JP2011219334A - プラズマディスプレイパネル用誘電体形成ガラスペースト - Google Patents
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Abstract
【課題】600℃以下の温度で十分に焼成でき、より低い誘電率と高い透過率を有する誘電体層を得ることが可能なプラズマディスプレイパネル用誘電体形成ガラスペーストを提供することである。
【解決手段】本発明のプラズマディスプレイパネル用誘電体形成ガラスペーストは、B2O3−SiO2系ガラス粉末、シロキサン樹脂及び溶剤を含むプラズマディスプレイパネル用誘電体形成ガラスペーストであって、D線(波長587.6nm)におけるB2O3−SiO2系ガラス粉末とシロキサン樹脂との屈折率差が絶対値で0.1未満であることを特徴とする。
【選択図】なし
【解決手段】本発明のプラズマディスプレイパネル用誘電体形成ガラスペーストは、B2O3−SiO2系ガラス粉末、シロキサン樹脂及び溶剤を含むプラズマディスプレイパネル用誘電体形成ガラスペーストであって、D線(波長587.6nm)におけるB2O3−SiO2系ガラス粉末とシロキサン樹脂との屈折率差が絶対値で0.1未満であることを特徴とする。
【選択図】なし
Description
本発明は、プラズマディスプレイパネル用誘電体形成ガラスペーストに関するものである。
プラズマディスプレイは、自己発光型のフラットパネルディスプレイであり、軽量薄型、高視野角等の優れた特性を備えており、また大画面化が可能であることから、急速に市場が拡大している。
プラズマディスプレイパネルは、前面ガラス基板と背面ガラス基板とが一定の間隔で対向しており、その周囲が封着ガラスで気密封止された構造を有している。尚、前面ガラス基板の外面側には、前面ガラス基板を保護するための保護板が貼り付けられ、保護板の上にはカラーフィルタが取り付けられている。また、パネル内部にはNe、Xe等の希ガスが充填されている。
上記用途に供される前面ガラス基板には、プラズマ放電用の走査電極が形成され、その上には走査電極を保護するために、10〜40μm程度の誘電体層(透明誘電体層)が形成されている。
また、背面ガラス基板には、プラズマ放電の位置を定めるためのアドレス電極が形成され、その上にはアドレス電極を保護するために、10〜20μm程度の誘電体層(アドレス電極保護誘電体層)が形成されている。更に、アドレス電極保護誘電体層上には、放電のセルを仕切るために隔壁が形成され、また、セル内には、赤(R)、緑(G)、青(B)の蛍光体が塗布されており、プラズマ放電を起こして紫外線を発生させることにより、蛍光体が刺激されて発光する仕組みになっている。
一般に、プラズマディスプレイパネルの前面ガラス基板や背面ガラス基板には、ソーダライムガラスや高歪点ガラスが使用されており、走査電極やアドレス電極には、安価なAgやCr−Cu−Crからなる材料が広く用いられている。
また、電極を形成したガラス基板に誘電体層を形成する方法としては、ガラス粉末等の粉末成分、ターピネオール等の溶剤、及びエチルセルロース等の熱可塑性樹脂等を混練して作製した誘電体形成ガラスペーストをスクリーン印刷法等により電極を形成したガラス基板上に塗布し、乾燥した後、焼成する方法が知られている。
尚、ガラス基板への誘電体層の形成にあたっては、ガラス基板の変形を防止し、電極との反応による特性の劣化を抑えるために、500〜600℃程度の温度域で焼成する方法が採られている。それ故、誘電体形成ガラスペーストを構成するガラス粉末には、ガラス基板の熱膨張係数に適合し、500〜600℃で焼成でき、しかも、Ag電極との反応による変色(黄変)がないことが求められている。
また、透明誘電体層においては、上記特性に加え、高い透過率を有することも求められるため、透明誘電体層を形成するための誘電体形成ガラスペーストには、焼成時に泡が抜けやすいことも求められている。
上記の要求特性を満たすものとして、特許文献1に示すようなPbO−B2O3−SiO2系の鉛ガラス粉末を含む誘電体形成ガラスペーストが使用されてきたが、近年、環境保護の高まりや環境負荷物質の使用削減の動きから、特許文献2に示すようなZnO−B2O3−SiO2系非鉛ガラス粉末を含む誘電体形成ガラスペーストも使用されている。
ところで、近年のエコ指向の流れから、プラズマディスプレイパネルにおいても低消費電力化が大きな課題となってきており、低い誘電率を有する誘電体層が強く求められている。
一般に、ガラス粉末と、熱可塑性樹脂、溶剤等を含む誘電体形成ガラスペーストを用いて誘電体層を形成しても、焼成時に熱可塑性樹脂及び溶剤等の有機成分は燃焼してなくなり、得られる誘電体層は、焼結したガラス粉末となるため、誘電体層の誘電率は、ガラスペーストを構成するガラスの誘電率と同一となる。
そのため、誘電体層の誘電率を低下させる方法としては、誘電率の低いガラスからなるガラス粉末を用いればよく、ZnO−B2O3−SiO2系非鉛ガラスにおいて、誘電率を上昇させる成分であるZnOの含有量を少なくし、誘電率を低下させる成分であるB2O3、SiO2の含有量を多くし、ZnO含有量の減少及びB2O3、SiO2の含有量の増加によって生じるガラスの軟化点の上昇を抑制するために、アルカリ金属酸化物を含有させたガラスからなるガラス粉末を用いることが考えられる。
しかしながら、上記のように誘電率を低くしたガラスからなるガラス粉末を用いたとしても、未だ誘電体層の低誘電率化の要求に対して十分に応えられていないのが実情である。
また、この組成系の非鉛ガラスは軟化点が高いため、誘電体層を形成する際の焼成工程でガラス粉末同士の界面に空隙が生じやすくなる傾向にあり、光が散乱しやすく、透過率が低下することがあり、高い透過率を有する誘電体層を得られないこともあった。
本発明の目的は、600℃以下の温度で十分に焼成でき、より低い誘電率と高い透過率を有する誘電体層を得ることが可能なプラズマディスプレイパネル用誘電体形成ガラスペーストを提供することである。
本発明者等は種々の実験を行った結果、B2O3−SiO2系ガラス粉末と、シロキサン樹脂を含有させることで、600℃以下の温度で焼成でき、高い透過率と低い誘電率を有する誘電体層が得られることを見いだし提案するものである。
即ち、本発明のプラズマディスプレイパネル用誘電体形成ガラスペーストは、B2O3−SiO2系ガラス粉末、シロキサン樹脂及び溶剤を含むプラズマディスプレイパネル用誘電体形成ガラスペーストであって、D線(波長587.6nm)におけるB2O3−SiO2系ガラス粉末とシロキサン樹脂との屈折率差が絶対値で0.1未満であることを特徴とする。
本発明のプラズマディスプレイパネル用誘電体形成ガラスペーストは、600℃以下の焼成温度で、低い誘電率を有する誘電体層を形成できる。また、光の散乱を抑えることができ、高い透過率を有する誘電体層を形成できる。それ故、プラズマディスプレイパネル用誘電体形成ガラスペーストとして好適である。
本発明の誘電体形成ガラスペーストでは、ガラスの中では極めて低誘電率であるB2O3−SiO2系ガラス粉末と、ガラス粉末よりも低い誘電率を有するシロキサン樹脂を含有させている。そのため、ガラス粉末よりも低い誘電率を有する誘電体層を得ることができる。
ところで、B2O3−SiO2系ガラス粉末は、ガラスの軟化点が高く、500〜600℃では空隙のない緻密な焼成膜を得難い傾向にある。しかし、本発明では、ガラスと共に使用するシロキサン樹脂は、焼成すると有機ケイ素として残存し、ガラス粉末間の空隙を充填することができ、500〜600℃で容易に緻密な焼成膜を得ことができる。
また、D線における屈折率が絶対値で0.1未満となるようにガラス粉末とシロキサン樹脂とを組み合わせている。そのため、ガラス粉末同士の界面での光の散乱を防止することができ、高い透過率を有する誘電体層を得ることができる。
尚、D線におけるガラス粉末とシロキサン樹脂との屈折率差が大きくなりすぎると、焼結して得られる誘電体層において、焼結したガラス粉末とシロキサン樹脂との界面で光が散乱して透過率が低下する傾向にあり、高い透過率を有する誘電体層が得難くなる。D線におけるガラス粉末とシロキサン樹脂との屈折率差の好ましい範囲は絶対値で0.09以下であり、より好ましい範囲は絶対値で0.08以下である。
また、シロキサン樹脂としては、側鎖であるアルキル基の比率が大きいものを使用することが望ましい。アルキル基の比率の大きいものであれば、シロキサン樹脂の屈折率が高く、ガラス粉末に近似した屈折率となり、焼結して得られる誘電体層において、焼結したガラス粉末とシロキサン樹脂との界面での光の散乱を抑制して高い透過率を有する誘電体層が得やすくなる。また、アルキル基にはメチル基やフェニル基を有するものを使用することができる。
また、本発明のプラズマディスプレイパネル用誘電体形成ガラスペーストに使用するガラス粉末は、低誘電率化が可能なB2O3−SiO2系非鉛ガラスを使用することが重要である。尚、本発明で言う「B2O3−SiO2系非鉛ガラス」とは、実質的にPbOを含まず、B2O3及びSiO2を合量で68モル%以上含有するガラスであることを意味する。
B2O3−SiO2系非鉛ガラスの中でも、実質的にPbOを含まず、モル百分率で、B2O3 26〜50%、SiO2 42〜57%、ZnO 0〜10%、Na2O 0〜10%、K2O 1〜15%、Na2O+K2O 4〜20%の組成を含有するガラスを用いることが好ましい。この組成範囲内のガラスであれば、軟化点が低く、低い誘電率とシロキサン樹脂に近似する屈折率を有するガラスとなりやすく、600℃以下の焼成温度で、低い誘電率と高い透過率を有する誘電体層が得やすくなる。また、ガラス化範囲が広く、安定しているため、ペーストの変質や焼成工程でのガラスの分相による透過率の低下を抑えることができる。
本発明において、ガラスの組成を上記のように限定した理由は、次の通りである。
B2O3はガラスの骨格を形成する成分であり、その含有量は26〜50%である。B2O3の含有量が少なくなりすぎると、ガラスの誘電率が高くなる傾向にあり、低い誘電率を有する誘電体層が得難くなる。また、ガラスの屈折率が大きくなり、ガラス粉末とシロキサン樹脂との屈折率差を小さくし難くなる傾向にあり、ガラス粉末とシロキサン樹脂との界面で光が散乱して高い透過率を有する誘電体層が得難くなる。一方、含有量が多くなりすぎると、ガラスの軟化点が高くなる傾向にあり、600℃以下の温度で焼成し難くなる。また、ガラスの安定性が低下する傾向にあり、誘電体層を焼成する際に、ガラスが分相して高い透過率を有する誘電体層が得られないことがある。B2O3のより好ましい範囲は29〜45%であり、さらに好ましい範囲は30〜38%未満である。
SiO2はガラスの骨格を形成すると共に、誘電率を低下させる成分であり、その含有量は42〜57%である。SiO2の含有量が少なくなりすぎると、ガラスの誘電率が高くなる傾向にあり、低い誘電率を有する誘電体層が得難くなる。また、ガラスの屈折率が大きくなり、ガラス粉末とシロキサン樹脂との屈折率差を小さくし難くなる傾向にあり、ガラス粉末とシロキサン樹脂との界面で光が散乱して高い透過率を有する誘電体層が得難くなる。一方、含有量が多くなりすぎると、ガラスの軟化点が高くなる傾向にあり、600℃以下の温度で焼成し難くなる。また、ガラスの熱膨張係数がガラス基板より小さくなりすぎて、焼成時にガラス基板に反りが発生しやすくなる。SiO2のより好ましい範囲は42.5〜56%であり、さらに好ましい範囲は43〜55%である。
尚、焼成時におけるガラスの分相を抑えて高い透過率を有する誘電体層を得やすくするには、B2O3/SiO2の値をモル比で0.55〜0.88の範囲となるようにすることがより好ましい。B2O3/SiO2の値が小さくなりすぎると、誘電体層の強度が低下する傾向にある。一方、B2O3/SiO2の値が大きくなりすぎると、ガラスの安定性が低下する傾向にあり、誘電体層を形成する際の焼成工程で、ガラスが分相して高い透過率を有する誘電体層が得られないことがある。B2O3/SiO2のさらに好ましい範囲は0.67〜0.85である。
Na2Oはガラスの軟化点を低下させたり、熱膨張係数を調整する成分であり、その含有量は0〜10%である。含有量が多くなりすぎると、電極にAgを用いた場合、誘電体材料とAgが反応し、誘電体層が黄色に変色(黄変)する傾向にあり、画像が見難くなることがある。また、熱膨張係数がガラス基板より大きくなり、ガラス基板の熱膨張係数と整合し難くなる。さらに、ペースト化した際に、ペーストが変質しやすくなる。Na2Oのより好ましい範囲は1〜10%であり、さらに好ましい範囲は1〜8%である。
K2Oはガラスの軟化点を低下させたり、熱膨張係数を調整する成分であり、その含有量は1〜15%である。K2Oの含有量が少なくなりすぎると、ガラスの軟化点が上昇して、600℃以下の温度で焼成し難くなる。一方、含有量が多くなると、電極にAgを用いた場合、誘電体材料とAgが反応し、誘電体層が黄変する傾向にあり、画像が見難くなることがある。また、熱膨張係数がガラス基板より大きくなる傾向にあり、ガラス基板の熱膨張係数と整合し難くなる。さらに、ペースト化した際に、ペーストが変質しやすくなる。K2Oのより好ましい範囲は1〜14%であり、さらに好ましい範囲は4〜12%である。
尚、Agとの反応による誘電体層の黄変を抑え、600℃以下の温度で焼成でき、ガラス基板に適合する熱膨張係数を有するようにするには、Na2O及びK2Oを合量で4〜20%にすることが好ましい。これら成分の合量が少なくなりすぎると、ガラスの軟化点が上昇して、600℃以下の温度で焼成し難くなる。一方、これら成分の合量が多くなりすぎると、電極にAgを用いた場合、誘電体材料とAgが反応し、誘電体層が黄変する傾向にあり、画像が見難くなることがある。また、熱膨張係数がガラス基板より大きくなる傾向にあり、ガラス基板の熱膨張係数と整合し難くなる。さらに、ペースト化した際に、ペーストが変質しやすくなる。これら成分の合量のより好ましい範囲は5〜18%であり、さらに好ましい範囲は6〜15%である。
また、本発明の誘電体材料をAg電極上に形成する場合、誘電体材料とAgとの反応による誘電体層の変色を抑えたい場合には、CuO、MoO3、CeO2、MnO2及びCoOを合量で6%まで含有させることがより好ましい。これら成分の合量が多くなると、これらの成分による誘電体層の着色が生じやすくなる。これら成分の合量のさらに好ましい範囲は0.005〜3%である。尚、これらの成分の中でも、CuOは黄変の抑制効果が最も大きく、CuOを必須成分とすることが望ましく、この場合、CuOの含有量は、0.01〜3.0%(望ましくは0.02〜2.5%)である。また、MoO3、CeO2、MnO2及びCoOはそれぞれ0〜5%(望ましくは0.01〜3%)である。また、焼成条件の変動によるCuOの変色抑制効果のばらつきを抑えるには、CuOの含有量を0.005〜0.20%に制限し、CuO、MoO3、CeO2、MnO2及びCoOを合量で0.005〜6%となるように含有量を調整することが望ましい。
また、焼成時におけるガラスの分相とAgとの反応による誘電体層の黄変を抑えて高い透過率を有する誘電体層を得やすくするには、B2O3/(Na2O+K2O)の値をモル比で2.5〜4.8の範囲となるようにすることがより好ましい。B2O3/(Na2O+K2O)の値が小さくなりすぎると、電極にAgを用いた場合、誘電体材料とAgが反応し、誘電体層が黄変する傾向にあり、画像が見難くなることがある。また、ペースト化した際に、ペーストが変質することがある。一方、B2O3/(Na2O+K2O)の値が大きくなりすぎると、ガラスの安定性が低下する傾向にあり、誘電体層を焼成する際に、ガラスが分相して高い透過率を有する誘電体層が得難くなることがある。B2O3/(Na2O+K2O)のさらに好ましい範囲は2.9〜4.5である。
ZnOはガラスの軟化点を下げる成分であるが、ガラスの誘電率や屈折率を大きくする成分でもあり、その含有量は0〜10%である。含有量が多くなりすぎると、ガラスの誘電率が著しく高くなる傾向にあり、低い誘電率を有する誘電体層が得難くなる。また、ガラスの屈折率が大きくなり、ガラス粉末とシロキサン樹脂との屈折率差が小さくし難くなる傾向にあり、ガラス粉末とシロキサン樹脂との界面で光が散乱して高い透過率を有する誘電体層が得難くなる。ZnOのより好ましい範囲は0〜8%であり、さらに好ましい範囲は0.5〜7%である。
また、本発明の誘電体材料は、上記成分以外にも、要求される特性を損なわない範囲で種々の成分を添加することができる。例えば、ガラスの軟化点を低下させると共に、熱膨張係数を調整する成分であるMgO、CaO、SrO、BaO及びTiO2を合量で15%まで、ガラスの軟化点を低下させるために、Li2O、Cs2O、Rb2O等を合量で10%まで、ガラスを安定化させたり、耐水性や耐酸性を向上させるために、Al2O3、ZrO2、Y2O3、La2O3、Ta2O5、SnO2、WO3、Nb2O5、Sb2O5、P2O5等を合量で10%まで添加することができる。尚、P2O5はガラスを失透させて、透明な焼成膜を得難くする成分でもあるため、その含有量は5%以下にすることが望ましい。
尚、Bi2O3は、ガラスの軟化点を低下させる成分であるため、アルカリ金属酸化物成分の含有量を低減させて、Agとの反応による誘電体層の黄変を生じ難くする成分である。しかし、ガラスの誘電率や屈折率を大きくしたり、コストを著しく上昇させる成分であるため、その含有量は5%以下にすることが好ましく、より好ましくは実質的に含有しないことである。
また、PbOは、ガラスの融点を低下させる成分であるが、環境負荷物質でもあるため、実質的に含有しないことが好ましい。
尚、本発明で言う「実質的に含有しない」とは、積極的に原料として用いず不純物として混入するレベルをいい、具体的には、含有量が0.1%以下であることを意味する。
また、本発明のプラズマディスプレイパネル用誘電体形成ガラスペーストにおけるガラス粉末の粒度は、平均粒径D50が3.0μm以下、最大粒径Dmaxが20μm以下のものを使用することが望ましい。いずれか一方でもその上限を超えると、焼成膜中に大きな泡が残存しやすくなり、安定した耐電圧を有する誘電体層が得難くなるためである。
上記特徴を有するガラス粉末は、誘電体層形成ペースト用として好適であり、後述のように、ペースト化して使用される。
本発明のプラズマディスプレイパネル用誘電体形成ガラスペーストは、上記したガラス粉末、シロキサン樹脂に加え、溶剤からなる。
ガラス粉末は、高い耐電圧を有する誘電体層を形成するための材料であり、その含有量は5〜70質量%である。ガラス粉末の含有量が少なくなりすぎると、高い耐電圧を有する誘電体層が得難くなる。一方、含有量が多くなりすぎると、ガラスペーストの粘度が高くなる傾向にあり、均一で薄いガラスペースト膜を形成し難くなる。ガラス粉末のより好ましい範囲は20〜65質量%である。
シロキサン樹脂は、焼結して得られる誘電体層において、焼結したガラス粉末とシロキサン樹脂との界面での光の散乱を抑制して透過率を高めたり、誘電体層の誘電率を低くする材料であり、その含有量は5〜60質量%である。シロキサン樹脂の含有量が少なくなりすぎると、高い透過率と低い誘電率を有する誘電体層が得難くなる。一方、含有量が多くなりすぎると、焼成工程でシロキサン樹脂の収縮が大きくなりすぎて、誘電体層の剥離が生じやすくなる。シロキサン樹脂のより好ましい範囲は10〜55質量%である。
溶剤は材料をペースト化するための材料であり、その含有量は5〜50質量%である。溶剤の含有量が少なくなりすぎると、ガラス粉末やシロキサン樹脂の含有量が多くなりすぎるため、高い透過率と低い誘電率を有する誘電体層が得難くなる。また、ガラスペーストの粘度が高くなる傾向にあり、均一で薄いガラスペースト膜を形成し難くなる。一方、含有量が多くなりすぎると、高い耐電圧を有する誘電体層が得難くなる。溶剤のより好ましい範囲は15〜45質量%である。尚、溶剤としては、例えばターピネオール、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタジオールモノイソブチレート等を単独または混合して使用することができる。
また、上記成分以外にも、必要に応じて、熱可塑性樹脂、可塑剤、界面活性剤、無機フィラー粉末等を加えることもできる。
熱可塑性樹脂は、乾燥後のガラスペースト膜の強度を高め、また柔軟性を付与する成分であり、0〜20質量%の範囲で添加することができる。但し、熱可塑性樹脂の含有量が多くなりすぎると、脱バインダー性が著しく低下し、焼成膜中に泡が残存しやすくなるため、0〜10質量%の範囲にあることが特に好ましい。熱可塑性樹脂としては、ポリブチルメタアクリレート、ポリビニルブチラール、ポリメチルメタアクリレート、ポリエチルメタアクリレート、エチルセルロース等が使用可能であり、これらを単独あるいは混合して使用することができる。
可塑剤は、塗付膜の乾燥速度をコントロールすると共に、乾燥膜に柔軟性を与える成分であり、0〜10質量%の範囲で添加することができる。但し、可塑剤の含有量が多くなりすぎると、脱バインダー性が著しく低下し、焼成膜中に泡が残存しやすくなるため、0〜5質量%の範囲にあることが特に好ましい。可塑剤としては、ブチルベンジルフタレート、ジオクチルフタレート、ジイソオクチルフタレート、ジカプリルフタレート、ジブチルフタレート等が使用可能であり、これらを単独あるいは混合して使用することができる。
界面活性剤は、ガラス粉末表面の変質を防止し、ペースト中でのガラス粉末の分散性を向上させたり、ガラス粉末表面への樹脂の付着を抑制して、焼成時における脱バインダー性を向上させ、誘電体層の透過率の低下を防ぐ成分であり、0〜10質量%の範囲で添加することができる。但し、非イオン界面活性剤の含有量が多くなりすぎると、逆に、焼成時に、脱バインダー性が低下しやすくなり、誘電体層の透過率が低下するため、0〜6質量%の範囲にあることが特に好ましい。界面活性剤としては、非イオン界面活性剤を用いることが望ましく、具体的には、グリセロールモノステアレート、グリセロールモノラウレート、グリセロールモノオレエート、グリセロールモノパルミテート等のグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンジステアレート、ソルビタントリステアレート、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノオレエート、ソルビタントリオレエート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンセスキオレエート等のソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビタントリステアレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート、ポリオキシエチレンソルビタントリオレエート、ポリオキシエチレンソルビタンモノパルミテート、ポリオキシエチレンソルビタントリイソステアレート、テトラオレイン酸ポリオキシエチレンソルビット等のポリオキシエチレン脂肪酸エステル等が使用可能であり、これらを単独あるいは混合して使用することができる。
無機フィラー粉末は、ペーストの流動性、焼結性、或いは熱膨張係数を調整する成分であり、0〜40質量%の範囲で添加ことができる。但し、無機フィラー粉末の含有量が多くなると、十分に焼結が行えず、緻密な膜を形成することが難しくなるため、0〜30質量%の範囲にあることが特に好ましい。無機フィラー粉末としては、例えばアルミナ、ジルコニア、ジルコン、チタニア、コージエライト、ムライト、シリカ、ウイレマイト、酸化錫、酸化亜鉛等を1種又は2種以上組み合わせて使用することができる。
尚、本発明のプラズマディスプレイパネル用誘電体形成ガラスペーストは、前面誘電体もしくは背面誘電体のいずれの用途においても使用することができる。前面誘電体材料として使用する場合は、上記無機フィラー粉末の含有量を0〜20質量%(好ましくは0〜10質量%)にすることで使用できる。無機フィラー粉末の含有量をこのようにすることで、無機フィラー粉末の添加による可視光の散乱を抑えて透明度の高い焼成膜を得ることができる。また、背面誘電体材料として使用する場合は、上記無機フィラー粉末を0〜40質量%(より好ましくは5〜40質量%、更に好ましくは10〜30質量%)の範囲で含有させることで使用できる。無機フィラー粉末の含有量をこのようにすることで、高い強度を有する焼成膜を得ることができる。
次に、本発明の誘電体形成ガラスペーストを作製する方法を述べる。
まず、ガラス粉末、シロキサン樹脂及び溶剤等を用意する。尚、ガラス粉末は、ボールミルや流体エネルギーミル等を用いて粉砕し、さらに気流分級等により分級して、平均粒径D50が3.0μm以下、最大粒径Dmaxが20μm以下の粒度分布に調整したものを使用することが望ましい。続いて、各成分を所定の割合で混練することによりペースト状の材料を得ることができる。
次に、この材料を用いて誘電体層を形成する方法を説明する。
まず、走査電極が形成された前面ガラス基板やアドレス電極が形成された背面ガラス基板を用意し、これらのガラス基板上に、本発明の誘電体形成ガラスペーストをスクリーン印刷法を用いて、塗付し、所定の膜厚の塗布層を形成する。続いて、塗付膜を80〜120℃程度の温度で乾燥させる。その後、500〜600℃の温度で10〜60分間保持し焼成することで所定の誘電体層を得ることができる。尚、焼成温度が低すぎたり、保持時間が短くなると、十分に焼結が行えず、緻密な膜を形成することが難しくなる。一方、焼成温度が高すぎたり、保持時間が長くなると、ガラス基板が変形したり、電極と誘電体層が反応して、透明性に優れた誘電体層を得難くなる。
以下、本発明のプラズマディスプレイパネル用誘電体形成ガラスペーストを実施例に基づいて詳細に説明する。
表1及び表2は、本発明の実施例(試料No.1〜7)及び比較例(試料No.8〜10)をそれぞれ示している。
表の各試料は、次のようにして調製した。
まず、モル%で表に示すガラス組成となるように原料を調合し、均一に混合した。次いで、白金ルツボに入れて1350℃で2時間溶融した後、溶融ガラスを薄板状に成形した。続いて、これらをボールミルにて粉砕し、気流分級して平均粒径D50が3.0μm以下、最大粒径Dmaxが20μm以下のガラス粉末からなる試料を得た。このようにして得られた各ガラス粉末試料について軟化点、熱膨張係数、誘電率及び屈折率を評価した。
次に、表に示す割合で、ガラス粉末、シロキサン樹脂、溶剤等を混合し、3本ロールミルで均一に混練してペースト化し、次いで、このペーストを、約20μmの焼成膜が得られるようにガラス基板上にスクリーン印刷法で塗布し、乾燥後、電気炉で580℃で60分間保持し焼成して、誘電体層を形成したガラス基板試料を得た。このようにして得られた各試料について、誘電率、透過率を評価した。評価結果を表に示す。
さらに、上記で作製したペーストを用いて、Ag電極が形成されたガラス基板上に、上記と同様にして、誘電体層を形成し黄変の度合いを評価した。評価結果を表に示す。
尚、Ag電極には昭栄化学工業株式会社製のH−4040Aを、また、ガラス基板には、厚み1.8mm、5cm角の日本電気硝子株式会社製PP−8をそれぞれ用いた。
また、シロキサン樹脂としては表に示すものを用い、溶剤としてはターピネオールを用い、熱可塑性樹脂としてはエチルセルロースを用い、可塑剤としてはジブチルフタレートを用いた。
表から明らかなように、実施例である試料No.1〜7は、ガラスの軟化点が605℃以下であり、600℃以下の温度で十分に緻密な焼成膜が得られるものであった。また、熱膨張係数は70〜79×10−7/℃であり、ガラス基板上に誘電体層を形成しても、焼成時にガラス基板に反りが発生しないものであった。また、誘電体層の誘電率は5.5以下と低いものであった。さらに、透過率は84%以上と高いものであった。また、b*が+3.6以下であり、Ag電極との反応による黄変も殆どないものであった。
これに対し、比較例である試料No.8及び10は、誘電体層の誘電率が6.1以上と高いものであった。また、試料No.9は、誘電体層の透過率が70%と低いものであった。
尚、ガラス粉末の軟化点については、マクロ型示差熱分析計を用いて測定し、第四の変曲点の値を軟化点とした。
ガラス粉末の熱膨張係数については、各ガラス粉末試料を粉末プレス成型し、600℃、10分間焼成した後、直径4mm、長さ20mmの円柱状に研磨加工し、JIS R3102に基づいて測定し、30〜300℃の温度範囲における値を求めた。尚、プラズマディスプレイパネルに用いられているガラス基板の熱膨張係数は83×10−7/℃程度であり、誘電体材料の熱膨張係数が65〜80×10−7/℃であれば、ガラス基板の熱膨張係数と整合し、ガラス基板上に誘電体層を形成しても、焼成時にガラス基板に反りが発生しないものとなる。
ガラス粉末の誘電率については、各ガラス粉末試料を粉末プレス成型し、600℃で10分間焼成した後、2mmの板状体に研磨加工し、JIS C2141に基づいて測定し、25℃、1MHzにおける値を求めた。
ガラス粉末の屈折率は、溶融ガラスを薄板状に成形する際に、溶融ガラスの一部をブロック状に成形し、精密屈折率計を用いて、Vブロック法によりD線(波長587.6nm)におけるガラスの屈折率を測定し、その値をガラス粉末の屈折率とした。
シロキサン樹脂の屈折率については、約1μmの乾燥させた樹脂膜が得られるようにガラス基板上にシロキサン樹脂を塗布し、エリプソメーターを用いて、D線(波長587.6nm)におけるガラスの屈折率を測定し、その値をシロキサン樹脂の屈折率とした。
誘電体層の誘電率については、各ガラスペースト試料を約20μmの焼成膜が得られるようにガラス基板上にスクリーン印刷法で塗布し、乾燥後、580℃で60分間焼成した後、JIS C2141に基づいて測定し、25℃、1MHzにおける値を求めた。
誘電体層の透過率については、波長550nmにおける直線透過率を、積分球を取り付けた分光光度計を用いて測定した。尚、透過率測定は島津製作所製U−4000にて行い、ガラス板の透過率の値をキャンセルした後の値を示した。尚、透過率の値が大きくなるほど、透明性に優れていることを示す。
黄変の度合いについては、誘電体層の色調を色彩色差計にてb*値を測定し評価した。尚、b*値が大きくなるほど、黄色に変色していることを示す。
Claims (4)
- B2O3−SiO2系ガラス粉末、シロキサン樹脂及び溶剤を含むプラズマディスプレイパネル用誘電体形成ガラスペーストであって、D線(波長587.6nm)におけるB2O3−SiO2系ガラス粉末とシロキサン樹脂との屈折率差が絶対値で0.1未満であることを特徴とするプラズマディスプレイパネル用誘電体形成ガラスペースト。
- 質量百分率で、B2O3−SiO2系ガラス粉末5〜70%、シロキサン樹脂5〜60%、溶剤5〜50%含有することを特徴とする請求項1に記載のプラズマディスプレイパネル用誘電体形成ガラスペースト。
- さらに、質量百分率で、熱可塑性樹脂0〜20%、可塑剤0〜10%、界面活性剤0〜10%、無機フィラー粉末0〜40%含有することを特徴とする請求項1または2に記載のプラズマディスプレイパネル用誘電体形成ガラスペースト。
- B2O3−SiO2系ガラス粉末が、実質的にPbOを含まず、モル百分率で、B2O3 26〜50%、SiO2 42〜57%、ZnO 0〜10%、Na2O 0〜10%、K2O 1〜15%、Na2O+K2O 4〜20%の組成を含有するガラスからなることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のプラズマディスプレイパネル用誘電体形成ガラスペースト。
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