JP4174894B2 - プラズマディスプレーパネル前面ガラス板用透明誘電体材料 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明はプラズマディスプレーパネル用誘電体材料に関し、特に前面ガラス板に高歪点ガラスを用いたプラズマディスプレーパネルの透明誘電体層の形成に用いられる誘電体材料に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
プラズマディスプレーパネルの前面ガラス板には、プラズマ放電用の電極が形成され、その上に放電維持のために透明な誘電体層が形成される。前面ガラス板は、ソーダライムガラスや高歪点ガラスからなり、また透明誘電体層は高鉛ガラス粉末を主成分とする誘電体材料を用いて形成される。誘電体層の形成に当たっては、電極との反応を抑えるために、ガラスの軟化点付近の温度域で焼成される。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
上記した誘電体材料は、▲1▼熱膨張係数がガラス板に適合すること、▲2▼500〜600℃で焼成できること、▲3▼誘電体層は高い耐電圧を有するとともに、高い透明性を有する必要があるため、焼成時に泡が抜けやすく、また泡が残存する場合も大きな泡が存在しないこと等の特性を満たすことが重要である。
【0004】
このような条件を満たすものとして、本出願人は特開平11−21148号において、高歪点ガラスに適合する熱膨張係数を有し、しかも軟化点付近の粘性変化が急(ショートなガラス)であるために泡が抜けやすいPbO−B2O3−SiO2−ZnO−BaO系ガラスを用いた誘電体材料を開示している。
【0005】
しかしながら上記材料は、泡が抜けやすいために透明性に優れる誘電体層を形成できるものの、30μmクラスの大泡が残存してしまうという欠点がある。
【0006】
本発明の目的は、高歪点ガラスに適合した熱膨張係数を有し、軟化点付近の温度域で焼成しても泡が抜けやすく、しかも大泡が残存しない透明誘電体層を形成することが可能なプラズマディスプレーパネル前面ガラス板用透明誘電体材料を提供することである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明のプラズマディスプレーパネル前面ガラス板用透明誘電体材料は、ガラス粉末90〜100重量%と、セラミック粉末0〜10重量%からなるプラズマディスプレーパネル前面ガラス板用透明誘電体材料において、ガラス粉末が重量百分率でBaO 15〜45%、ZnO 26〜45%、B2O3 15〜35%、SiO2 3〜15%、PbO 0〜24.5%の組成を含有することを特徴とする。
【0008】
【作用】
本発明者等の検討によれば、ガラスの粘性変化が急激すぎると、焼成初期の比較的低い温度で大半の泡が抜けるものの、この時点で抜けずに残った泡が温度上昇に伴って大泡に成長しやすくなる。
【0009】
そこで本発明のプラズマディスプレーパネル前面ガラス板用透明誘電体材料は、PbOを24.5%以下に制限して粘性変化を比較的緩やかにするとともに、PbOの低減による熱膨張係数の低下をBaOの増加で補うことを特徴とする。
【0010】
以下、本発明を具体的に説明する。
【0011】
本発明のプラズマディスプレーパネル前面ガラス板用透明誘電体材料は、BaO−ZnO−B2O3−SiO2系ガラス粉末を主成分とする。このガラス粉末の組成範囲を上記のように限定した理由を述べる。
【0012】
BaOは脱泡性に影響を与える高温粘性を調整するとともに、熱膨張係数を上昇させる成分であり、その含有量は15〜45%、好ましくは20.5〜40%である。BaOが15%より少ないと脱泡性が低下し、またガラスの熱膨張係数が低くなりすぎて高歪点ガラスのそれと適合しなくなる。一方、BaOが45%より多いと熱膨張係数が高くなりすぎて高歪点ガラスに適合しなくなる。
【0013】
ZnOは軟化点を低下させるとともに、熱膨張係数を調整する成分であり、その含有量は26〜45%、好ましくは26〜42%である。ZnOが26%より少ないと上記効果を得ることができず、45%より多いと熱膨張係数が低くなりすぎる。
【0014】
B2O3はガラスの骨格を形成するとともにガラス化範囲を広げる成分であり、その含有量は15〜40%、好ましくは16〜33%である。B2O3が15%より少ないと、焼成時にガラスが結晶化しやすくなり、40%より多いとガラスの軟化点が高くなりすぎて600℃以下での焼成が困難になる。
【0015】
SiO2はガラスの骨格を形成する成分であり、その含有量は3〜15%、好ましくは4〜13%である。SiO2 が3%より少ないと焼成時にガラスが結晶化しやすくなる。一方、15%より多いと軟化点が高くなりすぎ、またガラスの粘性変化が緩やかになりすぎて泡が抜けにくくなる。
【0016】
PbOは軟化点を下げる成分であり、その含有量は0〜24.5%、好ましくは0〜24%である。PbOが24.5%より多いと粘性変化が急激になりすぎて泡が成長し易くなり、焼成後に30μmクラスの大泡が残存してしまう。
【0017】
さらにPbO、B2O3、SiO2の割合は、重量比でPbO/(B2O3+SiO2)が1未満、特に0.9未満であることが好ましい。この値が1以上になると粘性変化が急激になってガラス中に残った泡が成長し、30μmクラスの大泡が発生しやすくなる。
【0018】
またPbOとBaOの割合を、重量比でPbO/BaOが1.5以下、特に1.3以下に調整すると、高歪点ガラスに適した熱膨張係数を得やすくなり好ましい。
【0019】
また上記成分の他にも、例えば熱膨張係数を高めるためにCaOやMgOを合量で10%まで、Ag電極及びその近傍の誘電体層の黄変防止や、誘電体層の青色着色のためにCuOを2%まで含有させても良い。
【0020】
ガラス粉末の粒度は、平均粒径D50が3.0μm以下、最大粒径DMAXが20μm以下であることが好ましい。平均粒径D50又は最大粒径DMAXがその上限を超えると、粉末間の隙間が大きくなるために大泡が残存しやすくなる。
【0021】
本発明のプラズマディスプレーパネル前面ガラス板用透明誘電体材料は、焼成後の強度の改善や外観の調節のために、上記ガラス粉末に加えて、アルミナ、ジルコン、ジルコニア、酸化チタン等のセラミック粉末を添加することができる。なおセラミック粉末の最大粒径DMAXは15μm以下であることが好ましい。
【0022】
ガラス粉末とセラミック粉末の割合は、ガラス粉末90〜100重量%、セラミック粉末0〜10重量%である。なおセラミック粉末が10%より多いと可視光が散乱して不透明になりやすく好ましくない。
【0023】
【実施例】
以下、実施例に基づいて本発明を説明する。
【0024】
表1、2は、本発明の実施例(試料No.1〜8)及び比較例(試料No.9)を示している。
【0025】
【表1】
【0026】
【表2】
【0027】
各試料は次のようにして調製した。まず表に示す組成となるようにガラス原料を調合し、白金坩堝に入れて1300℃で2時間溶融した後、溶融ガラスを薄板状に成形した。次いでこれを粉砕し、分級して平均粒径D50が3.0μm以下、最大粒径DMAXが20μm以下のガラス粉末からなる試料を得、ガラスの転移点及び軟化点を測定した。さらにNo.8のガラス粉末についてはアルミナ粉末と混合して試料とした。なお平均粒径D50及び最大粒径DMAXは、日機装株式会社製のレーザー回折式粒度分布計「マイクロトラックSPA」を用いて確認した。
【0028】
得られた試料について、熱膨張係数、焼成温度、焼成後のガラス膜厚、550nmにおける分光透過率、ガラス膜中に残存する直径30μm以上の大泡の個数を評価した。結果を各表に示す。
【0029】
表から明らかなように、実施例であるNo.1〜8の各試料は、ガラス転移点が485〜515℃、軟化点が580〜620℃であり、軟化点と転移点の温度差は95〜105℃であった。また熱膨張係数が74〜82×10-7/℃、焼成温度が570〜600℃、焼成後のガラス膜の膜厚が28〜34μm、550nmにおける透過率が79%以上、大泡が3個以下であった。一方、比較例であるNo.9の試料は、転移点が480℃、軟化点が570℃であり、軟化点と転移点の温度差が90℃と小さい、即ち焼成温度域における粘性変化が急激すぎるために泡が大きく成長しやすく、このため大泡の個数が15個と多かった。
【0030】
なおガラスの転移点及び軟化点はマクロ型示差熱分析計を用いて測定し、第一の変曲点の値を転移点、第四の変曲点の値を軟化点とした。熱膨張係数は、各試料を粉末プレス成型し、焼成した後、直径4mm、長さ40mmの円柱状に研磨加工し、JIS R3102に基づいて測定した後、30〜300℃の温度範囲における値を求めた。ガラス膜厚、透過率及び大泡数は次のようにして測定した。まず各試料をエチルセルロースの5%ターピネオール溶液に混合し、3本ロールミルにて混練してペースト化した。次いでこのペーストを、約30μmのガラス膜が得られるように、高歪点ガラス板(熱膨張係数83×10-7/℃)の上にスクリーン印刷法で塗布し、電気炉中に入れた後、焼成温度で10分間保持した。このようにして得られたガラス膜は、デジタルマイクロメータにて膜厚を確認した。透過率測定は、ガラス膜の形成されたガラス板を試料側にセットし、分光光度計の積分球を用いて550nmにおける透過率を測定した。大泡の個数は、焼成されたガラス膜の表面を実体顕微鏡(30倍)にて観察し、3×4cmの範囲の30μm以上の大泡をカウントした。
【0031】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明のプラズマディスプレーパネル前面ガラス板用透明誘電体材料は、高歪点ガラスに適合する熱膨張係数を有している。しかも軟化点付近の温度域で焼成しても泡が抜けやすく、また大泡が発生しにくいために、透明性に優れ、耐電圧の高い透明誘電体層を得ることができる。
【0032】
それゆえ高歪点ガラスを前面ガラス板に用いたプラズマディスプレーパネルの透明誘電体形成材料として好適である。
Claims (4)
- ガラス粉末90〜100重量%と、セラミック粉末0〜10重量%からなるプラズマディスプレーパネル前面ガラス板用透明誘電体材料において、ガラス粉末が重量百分率でBaO 15〜45%、ZnO 26〜45%、B2O3 15〜35%、SiO2 3〜15%、PbO 0〜24.5%の組成を含有することを特徴とするプラズマディスプレーパネル前面ガラス板用透明誘電体材料。
- PbO、B2O3、SiO2の割合が、重量比でPbO/(B2O3+SiO2)<1の関係にあることを特徴とする請求項1に記載のプラズマディスプレーパネル前面ガラス板用透明誘電体材料。
- PbOとBaOの割合が、重量比でPbO/BaO≦1.5の関係にあることを特徴とする請求項1または2に記載のプラズマディスプレーパネル前面ガラス板用透明誘電体材料。
- ガラス粉末の粒度は、平均粒径D50が3.0μm以下、最大粒径DMAXが20μm以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のプラズマディスプレーパネル前面ガラス板用透明誘電体材料。
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