JP4191294B2 - タイヤの加硫成形金型および加硫成形方法 - Google Patents

タイヤの加硫成形金型および加硫成形方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、タイヤの、それぞれの側壁成形部およびトレッド成形部をともに上下方向に二分割し、かつ、各トレッド成形部を、複数個の周方向成分、すなわちセグメントにて構成してなる、いわゆるフルモールドと割りモールドとの双方の構成態様を具えるタイヤの加硫成形金型および、それを用いたタイヤの加硫成形方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
この種の加硫成形金型は、特開平6−218734号公報、特開平8−332634号公報等に開示された割りモールドに比し、コンテナと称されるモールド容器、トレッドセグメントの拡縮機能を具える大型機械装置が不要であって金型の全体構成を小型化できることから、近年において研究開発が盛んに行われており、先に提案されたこの種加硫成形金型としては、たとえば、特開平4−348915号公報、特開平7−186303号公報等に開示されたものがある。
【0003】
これらはいずれも、それぞれの側壁成形部およびトレッド成形部をともに上下に分割するとともに、各トレッド成形部を複数個のトレッドセグメントにより構成したところにおいて、各個のトレッドセグメントを、側壁成形部から独立させて上下方向および半径方向に変位可能としたものであり、型締め作動に当っては、図12に略線断面図で示すように、上下のそれぞれのトレッドセグメントTU、TLの相互の当接状態での、それらの両セグメントTU、TLの縮径変位と、それぞれの側壁成形部SU、SLの近接変位とを行わせるものである。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、このような従来技術にあっては、型締め作動に当って、両トレッドセグメントTU、TLの所定の近接変位が、両側壁成形部SU、SLの所定の近接変位に先だって終了し、金型の上下方向で、トレッドセグメントTU、TLの成形面と、側壁成形部SU、SLの成形面との間にずれδが発生することになるので、トレッドセグメントTU、TLの縮径変位に基づく、それらの成形面による生タイヤGの成形時に、トレッドセグメントTU、TLにて押圧されたゴム素材の一部が、トレッドセグメントTU、TLによる成形形状、いいかえれば、トレッドパターンとの関連において、図に矢印Aで示すように、そのずれδの領域内へ、比較的多量に流入することになり、これがため、その後に続く、両側壁成形部SU、SLの近接変位および、トレッドセグメントTU、TLの縮径変位の継続により、ずれδの領域内へ入り込んだゴム素材の一部が、側壁成形部SU、SLと、トレッドセグメントTU、TLとの間に噛み込まれるおそれが高いという問題があった。
【0005】
この発明は、従来技術が抱えるこのような問題点を解決することを課題とするものであり、それの目的とするところは、割りモールドに比して、金型の全体機構を十分小さくできることはもちろん、不測のゴム噛みの発生のおそれを有利に除去したタイヤの加硫成形金型および加硫成形方法を提供するにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
この発明の、タイヤの加硫成形金型は、上下のそれぞれのベースプレートに直接的もしくは間接的に取付けた、それぞれの側壁成形部およびそれぞれのトレッド成形部を具え、各トレッド成形部を、半径方向に拡縮変位できる複数個のセグメントによって構成したものであり、トレッド成形部のそれぞれのセグメントを、側壁成形部に対して半径方向にだけ相対変位可能とするとともに、それらのセグメントを半径方向内方へ変位させる駆動手段を設け、生タイヤの加硫成形に当り、それぞれのセグメントの縮径作動と、上下の対向セグメントの当接とを同時に終了させるよう構成したものである。
【0007】
この金型では、トレッド成形部のそれぞれのセグメントが、側壁成形部に対して拡縮相対変位のみを行い、金型の型締め作動に当って、セグメントと側壁成形部とのそれぞれの成形面に、従来技術で述べたような上下方向のずれδが発生することがなく、それらの両者は常に一体的に上下運動を行うので、従来技術に比してゴム噛みの発生を有効に防止することができる。
そしてこのことは、生タイヤの加硫成形に当って、それぞれのセグメントの縮径作動と、上下の対向セグメントの当接とを同時に終了させる構成することでとくに顕著になる。
【0008】
ここで好ましくは、それぞれのセグメントを拡径方向に常時付勢することで、型締めに際するそれらの縮径変位を、駆動手段の作用の下で常に円滑かつ確実ならしめる。
【0009】
ところで、それぞれの駆動手段を、上下のそれぞれのベースプレートに直接的もしくは間接的に取付けられて、両ベースプレートの近接変位に基いて作動されるカム部材により構成した場合には、カム部材を、特別の外力の作用なしに、ベースプレートの変位に追従させて自動的に変位させることができ、また、側壁成形部の近接変位と、セグメントの縮径変位とを同時に進行させることができる。
なお、前記カム部材は、それをリング状に形成して全てのセグメントに共用することで、複数のセグメントに対応する複数のカム部材を設ける場合に比して、金型の構造を簡単にするとともに、それぞれのセグメントの変位をより有利に同期させることができる。
【0010】
また、カム部材を、それを取付けたベースプレートから離隔する方向へ付勢した場合には、上下のベースプレートの離隔変位に伴ってカム部材を自動的に復帰させることができ、これにより、セグメントの、自動的な拡径変を可能とすることができる。
【0011】
そしてまた、この金型では、上下のそれぞれのセグメントの対向面に、相互に嵌まり合う凹凸部を設けることが好ましい。これによれば、とくにはセグメントの縮径変位に際して、それらの凹凸部を掛合させることで、上下のセグメントの、相互に同期した縮径変位を担保することができる。
【0012】
さらに好ましくは、所定値を越える金型内圧に対し、セグメントの、半径方向外方への変位を許容する逃げスペースを、セグメントの外周側に隣接させて設ける。
この金型では、たとえば剛性材料からなる内型上で生タイヤを成型し、それをそのまま金型内で加硫成形する場合等において、生タイヤの体積が、所定の成形空間容積より大きいときに、セグメントを、拡径方向に幾分逃げ変位させることで体積のオーバ分を吸収することができる。これがため、側壁成形部を逃げ変位させ場合に比して、タイヤ中心線の位置ずれのおそれを十分に除去することができる。
【0013】
ところで、駆動手段を、先に述べたところに代えて、上下のそれぞれのベースプレートの相対変位とは独立して作動されるカム部材によって構成した場合には、それぞれのセグメトを所要のタイミングで拡縮変位させることができ、たとえば、金型の型締めに先だって予め縮径変位させる場合には、金型を、従来のフルモールドと同様に機能させることが、また、側壁成形部の近接変位の終了後に縮径変位させる場合には、割りモールドと同様に機能させることが、そして、側壁成形部の近接変位に同期させて縮径変位させる場合には、前述した金型と同様に機能させることが可能である。
またこの一方で、加硫成形の終了後における、それぞれのセグメントの拡径タイミングを選択することで、タイヤトレッドの陸部欠け、割れ等の発生のおそれを十分に除去することができる。
【0014】
なお、ここにおけるカム部材は、セグメントに連結されたレバー機構に置き換えることもでき、これによっても上述したところと同様の機能を実現することができる。そしてこの場合には、レバー機能をセグメントの拡径方向に付勢することで、セグメントの拡径復帰を自動化することができる。
【0015】
加えて、この金型では、それの型締め姿勢で内部空間を密閉するシール部材を設けることが好ましく、この場合には、金型の全体を覆う別個の密閉容器を準備する必要なしに、金型それ自体の所要位置から直接的に負圧吸引を行うことで、金型内の残留空気、発生ガス等を円滑かつ迅速に排出することができる。
なおここで、シール部材を金型の外周縁に沿う位置に配設した場合には、金型内部の複数個所にシール部材を配設する場合に比して、シール構造を簡単にするとともに、コストの低減をもらすことができ、さらには、保守管理を容易ならしめることができる。
【0016】
この発明の、タイヤの加硫成形方法は、上下のそれぞれのベースプレートに取付けた、それぞれの側壁成形部およびそれぞれのトレッド成形部を具え、各トレッド成形部を、半径方向に拡縮変位可能な複数個のセグメントにより構成してなる加硫成形金型によってタイヤを加硫成形するに当り、側壁成形部が相互に近接変位する型締め作動に伴って、それぞれのセグメントに、側壁成形部に対する縮径方向の相対変位だけを行わせて、それぞれのセグメントの縮径作動と、上下の対向セグメントの当接とを同時に終了させるにある。
【0017】
このような加硫成形方法によれば、先にも述べたように、セグメントの成形面と、側壁成形部の成形面との間に、従来技術の如くの上下方向のずれδが発生しないので、セグメントと側壁成形部との間へのゴムの噛み込みを有効に防止することができる。
そして、このことは、それぞれのセグメントの縮径作動と、上下の対向セグメントの当接とを同時に終了させて、特定のセグメント整合面間へのとくに多量のゴム噛みの発生を防止した場合にとくに効果的である。
【0018】
また好ましくは、型締め状態で、タイヤ素材の体積が所定の成形空間容積より大きい場合に、それぞれのセグメントを拡径方向に逃げ変位させ、これにより、側壁成形部を逃げ変位させる場合に比し、タイヤ中心線の位置ずれのおそれを取り除く。
ところでこのことは、タイヤ素材を、剛性材料からなる内型上に配設して加硫成形を施す場合のように、タイヤ素材を内型側へ逃がし得ない場合にとくに有効である。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下にこの発明の実施の形態を図面に示すところ基いて説明する。
図1はこの発明の実施の形態を示す要部縦断面図である。
ここでは、上下のそれぞれのベースプレート1,2に、タイヤ側面の成形に寄与するそれぞれの側壁成形部3,4を固定して設けるとともに、トレッド踏面の成形に寄与するそれぞれのトレッド成形部5,6を設け、各トレッド成形部5,6を、側壁成形部3,4に対して拡縮変位可能な複数個のセグメント7,8にて構成する。
【0020】
ここで、それぞれのセグメント7,8は、ベースプレート1,2に形成されて、側壁成形部3,4に対して放射状に延びる、たとえばT溝にそれを掛合させることで上下方向に抜止めされ、また、T溝の延在方向への進退摺動を案内される。
そして好ましくは、それらのセグメント7,8を、図2に要部断面斜視図で示すところから明らかなように、T溝内に配設したばね9,10によって拡径方向、いいかえれば、側壁成形部3,4から離隔する方向に付勢する。
【0021】
このような各セグメント7,8の外周側には、断面形状がほぼ楔状をなすカムフォロア11,12を、セグメント7,8と同様にして抜止めされて、セグメント7,8と一緒に進退摺動できるように、たとえば共通のT溝に掛合させて配設する。
この場合、好ましくは、セグメント7,8と、カムフォロア11,12との間に幾分の半径方向スペースを確保するとともに、この半径方向スペース内に、それらの両者が近接する方向の外力が所定値を越えた場合にのみ圧縮変形して、その半径方向スペースの減少を許容する突張りばね13,14を介装する。
【0022】
そしてまた、このようなカムフォロア11,12のさらに外周側に、上下のベースプレート1,2の周縁部分に固定した環状ブラケット15,16に対し、ばね17,18にて付勢されて、対向するベースプレート側へ突出する、断面形状がほぼ楔状のカム部材19,20を配設し、各カム部材19,20を、それの突出方向後端部分に設けたストッパ21,22の、環状ブラケット15,16への当接に基いて抜け止め保持する。かかるカム部材19,20は、環状ブラケット15,16、より好ましくは、図示しない直動ガイドの案内下で、それが環状ブラケット15,16から突出する進出位置と、それの先端面が環状ブラケット15,16の、相互に対向するそれぞれの表面と整列する後退位置との間で上下方向に変位することができる。
【0023】
ほぼ楔状断面をなすカム部材19,20をこのように配設することで、各カム部材19,20の傾斜カム面は、カムフォロア11,12の傾斜従動面に常時接触し、カム部材19,20が、ばね17,18のばね力に基いて、図示のような、それらの突出限位置にあるときは、カムフォロア11,12およびセグメント7,8は、拡径ばね9,10の作用下でそれらの拡径限界位置に存在する。
【0024】
なお、カム部材19,20は、それらを、セグメント7,8およびカムフォロア11,12の数に応じた個数の弧状部材の各々にて構成し得ることはもちろんであるが、カム部材19,20は、それぞれのカムフォロア11,12に外接する各リング状部材にて構成することもでき、これによれば、カム部材の、環状ブラケット15,16に対する直動ガイドを不要ならしめることができる他、金型の構造をより簡単なものとすることができる。
【0025】
従って、このような構成において、ベースプレート1,2が十分に離隔した金型の型開き状態の下では、それぞれのカム部材19,20は、上述のように、それらのストッパ21,22が環状ブラケット15,16に当接する突出限位置まで突出し、また、それぞれのセグメント7,8は拡径限界位置まで拡径して、加硫成形を終えた製品タイヤの、金型からの取出しおよび、生タイヤの、金型内への搬入等を許容する。
【0026】
ここでたとえば、金型内へ搬入した生タイヤに加硫成形を施すべく、上下のベースプレート1,2および両側壁成形部3,4を相互に近接変位させると、その途中で、上下のカム部材19,20が相互に衝接し、これにより、好ましくは、ともに等しい力でばね付勢されているそれぞれのカム部材19,20が、それぞれのばね力に抗してともに均等に押込まれる。この結果として、カム部材19,20の傾斜カム面が、カムフォロア11,12の傾斜従動面を半径方向内方へ押圧し、このカムフォロア11,12がセグメント7,8を、突張りばね13,14を介して半径方向内方へ押圧する。
【0027】
かくしてここでは、それぞれの側壁成形部3,4は、図3に示すように、内部成形空間に対してそれぞれ下方および上方へのみ変位することになるも、セグメント7,8は、側壁成形部3,4と一体のこれらの変位と、半径方向内方への縮径変位とに基いて、その内部成形空間に対して斜め内側へ変位することになり、この場合、側壁成形部3,4およびセグメント7,8の上下方向の近接速度はともに同一であるので、セグメント7,8の成形面と、側壁成形部3,4の成形面との間に、金型の上下方向での位置ずれ生じることはない。従って、位置ずれ部分へのゴム素材の噛み込みは十分に防止されることになる。
【0028】
ところで、ここにおいてより好ましくは、上下セグメント7,8のそれぞれの対向面に、それらの周方向長さの一部もしくは全体にわたって相互に嵌まり合う凸部23および凹部24を設け、これらの凹凸部を、両セグメント7,8が上下に密着するに先だって嵌合させることにより、たとえば、カム部材19,20の押圧ばね17,18のばね力に差が生じた場合その他に、いずれか一方のセグメント7,8が他方に先じて縮径変位するのを防止して、それらのセグメント7,8の縮径変位の同期、ひいては、両セグメント7,8の縮径の終了とタイミングを合わせた、それらの上下方向での図4に示すような密着を担保する。
これによれば、セグメント7,8の上下方向および周方向のいずれからも、ゴム噛みの原因となる、とくに大きなセグメント間隔の発生を十分に除去することができる。
【0029】
なお、図4に示すような型締め状態において、内型としての、たとえば剛性コア上に配設したタイヤ素材の体積が、所定の成形空間容積より大きく、この結果として、金型内圧が所定値を越えた場合には、セグメント7,8とカムフォロア11,12との間に介装した突張りばね13,14の圧縮変形をもたらして、セグメント7,8を拡径方向に逃げ変位させることで、余剰体積の吸収を可能ならしめる。
【0030】
そしてさらに好ましくは、少なくとも、図4に示すような型締め姿勢で金型の内部空間を密閉する単一のシール部材25を、両環状ブラケット15,16の当接部分に配設して、金型内への残留空気および発生ガスの直接的な吸引排気を可能なしらめる。ここで、図示のように、シール部材25を、一方の環状ブラケット16の外周面に配設し、他方の環状ブラケット15から突出させて設けたスカート部26とそのシール部材25とで気密性を確保する場合には、スカート部26の突出長さを選択することで、金型の型締め終了前に、シール部分より内周側の部分を気密状態とすることができるので、金型の型締め終了以前から吸引排気を開始することが可能となり、排気効率の一層の向上をもたらすことができる。
【0031】
図5は、発明装置の他の実施の形態を示すものであり、これは、トレッド成形部5,6を構成する、周方向に円弧状をなすそれぞれのセグメント7,8の、両ベースプレート1,2、ひいては、側壁成形部3,4の近接および離隔変位とは独立した拡縮変位を可能としたものである。
【0032】
図に示すところでは、上下のそれぞれのセグメント7,8に、上下方向に突出させて設けたそれぞれのロッド状部分30,31を、それぞれのベースプレート1,2に形成した半径方向に長いガイド孔1a,2aに貫通させるとともに、各ロッド状部分30,31を、その先端大径部をもって抜け止めすることで、それぞれのセグメント7,8の、側壁成形部3,4に対する拡縮変位を案内し、ベースプレート1,2からの不測の離脱を防止する。
【0033】
またここでは、セグメント7,8から半径方向外方へ突出させて、環状ブラケット15,16に貫通させたロッド状部材32,33を、圧縮ばね34,35を介してそこに抜け止めすることで、セグメント7,8を拡径方向に常時付勢し、さらに、上下の各セグメント7,8と、環状ブラケット15,16との間に、好ましくはリング状をなすカム部材36,37を配設し、各カム部材36,37の内周側のテーパカム面を、セグメント7,8の外周側の傾斜従動面に面接触させる。
【0034】
そして、このように配設したカム部材36,37を、そこに連結されて、それぞれのベースプレート1,2に貫通する、入力ロッド38,39への押込み外力および抜け出し外力の作用に基いて上下方向に進退変位可能ならしめる。ところで、カム部材36,37のこのような進退変位は、図6(a)に、図5(a)のVI−VI線に沿う部分横断面図で示し、図6(b)にカム部材部分を断面斜視図で示すところから明らかなように、カム部材36に、それの上下方向に延びる溝36aを形成して、カム部材36とロッド状部材32との干渉を防止することで、円滑かつ確実に行わせることができる。
【0035】
ここで、入力ロッド38,39の押込みによってカム部材36,37を進出変位させたときは、それらのテーパカム面が、それぞれのセグメント7,8の傾斜従動面を半径方向内方へ押圧することによってセグメント7,8の、図5(a)示すような縮径変位がもたらされ、逆に、入力ロッド38,39の抜き出しによってカム部材36,37を後退させたときは、ロッド状部材32,33上の圧縮ばね34,35の作用下で、セグメント7,8の、図5(b)に示すような拡径変位がもたらされる。
【0036】
このように構成してなる金型は、セグメント7,8を、生タイヤに対する加硫成形の開始から、加硫済みタイヤの取出しに至るまで、図5(a)に示すような縮径状態に保持した場合には、従来のフルモールドと同様に機能させることができ、また、たとえば、加硫成形終了後の金型の型開きに当って、それぞれのセグメント7,8を十分に拡径変位させた後に両側壁成形部3,4を離隔変位させることもでき、これによれば、セグメント7,8の突条もしくは突部による、加硫済みタイヤのトレッド陸部の損傷のおそれを十分に除去することができる。
【0037】
この一方で、この金型は、生タイヤの加硫成形に際し、先に述べた金型と同様に機能させて、従来の割りモールドのように、両側壁成形部3,4の近接作動の終了にセグメント7,8を縮径変位させる場合に比して、タイヤのクラウン部とサイド部との間へのゴムの噛み込み量を有利に低減させることができる他、セグメント7,8の縮径変位の開始および終了のそれぞれのタイミングを、所要に応じて適宜に選択することができる。
【0038】
なお、この金型における入力ロッド38,39は、図示しない油圧シリンダその他の駆動源をもって、所要に応じて変位させることができる。
【0039】
図7〜9は、上記金型と同様に機能させることができる他の金型を示すものであり、これは、セグメント7,8と環状ブラケット15,16との間に配設した、図では一方だけを示すリング状カム部材40の内周側カム面を平面視でほぼ鋸歯状に形成したものである。
【0040】
このカム部材40は、たとえば、図9に示すように、ロッド端をカム部材40の外周面に、そしてシリンダ端を環状ブラケット側にそれぞれヒンジ連結した複動タイプの油圧シリンダ41により所定の角度範囲にわたって回動変位させることできる。
【0041】
ここで、シリンダロッドを進出させて、カム部材40を図9反時計回りに回動させた場合には、図7に示すように、鋸歯状カム面が、セグメント7の、その鋸歯状カム面と同方向に傾斜する従動面を押圧して、セグメント7の縮径変位をもたらす。これに対し、シリンダロッドを後退させて、カム部材40、ひいては、鋸歯状カム面を時計回りに回動させた場合には、図8に示すように、圧縮ばね34の伸長変形に基いて、セグメント7の拡径変形がもたらされる。
【0042】
それぞれのセグメント7,8をこのようにして拡縮変位させるこの金型によってもまた、セグメント7,8の拡縮のタイミング等を適宜に選択することで、上述した金型と同様に機能させることができる。
【0043】
図10は、セグメント7,8の拡縮変位を、それと環状ブラケット15,16との間に配設したレバー機構によって司るものであり、図5について述べた入力ロッド38,39と同様の入力ロッド38に一端をヒンジ連結したレバー42の他端をセグメント7の外周面側にヒンジ連結し、好ましくはその入力ロッド38を、ベースプレート1から突出する方向、いいかえれば、セグメント7が拡径する方向へ、ばね43によって付勢したものである。
【0044】
これによれば、入力ロッド38を、ばね43のばね力に抗して図10(a)に示すように押込むことでセグメント7を縮径変位させることができ、その入力ロッド38を、ばね43のばね力に従ってベースプレート1から突出させることでセグメント7を、図10(b)に示すように拡径変位させることができる。
従って、この金型もまたそれぞれのセグメント7,8を所要に応じて適宜に拡縮変位させることで、前述の金型と同様に機能させることができる。
【0045】
図11は、図10に示すレバー42に代えて、ベルクランクレバー44をもって入力ロッド38とセグメント7とを連結したものであり、ベルクランクレバー44の中間折曲部を環状ブラケット側に枢支したものである。この場合にも、入力ロッド38の押込みによってセグメント7を縮径させ、それの抜き出しによってセグメント7を拡径させることができる。
なお、図示はしないが、この金型においてもまた、入力ロッド38を、ベースプレート1から突出する方向へばね付勢することは可能である。
【0046】
ところで、以上に述べたような、この発明に係る金型のコストおよび占有体積のそれぞれを、従来の一般的なフルモールドおよび割りモールドのそれらと比較したところ表1に示す通りとなった。
なお表中の数値は、フルモールドをコントロールとした指数で示す。
【0047】
【表1】
Figure 0004191294
【0048】
これによれば、発明に係る金型は、割りモールドよりはるかに安価に製作することができ、また、占有体積を、フルモールドと同等として、加硫機等の加硫設備等の大型化を有利に抑制できることが解かる。
【0049】
【発明の効果】
かくして、この発明によれば、割りモールドに比して、コストおよび占有体積をともに有効に低減させることができ、また、生タイヤの加硫成形に際する、金型構成部分へのゴム噛みの発生を有利に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 この発明に係る金型の実施の形態を示す要部縦断面図である。
【図2】 図1の要部断面斜視図である。
【図3】 金型の型締め途中を示す要部縦断面図である。
【図4】 型締め終了状態を示す要部縦断面図である。
【図5】 金型の他の実施形態を示す要部縦断面図である。
【図6】 カム部材を示す横断面図および断面斜視図である。
【図7】 この発明に係る金型の他の実施形態を示す図である。
【図8】 図7に示す金型のセグメントの拡径状態を示す図である。
【図9】 カム部材の作動構造を示す斜視図である。
【図10】 金型のさらに他の実施形態を示す要部断面図である。
【図11】 ベルクランク機構を示す部分断面図である。
【図12】 従来の金型の作動態様を示す略線断面図である。
【符号の説明】
1,2 ベーススレート
1a,2a ガイド孔
3,4 側壁成形部
5,6 トレッド成形部
7,8 セグメント
9,10,43 ばね
11,12,17,18 カムフォロア
13,14 突張りばね
15,16 環状ブラケット
19,20,36,37,40 カム部材
21,22 ストッパ
23 凸部
24 凹部
25 シール部材
26 スカート部
30,31 ロッド状部分
32,33 ロッド状部材
34,35 圧縮ばね
38,39 入力ロッド
41 油圧シリンダ
42 レバー
44 ベルクランクレバー

Claims (14)

  1. 上下のそれぞれのベースプレートに取付けた、それぞれの側壁成形部およびそれぞれのトレッド成形部を具え、各トレッド成形部を、半径方向に拡縮変位可能な複数個のセグメントにより構成してなる加硫成形金型であり、トレッド成形部のそれぞれのセグメントを、側壁成形部に対して半径方向にだけ相対変位可能とするとともに、それらのセグメントを半径方向内方へ変位させる駆動手段を設け、生タイヤの加硫成形に当り、それぞれのセグメントの縮径作動と、上下の対向セグメントの当接とを同時に終了させるよう構成してなるタイヤの加硫成形金型。
  2. それぞれのセグメントを拡径方向に付勢してなる請求項1に記載のタイヤの加硫成形金型。
  3. それぞれの駆動手段を、上下のそれぞれのベースプレートに取付けられて、それらのベースプレートの近接変位に基いて作動されるカム部材により構成してなる請求項1もしくは2に記載のタイヤの加硫成形金型。
  4. カム部材をリング状に形成してなる請求項3に記載のタイヤの加硫成形金型。
  5. カム部材を、それを取付けたベースプレートから離隔する方向へ付勢してなる請求項3もしくは4に記載のタイヤの加硫成形金型。
  6. 上下のそれぞれのセグメトの対向面に、相互に嵌まり合う凹凸部を設けてなる請求項1〜5のいずれかに記載のタイヤの加硫成形金型。
  7. 所定値を越える金型内圧に対し、セグメントの、半径方向外方への変位を許容する逃げスペースを、セグメントの外周側に隣接させて設けてなる請求項1〜6のいずれかに記載のタイヤの加硫成形金型。
  8. それぞれの駆動手段を、上下のそれぞれのベースプレートの相対変位とは独立に作動されるカム部材により構成してなる請求項1,2もしくは4に記載のタイヤの加硫成形金型。
  9. それぞれの駆動手段を、セグメントに連結されて、上下のそれぞれのベースプレートの相対変位とは独立に作動されるレバー機構により構成してなる請求項1もしくは2に記載のタイヤの加硫成形金型。
  10. レバー機構を、セグメントの拡径方向に付勢してなる請求項9に記載のタイヤの加硫成形金型。
  11. 型締め姿勢で内部空間を密閉するシール部材を設けてなる請求項1〜10のいずれかに記載のタイヤの加硫成形金型。
  12. 上下のそれぞれのベースプレートに取付けた、それぞれの側壁成形部およびそれぞれのトレッド成形部を具え、各トレッド成形部を、半径方向に拡縮変位可能な複数個のセグメントにより構成してなる加硫成形金型をもってタイヤを加硫成形するに当り、
    型締め作に伴って、それぞれのセグメントに、側壁成形部に対する縮径方向の相対変位だけを行わせて、それぞれのセグメントの縮径作動と、上下の対向セグメントの当接とを同時に終了させることを特徴とするタイヤの加硫成形方法。
  13. 型締め状態で、タイヤ素材の体積が、所定の成形空間容積より大きい場合に、それぞれのセグメントを拡径方向に逃げ変位させる請求項12に記載のタイヤの加硫成形方法。
  14. 剛性材料からなる内型上に配設したタイヤ素材に加硫成形を施す請求項12もしくは13に記載のタイヤの加硫成形方法。
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