JP4165910B2 - 沿面放電型放電素子 - Google Patents

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は沿面放電型放電素子とその製法に係るものであり、特に沿面放電を利用してオゾンを発生するオゾナイザーや、低温プラズマを生成するアイオナイザーに使用するに適した沿面放電型放電素子とその製法に係るものである。
【0002】
【従来の技術】
沿面放電型放電素子とはアルミナのような誘電体セラミックスの絶縁基板の一方の面に比較的小さい放電電極を有し、他方の面に比較的大きい誘導電極を有し、これらの電極に交流の高電圧を印加するとき放電電極の周縁から低温プラズマが発生し、そして対向電極間に絶縁基板を通って誘導電流(放電電流)が流れる放電素子をいう。これを例えばオゾナイザーに利用する場合通常50Hz-20KHzで3.5KVpp-10KVppの高周波、高電圧を印加し、それにより発生した酸素イオンと周囲の酸素とを結合させてオゾンを生成する。この放電電極はタングステン(W)や酸化チタン(TiO2 )、窒化チタン(TiN)等から製造される。タングステンを用いて電極を製造するには誘電体セラミック基板に電極の形にタングステンを印刷し、水素炉を用いて1300°C程の高温で焼成する。また窒化チタンもしくは酸化チタンを用いて電極を製造するには誘電体セラミック基板にこれらの金属をプラズマ溶射する。
【0003】
水素雰囲気内で焼成したり、プラズマ溶射を行うには大型で高価な特殊な設備を必要とし、またこのような製法は電極の量産にも不向きであった。特にプラズマ溶射により形成した放電電極はアルミナ基板との密着性が十分でなく、剥離し易いという問題があった。このため印刷回路や抵抗チップなどの製作に使用される導電性粉末とガラス粉末とを主成分とする厚膜導体ペーストを誘電体セラミック基板に印刷塗布し、焼成して電極を製作したが、放電中電極は破壊され易く、ガラス膜で電極を保護しても放電寿命は短いという問題があった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
解決しようとする問題点は、沿面放電型放電素子の放電電極が脆弱であり、使用寿命も短く、しかもその製作が容易でないという点である。
【0005】
【課題を解決する手段】
電極の製作を容易とするのは厚膜導体ペーストを絶縁基板に印刷塗布し、焼成するのが有利であり、これまでも試みられたこともあるが、このようにして製作した電極は放電中破壊され易いという欠点があった。これは使用するペーストの焼成温度を下げるために鉛が使用され、この鉛分が放電スパッタリングにより飛散して放電電極の脆弱化を招くことが原因であることを発明者は見出した。すなわち、電極は導電性粉末とガラスとを主成分とする厚膜導体から構成されるが、このガラスにはPbO,Pb3 4 等の鉛成分が含まれており、この鉛分が厚膜導体から放電スパッタされて放電電極を脆弱化させるのである。
【0006】
本発明は、放電に対して堅固であって使用寿命が長く、量産に適した沿面放電型放電素子とその製法とを提供することを目的とし、この目的は少なくとも放電電極を導電性粉末と無鉛ガラスとを主成分とする厚膜導体から構成することにより達成される。放電電極と誘導電極とにそれぞれ無鉛ガラスの絶縁保護層を設けてもよい。また、絶縁保護層の強化のため酸化物フイラーを含めてもよい。Au,Ag,Pd,Pt等の貴金属もしくはそれらの合金の粉末、酸化ルテニウムRuO2 、各種のルテニウム酸塩等の粉末を導電性粉末として使用するのが有利である。Cu,Ni等の卑金属もしくはそれらの合金の粉末も使用できる。
これらの導電性粉末と無鉛ガラス、例えばSiO2 −B2 3 −ZnO系ガラス、SiO2 −B2 3 −ZnO−Al2 3 系ガラス、SiO2 −B2 3 −ZnO−アルカリ土類金属酸化物系ガラス、SiO2 −B2 3 −ZnO−Al2 3 アルカリ土類金属酸化物系ガラス、B2 3 −Al2 3 −アルカリ土類金属酸化物系ガラス、SiO2 −ZnO−Al2 3 −アルカリ土類金属酸化物系ガラスを主成分としたペーストを絶縁基板の一方の面に放電電極の形に、他方の面に誘導電極の形に塗布し、焼成して放電素子を製造する。
【0007】
絶縁保護層を形成するガラスペーストには上述の無鉛ガラスに熱膨張係数等の特性を調整するためにアルミナ、ジルコニア、ジルコン、シリカ、コーディエライト、フオルステライト、ムライト等の酸化物フイラーや、着色剤等を添加してもよい。絶縁保護層はその下になっている電極の酸化を防止するためのもので、無鉛ガラスを使用したのは、鉛を含むガラスでは放電中鉛を飛散させて脆弱化させてしまうからである。特願平8ー53587の無鉛ガラスペーストは絶縁保護層を形成するのに好適である。
【0008】
【実施例】
図1ないし図3を参照する。沿面放電型放電素子はアルミナ絶縁基板3の一方の面に放電電極1を有し、他方の面に誘導電極4を有し、放電電極1と誘導電極4とは絶縁保護層2、5を有している。6(1) 、6(2) は高圧リード線を半田付けする端子であり(図2参照)、端子6(1) は放電電極1と電気的に接続している。
【0009】
放電電極1は導電性粉末と無鉛ガラスとを主成分とする厚膜導体から成り、この実施例ではRuO2 粉末、AgとPdとの合金粉末そしてSiO2 −B2 3 −ZnO系ガラスを主成分とするペーストを印刷、焼成して形成し、誘導電極4(及び端子6(1) )はAgとPdとの合金粉末そしてSiO2 −B2 3 −ZnO系ガラスを主成分とするペーストを印刷、焼成して形成している。
【0010】
絶縁保護層2はSiO2 −B2 3 −Al2 3 −ZnO−アルカリ土類金属酸化物系ガラスと酸化物フイラーとから成る絶縁ペーストを放電電極1を覆うように印刷、焼成して形成した。絶縁保護層5は同じ絶縁ペーストを用い、端子6(1) 、6(2) を残して誘導電極4のほぼ全面を覆うように印刷、焼成して形成した。焼成温度は約850°Cである。放電電極1、誘導電極4、絶縁保護層2、5は順次印刷、焼成を行うことにより形成してもよいが、絶縁基板3上にそれぞれ所定のペーストを印刷した後、同時焼成を行って一括形成することも可能である。このようにして製作した沿面放電型放電素子の端子6(1) 、6(2) 間に高周波電圧(10KHz,8KV)を印加すると放電電極1の周縁に高周波コロナ放電が発生し、オゾンが生成された。
【0011】
図4に実施例の沿面放電型放電素子の放電電極1の後端付近の顕微鏡写真を、図5にそれの先端付近の顕微鏡写真をそれぞれ示す。これらの図は10KHz,8KVの電圧をかけて放電させ、一月半連続使用した放電電極1の後端と先端付近の状態を示している。これらの図からその組織には放電による欠陥が殆ど生じていないことが認められるが、同じ条件で作動させた窒化チタンをプラズマ溶射して形成した従来の沿面放電型放電素子の放電電極は図6、図7に明かなように放電の集中発生する電極の周縁と端に部分的に非導電性の酸化物が生じてその部分では放電が生じないようになり、放電電極は全体として痩せた状態になる。
【0012】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の沿面放電型放電素子の放電電極は放電に対し堅固であって、使用寿命が長く、しかもその製作は容易であって量産に適している。さらに、鉛成分を含有しないため放電による鉛が飛散するという事態はなく、このことは周囲の環境保全上重要であり、特に食品のオゾン処理に本発明の沿面放電型放電素子を使用することは有意義である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の沿面放電型放電素子の実施例の上面図である。
【図2】本発明の沿面放電型放電素子の実施例の下面図である。
【図3】図2のA−A線に沿う断面図である。
【図4】本発明の沿面放電型放電素子の実施例の放電電極の後端部分の連続使用後の顕微鏡写真である。
【図5】図4の放電電極の先端部分の顕微鏡写真である。
【図6】従来の放電素子の放電電極の後端部分の連続使用後の顕微鏡写真である。
【図7】図6の放電電極の先端部分の顕微鏡写真である。
【符号の説明】
1 放電電極
2 絶縁保護層
3 絶縁基板
4 誘導電極
5 絶縁保護層
(1) 放電電極の端子
(2) 誘導電極の端子

Claims (4)

  1. 絶縁基板の一方の面に放電電極を有し、他方の面に誘導電極を有し、少なくとも放電電極は導電性粉末と無鉛ガラスとを主成分とする厚膜導体から成ることを特徴とした沿面放電型放電素子。
  2. 放電電極と誘導電極とがそれぞれ無鉛ガラスの絶縁保護層を有する請求項1に記載の沿面放電型放電素子。
  3. 絶縁保護層が酸化物フイラーを含む請求項2に記載の沿面放電型放電素子。
  4. 絶縁基板の一方の面に放電電極の形に、他方の面に誘導電極の形にそれぞれ導電性粉末と無鉛ガラスとを主成分とするペーストを塗布し、焼成することを特徴とする沿面放電型放電素子の製法。
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