられている。もっとも、バランスの観点から、全ての緊張材挿入孔がユニット厚さ範囲内においてできるだけ中央近傍に位置することが好ましい。
図28(B)に示すように、ユニット13は、接合面13a〜13d及び非接合面13e〜13hを備え、接合面は(A)のユニット8と共通し、非接合面はユニット8の非接合面を凹面とした形状である。4つの緊張材挿入孔13a3、13b3、13c3、13d3は、ユニット8と同様に設けられ、各緊張材挿入孔の一端は、各接合面に開口し、他端は非接合面13eまたは13gの凹面の谷底部に開口する。
図28(C)に示すように、ユニット14は、接合面14a〜14d及び非接合面14e〜14hを備え、接合面は(A)のユニット8と共通し、非接合面はユニット8の非接合面を凹面とした形状であり、ユニット13よりさらに深い凹面となっている。4つの緊張材挿入孔14a3、14b3、14c3、14d3は、ユニット8と同様に設けられ、各緊張材挿入孔の一端は、各接合面に開口し、他端は非接合面14eまたは14gの凹面の谷底部に開口する。
図28(D)に示すように、ユニット15は、接合面15a〜15d及び非接合面15e〜15hを備え、接合面は(A)のユニット8と共通し、非接合面はユニット8の非接合面を凹面とした形状であり、ユニット14よりさらに深くV字状となっている。言い換えるならば、中心部分から四方向に延びる4本の脚部を具備し、4本の脚部の各々の先端における側面が接合面となる。4つの緊張材挿入孔15a3、15b3、15c3、15d3は、ユニット8と同様に設けられ、各緊張材挿入孔の一端は、各接合面に開口し、他端は非接合面15eまたは15gのV字状面の谷底部に開口する。
図29は、図27に示したメインフレームと形状は同じであるが別の実施例であるメインフレーム105の外観斜視図である。図29のメインフレーム105は、図27に示したユニットとは、若干異なるユニットを用いて構築されている。
例えば、図27に示したユニット8、13、14及び15は、1つのユニットを1階層に割り当てた場合、ユニットの大きさが一般的なPCパネルとしては相当大きく重量のあるものとなり、製造、運搬及び組立ての効率を損なうおそれがある。従って、図29に示すように、各ユニットを中央部で2分割した半ユニットをPCパネルの製造単位とすることで、製造、運搬及び組立ての効率を確保すると同時に、構築されたメインフレーム105は、図27のユニット8、13、14及び15によるメインフレーム104と同様の機能を果たすことができる。1つのユニットを形成する2つの半ユニット同士は同形状であるので、製造時の型枠は一種類でよい。
半ユニット8mと8nの一体化パネルは図27のユニット8に相当し、半ユニット13mと13nの一体化パネルは図27のユニット13に相当し、半ユニット14mと14nの一体化パネルは図27のユニット14に相当し、半ユニット15mと15nの一体化パネルは図27のユニット15に相当する。半ユニット同士を接合した一体化パネルを、図27のユニット8、13、14及び15と同様にして4本の緊張材21a〜21dを用いて接合することにより、半ユニット同士も同時に接合されることとなる。
図30は、図29に示した半ユニットの外観斜視図であり、(A)がユニット8の半ユニット、(B)がユニット13の半ユニット、(C)がユニット14の半ユニット及び(D)がユニット15の半ユニットである。
図30(A)に示すように、ユニット8の半ユニット8mと8nは、ユニット8において互いに対向する一対の非接合面と交差する分割面8t、8uで等分割されたものである。分割面8tには、緊張材挿入孔8ma3、8mb3、8mc3及び8md3が開口しており、分割面8uには、緊張材挿入孔8na3、8nb3、8nc3及び8nd3が開口している。半ユニット8mの分割面8tと半ユニット8nの分割面8uを対向させ当接することによりユニット8と同じ形状のPCパネルが形成され、各緊張材挿入孔も連通してユニット8の緊張材挿入孔と同じ配置となる。図29に示したように、これらの連通した緊張材挿入孔に緊張材を挿通し、ポストテンションを付加して定着することにより、半ユニット8mと8nは剛接合される。図30(B)〜(D)のユニット13、14及び15の半ユニットについても同様である。
図31及び図32は、仮想ハニカム形状が曲面または折れ曲がりをもつ場合に用いられる構造ユニットの一実施例であるユニット8A、13A、14A及び15Aを示す。図31(A1)及び(A2)は、上記のユニット8と接合した状態のユニット8Aの正面図及び上面図であり、(B1)及び(B2)は上記のユニット13と接合した状態のユニット13Aの正面図及び上面図である。同様に、図32(A1)及び(A2)は、上記のユニット14と接合した状態のユニット14Aの正面図及び上面図であり、(B1)及び(B2)は上記のユニット15と接合した状態のユニット15Aの正面図及び上面図である。
図31(A1)及び(A2)に示すように、ユニット8Aの正面のパネル面は、直線状の屈曲部8Akを境界として互いに角度βをなす2つの面8Ai1と8Ai2からなる。背面のパネル面についても同様である。すなわち、ユニット8Aは、屈曲部8Akで折れ曲がっている。このような屈曲部8Akをもつユニット8Aを上記のユニット8と接合することにより、曲面のメインフレームを構築することができる。ユニット8Aに対しさらにユニット4Aを接続していけば、曲がりの度合いが大きくなる。例えば、図13(A)に示した円筒チューブ架構のように曲面部分においてもメインフレームが鉛直方向に対して平行である場合は、屈曲部8Akが鉛直方向と平行となるようにユニット8Aを配置する。屈曲部8Akの向きは、メインフレームの面の曲がる方向に対応して配置するようにする。図示の例では、屈曲部8Akの位置が中央であるが、左または右に片寄っていてもよい。
また、この屈曲形のユニット8Aは、メインフレームにおける2つの平面の交わる折れ曲がり部分(例えば、図7に示したチューブ架構の隅部)に用いることもできる。なお、角度βの大きさは、ポストテンションを付加した緊張材による2つのユニット8A同士の接合、またはユニット8Aと他の接合可能なユニットとの接合に支障のない程度とする。
さらに、屈曲形のユニット8Aを用いると、一方向へ曲がる曲面のみではなく、その逆方向へ曲がる曲面を連続的に形成することもできる。例えば、上面から見た場合に波状となる曲面である。ユニット13A、14A及び15Aについても同様である。
図33は、PCパネル以外の部材による本発明の実施例を示す建築構造体のメインフレームの部分斜視図である。図33のメインフレームは、上述の図9に示したユニット1を用いたメインフレームと同じ形状であるが、個々のユニット16は鉄骨である。ユニット16は、上述のユニット1と外周面の輪郭形状はほぼ同様であり、三方向に延びる3つの脚部が3本の鉄骨から形成される。ユニット16は、PCパネルと同様に予め工場生産されることが好適である。図示の例では、H形鋼を用いているが断面形状は任意である。ユニット16の3つの脚部の先端にはフランジ状の接合面16a、16b、16cが溶接等により設けられ、隣合うユニット16と接合面同士を当接してボルトで接合することができる。接合は、溶接で行ってもよいがボルトによる方が効率的である。
図示しないが、上記のPCパネルのいずれかの実施例と同等の形状であれば、PCパネル以外の部材であっても同様のメインフレームを構築することができる。従って、鉄骨造、鉄筋コンクリート造、鉄骨鉄筋コンクリート造、または木造のハニカム形状のメインフレームをもつ建築構造体を構築することができる。
本発明の構造ユニットにより構築した建築構造体のメインフレームの一実施例を示す部分的な正面構成図である。(A1)はユニット1を用いたメインフレームの一部、(A2)はユニット1の変形形態、(B1)はユニット4を用いたメインフレームの一部、(B2)はユニット4の変形形態を示す。
本発明の構造ユニットを複数個用いて構築した建築構造体のメインフレームの別の実施例を示す部分的な正面構成図である。(A)は、図1に示したユニット2を用いたメインフレームの一部、(B)は、図1に示したユニット5を用いたメインフレームの一部である。
本発明の構造ユニットにより構築した建築構造体のメインフレームの別の実施例を示す部分的な正面構成図である。(A1)はユニット7を用いたメインフレームの一部、(A2)はユニット7の変形形態、(B1)はユニット10を用いたメインフレームの一部、(B2)はユニット10の変形形態を示す。
本発明の構造ユニットを複数個用いて構築した建築構造体のメインフレームの別の実施例を示す部分的な正面構成図である。(A)は図3に示したユニット8を用いたメインフレームの一部、(B)は図3に示したユニット11を用いたメインフレームの一部である。
六角形格子H1から形成されるハニカム形状に基づいた構造ユニットの配置パターンの一例を示す正面構成図である。
六角形格子H2から形成されるハニカム形状に基づいた構造ユニットの配置パターンの一例を示す正面構成図である。
(A)は、三股形構造ユニットを用いたメインフレームからんるチューブ架構100の全体の外観斜視図である。(B)は、図7(A)のチューブ架構100の一部を拡大して示した正面図である。(C)は上面図である。
図7のメインフレーム100の部分拡大図である。
図8における2つの構造ユニットの接合状態をさらに詳細に示す拡大斜視図である。
構造ユニットの一例を示す図である。(A)は上面図、(B)はX−X断面図である。
図10に示したユニットの変形形態により構築したメインフレームの一部を示す斜視図である。
図10に示したユニットと、スラブとの接合方法を示す斜視図である。
(A)は、図10に示したユニットのさらに別の変形形態を用いて構築したメインフレームの一例を部分的に示した図である。(B)は(A)のメインフレームを構築するためのユニットの上面図、(C)は同じく正面図である。
図10に示したユニットの変形形態を示し、(A)は外観斜視図、(B)はメインフレームの一部を示す正面図である。
本発明の構造ユニットを用いて構築した建築構造体のメインフレームの一部を示す正面図である。
図15のメインフレームの部分拡大斜視図である。
図16に示したユニットの外観斜視図である。
図17に示したユニットの(A)正面図、(B)上面図、(C)Y−Y断面図及び(D)Z−Z断面図である。
図17に示したユニットの特別な場合に相当するユニットの外観斜視図である。
(A)は図17に示したユニットの変形形態の外観斜視図、(B)は、(A)に示したユニットの接合状態の背面図、(C)は接合状態の上面図である。
(A)は図17に示したユニットの変形形態の正面図、(B)は上面図である。
本発明の構造ユニットを用いて構築した建築構造体のメインフレームの一部を示す正面図である。
図22のメインフレーム103の部分拡大斜視図である。
図23に示したユニットの(A)は正面図、(B)は上面図、(C)は外観斜視図である。
図24に示したユニットの変形形態を示し、(A)は接合状態の正面図であり、(B)はその上面図である。
本発明の構造ユニットを用いて構築した建築構造体のメインフレームの一部を示す正面図である。
図26のメインフレームと同じユニットから構成されたメインフレームの部分斜視図である。
(A)〜(D)はそれぞれ図27に示した各ユニットの外観斜視図である。
図27に示したメインフレームと形状は同じであるが別の実施例であるメインフレームの外観斜視図である。
(A)〜(D)はそれぞれ図29に示した半ユニットの外観斜視図である。
(A1)及び(A2)は図27に示した一ユニットの変形形態の接合状態の正面図及び上面図であり、(B1)及び(B2)は図27に示した別のユニットの変形形態の接合状態の正面図及び上面図である。
(A1)及び(A2)は図27に示した一ユニットの変形形態の接合状態の正面図及び上面図であり、(B1)及び(B2)は図27に示した別のユニットの変形形態の接合状態の正面図及び上面図である。
PCパネル以外の部材による本発明の実施例を示す建築構造体のメインフレームの部分斜視図である。
符号の説明
1〜15 構造ユニット(PCパネル)
21a〜21d 緊張材
22a〜22d 定着材
H1、H2 仮想ハニカム形状の六角形格子
h1〜h6 六角形格子の頂点
s1〜s6 ユニット同士を接合した面
W メインフレーム開口部