JP4169761B2 - 変換器回路、少なくとも1つのスイッチング・デバイスを有する回路および回路モジュール - Google Patents

変換器回路、少なくとも1つのスイッチング・デバイスを有する回路および回路モジュール Download PDF

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Description

(発明の技術分野と先行技術)
本発明は、独立請求項によれば、少なくとも1つのスイッチング・デバイス、スイッチング・デバイスがオフになると導通になりスイッチング・デバイスがオンになると逆方向にバイアスされる少なくとも1つのダイオードとを有する変換器回路および回路モジュールに関する。
本発明は、とくに高圧の用途に使用される変換器回路で発生する課題で占められているが、これに限定されるものではなく、直流電圧を交流電圧に変換するインバータ、交流電圧を直流電圧に変換する整流器、直流電圧をより高い又は低い直流電圧に変換する直流変換器などのように、あらゆるタイプの変換器回路を対象としている。
このような変換器回路は、たとえば、電動機などの負荷に接続され、変換器回路で得られた電圧がこの負荷に供給される。本回路のダイオードは、いわゆるフリー・ホイーリング・ダイオードとして使用され、変換器回路の能力を改善して、スイッチング・デバイスのスイッチングに基づく回路の突然変化を平滑化することにより、目的とする特性をもつ電圧を発生させ、スイッチング・デバイスがオフになると、負荷に必要な電流を流すことを引き受けることによりスイッチング・デバイスを保護するものである。
これらのダイオードは、これまでにも、このような変換器回路に使用されており、重要な問題を発生させるなど、何らかの欠点をもつシリコンからなるものがほとんどである。実際に、これらのダイオードは、変換器回路の回路全体の性能に制約を加えるデバイスである。この理由は、スイッチング損失が大きいためスイッチング性能に本質的な制約があり、動的電子なだれに基づく破壊の危険があるからである。高圧では、スイッチング損失が大きい拡散pn接合ダイオードが使用される。
主な問題点が発生するのは、回路のスイッチング・デバイスがオンになり、ダイオードが逆方向にバイアスされる場合である。このタイプのダイオードは、比較的多数の逆回復電荷を有する。つまりデバイスのn領域およびp領域に過剰電子および過剰ホールが多量に蓄積されるので、ダイオードが逆方向にバイアスされていると、この電荷は消滅しなければならない。このことは、ダイオードのオフ状態における飽和電流あるいは漏洩電流よりわずかに大きな逆方向電流が、ある時間ダイオードを流れることを意味している。この逆方向電流が流れると、スイッチング損失が大きくなるとともに熱放散が大きくなる。この理由は、スイッチング・デバイスがオンになり、ダイオードがオフになると、この逆方向電流が流れている間、ダイオードにかかる電圧が大きいからである。また、このダイオードを流れる逆方向電流は、スイッチング・デバイスのターン・オン損失を大きくする。その上、シリコン・ダイオードは、比較的低温ですぐに不安定になる。スイッチング・デバイスのスイッチング周波数を高くすると、この変換器回路によって得られる電流の品質は、向上するが、スイッチング損失も増加するので、スイッチング周波数は、変換器回路の各種デバイスが過熱のため破壊しないような低レベルに維持されなければならない。その上、ダイオードの逆阻止電圧が高くなっている場合、ダイオードに過剰電荷キャリアが残っていると、動的電子なだれのためダイオードが破壊するかもしれない。したがって、通常は、スイッチング・デバイスのオン速度を減速する必要があるが、こうすること自体、最適性能の回路にするためには良いことではない。また、スイッチング・デバイスがオフになる場合の問題点もあるが、大体は大きな問題ではない。この場合、ダイオードは、非常に速く大きくなる電流でオンになる。高圧電力デバイスとして使用される大形シリコン・ダイオードは、ダイオードに必要な量の過剰電荷キャリアが発生する前にダイオードがオンすると、すぐに抵抗が大きくなり、順方向回復と呼ぶ現象の高圧が発生する。この電圧オーバーシュートは、パワーエレクトロニクス回路にはマイナス効果となって望ましくない損失を発生させることがあり、その上、ダイオードにストレスを加えてダイオードの寿命を限定し、変換器回路全体の信頼性に影響を及ぼす。また、この順方向回復は、スイッチング・デバイスにも電圧オーバーシュートを発生させる。ダイオードがスナバ・ダイオードとして使用される場合、特にスイッチング・デバイスがGTOの場合、この順方向回復オーバーシュートがスイッチング・デバイスの制約要因となることが多い。
(発明の要約)
本発明の目的は、本明細書の導入部において定義したタイプの変換器回路を提供することであるが、既知の変換器回路に関する上述の短所は極度に改善されている。
本発明によれば、ダイオードを炭化シリコン(SiC)とすることにより、この目的を達成することができる。
炭化シリコンは、バンド間のエネルギ・ギャップが大きいために熱的安定性が大きいので、炭化シリコンからなるデバイスは、1000ケルビンまでの高温で動作することができる。その上、炭化シリコンは、熱伝導度が大きいので、炭化シリコン・デバイスを高密度で配置することができる。また炭化シリコンは、降伏フィールドがシリコンより約10倍も大きいので、デバイスの阻止状態において高い電圧が発生するかもしれない条件で動作する大電力デバイスの材料に適合している。本発明による変換器回路のダイオードは、阻止状態において電圧を維持しなければならないが、対応するシリコン・ダイオードより非常に薄くつくることができる。このことは、この場合、本発明による変換器回路のスイッチング・デバイスがオンになると、pnダイオードまたはpinダイオードの場合、シリコン・ダイオードに比べて、ダイオードの逆回復電荷が非常に少ないため逆回復時間が短くなるとともにダイオードのスイッチング損失が非常に小さくなる。回路に接続された負荷に流れ込む電流または負荷から流れ出る電流を、単独で実質的に引き受けるように炭化シリコンのダイオードが配置されていると、ダイオードのスイッチング損失が極度に減少するだけでなく、スイッチング・デバイスをオンしたときスイッチング・デバイスに発生する熱エネルギも小さくなる。その理由は、ダイオードを流れる回復電流が小さくなったためであるが、この回復電流は、スイッチング・デバイスに流れて、スイッチング・デバイスを流れるターン・オン電流に追加されるからである。したがって、スイッチング損失の形で回路に少しの熱が発生するだけである。このことは、所与のスイッチング周波数では回路の構成部品があまりストレスを受けないことを意味しており、この長所を生かして、先行技術によるデバイスと同じ高い周波数に維持するか、または周波数を高くして回路の動作性能を向上させることが可能である。さらにダイオードの逆回復電荷が少なくなると、ダイオードの動的電子なだれに対する余裕度をかなり上げることができる。
本発明による変換器回路のスイッチング・デバイスがオフになると、pnダイオードまたはpinダイオードの場合、シリコン・ダイオードよりかなり薄い炭化シリコン・ダイオードは、電圧ピークがなくても急速にターン・オンする。つまり、炭化シリコン・ダイオードは、非常に小さい順方向回復を有し、ダイオードのターン・オンにおける電力損失を小さくし、パワーエレクトロニクス回路における外乱を小さくする。
導入部において説明したとおり、ダイオードの材料として炭化シリコンを使用するアイデアは、これまでダイオードのタイプを高圧の使用から除外していたが、つぎに導入部で考察した問題点を解決するために非常に有利なダイオードのタイプ、すなわちショットキー・ダイオードを、このタイプの変換器回路に使用可能にする。これまでにも知られており、ほとんどがシリコンからなるショットキー・ダイオードは、次の理由から各種変換器回路のダイオードとして実用的な選択の対象とはならかった。逆方向漏洩電流が問題になる前に、ショットキー・ダイオードは、逆阻止状態で100ボルトまたは200ボルトより高い電圧を維持できない。多数キャリア・コンダクタとしてのショットキー・ダイオードの機能と低濃度ドーピング領域とは、抵抗として機能するので、金属に隣接する低濃度ドーピング領域を非常に厚くすることによりショットキー・ダイオードの降伏電圧を大きくすると、順方向導通状態における損失が大きくなる。しかし、上述のように、炭化シリコンの降伏フィールドは、シリコンよりも約10倍も大きいので、炭化シリコンのショットキー・ダイオードは、非常に薄くつくることができ、逆阻止状態における電圧をキロボルト範囲に維持することができる。このため、材料に依存してシリコンよりも高濃度で炭化シリコンにドーピングする可能性と組み合わせると、順方向導通状態におけるショットキー・ダイオードの抵抗は、十分許容可能なレベルに減少する。したがって、ショットキー・ダイオードの他の特性から利点を引き出し、ショットキー・ダイオードを変換器回路における使用に十分合致させることが可能である。すなわち、主として多数キャリアが流れるため、オフになるときの逆回復の挙動およびオンになるときの順方向電圧オーバーシュートは、実際には存在しない。したがって、本発明は、炭化シリコン・ダイオードについて言及する場合、ショットキー・ダイオードも含んでいるものとする。
本発明の好適実施例によれば、炭化シリコン・ダイオードは、スイッチング・デバイスがオフになると、a)回路に接続された負荷に、または、b)負荷からのいずれかに流れる電流と、ターン・オン状態のスイッチング・デバイスに流れる電流とのすべてを単独で実質的に引き受けるように配置されている。この場合、ターン・オン状態のスイッチング・デバイスを流れる電流のかなりの部分を引き受けるのに他のダイオードは不必要なので、上で考察した先行技術による変換器回路における短所は発生せず、本発明による炭化シリコン・ダイオードを提供することによる利点を長所を生かすことが可能である。
本発明の別の好適実施例によれば、スイッチング・デバイスは、炭化シリコンからなり、この好適実施例には、ダイオードとスイッチング・デバイスが集積されたチップが含まれている。この好適実施例は、回路製造段階とコストとを削減する。
本発明の別の好適実施例によれば、回路は、インバータ回路であって、このインバータ回路は、最初に述べたスイッチング・デバイスに逆並列に接続された第2の炭化シリコン・ダイオードと、最初に述べたダイオードに逆並列に接続された第2のスイッチング・デバイスとから成り、a)第1のスイッチング・デバイスおよび第1のダイオードと、b)第2のスイッチング・デバイスおよび第2のダイオードとのいずれか一方が負荷に対する電流の供給を引き受け、他方が負荷からの電流を引き受けるように配置されている。インバータ回路に2つの炭化シリコン・ダイオードを使用することにより、上記の考察に従って改善された回路性能を達成するとともに、直流電圧を交流電圧に反転させることが可能である。
本発明のさらに別の好適実施例によれば、スイッチング・デバイスは、ゲートターン・オフ・サイリスタであり、炭化シリコン・ダイオードは、スイッチング・デバイスと並列に接続され、ダイオードと直列に接続されてスイッチング・デバイスがオフになると充電され、スイッチング・デバイスがオンになると放電するコンデンサを含む枝路に配置されたスナバ・ダイオードである。スナバ・ダイオードは、サイリスタをオンするとき、サイリスタが破壊することを防止するため直ちに電流を流し始めることが必須であるが、炭化シリコン・ダイオードは、対応するシリコン・ダイオードよりかなり薄くつくることができるため、このような動作をすることが可能である。その上サイリスタは、電流キャリアおよび電荷キャリアがスナバ・ダイオードから完全に消滅する前に再びオンになることが可能である。このことは、ダイオードがシリコンでなく炭化シリコンでつくられていると、スナバ・ダイオードが逆方向にバイアスされ、大きなスイッチング損失と動的電子なだれとを伴う同じ逆回復の問題が発生することを意味している。
また本発明は、少なくとも1つのスイッチング・デバイスと、スイッチング・デバイスが一方向にスイッチングすると、順方向にバイアスされて導通になるように配置された第1のダイオードとを有する回路を含んでいる。本回路は、第1のダイオードと並列に接続され、スイッチングがおこなわれると、2つのダイオードを流れる電流の大部分を瞬時に引き受けるように設計された第2の炭化シリコン・ダイオードを有し、大部分は、時間とともに減衰し定常導通状態では2つのダイオードを流れる電流の少部分である。炭化シリコン・ダイオードが第1のダイオードと並列に配置されているため、パワーエレクトロニクス回路におけるマイナス効果、望ましくない損失および第1のダイオードに加えられてダイオードの寿命を限定するストレスによる諸問題は解決されるのである。炭化シリコン・ダイオードは、第1のダイオードよりかなり薄くつくることができるので、第1のダイオードがシリコンでつくられていると、この炭化シリコン・ダイオードは、非常に低い順方向回復電圧で非常に速くオンになり、第1のダイオードの電圧オーバーシュートがかなり減少するため、最後に述べた問題点が解決される。回路が定常導通状態にある場合、電流の大部分は、第1のダイオードを流れるから、非常に狭い面積で第2の炭化シリコン・ダイオードをつくることができる。炭化シリコン電力ダイオードがオンしたときの特定の差動抵抗は、対応するシリコン・ダイオードよりもかなり小さいので、かかる小さい面積の第2のダイオードでも、オンしたときの電圧オーバーシュートを減少させることができる。
また本発明には、電気回路に接続する端子をもつ密閉容器に配置されたいくつかのスイッチング・デバイスと、少なくとも1つの炭化シリコン・ダイオードとからなるデバイス・モジュールが含まれている。デバイス・モジュール内で使用される炭化シリコン・ダイオードは、炭化シリコンの特性のため、このダイオードがシリコンでつくられている場合に比較して前記デバイスの熱放散を小さくしており、簡単な冷却装置を使用することができるとともに、モジュールの中にデバイスを高密度で配置することが可能である。
かかるモジュールが変換器回路に配置するように設計されている本発明の好適実施例によれば、このモジュールは、並列に接続されたスイッチング・デバイスと、これらのスイッチング・デバイスに逆並列に接続された少なくとも1つの炭化シリコン・ダイオードから成り、これらのスイッチング・デバイスのゲートは、グループ毎に接続されている。かかるモジュールは、変換器回路の一部として便利に使用され、この回路では、各スイッチング・デバイスが負荷に流れ込む電流または負荷から流れ出る電流の一部を引き受け、上記の考察のように、スイッチング・デバイスがオン、オフする場合に発生する問題点を解決するために炭化シリコン・ダイオードを使用できる。炭化シリコン・ダイオードを使用することができるため、かかるモジュールは、ダイオードがシリコンでつくられている場合よりも損失および熱放散が小さくなるので、構成部品の過熱と破壊の危険を伴わずに非常に小型かつ高密度にすることが可能になる。
本発明の好適機能および利点は、他の従属特許請求の範囲と以下の説明から明瞭である。
(本発明の好適実施例の詳細な説明)
インバータ回路の形式で本発明の好適実施例による変換器回路の回路図が図1に示されている。より正確には、図1に示す回路は、一相を駆動するように配置されている。つまり、負荷に対する三相電源装置の1つの脚を構成している。本回路は、それぞれプラス電極2およびマイナス電極3をもつ直流電圧電源装置1を構成している。直流電源装置1の直流電圧は、インバータ回路により、ここではインダクタンスで示されている一相の負荷4を駆動する交流電圧に反転されなければならない。この回路は、ここではIGBT(絶縁ゲート・バイポーラ・トランジスタ)で示されている第1のスイッチング・デバイス5、スイッチング・デバイス5と直列に接続された別のIGBTの形をした第2のスイッチング・デバイス6、第1のスイッチング・デバイス5と直列に接続され、第2のスイッチング・デバイス6と逆並列に接続された第1の炭化シリコン・ダイオード7および第1の炭化シリコン・ダイオード7と第2のスイッチング・デバイス6との並列接続と直列に接続され、第1のスイッチング・デバイス5と逆並列に接続された第2の炭化シリコン・ダイオード8から構成されている。IGBTは、たとえば、MOS制御サイリスタ(MCT)などの他のBiMOSスイッチング・デバイスと置き換えてもよい。この場合、2つのダイオード7、8は、いわゆるフリーホイーリング・ダイオードの機能をもつ高圧電力ダイオードである。このインバータ回路の機能は以下のとおりである。負荷4に対して回路により発生した交流電圧の第1の正の半周期中に、第1のスイッチング・デバイス5は、高周波でオン、オフする。第1のスイッチング・デバイス5が導通状態の場合、第1のスイッチング・デバイス5の両端の電圧降下は小さく、電源装置の電圧降下の主要部分は、第1の炭化シリコン・ダイオード7の両端にかかっているから、ダイオード7は、逆阻止状態にある。IGBT5およびダイオード7の両端の電圧降下は、それぞれ、例えば、数ボルトおよび1キロボルトまたは数キロボルトになるである。IGBT5からの電流は、負荷4に送られる。IGBT5がオフになると、負荷のインダクタンスのため、負荷4は、前と同じ電流を要求し、第1の炭化シリコン・ダイオード7は、IGBT5のターン・オフと同じdI/dtでオンになる。スイッチング損失を小さく維持するためには、IGBTを急速にオフにすることが望ましいが、そうすると第1の炭化シリコン・ダイオード7を流れる電流は、急速に増加する。ダイオード7は、炭化シリコン(SiC)でつくられているので、ダイオード7は薄く、降伏フィールドは十分に大きい。したがって、ダイオード7は、電圧ピークがなくても急速にオンになるので、回路の中に外乱がなく回路の損失は非常に小さい。IGBT5が完全にオフになると、負荷4に対する電流はダイオード7を介して供給される。再びIGBT5がオンになると、ダイオード7は、IGBT5がオンになるときと同じdI/dtでオフになる。IGBT5が完全にオンになっている場合、IGBT5の両端の電圧は低く、主電圧、つまり1キロボルトまたは数キロボルトの高い電圧でダイオード7を逆方向にバイアスする。ダイオード7に現れる過剰電子および過剰ホールの形式の逆回復電荷は、ダイオードと逆方向でダイオードに導かれ、ダイオードにスイッチング損失を発生させ、IGBT5のターン・オン・スイッチング損失を大きくする。この理由は、この電流がIGBT5に流れるオン電流に加えられるからである。しかし、炭化シリコン・ダイオードは、たとえば対応するシリコン・ダイオードに比較して逆回復電荷が非常に少ないので、現在の状態におけるこれらの損失は、非常に小さい。したがって、IGBT5と同様、ダイオード7の損失は、極度に減少する。このように、シリコン・ダイオードを使用するよりも損失を大きくせずにスイッチングを高い周波数で実行することができるので、回路の性能が改善される。半周期におけるIGBT5のスイッチングは、この半周期を短い時間の刻みにして多数回実行される。負荷4に供給する交流電圧の第2の負の半周期を発生させるため、第2のIGBT6がオン、オフして電流が負荷4からIGBT6および第2のダイオード8へ交互に引き出される。第2のIGBT6と第2のダイオード8との動作は、上記で考察したとおり、第1のIGBT5および第1のダイオード7がオン、オフしたときと同じである。
図2の回路図は、本発明の第2の好適実施例によるインバータ回路を示しており、このインバータ回路は、負荷4、GTO、つまりゲート・ターン・オフ・サイリスタの形をした第1のスイッチング・デバイス5’、シリコン、炭化シリコンまたは他の適切な材料でつくられた第1のフリーホイーリング・ダイオード7’、第2のスイッチング・デバイス6’およびシリコン、炭化シリコンまたは他の適切な材料でつくられた第2のフリーホイール・ダイオード8’から構成されている。本回路は、図1による回路と同じように、GTO5’、6’がオン、オフすると、同じように機能するダイオード7’、8’によって直流電圧を反転するようになっている。また本回路には、炭化シリコンでつくられ、それぞれGTO5’、6’と並列に接続されたいわゆるスナバ・ダイオード9’、10’が含まれている。各スナバ・ダイオードは、コンデンサ11’、12’と直列に接続されている。各GTOに並列に接続された枝路には、寄生漂遊インダクタンス13’と抵抗14’および寄生漂遊インダクタンス15’と抵抗16’がそれぞれ含まれている。この回路には抵抗28’と漂遊インダクタンス29’とが含まれている。
各GTOに並列に接続されたスナバ・ダイオード枝路の機能は、以下のとおりである。第1のGTO5’がオフになると、その両端の電圧は増加し始め、スナバ・ダイオードが存在せず、GTO5’を流れる電流が大きい間は、この電圧は、比較的高いレベルになるので、電力損失は、比較的大きい。スナバ・ダイオード9’およびコンデンサ11’が配置されていると、GTOがオフするときのGTO5’のdU/dtが小さくなるので、GTO5’の両端の電圧が上昇中に、スナバ・ダイオードは、オンになりコンデンサ11’は、充電される。GTO5’がターン・オフ状態になると、第1のダイオード7’がオンになって負荷4’に電流を流すので、スナバ・ダイオード9’を流れる電流は、無視することができる。GTO5’が再びオンになると、コンデンサ11’は、ダイオード10’、抵抗28’および漂遊インダクタンス29’を介して比較的ゆっくり放電するので、望ましくはコンデンサ11’が空になって、GTO5’が次にオフになる場合、また充電されるようになる。GTOがオフになるとき、GTOを保護するためスナバ・ダイオード9’が急速にオンになることが不可欠であるが、スナバ・ダイオードを炭化シリコンでつくることにより、この条件が保証されている。また、スナバ・ダイオード9’の過剰電荷キャリアと全電流が「消滅」する前に、GTO5’がオンになることが発生するかもしれない。このことは、GTO5’がオンになるとスナバ・ダイオード9’を介した逆回復電流が存在するが、スナバ・ダイオードが炭化シリコンでつくられている場合、逆回復電流が存在することから生じるスイッチング損失が非常に小さいことを意味している。
図3は、2つのダイオード、すなわち、第1の小型炭化シリコン・ダイオード17および大形シリコン・ダイオード18の並列接続を示している。本発明の実施例によれば、ダイオード7、8、7’、8’およびスナバ・ダイオード9’のどれかを図3に示す並列接続に置き換えることができる。並列接続に置き換えると、対応するスイッチング・デバイスがオフになった場合、小型炭化シリコン・ダイオードの厚さが薄く電荷キャリアの寿命が短く、さらに順方向回復が小さいため、スイッチング・デバイスがオフになった瞬間に、小型炭化シリコン・ダイオードが2つのダイオードを流れる電流の大部分を引き受けるので、ダイオード17、18の両端の電圧オーバーシュートは、実質的に存在しない。ダイオード17を流れる電流のこの部分は時間とともに減衰し、スイッチング・デバイスのターン・オフ状態の間に2つのダイオードを流れる電流の少部分になる。したがって、しばらくすると、ほとんど全ての電流は、非常に多くの電荷キャリアをもつ大形シリコン・ダイオード18を流れる。したがって、図3による並列接続を使用すると、ダイオードの順方向回復が大きいことによる悪影響をパワーエレクトロニクス回路に全く与えずに、スイッチング・デバイスがオフになったときの導通用にシリコン・ダイオード18が使用できるようになる。かかる配置を使用することは、順方向回復は重要であるが逆回復が重要でない場合の用途に最適である。この理由は、大形シリコン・ダイオード18は、ターン・オフするとき大きな逆回復を発生させるからである。かかる使用方法は、スナバ・ダイオードの場合に独特なものであろう。
図4は、本発明によるモジュールを示している。このモジュールは、10のスイッチング・デバイス5”と2つの炭化シリコン・ダイオード8”とから構成されている。このモジュールは、図1の第1のスイッチング・デバイス5と第2の炭化シリコン・ダイオード8との並列接続と同じ機能を有する。スイッチング・デバイスのゲート19は、相互に接続され、同時に作動されるように意図されている。スイッチング・デバイス5”は、負荷に供給するモジュールの全電流を等分した電流、たとえば50アンペアを流すように意図され、その場合の全電流は、500アンペアである。2つのダイオード8”は、図1の第2のダイオード8と同じ機能を有し、示されていないが本モジュールに接続されている同様なモジュールのスイッチング・デバイスがオフになると、これらの2つのダイオードが一緒になって負荷に電流を流すように意図されている。このモジュールの第1の端子20は、電源装置の端子に接続されるように考えられており、このモジュールの第2の端子21は、このモジュールの横にあり、電源装置の他の端子に接続されていない同様なモジュールのスイッチング・デバイスとダイオードとに接続されるように考えられており、第3の端子22は、スイッチング・デバイス5”を同時にオン、オフするために用意されている。
図5は、ダイオードおよびスイッチング・デバイスを密閉容器23に配置する方法を示している。各デバイスチップ5”、8”の裏面は、導通板24に半田付けされて相互に接続されている。スイッチング・デバイス5”およびダイオード8”の表面は、導通用ストリップまたはボンディング・ワイヤによって導通バー25に接続されており、図5のスイッチング・デバイスの左側の列からバー25へのストリップは、この図に示されていない。その上、全スイッチング・デバイスのゲートが接続されている第2の導通バー26がある。端子20、21、22は、図5に示されている。チップ5”、8”は、望ましくは、各列に4素子をもつ3列に配置されているので、図5の右手の列には2つのダイオード8”と2つのスイッチング・デバイス5”がある。導通板24には、(液体または気体の)冷媒が流れることによりモジュールの半導体デバイスを冷却する冷却用チャネル27がある。ダイオード8”は、炭化シリコンでつくられているため、モジュールで発生するスイッチング損失は、先行技術による同形の回路よりかなり小さいので、過熱の危険を伴なわずにデバイスを高密度で配置することが可能である。いわゆる位相レッグの半分を構成するモジュールを上に説明し図示したが、本発明は、本タイプのデバイス・モジュールにかわりうるデバイス・モジュールを含んでいる。たとえば、1つの実施例では、図1の位相レッグの全体、つまり全構成部品5,8および6,7をモジュールに含めることができれば、そのモジュールは図4に示すモジュールを2セット使って構成できる。また、かかるセットまたはパックを6つ含めると、変換器の三相すべてが含まれるデバイス・モジュールをつくることも可能である。
本発明は、いかなる点においても好適実施例に限定されないことは勿論であるが、本発明の基本的アイデアから逸脱せずに、本発明のいくつかの変形実施例をつくることは当業者には明らかである。
インバータ回路の形式で変換器回路を図示してきたが、本発明の変換器回路は、整流器またはDC- DC変換器回路にもなる。さらにこれらの回路は、最も多くの異なる構成にすることができるので、各図に示す変換器回路は、本発明の範囲と本分野において周知の非常に多数の変換器回路のいくつかにすぎない。
ダイオードおよびスイッチング・デバイスがともに炭化シリコンでつくられている場合、1つのダイオードまたは各ダイオードに逆並列で接続されたスイッチング・デバイスと同じチップに、そのダイオードを集積することができるので、炭化シリコンでつくられたダイオードおよびスイッチング・デバイスのすべてを1つの同じチップに集積することも可能である。
添付の図面を参照しながら、以下、例として記述した本発明の好適実施例の説明が続く。
本発明の第1の好適実施例による変換器回路の回路図である。 本発明の第2の好適実施例による変換器回路の回路図である。 本発明の第3の好適実施例を示す。 本発明の第4の好適実施例による変換器回路の一部の回路図である。 図4の本発明の好適実施例によるモジュールの部分的断面を示す模式図である。

Claims (2)

  1. 少なくとも1つのスイッチング・デバイス(5,6,5’,6’,5”)と、前記デバイスが一方向にスイッチングすると、順バイアスされて導通になるように配置された第1のダイオード(18)とを含む回路装置であって、炭化シリコンの第2のダイオード(17)は、第1のダイオードと並列に接続され、スイッチング時に、瞬時に2つのダイオードを流れる大部分の電流を受けるように設計され、大部分の電流は、時間とともに減衰し定常導通状態において2つのダイオードを流れる少量の電流となることを特徴とする回路装置。
  2. 請求項1記載の回路装置であって、第1のダイオード(18)は、シリコンからなることを特徴とする回路装置。
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