JP4174091B2 - 高粘性キサンタンガムおよびその製造方法 - Google Patents

高粘性キサンタンガムおよびその製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は高粘性キサンタンガムおよびその製造方法に関する。かかる高粘性キサンタンガムは、食品分野、化粧品分野、医薬品分野または石油分野において増粘剤、安定剤、添加剤として用いられる。
【0002】
【従来の技術】
キサンタンガムは、微生物キサントモナス・カンペストリス(Xanthomonas campestris)により、澱粉、グルコース、ショ糖等の炭水化物からつくられる微生物多糖類の一種である。キサンタンガムの構造は主としてD−グルコース、D−マンノースおよびD−グルクロン酸のナトリウム、カリウムおよびカルシウム塩からなり、主鎖はD−グルコースのβ−1,4結合からなる。キサンタンガムの製造方法として、発酵工程の後、微生物を殺菌するために熱処理され、発酵液からイソプロピルアルコール等のアルコールでキサンタンガムを沈殿させ、そのアルコールを取り除き、乾燥、粉砕する方法などが知られている。
特許文献 1には、製造工程中でキサンタンガムの粘度を向上させるため、発酵液を約70〜90°F(約21.1〜32.2℃)に冷却後低級アルカノールにより沈殿させる方法が開示されている。
また、キサンタンガム水溶液を増粘させる場合、塩を加える方法がある。
【0003】
【特許文献1】
特開昭55−156594号公報
【特許文献2】
特開平10−33125号公報
【特許文献3】
米国特許第3765918号明細書
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、従来のキサンタンガムは、粘度特性に関し、ユーザーのニーズを十分満足させるものではない。すなわち、キサンタンガムの粘度がより高ければ添加量をさらに減らすことができ、したがってさらに高い粘度特性を有するキサンタンガムが望まれていた。また、従来のキサンタンガムは多量に水中に投入すると、膨潤した粒子同士が接合してキサンタンガム粉末塊の周囲に強い被膜を造り、「ままこ」と呼ばれる粘性のある塊ができてしまい、容易に分散しなくなる等の問題点がある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、かかる課題を達成するために、鋭意研究を重ねた結果、キサンタンガムを固体状態で加熱して得たキサンタンガムが優れた粘度特性を有することを見出し、本発明を完成した。
かかる本発明は、キサンタンガム濃度として0.5重量%の水溶液とした場合、4000〜25000mPa・s(B型粘度計6rpm 25℃)の粘度を示す高粘性キサンタンガムに関する。
本発明の高粘性キサンタンガムは、一般に、上記水溶液をオートクレーブ内で120℃で3時間加熱した場合に、粘度が加熱前より3000mPa・s(B型粘度計6rpm 25℃)以上低下するという性質を有する。
本発明の高粘性キサンタンガムは、一般に、乾燥減量(常圧下、105℃、5時間加熱)が50重量%以下のキサンタンガムを100〜140℃で30分以上加熱することによって得ることができる。
上記加熱は気体中でも液体中でも行うことができる。気体中で行う場合、空気中等酸素の存在下で行うと着色する恐れがあるので、不活性ガス中で行うのが良い。また、気体中での加熱を減圧下で行うことによっても着色を回避できる。液体中で加熱を行う場合、キサンタンガムを溶解しない不活性溶剤中にキサンタンガムを分散させた状態で加熱する。液体中で加熱を行う場合も着色は起こらない。
【0006】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明を詳細に説明する。
上述のごとく、本発明の高粘性キサンタンガムは、一般に、乾燥減量(常圧下、105℃、5時間加熱、以下別に定義する場合を除き、「乾燥減量」はこの条件下での乾燥減量をいうものとする)が50重量%以下のキサンタンガムを100〜140℃で30分以上加熱することによって得ることができる。
本発明の高粘性キサンタンガムを製造するのに使用する原料キサンタンガムは乾燥減量が50重量%以下、好ましくは20重量%以下、さらに好ましくは15重量%以下のキサンタンガムである。かかる原料キサンタンガムとしてはまず市販の粉末状、顆粒状等のキサンタンガムを用いることができる。かかる原料キサンタンガムとしてはまた、トウモロコシ澱粉やグルコース等を炭素源として、キサントモナス・カンペストリスを液体培養して得られる培養液から低級アルカノールで分別沈殿させるキサンタンガムの製造法において、分別沈殿後の乾燥工程中に乾燥減量が50重量%以下となったキサンタンガムを用いることができる。原料キサンタンガムの乾燥減量が50重量%より多いとキサンタンガムの品温が十分に上がらず効果がない。。
【0007】
本発明の高粘性キサンタンガムを製造するために、かかる原料キサンタンガムを加熱するが、加熱は100〜140℃、好ましくは100〜130℃、さらに好ましくは105〜125℃で、30分以上、好ましくは30分〜10時間、さらに好ましくは30分〜7時間、さらに一層好ましくは30分〜6時間である。これらの条件中においても、高温側では比較的短時間加熱、低温側では比較的長時間加熱が好ましい。加熱はもっとも好ましくは105〜125℃で30分〜6時間行う。加熱温度が100℃未満であると粘性の改善が十分でなく、140℃を超えると一般に着色する可能性が大きくなる。
【0008】
上記加熱は気体中でも液体中でも行うことができる。気体中で行う場合、空気中等酸素の存在下で行うと着色する恐れがあるので、キサンタンガムと反応しない不活性ガス中で行うのが良い。不活性ガスとしては窒素ガス、ヘリウムガス、炭酸ガス、水蒸気等を挙げることができる。また、気体中での加熱を減圧下で行うことによっても着色を回避できる。この場合の気体としては上記不活性ガスを用いることができるのは勿論であるが、減圧の程度によっては空気も着色を生じることなく用いることができる。減圧の程度は、特に制限ないが、200〜0.01mmHgが適当である。
【0009】
液体中で加熱を行う場合、キサンタンガムを溶解しない不活性溶剤中にキサンタンガムを分散させた状態で加熱する。液体中で加熱を行う場合も着色は起こらない。不活性溶剤としてはキサンタンガムを溶解せず、キサンタンガムと反応しないものであれば特に制限はない。不活性溶剤の例としてはメタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、n−ペンチルアルコール、n−ヘキシルアルコール等の炭素数1〜6のアルカノール、1,3−ブチレングリコール、プロピレングリコール、エチレングリコール等の炭素数1〜4のアルカンジオール、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル(メチルセロソルブ)、エチレングリコールモノエチルエーテル(エチルセロソルブ)等のエチレングリコールのモノもしくはジ低級アルキル(C=1〜4、特に1〜2)エーテル、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル等のジエチレングリコールのモノもしくはジ低級アルキル(C=1〜4、特に1〜2)エーテル等を挙げることができる。
不活性溶剤中での反応は場合により加圧下で、例えばオートクレーブ中で行うことができる。
加熱処理後に得られる高粘性キサンタンガムの単離は、例えば加熱処理液を濾過し、ケーキを必要に応じエタノール等の低沸点溶剤で洗浄し、ついで真空乾燥することによって行うことができる。
【0010】
上記方法によって製造される本発明の高粘性キサンタンガムは、その高い粘性において従来のキサンタンガムと異なる。すなわち、本発明の高粘性キサンタンガムは、キサンタンガム濃度として0.5重量%の水溶液とした場合、4000〜25000mPa・s(mPa・s=ミリパスカル×秒)(B型粘度計、6rpm、25℃。以下別に定義する場合を除き、粘度値はこの条件下でのものをいうものとする。なお、1mPa・s=1cP(センチポアズ)である)、好ましくは4500〜23000mPa・s、さらに好ましくは5000〜22000mPa・s、さらに一層好ましくは6000〜21000mPa・sの粘度を示す。市販のキサンタンガムの0.5重量%水溶液の粘度は1600〜3300mPa・s程度であるので、本発明のキサンタンガムの高粘性は驚異的である。
【0011】
本発明の高粘性キサンタンガムは、一般に、キサンタンガム濃度として0.5重量%とした水溶液をオートクレーブ内で120℃で3時間加熱した場合に、粘度が加熱前より3000mPa・s以上、好ましくは3000〜23000mPa・s、さらに好ましくは4000〜20000mPa・s、さらに一層好ましくは5000〜20000mPa・s低下する。
【0012】
なお、本発明の高粘性キサンタンガムは、一般に、X線回折における2θ:20°付近のピークの半値幅が原料とした従来のキサンタンガムに比し2%以上、好ましくは2〜6%、さらに好ましくは2.5〜5%小さくなっている。
【0013】
本発明の高粘性キサンタンガムのその他の物性については、分子量が測定条件下での再現性に乏しいことを除き、従来のキサンタンガムと比し、特徴的変化はないと考えられる。例えば、NMRスペクトル、元素分析およびIRスペクトル(KBr法およびFT−IR法)は原料キサンタンガムと比べ実質的変化はない。具体例として実施例1の高粘性キサンタンガムと原料キサンタンガムのIRスペクトル(KBr法)をそれぞれ図2および図3に示す。
【0014】
本発明の高粘性キサンタンガムは従来のキサンタンガムと同様な用途に用いることができるが、その際に従来品よりも少ない用量で同様の増粘効果を発揮することができる。また、水分散性も改善され、作業性も良好である。かかる本発明の高粘性キサンタンガムは単独でまたは他の水溶性ゲル化剤や乳化剤組み合わせて使用することにより、安定なゲルや乳化物を得ることができる。したがって、本発明の高粘性キサンタンガムは、食品、化粧品、医薬品等の分野を始め、石油産業を含む一般工業分野で水溶性増粘剤として用いることができる。
【0015】
本発明を以下実施例、比較例および参考例によって具体的に説明するが、これらは本発明を例証するためのものであって、本発明を何等限定するものではない。
比較例1
市販のキサンタンガムの0.5重量%水溶液を作り、粘度を測定した(A)。さらに、各0.5重量%水溶液をオートクレーブ(120℃、3時間)にかけた後、粘度を測定した(B)。結果を表1に示す。
【0016】
【表1】
Figure 0004174091
【0017】
実施例1
キサンタンガム粉末(ザ・ニュートラスウィート・ケルコカンパニー・ア・ユニット・オブ・モンサントカンパニー製、乾燥減量14重量%)10gを1,3−ブチレングリコール40gに分散させ、100〜120℃で加熱した。キサンタンガム分散液をそれぞれ濾過し、ケーキをエタノール40gで洗浄した。真空乾燥に12時間付してエタノールを除去して高粘性キサンタンガムを得た。それぞれの0.5重量%水溶液を調製し、粘度を測定した(A)。各キサンタンガムの水への分散は比較例1のキサンタンガムより「ままこ」ができにくく、分散性が改善されていた。ついで、上記各0.5重量%水溶液をオートクレーブ(120℃、3時間)にかけ、ついで粘度を測定した(B)。結果を表2に示す。
【0018】
【表2】
Figure 0004174091
【0019】
実施例2
キサンタンガム粉末(ローヌ・プーラン・ケミカルズ・カンパニー製、水分8重量%)10gを1,3−ブチレングリコール40gに分散させ、100〜120℃で加熱した。キサンタンガム分散液をそれぞれ濾過し、ケーキをエタノール40gで洗浄した。真空乾燥に12時間付してエタノールを除去して高粘性キサンタンガムを得た。それぞれの0.5重量%水溶液を調製し、粘度を測定した(A)。各キサンタンガムの水への分散は比較例1のキサンタンガムより「ままこ」ができにくく、分散性が改善されていた。ついで、上記各0.5重量%水溶液をオートクレーブ(120℃、3時間)にかけ、ついで粘度を測定した(B)。結果を表3に示す。
【0020】
【表3】
Figure 0004174091
【0021】
実施例3及び参考例2
キサンタンガム粉末(ザ・ニュートラスウィート・ケルコカンパニー・ア・ユニット・オブ・モンサントカンパニー製、乾燥減量12重量%)10gを気体中または減圧下(空気、60mmHg)において115℃で3時間加熱した。得られた高粘性キサンタンガムの0.5重量%水溶液を作り、粘度を測定した(A)。各キサンタンガムの水への分散は比較例1のキサンタンガムより「ままこ」ができにくく、分散性が改善されていた。ついで、上記各0.5重量%水溶液をオートクレーブ(120℃、3時間)にかけ、ついで粘度を測定した(B)。結果を表4に示す。
【0022】
【表4】
表4 単位:mPa・s
Figure 0004174091
※測定条件:B型粘度計、6rpm、25℃
【0023】
実施例4及び参考例3
キサンタンガム粉末(ローヌ・プーラン・ケミカルズ・カンパニー製、乾燥減量9重量%)10gを気体中または減圧(空気、160mmHg)中において115℃で3時間加熱した。得られた高粘性キサンタンガムの0.5重量%水溶液を作り、粘度を測定した。各キサンタンガムの水への分散は比較例1のキサンタンガムより「ままこ」ができにくく、分散性が改善されていた。結果を表5に示す。
【0024】
【表5】
表5 単位:mPa・s
Figure 0004174091
※測定条件:B型粘度計、6rpm、25℃
【0025】
参考例1
実施例1で用いた原料キサンタンガムと実施例1で得られた高粘性キサンタンガム、および実施例2で用いた原料キサンタンガムと実施例2で得られた高粘性キサンタンガムをそれぞれ60℃で真空乾燥して水分含量を10重量%以下にした。200kg重/cm 2 、15秒の加重でペレット状の平滑な面を作り、X線回折測定を行った。すなわち、Kα線(1.5418Aの波長)、36kV、50mA、走査軸2θ:5〜40°で走査を行った。
図1に示すごとく、5°と40°の間にベースラインを引き、ベースラインから7°(A)と20°(B)付近のピークトップに線を引き、その比(7°のピークの高さ/20°のピークの高さ)を結晶指数とした。さらに、20°付近のピークの半値幅βを求めた。
結果を表6に示す。
【0026】
【表6】
Figure 0004174091
【0027】
【発明の効果】
本発明の高粘性キサンタンガムは従来のキサンタンガムに比し数倍の粘度特性有する極めて優れた水溶性増粘剤であり、少ない添加量で従来品と同様の効果をあげることができる。また、水分散性も改善され、作業性も良い。
【図面の簡単な説明】
【図1】キサンタンガムのX線回折図の説明図である。
【図2】実施例1の高粘性キサンタンガムのIRスペクトルを示す。
【図3】実施例1の原料キサンタンガムのIRスペクトルを示す。

Claims (7)

  1. 乾燥減量(常圧下、105℃、5時間加熱)が50重量%以下のキサンタンガムを100〜140℃で30分以上、不活性ガス中で加熱することを特徴とする高粘性キサンタンガムの製造方法。
  2. 前記不活性ガス中での加熱が不活性ガス中減圧下での加熱であることを特徴とする請求項1に記載の高粘性キサンタンガムの製造方法。
  3. 乾燥減量(常圧下、105℃、5時間加熱)が50重量%以下のキサンタンガムを100〜140℃で30分以上、気体中減圧下で加熱することを特徴とする高粘性キサンタンガムの製造方法。
  4. 乾燥減量(常圧下、105℃、5時間加熱)が50重量%以下のキサンタンガムを100〜140℃で30分以上、キサンタンガムを溶解しない不活性溶剤中にキサンタンガムを分散させた状態で加熱することを特徴とする高粘性キサンタンガムの製造方法。
  5. 加熱条件が105〜125℃で30分〜6時間である請求項1〜4のいずれか 1 項に記載の高粘性キサンタンガムの製造方法。
  6. 請求項1〜5のいずれか1項に記載の高粘性キサンタンガムの製造方法により得られる高粘性キサンタンガムであって、キサンタンガム濃度として0.5重量%の水溶液とした場合、4000〜25000mPa・s(B型粘度計6rpm 25℃)の粘度を示すことを特徴とする高粘性キサンタンガム。
  7. 該水溶液をオートクレーブ内で120℃で3時間加熱した場合に、粘度が加熱前より3000mPa・s(B型粘度計6rpm 25℃)以上低下する請求項記載の高粘性キサンタンガム。
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