JP4150186B2 - ヒドロキシアルキルセルロースの製造方法 - Google Patents

ヒドロキシアルキルセルロースの製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ヒドロキシアルキルセルロースの製造方法に関する。さらに詳しくは、塗料や化粧料等の増粘剤、乳化重合用の安定剤、医薬用錠剤の結合剤、フィルムコーティング材料等の種々の用途で好適に用いられる半合成高分子化合物であるヒドロキシアルキルセルロースの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
ヒドロキシアルキルセルロースは、通常、アルカリセルロースとアルキレンオキシドとを反応させることによって得られている。
【0003】
従来、この反応において、アルカリセルロースとして、セルロースを大過剰のアルカリ水溶液に浸漬させて得られるスラリー状のアルカリセルロースを用いる方法が知られている。しかしながら、この方法を採用した場合、アルカリセルロースとアルキレンオキシドとを反応させる際に、アルカリセルロース中の過剰のアルカリがアルキレンオキシドと反応するため、多量のアルキレンオキシドが必要となる。また、アルカリやその塩および副生成物のグリコール類の除去に要する洗浄溶媒量が増え、工業的に有利な方法とはいい難い。
【0004】
一方、アルカリセルロースを製造する方法として、セルロースを10〜60重量%の水酸化ナトリウム水溶液で処理したものを10重量%未満の水酸化ナトリウム水溶液で洗浄した後、乾燥したものを用いる方法が知られている(特開昭56−802号公報)。しかし、この方法は、その製造工程が煩雑であるため、工業的に有利な方法であるとはいい難い。また、乾燥による老成が進行して、セルロースの重合度が低下するため、得られるヒドロキシアルキルセルロースの水溶液には、その粘度が低いという問題がある。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、粘度が高く、透明性に優れた水溶液を与える、ヒドロキシアルキルセルロースの製造方法を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明は、アルカリセルロースとアルキレンオキシドとを反応させるヒドロキシアルキルセルロースの製造方法であって、前記アルカリセルロースとして、アルカリ比率が14〜18重量%であり、水分比率が20〜55重量%であるアルカリセルロースを用いることを特徴とするヒドロキシアルキルセルロースの製造方法に関する。
【0007】
【発明の実施の形態】
本発明に用いられるアルカリセルロースのアルカリ比率は、得られるヒドロキシアルキルセルロースの水への溶解性を高める観点から、14重量%以上、好ましくは15重量%以上であり、得られるヒドロキシアルキルセルロースの水溶液の粘度や透明性を高める観点から、18重量%以下、好ましくは17重量%以下である。これらの観点から、アルカリセルロースのアルカリ比率は、14〜18重量%、好ましくは15〜17重量%である。
【0008】
ここで、本明細書にいう「アルカリセルロースのアルカリ比率」とは、反応したアルカリ、余剰のアルカリおよび水を含んだアルカリセルロースの総重量に対する、反応したアルカリと余剰のアルカリの合計重量の比率をいう。具体的には、アルカリセルロース4gを精秤し、イオン交換水100gに分散させ、フェノールフタレインを指示薬として、1N塩酸で中和し、使用した塩酸量からアルカリ量を算出する。算出したアルカリ量を重量換算し、アルカリセルロースの重量で除した値をいう。
【0009】
本発明に用いられるアルカリセルロース中の水分比率は、得られるヒドロキシアルキルセルロースの水溶液の粘度や透明性を高める観点から、20重量%以上、好ましくは22重量%以上であり、また得られるヒドロキシアルキルセルロースの水への溶解性を高める観点から、55重量%以下、好ましくは50重量%以下である。これらの観点から、アルカリセルロース中の水分比率は、20〜55重量%、好ましくは22〜50重量%である。
【0010】
ここで、本明細書にいう「水分比率」とは、反応したアルカリ、余剰のアルカリおよび水を含んだアルカリセルロースの総重量に対する、水分の重量の比率をいう。具体的には、アルカリセルロース4gをシャーレに入れて精秤し、乾燥器に入れ、110±2℃で2時間乾燥させ、デシケーター内で放冷後、精秤し、減少重量を求めて得られた水分の重量をアルカリセルロースの重量で除した値をいう。
【0011】
アルカリ比率が14〜18重量%であり、水分比率が20〜55重量%であるアルカリセルロースを製造する方法には、特に限定がない。かかるアルカリセルロースは、例えば、以下のようにして製造することができる。
【0012】
まず、セルロースをアルカリ水溶液に浸漬、混合した後、圧搾、解砕してアルカリセルロースを得る。
【0013】
セルロースとしては、例えば、シート状、粉末状等の木材パルプ、コットンリンター等が挙げられる。
【0014】
アルカリ水溶液としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム等のアルカリ金属水酸化物等の水溶液が挙げられる。これらの中では、水酸化ナトリウムの水溶液が好ましい。
【0015】
アルカリ水溶液の濃度は、所定のアルカリ比率および水分比率を有するアルカリセルロースを得るために大量の水を除去または大量のアルカリを添加して調製するのを回避する観点から、好ましくは5重量%以上、より好ましくは10重量%以上であり、また所定のアルカリ比率および水分比率を有するアルカリセルロースを得るために大量の水を添加して調製するのを回避する観点から、好ましくは20重量%以下、より好ましくは18重量%以下である。これらの観点から、アルカリ水溶液の濃度は、好ましくは5〜20重量%、より好ましくは10〜18重量%である。
【0016】
アルカリ水溶液の使用量は、スラリーの流動性を向上させてアルカリがセルロース内に均一に分散することにより、得られるアルカリセルロースにアルキレンオキシドを均一に反応させることができる観点から、セルロース100重量部に対して、好ましくは1000重量部以上、より好ましくは2000重量部以上であり、また容積効率を高める観点から、セルロース100重量部に対して、好ましくは6000重量部以下、より好ましくは5000重量部以下である。これらの観点から、アルカリ水溶液の使用量は、セルロース100重量部に対して、好ましくは1000〜6000重量部、より好ましくは2000〜5000重量部である。
【0017】
セルロースをアルカリ水溶液に浸漬、混合する際の温度と時間は、通常15〜35℃、30分間〜2時間が望ましい。
【0018】
上記方法によって得られるスラリーを加圧濾過し、アルカリ水溶液を圧搾除去した後、解砕することにより、アルカリセルロースが得られる。
【0019】
かくして得られるアルカリセルロースのアルカリ比率は、通常、4〜12重量%程度であり、また水分比率は、通常、50〜70重量%程度である。したがって、次に、アルカリセルロースのアルカリ比率および水分比率を調整する。
【0020】
アルカリセルロースのアルカリ比率および水分比率を調整する方法としては、例えば、高水分比率および/または低アルカリ比率のアルカリセルロースから水分を除去する方法、低アルカリ比率のアルカリセルロースにアルカリまたはアルカリ水溶液を添加する方法、低水分比率のアルカリセルロースに水またはアルカリ水溶液を添加する方法、低アルカリ比率のアルカリセルロースと高アルカリ比率のアルカリセルロースを混合する方法、低水分比率のアルカリセルロースと高水分比率のアルカリセルロースを混合する方法等が挙げられる。これらの方法の中では、所定のアルカリ比率および水分比率を有するアルカリセルロースを容易に得ることができる観点から、高水分比率および/または低アルカリ比率のアルカリセルロースから水分を除去する方法が好ましい。
【0021】
前記高水分比率および/または低アルカリ比率のアルカリセルロースから水分を除去する方法には、特に限定がない。かかる方法としては、例えば、熱気流によって水分を除去する方法、減圧留去によって水分を除去する方法等が挙げられる。これらの中では、減圧留去によって水分を除去する方法が好ましい。
【0022】
減圧留去によって水分を除去する方法には、特に限定がない。かかる方法としては、例えば、1〜50kPaの圧力で20〜80℃の温度で水分を減圧留去する方法が好ましい。
【0023】
かくして所定のアルカリ比率および水分比率を有するアルカリセルロースを得ることができる。
【0024】
次に、このアルカリセルロースとアルキレンオキシドとを反応溶媒中で混合し、反応させることにより、ヒドロキシアルキルセルロースを製造することができる。
【0025】
アルキレンオキシドとしては、例えば、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド等の炭素数2〜6のアルキレンオキシド等が挙げられる。
【0026】
アルキレンオキシドの使用量は、目的とするアルキル基の付加モル数に応じて決定される。例えば、アルキレンオキシドとしてエチレンオキシドを用いる場合には、エチレンオキシドの使用量は、アルカリセルロースの調製に用いたセルロース100重量部に対して、好ましくは50〜160重量部、より好ましくは65〜145重量部であり、プロピレンオキシドを用いる場合には、プロピレンオキシドの使用量は、セルロース100重量部に対して、好ましくは200〜500重量部、より好ましくは300〜400重量部である。アルキレンオキシドの使用量が上記範囲よりも少ない場合には、アルカリセルロースとアルキレンオキシドとの反応量が減り、得られるヒドロキシアルキルセルロースの水への溶解性や、得られるヒドロキシアルキルセルロース水溶液の粘度や透明性が低くなる傾向がある。また、アルキレンオキシドの使用量が上記範囲を超える場合、得られるヒドロキシアルキルセルロースの水への溶解性や、得られるヒドロキシアルキルセルロース水溶液の透明性に対して、使用量に見合う効果が得られなくなる傾向がある。
【0027】
反応溶媒としては、例えば、イソプロピルアルコール、イソブチルアルコール、tert−ブチルアルコール、イソアミルアルコール等のアルコール類;ジオキサン、1,2−ジメトキシエタン等のエーテル類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類等が挙げられる。これらの中では、容易に分離回収が可能で、再利用することができる観点から、メチルイソブチルケトンが好ましい。
【0028】
反応溶媒の使用量は、アルキレンオキシドを均一に分散させ、アルカリセルロースとアルキレンオキシドとの局部的な反応を回避する観点から、アルカリセルロース100重量部に対して、好ましくは20重量部以上であり、また容積効率を高める観点から、アルカリセルロース100重量部に対して、好ましくは800重量部以下、より好ましくは600重量部以下である。これらの観点から、反応溶媒の使用量は、アルカリセルロース100重量部に対して、好ましくは20〜800重量部、より好ましくは20〜600重量部である。
【0029】
アルカリセルロース、アルキレンオキシドおよび反応溶媒を混合する際の温度は、アルカリセルロースの結晶構造が変化するのを抑制し、得られるヒドロキシアルキルセルロースの水溶液の透明性を高める観点から、好ましくは5℃以上、より好ましくは10℃以上であり、またアルキレンオキシドが均一に分散する前にアルカリセルロースと局部的に反応が進行するのを回避する観点から、好ましくは30℃以下、より好ましくは20℃以下である。これらの観点から、かかる温度は、好ましくは5〜30℃、より好ましくは10〜20℃である。
なお、混合時間は、通常、10分間〜2時間程度である。
【0030】
反応温度は、アルキレンオキシドの種類に応じて適宜、決定することが好ましい。例えば、アルキレンオキシドとしてエチレンオキシドを用いる場合には、反応温度は、好ましくは35〜80℃、より好ましくは40〜60℃であり、プロピレンオキシドを用いる場合には、反応温度は、好ましくは40〜80℃、より好ましくは45〜70℃である。なお、反応温度が上記範囲よりも低い場合には、反応時間が長くなる傾向があり、反応温度が上記範囲を超える場合には、反応が急激に進行し、温度と圧力の制御ができなくなる傾向がある。
なお、反応時間は、反応温度等によって異なるので一概には決定することができないが、通常、1〜15時間程度である。
【0031】
反応終了後、中和剤で反応液中のアルカリを中和し、中和によって生成した塩や、アルキレンオキシドから副生したアルキレングリコール類を洗浄し、常圧ないし減圧下で乾燥することにより、ヒドロキシアルキルセルロースを得ることができる。
【0032】
中和剤としては、特に限定されるものではないが、硝酸、硫酸、塩酸等の無機酸;蟻酸、酢酸、プロピオン酸等の有機酸等を挙げることができる。これらの中では、生成した塩を除去しやすい観点および有害性が低い観点から、酢酸が好ましい。
【0033】
洗浄の際に用いる洗浄液としては、特に限定されないが、中和により生成した塩や、アルキレンオキシドから副生したアルキレングリコール類を効率的に除去することができる観点から、反応で使用した有機溶媒に特定量のメタノールと特定量の水を添加した混合溶媒が好ましい。混合溶媒におけるメタノールの量は、通常、20〜60重量%であることが好ましい。また、混合溶媒における水の量は、通常、5〜20重量%であることが好ましい。
【0034】
洗浄液の使用量は、洗浄を十分に行う観点から、セルロース100重量部に対して、好ましくは500重量部以上、より好ましくは1000重量部以上であり、あまり多量に用いた場合には、使用に見合うだけの効果がなく、却って経済的でなくなる傾向があるので、セルロース100重量部に対して、好ましくは7000重量部以下、より好ましくは5000重量部以下である。これらの観点から、洗浄液の使用量は、セルロース100重量部に対して、好ましくは500〜7000重量部、より好ましくは1000〜5000重量部である。
【0035】
かくして得られるヒドロキシアルキルセルロースを常圧ないし減圧下で乾燥することにより、ヒドロキシアルキルセルロースの乾燥品を得ることができる。
【0036】
【実施例】
以下に、本発明を製造例、実施例および比較例によりさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0037】
製造例1
5リットル容のフラスコ内で、セルロースとして微細に粉砕された木材パルプ50gを、12重量%水酸化ナトリウム水溶液2000gに浸漬し、30℃で30分間攪拌混合した。その後、加圧濾過して、水酸化ナトリウム水溶液を圧搾除去後解砕し、アルカリ比率が11.4重量%、水分比率が50.1重量%のアルカリセルロース(A)130gを得た。
【0038】
製造例2
5リットル容のフラスコ内で、セルロースとして微細に粉砕された木材パルプ50gを、14重量%水酸化ナトリウム水溶液2000gに浸漬し、30℃で30分間攪拌混合した。その後、加圧濾過して、水酸化ナトリウム水溶液を圧搾除去後解砕し、アルカリ比率が13.1重量%、水分比率が53.1重量%のアルカリセルロース(B)148gを得た。
【0039】
実施例1
1リットル容のフラスコに、製造例1で得られたアルカリ比率が11.4重量%、水分比率が50.1重量%のアルカリセルロース(A)130gを仕込み、8kPa、60℃の条件で水分37gを減圧留去して、アルカリ比率が15.9重量%、水分比率が30.3重量%のアルカリセルロース(C)93gを得た。
【0040】
次に、1リットル容のニーダーに、アルカリセルロース(C)93g(セルロース50gに相当)を入れ、エチレンオキシド35gおよびメチルイソブチルケトン50gを15℃で仕込み、同温度で30分間混合し、次いで50℃に昇温してアルカリセルロースとエチレンオキシドを3時間反応させた。
【0041】
得られた反応混合物を酢酸でpHを6に調整した後、メチルイソブチルケトン/メタノール/水の混合溶媒(重量比:45/45/10)500gを加えて、スラリー液とした。
【0042】
得られたスラリー液からヒドロキシエチルセルロースを濾別した。このヒドロキシエチルセルロースに上記と同様の混合溶媒を加えて、濾別する操作を3回繰り返した後、減圧下、70℃で一昼夜乾燥してヒドロキシエチルセルロース82gを得た。
【0043】
実施例2
1リットル容のフラスコに、製造例1で得られたアルカリ比率が11.4重量%、水分比率が50.1重量%のアルカリセルロース(A)130gを仕込み、10kPa、60℃の条件で水分31gを減圧留去して、アルカリ比率が15.0重量%、水分比率が34.5重量%のアルカリセルロース(D)99gを得た。
【0044】
次に、1リットル容のニーダーに、アルカリセルロース(D)99g(セルロース50gに相当)を入れ、エチレンオキシド35gおよびメチルイソブチルケトン50gを15℃で仕込み、同温度で30分間混合し、次いで50℃に昇温してアルカリセルロースとエチレンオキシドを3時間反応させた。
【0045】
得られた反応混合物を酢酸でpHを6に調整した後、メチルイソブチルケトン/メタノール/水の混合溶媒(重量比:45/45/10)500gを加えて、スラリー液とした。
【0046】
得られたスラリー液からヒドロキシエチルセルロースを濾別した。このヒドロキシエチルセルロースに上記と同様の混合溶媒を加えて、濾別する操作を3回繰り返した後、減圧下、70℃で一昼夜乾燥してヒドロキシエチルセルロース78gを得た。
【0047】
実施例3
1リットル容のフラスコに、製造例1で得られたアルカリ比率が11.4重量%、水分比率が50.1重量%のアルカリセルロース(A)130gを仕込み、8kPa、60℃の条件で水分42gを減圧留去して、アルカリ比率が16.8重量%、水分比率が26.3重量%のアルカリセルロース(E)88gを得た。
【0048】
次に、1リットル容のニーダーに、アルカリセルロース(E)88g(セルロース50gに相当)を入れ、プロピレンオキシド150gおよびメチルイソブチルケトン150gを20℃で仕込み、同温度で30分間混合し、次いで65℃に昇温してアルカリセルロースとプロピレンオキシドを4時間反応させた後、さらに75℃に昇温してアルカリセルロースとプロピレンオキシドを6時間反応させた。
【0049】
得られた反応混合物を酢酸でpHを6に調整した後、メチルイソブチルケトン/メタノール/水の混合溶媒(重量比:70/25/5)500gを加えて、スラリー液とした。
【0050】
得られたスラリー液からヒドロキシプロピルセルロースを濾別した。このヒドロキシプロピルセルロースに上記と同様の混合溶媒を加えて、濾別する操作を3回繰り返した後、減圧下、70℃で一昼夜乾燥してヒドロキシプロピルセルロース107gを得た。
【0051】
実施例4
1リットル容のフラスコに、製造例2で得られたアルカリ比率が13.1重量%、水分比率が53.1重量%のアルカリセルロース(B)148gを仕込み、8kPa、60℃の条件で水分19gを減圧留去して、アルカリ比率が15.0重量%、水分比率が46.2重量%のアルカリセルロース(F)129gを得た。
【0052】
次に、1リットル容のニーダーに、アルカリセルロース(F)129g(セルロース50gに相当)を入れ、エチレンオキシド35gおよびメチルイソブチルケトン50gを15℃で仕込み、同温度で30分間混合し、次いで50℃に昇温してアルカリセルロースとエチレンオキシドを3時間反応させた。
【0053】
得られた反応混合物を酢酸でpHを6に調整した後、メチルイソブチルケトン/メタノール/水の混合溶媒(重量比:45/45/10)500gを加えて、スラリー液とした。
【0054】
得られたスラリー液からヒドロキシエチルセルロースを濾別した。このヒドロキシエチルセルロースに上記と同様の混合溶媒を加えて、濾別する操作を3回繰り返した後、減圧下、70℃で一昼夜乾燥してヒドロキシエチルセルロース80gを得た。
【0055】
比較例1
1リットル容のニーダーに、製造例1で得られたアルカリ比率が11.4重量%、水分比率が50.1重量%のアルカリセルロース(A)130g(セルロース50gに相当)を入れ、エチレンオキシド35gおよびメチルイソブチルケトン50gを15℃で仕込み、同温度で30分間混合し、その後50℃に昇温してアルカリセルロースとエチレンオキシドを3時間反応させた。
【0056】
得られた反応混合物を酢酸でpHを6に調整した後、メチルイソブチルケトン/メタノール/水の混合溶媒(重量比:45/45/10)500gを加えて、スラリー液とした。
【0057】
得られたスラリー液からヒドロキシエチルセルロースを濾別した。このヒドロキシエチルセルロースに上記と同様の混合溶媒を加えて、濾別する操作を3回繰り返した後、減圧下、70℃で一昼夜乾燥してヒドロキシエチルセルロース82gを得た。
【0058】
比較例2
1リットル容のフラスコに、製造例1で得られたアルカリ比率が11.4重量%、水分比率が50.1重量%のアルカリセルロース(A)130gを仕込み、6kPa、60℃の条件で水分53gを減圧留去して、アルカリ比率が19.2重量%、水分比率が15.8重量%のアルカリセルロース(G)77gを得た。
【0059】
次いで、1リットル容のニーダーに、アルカリセルロース(G)77g(セルロース50gに相当)を入れ、エチレンオキシド35gおよびメチルイソブチルケトン50gを15℃で仕込み、同温度で30分間混合した。さらに、50℃に昇温してアルカリセルロースとエチレンオキシドを3時間反応させた。
【0060】
得られた反応混合物を酢酸でpHを6に調整した後、メチルイソブチルケトン/メタノール/水の混合溶媒(重量比:45/45/10)500gを加えて、スラリー液とした。
【0061】
得られたスラリー液からヒドロキシエチルセルロースを濾別した。このヒドロキシエチルセルロースに上記と同様の混合溶媒を加えて、濾別する操作を3回繰り返した後、減圧下、70℃で一昼夜乾燥してヒドロキシエチルセルロース86gを得た。
【0062】
〔評価〕
各実施例および各比較例で得られたヒドロキシアルキルセルロースの粘度と透視度は、以下の方法に従って測定した。
【0063】
(1)粘度(mPa・s)
ヒドロキシアルキルセルロース10gを精秤し、イオン交換水490gを加え、2重量%ヒドロキシアルキルセルロース水溶液500gを調製し、ブルックフィールド型回転粘度計〔東機産業(株)製、品番:BM型〕を用い、20℃、30rpm(No.3ローター)の条件で測定した。得られた結果を表1に示した。なお、通常、粘度が500mPa・s以上であれば粘性に優れていると判断することができる。
【0064】
(2)透視度(cm)
粘度測定と同様の方法で2重量%ヒドロキシアルキルセルロース水溶液を調製し、30cm用透視度計〔岩城硝子(株)製〕を用いて測定した。得られた結果を表1に示した。なお、通常、透視度が20cm以上であれば透明性に優れていると判断することができる。
【0065】
【表1】
Figure 0004150186
【0066】
表1に示された結果から、実施例1〜4で得られたヒドロキシアルキルセルロースの水溶液は、高粘度で、かつ透明性も良好であることがわかる。
【0067】
【発明の効果】
本発明の製造方法によれば、粘度が高く、透明性に優れた水溶液を与える、ヒドロキシアルキルセルロースを得ることができる。

Claims (3)

  1. アルカリセルロースとアルキレンオキシドとを反応させるヒドロキシアルキルセルロースの製造方法であって、前記アルカリセルロースとして、アルカリ比率が14〜18重量%であり、水分比率が20〜55重量%であるアルカリセルロースを用いることを特徴とするヒドロキシアルキルセルロースの製造方法。
  2. アルカリ比率が14〜18重量%であり、水分比率が20〜55重量%であるアルカリセルロースが、セルロースを5〜20重量%のアルカリ水溶液で処理した後、水分を除去する方法により得られたものである請求項1記載のヒドロキシアルキルセルロースの製造方法。
  3. アルカリ水溶液の使用量が、セルロース100重量部に対して1000〜6000重量部である請求項2記載のヒドロキシアルキルセルロースの製造方法。
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