JP5030567B2 - セルロースエーテルの製造方法 - Google Patents
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Description
この未溶解部分は、水に溶解するのに十分な置換基を有さない低置換度部分が存在するため生じるものであり、アルカリセルロース中のアルカリ分布が不均一であることが原因の一つとして挙げられる。
粉末状パルプは、シート状パルプを粉砕し得られるもので、粉末の形態を示すものである。通常平均粒子径が10〜1,000μmのものが用いられるが、これらに限定されない。粉末状パルプの製造方法は限定されないが、ナイフミルやハンマーミル等の粉砕機を用いることができる。
チップ状パルプの製造方法は限定されないが、シート状パルプをスリッターカッターの他、既存の裁断装置を利用することにより得られる。使用する裁断装置は連続的に処理できるものが投資コスト上有利である。
チップの平面積は通常4〜10,000mm2、特に10〜2,500mm2である。4mm2より小さいと、チップ状のパルプの製造が困難であり、逆に10,000mm2より大きいと、パイプ型接触器への投入、接触器内部の送り、脱液装置への投入等の取り扱いが困難になる場合がある。ここで、チップの平面積は、一片のチップ状パルプを六面体としてとらえた場合、六面のうち最も面積の大きい面の面積をいう。
パイプの長さは適宜変更することができ、その変更方法は、複数の異なる長さのパイプを設置しておき、流路を切り替える方法やパイプの各所に抜き出し弁を設け、抜き出し位置を変える方法を用いて良い。パイプは必要に応じ二重管とし、外側の管に温度調節用の熱媒を流すことができる。
パイプの内径は、閉塞防止のためチップ状パルプのサイズ(最も長い辺)より大きいことが好ましく、特に3倍以上が好ましい。
アルカリ金属水酸化物溶液槽4からのアルカリ金属水酸化物溶液2と、パルプフィーダー5からのパルプ1との予混合物は、ポンプ6を介して、パイプ型接触器10の一端に設けられた投入口11から投入される。あるいは予め両者を混合することなく、アルカリ金属水酸化物溶液とパルプとをそれぞれ別個の投入口から投入してもよい。
投入されたパルプとアルカリ金属水酸化物溶液をこの一端から他端に接触させながら搬送させた後、取り出し口12から接触物を取り出す。取り出された接触物は、脱液手段20によってケーキであるアルカリセルロース3に分離される。パイプ中に接触物を流動させるための駆動手段として、駆動ポンプ等の公知の手段を用いることができる。脱液手段で回収された液体は、ポンプ21でアルカリ金属酸化物溶液槽4に送られ、再利用できる。
また、パイプ型接触器へのパルプの投入は、図3に示すように、ホッパー付きスネークポンプ8を用いて得られる予混合物を投入口11から投入してもよい。あるいは、スラリーポンプのサクション部にホッパーを設け、ホッパー内にパルプとアルカリ金属水酸化物溶液を投入する方法等も挙げられる。
パイプは、下り勾配ではパイプ内部に液相と気相の界面を生じ、液相部の断面積がパイプ断面積と一致しなくなるケースがあり、接触時間を制御する上で問題となるので、登り勾配の部分を多くする方が好ましい。
パイプ内の流速は、アルカリ金属水酸化物液の流量により決まるが、0.1m/s以上、特に0.2〜10m/sが好ましい。0.1m/s未満だとパイプ内部におけるパルプの移動が困難になる場合があり、10m/sを超えると圧力損失が過大となり、運転が困難な場合がある。流量の変更方法は、一般的な方法を用いてよく、例えばスラリーポンプの回転数を変更したり、調節弁により絞り量を変える方法を用いることができる。
一方、パイプ内の接触ゾーンの長さは、0.1〜200m、特に0.2〜100mが好ましい。0.1m未満だと吸収量のコントロールが困難であり、200mを超えると設備が過大になり現実的ではない場合がある。
パルプとアルカリ金属水酸化物溶液を接触させる装置は、連続的に処理できるものが好ましい。バッチ式に比べ装置本体を小さくする事ができスペース面で有利である。また、接触装置はパルプをピストンフロー的に通過させるのが好ましい。なぜなら前述のように、アルカリセルロースの組成が接触時間に依存するため、接触時間がばらつかないほうが、アルカリセルロースの組成が均等になり、品質上好ましいからである。従って、供給したパルプがアルカリに全く触れずに通過するのは品質上避けねばならない。特にパルプはアルカリ金属水酸化物溶液に浮遊しやすいことに注意し、接触装置内では完全にアルカリ金属水酸化溶液と接触できるようにパルプを通過させることが好ましい。
脱液装置としては、デカンターや回転バスケットといった遠心力を利用した脱液装置、ロール状のもの、V型ディスクプレス、スクリュープレス等の機械的脱液装置及び真空ろ過器を利用できるが、脱液の均一性から遠心力を利用する脱液装置が好ましい。また、連続的に処理できるものが好ましい。例えば、スクリュー排出型遠心脱水機、押し出し板型遠心脱水機、デカンター等が挙げられる。遠心力を利用する脱液装置の場合、必要な脱液度に応じ回転数を調節することが可能である。また、機械的脱液装置の場合は脱液圧の調節、真空ろ過器の場合は真空度の調節が可能である。
なお、遠心効果は、「社団法人化学工学協会編 新版化学工学事典」昭和49年5月30日発行に記載される通り、遠心力の大きさの程度を示す数値であり、遠心力と重力の比で与えられる。遠心効果Zは、下記式で表される。
Z=(ω2r)/g=V2/(gr)=π2N2r/(900g)
上式中、rは回転体の回転半径(単位m)、ωは回転体の角速度(単位rad/秒)、Vは回転体の周速度(m/秒)、Nは回転体の回転数(rpm)、gは重力加速度(m/sec2)を表す。
まず、ケーキ4.00gを採取し、中和滴定によりケーキ中のアルカリ金属水酸化物質量%を求める(0.5mol/L H2SO4、指示薬:フェノールフタレイン)。同様の方法で空試験を行う。
アルカリ金属水酸化物質量%
=規定度係数×(H2SO4滴下量ml−空試験でのH2SO4滴下量ml)
得られたケーキ中のアルカリ金属水酸化物質量%を用いて、次式に従いアルカリ金属水酸化物/パルプ中の固体成分を求める。
(アルカリ金属水酸化物の質量)/(パルプ中の固体成分の質量)
=(アルカリ金属水酸化物質量%)÷[{100−(アルカリ金属水酸化物質量%)/ (B/100)}×(S/100)]
ここで、Bは用いたアルカリ金属水酸化物溶液の濃度(質量%)であり、Sはパルプ中の固体成分の濃度(質量%)である。パルプ中の固体成分の濃度は、パルプ約2gを採取し105℃で2時間乾燥させた後の質量が、採取した質量に占める割合を質量%で表したものである。
アルカリセルロースの組成は、これを用いて得られるセルロースエーテルのエーテル化の程度、すなわち置換度によって決定することができる。
反応方法としては、バッチ式と連続式が考えられ、本発明のアルカリセルロースの製造方法が連続式であることから連続反応方式が好ましいが、バッチ式でも問題はない。
バッチ式の場合は、脱液装置より排出されたアルカリセルロースをバッファータンクに貯蔵するか又は直接エーテル化反応容器に仕込んでも良いが、エーテル化反応容器の占有時間を短くするためバッファータンクに貯蔵後、短時間で反応釜に仕込む方が生産性は高い。バッファータンクは、重合度低下を抑制するため、真空又は窒素置換による酸素フリーの雰囲気が望ましい。
アルキルセルロースとしては、メトキシル基(DS)が1.0〜2.2のメチルセルロース、エトキシル基(DS)が2.0〜2.6のエチルセルロース(等が挙げられる。なお、DSは、置換度(degree of substitution)を表し、セルロースのグルコース環単位当たり、メトキシル基で置換された水酸基の平均個数であり、MSは、置換モル数(molar substitution)を表し、セルロースのグルコース環単位当たりに付加したヒドロキシプロポキシル基あるいはヒドロキシエトキシル基の平均モル数である。
ヒドロキシアルキルセルロースとしては、ヒドロキシエトキシル基(MS)が0.05〜3.0のヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロポキシル基(MS)が0.05〜3.3のヒドロキシプロピルセルロース等が挙げられる。
ヒドロキシアルキルアルキルセルロースの例としては、メトキシル基 (DS)が1.0〜2.2、ヒドロキシエトキシル基(MS)が0.1〜0.6のヒドロキシエチルメチルセルロース、メトキシル基(DS)が1.0〜2.2、ヒドロキシプロポキシル基(MS)が0.1〜0.6のヒドロキシプロピルメチルセルロース、エトキシル基(DS)が1.0〜2.2、ヒドロキシエトキシル(MS)が0.1〜0.6のヒドロキシエチルエチルセルロースが挙げられる。
また、カルボキシメトキシル基(DS)が0.2〜2.0のカルボキシメチルセルロースも挙げられる。
エーテル化剤としては、塩化メチル、塩化エチル等のハロゲン化アルキル、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド等のアルキレンオキサイド、モノクロル酢酸等が挙げられる。
[実施例1]
内径38mm、長さ10mのパイプを設置した。パイプは登り勾配とした。パイプの入り口にホッパー付きスネークポンプを接続し、スネークポンプのホッパーに40℃の49質量%水酸化ナトリウム水溶液を1,300L/hrの速度で供給した。同時に木材由来で4mm角、固体成分濃度93質量%のチップ状パルプを50kg/hrの速度で投入した。スネークポンプの回転数は、ホッパー内部の液面が一定になるように調節された。パイプ内の線速は0.32m/s、パルプの移動速度は0.32m/s、滞留時間は31秒だった。
パイプ出口は、V型ディスクプレスに接続されており、パイプから排出されるチップ状パルプと苛性ソーダ液の混合物を連続的に脱液した。得られたアルカリセルロース中のアルカリ金属水酸化物/パルプ中の固体成分の質量比率を滴定法により求めたところ、1.25だった。
49質量%水酸化ナトリウム水溶液を1,800L/hrの速度で供給し、パイプ出口に脱液装置として遠心効果600のスクリュー排出型遠心脱水機を設置する以外は実施例1と同様に実施した。パイプ内の線速は0.44m/s、パルプの移動速度は0.44m/s、滞留時間は23秒だった。得られたアルカリセルロース中のアルカリ金属水酸化物/パルプ中の固体成分の質量比率を滴定法により求めたところ、1.00だった。
長さ7.4mのパイプを用い、パイプ出口に脱液装置として0.2mmスリットスクリーンを備えた遠心効果600の押し出し板型遠心脱水機を設置する以外は実施例1と同様に実施した。得られたアルカリセルロース中のアルカリ金属水酸化物/パルプ中の固体成分の質量比率を滴定法により求めたところ、1.00だった。
実施例1で得られたアルカリセルロース20kgを耐圧反応器に仕込み、真空引き後、塩化メチル11kg、プロピレンオキサイド2.7kgを加えて反応させ、洗浄、乾燥、粉砕を経てヒドロキシプロピルメチルセルロースを得た。
得られたヒドロキシプロピルメチルセルロースの置換度はメトキシル基(DS)が1.90、ヒドロキシプロポキシル基(MS)が0.24、20℃における2質量%水溶液の粘度は、10,000mPa・sだった。2質量%水溶液の20℃における透光度は、光電比色計PC-50型、セル長20mm、可視光線を用いて測定し、98.0%だった。
内径38mm、長さ10mのパイプを設置した。パイプは登り勾配とした。パイプの入り口にホッパー付きスネークポンプを接続し、タンクよりスネークポンプのホッパーに40℃の44質量%水酸化ナトリウム水溶液を1,800L/hrの速度で供給した。同時に木材由来で4mm角、固体成分濃度93質量%のチップ状パルプを50kg/hrの速度で投入した。スネークポンプの回転数は、ホッパー内部の液面が一定になるように調節された。パイプ内の線速は0.44m/s、パルプの移動速度は0.44m/s、滞留時間は23秒だった。パイプ型接触器の出口に脱液装置としてスクリュー排出型遠心脱水機を設置し、パイプ型接触器から排出されるチップ状パルプと苛性ソーダ液の混合物を遠心効果600で連続的に脱液した。分離液はタンクに受け入れられ、パルプとの接触に再利用された。タンクのレベルが一定になるよう49質量%水酸化ナトリウム水溶液をタンクに連続的に供給した。タンク内の濃度は44質量%のままであった。得られたアルカリセルロース中のアルカリ金属水酸化物/パルプ中の固体成分の質量比率を滴定法により求めたところ、1.00だった。
得られたアルカリセルロースをセルロース分として5.5kgを耐圧反応器に仕込み、真空引き後、塩化メチル9kg、プロピレンオキサイド1.4kgを加えて反応させ、洗浄、乾燥、粉砕を経てヒドロキシプロピルメチルセルロースを得た。得られたセルロースエーテルの置換度、2質量%水溶液の20℃における粘度、2質量%水溶液の20℃における透光度を表1に示す。なお、2質量%水溶液の20℃における透光度は、光電比色計PC-50型、セル長20mm、可視光線を用いて測定した。
内径38mm、長さ10mのパイプを設置した。パイプは登り勾配とした。パイプの入り口にホッパー付きスネークポンプを接続し、タンクよりスネークポンプのホッパーに40℃の44質量%水酸化ナトリウム水溶液を1,800L/hrの速度で供給した。同時に木材由来で4mm角、固体成分濃度93質量%のチップ状パルプを50kg/hrの速度で投入した。スネークポンプの回転数は、ホッパー内部の液面が一定になるように調節された。パイプ内の線速は0.44m/s、パルプの移動速度は0.44m/s、滞留時間は23秒だった。パイプ型接触器の出口に脱液装置としてスクリュー排出型遠心脱水機を設置し、パイプ型接触器から排出されるチップ状パルプと苛性ソーダ液の混合物を遠心効果600で連続的に脱液した。分離液はタンクに受け入れられ、ここからポンプを介して遠心効果2500で運転中のデカンターに送られ、微細な固形分を回収した。回収された微細な固形分はアルカリセルロースに混入させた。デカンターを通過した液は再びタンクに戻り、パルプとの接触に再利用された。タンクのレベルが一定になるよう49質量%水酸化ナトリウム水溶液をタンクに連続的に供給した。タンク内の濃度は44質量%のままであった。得られたアルカリセルロース中のアルカリ金属水酸化物/パルプ中の固体成分の質量比率を滴定法により求めたところ、1.00だった。
得られたアルカリセルロースをセルロース分として5.5kgを耐圧反応器に仕込み、真空引き後、塩化メチル9kg、プロピレンオキサイド1.4kgを加えて反応させ、洗浄、乾燥、粉砕を経てヒドロキシプロピルメチルセルロースを得た。得られたセルロースエーテルの置換度、2質量%水溶液の20℃における粘度、2質量%水溶液の20℃における透光度を表1に示す。なお、2質量%水溶液の20℃における透光度は、光電比色計PC-50型、セル長20mm、可視光線を用いて測定した。
44質量%水酸化ナトリウム水溶液の温度を20℃に変更し、スクリュー排出型遠心脱水機の遠心効果を1000に変更した以外は実施例6と同様にして、アルカリセルロースを得た。タンク内の水酸化ナトリウム水溶液濃度は44質量%のままであった。得られたアルカリセルロース中のアルカリ金属水酸化物/パルプ中の固体成分の質量比率を滴定法により求めたところ、0.60だった。
塩化メチル6.5kg、プロピレンオキサイド1.2kgを加える以外は実施例6と同様にセルロースエーテルを製造した。2質量%水溶液の20℃における粘度、2質量%水溶液の20℃における透光度を表1に示す。
44質量%水酸化ナトリウム水溶液の供給速度を1,300L/hrに変更し、スクリュー排出型遠心脱水機の遠心効果を300に変更し、パイプ内の線速は0.32m/s、パルプの移動速度は0.32m/s、滞留時間は31秒だったこと以外は実施例6と同様にして、アルカリセルロースを得た。タンク内の水酸化ナトリウム水溶液濃度は44質量%のままであった。得られたアルカリセルロース中のアルカリ金属水酸化物/パルプ中の固体成分の質量比率を滴定法により求めたところ、1.25だった。
塩化メチル11kg、プロピレンオキサイド2.7kgを加える以外は実施例6と同様にセルロースエーテルを製造した。2質量%水溶液の20℃における粘度、2質量%水溶液の20℃における透光度を表1に示す。
44質量%水酸化ナトリウム水溶液の供給速度を1,300L/hrに変更し、パイプ内の線速は0.32m/s、パルプの移動速度は0.32m/s、滞留時間は31秒だったこと以外は実施例6と同様にして、アルカリセルロースを得た。スクリュー排出型遠心脱水機の遠心効果は600のままとした。タンク内の水酸化ナトリウム水溶液濃度は46質量%となった。得られたアルカリセルロース中のアルカリ金属水酸化物/パルプ中の固体成分の質量比率を滴定法により求めたところ、1.25だった。
塩化メチル11kg、プロピレンオキサイド2.7kgを加える以外は実施例6と同様にセルロースエーテルを製造した2質量%水溶液の20℃における粘度、2質量%水溶液の20℃における透光度を表1に示す。
2 アルカリ金属水酸化物溶液
3 アルカリセルロース
4 アルカリ金属水酸化物溶液槽
5 パルプフィーダー
6,21 ポンプ
7 ロータリーバルブ
8 ホッパー付きスネークポンプ
10 パイプ型接触器
11 投入口
12 取り出し口
20 脱液手段
Claims (2)
- パイプ型接触器内でパルプとアルカリ金属水酸化物溶液を連続的に接触させる工程と、得られた接触物を脱液する脱液工程によりアルカリセルロースを製造し、さらに該アルカリセルロースをエーテル化することによるセルロースエーテルの製造方法であって、
上記パイプ型接触器が、登り勾配の部分を有し、
上記脱液工程で得られたケーキ中に含まれるアルカリ金属水酸化物と、上記パルプ中の固体成分の質量比率が、0.3〜1.5の範囲であるセルロースエーテルの製造方法。 - 上記脱液工程で得られたケーキ中に含まれるアルカリ金属水酸化物と、上記パルプ中の固体成分の質量比率が、上記パイプ型接触器のパイプ内のアルカリ金属水酸化物溶液の線速及び/又は接触ゾーンの長さを変えることによって調節される請求項1に記載のセルロースエーテルの製造方法。
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