JP4189372B2 - セルロースアセテート、セルロースアセテート溶液およびその調製方法 - Google Patents

セルロースアセテート、セルロースアセテート溶液およびその調製方法 Download PDF

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本発明は、2位、3位および6位のアセチル置換度を調節したセルロースアセテートに関する。さらに本発明は、セルロースアセテート溶液およびその調製方法にも関する。
セルロースアセテート、特に2位、3位および6位のアセチル置換度の合計が2.67以上であるセルロースアセテート(一般にセルローストリアセテートに分類されるもの)は、その強靭性と難燃性から様々な分野で使用されている。セルロースアセテートフイルムは、代表的な写真感光材料の支持体である。また、セルロースアセテートフイルムは、その光学的等方性から、近年市場の拡大している液晶表示装置にも用いられている。液晶表示装置における具体的な用途しては、偏光板保護膜およびカラーフィルターが代表的である。
写真材料の支持体や光学材料としての用途においては、フイルムの光学的性質や物性に関する要求が厳しい。具体的には、光学的等方性、透明性、機械的強度、耐久性や寸度安定性に関して、非常に優れた値が要求されている。特に偏光板保護膜の用途では、厚み方向のレターデーション値が低い値であることが要求される。
セルロースアセテートは古くから利用されている材料であるから、従来から多くのセルロースアセテートフイルムの改良手段が提案されている。例えば、ポリマーおよび金属酸化物微粒子(滑り剤粒子)をフイルムに添加して、フイルムの耐傷性を改善する方法が知られている。また、N−メチルピロリドンを溶媒として使用して製造したセルローストリアセテートフイルムが提案されている(例えば、特許文献1参照)。さらに、ポリオールを添加剤として含むセルローストリアセテートフイルムが記載されている。これらの公報に記載のフイルムでは、光学的性質や物性についての改良が認められる(例えば、特許文献2参照)。しかし、これらの従来の改良手段を採用しても、最近の光学的性質や物性に関する厳しい要求に不充分であった。従来の方法の範疇でのセルロースアセテートフイルムの改良は、ほぼ限界に達しているとも言える。
セルロースアセテートフイルムは、一般にソルベントキャスト法により製造する。ソルベントキャスト法では、セルロースアセテートを溶媒中に溶解した溶液(ドープ)を支持体上に流延し、溶媒を蒸発させてフイルムを形成する。
最近では、セルロースアセテートと有機溶媒の混合物を冷却し、さらに加温することによって、有機溶媒中にセルロースアセテートを溶解してセルロースアセテート溶液を調製する方法が提案されている(例えば、特許文献3〜5参照)。この冷却工程と加温工程を有する方法(以下、冷却溶解法と称する)によると、従来の方法では溶解することができなかった、セルロースアセテートと有機溶媒の組み合わせであっても、溶液を調製することができる。冷却溶解法は、溶解性が低いセルローストリアセテート(2位、3位および6位のアセチル置換度の合計が2.67以上)からフイルムを製造する場合に特に有効である。
特開昭61−127740号公報 特開平2−69532号公報 特開平9−95544号公報 特開平9−95557号公報 特開平9−95538号公報
ソルベントキャスト法によるセルロースアセテートフイルムの製造では、セルロースアセテート溶液の安定性が特に重要である。溶液の移送時に、配管中で未溶解物が発生し、製造装置の保守管理のための停止期間中に凝固が起きることは避けなければならない。また、セルロースアセテートフイルムを光学材料に使用する場合、厚み方向のレターデーション値を低い値とする必要がある。
本発明者の研究によれば、冷却溶解法により得られたセルロースアセテート溶液には、安定性が低いとの問題がある。また、冷却溶解法で製造したセルロースアセテートフイルムには、厚み方向のレターデーション値が高いとの問題もある。
本発明の目的は、セルロースアセテートを改良し、フイルムの厚み方向のレターデーション値を低い値とすることである。
また本発明の目的は、安定なセルロースアセテート溶液を提供することでもある。
本発明の目的は、下記(1)、(2)のセルロースアセテート、(3)(4)のセルロースアセテート溶液および(5)のセルロースアセテート溶液の調製方法により達成された。
(1)2位、3位および6位のアセチル置換度の合計が2.67以上であり、2位および3位のアセチル置換度の合計が1.97以下であり、かつ6位のアセチル置換度が0.89以上かつ0.98以下であるセルロースアセテート。
(2)2位、3位および6位のアセチル置換度の合計が2.77以上であり、かつ2位および3位のアセチル置換度の合計が1.96以下である(1)に記載のセルロースアセテート
(3)2位、3位および6位のアセチル置換度の合計が2.67以上であり、2位および3位のアセチル置換度の合計が1.97以下であり、かつ6位のアセチル置換度が0.89以上かつ0.98以下であるセルロースアセテートが有機溶媒中に溶解しているセルロースアセテート溶液。
(4)有機溶媒が、酢酸メチルを50重量%以上含む(3)に記載のセルロースアセテート溶液。
(5)2位、3位および6位のアセチル置換度の合計が2.67以上であり、2位および3位のアセチル置換度の合計が1.97以下であり、かつ6位のアセチル置換度が0.89以上かつ0.98以下であるセルロースアセテートを有機溶媒で膨潤させる工程;得られた膨潤混合物を、−100乃至−10℃に冷却する工程;そして、冷却した混合物を0至200℃に加温して、セルロースアセテートの有機溶媒溶液を得る工程からなるセルロースアセテート溶液の調製方法。
本発明に従い2位、3位および6位のアセチル置換度の合計が2.67以上であり、2位および3位のアセチル置換度の合計が2.97以下であり、かつ6位のアセチル置換度が0.89以上かつ0.98以下であるセルロースアセテートを使用すると、厚み方向のレターデーション値が低いセルロースアセテートフイルムを得ることができる。
[セルロースアセテート]
本発明が用いるセルロースアセテートは、2位、3位および6位のアセチル置換度の合計が2.67以上であり、かつ2位および3位のアセチル置換度の合計が1.97以下である。
セルロースを構成するβ−1,4結合しているグルコース単位(下記)は、2位、3位および6位に遊離の水酸基を有している。
Figure 0004189372
セルロースアセテートは、これらの水酸基の一部または全部を酢酸によりエステル化したポリマーである。アセチル置換度は、2位、3位および6位のそれぞれについて、セルロースがエステル化している割合(100%のエステル化は、1.00)を意味する。
アセチル置換度の規定について、図面を参照しながら説明する。
図1は、アセチル置換度の規定および実施例と比較例のセルロースアセテートのアセチル置換度を説明するためのグラフである。グラフの縦軸は2位および3位のアセチル置換度の合計であり、グラフの横軸は6位のアセチル置換度である。2位、3位および6位のアセチル置換度の合計が2.67以上であり、かつ2位および3位のアセチル置換度の合計が1.97以下であるとの規定は、グラフ中の直線a、bおよびcに囲まれた直角二等辺三角形の領域に相当する。
直線a:2位、3位および6位のアセチル置換度の合計が2.67である線
直線b:2位および3位のアセチル置換度の合計が1.97である線
直線c:6位のアセチル置換度が1.00である線
図1から明らかなように、2位および3位のアセチル置換度の合計が1.97以下と規定されているため、2位、3位および6位のアセチル置換度の合計は、2.67以上かつ2.97以下となる。2位、3位および6位のアセチル置換度の合計は、2.72以上であることが好ましく、2.77以上であることがさらに好ましい。
2位、3位および6位のアセチル置換度の合計が2.67であることは、平均酢化度58.5%に相当する。酢化度は、セルロース単位重量当りの結合酢酸量を意味し、ASTM:D−817−91(セルロースアセテート等の試験方法)に従い、測定および計算できる。
同様に、2位、3位および6位のアセチル置換度の合計が2.67以上と規定されているため、2位および3位のアセチル置換度の合計は、1.67以上かつ1.97以下になる。2位および3位のアセチル置換度の合計は、1.96以下であることが好ましい。
さらに、6位のアセチル置換度は、0.70以上かつ1.00以下になる。6位のアセチル置換度は、0.80以上かつ0.99以下であることが好ましく、0.85以上かつ0.98以下であることがさらに好ましく、0.89以上かつ0.98以下であることがさらにまた好ましく、0.89以上かつ0.95以下であることが最も好ましい。
セルロースアセテートの合成方法の基本的な原理は、右田他、木材化学180〜190頁(共立出版、1968年)に記載されている。代表的な合成方法は、無水酢酸−酢酸−硫酸触媒による液相酢化法である。具体的には、木材パルプ等のセルロース原料を適当量の酢酸で前処理した後、予め冷却した酢化混液に投入して酢酸エステル化し、完全セルロースアセテート(2位、3位および6位のアセチル置換度の合計が、ほぼ3.00)を合成する。上記酢化混液は、一般に、溶媒としての酢酸、エステル化剤としての無水酢酸および触媒としての硫酸を含む。無水酢酸は、これと反応するセルロースおよび系内に存在する水分の合計よりも、化学量論的に過剰量で使用することが普通である。酢化反応終了後に、系内に残存している過剰の無水酢酸の加水分解およびエステル化触媒の一部の中和のために、中和剤(例えば、カルシウム、マグネシウム、鉄、アルミニウムまたは亜鉛の炭酸塩、酢酸塩または酸化物)の水溶液を添加する。
次に、得られた完全セルロースアセテートを少量の酢化反応触媒(一般には、残存する硫酸)の存在下で、50〜90℃に保つことにより、ケン化熟成し、所望のアセチル置換度および重合度を有するセルロースアセテートまで変化させる。所望のセルロースアセテートが得られた時点で、系内に残存している触媒を前記のような中和剤を用いて完全に中和するか、あるいは、中和することなく、水または希硫酸中にセルロースアセテート溶液を投入(あるいは、セルロースアセテート溶液中に、水または希硫酸を投入)してセルロースアセテートを分離し、洗浄および安定化処理によりセルロースアセテートを得る。
通常のセルロースアセテートの合成方法では、2位または3位のアセチル置換度の方が、6位のアセチル置換度よりも高い値になる。そのため、2位および3位のアセチル置換度の合計を2.97以下としながら、2位、3位および6位のアセチル置換度の合計を2.67以上とするためには、前記の反応条件を特別に調節する必要がある。
具体的な反応条件としては、硫酸触媒の量を減らし、酢化反応の時間を長くすることが好ましい。硫酸触媒が多いと、酢化反応の進行が速くなるが、触媒量に応じてセルロースとの間に硫酸エステルが生成し、反応終了時に遊離して残存水酸基を生じる。硫酸エステルは、反応性が高い6位により多く生成する。そのため、硫酸触媒が多いと6位のアセチル置換度が小さくなる。従って、本発明に用いるセルロースアセテートを合成するためには、可能な限り硫酸触媒の量を削減し、それにより低下した反応速度を補うため、反応時間を延長する必要がある。
セルロースアセテートの2位、3位および6位のアセチル置換度は、セルロースアセテートをプロピオニル化処理した後、13C−NMRによる測定によって求めることができる。測定方法の詳細については、手塚他(Carbohydr. Res. 273(1995)83-91)に記載がある。
セルロースアセテートフイルムは、フイルムを構成するポリマー成分が実質的に上記の定義を有するセルロースアセテートからなることが好ましい。『実質的に』とは、ポリマー成分の90重量%以上(好ましくは95重量%以上、さらに好ましくは98重量%以上、最も好ましくは99重量%以上)を意味する。
フイルムの製造の原料としては、セルロースアセテート粒子を使用することが好ましい。使用する粒子の90重量%以上は、1乃至4mmの粒子径を有することが好ましい。また、使用する粒子の50重量%以上が2乃至3mmの粒子径を有することが好ましい。セルロースアセテート粒子は、なるべく球形に近い形状を有することが好ましい。
[フイルム添加用微粒子]
セルロースアセテートフイルムは、1.0μm以下の平均粒子径を有する微粒子を含むことが好ましい。微粒子は滑り剤として機能して、フイルムの動摩擦係数を改善する。
微粒子としては、無機化合物を用いることが好ましい。無機化合物の例には、二酸化ケイ素、二酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、炭酸カルシウム、タルク、クレイ、焼成カオリン、焼成ケイ酸カルシウム、水和ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウムおよびリン酸カルシウムが含まれる。二酸化ケイ素、二酸化チタンおよび酸化ジルコニウムが好ましく、二酸化ケイ素が特に好ましい。
無機化合物の微粒子は、表面処理により粒子表面にメチル基を導入することができる。例えば、酸化ケイ素の微粒子をジクロロジメチルシランやビス(トリメチルシリル)アミンで処理すればよい。
二酸化ケイ素の微粒子は、既に市販されている(例、アエロジルR972TM、R972DTM、R974TM、R812TM、日本アエロジル(株)製)。また、酸化ジルコニウムの微粒子にも市販品がある(例、アエロジルR976TM、R811TM、日本アエロジル(株)製)。
微粒子の平均粒径は、1.0μm以下であることが好ましい。平均粒径は0.1乃至1.0μmであることがさらに好ましく、0.1乃至0.5μmであることが最も好ましい。
微粒子は、セルロースアセテートに対して、0.005乃至0.3重量%の量で使用することが好ましく、0.01乃至0.1重量%の量で使用することがさらに好ましい。
微粒子は、後述するフイルムの製造工程のいずれの段階で添加してもよい。好ましくは、セルロースアセテートの有機溶剤溶液と類似の組成の希釈溶液を作成し、希釈溶液中に微粒子を分散させる。そして、有機溶剤溶液と微粒子を含む希釈溶液を混合して、その混合液からフイルムを形成すると、微粒子が均一に分散しているフイルムを製造することができる。
[可塑剤]
セルロースアセテートフイルムには、一般に可塑剤を添加する。
可塑剤としては、リン酸エステルまたはカルボン酸エステルが用いられる。リン酸エステルの例には、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、オクチルジフェニルホスフェート、トリエチルホスフェートおよびトリブチルホスフェートが含まれる。カルボン酸エステルとしては、フタル酸エステル、クエン酸エステル、オレイン酸エステルおよびリノール酸エステルが代表的である。フタル酸エステルの例には、ジメチルフタレート、ジエチルフタレート、ジブチルフタレート、ジメトキシエチルフタレート、ジオクチルフタレートおよびジエチルヘキシルフタレートが含まれる。クエン酸エステルの例には、クエン酸アセチルトリエチルおよびクエン酸アセチルトリブチルが含まれる。オレイン酸エステルの例には、オレイン酸ブチルが含まれる。その他のカルボン酸エステルの例には、エチルフタリルエチルグリコレート、ブチルフタリルブチルグリコレート、トリアセチン、リシノール酸メチルアセチル、セバシン酸ジブチルおよび種々のトリメリット酸エステルが含まれる。
可塑剤の添加量は、一般にセルロースアセテートの量の0.1乃至40重量%の範囲であり、1乃至20重量%の範囲であることがさらに好ましい。
[劣化防止剤]
劣化防止剤をセルロースアセテートフイルムに添加してもよい。劣化防止剤の例には、過酸化物分解剤、ラジカル禁止剤、金属不活性化剤および酸捕獲剤が含まれる。劣化防止剤については、特開平3−199201号、同5−1907073号、同5−194789号、同5−271471号、同6−107854号の各公報に記載がある。特に好ましい劣化防止剤の例としては、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)を挙げることができる。
劣化防止剤の添加量は、セルロースアセテートフイルムの0.01乃至0.5重量%であることが好ましく、0.05乃至0.2重量%であることがさらに好ましい。
[紫外線吸収剤]
セルロースアセテートフイルム中に、紫外線吸収剤を練り込んでもよい。紫外線吸収剤は、セルロースアセテートフイルムの経時安定性を向上させる。紫外線吸収剤は、可視領域に吸収を持たないことが望ましい。
紫外線吸収剤としては、ベンゾフェノン系化合物(例、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−n−オクトキシベンゾフェノン、4−ドデシルオキシ−2−ヒドロキシベンゾフェノン、2,2’,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジメトキシベンゾフェノン)、ベンゾトリアゾール系化合物(例、2−(2’−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ3’,5’−ジ−t−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2(2’−ヒドロキシ−3’−ジ−t−ブチル−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール)およびサリチル酸系化合物(例、サリチル酸フェニル、サリチル酸メチル)が用いられる。
紫外線吸収剤の添加量は、セルロースアセテートフイルムに対して0.5乃至20重量%の範囲であることが好ましく、1乃至10重量%の範囲であることがさらに好ましい。
[染料]
セルロースアセテートフイルムに染料を添加して、ライトパイピング現象を防止してもよい。
染色の色相はグレーが好ましい。セルロースアセテートフイルムの製造温度域での耐熱性に優れ、かつセルロースアセテートとの相溶性に優れた化合物を、染料として用いることが好ましい。
二種類以上の染料を混合して用いてもよい。
[有機溶媒]
フイルムの製造に使用する有機溶媒の例には、ケトン、エステル、エーテル、炭化水素およびアルコールが含まれる。
なお、技術的には、メチレンクロリドのようなハロゲン化炭化水素は問題なく使用できるが、地球環境や作業環境の観点では、有機溶媒はハロゲン化炭化水素を実質的に含まないことが好ましい。「実質的に含まない」とは、有機溶媒中のハロゲン化炭化水素の割合が5重量%未満(好ましくは2重量%未満)であることを意味する。また、製造したセルロースアセテートフイルムから、メチレンクロリドのようなハロゲン化炭化水素が全く検出されないことが好ましい。
有機溶媒は、炭素原子数が3乃至12のエーテル、炭素原子数が3乃至12のケトンおよび炭素原子数が3乃至12のエステルから選ばれる溶媒を含むことが好ましい。
エーテル、ケトンおよびエステルは、環状構造を有していてもよい。エーテル、ケトンおよびエステルの官能基(すなわち、−O−、−CO−および−COO−)のいずれかを二つ以上有する化合物も、有機溶媒として用いることができる。有機溶媒は、アルコール性水酸基のような他の官能基を有していてもよい。二種類以上の官能基を有する有機溶媒の場合、その炭素原子数は、いずれかの官能基を有する化合物の規定範囲内であればよい。
炭素原子数が3乃至12のエーテル類の例には、ジイソプロピルエーテル、ジメトキシメタン、ジメトキシエタン、1,4−ジオキサン、1,3−ジオキソラン、テトラヒドロフラン、アニソールおよびフェネトールが含まれる。
炭素原子数が3乃至12のケトン類の例には、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノンおよびメチルシクロヘキサノンが含まれる。
炭素原子数が3乃至12のエステル類の例には、エチルホルメート、プロピルホルメート、ペンチルホルメート、メチルアセテート、エチルアセテートおよびペンチルアセテートが含まれる。メチルアセテート(酢酸メチル)を50重量%以上含む酢酸メチル系有機溶媒が特に好ましく用いられる。
二種類以上の官能基を有する有機溶媒の例には、2−エトキシエチルアセテート、2−メトキシエタノールおよび2−ブトキシエタノールが含まれる。
特に好ましい有機溶媒は、互いに異なる三種類の溶媒の混合溶媒であって、第1の溶媒が炭素原子数が3乃至12のケトンおよび炭素原子数が3乃至12のエステルから選ばれ、第2の溶媒が炭素原子数が1乃至5の直鎖状一価アルコールから選ばれ、そして第3の溶媒が沸点が30乃至170℃のアルコールおよび沸点が30乃至170℃の炭化水素から選ばれる。
第1の溶媒のケトンおよびエステルについては、前述した通りである。
第2の溶媒は、炭素原子数が1乃至5の直鎖状一価アルコールから選ばれる。アルコールの水酸基は、炭化水素直鎖の末端に結合してもよいし(第一級アルコール)、中間に結合してもよい(第二級アルコール)。第2の溶媒は、具体的には、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、1−ペンタノール、2−ペンタノールおよび3−ペンタノールから選ばれる。直鎖状一価アルコールの炭素原子数は、1乃至4であることが好ましく、1乃至3であることがさらに好ましく、1または2であることが最も好ましい。エタノールが特に好ましく用いられる。
第3の溶媒は、沸点が30乃至170℃のアルコールおよび沸点が30乃至170℃の炭化水素から選ばれる。
アルコールは一価であることが好ましい。アルコールの炭化水素部分は、直鎖であっても、分岐を有していても、環状であってもよい。炭化水素部分は、飽和脂肪族炭化水素であることが好ましい。アルコールの水酸基は、第一級〜第三級のいずれであってもよい。
アルコールの例には、メタノール(沸点:64.65℃)、エタノール(78.325℃)、1−プロパノール(97.15℃)、2−プロパノール(82.4℃)、1−ブタノール(117.9℃)、2−ブタノール(99.5℃)、t−ブタノール(82.45℃)、1−ペンタノール(137.5℃)、2−メチル−2−ブタノール(101.9℃)およびシクロヘキサノール(161℃)が含まれる。
アルコールについては、前記第2の溶媒の定義と重複するが、第2の溶媒として使用するアルコールとは異なる種類のアルコールであれば、第3の溶媒として使用できる。例えば、第2の溶媒として、エタノールを使用する場合は、第2の溶媒の定義に含まれる他のアルコール(メタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、1−ペンタノール、2−ペンタノールまたは3−ペンタノール)を第3の溶媒として使用してもよい。
炭化水素は、直鎖であっても、分岐を有していても、環状であってもよい。芳香族炭化水素と脂肪族炭化水素のいずれも用いることができる。脂肪族炭化水素は、飽和であっても不飽和であってもよい。
炭化水素の例には、シクロヘキサン(沸点:80.7℃)、ヘキサン(69℃)、ベンゼン(80.1℃)、トルエン(110.6℃)およびキシレン(138.4〜144.4℃)が含まれる。
三種混合溶媒中には、第1の溶媒が50乃至95重量%含まれることが好ましく、60乃至92重量%含まれることがより好ましく、65乃至90重量%含まれることが更に好ましく、70乃至88重量%含まれることが最も好ましい。第2の溶媒は、1乃至30重量%含まれることが好ましく、2乃至27重量%含まれることがより好ましく、3乃至24重量%含まれることがさらに好ましく、4乃至22重量%含まれることが最も好ましい。第3の溶媒は、1乃至30重量%含まれることが好ましく、2乃至27重量%含まれることがより好ましく、3乃至24重量%含まれることがさらに好ましく、4乃至22重量%含まれることが最も好ましい。
さらに他の有機溶媒を併用して、四種以上の混合溶媒としてもよい。四種以上の混合溶媒を用いる場合の4番目以降の溶媒も、前述した三種類の溶媒から選択することが好ましい。前述した三種類の溶媒以外の溶媒して、炭素原子数が3乃至12のエーテル類(例、ジイソプロピルエーテル、ジメトキシエタン、ジエトキシエタン、1,4−ジオキサン、1,3−ジオキソラン、テトラヒドロフラン、アニソール、フェネトール)やニトロメタンを併用してもよい。
有機溶媒の沸点は、20乃至300℃であることが好ましく、30乃至200℃であることがより好ましく、40乃至100℃であることがさらに好ましく、50乃至80℃であることが最も好ましい。
本発明では、冷却溶解法により、以上のような有機溶媒中にセルロースアセテートを溶解して、溶液を形成することが好ましい。冷却溶解法は、膨潤工程、冷却工程および加温工程からなる。なお、室温でセルロースアセテートを溶解できる有機溶媒であっても、冷却溶解法によると迅速に均一な溶液が得られるとの効果がある。以下、冷却溶解法による溶液の調製から、フイルムの製造までの各工程を順次説明する。
[膨潤工程]
膨潤工程においては、セルロースアセテートと有機溶媒とを混合し、セルロースアセテートを溶媒により膨潤させる。
膨潤工程の温度は、−10乃至55℃であることが好ましい。通常は室温で実施する。
セルロースアセテートと有機溶媒との比率は、最終的に得られる溶液の濃度に応じて決定する。一般に、混合物中のセルロースアセテートの量は、5乃至30重量%であることが好ましく、8乃至20重量%であることがさらに好ましく、10乃至15重量%であることが最も好ましい。
溶媒とセルロースアセテートとの混合物は、セルロースアセテートが充分に膨潤するまで攪拌することが好ましい。攪拌時間は、10乃至150分であることが好ましく、20乃至120分であることがさらに好ましい。
膨潤工程において、溶媒とセルロースアセテート以外の成分、例えば、可塑剤、劣化防止剤、染料や紫外線吸収剤を添加してもよい。
[冷却工程]
冷却工程においては、膨潤混合物を−100乃至−10℃に冷却する。冷却温度は、膨潤混合物が固化する温度であることが好ましい。
冷却速度は、4℃/分以上であることが好ましく、8℃/分以上であることがさらに好ましく、12℃/分以上であることが最も好ましい。冷却速度は、速いほど好ましいが、10000℃/秒が理論的な上限であり、1000℃秒が技術的な上限であり、そして100℃/秒が実用的な上限である。冷却速度は、冷却を開始する時の温度と最終的な冷却温度との差を、冷却を開始してから最終的な冷却温度に達するまでの時間で割った値である。なお、特開平9−95544号、同9−95557号および同9−95538号の各公報に記載の実施例は、3℃/分程度の冷却速度である。
冷却工程においては、冷却時の結露による水分混入を避けるため、密閉容器を用いることが望ましい。また、冷却時に減圧すると、冷却時間を短縮することができる。減圧を実施するためには、耐圧性容器を用いることが望ましい。
具体的な冷却手段としては、様々な方法または装置が採用できる。
例えば、膨潤混合物を攪拌しながら筒状の容器内を搬送し、その容器の周囲から膨潤混合物を冷却すると、迅速に且つ均一に膨潤混合物を冷却することができる。そのためには、筒状の容器、膨潤混合物を攪拌しながら筒状の容器内を搬送するため容器内に設けられている螺旋状の搬送機構、および容器内の膨潤混合物を冷却するため容器の周囲に設けられている冷却機構からなる冷却装置が好ましく用いられる。
また、−105乃至−15℃に冷却した溶媒を膨潤混合物に添加して、より迅速に冷却することもできる。
さらに、−100乃至−10℃に冷却された液体中へ、膨潤混合物を直径が0.1乃至20.0mmの糸状に押し出すことにより膨潤混合物することで、さらに迅速に膨潤混合物を冷却することも可能である。冷却に使用する液体については、特に制限はない。
冷却された液体中へ膨潤混合物を糸状に押し出すことにより膨潤混合物を冷却する方法を用いる場合、冷却工程と加温工程の間で、糸状の膨潤混合物と冷却用の液体とを分離する工程を行なうことが好ましい。
冷却工程において、膨潤混合物が糸状にゲル化しているため、膨潤混合物と冷却用の液体とを分離は簡単に実施できる。例えば、網を用いて、糸状の膨潤混合物を液体から取り出すことが可能である。網の代わりに、スリットまたは穴の開いた板状物を用いてもよい。網や板状物の材料は、液体に溶解しない材質であれば、特に制限はない。網や板状物は、各種金属や各種プラスチック材料から製造することができる。網の目の大きさ、スリットの巾や穴の大きさは、糸状物の直径に応じて、糸状物が通過しないように調整する。また、糸状の膨潤混合物を冷却装置から加温装置へ搬送するためのベルトを網状にして、分離と搬送を同時に実施することもできる。
[加温工程]
加温工程においては、冷却した膨潤混合物を0至200℃に加温する。加温工程の最終温度は、通常は室温である。
加温速度は、4℃/分以上であることが好ましく、8℃/分以上であることがさらに好ましく、12℃/分以上であることが最も好ましい。加温速度は、速いほど好ましいが、10000℃/秒が理論的な上限であり、1000℃秒が技術的な上限であり、そして100℃/秒が実用的な上限である。加温速度は、加温を開始する時の温度と最終的な加温温度との差を、加温を開始してから最終的な加温温度に達するまでの時間で割った値である。なお、特開平9−95544号、同9−95557号および同9−95538号の各公報に記載の実施例は、3℃/分程度の加温速度である。
加圧しながら加温すると、加温時間を短縮することができる。加圧を実施するためには、耐圧性容器を用いることが望ましい。
なお、溶解が不充分である場合は、冷却工程から加温工程までを繰り返して実施してもよい。溶解が充分であるかどうかは、目視により溶液の外観を観察するだけで判断することができる。
具体的な加温手段としては、様々な方法または装置が採用できる。
例えば、膨潤混合物を攪拌しながら筒状の容器内を搬送し、その容器の周囲から膨潤混合物を加温すると、迅速に且つ均一に膨潤混合物を加温することができる。そのためには、筒状の容器、膨潤混合物を攪拌しながら筒状の容器内を搬送するため容器内に設けられている螺旋状の搬送機構、および容器内の膨潤混合物を加温するため容器の周囲に設けられている加温機構からなる加温装置が好ましく用いられる。
また、加温された液体中へ、直径が0.1乃至20.0mmの糸状の膨潤混合物を入れることにより膨潤混合物を加温することで、さらに迅速に膨潤混合物を加温することも可能である。
冷却工程において、膨潤混合物を糸状に押し出す方法を採用した場合は、その糸状の膨潤混合物を加温用の液体に投入すればよい。冷却工程を糸状押し出し以外の方法で実施した場合は、加温工程において冷却した膨潤混合物を加温用液体中へ糸状に押し出す。なお、糸状押し出しを連続して実施する場合は、製造したセルロースアセテート溶液を次の膨潤混合物の加温用の液体として順次利用することができる。すなわち、製造し加温された状態のセルロースアセテート溶液中に、糸状の膨潤混合物を投入し、混合物を迅速に加温してセルロースアセテート溶液を得る。
さらに、冷却した膨潤混合物を筒状の容器内に導入し、容器内で膨潤混合物の流れを複数に分割し、分割された混合物の流れの向きを容器内で回転させ、この分割と回転とを繰り返しながら、容器の周囲から膨潤混合物を加温することもできる。上記のように、物質の流れを分割および回転させる仕切りが設けられた容器は、一般に静止型の混合器として知られている。代表的な静止型混合器であるスタチックミキサーTM(ケニックス社)では、物質の流れを二つに分割して右回りに180度回転させる右回りエレメントと、物質の流れを二つに分割して左回りに180度回転させる左回りエレメントとが、容器内で交互に90度ずらして配列されている。
さらにまた、溶媒が沸騰しないように調整された圧力下で、溶媒の沸点以上の温度まで膨潤混合物を加温してもよい。温度は、溶媒の種類に応じて決定するが一般に60乃至200℃である。圧力は、温度と溶媒の沸点との関係で決定するが、一般に1.2乃至20kgw/cmである。
[溶液製造後の処理]
製造した溶液は、必要に応じて濃度の調整(濃縮または希釈)、濾過、温度調整、成分添加などの処理を実施することができる。
添加する成分は、セルロースアセテートフイルムの用途に応じて決定する。代表的な添加剤は、可塑剤、劣化防止剤(例、過酸化物分解剤、ラジカル禁止剤、金属不活性化剤、酸捕獲剤)、染料および紫外線吸収剤である。さらに、この段階で前述した微粒子(好ましくは、微粒子を分散したセルロースアセテートの希釈溶液)を添加することが好ましい。
[フイルム製膜]
以上の冷却溶解法によるセルロースアセテートの有機溶媒溶液(ドープ)の調製は、通常のソルベントキャスト法における溶液調製(常温または高温での攪拌)と全く異なるが、得られた溶液からフイルムを製膜する工程は、通常のソルベントキャクト法と同様に実施できる。
セルロースアセテート溶液は、支持体上に流延し、溶媒を蒸発させてフイルムを形成する。流延前の溶液は、固形分量が18乃至35%となるように濃度を調整することが好ましい。支持体表面は、鏡面状態に仕上げておくことが好ましい。支持体としては、ドラムまたはバンドが用いられる。通常のソルベントキャスト法における流延および乾燥方法については、米国特許2336310号、同2367603号、同2492078号、同2492977号、同2492978号、同2607704号、同2739069号、同2739070号、英国特許640731号、同736892号の各明細書、特公昭45−4554号、同49−5614号、特開昭60−176834号、同60−203430号、同62−115035号の各公報に記載がある。
支持体上に形成したセルロースアセテートフイルムは、乾燥が終了する前(有機溶媒がフイルムの30重量%以上)に支持体から剥離して、さらに乾燥することが好ましい。そのためには、支持体上での溶液のゲル化が迅速に進行する必要がある。溶液のゲル化を促進するためには、アルコール(前述した第3の溶媒)のような貧溶媒の使用が有効である。また、流延方法の改良によりゲル化を促進することもできる。
10℃以下に冷却した支持体に溶液を流延すると、溶液のゲル化が促進される(特公平5−17844号公報記載)。支持体の冷却は、冷媒または冷風の使用により実施できる。支持体を冷却する方法では、2秒以上乾燥風を用いて支持体上のフイルムを乾燥してもよい。得られたフイルムを支持体から剥ぎ取り、さらに100から160℃まで逐次温度を変えた高温風で乾燥して残留溶剤を蒸発させることもできる。
30℃以上に加熱した支持体に溶液を流延してから、支持体を20℃以下に冷却しても、溶液のゲル化が促進される(特開昭61−148013号、同61−158413号の各公報記載)。支持体の加熱は、支持体表面へのヒーター取り付け、熱風吹きつけやドラムへの温水通水により実施できる。溶液の流延直後に速やかに温度を上昇させることが好ましい。そして、加熱の初期段階においては、溶媒の蒸発による多量の潜熱を必要とする。そのため、加熱の初期段階では、上記のような加熱手段に加えて、裏面からの熱風やヒーター(蒸気ヒーター、赤外線ヒーター)のような補助加熱手段を併用することが好ましい。支持体の冷却は、放冷の他、冷風吹きつけやドラムへの冷水通水のような強制冷却により実施できる。
以上のように製造したセルロースアセテートフイルムは、その優れた光学的性質および物性を利用して、様々な用途に使用できる。特に、液晶表示装置の光学的用途において、特に以上のように製造したセルロースアセテートフイルムが有効である。
光学的な用途においては、セルロースアセテートフイルムにAG(アンチグレアー)処理またはAR(反射防止処理)を実施してもよい。特にAR処理を用いると、フイルムの光透過率を3%程度改善することができる。AR処理では、具体的にはフイルム上に反射防止膜(単層、2層膜、あるいは3層以上の多層膜)を設けて、反射損失を減少させる。反射防止膜の具体的な素材については、薄膜ハンドブック(オーム社、昭和58年12月10日)の818〜821頁に記載がある。
[偏光板保護膜および液晶表示装置]
セルロースアセテートフイルムの光学的用途としては、液晶表示装置の偏光板保護膜が特に好ましい。
液晶表示装置は、一般に液晶表示素子と偏光板とを有する。
液晶表示素子は、液晶層、それを保持するための基板および液晶に電圧を加えるための電極層からなる。基板および電極層は、いずれも表示のために透明な材料を用いて製造される。透明基板としては、ガラス薄板または樹脂フイルムが使用される。多少の屈曲性が要求される液晶表示装置の場合は、樹脂フイルムを使用する必要がある。液晶基板には、高い透明性に加えて、低複屈折率および耐熱性が要求される。液晶表示装置に位相差板を設ける場合もある。位相差板は、液晶画面の着色を取り除き、白黒化を実現するための複屈折フイルムである。位相差板も、樹脂フイルムを用いて製造する。位相差板には、高い複屈折率が要求される。
偏光板は、保護膜と偏光膜とからなる。偏光膜は、ヨウ素または二色性染料を偏向素子として用いた樹脂フイルムである。保護膜は、偏光膜を保護する目的で、偏光膜の片面または両面に設けられる。なお、偏光膜の片面のみに保護膜を設ける場合は、一般に上記の液晶基板が他の面の保護膜として機能する。偏光板保護膜には、透明性と低複屈折率(低レターデーション値)が要求されるため、以上のように製造したセルロースアセテートフイルムが特に有利に用いられる。
偏光板の偏光膜には、ヨウ素系偏光膜、二色性染料を用いる染料系偏光膜やポリエン系偏光膜がある。いずれの偏光膜も、一般にポリビニルアルコール系フイルムを用いて製造する。
偏光板保護膜は、25乃至350μmの厚さを有することが好ましく、50乃至200μmの厚さを有することがさらに好ましい。保護膜には、紫外線吸収剤、滑り剤、劣化防止剤あるいは可塑剤を添加してもよい。
偏光板保護膜上にさらに表面処理膜を設けてもよい。表面処理膜の機能には、ハードコート、防曇処理、防眩処理および反射防止処理が含まれる。
偏光板およびその保護膜については、特開平4−219703号、同5−212828号および同6−51117号各公報に記載がある。
[厚み方向のレターデーション]
本発明に従うセルロースアセテートを用いて製造したフイルムには、冷却溶解法により製造しても厚み方向のレターデーション値が低いとの効果がある。
フイルムの厚み方向のレターデーション値は、エリプソメーターを用いて測定できる。具体的には、波長632.8nmにおけるレターデーション値をエリプソメーター(例えば、偏光解析計AEP−10:島津製作所(株)製)を用いてフイルム面に垂直な方向に測定した結果およびフイルム面を傾けながら同様に測定したレターデーション値の外挿値から、下記式(1)により算出する。
式(1)
厚み方向のレターデーション値=[(nx+ny)/2−nz]×d(nm)
式中、nxはフイルム平面内のx方向の屈折率であり、nyはフイルム平面内のy方向の屈折率であり、nzはフイルム面に垂直な方向の屈折率であり、そしてdはフイルムの厚みである。
[合成例1]
α−セルロース含量が約97重量%の木材パルプを解砕後、同パルプ100重量部に対し、100重量部の氷酢酸を均一に散布し、室温で90分間攪拌混合した。予め冷却した無水酢酸245重量部、酢酸365重量部および硫酸9重量部の混合液中に、パルプを投入して、攪拌混合し、45℃以下で酢化反応を進行させた。反応系は、初期の段階では不均一な繊維状であったが、反応の進行と共に不透明な餅状から、淡黄色透明な水飴状に変化した。水飴状の反応混合物中に、未酢化の繊維片が見出されなくなったときを反応終了点とした。反応開始から反応終了まで約250分を要した。
酢化反応終了時に、26.2重量部の酢酸マグネシウム水溶液(30重量%)を加え、過剰に存在する無水酢酸を加水分解すると共に硫酸の一部を中和し、これにより酢化反応を停止した。反応終了時の反応計内の残存触媒硫酸は、計算値で4重量部であった。
次に、反応液を30分間で約60℃に昇温しながら、7.4重量部の酢酸マグネシウム水溶液(30重量%)を添加した。この後、系内浴濃度が約85重量%となるように水を添加して、さらに昇温させて70℃に安定させた。70℃で30分間熟成反応を続けた。反応終了時、約10.9重量部の酢酸マグネシウム水溶液(30重量%)を加え、硫酸を完全に中和し、反応を停止した。反応終了溶液は、激しく攪拌しながら多量の10重量%酢酸水溶液を投入して、セルロースアセテートを析出、分離させた。析出したセルロースアセテートを濾別により収集後、実質的に酢酸が含まれなくなるまで水洗した。その後、脱水および乾燥して、粉末のセルロースアセテートを得た。得られたセルロースアセテートの粘度平均重合度は、300であった。
前述した手塚他の方法に従い、得られたセルロースアセテートをプロピオニル化処理した後、13C−NMRによる測定によって、2位、3位および6位のアセチル置換度を求めた。その結果、2位と3位のアセチル置換度の合計は1.95、6位のアセチル置換度は0.91、2位、3位および6位のアセチル置換度の合計は、2.86であった。
[実施例1]
室温において、合成例1で得られたセルロースアセテート17重量部、酢酸メチル/メタノール/n−ブタノール混合溶媒(混合比=80/15/5重量%)80.28重量部およびトリフェニルホスフェート(可塑剤)2.72重量部を混合した。室温では、セルロースアセテートは溶解せずに混合溶媒中で膨潤した。得られた膨潤混合物は、溶解せずにスラリーを形成していた。
次に、膨潤混合物を二重構造の容器に入れた。混合物をゆっくり撹拌しながら外側のジャケットに冷媒として水/エチレングリコール混合物を流し込んだ。これにより内側容器内の混合物を−30℃まで冷却した(冷却速度:8℃/分)。混合物が均一に冷却されて固化するまで(30分間)、冷媒による冷却を継続した。
容器の外側のジャケット内の冷媒を除去し、代わりに温水をジャケットに流し込んだ。内容物のゾル化がある程度進んだ段階で、内容物の撹拌を開始した。このようにして、室温まで加温した(加温速度:8℃/分)。
さらに、以上の冷却および加温の操作を、もう一回繰り返した。
冷却溶解法により得られた溶液(またはスラリー)の状態を、常温(23℃)で静置保存したまま観察し、以下のA、BおよびCの三段階で評価したところ、Bの評価が得られた。
A:20日間経時しても、透明性と均一性を保持し、良好な溶解性と溶液安定性を示す。
B:攪拌終了時には、透明性と均一性を呈して良好な溶解性を示すが、一日経時すると相分離を生じ、不均一な状態となる。
C:攪拌終了直後から不均一なスラリーを形成し、透明性と均一性のある溶液状態を示さない。
得られた溶液を、有効長6mのバンド流延機を用いて、乾燥膜厚が100μmになるように流延した。バンド温度は0℃とした。乾燥のため、2秒風に当てた後、フイルムをバンドから剥ぎ取り、さらに100℃で3分、130℃で5分、そして160℃で5分、フイルムの端部を固定しながら段階的に乾燥して、残りの溶剤を蒸発させた。このようにして、セルロースアセテートフイルムを製造した。得られたフイルムは、さらに120℃で3時間乾燥した。
フイルムの厚み方向のレターデーション値を測定したところ、90nmであった。
[合成例2]
α−セルロース含量が約97重量%の木材パルプを解砕後、同パルプ100重量部に対し、100重量部の氷酢酸を均一に散布し、室温で90分間攪拌混合した。予め冷却した無水酢酸245重量部、酢酸365重量部および硫酸10重量部の混合液中に、パルプを投入して、攪拌混合し、45℃以下で酢化反応を進行させた。反応系は、初期の段階では不均一な繊維状であったが、反応の進行と共に不透明な餅状から、淡黄色透明な水飴状に変化した。水飴状の反応混合物中に、未酢化の繊維片が見出されなくなったときを反応終了点とした。反応開始から反応終了まで約220分を要した。
酢化反応終了時に、28.7重量部の酢酸マグネシウム水溶液(30重量%)を加え、過剰に存在する無水酢酸を加水分解すると共に硫酸の一部を中和し、これにより酢化反応を停止した。反応終了時の反応計内の残存触媒硫酸は、計算値で4重量部であった。
次に、反応液を30分間で約60℃に昇温しながら、8.4重量部の酢酸マグネシウム水溶液(30重量%)を添加した。この後、系内浴濃度が約85重量%となるように水を添加して、さらに昇温させて70℃に安定させた。70℃で30分間熟成反応を続けた。反応終了時、約12.4重量部の酢酸マグネシウム水溶液(30重量%)を加え、硫酸を完全に中和し、反応を停止した。反応終了溶液は、激しく攪拌しながら多量の10重量%酢酸水溶液を投入して、セルロースアセテートを析出、分離させた。析出したセルロースアセテートを濾別により収集後、実質的に酢酸が含まれなくなるまで水洗した。その後、脱水および乾燥して、粉末のセルロースアセテートを得た。得られたセルロースアセテートの粘度平均重合度は、300であった。
前述した手塚他の方法に従い、得られたセルロースアセテートをプロピオニル化処理した後、13C−NMRによる測定によって、2位、3位および6位のアセチル置換度を求めた。その結果、2位と3位のアセチル置換度の合計は1.91、6位のアセチル置換度は0.89、2位、3位および6位のアセチル置換度の合計は、2.80であった。
[実施例2]
合成例2で得られたセルロースアセテートを使用した以外は、実施例1と同様にして、セルロースアセテート溶液を調製し、セルロースアセテートフイルムを製造した。
溶液の安定性は、Aの評価であった。
製造したフイルムの厚み方向のレターデーションを測定したところ、80nmであった。
[合成例3]
α−セルロース含量が約97重量%の木材パルプを解砕後、同パルプ100重量部に対し、100重量部の氷酢酸を均一に散布し、室温で90分間攪拌混合した。予め冷却した無水酢酸245重量部、酢酸365重量部および硫酸7重量部の混合液中に、パルプを投入して、攪拌混合し、45℃以下で酢化反応を進行させた。反応系は、初期の段階では不均一な繊維状であったが、反応の進行と共に不透明な餅状から、淡黄色透明な水飴状に変化した。水飴状の反応混合物中に、未酢化の繊維片が見出されなくなったときを反応終了点とした。反応開始から反応終了まで約270分を要した。
酢化反応終了時に、24.7重量部の酢酸マグネシウム水溶液(30重量%)を加え、過剰に存在する無水酢酸を加水分解すると共に硫酸の一部を中和し、これにより酢化反応を停止した。反応終了時の反応計内の残存触媒硫酸は、計算値で3重量部であった。
次に、反応液を30分間で約60℃に昇温しながら、6.4重量部の酢酸マグネシウム水溶液(30重量%)を添加した。この後、系内浴濃度が約85重量%となるように水を添加して、さらに昇温させて70℃に安定させた。70℃で30分間熟成反応を続けた。反応終了時、約10重量部の酢酸マグネシウム水溶液(30重量%)を加え、硫酸を完全に中和し、反応を停止した。反応終了溶液は、激しく攪拌しながら多量の10重量%酢酸水溶液を投入して、セルロースアセテートを析出、分離させた。析出したセルロースアセテートを濾別により収集後、実質的に酢酸が含まれなくなるまで水洗した。その後、脱水および乾燥して、粉末のセルロースアセテートを得た。得られたセルロースアセテートの粘度平均重合度は、300であった。
前述した手塚他の方法に従い、得られたセルロースアセテートをプロピオニル化処理した後、13C−NMRによる測定によって、2位、3位および6位のアセチル置換度を求めた。その結果、2位と3位のアセチル置換度の合計は1.92、6位のアセチル置換度は0.95、2位、3位および6位のアセチル置換度の合計は、2.87であった。
[実施例3]
合成例3で得られたセルロースアセテートを使用した以外は、実施例1と同様にして、セルロースアセテート溶液を調製し、セルロースアセテートフイルムを製造した。
溶液の安定性は、Aの評価であった。
製造したフイルムの厚み方向のレターデーションを測定したところ、80nmであった。
[合成例4]
α−セルロース含量が約97重量%の木材パルプを解砕後、同パルプ100重量部に対し、100重量部の氷酢酸を均一に散布し、室温で90分間攪拌混合した。予め冷却した無水酢酸245重量部、酢酸365重量部および硫酸7重量部の混合液中に、パルプを投入して、攪拌混合し、45℃以下で酢化反応を進行させた。反応系は、初期の段階では不均一な繊維状であったが、反応の進行と共に不透明な餅状から、淡黄色透明な水飴状に変化した。水飴状の反応混合物中に、未酢化の繊維片が見出されなくなったときを反応終了点とした。反応開始から反応終了まで約270分を要した。
酢化反応終了時に、24.7重量部の酢酸マグネシウム水溶液(30重量%)を加え、過剰に存在する無水酢酸を加水分解すると共に硫酸の一部を中和し、これにより酢化反応を停止した。反応終了時の反応計内の残存触媒硫酸は、計算値で3重量部であった。
次に、反応液を30分間で約60℃に昇温しながら、6.4重量部の酢酸マグネシウム水溶液(30重量%)を添加した。この後、系内浴濃度が約85重量%となるように水を添加して、さらに昇温させて70℃に安定させた。70℃で90分間熟成反応を続けた。反応終了時、約10重量部の酢酸マグネシウム水溶液(30重量%)を加え、硫酸を完全に中和し、反応を停止した。反応終了溶液は、激しく攪拌しながら多量の10重量%酢酸水溶液を投入して、セルロースアセテートを析出、分離させた。析出したセルロースアセテートを濾別により収集後、実質的に酢酸が含まれなくなるまで水洗した。その後、脱水および乾燥して、粉末のセルロースアセテートを得た。得られたセルロースアセテートの粘度平均重合度は、300であった。
前述した手塚他の方法に従い、得られたセルロースアセテートをプロピオニル化処理した後、13C−NMRによる測定によって、2位、3位および6位のアセチル置換度を求めた。その結果、2位と3位のアセチル置換度の合計は1.78、6位のアセチル置換度は0.87、2位、3位および6位のアセチル置換度の合計は、2.65であった。
[比較例1]
合成例4で得られたセルロースアセテートを使用した以外は、実施例1と同様にして、セルロースアセテート溶液を調製し、セルロースアセテートフイルムを製造した。
溶液の安定性は、Aの評価であった。
製造したフイルムの厚み方向のレターデーションを測定したところ、140nmであった。
[合成例5]
α−セルロース含量が約97重量%の木材パルプを解砕後、同パルプ100重量部に対し、100重量部の氷酢酸を均一に散布し、室温で90分間攪拌混合した。予め冷却した無水酢酸245重量部、酢酸365重量部および硫酸15重量部の混合液中に、パルプを投入して、攪拌混合し、45℃以下で酢化反応を進行させた。反応系は、初期の段階では不均一な繊維状であったが、反応の進行と共に不透明な餅状から、淡黄色透明な水飴状に変化した。水飴状の反応混合物中に、未酢化の繊維片が見出されなくなったときを反応終了点とした。反応開始から反応終了まで約90分を要した。
酢化反応終了時に、43.6重量部の酢酸マグネシウム水溶液(30重量%)を加え、過剰に存在する無水酢酸を加水分解すると共に硫酸の一部を中和し、これにより酢化反応を停止した。反応終了時の反応計内の残存触媒硫酸は、計算値で6重量部であった。
次に、反応液を30分間で約60℃に昇温しながら、12.2重量部の酢酸マグネシウム水溶液(30重量%)を添加した。この後、系内浴濃度が約85重量%となるように水を添加して、さらに昇温させて70℃に安定させた。70℃で50分間熟成反応を続けた。反応終了時、約18.4重量部の酢酸マグネシウム水溶液(30重量%)を加え、硫酸を完全に中和し、反応を停止した。反応終了溶液は、激しく攪拌しながら多量の10重量%酢酸水溶液を投入して、セルロースアセテートを析出、分離させた。析出したセルロースアセテートを濾別により収集後、実質的に酢酸が含まれなくなるまで水洗した。その後、脱水および乾燥して、粉末のセルロースアセテートを得た。得られたセルロースアセテートの粘度平均重合度は、300であった。
前述した手塚他の方法に従い、得られたセルロースアセテートをプロピオニル化処理した後、13C−NMRによる測定によって、2位、3位および6位のアセチル置換度を求めた。その結果、2位と3位のアセチル置換度の合計は1.99、6位のアセチル置換度は0.80、2位、3位および6位のアセチル置換度の合計は、2.79であった。
[比較例2]
合成例5で得られたセルロースアセテートを使用した以外は、実施例1と同様にして、セルロースアセテート溶液を調製し、セルロースアセテートフイルムを製造した。
溶液の安定性は、Aの評価であった。
製造したフイルムの厚み方向のレターデーションを測定したところ、150nmであった。
[合成例6]
α−セルロース含量が約97重量%の木材パルプを解砕後、同パルプ100重量部に対し、100重量部の氷酢酸を均一に散布し、室温で90分間攪拌混合した。予め冷却した無水酢酸245重量部、酢酸365重量部および硫酸15重量部の混合液中に、パルプを投入して、攪拌混合し、45℃以下で酢化反応を進行させた。反応系は、初期の段階では不均一な繊維状であったが、反応の進行と共に不透明な餅状から、淡黄色透明な水飴状に変化した。水飴状の反応混合物中に、未酢化の繊維片が見出されなくなったときを反応終了点とした。反応開始から反応終了まで約90分を要した。
酢化反応終了時に、43.6重量部の酢酸マグネシウム水溶液(30重量%)を加え、過剰に存在する無水酢酸を加水分解すると共に硫酸の一部を中和し、これにより酢化反応を停止した。反応終了時の反応計内の残存触媒硫酸は、計算値で6重量部であった。
次に、反応液を30分間で約60℃に昇温しながら、12.2重量部の酢酸マグネシウム水溶液(30重量%)を添加した。この後、系内浴濃度が約85重量%となるように水を添加して、さらに昇温させて70℃に安定させた。70℃で30分間熟成反応を続けた。反応終了時、約18.4重量部の酢酸マグネシウム水溶液(30重量%)を加え、硫酸を完全に中和し、反応を停止した。反応終了溶液は、激しく攪拌しながら多量の10重量%酢酸水溶液を投入して、セルロースアセテートを析出、分離させた。析出したセルロースアセテートを濾別により収集後、実質的に酢酸が含まれなくなるまで水洗した。その後、脱水および乾燥して、粉末のセルロースアセテートを得た。得られたセルロースアセテートの粘度平均重合度は、300であった。
前述した手塚他の方法に従い、得られたセルロースアセテートをプロピオニル化処理した後、13C−NMRによる測定によって、2位、3位および6位のアセチル置換度を求めた。その結果、2位と3位のアセチル置換度の合計は1.98、6位のアセチル置換度は0.88、2位、3位および6位のアセチル置換度の合計は、2.86であった。
[比較例3]
合成例6で得られたセルロースアセテートを使用した以外は、実施例1と同様にして、セルロースアセテート溶液を調製し、セルロースアセテートフイルムを製造した。
溶液の安定性は、Cの評価であった。そのため、フイルムを製造することができず、レターデーション値は測定できなかった。
実施例1〜3および比較例1〜3の結果を下記第1表に示す。
第1表
────────────────────────────────────────
試料 セルロースアセテートのアセチル置換度 溶液 レター
フイルム 2位+3位 6位 合計 安定性 デーション
────────────────────────────────────────
実施例1 1.95 0.91 2.86 B 90nm
実施例2 1.91 0.89 2.80 A 80nm
実施例3 1.92 0.95 2.87 A 80nm
比較例1 1.78 0.87 2.65 A 140nm
比較例2 1.99 0.80 2.79 A 150nm
比較例3 1.98 0.88 2.86 C 測定不能
────────────────────────────────────────
第1表に示す結果から明らかなように、本発明に従うセルロースアセテートを用いたフイルムでは、レターデーションが低い値となる。
なお、第1表に示す各種セルロースアセテートのアセチル置換度は、添付の図1にプロットしてある。
[参考例1]
比較例2で用いた(合成例5で得られた)セルロースアセテート17重量部、メチレンクロリド80.28重量部およびトリフェニルホスフェート(可塑剤)2.72重量部を室温で攪拌混合して、セルロースアセテート溶液を得た。得られたセルロースアセテート溶液を使用した以外は、実施例1と同様にして、セルロースアセテートフイルムを製造した。
溶液の安定性は、Aの評価であった。
製造したフイルムの厚み方向のレターデーションを測定したところ、100nmであった。
[実施例4]
実施例1で調製したセルロースアセテート溶液(ドープ)を80℃で200時間加熱処理したところ、ドープの粘度が加熱処理前の80%に低下した。
次に、実施例1で製造したセルロースアセテートフイルムを、メチレンクロライドに溶解して、得られた溶液の極限粘度(η)を測定した。極限粘度(η)は、0.3、0.6および1.0g/dl濃度での水(30℃、150秒)の流下の粘度管における溶媒流下時間(to)と溶液流下時間(t)を測定し、濃度c(g/dl)に対する値として計算した。測定された極限粘度(η)は、1.2であった。
さらに、実施例1で製造したセルロースアセテートフイルムを、90℃、相対湿度100%の条件下で200時間放置してから、上記と同様にメチレンクロライドに溶解して、得られた溶液の極限粘度(η)を測定した。測定された極限粘度(η)は、0.8であって、若干の物性低下が認められた。
[実施例5]
実施例1で調製したセルロースアセテート溶液(ドープ)1000重量部に、ブチル化ヒドロキシトルエン1重量部(0.1重量%)を添加した。添加後、ドープを80℃で200時間加熱処理したところ、ドープの粘度は加熱処理前と同じ(100%)で、変化が認められなかった。
ブチル化ヒドロキシトルエンを添加したドープを用いて実施例1と同様にセルロースアセテートフイルムを製造した。フイルムを実施例4と同様にメチレンクロライドに溶解して、得られた溶液の極限粘度(η)を測定した。測定された極限粘度(η)は、1.2であった。
さらに、製造したセルロースアセテートフイルムを、90℃、相対湿度100%の条件下で200時間放置してから、上記と同様にメチレンクロライドに溶解して、得られた溶液の極限粘度(η)を測定した。測定された極限粘度(η)は、1.2であって、物性低下は認められなかった。
[実施例6]
実施例1におけるセルロースアセテート溶液の調製と同様に、下記の組成の希釈混合物を冷却および加温処理して、透明なドープを得た。得られた希釈ドープ中に、二酸化ケイ素微粒子(アエロジルR972DTM)を投入、混合し、分散機に移して、平均粒径が0.1μmとなるように分散した。
────────────────────────────────────────
希釈混合物組成
────────────────────────────────────────
合成例1で得られたセルロースアセテート 3重量部
酢酸メチル 80重量部
エタノール 20重量部
────────────────────────────────────────
実施例1で得られたセルロースアセテート溶液100重量部と、上記の微粒子を含む希釈ドープ8重量部をスタチックミキサーを用いて充分に混合した後、表面温度が20℃のステンレス支持体上に流延した。流延量は、乾燥の厚さが80μmになるように調整した。60℃の乾燥風で乾燥し、揮発分量が30重量%の段階で、支持体からフイルムを剥離した。剥離したフイルムを100℃で60分乾燥し、セルロースアセテートフイルムを得た。
[実施例7]
(1)樹脂基板の作成
ポリアリレート樹脂17重量部を塩化メチレン83重量部に溶解し、ドープを調製した。これをエンドレス金属支持体上に流延して、乾燥した。得られた樹脂フイルムを支持体から剥離し、さらに充分乾燥させて厚さ150μmの樹脂フイルムを得た。
樹脂フイルムを215℃で20分間加熱し、熱緩和を行ない樹脂の複屈折率を低下させた。
(2)位相差板の作成
ポリカーボネート樹脂(レキサン、GE社製)18重量部を、塩化メチレン82重量部に溶解してドープを調製した。
上記ポリカーボネート樹脂のドープを、エンドレスの金属支持体上に流延し、乾燥した。得られた樹脂フイルムを支持体から剥離し、さらに充分に乾燥させ、厚さ70μmの樹脂フイルムを得た。
次に、140℃の余熱ゾーン、168℃の延伸ゾーン、145℃の緩和ゾーンを順次通過させて、115%延伸で複屈折率が420nmの位相差膜を得た。位相差膜の厚さは62μmであった。
(3)偏光板保護膜の作成
実施例6で作成したセルロースアセテートフイルムを偏光板保護膜として使用した。
(4)液晶表示装置の作成
以上のように作成した基板、位相差板および偏光板保護膜を用いて、下記の構成の液晶表示装置を作成した。
────────────────────────────────────────
表面処理膜(反射防止膜)
偏光板保護膜(セルロースアセテートフイルム)
偏光膜(ヨウ素を偏光素子とするポリビニルアルコールフイルム)
偏光板保護膜(セルロースアセテートフイルム)
位相差板(ポリカーボネートフイルム)
液晶表示素子の基板(ポリアリレートフイルム)
透明電極層
液晶層
透明電極層
液晶表示素子の基板(ポリアリレートフイルム)
位相差板(ポリカーボネートフイルム)
偏光板保護膜(セルロースアセテートフイルム)
偏光膜(ヨウ素を偏光素子とするポリビニルアルコールフイルム)
偏光板保護膜(セルロースアセテートフイルム)
────────────────────────────────────────
アセチル置換度の規定および実施例と比較例のセルロースアセテートのアセチル置換度を説明するためのグラフである。

Claims (5)

  1. 2位、3位および6位のアセチル置換度の合計が2.67以上であり、2位および3位のアセチル置換度の合計が1.97以下であり、かつ6位のアセチル置換度が0.89以上かつ0.98以下であるセルロースアセテート。
  2. 2位、3位および6位のアセチル置換度の合計が2.77以上であり、かつ2位および3位のアセチル置換度の合計が1.96以下である請求項1に記載のセルロースアセテート。
  3. 2位、3位および6位のアセチル置換度の合計が2.67以上であり、2位および3位のアセチル置換度の合計が1.97以下であり、かつ6位のアセチル置換度が0.89以上かつ0.98以下であるセルロースアセテートが有機溶媒中に溶解しているセルロースアセテート溶液
  4. 有機溶媒が、酢酸メチルを50重量%以上含む請求項3に記載のセルロースアセテート溶液。
  5. 2位、3位および6位のアセチル置換度の合計が2.67以上であり、2位および3位のアセチル置換度の合計が1.97以下であり、かつ6位のアセチル置換度が0.89以上かつ0.98以下であるセルロースアセテートを有機溶媒で膨潤させる工程;得られた膨潤混合物を、−100乃至−10℃に冷却する工程;そして、冷却した混合物を0至200℃に加温して、セルロースアセテートの有機溶媒溶液を得る工程からなるセルロースアセテート溶液の調製方法
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