JP4114121B2 - プラズマディスプレーパネル用材料及びガラス組成物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明はプラズマディスプレーパネル用材料に関し、特にプラズマディスプレーパネルの透明誘電体層の形成に用いられるプラズマディスプレーパネル用材料に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
プラズマディスプレーパネルは、自己発光型のフラットディスプレーであり、軽量薄型、高視野角等の優れた特性を備えており、また大画面化が可能であることから、最も将来性のある表示装置の一つとして注目されている。
【0003】
このプラズマディスプレーパネルの前面ガラス板には、プラズマ放電用の走査電極が形成され、その上に放電維持のために膜厚約30〜40μmの透明な誘電体層が形成される。走査電極にはAgが広く用いられ、また透明誘電体層はガラス粉末を主成分とする誘電体材料を用いて形成される。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来の誘電体材料では、ガラスとAg電極が反応して誘電体層が黄色に着色(黄変)する現象が生じ、透過率が低下するという問題がある。
【0005】
本発明の目的は、Ag電極との反応による黄変が起こりにくく、誘電体層の形成に好適なプラズマディスプレーパネル用材料とガラス組成物を提供することである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明のプラズマディスプレーパネル用ガラス組成物は、重量百分率でBaO+CaO+Bi 2 O 3 2〜45%、ZnO 5〜45%、B 2 O 3 10〜40%、SiO 2 1〜15%、PbO 0〜55%、P 2 O 5 0.2〜20%の組成を含有することを特徴とする。
【0007】
また本発明のプラズマディスプレーパネル用材料は、前記プラズマディスプレーパネル用ガラス組成物からなるガラス粉末を構成成分として含み、プラズマディスプレーパネルの誘電体層の形成に用いられることを特徴とする。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明のプラズマディスプレーパネル用材料は、P2O5を0.2〜20重量%含有するガラス粉末を主成分とする。P2O5を上記範囲で含むことにより、電極材にAgを使用した場合でも、形成される誘電体層が黄色に黄変しにくく、高い透過率を得ることができる。
【0009】
また誘電体用途には、電極との反応性以外にも、▲1▼熱膨張係数がガラス板に適合すること、▲2▼500〜600℃で焼成できること、▲3▼誘電体層は高い耐電圧を有するとともに、高い透明性を有する必要があるため、泡が少ないこと等の特性を満たすことが重要である。
【0010】
このような条件を満たすガラス粉末として、重量百分率でBaO+CaO+Bi2O3 2〜45%、ZnO 5〜45%、B2O3 10〜40%、SiO2 1〜15%、PbO 0〜55%、P2O5 0.2〜20%の組成を有するものを使用することができる。また上記成分の他にも、例えば黄変をより一層抑える目的でCuO、Bi2O3、Sb2O3、CeO2を合量で3%まで添加しても良い。なおこのガラス組成物は、Ag電極が形成された前面ガラス基板の透明誘電体層形成用として好適なものであるが、この用途に限られるものではなく、例えばCr−Cu−Cr電極が形成された前面ガラス基板の透明誘電体層形成材料や、背面ガラス基板のアドレス保護誘電体形成材料や、隔壁材料等にも使用することができる。
【0011】
上記範囲の中でも、BaO+CaO+Bi2O3 2〜20%、ZnO 5〜35%、B2O3 10〜40%、SiO2 1〜15%、PbO 25〜55%、P2O5 0.2〜20%の組成を有するもの(ガラスA)や、BaO 15〜45%、ZnO 20〜45%、B2O3 15〜35%、SiO2 3〜15%、PbO 0〜24.5%、P2O5 0.2〜20%の組成を有するもの(ガラスB)が好適に使用できる。
【0012】
ガラスAは、軟化点付近の粘性変化が急(ショートなガラス)であり、泡の大半が焼成初期の比較的低い温度で抜けるため、残存泡数が少ないという特徴がある。以下、ガラスAの組成範囲を限定した理由を述べる。
【0013】
BaO、CaO、及びBi2O3は、軟化点を低下させるとともに、脱泡性に影響する高温粘性を調整するための成分であり、その含有量は合量で2〜20%、好ましくは3〜18%である。これら成分の合量が2%より少ないと上記効果を得ることが困難になり、20%より多いと軟化点が低下しすぎて焼成時に発泡しやすくなるとともに、熱膨張係数が高くなりすぎる。
【0014】
ZnOは熱膨張係数を低下させるとともに、軟化点を下げる成分であり、その含有量は5〜35%、好ましくは10〜30%である。ZnOが5%より少ないと上記効果を得ることができず、35%より多いと焼成時に失透しやすくなる。
【0015】
B2O3はガラス化範囲を広げる成分であり、その含有量は10〜40%、好ましくは15〜35%である。B2O3が10%より少ないとガラス化が困難になり、40%より多いとガラスが分相しやすくなって好ましくない。
【0016】
SiO2はガラスの骨格を形成する成分であり、その含有量は1〜15%、好ましくは2〜13%である。SiO2 が1%より少ないとガラス化が困難になり、15%より多いと軟化点が高くなりすぎ、またガラスの粘性変化が緩やかになりすぎて泡が抜けにくくなる。
【0017】
PbOは軟化点を下げる成分であり、その含有量は25〜55%、好ましくは30〜50%である。PbOが25%より少ないと軟化点が高くなり、焼成後にガラス中に泡が多数残存しやすくなり、55%より多いと熱膨張係数が高くなりすぎる。
【0018】
P2O5の含有量は0.2〜20%、好ましくは1〜15%である。P2O5が0.2%より少ないとその効果がなく、20%より多いとガラスの耐水性が悪くなる。
【0019】
また(ガラスB)は、焼成初期に抜けずに残った泡が、温度上昇に伴って大泡に成長しないように、ガラスAに比べて粘性変化が緩やかになるように調整したものである。このためガラスAよりも大泡の数を少なくできるというメリットがある。以下、ガラスBの組成範囲を上記のように限定した理由を述べる。
【0020】
BaOは脱泡性に影響を与える高温粘性を調整するとともに、熱膨張係数を上昇させる成分であり、その含有量は15〜45%、好ましくは20.5〜40%である。BaOが15%より少ないと脱泡性が低下し、またガラスの熱膨張係数が低くなりすぎて高歪点ガラスのそれと適合しなくなる。一方、BaOが45%より多いと熱膨張係数が高くなりすぎて高歪点ガラスに適合しなくなる。
【0021】
ZnOは軟化点を低下させるとともに、熱膨張係数を調整する成分であり、その含有量は20〜45%、好ましくは22〜42%である。ZnOが20%より少ないと上記効果を得ることができず、45%より多いと熱膨張係数が低くなりすぎる。
【0022】
B2O3はガラスの骨格を形成するとともにガラス化範囲を広げる成分であり、その含有量は15〜40%、好ましくは16〜33%である。B2O3が15%より少ないと、焼成時にガラスが結晶化しやすくなり、40%より多いとガラスの軟化点が高くなりすぎて600℃以下での焼成が困難になる。
【0023】
SiO2はガラスの骨格を形成する成分であり、その含有量は3〜15%、好ましくは4〜13%である。SiO2 が3%より少ないと焼成時にガラスが結晶化しやすくなる。一方、15%より多いと軟化点が高くなりすぎ、またガラスの粘性変化が緩やかになりすぎて泡が抜けにくくなる。
【0024】
PbOは軟化点を下げる成分であり、その含有量は0〜24.5%、好ましくは0〜24%である。PbOが24.5%より多いと粘性変化が急激になりすぎて泡が成長し易くなり、焼成後に30μmクラスの大泡が残存してしまう。
【0025】
P2O5の含有量は0.2〜20%、好ましくは1〜15%である。P2O5が0.2%より少ないとその効果がなく、20%より多いとガラスの耐水性が悪くなる。
【0026】
本発明において使用するガラス粉末の粒度は、平均粒径D50が3.0μm以下、最大粒径DMAXが20μm以下であることが好ましい。平均粒径D50又は最大粒径DMAXがその上限を超えると、粉末間の隙間が大きくなるために大泡が残存しやすくなる。
【0027】
また本発明のプラズマディスプレーパネル用材料は、焼成後の強度の改善や外観の調節のために、上記ガラス粉末に加えて、アルミナ、ジルコン、ジルコニア、酸化チタン等のセラミック粉末を添加することができる。なおセラミック粉末の最大粒径DMAXは15μm以下であることが好ましい。
【0028】
ガラス粉末とセラミック粉末の割合は、ガラス粉末90〜100重量%、セラミック粉末0〜10重量%である。なおセラミック粉末が10%より多いと可視光が散乱して不透明になりやすく好ましくない。
【0029】
次に本発明のプラズマディスプレーパネル材料の使用方法を説明する。この材料は、例えばペーストやグリーンシートの形態で使用することができる。
【0030】
ペーストの形態で使用する場合、上述したガラス粉末やセラミック粉末とともに、樹脂、可塑剤、溶剤等を使用する。
【0031】
ガラス粉末及びセラミック粉末の含有量は30〜90重量%、特に50〜80重量%の範囲にあることが好ましい。
【0032】
樹脂は、乾燥後の膜強度を高め、また柔軟性を付与する成分であり、その含有量は0.1〜20重量%、特に0.5〜10重量%の範囲にあることが好ましい。樹脂としてはポリブチルメタアクリレート、ポリビニルブチラール、ポリメチルメタアクリレート、ポリエチルメタアクリレート、エチルセルロース等が使用可能であり、これらを単独あるいは混合して使用する。
【0033】
可塑剤は、乾燥速度をコントロールするとともに、乾燥膜に柔軟性を与える成分であり、その含有量は0〜10重量%、特に0〜9重量%の範囲にあることが好ましい。可塑剤としてはブチルベンジルフタレート、ジオクチルフタレート、ジイソオクチルフタレート、ジカプリルフタレート、ジブチルフタレート等が使用可能であり、これらを単独あるいは混合して使用する。
【0034】
溶剤は材料をペースト化するための成分であり、その含有量は10〜30重量%、特に15〜25重量%の範囲にあることが好ましい。溶剤としては、例えばターピネオール、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタジオールモノイソブチレート等を単独または混合して使用することができる。
【0035】
上記材料を用いてペーストを作製するには、まずガラス粉末、セラミック粉末、樹脂、可塑剤、溶剤等を用意し、続いて各成分を所定の割合で混練すればよい。
【0036】
続いてこのペーストを用いて誘電体層を形成する方法の一例について説明する。まず、プラズマディスプレーパネルに用いられる前面ガラス板を用意する。次にペーストをスクリーン印刷法や一括コート法等を用いて塗布し、膜厚30〜100μmの塗布層を形成する。なお前面ガラス板には予め電極が形成されており、ペーストの塗布はその上に行う。続いて塗布層を80〜120℃程度の温度で乾燥させる。その後、500〜600℃で5〜15分間焼成することにより、誘電体層を形成することができる。
【0037】
グリーンシートの形態で使用する場合、上記ガラス粉末とともに、樹脂、可塑剤等を使用する。
【0038】
ガラス粉末及びセラミック粉末の含有量は60〜80重量%、特に65〜77重量%の範囲にあることが好ましい。
【0039】
樹脂は、グリーンシートに必要な強度と柔軟性、及び自己接着性を付与するための材料であり、その混合割合は5〜30重量%、好ましくは10〜25重量%である。樹脂としては、ポリブチルメタアクリレート、ポリビニルブチラール、ポリメチルメタアクリレート、ポリエチルメタアクリレート、エチルセルロース等が使用可能であり、これらを単独あるいは混合して使用する。
【0040】
可塑剤は、グリーンシートに柔軟性を高めるとともに自己接着性を付与するために添加する成分であり、その混合割合は0〜10重量%、好ましくは0.1〜7重量%である。可塑剤としてはブチルベンジルフタレート、ジオクチルフタレート、ジイソオクチルフタレート、ジカプリルフタレート、ジブチルフタレートが使用可能であり、これらを単独あるいは混合して使用する。
【0041】
上記材料を用いてグリーンシートを作製するには、まずガラス粉末、セラミック粉末、樹脂、可塑剤等を用意し、各成分を所定の割合で混合する。次いでトルエン等の主溶媒や、イソプロピルアルコール等の補助溶剤を添加してスラリーとし、このスラリーをドクターブレード法によって、ポリエチレンテレフタレート(PET)等のフィルム上にシート成形する。このとき乾燥後のシート厚が約20〜100μmとなるように成形することが好ましい。その後、乾燥させることによって溶媒や溶剤を除去し、グリーンシートを得ることができる。
【0042】
続いてこのグリーンシートを用いて誘電体層を形成する方法の一例について説明する。まず、プラズマディスプレーパネルに用いられる前面ガラス板を用意する。前面ガラス板には、予め電極が形成されており、その上に本発明の材料を熱圧着によって接着する。熱圧着は、50〜200℃で1〜5kgf/cm2 条件で行うことが好ましい。その後、500〜600℃で5〜15分間焼成することにより、誘電体層を形成することができる。
【0043】
【実施例】
以下、実施例に基づいて本発明を説明する。
【0044】
表1、2は、本発明の実施例(試料No.1〜9)及び比較例(試料No.10、11)を示している。
【0045】
【表1】
【0046】
【表2】
【0047】
各試料は次のようにして調製した。まず表に示す組成となるようにガラス原料を調合し、白金坩堝に入れて1300℃で2時間溶融した後、溶融ガラスを薄板状に成形した。次いでこれを粉砕し、分級して平均粒径D50が3.0μm以下、最大粒径DMAXが20μm以下のガラス粉末からなる試料を得、ガラスの軟化点を測定した。さらにNo.8のガラス粉末についてはアルミナ粉末と混合して試料とした。なお平均粒径D50及び最大粒径DMAXは、日機装株式会社製のレーザー回折式粒度分布計「マイクロトラックSPA」を用いて確認した。
【0048】
得られた試料について、熱膨張係数、焼成温度、焼成後のガラス膜厚、Ag電極との反応による黄変の有無、及びガラス膜中に残存する直径30μm以上の大泡の個数を評価した。結果を各表に示す。
【0049】
表から明らかなように、本発明の実施例であるNo.1〜9の各試料がAg電極との反応による黄変が認められなかったのに対し、比較例であるNo.10、11の試料はP2O5を含まないために黄変が発生した。
【0050】
なおガラスの軟化点はマクロ型示差熱分析計を用いて測定し、第一の変曲点の値を転移点、第四の変曲点の値を軟化点とした。熱膨張係数は、各試料を粉末プレス成型し、焼成した後、直径4mm、長さ40mmの円柱状に研磨加工し、JIS R3102に基づいて測定した後、30〜300℃の温度範囲における値を求めた。ガラス膜厚、Ag電極との反応による黄変の有無、及び大泡数は次のようにして測定した。まず各試料をエチルセルロースの5%ターピネオール溶液に混合し、3本ロールミルにて混練してペースト化した。次いでこのペーストを、約30μmのガラス膜が得られるように、1.7mm厚のソーダライムガラス板上にスクリーン印刷法で塗布し、電気炉に入れた後、焼成温度で10分間保持した。このようにして得られたガラス膜について、デジタルマイクロメータにて膜厚を確認した。大泡の個数は、焼成されたガラス膜の表面を実体顕微鏡(30倍)にて観察し、3×4cmの範囲の30μm以上の大泡をカウントした。
【0051】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明のプラズマディスプレーパネル用材料は、Ag電極との反応による黄変が生じにくいため、透過率の高い透明誘電体層を形成することができる。
【0052】
それゆえ、特にプラズマディスプレーパネルの透明誘電体層の形成材料として好適である。
Claims (5)
- 重量百分率でBaO+CaO+Bi2O3 2〜45%、ZnO 5〜45%、B2O3 10〜40%、SiO2 1〜15%、PbO 0〜55%、P2O5 0.2〜20%の組成を含有することを特徴とするプラズマディスプレーパネル用ガラス組成物。
- 重量百分率でBaO+CaO+Bi2O3 2〜20%、ZnO 5〜35%、B2O3 10〜40%、SiO2 1〜15%、PbO 25〜55%、P2O5 0.2〜20%の組成を含有することを特徴とする請求項1のプラズマディスプレーパネル用ガラス組成物。
- 重量百分率でBaO+CaO+Bi 2 O 3 2〜45%、BaO 15〜45%、ZnO 20〜45%、B2O3 15〜35%、SiO2 3〜15%、PbO 0〜24.5%、P2O5 0.2〜20%の組成を含有することを特徴とする請求項1のプラズマディスプレーパネル用ガラス組成物。
- 請求項1〜3のいずれかのプラズマディスプレーパネル用ガラス組成物からなるガラス粉末を構成成分として含み、プラズマディスプレーパネルの誘電体層の形成に用いられることを特徴とするプラズマディスプレーパネル用材料。
- ガラス粉末90〜100重量%とセラミック粉末0〜10重量%からなることを特徴とする請求項4のプラズマディスプレーパネル用材料。
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