JP4159123B2 - 金属酸化物構造体およびその製造方法 - Google Patents

金属酸化物構造体およびその製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、各種の分離剤、触媒、触媒担体などとして利用され得る新しいタイプの金属酸化物構造体とその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
金属酸化物(金属酸化物構造体)は、従来より各種の産業分野において分離剤や触媒などとして多用されている。その中でも最もよく知られているのはゼオライトを代表とするアルミノシリケート系金属酸化物であり、これは、その分子構造中に−Si−O−Al−O−Si−を有することを特徴とする化合物である。ゼオライトはアルミノシリケートのうちでも結晶性の化合物でシリカとアルミナが複雑に配合されて、数〜十数Åの決まった細孔を持つことが知られ、この細孔を利用して物質分離、触媒などに多用されている。
【0003】
従来、ゼオライトのようなアルミノシリケート系金属酸化物は、専ら、密閉容器を用いる高温・高圧反応(水熱合成)により製造されている。すなわち、強アルカリ溶液中でケイ酸ソーダ、コロイダルシリカなどをシリカ源とし、アルミン酸ナトリウム等のアルミニウム源とともにオートクレーブ中で反応させることにより粉末状のゼオライトが得られる。この際、ゼオライトの細孔は、合成条件(例えば、シリカとアルミナの混合比、反応温度、反応時間等)によって大きく左右され、一定の細孔を思いのまま作り出すことは不可能であった。特に、このような方法によって得られる金属酸化物は、オングストロームオーダー(せいぜい、十数Å)の細孔を有するものに限られていた。1992年に MOBIL社が発表した細孔40Åのアルミノシリケート材料はモノアルキルトリメチルアンモニウムを使用したもので、有機物を鋳型としてアルミノシリケート材料の細孔を制御するものとして有名である。しかし、この場合も細孔の大きさは、有機物の量、および物理的な合成条件等に依ることが大きく、また、オートクレーブ内での反応の為、たまたま40Å程度の細孔が得られてはいるが、思いのままに細孔を制御することはほぼ不可能に近かった。
【0004】
この他に、金属アルコキサイドを利用した所謂ゾル−ゲル法で合成したシリカアルミナ化合物を用いた物質分離、触媒などの開発もなされているが、シリカとアルミナが化学的に反応していないため、安定した機能を発揮できない。また、アルミニウムアルコキサイドは加水分解が非常に速く、合成に際して微細構造を制御することが難しく、通常、粒子状でしか目的の金属酸化物を得ることができない。
【0005】
上述のようなゼオライトの他に金属酸化物構造体には主としてフィルターとして利用されているものがあり、この場合には従来よりミクロンオーダー(数百Å〜数千Å)の細孔を有する金属酸化物構造体(例えば、アルミナ成型品)が用いられている。しかしながら、上述したような各種金属酸化物の細孔のメゾ領域、すなわち、ゼオライトが有するような細孔の大きさ(約10Å以下)とフィルターに用いられているような金属酸化物構造体の有する細孔の大きさ(数百Å以上)との中間の領域の細孔を有するように構造制御された金属酸化物を製造する方法は未だ確立されていない。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の主目的は、金属酸化物構造体における細孔の大きさを容易に制御することができ、特にメゾ領域の細孔を有する金属酸化物構造体を製造することができる方法を提供すること、ならびに、これによって、従来のものとは異なる新しいタイプのアルミノシリケートおよびその他の金属酸化物構造体を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、ある種の両親媒性化合物が溶媒中で形成する分子レベルの高い規則性を有する会合体を利用することにより細孔の大きさや細孔分布などの構造を制御した金属酸化物構造体が得られることを見出し、上記の目的を達成したものである。
【0008】
かくして、本発明は、二分子膜形成能を有する両親媒性化合物を分散または溶解させた水性溶液を熟成した後、乾燥して二分子膜会合体を調製する工程、所望の金属を含有するアルカリ性溶液と前記二分子膜会合体を接触させる1回または複数回の工程、その後、該二分子膜会合体を除去する工程を含むことを特徴とする金属酸化物構造体の製造方法を提供する。好ましい態様として、金属を含有するアルカリ性溶液はイオン交換剤により処理した後、二分子膜会合体と接触させる。
【0009】
また、本発明は、別の視点として、上記の方法によって製造され、約十Åから数百Åの細孔を有し、X線回折分析により非晶質を示すことを特徴とする金属酸化物構造体を提供する。本発明に従うこのような金属酸化物構造体の最も代表的なものはアルミノシリケートである。
【0010】
【発明の実施の形態と発明の効果】
分子両末端に極性基(親水基)および疎水基を有する両親媒性化合物のうち、ある種の分子構造を有する両親媒性化合物は、水性溶液中、ある条件下で保持(熟成)されると自己組織化して、生体膜と同様の二分子膜構造の会合体を形成することが知られている(例えば、「化学総説 No.40、分子集合体−その組織化と機能、日本化学会編(1983)」参照)。本発明は、このように自己組織性を有し二分子膜形成能を持つ両親媒性化合物が水性溶液中で高度に規則的な組織構造を形成することに着目し、その親水基部分に存在するカウンターイオン(アニオン)を利用したイオン交換により、目的の金属の水酸化物ないしは酸化物を固定化した後、二分子膜会合体を取り除くことによってメゾ領域の細孔を有し比表面積を増大させた金属酸化物構造体を得ることを可能にしたものである。
【0011】
なお、二分子膜形成能を持たない両親媒性化合物、すなわち一般の界面活性剤では低濃度では球状ミセルを、高濃度において棒状ミセルを形成するが様々な二分子膜形態を有する会合体を形成させることは不可能である。また、両親媒性化合物の水分散液を固体基板上に展開し、自己支持性の多層二分子膜フィルムを形成し、このフィルムを使用して、シリカアルミナ化合物の薄膜化を行う方法も提案されているが、この場合、両親媒性化合物は2次元フィルム状のみに成形されているため、メゾポアレベルの細孔を有すること、また比表面積を大きくすることは困難である。
【0012】
二分子膜会合体の調製
かくして、本発明を実施するに当たっては、先ず、二分子膜形成能を有する両親媒性化合物を分散させた水性溶液を熟成した後、乾燥して二分子膜会合体を調製する。両親媒性化合物の分散液または溶液は、下記に示すような両親媒性化合物の所定量を溶媒に溶解また分散させることによって調製されるが、この際、溶解または分散を促進するために加熱(一般に40〜90℃の温度)または超音波処理を行う。溶媒としては、多くの場合、水が使用されるが、水に対して溶媒性のある有機溶媒(例えば、メタノール、エタノール、THF等)と水との混合溶媒を使用することも可能である。
【0013】
次に、このようにして得られた分散液または溶液を熟成させると、両親媒性化合物が二分子膜状態で集合した会合体を形成する。すなわち、上記分散液または溶液を一定温度で長時間保持することにより、疎水部同志および親水部同志が互いに集まり、板状、棒状、チューブ状、球状、ヘリックスなどの形態を呈する会合体が形成される。図1には、従来より知られた二分子膜会合体のそのような形態を図示している。会合体を形成させるための熟成の条件は、溶媒、分散溶液中の濃度、温度等に依存するが、一般に、10℃〜50℃の温度下に、数時間〜数十時間実施する。水溶液系の一例をあげると、熱分散した両親媒性化合物溶液を30℃の恒温槽中で48時間放置し熟成させ、会合体を成長させる。
【0014】
その後、会合体の状態を変化させずに回収するため、会合体の含まれた液を冷却し、会合体を固定化させた後、そのまま乾燥させる。乾燥は、加熱乾燥でもよいが、一般的には凍結乾燥を行う。得られる会合体は、粉末で後に金属含有溶液に浸漬しても充分に回収可能な状態のものとなる。なお、このような会合体の形成は、X線回折、熱量分析、紫外可視分光分析などによって確認することができる。
【0015】
本発明で使用される両親媒性物質は、同一分子内に極性基(親水基)及び疎水基の両方を同時に有する化合物である。極性基としては、アンモニウム基、ポリアミン基及びスルホン基、硫酸基、カルボン酸基、スルホニウム塩、リン酸塩、ホスホン酸塩、ホスホニウム塩、ポリエーテル類、アルコール類、糖残基類を含むポリオール類との組み合わせを使用することができる。特に、後の金属含有溶液との接触工程における金属水酸化化合物との反応性を考慮すると、分子末端にカチオン基があるものが好ましい。他方、疎水基としては、アルキル基、アルキルアリル基、脂環基、縮合多環基及びこれらの基にフルオロカーボン鎖を含むもの、さらにこれらの組み合わせを使用することができる。ただし、生体膜と同様に安定な二分子膜会合体を形成するには、ある特定の部分化学構造が要求される。このような部分化学構造としては、例えば、2本以上のアルキル長鎖あるいはアゾベンゼン、ビフェニル等の剛いセグメントを含むアルキル長鎖等がある。本発明において使用され得るような二分子膜構造をとる両親媒性物質の化学構造上の特徴およびこれによる薄膜形成能や代表的な化合物などに関しては、本発明者等による特願平1−58889号(特開平2−238030号)明細書に詳細に記載されている。図2および図3に、本発明に使用され得る両親媒性化合物の代表例を示す。
【0016】
金属含有溶液の調製
一方、上記のようにして得られる二分子膜会合体を接触(浸漬)させるべき所望の金属(目的の金属酸化物構造体の金属酸化物源)を含有するアルカリ溶液を調製しておく。このためには、当該金属の化合物(金属の種類によっては金属の粉末)をアルカリ物質とともに、溶媒(水性溶媒)に添加して反応させる。アルカリ溶液を調製するために使用されるアルカリ物質としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の無機アルカリ化合物、または有機アミン化合物等を挙げることができる。
【0017】
また、金属酸化物源として使用可能な金属化合物等は、特に限定されるものではないが、シリカ源として、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム、シリカゲル、シリカアルコキサイド等、アルミナ源としてアルミニウム粉末、アルミン酸ナトリウム、硫酸アルミニウム、塩化アルミニウム、水酸化アルミニウム、アルミナゾル、アルミニウムアルコキサイド等、酸化バナジウム源としてオルトバナジン酸ナトリウム等、酸化モリブデン源としてモリブデン酸ナトリウム等、酸化錫源として錫酸、錫酸塩等が例示され、その他、各種の硫黄化合物、マグネシウム化合物、チタン化合物、リン化合物等がそれぞれの金属酸化物源として使用できる。
【0018】
金属酸化物構造体としてアルミノシリケートを製造する場合を一例として挙げると、上述したようなシリカ源およびアルミナ源をNaOHもしくはKOHまたはテトラメチルアンモニウム等の有機塩基類とともに、ある一定の組成比で混合すると、アルカリ溶液中で原料の溶解・縮合によって均一溶液を作ることができる。かくして、金属酸化物が該溶液中で合成され、合成された金属酸化物は非常に微細な状態で分散あるいは溶解をしている。そして、このとき、溶液全体がアルカリであることから、金属酸化物は溶液中でアニオン化して、すなわち、(O−T−O)- 、(O−T−O−M−O−)- 等のアニオン種として存在し(TおよびMは金属元素を示す)、後の工程で両親媒性化合物の二分子会合体と接触させると、該両親媒性化合物の親水基部分に存在するカウンターアニオンとイオン交換することができる。
【0019】
本発明に従えば、単一種の金属酸化物構造体が得られることは勿論であるが、異種金属化合物の混合による化学反応、または異種の金属アルコキサイド同士で反応した化合物をアルカリ溶液内で処理することなどによって得た異種金属を含有するアルカリ溶液を利用して異種金属酸化物構造体を製造することができる。そして、その異種金属酸化物の組成は反応条件によって、あるいは反応組成によって変化させることができるという特徴がある。しかし、いずれの金属酸化物溶液においても、後述のイオン交換を行わせるためには、使用溶媒は水成分が含まれるものが好ましい。
【0020】
上述のように、本発明において用いる金属含有溶液はアルカリ性域にあり、これにより金属がアニオン種の金属酸化物ないしは金属水化物として存在して、後の両親媒性化合物の会合体との接触(浸漬)工程においてイオン交換が行えるようにしたものである。各金属化合物が溶液内でアニオン化する至適pHは含有される金属に依存し、例えば、アルミニウム含有溶液の場合は強いアルカリ性(pH12〜13)が必要であるが、W(タングステン)のような場合は弱アルカリ性(pH8付近)である。
【0021】
会合体とアルカリ溶液の接触反応
次に、既述のように調製した両親媒性化合物の二分子膜会合体(一般に粉末状)を上記の金属含有アルカリ溶液に浸漬、接触させる。かくして、該会合体に接触したアニオン化金属酸化物ないしは水酸化物は、会合体を構成する両親媒性化合物の親水部分に浸透し会合体表面で該金属化合物のアニオンと両親媒性化合物親水部のカウンターアニオンとの交換反応が進行して金属酸化物ないしは水酸化物が溶液状態から両親媒性化合物表面に付着し固定化される。この複合化された化合物から、後述の工程において二分子膜会合体を除去すると、該会合体を鋳型として細孔が揃った金属酸化物構造体が得られる。
【0022】
金属含有アルカリ溶液への会合体の接触時間(浸漬時間)は、両親媒性化合物の種類、アルカリ溶液中の金属または金属化合物の濃度(これによって反応速度が異なる)などによって多少異なるが、両親媒性化合物が金属酸化物または水酸化物イオンと反応する時間は極めて速く、反応時間(浸漬時間)は一般に30分もあれば充分である。ただし、金属酸化物構造体を高収率で得るためには一連の操作を繰り返し行うことが有効である。すなわち、金属含有アルカリ溶液に浸漬後、一旦複合された会合体をろ過した後水洗し、再び金属含有アルカリ溶液に浸漬する。この方法は金属酸化物ないしは水酸化物のイオン濃度や、両親媒性化合物の種類に依存するが普通3回から6回程度で充分である。
【0023】
本発明の方法の好ましい態様においては、金属酸化物ないしは水酸化物の反応性を向上させるために、金属含有アルカリ溶液をイオン交換樹脂等のイオン交換剤により処理した後、二分子膜会合体と接触させることもできる。特にこのイオン交換剤を使用する方法は、金属酸化物ないしは水酸化物を会合体に効率よく反応させる方法として有効で、反応時間の短縮と高収率の金属酸化物構造体を得ることができる。ここで使用するイオン交換剤はプロトンタイプのカチオンイオン交換剤が有効で、例えばイオン交換樹脂、イオン交換膜などがある。
【0024】
また、浸漬させる両親媒性化合物はその分子構造中にエステル結合を有するものもあり、このような両親媒性化合物はアルカリ強度が大きくなる(pH値で11以上)と分解しやすくなる。さらに、アルカリ強度が弱くても、反応温度が高いと分解しやすくなる。従って、金属が含有されるアルカリ溶液を適度のアルカリ強度まで希釈などによって調整して両親媒性化合物の二分子膜会合体を浸漬したり、反応温度(浸漬温度)を分解しない程度にする注意が必要である。
【0025】
会合体の除去
上述のように、金属含有アルカリ溶液に両親媒性化合物の二分子膜会合体を浸漬処理して得られた複合物から該会合体を除去することにより、金属酸化物が残存し、該会合体を鋳型とした状態で金属酸化物構造体を得ることができる。会合体の除去は、一般に抽出除去または焼成除去によって実施される。
【0026】
すなわち、反応後の複合物から、両親媒性化合物を溶解させるが、金属酸化物を溶解しないような溶剤、例えば、シリケートの場合クロロホルム等を利用し、両親媒性化合物を抽出除去する。あるいは、複合物を分解温度以上に加熱して、両親媒性化合物を焼却除去する。いずれの方法でも、所望の金属酸化物構造体を得ることは可能であるが、繰り返し両親媒性化合物を利用することを考慮すると抽出除去による方法が好適である。
【0027】
金属酸化物構造体の特性
以上の説明から理解されるように、本発明の方法によれば室温下において高効率で金属酸化物構造体を得ることができる。本発明によって得られる酸化物構造体は、従来の金属酸化物構造体には殆ど見当たらないメゾ領域、すなわち、大略十Åから数百Å、特に約二十Åから百数十Åの細孔を有し、比表面積も大きい。さらに、本発明の金属酸化物構造体は、全体的に非晶質を呈することがX線回折分析により確認されている。この点、ゼオライトとして知られている従来のアルミノシリケート構造体が結晶質であり細孔も10Å程度あることを考慮すると本発明は従来には見られない新しいタイプの金属酸化物構造体を提供するものである。
かくして、本発明の金属酸化物構造体は、従来より存するゼオライト系構造体および大細孔構造体によっては不可能であった領域の各種物質を対象とする高選択的な分離剤、除放剤あるいは触媒などとしての用途が期待される。
【0028】
【実施例】
以下、実施例に沿って本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって制限されるものではない。
実施例1
両親媒性化合物(1)を超音波分散機を用いて、50mMの水分散液を作成後、溶液がまだ熱い段階でアンプル管へ入れた後、30℃の恒温槽中に48時間放置し、両親媒性化合物(1)の二分子会合体を熟成させた。その後、溶液を液体窒素で凍結させた後、凍結乾燥器に移し乾燥させた。得られた会合体は、白いスポンジ状の固体であった。この会合体をX線回折装置(マックサイサンズ社製MXP−18X線回折装置:50kV/200mA)によって測定したところ、長周期パターンが得られ会合体の成長が確認された。また、示差走査熱量分析計(DSC)(セイコー電子工業(株)SSC−5020)を用いて、得られた会合体粉末を測定したところ、70℃においてゲルー液晶相転移に伴う吸熱ピークが確認され、このことからも会合体の形成を確認することができた。
【0029】
【化1】
Figure 0004159123
【0030】
一方、アルミノシリケート前駆体10Na2 O,0.25Al2 3 ,32SiO2 , 360 H2 Oの組成で作成した溶液を40℃、12時間保持することで得た。得られた溶液は無色透明で、pH12.5であった。この溶液を蒸留水で10倍に希釈し、先に得た両親媒性化合物会合体を室温で約30分間浸漬した。一旦、ろ過した後水洗し、再度10倍希釈アルミノシリケート溶液に浸漬させた。浸漬/水洗の行為を3回繰り返した後、室温で風乾した。
【0031】
得られた粉末を窒素雰囲気下で 300℃まで昇温速度1℃/分で熱処理した後、さらに空気を流しながら 600℃まで同一昇温速度で熱処理した。得られた物質は白色粉末であった。
【0032】
得られた物質をX線回折装置によって測定したところ特にピークは観測されず非晶質であること、また蛍光X線分析(理学電気(株)製蛍光X線分析装置システム3270)を行ったところ粉末中にケイ素およびアルミニウムが存在すること、また核磁気共鳴装置によるMAS分析を行ったところ、ケイ素のケミカルシフトが−90から−110ppmに、また、アルミニウムのケミカルシフトが48ppm であることが確認され(図4参照)、得られた白色粉末がアルミノシリケートであると推察された。得られた粉末を液体窒素温度での窒素吸着によるBET吸着測定を行ったところ、20Åの細孔を有する(図5参照)比表面積400m2/g の物質であることが分かった。さらに、この粉末の走査型電子顕微鏡(日本電子(株)製JSF−840F:加速電圧5kV、金蒸着サンプル)による観察を行ったところ微細な粒状粒子が存在していた(図6参照)。
【0033】
実施例2
両親媒性化合物(2)を50mMとなるように調整し、加温して分散させた。分酸液は実施例1同様、30℃の恒温槽に48時間放置熟成させた。得られた調整液を一旦液体窒素温度で凍結させた後凍結乾燥機によって乾燥させた。得られた粉末は黄色で若干固いかたまりであった。
【0034】
【化2】
Figure 0004159123
【0035】
アルミノシリケート溶液は10Na2 O,0.15Al2 3 ,32SiO2 , 440 H2 Oに調製し、40℃に保持し合成した。実施例1同様に両親媒性化合物のカウンターイオンをアルミノシリケートイオンとイオン交換した。得られた複合物を乾燥後、クロロホルム溶媒に室温で浸漬し、およそ12時間、時々溶媒を交換しながら両親媒性化合物を抽出除去した。得られた粉末を乾燥後、 600℃で熱処理した。
【0036】
得られた粉体を走査型電子顕微鏡で観察すると、板状になったアルミノシリケートが観察され、その厚みはおよそ20Åであった(図7参照)。この粉末のX線回折を測定しても特にピークは観測されず、非晶質であった。また、比表面積および細孔分布は、それぞれ400m2/g と20Åであった。
【0037】
実施例3
両親媒性化合物(3)を50mM水溶液となるように調製し、熱分散させた後、0℃に一旦冷却し同温度で30分放置後、アンプル管へ溶液を移し30℃の恒温槽で48時間以上熟成させた。この溶液を実施例1同様の方法で凍結乾燥した。得られた粉末は、赤黄色であった。
【0038】
【化3】
Figure 0004159123
【0039】
アルミノシリケート溶液は10Na2 O,0.15Al2 3 ,32SiO2 , 440H2 Oに調整後、40℃で24時間撹拌放置し水で10倍希釈した物を使用した。先に得られた両親媒性化合物をこのアルミノシリケート溶液に浸漬後、実施例1同様に水洗、ろ過を繰り返し行った後、粉末を実施例1同様に窒素雰囲気下、昇温速度1℃/分で 300℃まで昇温し、さらに1時間保持、続けて空気を流しながら同一昇温速度で 600℃まで昇温後 600℃で1時間保持し、室温まで冷却した。
【0040】
得られた白色粉末を走査型電子顕微鏡で観察したところ繊維状物が観察された(図8参照)。窒素吸着による比表面積を測定したところ、600cm2/gの大きさを有し、細孔分布測定では20Åと 130Åに細孔が確認された(図9参照)。また、130 Åの細孔の存在を裏付ける様にX線回折測定で、約0.6 付近に回折ピークが観測された(図10参照)。
【0041】
実施例4
両親媒性化合物(3)を使用した点およびその会合体製造、乾燥した点は実施例3と同一である。アルミノシリケート溶液の作成は、ポリプロピレン容器に10Na2 O,1.82Al2 3 ,14.55 SiO2 , 131H2 Oとなるように溶液を調製し、40℃の雰囲気下で1週間かくはんした。溶液は調製時無色透明の溶液であるが、一週間後白色不透明の溶液となった。得られた溶液を水で10倍に希釈後、プロトン化したカチオン交換樹脂(オルガノ(株)製アンバーリスト)に通した溶液に両親媒性化合物会合体を浸漬した。およそ5分後両親媒性化合物をろ過し、水洗を2回行った後、再度同じように浸漬、水洗を行った。得られた粉末は、そのまま凍結乾燥器にかけ乾燥させた。乾燥後粉末を実施例3同様に熱処理によって、有機物を除去し白色粉末を得た。
【0042】
得られた粉末の核磁気共鳴装置による測定で27Alのケミカルシフトピークが56ppm となり粉末中のアルミニウムが4配位状態であることから、得られた粉末がゼオライト化していることが推察された(図11参照)。またその微細形状は実施例3同様におよそ 130Åの細孔分布を有することが明らかとなった。
【0043】
実施例5
バナジウム化合物としてオルトバナジン酸ナトリウム4.6g(0.025mol)を、モリブデン酸化合物としてモリブデン酸ナトリウム6.0g(0.025mol)をそれぞれ水10mlに溶解させた。また、別にシリカゲル6.0g(0.1mol)、NaOH 2.4g(0.06mol)を水15mlに混合、溶解した。両親媒性化合物(2)の会合体を実施例2同様に作成後、バナジウム溶液、モリブデン溶液、各溶液とシリケート溶液との混合溶液(1対1)の10倍希釈溶液にそれぞれ10分間、室温で浸漬させた。ろ過、水洗後、再度浸漬を2回繰り返したのち、クロロホルムで両親媒性化合物を抽出除去した。得られた複合粉末のX線回折結果から、会合体にそれぞれの金属酸化物が複合化されていること、蛍光X線分析から得られた金属酸化物がバナジウムの酸化物であること(表1参照)、モリブデンの酸化物であること(表参照)、また混合溶液から作製した金属酸化物構造体がシリカと各金属との複合物であることが確認された。
【0044】
【表1】
Figure 0004159123
【0045】
【表2】
Figure 0004159123

【図面の簡単な説明】
【図1】両親媒性化合物による二分子膜会合体の各種の形態を示す。
【図2】本発明において用いられる両親媒性化合物の代表例の化学構造式を示す。
【図3】本発明において用いられる両親媒性化合物の代表例の化学構造式を示す。
【図4】本発明によって得られた金属酸化物構造体の1例のNMR測定チャートを示す。
【図5】本発明によって得られた金属酸化物構造体の1例のBET吸着測定チャートを示す。
【図6】本発明によって得られた金属酸化物構造体の1例の粒子構造を示す電子顕微鏡写真である。
【図7】本発明によって得られた金属酸化物構造体の1例の粒子構造を示す電子顕微鏡写真である。
【図8】本発明によって得られた金属酸化物構造体の1例の繊維形状を示す電子顕微鏡写真である。
【図9】本発明によって得られた金属酸化物構造体の1例のBET測定チャートを示す。
【図10】本発明によって得られた金属酸化物構造体の1例のX線回折測定チャートを示す。
【図11】本発明によって得られた金属酸化物構造体の1例のNMR測定チャートを示す。

Claims (2)

  1. 二分子膜形成能を有する両親媒性化合物を分散または溶解させた水性溶液を熟成した後、乾燥して二分子膜会合体を調製する工程、所望の金属を含有するアルカリ性溶液と前記二分子膜会合体を接触させる1回または複数回の工程、その後、該二分子膜会合体を除去する工程を含むことを特徴とする金属酸化物構造体の製造方法。
  2. 金属を含有するアルカリ性溶液をイオン交換剤により処理した後、二分子膜会合体と接触させることを特徴とする請求項1の金属酸化物構造体の製造方法。
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