JP4183346B2 - 粉末冶金用混合粉末ならびに鉄系焼結体およびその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、耐摩耗性や引張強度,疲労強度等の機械的特性に優れた鉄系焼結体を得ることのできる粉末冶金用混合粉末、および上記の様な鉄系焼結体およびその製造方法に関するものである。そして、本発明によって得られる鉄系焼結体は、自動車のトランスミッション部品のシンクロハブ、パワーステアリングポンプのカムリング等の素材として有用である。
【0002】
【従来の技術】
粉末冶金法は、圧延,鍛造,鋳造等からなる従来の生産プロセスを大きく変え、原料となる金属粉末を圧粉成形した後焼結して製品とする方法である。従って、この粉末冶金法によれば、WやMo等の高融点金属材料,含油軸受やフィルター等の多孔質材料,超硬合金やサーメット等の様に、従来の溶製法では製造が困難であった部材の製造が可能になる。そればかりか、非切削による材料歩留まりの向上、高い寸法精度等の製造面での利点、および溶製材で発生しやすい偏析や異方性が少ないという材料面での利点等の様に溶製材では得られない各種の長所があることから、従来の溶製法によって製造されていた各種部材を粉末冶金法におきかえて製造することも行なわれている。
【0003】
現在、粉末冶金法によって製造されている焼結体は自動車用部品として用いられるものが大半であり、とりわけ鉄系焼結部材が汎用されている。この様な鉄系焼結部材については様々なものが知られており、例えば強度,耐候性,耐摩耗性等の向上を図るという目的の下に、主成分となる鉄粉に対し黒鉛や銅等の微粉末を混合して焼結したものが知られている。また焼結部材の適用範囲の拡大という観点から、焼結部材にはより優れた靭性や強度が要求される様になり、それを達成する手段としてNiやMo等の合金元素を添加して合金化する方法も知られている。
【0004】
粉末冶金法によって高強度の鉄系焼結体を得る為の代表的な方法としては、プレミックス法とプレアロイ法が基本的な方法として知られている。このうちプレミックス法とは、鉄粉と他の金属粉または合金成分を予め合金化した合金化粉末を均一に混合し、これを圧粉成形した後加熱焼結する方法である。この方法は成形加工が比較的簡単であるという利点を有しているが、圧粉成形までの段階で鉄粉中の添加粉末が比重差によって分離・偏析したり、あるいは焼結時に添加金属粉の拡散が十分に進まないという難点があり、焼結体の強度や寸法にばらつきを生じるという品質上の問題がある。
【0005】
これに対しプレアロイ法は、Ni,Mo,Cr等の合金成分を予め鉄中に固溶(合金化)させた合金化鋼粉(プレアロイ型鋼粉)を使用するものであり、プレミックス法で指摘した様な問題は起こさない。ところがこの方法ではプレアロイ化して得られる合金化鋼粉が鉄に比べて非常に硬質であるため、圧粉成形時の圧密化を十分に高めることができず、高密度の焼結体が得られにくい。従って当該合金鋼の物性を十分に活かすことができない。
【0006】
また、偏析の防止手段としては、例えば特開昭56−136901号公報や同63−103001号公報に開示されている如く、有機バインダーを用いて鉄・鋼粉末に黒鉛粉末を付着させる方法が提案されている。また、例えば特公昭45−9649号公報や特開昭63−297502号公報に開示されている如く、鉄粉に他の金属粉若しくは合金化粉末を熱処理で拡散付着させる、いわゆる拡散付着法も開発されている。特に、拡散付着法は、圧縮性を殆ど下げることなく且つ偏析による強度や寸法精度の不均一の問題もある程度防止される。即ち、拡散付着型の合金化鋼粉は、鉄粉にNi,Cu,Mo等の単体金属粉若しくはそれらの合金化粉末を加えて均一に混合した後、拡散処理して鉄粉表面に添加粉末を拡散付着させるものであり、一旦拡散付着したものについては偏析を生じることはない。
【0007】
鉄系焼結部材は、耐摩耗性が要求される耐摩耗部材や、高強度が要求される高強度材の素材として広く利用されている。このうち、耐摩耗部材としては、純鉄粉,拡散型鋼粉末,プレアロイ型鋼粉を母粉とし、これにFeCr,FeMn,FeMo,WC等の粉末を混合して混合粉末とし、これを焼結して自動車エンジンのバルブシート、ロッカーアームチップ、カム等に利用されている。しかしながら、これらの添加成分は、耐摩耗性を向上させるための作用しか発揮せず、焼結したままの焼結体では引張強度がそれほど優れているとは言えず、強度を高めるためには、焼結後に光輝焼入れ・焼戻しや浸炭焼入れ・焼戻し等の熱処理が施されるのが一般的である。
【0008】
一方、高強度材は、JIS規格SMF4040や5040にNi粉末やCu粉末を添加した混合粉末、4Ni−1.5Cu−0.5Mo−Feの組成に代表される拡散付着型合金化鋼粉(この鋼粉については後述する)、AISI4600や4100に代表されるプレアロイ型鋼粉が原料粉末として用いられている。しかしながら、こうした原料粉末を焼結しただけでは、引張強度が75kgf/mm2までが限界であり、それ以上に引張強度を高めるためには、上記した様な熱処理を施す必要がある。また、こうして得られた焼結体は、耐摩耗性もそれほど良好であるとはいえず、こうした観点からしても熱処理、特に浸炭焼入れ・焼戻しが施されるのが一般的である。こうして得られる焼結体は、自動車トランスミッション部品のシンクロハブやパワーステアリングポンプのカムリング等として広く使用されている。
【0009】
ところで、基本的にプレミックス法を採用し、高密度且つ高強度でしかも焼結時の寸法のばらつきの少ない焼結体を得ることのできる技術として、例えば、特開平4−350101号公報、同5−295401号公報、同5−302101号公報等の技術も提案されている。これらの技術は、いずれも鉄粉に合金化粉末を添加した混合粉末において、添加する混合粉末の化学成分組成を適切に規定することによって、鉄粉中に合金成分を適切に拡散させて希望する焼結体を得ようとするものである。但し、これらの技術においては、拡散を促進させる為に、焼結時の温度は1250〜1350℃程度と比較的高温にするのが一般的である。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
上記した様に、これまでの鉄系焼結部材は、希望する特性を得るために、その製造工程において熱処理が施されるのが一般的である。しかしながら、熱処理を施すと、製造コストがアップすることに加え、発生する熱処理歪を除去するための矯正作業も必要となり、更にコストアップすることは避けられない。
【0011】
本発明はこうした技術背景の下になされたものであって、熱処理を施したりせずとも、引張強度や疲労強度、耐摩耗性等の機械的特性に優れた焼結体、およびその様な焼結体を得ることができる粉末冶金用混合粉末を提供しようとするものである。
【0012】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決することのできた本発明の粉末冶金用混合粉末は、請求項1に記載しているように、合金成分を1.5〜4.5%(重量%の意味、以下同じ)の範囲で含むプレアロイ型鋼粉を母粉とし、これにNi:40〜70%,Cr:5〜20%,Mo:5〜20%およびMn:5〜20%,Cuおよび/またはSi:単独または合計で5〜15%の化学成分組成を有し、これらが合金化された合金化微粉末が混合され、さらにニッケル粉末が混合されたものであり、さらに下記式(1)によって計算される母粉の断面円形度係数が0.56以下であると共に、合金化微粉末の割合が1〜3%であって、全体の化学成分組成が下記(2)式および(3)式を満足することを特徴とするものである。
断面円形度係数=4π×S/L 2 ・・・(1)
(式中のSは面積、Lは周囲長を示す)
5[Cr]+5[Mo]+5[Mn]+2[Ni]≧19% ・・・(2)
[Ni]<6.2% ・・・(3)
(式中の[Cr],[Mo],[Mn],[Ni]は各々Cr,Mo,Mn,Niの含有量(重量%)を示す)
【0013】
本発明による粉末冶金用混合粉末においては、請求項2に記載しているように、前記母粉が、Ni:0.3〜2.5%,Cr:0.3〜3.5%,Mo:0.3〜3.5%およびMn:0.3〜3.5%よりなる群から選択される1種以上の合金成分を含み、残部がFeおよび不可避不純物からなり、該不可避不純物中のO,C,SiをそれぞれO:0.3%以下、C:0.02%以下、Si:0.1%以下に抑制したものであることが好ましい。
【0014】
また、請求項3に記載しているように、前記母粉が、さらにV:0.01〜1%,Nb:0.01〜0.15%およびTi:0.01〜0.1%よりなる群から選択される1種以上の合金成分を含むものであっても良い。
【0019】
さらにまた、請求項4に記載しているように、混合粉末中に占めるニッケル粉末の割合が2〜5%であるものとすることも好ましい。
【0022】
本発明に係る鉄系焼結体は、請求項5に記載しているように、上記した混合粉末と黒鉛粉との圧粉成形焼結体より成り、焼結体中の炭素量を0.4〜0.6%とすることにより、硬度が600Hv以上となって、耐摩耗性が優れたものとなる。
【0023】
本発明に係る鉄系焼結体の製造方法は、請求項6に記載しているように、上記した混合粉末に黒鉛粉を混合し、この混合粉を圧粉成形し焼結することを特徴としており、請求項7に記載しているように、焼結時の温度が1050〜1250℃であるものとするのも望ましく、その後に必ずしも熱処理を施さなくとも良好な特性を有するものが得られる。
【0024】
【発明の実施の形態】
本発明者は、従来のプレアロイ型鋼が圧縮性が悪いこと、および、鉄粉に対して合金粉末を拡散させるにはできるだけ高温の焼結温度が必要であるという欠点を改善するべく、プレアロイ型鋼粉末や合金粉末の有する利点を有効に且つ巧みに利用し、さらにニッケル粉末のもつ利点を有効に且つ巧みに利用すれば、希望する焼結体を製造することのできる粉末冶金用混合粉末が得られるのではないかという観点から、種々研究を進めた。その結果、形状が複雑(異形状)でかつ圧縮性を低下しない程度の所定量の合金成分を予め合金化したプレアロイ型鋼粉を母粉として用い、これに合金成分を予め合金化した合金化微粉末とニッケル粉末を混合して原料粉末とすれば、希望する特性を発揮する焼結体を達成できる粉末冶金用混合粉末が得られることを見出し、本発明を完成した。
【0025】
上述した様に、焼結温度を高くした方が合金成分の拡散が進み、また、鉄粉粒子間の界面で焼結が促進されるので、焼結体の機械的特性は向上する。しかしながら、焼結温度を高くすることは、設備上の制約や製造コストの点で好ましくない。そこで、本発明では、通常使用されている焼結温度で機械的特性を向上させるという観点から、圧縮性を低下しない程度の合金成分を予め合金化しかつ粉末粒子間の結合(からみ合い)を高めるために形状を異形状(いびつ)にしたプレアロイ型鋼粉を母粉として用いると共に、比較的低温の焼結温度であっても前記母粉に対する合金成分の拡散性を高めて最終的な焼結体中の合金成分をできるだけ高めるという観点から、前記母粉に合金化微粉末とニッケル粉末を混合する構成を採用したのである。
【0026】
まず、本発明で母粉として用いるプレアロイ型鋼粉について説明する。このプレアロイ型鋼粉に含まれる合金成分の割合は、1.5〜4.5%とする必要がある。即ち、焼結体の強度等の機械的特性を向上させるためには、母粉の基地を強くする必要があるが、そのためには合金成分の含有量は1.5%以上とする必要がある。また、合金成分の含有量は1.5%未満では、母粉中に合金成分を予め添加しておくことによって焼結体中の合金成分をできるだけ高めるという効果が発揮されなくなる。一方、合金成分の含有量が4.5%を超えると、圧縮性が低下して十分な密度が得られないばかりか、金型の損傷も激しくなってコスト的にも不利になる。
【0027】
本発明で母粉として用いるプレアロイ型鋼粉中の合金成分としては、具体的には、強化元素として知られているNi,Cr,Mo,Mn等が挙げられ、これらの元素の1種以上を上記範囲で添加する様にすれば良いが、各元素の望ましい添加範囲およびその理由は下記の通りである。
【0028】
Ni:0.3〜2.5%
Niは合金化されることによって、焼入れ性を向上させると共に、靭性を高める元素であり、焼結体の強度を向上させる上で必要な元素である。こうした効果を発揮させるためには、0.3%以上含有させるのが良い。しかしながら、Niは鋼粉を硬くする作用が大きく、圧縮性を悪くするので、どちらかといえば後述する合金化微粉末の成分として添加した方が好ましいが、できるだけ合計Ni量(混合粉末中の全Ni量)を高めるという観点からして、圧縮性を悪くしない程度の量として2.5%を上限とするのが良い。
【0029】
Cr:0.3〜3.5%
Crは合金化されることによって焼結体の焼入れ性を高め、引張強度や耐摩耗性を向上させる作用を発揮する。また、Crは強化元素のなかで鋼粉の圧縮性に対してもあまり影響を及ぼさない元素であり、鋼粉にかなりの量で合金化させることができる。こうしたCrの効果を発揮させるためには、0.3%以上含有させるのが良い。しかしながら、Crは酸化され易い元素であるので焼結体に多量に含まれると、機械的特性が劣化するので、3.5%以下とするのが良い。
【0030】
Mo:0.3〜3.5%
MoはCrと同様に、圧縮性の低下が少なくて、焼入れ性を向上させて強度を増大させる作用を有する元素である。また、Moは鋼粉(母粉)製造時に還元し易いこと、および、Fe中の拡散が遅い元素であるので、鋼粉中に予め合金化させた方が好ましい元素である。これらの作用を発揮させるためには、Moの添加量は0.3%以上とするのが良いが、Moを過剰に添加してもその改善効果が飽和し、且つ、コストアップを招くことから、その上限は3.5%とするのが良い。
【0031】
Mn:0.3〜3.5%
Mnは焼結体の焼入れ性を向上させ、引張強度等の機械的特性を向上させる効果を発揮する元素である。こうした効果を発揮させるためには、0.3%以上添加するのが良い。しかしながら、Mnは鋼粉中に多く添加させると、鋼粉を硬くして圧縮性を劣化させる。また、Mnは還元性の乏しい元素であるので、鋼粉の製造時に酸化皮膜の除去が困難になるので、Mnの添加量の上限は3.5%とするのが良い。本発明で用いる母粉の基本的な合金成分は上記の通りであり、残部はFeおよび不可避不純物からなるものであるが、該不可避不純物中のO,C,Si等は下記の量に抑制することが望ましい。
【0032】
O:0.3%以下
Oの量が多くなると、圧縮性を低下させるので好ましくない。また、Oの量が多くなると、焼結時に黒鉛粉と反応してCの歩留りを悪くし、焼結体中の炭素量のばらつきを大きくすると共に、添加する黒鉛粉量を多くすることが必要となってコスト高となる。こうした観点から、Oの量は0.3%以下に抑制することが望ましい。なお、Oの含有量のさらに好ましい範囲は、0.15%以下である。
【0033】
C:0.02%以下
CはOやNと同様に、鋼に対して侵入型元素であり、フェライトを硬化させる作用を有するが、鋼粉を圧縮成形する場合には、フェライト素地の硬さが柔らかい方が圧粉体密度を高めることができるので、Cの量はできるだけ低く抑える方が良い。また、圧粉体密度を上げることは、成形体強度が改善されて成形体のハンドリング性が良好になる。こうした観点からして、Cの量は0.02%以下とするのが良い。
【0034】
Si:0.1%以下
Siは焼入れ性を向上させる作用があるが、酸素との結合力が高いので、溶鋼をアトマイズするときに鋼粉表面に酸化物を形成する。この酸化物は、還元工程で還元することが困難になる。また、Siは、フェライトを硬化させる作用が大きくて鋼粉の圧縮性を損ねることになる。こうした観点から、Siの量は0.1%以下に抑制することが望ましい。
【0035】
本発明で用いる母粉には、必要によって、V,Nb,Ti等を含有させることができるが、これらのより望ましい添加範囲およびその理由は下記の通りである。
【0036】
V:0.01〜1%
Vは、結晶粒を微細化して焼結体の機械的特性を向上させる。また、炭素との結合力が高く、酸化物を形成して耐摩耗性を向上させる。これらの効果を発揮させるためには、0.01%以上含有させる必要がある。しかしながら、Vは酸素との結合力も高いので、過剰に添加するとV酸化物の形成が多くなり、還元処理によってもV酸化物の還元は困難になる。このV酸化物が多くなると、焼結体の機械的特性を却って悪化させることになる。また、鋼粉中にVを多量に合金化させると、鋼粉の圧縮性も劣化する。こうした観点から、Vの量は1%以下とするのが良い。なお、結晶粒の微細化という点からすれば、V含有量のさらに好ましい範囲は、0.2〜0.5%程度である。
【0037】
Nb:0.01〜0.15%
NbはVと同様に、結晶粒を微細化して焼結体の機械的特性を向上させる。また、炭素との結合力が高く、炭化物を形成して耐摩耗性を向上させる。さらに、焼結体の寸法精度を向上させるという効果も発揮する。そしてこれらの効果を発揮させるためには、0.01%以上含有させることが望ましい。しかしながら、Nbは酸素との結合力も高いので、過剰に添加するとNb酸化物の形成が多くなり、還元処理によってもNb酸化物の還元は困難になる。このNb酸化物が多くなると、焼結体の機械的特性を却って悪化させることになる。また、鋼粉中にNbを多量に合金化させると、鋼粉の圧縮性も劣化する。こうした観点から、Nbの含有量は0.15%以下とするのが良い。なお、結晶粒の微細化という点からすれば、Nb含有量のさらに好ましい範囲は、0.03〜0.07%程度である。
【0038】
Ti:0.01〜0.1%
TiはVやNbと同様に、結晶粒を微細化して焼結体の機械的特性を向上させる。また、炭素との結合力が大きく、炭化物を形成して耐摩耗性を向上させる。これらの効果を発揮させるためには、0.01%以上含有させるのが望ましい。しかしながら、Tiは酸素との結合力が大きいので、過剰に添加するとTi酸化物の形成が多くなり、還元処理によってもTi酸化物の還元は困難になる。このTi酸化物が多くなると、焼結体の機械的特性を却って悪化させることになる。また、鋼粉中にTiを多量に合金化させると、鋼粉の圧縮性も劣化する。こうした観点から、Tiの含有量は0.1%以下とするのが良い。なお、結晶粒の微細化という点からすれば、Ti含有量のより好ましい範囲は、0.02〜0.05%程度である。
【0039】
断面円形度係数:0.56以下
粉末間の結合力をより一層高めるためには、粉末間の接点が多いほど良い。そのためには、粉末の形状がいびつである方が良い。そして、下記式(1)で定義されるいびつ度を示す断面円形度係数で0.56以下の粉末を用いるとより高い強度の焼結体が得られる。
【0040】
断面円形度係数=4π×S/L2 ・・・(1)
但し、Sは面積、Lは周囲長である。
【0041】
ところで、プレアロイ型鋼粉のみを用いた焼結体では、合金化によって組織が強化されて引張強度は高くなるが、鋼粉の圧縮性が低下して高い密度を達成することは困難であり、焼結体の機械的特性を考慮すると、できるだけ密度が高い方が良好な特性が得られるので、上記の点はプレアロイ型鋼粉の大きな欠点になる。
【0042】
本発明では上記した様なプレアロイ型鋼粉の含有量を所定量に規定したものを母粉とし、これに合金成分を予め合金化した合金化微粉末を混合することによって、プレアロイ型鋼粉のみを原料粉末として用いた場合と比べて、下記のような効果が発揮される。
【0043】
(1)プレアロイ型鋼粉のみを用いた場合は、圧縮性を考慮すると、合金量が制限されることになるのであるが、本発明の構成を採用することによって、合金化量をできるだけ多くすることが可能になる。
【0044】
(2)母粉に合金化させる量は、圧縮性に悪影響を及ぼさない範囲内で規定しているので、圧縮性が良好に維持され、その結果、密度をできるだけ高めることができるので、機械的特性に優れた焼結体を得ることができる。また、このことは、同じ成形圧力では、機械的特性のより優れた焼結体が得られることを意味する。
【0045】
(3)既存のプレアロイ型鋼粉では、圧縮性を考慮して合金量を高めることができないので、金属組織は必然的にフェライトやベナイトが析出することになる。これに対し、本発明の混合粉末では、合金成分量を多くすることができるので、組織をマルテンサイトにして強度を高めることができる。
【0046】
本発明においては、上記の様なプレアロイ型鋼粉に対して、Ni,Cr,Mo,Mn,Si,Cu等の添加元素を単独金属粉の形態ではなく、これを予め合金化した合金化粉末として混合することも重要である。そして、これらの元素を予め合金化しておくことによって単体粉末のときより融点を低下させ、該プレアロイ型鋼粉への拡散性を改善し、焼結体の強度向上に寄与するのである。
【0047】
本発明の粉末冶金用混合粉末は、上述の如くバインダー付着型粉末または拡散付着型粉末のいずれの形態でも使用できるが、いずれの形態を採用しても、その後の焼結処理のみによって結果的に2段アニール等の熱処理を施したことと同様になり、強度向上という観点からも好ましい。即ち、混合粉末を用いれば、焼結後に熱処理を施さなくても、希望する機械的特性を発揮する焼結体が得られることになる。
【0048】
本発明で使用される合金化微粉末の成分については、焼結体が使用される用途に応じて適宜設定すれば良いが、強度や耐摩耗性等を考慮すると、Ni:40〜70%,Cr:5〜20%,Mo:5〜20%,Mn:5〜20%,Cuおよび/またはSi:単独または合計で5〜15%の化学成分組成を有するものが好ましい。これらの規定理由は、下記の通りである。
【0049】
Ni:40〜70%
Niはフェライトの硬化能が大きい元素であり、圧縮性を損なうことがあったり、拡散度速度が速い元素であるので、前述の如く母粉中に添加するよりも合金化微粉末中の成分として添加した方が好ましい元素である。こうした観点から、合金化微粉末中には、できるだけ多く含有させる様にした方が望ましく、40〜70%程度が適当である。
【0050】
Cr:5〜20%,Mo:5〜20%
Cr,Moは、いずれも拡散速度が遅く、フェライトの硬化能も低いので、合金化微粉末中に添加するよりも母粉中に成分として添加した方が好ましい元素である。しかしながら、合金化させることによって、その拡散速度を向上させることができる。こうした効果を発揮させるためには、合金化微粉末中に5%以上含有させるのが良い。但し、過剰に含有させると、合金化微粉末自体の拡散性を却って低下させるので、いずれも20%以下とするのが良い。
【0051】
Mn:5〜20%
Mnはフェライトを硬化させる作用が大きいので、母粉中に合金化させるよりも、合金化微粉末中に添加する方が好ましい元素である。しかしながら、酸化され易いので、合金化微粉末中に多量に合金化させることはできない。こうした観点からして、合金化微粉末中のMnの含有量は5〜20%程度が適当である。
【0052】
Cuおよび/またはSi:単独または合計で5〜15%
CuやSiは、合金化微粉末中に固溶することによって、合金化微粉末の融点を低下させ、低温の焼結温度によっても合金化微粉末の拡散を促進させるのに有効な元素である。こうした効果を発揮させるためには、単独または合計で5%以上含有させるのが良いが、過剰に含有させると、却って融点を上昇させることになるので、15%以下とするのが良い。なお、CuやSiのより好ましい含有量は、単独または合計で7〜10%程度である。
【0053】
本発明による粉末冶金用混合粉末中に占める合金化微粉末の割合は、1〜3%であることが好ましい。そして、上記の様な合金化粉末を母粉に添加することによって、全鋼粉の焼結性を高めることができ、また、合金化微粉末中の合金成分の拡散によって焼結界面の強度が向上する。こうした効果を発揮させる為には、合金化微粉末の混合割合は1%以上とするのが好ましい。また、混合割合があまり大きくなると成形性が悪くなるので3%以下とするのが良い。
【0054】
本発明による粉末冶金用混合粉末は、上記したように、プレアロイ型鋼粉を母粉とし、これに合金化微粉末が混合され、さらにニッケル粉末が混合されたものであるが、このニッケル粉末は焼結体の引張強度,疲労強度,靭性などを向上する効果がある。このニッケル粉末の添加量は、2〜5%であることが望ましく、ニッケル粉末の添加量を2%以上とすることで、焼結界面の強度向上が図れる。しかし、ニッケル粉は焼結時の寸法収縮を起こす作用があり、多すぎると寸法精度を悪化させ、また、残留オーステナイトを形成させて強度や耐摩耗性を低下させるので5%以下とするのが良い。
【0055】
さらに、混合粉末中の合金成分組成は、下記(2)式および(3)式を満足するものであることが好ましい。即ち、焼結だけで焼結体の引張強度を100kgf/mm2以上,疲れ強さを27kgf/mm2以上にするためには、下記(2)式を満足させる必要がある。また、Niは残留オーステナイトを形成し易い元素であり、全体としての量が過剰になると強度の低下を招くばかりでなく、脆弱な組織となって耐摩耗性も劣化するので6.2%未満とするのが良い。
【0056】
5[Cr]+5[Mo]+5[Mn]+2[Ni]≧19% ・・・(2)
[Ni]<6.2% ・・・(3)
但し、[Cr],[Mo],[Mn],[Ni]は各々Cr,Mo,Mn,Niの含有量(重量%)を示す。
【0057】
なお、本発明で用いるプレアロイ型鋼粉や合金化粉末の粒径については、特に限定されるものではなく、通常の大きさのものであれば良く、例えば、プレアロイ型鋼粉で60〜100μm程度、合金化微粉末で15μm程度以下が適当である。
【0058】
上記したような混合粉末に黒鉛粉や潤滑剤を混合し、これを成形および焼結することによって希望する焼結体が得られる。また、焼結体中のC量は、0.4〜0.6%となるようにすることが好ましい。即ち、Cは基地に固溶して強度や硬さおよび耐摩耗性を向上させるのであるが、C量が0.4%未満であるとこれらの効果を発揮させることができず、例えば、マイクロビカース硬度が600HVより小さくなり、十分な耐摩耗特性が得られない。一方、C量が0.6%を超えると耐摩耗性の点では問題はないが、強度が却って低下することになる。また、上記特性は、焼結時の温度が1050〜1250℃程度であっても得られる。
【0059】
本発明による鉄系焼結体は、必らずしも熱処理を施さなくても、希望する特性を発揮するものであるが、例えば、更に特性を向上させる等、必要によって熱処理を施しても良いことは勿論である。
【0060】
【発明の効果】
本発明に係わる粉末冶金用混合粉末では、請求項1に記載しているように、合金成分を1.5〜4.5%(重量%の意味、以下同じ)の範囲で含むプレアロイ型鋼粉を母粉とし、これにNi:40〜70%,Cr:5〜20%,Mo:5〜20%およびMn:5〜20%,Cuおよび/またはSi:単独または合計で5〜15%の化学成分組成を有し、これらが合金化された合金化微粉末が混合され、さらにニッケル粉末が混合されたものであるから、圧縮性の低下をきたすことなく、合金化量をできるだけ高めることができ、単体粉末のときにくらべて融点をさらに低下させてプレアロイ型鋼粉への拡散性をより改善することができ、これによって、高密度且つ高強度で耐摩耗性に優れた焼結体を得ることができる粉末冶金用混合粉末を提供することが可能であり、前記母粉の(1)式:4π×S/L 2 (式中のSは面積、Lは周囲長を示す)によって計算される断面円形度係数が0.56以下であるから、粉末の形状がいびつとなり、粉末粒子間の接触が高まることとなって、結合力がより一層高まることから、疲労強度を高めることができ、当該混合粉末中に占める合金化微粉末の割合が1〜3%であるから、全混合鋼粉の焼結性を高めることができ、合金化微粉末中の合金成分の拡散によって焼結界面の強度が向上し、機械的特性のより優れた鉄系焼結体とすることができる。さらに、当該混合粉末中の化学成分組成が(2)式: 5[Cr]+5[Mo]+5[Mn]+2[Ni]≧19%、及び(3)式:[Ni]<6.2%(式中の[Cr],[Mo],[Mn],[Ni]は各々Cr,Mo,Mn,Niの含有量(重量%)を示す)を満足するものであるから、焼結だけであっても焼結体の引張強度,疲労強度をより優れたものにできると共に耐摩耗性にもより優れたものにできるという著大なる効果がもたらされる。
【0061】
そして、請求項2に記載しているように、前記母粉が、Ni:0.3〜2.5%,Cr:0.3〜3.5%,Mo:0.3〜3.5%およびMn:0.3〜3.5%よりなる群から選択される1種以上の合金成分を含み、残部がFeおよび不可避不純物からなり、該不可避不純物中のO,C,SiをそれぞれO:0.3%以下、C:0.02%以下、Si:0.1%以下に抑制したものであるようになすことによって、圧縮性の低下を招くことなく、焼入性に優れ、引張強度や圧縮疲労強度等の機械的特性に優れると共に耐摩耗性にも優れた鉄系焼結体を提供することが可能になるという著大なる効果がもたらされる。
【0062】
また、請求項3に記載しているように、前記母粉が、さらにV:0.01〜1%,Nb:0.01〜0.15%およびTi:0.01〜0.1%よりなる群から選択される1種以上の合金成分を含むものであるようになすことによって、結晶粒を微細化して焼結体の機械的特性をより一層向上させたものとすることが可能であるという著大なる効果がもたらされる。
【0067】
さらにまた、請求項4に記載しているように、混合粉末中に占めるニッケル粉末の割合が2〜5%であるようになすことによって、焼結体の焼結界面の強度をより一層高め、焼結体の引張強度,疲労強度,靭性などをさらに向上させることが可能であるという著大なる効果がもたらされる。
【0069】
本発明に係わる鉄系焼結体は、請求項5に記載しているように、請求項1ないし4のいずれかに記載の混合粉末と黒鉛粉との圧粉成形焼結体よりなるものとし、焼結体中の炭素量が0.4〜0.6%であり、マイクロビッカースの硬さが600以上であるものとすることによって、必らずしも熱処理を施さなくとも、十分良好な耐摩耗性を有ししかも機械的特性および耐摩耗性に優れた鉄系焼結体を提供することが可能であるという著大なる効果がもたらされる。
【0071】
また、本発明に係わる鉄系焼結体の製造方法では、請求項6に記載しているように、請求項1ないし4のいずれかに記載の混合粉末に黒鉛粉を混合し、この混合粉を圧粉成形し焼結するようにしたから、必らずしも熱処理を施さなくとも機械的特性および耐摩耗性に優れた鉄系焼結体を製造することが可能であるという著大なる効果がもたらされる。
【0072】
そして、請求項7に記載しているように、焼結時の温度が1050〜1250℃であるようになすことによって、従来ほど焼結温度を高くしなくとも機械的特性および耐摩耗性の優れた鉄系焼結体を製造することができ、設備上の制約や製造コストの点でも有利なものにすることが可能であるという著大なる効果がもたらされる。
【0073】
【実施例】
以下、本発明を実施例によって更に詳細に説明するが、下記実施例は本発明を限定する性質のものではなく、本発明の趣旨に徴して設計変更することは何れも本発明の技術的範囲に含まれるものである。
【0074】
(実施例1)
表1に示す断面円形度係数が異なる(この断面円形度係数は、75〜106μmの粉末の断面を画像解析により求めた数値である。)4種の1%Mo−0.5%Niプレアロイ型鋼粉を母粉とし、これに合金化微粉末(14%Mn−14%Cr−7%Mo−7%Si−残部Ni)を2%と、ニッケル粉末(INCO社製商品名:INCO287)を4%と、黒鉛粉を0.5%と、潤滑剤として0.75%のステアリン酸亜鉛を加え、30分間ミキサーで混合した。次いで、混合粉末を6t/cm2の圧力で成形し、この圧粉成形体を10%の水素を含む窒素雰囲気中1140℃で60分間焼結した。ここで得られた各焼結体についてJIS 14A号形状の引張試験片とJIS 1号形状の回転曲げ疲労試験片に機械加工し、引張試験および疲労試験を実施した。ここで用いた母粉の断面円形度係数,化学成分組成,添加成分および添加量を表1に示すと共に、焼結体の化学成分組成,5[Cr]+5[Mo]+5[Mn]+2[Ni],焼結体の密度,引張強度および疲労強度を表2に示す。
【0075】
【表1】
【0076】
【表2】
【0077】
表2より明らかなように、母粉の断面円形度係数が小さい方が、疲労強度に優れていることが分る。そして、断面円形度係数が0.56以下となると、疲労強度が改善されていることが認められた。
【0078】
(実施例2)
断面円形度係数が0.56以下であり、合金の化学成分組成が異なる母粉に、実施例1と同様の条件で引張試験片と回転曲げ疲労試験片を作製し、引張試験および疲労試験を実施した。ここで用いた母粉の化学成分組成,添加成分および添加量を表3に示すと共に、焼結体の化学成分組成,5[Cr]+5[Mo]+5[Mn]+2[Ni],焼結体の密度,引張強度および疲労強度を表4に示す。
【0079】
【表3】
【0080】
【表4】
【0081】
これらの結果より明らかな様に、5[Cr]+5[Mo]+5[Mn]+2[Ni]の値が19%以上であると、引張強度が100kgf/mm2以上が得られることがわかる。そして、No.17,18の焼結体は炭素量が0.4〜0.6の範囲を満足しないため、また、No.14,19,20の焼結体は5[Cr]+5[Mo]+5[Mn]+2[Ni]の値が19未満であるため、希望する引張強度が得られていない。
【0082】
さらに、No.2および5〜12の焼結体では疲労強度が27kgf/mm2以上となっているのに対して、No.13,16の焼結体では合金化微粉末やニッケル粉を単独で混合しているため、また、No.15の焼結体では合金化微粉末の添加量が3%を超えているため、所望の疲労強度が得られていない。さらに、No.21の焼結体ではNi含有量が6.2%を超えているため、所望の疲労強度が得られていないことが認められた。
【0083】
(実施例3)
次に、上記No.2,8,9,13およびNo.16〜18の焼結体におけるマルテンサイト組織の硬さを測定した。このとき、マイクロビッカース硬度計の荷重を100gとし、10点を測定してその平均値をマルテンサイトの硬さ(MHV100g)とした。表5に測定結果を示す。
【0084】
【表5】
【0085】
表5より明らかであるように、No.2,8,9の焼結体ではマルテンサイトの硬さが600(MHV100g)以上であるのに対して、No.16の焼結体では焼結体中の炭素量が少ないため600(MHV100g)より低くなっている。また、No.13,18の焼結体では硬さは600(MHV100g)を満足しているものの疲れ強さが27kgf/mm2より小さいため満足しないものとなっている。よって、焼結体の炭素量は0.4〜0.6%の範囲にするのが良いことがわかる。一方、No.16の焼結体ではNi粉のみ合金化させたものであるため、硬さは600(MHV100g)を得られていない。
【0086】
さらに、No.2,13の焼結体について、ブロックオンリング式摩耗試験を行った。このとき、耐摩耗性を評価するため4%Ni−1.5%Cu−0.5%Mo拡散型鋼粉の浸炭材(No.22)についても調査した。この浸炭材(No.22)の作製および大越式摩耗試験条件は以下の通りである。
【0087】
[No.22浸炭材の作製方法]
黒鉛粉およびステアリン酸亜鉛をそれぞれ0.6%,0.75%混合し、10%の水素を含む窒素雰囲気中、1240℃で50分間焼結した。その後、カーボンポテンシャル(C.P.)=1.1%に調整した920℃のRXガス雰囲気中で2時間保持し、浸炭焼入れを施した。その後180℃で1時間焼戻しを行った。
【0088】
[摩耗試験方法]
摩耗試験はブロックオンリング式の摩耗試験機で行った。試験条件は次の通りであり、評価素材でブロックを作り、相手材をリングとした。
このように実施例のものでは比較例のものに比べて摩耗が少ないことが認められた。
【0089】
(実施例4)
原料粉末として、断面円形度係数が0.56である1Mo−0.5Niプレアロイ型鋼粉を母粉とし、これに合金化微粉末(14%Mn−15%Cr−8%Mo−7%Cu−残部Ni;平均粒径:11.4μm)2%とニッケル粉末4%を添加し、さらに黒鉛粉0.5%を添加し、潤滑剤として0.75%のステアリン酸亜鉛を加え、30分間ミキサーで混合した後、6t/cm2の圧力で成形し、この圧粉成形体を10%の水素を含む窒素雰囲気中1140℃で60分間焼結した。
【0090】
焼結後、JIS 14A号形状の引張試験片とJIS 1号回転曲げ疲労試験片に機械加工し、引張試験および疲労試験を実施すると共に、マルテンサイト組織の硬さを測定した。焼結体の化学成分組成を表6に示すと共に、焼結体の密度,引張強度,回転曲げ疲労強度およびマルテンサイト組織の硬さを表7に示す。
【0091】
【表6】
【0092】
【表7】
【0093】
表6および表7より明らかな様に、Cuを含有させた場合においても引張強度および疲労強度が高く且つ硬さも十分得られていることが分る。
【図面の簡単な説明】
【図1】5[Cr]+5[Mo]+5[Mn]+2[Ni]量と引張強度の関係を例示するグラフである。
Claims (7)
- 合金成分を1.5〜4.5%(重量%の意味、以下同じ)の範囲で含むプレアロイ型鋼粉を母粉とし、これにNi:40〜70%,Cr:5〜20%,Mo:5〜20%およびMn:5〜20%,Cuおよび/またはSi:単独または合計で5〜15%の化学成分組成を有し、これらが合金化された合金化微粉末が混合され、さらにニッケル粉末が混合された粉末冶金用混合粉末であって、
下記式(1)によって計算される前記母粉の断面円形度係数が0.56以下であり、
当該混合粉末中に占める合金化微粉末の割合が1〜3%であると共に、
当該混合粉末中の化学成分組成が下記(2)式および(3)式を満足することを特徴とする粉末冶金用混合粉末。
断面円形度係数=4π×S/L 2 ・・・(1)
(式中のSは面積、Lは周囲長を示す)
5[Cr]+5[Mo]+5[Mn]+2[Ni]≧19% ・・・(2)
[Ni]<6.2% ・・・(3)
(式中の[Cr],[Mo],[Mn],[Ni]は各々Cr,Mo,Mn,Niの含有量(重量%)を示す) - 前記母粉が、Ni:0.3〜2.5%,Cr:0.3〜3.5%,Mo:0.3〜3.5%及びMn:0.3〜3.5%よりなる群から選択される1種以上の合金成分を含み、残部がFeおよび不可避不純物からなり、該不可避不純物中のO,C,SiをそれぞれO:0.3%以下、C:0.02%以下、Si:0.1%以下に抑制したものである請求項1に記載の粉末冶金用混合粉末。
- 前記母粉が、Ni:0.3〜2.5%,Cr:0.3〜3.5%,Mo:0.3〜3.5%及びMn:0.3〜3.5%よりなる群から選択される1種以上の合金成分と、V:0.01〜1%,Nb:0.01〜0.15%及びTi:0.01〜0.1%よりなる群から選択される1種以上の合金成分を含み、残部がFe及び不可避不純物からなり、該不可避不純物中のO,C,SiをそれぞれO:0.3%以下、C:0.02%以下、Si:0.1%以下に抑制したものである請求項1に記載の粉末冶金用混合粉末。
- 混合粉末中に占めるニッケル粉末の割合が2〜5%である請求項1ないし3のいずれかに記載の粉末冶金用混合粉末。
- 請求項1ないし4のいずれかに記載の混合粉末と黒鉛粉との圧粉成形焼結体よりなり、炭素含有量が0.4〜0.6%であると共に、マイクロビッカースの硬さが600以上であることを特徴とする鉄系焼結体。
- 請求項1ないし4のいずれかに記載の混合粉末に黒鉛粉を混合し、この混合粉を圧粉成形し焼結することを特徴とする鉄系焼結体の製造方法。
- 焼結時の温度が1050〜1250℃である請求項6に記載の鉄系焼結体の製造方法。
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