JP4158611B2 - 投射型映像表示装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、液晶パネル等の映像表示素子を用いた投射型映像表示装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、液晶プロジェクタ等の投射型映像表示装置には、小型構造であることの他、高輝度、高コントラスト等の性能が求められている。
【0003】
高輝度化の従来技術としては、映像表示素子に液晶パネルを用いる場合には、偏光ビームスプリッタを利用し、光源から出射されるランダムな偏光光をP偏光光とS偏光光とに分離後、偏光方向を揃えて液晶パネルに照射するようにしたものがある(例えば、特許文献1参照)。また、高コントラスト化のための従来技術としては、凹状の円錐面を備えたレンズを用い、リフレクタからの入射角度の大きい光線を平行光に変換する技術が記載されている(例えば、特許文献2参照)。また、画面の輝度の均一性を上げる従来技術としては、2枚のアレイレンズを用いたインテグレータ光学系が記載されている(例えば、特許文献3参照)。
【0004】
【特許文献1】
特開平4−63318号公報(135頁、第1図)
【特許文献2】
特開平6−342158号公報(1頁、図1)
【特許文献3】
特開平3−111806号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
一般に、液晶パネル等の映像表示素子では、平行に近い光束が入射したときに良好なコントラスト特性が得られるが、光束の入射角(以下、光束入射角という)が増大すると、液晶パネル等の入射角依存性により、投射映像のコントラストが低下する。図12は、透過型液晶パネルにおいて、光束入射角に対するコントラスト値の変化を実験により求めた結果である。液晶パネルに照射される光の光束入射角が小さい場合ほどコントラストが増大する。従って、高コントラスト化に対しては、液晶パネル等映像表示素子への光束入射角を小さくすることが望ましい。しかし、液晶パネル等映像表示素子への照射光量の増大化に基づく高輝度化を行うと、概して映像表示素子への光束入射角が増大してしまい、コントラストの低下を招く。高輝度化と高コントラスト化とを両立させるためには、液晶パネル等映像表示素子への照射光量を低減することなく光束入射角を小さくすることが必要である。例えば上記特開平6−342158号公報記載の技術では、リフレクタの開口にほぼ等しい径を有しかつ光軸方向に厚い寸法のレンズが必要となり、装置が大型化するおそれがある。
【0006】
本発明の課題は、上記従来技術の状況に鑑み、明るい場所や暗い場所等の使用環境に対し適宜対応できる投射型映像表示装置を提供することである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記課題点を解決するために、本発明では、光源からの光を照明光学系により映像表示素子に照射し映像信号に応じた光学像を形成し、拡大投射して映像を表示する投射型映像表示装置であって、光束を遮る少なくとも2つの状態を有する可変絞りを有し、該可変絞りは、画面の明るさ及びコントラストを複数通りに切換え可能にした構成とする。
【0008】
以上説明したように本発明によれば、投射型映像表示装置において、明るい場所や暗い場所等の使用環境に対し適した明るさ及びコントラストでの対応が可能となる。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明による実施の形態につき、図面を用いて説明する。
【0010】
第1の実施の形態は、第1、第2のアレイレンズ間に光束を遮る絞りとして、扉状の光遮断部が支持軸周りに回転して移動変位し光軸方向に開閉する構成の両開き型の可変絞りを設置し、光遮断部の開閉に基づく光束の絞り状態に対応して、冷却ファンの回転数を変えるようにした場合の構成例である。
【0011】
図1において、1は光源、2R、2G、2Bはそれぞれ、透過型液晶パネル等の透過型映像表示素子、3は拡大投射用の投射レンズユニット、4、14、19、20は反射により光路方向を変えるミラー、5は楕円面、放物面などの反射面で光源からの光を反射するリフレクタ、6はマトリックス状に配列された複数の小さな集光レンズ(レンズセル)より成り、複数の2次光源像を形成する第1のアレイレンズ、21は光束を絞る両開き型の可変絞り、7は第1のアレイレンズ6と同様にマトリックス状に配列された複数の小さな集光レンズ(レンズセル)より構成され第1のアレイレンズの個々のレンズ像を結像する第2のアレイレンズ、8は第2のアレイレンズ7側からの光をP偏光光とS偏光光とに分離して出射する偏光ビームスプリッタ(図示なし)とP偏光光、S偏光光のいずれかの偏光方向を回転する1/2波長位相差板(図示なし)とで構成される偏光変換素子、9、10R、10Gは集光用レンズ、11は色合成用の合成プリズム、12、13は色分離用のダイクロイックミラー、15、16、17はそれぞれ、第1リレーレンズ、第2リレーレンズ、第3リレーレンズ、18はスクリーン、26は冷却用ファン、27は通風ダクト等で形成する冷却用空気の流路である。第1のアレイレンズ6からコンデンサレンズ10R、10G、10Bまでの光学系は、透過型映像表示素子2R、2G、2Bに対する照明光学系を構成する。透過型映像表示素子2R、2G、2Bでは、映像信号駆動回路(図示なし)により、光源1側からの光に対し、映像信号に応じた光強度変調を行い、光学像を形成する。図1の構成において、光源1より出射した光束は、リフレクタ5で反射することによって集められ、第1のアレイレンズ6側へ出射される。第1のアレイレンズ6は、入射した光束を複数のレンズセルで複数の光束に分割し、光束が第2のアレイレンズ7、偏光変換素子8を効率良く通過できるようにする。第2のアレイレンズ7は、その複数のレンズセルのそれぞれが、対応する第1のアレイレンズ6のレンズセルのレンズ像を、透過型映像表示素子2R、2G、2B側に投影する。このとき、偏光変換素子8は、第2のアレイレンズ7からの光束を所定の偏光方向に揃える。集光レンズ9、コンデンサレンズ10R、10G、第1のリレーレンズ15、第2のリレーレンズ16、及び第3のリレーレンズ17は、これら第1のアレイレンズ6の各レンズセルのレンズ像を、各映像表示素子2R、2G、2B上に重ね合わせる。光源1より出射された白色光は、偏光変換素子から出射され、ミラー4で反射された後、集光レンズ9、コンデンサレンズ10R、10G、第1のリレーレンズ15、第2のリレーレンズ16、及び第3のリレーレンズ17を経て各映像表示素子2R、2G、2Bに照射される過程で、ダイクロイックミラー12、13により、赤色光(R光)、緑色光(G光)、青色光(B光)に分離され、それぞれ対応する映像表示素子2R、2G、2Bに照射される。なお、本構成例の場合、ダイクロイックミラー12は、赤色光を透過し、緑色光と青色光は反射させる特性を有し、ダイクロイックミラー13は、緑色光を反射して青色光を透過させる特性を有する。各色光が照射された映像表示素子2R、2G、2Bは、外部からの映像信号によって各色光を変調して映像信号に対応した光学像を形成し、信号光として合成プリズム11側に出射する。合成プリズム11では、各色光の信号光を色合成し、投射レンズユニット3側に出射する。投射レンズユニット3は白色光の光学像をスクリーン18上に拡大投射し、映像を表示する。上記において、第1のリレーレンズ15、第2のリレーレンズ16、及び第3のリレーレンズ17は、映像表示素子2R、2Gの光路長に対し映像表示素子2Bの光路長が長くなっているため、これを補う作用もある。また、コンデンサレンズ10R、10G、第3のリレーレンズ17は、映像表示素子2R、2G、2B通過後の光束の広がりを抑え、投射レンズユニット3によって効率良く拡大投射が行えるようにする。冷却用ファン26は、回転による送風で、例えば、映像表示素子2R、2G、2Bや、各映像表示素子2R、2G、2Bの前後に設けられる入射側偏光板、出射側偏光板(図示なし)等において、光源1からの照射光を吸収することで装置内に発生する熱を冷却する。これら冷却対象部への送風は、通風ダクト(図示なし)等で形成した冷却用空気の流路27を介して行う。各映像表示素子へ照射される光の量及び入射角は、投射型映像表示装置の使用環境に応じ、可変絞り21の光遮断部の移動変位によって調整される。
【0012】
上記のように構成された投射型映像表示装置において、液晶パネル2への光束は可変絞り21で絞られて光束入射角度が小さくなるので、コントラストが向上することになる。
【0013】
図2は、図1の映像表示装置に用いる可変絞り21の構成例を示す。
【0014】
図2の可変絞りの構成例は、2個の扉状の光遮断部が支持軸周りに回転して移動変位し光軸方向に開閉する構成の両開き型の例である。図2において、21a、21bはそれぞれ支持軸周りに回転する光遮断部、210は、光通過用凹部21a、21bによって光路上に形成される光通過用開口部である。また、Aは、光束を絞った状態にある光遮断部21aの位置、Aは、光束を絞らない状態(絞りを解除した状態)にある光遮断部21aの位置、Bは、光束を絞った状態にある光遮断部21bの位置、Bは、光束を絞らない状態(絞りを解除した状態)にある光遮断部21bの位置である。本実施の形態では、可変絞り21の光遮断部21a、21bは、移動変位によりそれぞれ、位置A、Bで光束を外周側から絞った第1の状態と、位置A、Bで絞りを解除した第2の状態とを形成するようになっている。第2の状態では光遮断部21a、21bは、光束に対して略平行状とされて光束を遮らない。第1の状態では光遮断部21a、21bは、光束に対して略直角状とされて光束の外周側を遮り、光通過用開口部210が、外周側を遮られた光束を、映像表示素子側に向けて通過させる。なお、可変絞り21の光遮断部21a、21bの移動変位による開閉動作は、モータや電磁式アクチュエータ等を用い、例えばボタン操作で行うものとする。光遮断部21a、21bは、例えば、明るい使用環境下では第2の状態とし、暗い使用環境下では第1の状態とする。光束を外周側から絞った第1の状態では、絞りを解除した第2の状態に比べ、映像表示素子に照射される光の量が減るため、映像の明るさは低下するが、反面、映像表示素子に照射される光の入射角の減少によって映像のコントラストは増大する。また、フォトトランジスタ等の光電変換素子を用いて使用環境を検出し、検出結果に基づいて、可変絞り21の光遮断部21a、21bの開閉動作を制御するように構成してもよい。例えば、光電変換素子により所定の光量を検出した場合には、明るい使用環境下と判断して、絞りを解除した第2の状態とし、光電変換素子により検出した光量が所定の光量以下の場合には、暗い使用環境下と判断して、光束を外周側から絞った第1の状態とするように構成する。
【0015】
以上の実施の形態では、可変絞りとして、2個の扉状の光遮断部が支持軸周りに回転し、移動変位して光軸方向に開閉する構成の両開き型のものを用いた場合について説明した。本発明はこれに限定されず、可変絞りは、例えば、カメラの絞り機構のような光遮断部の面積が平面において変化する機構で構成されるものを用いてもよい。
【0016】
図3は、図1の投射型映像表示装置の照明光学系中における可変絞り21の動作を説明する図である。図3(A)は、可変絞り21により光束の外周側の絞りを解除した第2の状態、図3(B)は、可変絞り21により光束の外周側を絞った第1の状態を、それぞれ簡略化して示す図である。
【0017】
図3において、第2の状態では、映像表示素子2へは光束が絞られない状態で照射されるため、光の入射角22が比較的大きい。このため、映像のコントラストもこれに対応した値となる。これに対し、第1の状態では、映像表示素子2へは光束の外周側が絞られた状態で照射されるため、光の入射角22が、第2の状態の場合よりも減少する。このため、映像のコントラストもこれに対応して増大した値となる。本実施の形態では、使用環境に応じて、制御により第1、第2の状態の切替を可能とする。
【0018】
図4は、図1の投射型映像表示装置における冷却系の制御を説明する図である。
【0019】
図4において、26は冷却用ファン、33は冷却用ファン26を駆動するファン用電源、31は可変絞り21の光遮断部21a、21bによる光束の絞り状態を、例えば機械的スイッチ等により検出する絞り状態検出部、32は絞り状態検出部31の出力信号に基づき制御信号を形成し、制御信号によりファン用電源33を介して冷却用ファン26の回転を制御する制御手段としてのマイコン(マイクロコンピュータ)である。ファン用電源33は冷却用ファン26に印加する少なくとも異なる2つの電源電圧を有し、マイコン32からの制御信号により、高い側の電圧を冷却用ファン26に印加した場合には、冷却用ファン26は回転数が増大し、低い側の電圧を印加した場合には、冷却用ファン26は回転数が低下するようになっている。マイコン32は可変絞り21の光遮断部21a、21bにより光束が絞られた第1の状態のときには、低い側の電圧を冷却用ファン26に印加するようにファン用電源33を制御し、また、可変絞り21の光遮断部21a、21bにより可変絞りが解除された第2の状態のときには、高い側の電圧を冷却用ファン26に印加するようにファン用電源33を制御する。絞り状態検出部31は、光束の絞り状態の検出を、可変絞り21の光遮断部21a、21bの移動変位量や移動位置の検出で行ってもよい。または、光遮断部21a、21bを駆動するモータや電磁アクチュエータ等の出力信号から検出信号を得るようにしてもよい。さらに、他の方法で行ってもよい。また、冷却用ファン26の回転の制御は、ファン用電源33を介して制御するものの他、冷却用ファン26の駆動回路を直接制御するものであってもよい。以上の実施の形態では、光束の絞り状態の検出を行う場合について説明した。本発明はこれに限定されず、他の方法として、例えば使用環境状況に応じて、ボタン操作を行うことにより可変絞りの開閉動作を設定すると共に、設定した可変絞りの状態に基づいて冷却ファンの回転数を制御する構成にしてもよい。
【0020】
以上より、本実施の形態の構成によれば、1台の投射型映像表示装置で、明るさとコントラストとを連動的に切換えることで、明るい場所や暗い場所等の使用環境に対し適した明るさ及びコントラストでの対応が可能となる。例えば、明るい使用環境等において、映像の明るさを重視する場合は、可変絞りを解除して明るい映像とし、反対に、暗い使用環境等において、明るさの低減化が許される場合には、光束を絞り状態としコントラストを高めた映像を表示することができる。光束を絞り状態とした場合は、可変絞りよりも光出射側にある光束の通過量が低下して、温度上昇も低減化され、装置内の発熱や温度上昇も抑えられる。また、少なくとも明るさの切換えによる変化に対応して、冷却用ファンの回転を制御できるため、明るさを低減した使用状態では、装置内の発熱や温度上昇も比較的少ないことに対応させて冷却ファンの回転数を低下させ、騒音や消費電力の低減化を図ることができる。
【0021】
図5は、本発明による第2の実施の形態を示す可変絞り21である。
【0022】
第1の実施の形態と異なる点は、可変絞り21が扉状の絞りを2重に備えており、それぞれ開口部の面積が異なる点である。したがって順に絞っていくことによって、2段階の絞りの効果を得ることができる。本実施の形態による可変絞りはこれらのものに限定されるものではなく、扉状の絞りを3重以上に備える構成にしてもよいことは明白である。
【0023】
図6は、本発明による第3の実施の形態を示す図である。
【0024】
第1の実施の形態と異なる点は、可変絞り21を第1のアレイレンズより光源側に配置した点である。光源に用いるリフレクタの形状は回転放物面になっており、ランプ管球からの光束を略平行に出射する。逆に出射光と同様に平行な光束を入射すると光束はランプ管球に戻し、さらに光束は管球を貫き、再度リフレクタに反射して出射する作用を持っている。第1のアレイレンズ手前に配置した可変絞りに反射率と平面度の高い材質を用いており、可変絞りによって遮られた光束は反射して光源側に戻る。この戻り光束が、放物リフレクタの作用によって、再度反射して出射されるため、本来可変絞りよって捨てられる光束を有効に利用できるようになるため、可変絞りによる明るさの低下を防ぐことができる。可変絞りの反射率を高めたことにより+3%の明るさ改善を実現している。
【0025】
また、可変絞りを配置するする位置は、例えば、第2のアレイレンズと偏光変換素子の間或いは、偏光変換素子と集光レンズの間にしてもよい。
【0026】
図7は、本発明による第4の実施の形態を示す図である。
【0027】
第1の実施の形態と異なる点は、可変絞りを2ヶ所に分けて配置した点である。図7において、50は第1のアレイレンズ手前に配置した第1の可変絞り、51は第2のアレイレンズ手前に配置した第2の可変絞りを示す。第2の可変絞り51は第1の可変絞り50より開口部の面積を小さくしており、第1の可変絞り、第2の可変絞りを順に絞ることで2段階の絞りの効果を得ることができる。また別々に絞ること無くても、可変絞りによって吸収する光束による発熱を2箇所に分散させることが可能であり、1箇所での極端な発熱を防ぎ、装置としての冷却を簡略化できる。
【0028】
本発明による第5の実施の形態として、可変絞りの形状について説明する。本実施の形態の可変絞りは、液晶パネルにおける光束入射角度が同じでも、入射方向によりコントラスト性能が異なる『コントラストの視野角特性』を利用して、明るさの低下を抑えながら、コントラストの向上を図るものである。
【0029】
図8は一般的な液晶パネルにおけるコントラストの視野角特性の一例を示し、1本の入射光束の液晶パネル面の法線に対する倒れ角、及び光束倒れの方位角をパラメータとしてコントラストをプロットしたものである。この例の示すところは、光束の入射角度に対する液晶パネルのコントラストは、光束の倒れ角のみで決定されるものではなく、方位角にも大きく依存していることである。たとえば同じ倒れ角10度の光束で比較したとして、図8紙面右上からの入射(方位角45度)の場合と、図8紙面右下からの入射(方位角135度)ではコントラストの値が大きく違うことを示している。
【0030】
実際の投射型映像表示装置においては、いろいろな入射角度の光束が束になって液晶パネルに入射するものであり、投射型映像表示装置としてのコントラストは各光束のコントラストを総合した値となる。したがって、可変絞りを用いて光束を遮る際に、コントラストが悪い方位角の光束を優先的に遮れば、効率的なコントラスト改善が得られることになる。
【0031】
図9に本実施の形態における可変絞りの形状を示す。図9において、本発明の可変絞り21は図8に示した視野角特性の液晶パネルに対応したものであり、図9紙面右下の光束即ち図8の略方位角90度から略方位角180度の間のコントラストの悪い光束を遮るような形状となっている。従って、従来使用されている光軸を中心とした軸対象な絞りで光束を遮る場合よりも、光束の遮蔽量を少なくしながら、即ち明るさの低下を少なくしながら、コントラストの向上を図ることができる。図10は、本実施の形態における可変絞りによって一部を遮られた光束の液晶パネル上への入射の状態を示している。入射光束は液晶パネルの視野角特性に対応した角度分布になっており、効率的なコントラストの改善を実現している。
【0032】
図3(A)に対応する光束量1200lm、コントラスト400:1の投射型映像表示装置に図3(B)に示す可変絞り21として、本発明による図9に示す形状の可変絞りを用いた場合、光束量900lmでコントラスト700:1を実現することができた。可変絞りの形状を液晶パネルの視野角特性に対応した形状とせずに、従来用いられているような単純な矩形とした場合、コントラスト700:1を実現するためには、より小さく絞る必要があり、光束量が700lmまで下がってしまう。
【0033】
上記した本実施の形態では、可変絞りの形状が上下非対称かつ左右非対称であるが、これは液晶パネルの視野角特性により決定するものである。何れの場合も、光軸に対して軸非対称であることはいうまでもない。
【0034】
図11は、本発明による第6の実施の形態を説明するブロック図である。
【0035】
第6の実施の形態において、例えば、第1の実施の形態と同様の構成の可変絞りを配置し、可変絞りの光遮断部の開閉移動変位に基づく光束の絞り状態または絞り解除状態に対応して、冷却系の冷却用ファンの回転数を変えるとともに、映像表示素子の色温度特性(ホワイトバランス)とγ特性と色むら補正を含む電気的特性を調整するようにした場合の構成例である。一般に、液晶パネル等の映像表示素子においては、非線形のv−t特性(電圧−透過率特性)を有し、例えば、映像表示素子を駆動する駆動回路により所定の色温度特性やγ特性や色むら補正を示すように調整される。電気的特性の調整値は、液晶パネル等の映像表示素子に入射される光の量や入射角によって異なる。
【0036】
図11において、2は液晶パネル等の映像表示素子、40は映像表示素子2を駆動する駆動回路である。駆動回路40においては、可変絞りによる光束の絞り状態に応じた色温度特性調整値やγ特性調整値が予め設定されている。26は冷却用ファン、33は冷却用ファン26を駆動するファン用電源、31は可変絞り21の光遮断部21a、21bによる光束の絞り状態を検出する絞り状態検出部、32は制御手段としてのマイコンであって、絞り状態検出部31の出力信号に基づき制御信号を形成し、制御信号によりファン用電源33を介して冷却用ファン26の回転を制御すると共に、駆動回路40を介して映像表示素子2の色温度特性やγ特性や色むら補正を含む電気的特性を調整する。第2の実施の形態においても、ファン用電源33は、冷却用ファン26に印加する少なくとも異なる2つの電源電圧を有し、マイコン32からの制御信号により、高い側の電圧を冷却用ファン26に印加した場合には、冷却用ファン26は回転数が増大し、低い側の電圧を印加した場合には、冷却用ファン26は回転数が低下するようになっている。また、マイコン32は、可変絞り21の光遮断部21a、21bにより光束が絞られた第1の状態のときには、低い側の電圧を冷却用ファン26に印加するようにファン用電源33を制御するとともに、映像表示素子2の電気的特性が、第1の状態の場合の光の量または入射角に対応した特性となるように、駆動回路を制御する。また、可変絞り21の光遮断部21a、21bにより可変絞りが解除された第2の状態のときには、高い側の電圧を冷却用ファン26に印加するようにファン用電源33を制御すると共に、映像表示素子2の電気的特性が、第2の状態の場合の光の量または入射角に対応した特性となるように、駆動回路を制御する。絞り状態検出部31では、光束の絞り状態の検出を、第1の実施の形態の場合と同様、可変絞り21の光遮断部21a、21bの移動変位量や移動位置の検出で行ってもよいし、または、光遮断部21a、21bを駆動するモータや電磁アクチュエータ等の出力信号から検出信号を得るようにしてもよいし、さらに、他の方法で行ってもよい。また、冷却用ファン26の回転の制御は、ファン用電源33を介して制御する他に、冷却用ファン26の駆動回路を直接制御するものであってもよい。
【0037】
第6の実施の形態の構成によれば、投射型映像表示装置において、第1の実施の形態の場合と同様、明るさとコントラストとを連動的に切換えて、明るい場所や暗い場所等の使用環境に対し適した明るさ及びコントラストでの対応が可能となる。例えば、明るい使用環境等において、映像の明るさを重視する場合は、光束の絞りを解除して明るい投射映像とし、反対に、暗い使用環境等において、明るさの低減化が許される場合には、光束を絞り状態としコントラストを高めた状態で映像を表示することができる。光束を絞り状態とした場合は、可変絞りよりも光出射側において光の量が減り部品等の温度上昇も低減化され、装置内の温度上昇も抑えられる。また、少なくとも明るさの切換えによる変化に対応して、冷却用ファンの回転を制御できるため、明るさを低減した使用状態では、装置内の発熱や温度上昇も比較的少ないことに対応させて冷却ファンの回転数を低下させ、騒音や消費電力の低減化を図ることができる。また、映像表示素子を、光束の絞り状態に対応した色温度調整値やγ調整値に設定でき、光束の絞り状態に対応した画質にすることが可能となる。
【0038】
なお、本発明では、映像表示素子として透過型のものを用いる構成としたが、これに限定されず、反射型の映像表示素子を用いてもよい。また、第6の実施の形態では、光束の絞り状態に対応して、冷却ファンの回転と映像表示素子の電気的特性の調整値の設定との両方を制御する構成としたが、映像表示素子の電気的特性の調整値の設定の方だけを制御する構成としてもよい。
【0039】
【発明の効果】
以上説明したように本発明によれば、高画質な投射型映像表示装置を提供可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による第1の実施の形態の投射型映像表示装置の構成例を示す図。
【図2】本発明による第1の実施の形態に用いる可変絞りの構成の一例を示す図。
【図3】本発明による第1の実施の形態の可変絞りの動作を説明する図。
【図4】絞りの状態によって、冷却用ファンの回転数を制御するブロック図。
【図5】本発明による第2の実施の形態に用いる可変絞りの構成の別の一例を示す図。
【図6】本発明による第3の実施の形態の動作を説明する図。
【図7】本発明による第4の実施の形態の動作を説明する図。
【図8】映像表示素子におけるコントラストの視野角特性を示す図。
【図9】本発明による第5の実施の形態を示す図。
【図10】映像表示素子への光束の入射の状態を示す図。
【図11】本発明による第6の実施の形態の可変絞りの状態によって、映像表示素子の色温度調整値やγ調整値を制御するブロック図。
【図12】光束入射角度に対する映像表示素子のコントラストの変化を示す図。
【符号の説明】
1…光源、2、2R、2G、2B…映像表示素子、3…投射レンズユニット、4、14、19、20…ミラー、5…リフレクタ、6…第1のアレイレンズ、7…第2のアレイレンズ、8…偏光変換素子、9…集光レンズ、10R、10G…コンデンサレンズ、11…合成プリズム、12、13…ダイクロイックミラー、15…第1リレーレンズ、16…第2リレーレンズ、17…第3リレーレンズ、18…スクリーン、21…可変絞り、21a、21b…光遮断部、22…光束入射角、26…冷却用ファン、27…冷却用空気の流路、31…絞り状態検出部、32…マイコン、33…ファン用電源、40…駆動回路、50…第1の可変絞り、51…第2の可変絞り、210…光通過用開口部。

Claims (7)

  1. 光源とリフレクタを有する光源ユニットと、
    映像信号に応じた光学像を形成する映像表示素子と、
    前記光源ユニットからの光束を前記映像表示素子に照射する照明光学系と、
    前記映像表示素子からの光を拡大投射する投射レンズと、
    光束を遮断する光遮断部を備え、当該光遮断部の変位によって、光束が通過する部分の形状が変化する開口部を有する可変絞り
    設けた投射型映像表示装置において、
    前記可変絞りの開口部の形状は、
    上下非対称かつ左右非対称な形状であって光束を外周側から絞った状態である第1の形状と、
    前記可変絞りの光遮断部による光束の遮断を解除した状態である第2の形状とを有することを特徴とする投射型映像表示装置。
  2. 前記可変絞りの開口部の形状は、
    前記映像表示素子のコントラストの視野角特性に基づく形状であって、略方位角90度から略方位角180度の間のコントラストの低下する部分の光束を遮る形状であることを特徴とする請求項1に記載の投射型映像表示装置。
  3. 前記可変絞りの開口部の形状は、
    前記映像表示素子のコントラストの視野角特性に基づく形状であって光束を外周側から絞った状態である第1の形状と、
    前記第1の形状と略相似な形状であり、且つ前記第1の形状と面積が異なる状態である第2の形状とを有することを特徴とする請求項1に記載の投射型映像表示装置。
  4. 前記可変絞りの開口部の形状は、
    前記映像表示素子のコントラストの視野角特性に基づく形状であって光束を外周側から絞った状態である第1の形状と、
    前記第1の形状と略相似な形状であり、且つ前記第1の形状と面積が異なる状態である第2の形状と、
    前記可変絞りを解除した状態である第3の形状とを有することを特徴とする請求項1に記載の投射型映像表示装置。
  5. 前記可変絞りの状態を検出する絞り状態検出手段と、
    色温度調整とγ調整と色むら補正の少なくとも何れか一方を含む前記映像表示素子の電気的特性を調整する調整手段とを有し、
    前記絞り状態検出手段の結果に基づいて、前記電気的特性を調整することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の投射型映像表示装置。
  6. 前記可変絞りの状態を検出する絞り状態検出手段と、
    前記装置内を冷却する冷却ファンとを有し、
    前記絞り状態検出手段の結果に基づいて、前記冷却ファンの回転数を制御することを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の投射型映像表示装置。
  7. 前記照明光学系は、
    第1のアレイレンズと第2のアレイレンズで構成されるアレイレンズ群と、
    光束を所定の偏光方向に揃える偏光変換素子と、
    光束を集光する集光レンズを有し、
    前記可変絞りは、
    前記光源ユニットと前記第1のアレイレンズの間或いは、
    前記第1のアレイレンズと前記第2のアレイレンズの間或いは、
    前記第2のアレイレンズと前記偏光変換素子の間或いは、
    前記偏光変換素子と前記集光レンズの間の何れか1箇所に配置することを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項に記載の投射型映像表示装置。
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